(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024170978
(43)【公開日】2024-12-11
(54)【発明の名称】医療用ドレープ
(51)【国際特許分類】
A61B 46/23 20160101AFI20241204BHJP
【FI】
A61B46/23
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023087782
(22)【出願日】2023-05-29
(71)【出願人】
【識別番号】000109543
【氏名又は名称】テルモ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100141829
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 牧人
(74)【代理人】
【識別番号】100123663
【弁理士】
【氏名又は名称】広川 浩司
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 理咲
(57)【要約】
【課題】術者による長尺デバイスの操作性を維持しつつ、長尺デバイスの手術台からの落下を抑制できる医療用ドレープを提供する。
【解決手段】患者の血管内に長尺デバイス100を挿入する際に用いる医療用ドレープ10であって、表面21および裏面22を有するシート部20と、シート部20の表面21から裏面22へ貫通する少なくとも1つの開口部30と、シート部20に配置されて当該シート部20の表面21から突出するように拡張可能な少なくとも1つのバルーン40と、を有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者の血管内に長尺デバイスを挿入する際に用いる医療用ドレープであって、
表面および裏面を有するシート部と、
前記シート部の前記表面から前記裏面へ貫通する少なくとも1つの開口部と、
前記シート部に配置されて当該シート部の表面から突出するように拡張可能な少なくとも1つのバルーンと、を有することを特徴とする医療用ドレープ。
【請求項2】
前記バルーンは、複数あり、
前記バルーンの少なくとも2つは、前記表面上を前記開口部から離れる方向である配置方向に沿って間隔を空けて並んで配置されることを特徴とする請求項1に記載の医療用ドレープ。
【請求項3】
前記バルーンの少なくとも1つは、前記表面上を前記開口部から離れる方向である配置方向へ長尺に形成されることを特徴とする請求項1に記載の医療用ドレープ。
【請求項4】
前記バルーンは、前記表面上を前記開口部から離れる方向である配置方向と垂直な断面において、前記表面から垂直に離れる方向である上方向の頂部と、前記シート部の前記表面から前記頂部まで延び、前記シート部の前記表面に沿いかつ前記配置方向と垂直にシート部の中央に向かう方向である内側方向に向く内側面を有し、前記内側面は、前記内側方向と反対方向に向かって窪む曲面を有することを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の医療用ドレープ。
【請求項5】
前記バルーンは、前記表面上を前記開口部から離れる方向である配置方向と垂直な断面において、前記シート部の前記表面から前記バルーンの前記頂部まで延び、前記シート部の前記表面に沿いかつ前記配置方向と垂直に前記シート部の中央から離れる方向である外側方向に、前記バルーンの拡張用の流体を注入する注入口を有することを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の医療用ドレープ。
【請求項6】
前記シート部は、前記表面上を前記開口部から離れる方向であって前記バルーンが配置される配置方向側の前記表面に、前記表面を山折り可能とする位置を表示する山折り位置表示部と、前記表面を谷折り可能とする位置を表示する谷折り位置表示部と、を有することを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の医療用ドレープ。
【請求項7】
前記バルーンは、前記表面上を前記開口部から離れる方向である配置方向と垂直な断面において、前記表面から垂直に離れる方向である上方向の頂部近傍から、前記シート部の前記表面に沿いかつ前記配置方向と垂直にシート部の中央に向かう方向である内側方向へ突出する返し部を有することを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の医療用ドレープ。
【請求項8】
少なくとも1つの前記バルーンは、前記表面から垂直に離れる方向である上方向を向く面に、前記表面上を前記開口部から離れる方向である配置方向へ延びる溝部を有することを特徴とする請求項1に記載の医療用ドレープ。
【請求項9】
前記溝部の底面は、前記シート部の前記表面から高さを有して形成されることを特徴とする請求項8に記載の医療用ドレープ。
【請求項10】
前記溝部を有する前記バルーンの少なくとも1つは、前記溝部の底面に少なくとも1つの凹部を有することを特徴とする請求項8または9に記載の医療用ドレープ。
【請求項11】
前記溝部を有する前記バルーンの少なくとも1つは、前記溝部を挟む2つの側壁を有し、前記側壁は、高壁部と、前記高壁部よりも前記表面からの高さが低い低壁部と、を有することを特徴とする請求項8または9に記載の医療用ドレープ。
