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特開2024-170980靴シミュレーション装置、靴シミュレーション方法、およびプログラム
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  • 特開-靴シミュレーション装置、靴シミュレーション方法、およびプログラム 図1
  • 特開-靴シミュレーション装置、靴シミュレーション方法、およびプログラム 図2
  • 特開-靴シミュレーション装置、靴シミュレーション方法、およびプログラム 図3
  • 特開-靴シミュレーション装置、靴シミュレーション方法、およびプログラム 図4
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024170980
(43)【公開日】2024-12-11
(54)【発明の名称】靴シミュレーション装置、靴シミュレーション方法、およびプログラム
(51)【国際特許分類】
   A43D 1/02 20060101AFI20241204BHJP
   G06Q 50/10 20120101ALI20241204BHJP
【FI】
A43D1/02
G06Q50/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023087785
(22)【出願日】2023-05-29
(71)【出願人】
【識別番号】308036402
【氏名又は名称】株式会社JVCケンウッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000121
【氏名又は名称】IAT弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】安藤 結衣
(72)【発明者】
【氏名】小林 朋央
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 博幸
(72)【発明者】
【氏名】桑原 悠
(72)【発明者】
【氏名】藤井 俊一
【テーマコード(参考)】
4F050
5L049
5L050
【Fターム(参考)】
4F050NA88
5L049CC11
5L050CC11
(57)【要約】
【課題】靴を履かなくても、医療データや靴のデータを活用し、靴が足に問題がないかを判定する靴シミュレーション装置を提供する。
【解決手段】靴シミュレーション装置1は、ユーザの足の3次元データを取得する足データ取得部41と、ユーザの足の医療データを取得する医療データ取得部42と、靴の3次元データを取得する靴データ取得部43と、靴を履くときの足の変形度を算定するシミュレーション部44と、変形度が所定のしきい値以上か否かでユーザの足に痛みが出る可能性が高いか否かを判定する判定部45と、を備えることを特徴とする。
【選択図】図2

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユーザの足の3次元データを取得する足データ取得部と、
前記ユーザの足の医療データを取得する医療データ取得部と、
靴の3次元データを取得する靴データ取得部と、
前記靴を履くときの足の変形度を算定するシミュレーション部と、
前記変形度が所定のしきい値以上か否かで前記ユーザの足に痛みが出る可能性が高いか否かを判定する判定部と、
を備えることを特徴とする靴シミュレーション装置。
【請求項2】
請求項1に記載の靴シミュレーション装置であって、
前記シミュレーション部は、靴を装着して動作するときの足の前記変形度を算定する
ことを特徴とする靴シミュレーション装置。
【請求項3】
請求項1に記載の靴シミュレーション装置であって、
前記足データ取得部は、前記足の3次元データを取得した時に前記足の関節の構造を推定する
ことを