【請求項12】
前記バルーンの少なくとも1つは、前記表面上を前記開口部から離れる方向へ貫通する貫通孔を形成することを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の医療用ドレープ。
【請求項13】
複数の前記バルーンの内部を連通させる連通管を有することを特徴とする請求項2に記載の医療用ドレープ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、手術の際に患者に被せる医療用ドレープに関する。
【背景技術】
【0002】
近年のカテーテル治療において、長いカテーテルやガイドワイヤ等の長尺デバイスが求められている。例えば、橈骨動脈から長尺デバイスを挿入して下肢動脈のカテーテル治療を行う場合には、長尺デバイスを用いる必要がある。しかしながら、長尺デバイスは、手技中に長尺デバイスが手術台から落下して不潔となり、長尺デバイスの交換が必要となる可能性がある。そこで、例えば特許文献1には、手技中における長尺デバイスの落下を抑制できるように、治療中の患者に被せる掛け布に固定可能な長尺デバイスを挿入可能な管を含む格納装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、長尺デバイスを管に挿入することにより手術台からの落下を抑制する装置では、細い管に長尺デバイスを挿入する手間が生じる。また、管に挿入された長尺デバイスは、術者による長尺デバイスの血管への挿入、抜去および回転等の操作が妨げられるため、手技の遅延を生じさせる可能性がある。
【0005】
本発明は、上述した課題を解決するためになされたものであり、術者による長尺デバイスの操作性を維持しつつ、長尺デバイスの手術台からの落下を抑制できる医療用ドレープを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的は、下記(1)に記載の発明により達成される。
(1) 本発明に係る医療用ドレープは、患者の血管内に長尺デバイスを挿入する際に用いる医療用ドレープであって、表面および裏面を有するシート部と、前記シート部の前記表面から前記裏面へ貫通する少なくとも1つの開口部と、前記シート部に配置されて当該シート部の表面から突出するように拡張可能な少なくとも1つのバルーンと、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
上記(1)に記載の医療用ドレープは、表面から突出するバルーンにより長尺デバイスの手術台からの落下を抑制できる。また、医療用ドレープは、バルーンが術者による長尺デバイスの操作を妨げにくいため、長尺デバイスの操作性を維持できる。
【0008】
(2) 上記(1)に記載の医療用ドレープにおいて、前記バルーンは、複数あり、前記バルーンの少なくとも2つは、前記表面上を前記開口部から離れる方向である配置方向に沿って間隔を空けて並んで配置されてもよい。これにより、医療用ドレープは、複数のバルーンにより、術部から患者の体外に導出されて配置方向へ延びる長尺デバイスの手術台からの落下を効果的に抑制できる。また、複数のバルーンが間隔を空けて並んでいるため、術者は、隣接するバルーンの間から長尺デバイスを容易に掴むことができる。
【0009】
(3) 上記(1)または(2)に記載の医療用ドレープにおいて、前記バルーンの少なくとも1つは、前記表面上を前記開口部から離れる方向である配置方向へ長尺に形成されてもよい。これにより、医療用ドレープは、長尺なバルーンにより、術部から導出されて配置方向へ長く延びる長尺デバイスの手術台からの落下を効果的に抑制できる。
【0010】
(4) 上記(1)~(3)のいずれか1つに記載の医療用ドレープにおいて、前記バルーンは、前記表面上を前記開口部から離れる方向である配置方向と垂直な断面において、前記表面から垂直に離れる方向である上方向の頂部と、前記シート部の前記表面から前記頂部まで延び、前記シート部の前記表面に沿いかつ前記配置方向と垂直にシート部の中央に向かう方向である内側方向に向く内側面を有し、前記内側面は、前記内側方向と反対方向に向かって窪む曲面を有してもよい。これにより、医療用ドレープは、バルーンにより、長尺デバイスが外側方向へ移動して落下することを抑制できる。また、医療用ドレープは、術者が長尺デバイスを上方向へ持ち上げたり、患者側である内側方向へ移動させたりする動作を妨げにくいため、術者による長尺デバイスの操作性を向上できる。
【0011】
(5) 上記(1)~(4)のいずれか1つに記載の医療用ドレープにおいて、前記バルーンは、前記表面上を前記開口部から離れる方向である配置方向と垂直な断面において、前記シート部の前記表面から前記バルーンの前記頂部まで延び、前記シート部の前記表面に沿いかつ前記配置方向と垂直に前記シート部の中央から離れる方向である外側方向に、前記バルーンの拡張用の流体を注入する注入口を有してもよい。これにより、注入口は、手術の際に術者が操作しやすい位置に配置されて、作業性を向上できる。
【0012】
(6) 上記(1)~(5)のいずれか1つに記載の医療用ドレープにおいて、前記シート部は、前記表面上を前記開口部から離れる方向であって前記バルーンが配置される配置方向側の前記表面に、前記表面を山折り可能とする位置を表示する山折り位置表示部と、前記表面を谷折り可能とする位置を表示する谷折り位置表示部と、を有してもよい。これにより、医療用ドレープは、山折り位置表示部および谷折り位置表示部で折り曲げられることで、開口部よりも配置方向側においてバルーンの延びる方向を変更できる。このため、医療用ドレープは、手技や長尺デバイスの種類、手術室の配置等に応じて、長尺デバイスが基端側へ延びる方向を変更できる。
【0013】
(7) 上記(1)~(6)のいずれか1つに記載の医療用ドレープにおいて、前記バルーンは、前記表面上を前記開口部から離れる方向である配置方向と垂直な断面において、前記表面から垂直に離れる方向である上方向の頂部近傍から、前記シート部の前記表面に沿いかつ前記配置方向と垂直にシート部の中央に向かう方向である内側方向へ突出する返し部を有してもよい。これにより、医療用ドレープは、バルーンの返し部により、長尺デバイスが頂部を越えて内側方向と反対方向へ移動し、手術台から落下することを効果的に抑制できる。
【0014】
(8) 上記(1)~(7)のいずれか1つに記載の医療用ドレープにおいて、少なくとも1つの前記バルーンは、前記表面から垂直に離れる方向である上方向を向く面に、前記表面上を前記開口部から離れる方向である配置方向へ延びる溝部を有してもよい。これにより、医療用ドレープは、バルーンの溝部に、術部から導出されて配置方向へ長く延びる長尺デバイスを保持して、長尺デバイスの手術台からの落下を抑制できる。
【0015】
(9) 上記(8)に記載の医療用ドレープにおいて、前記溝部の前記底面は、前記シート部の前記表面から高さを有して形成されてもよい。これにより、バルーンの底面に保持された長尺デバイスがシート部の表面から離れて配置されるため、術者は、長尺デバイスを掴みやすい。
【0016】
(10) 上記(8)または(9)に記載の医療用ドレープにおいて、前記溝部を有する前記バルーンの少なくとも1つは、前記溝部の底面に少なくとも1つの凹部を有してもよい。これにより、溝部に収容された長尺デバイスが凹部の位置で凹部の底から離れて配置されるため、術者は、長尺デバイスを掴みやすい。
【0017】
(11) 上記(8)~(10)のいずれか1つに記載の医療用ドレープにおいて、前記溝部を有する前記バルーンの少なくとも1つは、前記溝部を挟む2つの側壁を有し、前記側壁は、高壁部と、前記高壁部よりも前記表面からの高さが低い低壁部と、を有してもよい。これにより、医療用ドレープは、高壁部によって長尺デバイスを溝部に良好に保持しつつ、低壁部によって術者が長尺デバイスを掴みやすくすることができる。
【0018】
(12) 上記(1)~(11)のいずれか1つに記載の医療用ドレープにおいて、前記バルーンの少なくとも1つは、前記表面上を前記開口部から離れる方向へ貫通する貫通孔を形成してもよい。これにより、医療用ドレープは、長尺デバイスをバルーンの貫通孔に通して保持できる。このため、医療用ドレープは、術部から導出されて配置方向へ長く延びる長尺デバイスの落下を効果的に抑制できる。
【0019】
(13) 上記(1)~(12)のいずれか1つに記載の医療用ドレープは、複数の前記バルーンの内部を連通させる連通管を有してもよい。これにより、術者は、連通管によって連通する複数のバルーンを、一度に拡張させることが可能である。また、医療用ドレープは、各バルーンに注入口を配置することが不要となり、低コストで製造できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】第1実施形態に係る医療用ドレープを示す平面図である。
【
図2】第1実施形態に係る医療用ドレープの使用状態を長尺デバイスとともに示す平面図である。
【
図4】第2実施形態に係る医療用ドレープを示す平面図である。
【
図5】第2実施形態に係る医療用ドレープを折り曲げた状態を長尺デバイスとともに示す平面図である。
【
図6】第3実施形態に係る医療用ドレープを長尺デバイスとともに示す断面図である。
【
図7】第4実施形態に係る医療用ドレープを長尺デバイスとともに示す図であり、(A)は側面図、(B)は
図7(A)のB-B線に沿う断面図、(C)は変形例を示す断面図である。
【
図8】第5実施形態に係る医療用ドレープを長尺デバイスとともに示す平面図である。
【
図9】第5実施形態に係る医療用ドレープを長尺デバイスとともに示す図であり、(A)は
図8のC-C線に沿う断面図、(B)は
図8のD-D線に沿う断面図である。
【
図10】第6実施形態に係る医療用ドレープを長尺デバイスとともに示す平面図である。
【
図11】第6実施形態に係る医療用ドレープを長尺デバイスとともに示す図であり、(A)は
図10のE-E線に沿う断面図、(B)は
図10のF-F線に沿う断面図である。
【
図12】第7実施形態に係る医療用ドレープを長尺デバイスとともに示す平面図である。
【
図13】第7実施形態に係る医療用ドレープを長尺デバイスとともに示す図であり、(A)は
図12のG-G線に沿う断面図、(B)は変形例を示す断面図である。
【
図14】医療用ドレープの他の変形例を長尺デバイスとともに示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態を説明する。なお、図面の寸法は、説明の都合上、誇張されて実際の寸法とは異なる場合がある。また、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。本明細書において、手術台110(
図2を参照)の上に寝た患者の頭部方向を前方向、足部方向を後方向、前方向または後方向を前後方向、手術台110の上に患者が仰向けに寝た場合の患者の左方向および右方向をそれぞれ左方向および右方向、左方向または右方向を左右方向と称する。
【0022】
<第1実施形態>
第1実施形態に係る医療用ドレープ10は、手術台110に寝た患者の血管内にカテーテルやガイドワイヤ等の長尺デバイス100を挿入する際に、患者に被せて、医療用ドレープ10の表面21側を清潔域に保持するために使用される。
【0023】
医療用ドレープ10は、
図1~3に示すように、シート部20と、少なくとも1つ(本実施形態では2つ)の開口部30と、少なくとも1つ(本実施形態では複数)のバルーン40とを有している。
【0024】
シート部20は、患者を覆う柔軟なシートである。シート部20は、手術台110に置いた際に上方向Z1を向く表面21と、下方向Z2を向く裏面22とを有する。シート部20は、矩形形状を有し、左方向および右方向の両側に側縁部23が形成される。医療用ドレープ10の使用時において、側縁部23は、手術台110の上面から下方向Z2へ向かって垂れ下がるように配置される。本明細書において、医療用ドレープ10は、医療用ドレープ10を手術台110に置いた際に、シート部20の表面21から垂直に離れる方向を上方向Z1、上方向Z1の反対方向を下方向Z2、シート部20の表面21に沿いかつ左右方向と一致する方向を幅方向Y、幅方向Yのうち側縁部23からシート部20の中央へ向かう方向を内側方向Y1、幅方向Yのうちシート部20の中央から側縁部23へ向かう方向を外側方向Y2と称する。
【0025】
シート部20を形成する材料は、例えば、天然繊維や合成繊維からなる織布や不織布、ポリエチレン等の合成樹脂からなる合成樹脂シート、または紙からなる紙シート等である。また、シート部20は、複数の材料により形成されてもよい。シート部20は、一層で形成されてもよいが、多層で形成されてもよい。シート部20は、全体が透明であっても、一部が透明であっても、全体が不透明であってもよい。
【0026】
開口部30は、患者に長尺デバイス100を挿入する術部を露出させるために、シート部20に表面21から裏面22へ貫通して形成される孔である。医療用ドレープ10における開口部30の位置や形状は、特に限定されず、術部の位置によって適宜設定されてよい。本実施形態では、患者の左橈骨動脈または右橈骨動脈へ長尺デバイス100を挿入できるように、シート部20の前後方向における前方向側の端部および後方向側の端部から等距離の中央部よりも前方向側に、左右方向における左方向側の端部および右方向側の端部から等距離の中央部を挟んで2つの開口部30が形成されている。開口部30の形状は、本実施形態では四角形であるが、円形、三角形、その他の形状であってもよい。
【0027】
シート部20は、表面21に、各々の開口部30から配置方向Xへ向かって並んで配置される複数のバルーン40を有する。複数のバルーン40のうち、最も前方向側に配置されるバルーン40は、開口部30の外側方向Y2側に隣接するように配置される。複数のバルーン40は、所定の間隔を空けつつ、配置方向Xへ向かって直線的に並んでいる。本実施形態において、医療用ドレープ10は、配置方向Xが後方向と略一致するように使用される。各々のバルーン40は、シート部20の表面21から垂直に離れる上方向Z1へ突出するように拡張可能である。また、医療用ドレープ10は、表面21に沿う方向であって配置方向Xと垂直な幅方向Yが、左右方向と一致するように使用される。各々のバルーン40は、可撓性を有するバルーン本体41Aと、バルーン本体41Aの上方向Z1側の面に被覆される被覆部41Bとを有する。バルーン本体41Aは、医療用ドレープ10を廃棄する際に容易に収縮させることができるように、容易に切断できる材料により形成されることが好ましい。バルーン本体41Aを形成する材料は、例えばゴム、熱可塑性エラストマー、またはポリ塩化ビニル等の可撓性を有する樹脂である。被覆部41Bは、長尺デバイス100に対して適切な摩擦力を生じるように、シート部20と同じ材料により形成されることが好ましい。なお、被覆部41Bは、シート部20と異なる材料により形成されてもよい。または、バルーン本体41Aは、被覆部41Bに覆われなくてもよい。
【0028】
各々の開口部30から配置方向Xへ並ぶ複数のバルーン40は、1つのバルーン群50を形成する。本実施形態では、2つのバルーン群50が、左右対称かつ平行にシート部20に配置される。2つのバルーン群50は、最も前方向側に配置されるバルーン40が開口部30の外側方向Y2側に隣接するように配置される。また、2つのバルーン群50は、医療用ドレープ10が患者を覆った際、手術台の上面に位置するように配置されている。これにより、2つのバルーン群50は、長尺デバイス100が外側方向Y2へ移動して、手術台110の上面から落下することを抑制する。
【0029】
各々のバルーン40は、
図3に示すように、配置方向Xと垂直な断面において、上方向Z1の頂部42と、シート部20の表面21から頂部42まで延びシート部20の内側方向Y1に向く内側面43と、頂部42からシート部20の外側方向Y2に向く外側面44と、外側面44に配置される注入口45とを有している。各々のバルーン40は、表面21から上方向Z1に突出している。ただし、各々のバルーン40が突出する方向は、バルーン40の頂部42が表面21から離れる方向であれば、表面21から垂直な方向でなくてもよい。
【0030】
内側面43は、内側方向Y1に向く面であり、配置方向Xと垂直な断面において、外側方向Y2に向かって窪んだ曲面で形成されている。したがって、長尺デバイス100は、内側方向Y1および上方向Z1を含む少なくとも90度以上の可動範囲を備えるように、バルーン40の内側面43とシート部20の交わる箇所付近に保持される。これにより、バルーン40は、長尺デバイス100が外側方向Y2へ移動して手術台110から落下することを抑制しつつ、術者が長尺デバイス100を上方向Z1へ持ち上げたり、患者側である内側方向Y1へ移動させたりする動作を妨げないため、術者の操作性を損なわない。
【0031】
注入口45は、バルーン40の内部と外部とを接続する部分である。注入口45は、手動ポンプやシリンジ等の注入デバイスを接続可能である。注入口45は、バルーン40の内部にバルーン40を拡張させるための流体(例えば空気)の注入を可能としつつ、バルーン40内部から外部への流体の排出を防止する逆止弁を有する。注入口45は、手技の際に術者の立ち位置に近いバルーン40の外側面44に配置されるため、術者が操作しやすい。
【0032】
次に、第1本実施形態に係る医療用ドレープ10の使用方法について説明する。
【0033】
術者は、
図2に示すように、手術台110に仰向けに寝ている患者の左手および/または右手の術部(長尺デバイスを橈骨動脈へ挿入可能な部位)が露出するように開口部30を位置決めして、医療用ドレープ10を患者に被せる。これにより、2つのバルーン群50は、患者を挟んで患者の左右方向に配置される。2つのバルーン群50は、手術台110の左右方向の縁部近辺に配置される。
【0034】
術者は、各々のバルーン40の注入口45に手動ポンプやシリンジ等を接続して空気等の流体をバルーン40の内部に注入し、バルーン40を拡張させる。注入口45は、逆止弁を有するため、バルーン40が拡張した状態を維持できる。術者は、目的に応じて、必要なバルーン40のみを拡張させてもよい。
【0035】
術者は、2つのバルーン群50の間で、長尺デバイス100の術部への挿入や抜去、回転等の操作を行う。各々のバルーン群50の複数のバルーン40は、開口部30の外側方向Y2側の位置から配置方向Xへ向かって並んで配置されているため、術部から患者の体外に導出されて配置方向X(後方向)へ延びる長尺デバイス100の外側方向Y2側を保持できる。これにより、医療用ドレープ10は、2つのバルーン群50により、長尺デバイス100が手術台110から落下することを抑制できるため、長尺デバイス100の交換を防止できる。さらに、医療用ドレープ10は、長尺デバイス100の後端側を保持する補助者やガーゼ等の補助具を必要とせずに長尺デバイス100の落下を防止できるため、手技に必要な人手を削減でき、かつ廃棄物を削減できる。
【0036】
術者は、手術の完了後に、バルーン40をハサミ等で切断してバルーン40から空気を抜く。これにより、本実施形態に係る医療用ドレープ10は、バルーンを備えない医療用ドレープとほぼ同量の廃棄量で廃棄できる。
【0037】
以上のように、第1実施形態に係る医療用ドレープ10は、患者の血管内に長尺デバイス100を挿入する際に用いる医療用ドレープ10であって、表面21および裏面22を有するシート部20と、シート部20の表面21から裏面22へ貫通する少なくとも1つの開口部30と、シート部20に配置されて当該シート部20の表面21から突出するように拡張可能な少なくとも1つのバルーン40と、を有する。これにより、医療用ドレープ10は、表面21から突出するバルーン40により長尺デバイス100の手術台110からの落下を抑制できる。また、医療用ドレープ10は、バルーン40が術者による長尺デバイス100の操作を妨げにくいため、長尺デバイス100の操作性を維持できる。
【0038】
また、本医療用ドレープ10において、バルーン40は、複数あり、バルーン40の少なくとも2つは、表面21上を開口部30から離れる方向である配置方向Xに沿って間隔を空けて並んで配置される。これにより、医療用ドレープ10は、複数のバルーン40により、術部から患者の体外に導出されて配置方向Xへ延びる長尺デバイス100の手術台110からの落下を効果的に抑制できる。また、複数のバルーン40が間隔を空けて並んでいるため、術者は、隣接するバルーン40の間から長尺デバイス100を容易に掴むことができる。
【0039】
また、バルーン40は、表面21上を開口部30から離れる方向である配置方向Xと垂直な断面において、表面21から垂直に離れる方向である上方向Z1の頂部42と、シート部20の表面21から頂部42まで延び、シート部20の表面21に沿いかつ配置方向Xと垂直にシート部20の中央へ向かう方向である内側方向Y1に向く内側面43を有し、内側面43は、内側方向Y1と反対方向(外側方向Y2)に向かって窪む曲面を有する。これにより、医療用ドレープ10は、バルーン40により、長尺デバイス100が外側方向Y2へ移動して落下することを抑制できる。また、医療用ドレープ10は、術者が長尺デバイス100を上方向Z1へ持ち上げたり、患者側である内側方向Y1へ移動させたりする動作を妨げにくいため、術者による長尺デバイス10の操作性を向上できる。
【0040】
また、バルーン40は、表面21上を開口部30から離れる方向である配置方向Xと垂直な断面において、シート部20の表面21からバルーン40の頂部42まで延び、シート部20の表面21に沿いかつ配置方向Xと垂直な方向にシート部20の中央から離れる方向である外側方向Y2に、バルーン40の拡張用の流体を注入する注入口45を有する。これにより、注入口45は、手術の際に術者が操作しやすい位置に配置されて、作業性を向上できる。
【0041】
<第2実施形態>
第2実施形態に係る医療用ドレープ10は、容易に折り曲げて使用できる点でのみ第1実施形態と異なる。
【0042】
シート部20は、
図4に示すように、各々のバルーン群50の複数のバルーン40が並ぶ方向を曲げることができるように、折り曲げ可能な位置を示す折り曲げ位置表示部24を有している。折り曲げ位置表示部24は、山折り可能な位置を表示する山折り位置表示部25と、谷折り可能な位置を表示する谷折り位置表示部26とを有する。一例として、シート部20は、開口部30よりも配置方向X側であってバルーン群50の途中に、幅方向Yへ延びる直線で表示された1つの山折り位置表示部25と、山折り位置表示部25に対して少しずつ異なる角度で傾斜した直線で表示された複数の谷折り位置表示部26とが形成される。山折り位置表示部25および谷折り位置表示部26は、シート部20の幅方向Yの一側端にて重なるが、必ずしも重ならなくてもよい。山折り位置表示部25および谷折り位置表示部26は、術者が容易に識別できるように、色違いの線や、実線と破線等の異なる形態の線で表示されてもよい。山折り位置表示部25および谷折り位置表示部26は、曲線で表示されてもよい。また、山折り位置表示部25および谷折り位置表示部26は、山折り可能な位置および谷折り可能な位置が、シート部20の両側の側縁部23のそれぞれに設けられた印で表示されてもよい。山折り位置表示部25および谷折り位置表示部26は、直線や印に加えて、山折り位置、谷折り位置、角度等の文字による説明が表示されてもよい。なお、本実施形態では、山折り位置表示部25が1つあり、谷折り位置表示部26が複数あるが、山折り位置表示部25が1つあって谷折り位置表示部26が1つあってもよく、山折り位置表示部25が複数あって谷折り位置表示部26が1つあってもよく、または山折り位置表示部25が複数あって谷折り位置表示部26が複数あってもよい。折り曲げ位置表示部24は、折り曲げを妨げられないように、バルーン40と重ならない位置に配置されることが好ましい。また、折り曲げ位置表示部24を折り曲げた際に表面21同士が重なる位置の表面21には、バルーン40が配置されなくてもよい。
【0043】
次に、第2本実施形態に係る医療用ドレープ10の使用方法について説明する。
【0044】
術者は、手術台110に仰向けに寝ている患者の左手および/または右手の術部が露出するように開口部30を位置決めして、医療用ドレープ10を患者に被せる。次に、術者は、目的に応じて、バルーン群50が所望の角度で曲がるように、山折り位置表示部25および谷折り位置表示部26を選択してシート部20を折り曲げる。次に、術者は、必要なバルーン40の注入口45から空気を注入し、
図5に示すように、バルーン40を拡張させる。このとき、バルーン40が個別に拡張可能であるため、術者は、シート部20が重なる位置に配置されるバルーン40は拡張せず、長尺デバイス100の保持に必要なバルーン40のみを選択して拡張することができる。これにより、医療用ドレープ10は、所望の角度で曲がる各々のバルーン群50により、長尺デバイス100を手術台110から落下しないように適切に保持できる。
【0045】
以上のように、第2実施形態に係る医療用ドレープ10において、シート部20は、表面21に沿って開口部30から離れる方向であってバルーン40が配置される配置方向X側の表面21に、表面21を山折り可能とする位置を表示する山折り位置表示部25と、表面21を谷折り可能とする位置を表示する谷折り位置表示部26と、を有する。これにより、医療用ドレープ10は、山折り位置表示部25および谷折り位置表示部26で折り曲げられることで、開口部30よりも配置方向X側においてバルーン40の延びる方向を変更できる。このため、医療用ドレープ10は、手技や長尺デバイス100の種類、手術室の配置等に応じて、長尺デバイス100が基端側へ延びる方向を変更できる。
【0046】
<第3実施形態>
第3実施形態に係る医療用ドレープ10は、バルーン40の頂部42の近傍の形状のみが、第1実施形態と異なる。
【0047】
第3実施形態における各々のバルーン40は、
図6に示すように、頂部42の近傍に内側方向Y1へ突出する返し部46を有する。返し部46は、内部に流体が流入可能であるが、内部に流体が流入不可能に形成されてもよい。
【0048】
以上のように、第3実施形態に係る医療用ドレープ10において、バルーン40は、表面21上を開口部30から離れる方向である配置方向Xと垂直な断面において、表面21から垂直に離れる方向である上方向Z1の頂部42近傍から、シート部20の表面21に沿いかつ配置方向Xと垂直にシート部20の中央へ向かう方向である内側方向Y1へ突出する返し部46を有している。これにより、医療用ドレープ10は、バルーン40の返し部46により、長尺デバイス100が頂部42を越えて内側方向Y1と反対方向へ移動し、手術台110から落下することを効果的に抑制できる。
【0049】
なお、返し部46は、複数のバルーン40のうちの一部のみに形成されてもよい。したがって、医療用ドレープ10は、返し部46を有するバルーン40と、他の実施形態のバルーン40とを有してもよい。医療用ドレープ10は、返し部46を有するバルーン40の近傍において、長尺デバイス100の手術台110からの落下を効果的に抑制できる。
【0050】
<第4実施形態>
第4実施形態に係る医療用ドレープ10は、
図7(A)および(B)に示すように、バルーン40が長尺デバイス100を保持する位置が、シート部20の表面21から上方向Z1へ離れている点で、第1実施形態と異なる。
【0051】
第4実施形態における各々のバルーン40は、上方向Z1を向く面に上方向Z1へ開く溝部47を有している。溝部47は、各々のバルーン40の前端面から後端面まで配置方向Xに沿って溝状に形成される。シート部20の表面21に最も近い溝部47の底面48は、表面21から所定の高さHに形成される。配置方向Xへ並ぶ複数のバルーン40の各々の高さHは、等しいが、異なってもよい。なお、
図7(C)に示す変形例のように、底面48がシート部20の表面21と同じ高さとなるようにバルーン40を形成することも可能である。
【0052】
第4実施形態に係る医療用ドレープ10を使用する際には、術者は、
図7(A)および(B)に示すように、開口部30から配置方向Xへ延びる長尺デバイス100を、各々のバルーン40の溝部47に配置できる。溝部47に配置された長尺デバイス100は、間隔を空けて並ぶ複数のバルーン40の、シート部20の表面21から所定の高さHの位置で保持される。このため、術者は、隣接するバルーン40同士の間でシート部20の表面21から離れて配置される長尺デバイス100を容易に掴むことができる。
【0053】
なお、溝部47は、複数のバルーン40のうちの一部のみに形成されてもよい。したがって、医療用ドレープ10は、溝部47を有するバルーン40と、他の実施形態のバルーン40とを有してもよい。
【0054】
以上のように、第4実施形態に係る医療用ドレープ10において、少なくとも1つのバルーン40は、表面21から垂直に離れる方向である上方向Z1を向く面に、表面21上を開口部30から離れる方向である配置方向Xへ延びる溝部47を有している。これにより、医療用ドレープ10は、バルーン40の溝部47に、術部から導出されて配置方向Xへ長く延びる長尺デバイス100を保持して、長尺デバイス100の手術台110からの落下を抑制できる。
【0055】
また、溝部47の底面48は、シート部20の表面21から高さHを有して形成されている。これにより、バルーン40の底面48に保持された長尺デバイス100がシート部20の表面21から離れて配置されるため、術者は、長尺デバイス100を掴みやすい。
【0056】
<第5実施形態>
第5実施形態に係る医療用ドレープ10は、
図8~9に示すように、配置方向Xへ延びる2つの長尺なバルーン40を有する点で、第1実施形態と異なる。
【0057】
第5実施形態において、各々の開口部30からシート部20の表面21に沿って、配置方向Xへ延びる長尺なバルーン40が形成される。長尺なバルーン40は、配置方向Xの長さが幅方向Yの幅よりも長く形成される。なお、シート部20の表面21に設けられるバルーン40の数は、1つのみであってもよく、3つ以上であってもよい。
【0058】
各々のバルーン40は、上方向Z1を向く面に上方向Z1へ開く溝部47を有している。溝部47は、各々のバルーン40の前端面から後端面まで配置方向Xに沿って溝状に形成される。溝部47には、上方向Z1へ開く少なくとも1つ(本実施形態では複数)の凹部49が、上方向Z1へ間隔を空けて形成されている。
【0059】
第5実施形態に係る医療用ドレープ10を使用する際には、術者は、開口部30から配置方向Xへ延びる長尺デバイス100を、開口部30の配置方向X側に位置するバルーン40の溝部47に配置できる。長尺デバイス100は、溝部47に保持された状態において、凹部49の底から離れている。このため、術者は、溝部47に配置された長尺デバイス100を、凹部49を利用して容易に掴むことができる。
【0060】
以上のように、第5実施形態に係る医療用ドレープ10において、バルーン40の少なくとも1つは、表面21上を開口部30から離れる方向である配置方向Xへ長尺に形成される。これにより、医療用ドレープ10は、長尺なバルーン40により、術部から導出されて配置方向Xへ長く延びる長尺デバイス10の手術台110からの落下を効果的に抑制できる。
【0061】
また、第5実施形態に係る医療用ドレープ10において、溝部47を有するバルーン40の少なくとも1つは、溝部47の底面48に少なくとも1つの凹部49を有する。これにより、溝部47に収容された長尺デバイス100が凹部49の位置で凹部49の底から離れて配置されるため、術者は、長尺デバイス100を掴みやすい。
【0062】
<第6実施形態>
第6実施形態に係る医療用ドレープ10は、
図10~11に示すように、配置方向Xへ延びる2つの長尺なバルーン40の高さが、配置方向Xの位置によって変化する点で、第5実施形態と異なる。
【0063】
第6実施形態において、各々の開口部30からシート部20の表面21に沿って、配置方向Xへ延びる1つの長尺な溝部47が形成されている。各々のバルーン40は、配置方向Xを向く面に上方向Z1へ開く溝部47を有している。溝部47は、各々のバルーン40の前端面から後端面まで、2つの側壁60に挟まれて溝状に形成される。溝部47の底面48の高さHは、配置方向Xに沿って略一定である。2つの側壁60には、表面21からの上方向への高さH1が高い高壁部61と、高壁部61よりも高さH2が低い低壁部62とが、配置方向Xへ交互に配置されている。なお、高壁部61および低壁部62の各々の数は、1つであっても複数であってもよい。表面21から上方向Z1への低壁部62の高さH2は、溝部47の底面48の高さHよりも高いが、溝部47の底面48の高さH以下であってもよい。高壁部61は、長尺デバイス100を溝部47に良好に保持することができる。低壁部62は、術者が長尺デバイス100を掴みやすくすることができる。
【0064】
各々のバルーン40の低壁部62は、手技の際に術者の立ち位置に近い側の側壁60に設けられることが好ましい。低壁部62が各々のバルーン40の溝部47を挟んで対面する2つの側壁60に設けられる場合には、低壁部62は、溝部47を挟んで対面する位置に設けられることが好ましい。一致することが好ましい。これにより、術者は、長尺デバイス100を掴みやすくなる。
【0065】
第6実施形態に係る医療用ドレープ10を使用する際には、術者は、開口部30から配置方向Xへ延びる長尺デバイス100を、開口部30の配置方向Xに位置するバルーン40の溝部47に配置できる。医療用ドレープ10は、バルーン40に高壁部61が形成されることで、長尺デバイス100がバルーン40の溝部47から移動して手術台110から落下することを抑制できる。また、術者は、バルーン40の側壁60に設けられた低壁部62の位置で、長尺デバイス100を容易に掴むことができる。
【0066】
第6実施形態に係る医療用ドレープ10において、溝部47を有するバルーン40の少なくとも1つは、溝部47を挟む2つの側壁60を有し、側壁60は、高壁部61と、高壁部61よりも表面21からの高さが低い低壁部62と、を有する。これにより、医療用ドレープ10は、高壁部61によって長尺デバイス100を溝部47に良好に保持しつつ、低壁部62によって術者が長尺デバイス100を掴みやすくすることができる。
【0067】
<第7実施形態>
第7実施形態に係る医療用ドレープ10は、
図12および13(A)に示すように、各々のバルーン40が筒状に形成される点で、第1実施形態と異なる。
【0068】
第7実施形態に係る医療用ドレープ10では、各々の開口部30からシート部20の表面21に沿って、複数のバルーン40が並んで配置される。各々のバルーン40は、配置方向Xへ貫通する貫通孔70が形成される。貫通孔70は、円弧形状のバルーン40とシート部20の表面21との間に形成され、配置方向Xと垂直な断面において、半円形状である。バルーン40は、円弧形状の両端がシート部20に固定されている。なお、バルーン40の形状は、貫通孔70を形成できるのであれば、配置方向Xと垂直な断面において円弧形状でなくてもよく、例えば配置方向Xと垂直な断面において多角形状であってもよい。この場合、貫通孔70の形状は、角柱形状(三角柱形状や四角柱形状等)とすることもできる。
【0069】
第7実施形態に係る医療用ドレープ10を使用する際には、術者は、開口部30から配置方向Xへ延びる長尺デバイス100を、開口部30の配置方向Xに位置する各々のバルーン40の貫通孔70に通して配置できる。長尺デバイス100は、バルーン40およびシート部20により囲まれるため、手術台110からの落下が抑制される。
【0070】
以上のように、第7実施形態に係る医療用ドレープ10において、バルーン40の少なくとも1つは、表面21上を開口部30から離れる方向へ貫通する貫通孔70を形成する。これにより、医療用ドレープ10は、長尺デバイス100をバルーン40の貫通孔70に通して保持できる。このため、医療用ドレープ10は、長尺デバイス100は、術部から導出されて配置方向Xへ長く延びる長尺デバイス100の落下を効果的に抑制できる。
【0071】
なお、
図13(B)に示す第7実施形態の変形例のように、バルーン40は、弧形状の外側方向Y2の一端のみが、シート部20に固定されてもよい。術者は、貫通孔70を広げるようにバルーン40を変形させることで、貫通孔70に長尺デバイス100を容易に収容できる。バルーン40は、変形させても、自己の復元力により元の形状に戻ることができるため、長尺デバイス100を貫通孔70に容易に収容かつ保持できる。
【0072】
なお、本発明は、上述した実施形態のみに限定されるものではなく、本発明の技術的思想内において当業者により種々変更が可能である。例えば、
図14に示す変形例のように、医療用ドレープ10は、複数のバルーン40の内部を連通させる連通管80を有してもよい。これにより、術者は、連通管80によって連通する複数のバルーン40を、一度に拡張させることが可能である。また、医療用ドレープ10は、各バルーン40に注入口45を配置することが不要となり、低コストで製造できる。
【0073】
また、上述した各々の実施形態において、表面21上をバルーン40が延びる方向は、配置方向Xへ向かって湾曲してもよい。また、上述した各々の実施形態の構成は、適宜組み合せられてもよい。
【符号の説明】
【0074】
10 医療用ドレープ
20 シート部
21 表面
22 裏面
23 側縁部
24 折り曲げ位置表示部
25 山折り位置表示部
26 谷折り位置表示部
30 開口部
40 バルーン
42 頂部
43 内側面
44 外側面
45 注入口
46 返し部
47 溝部
48 底面
49 凹部
50 バルーン群
60 側壁
61 高壁部
62 低壁部
70 貫通孔
80 連通管
100 長尺デバイス
X 配置方向
Y 幅方向
Y1 内側方向
Y2 外側方向
Z1 上方向
Z2 下方向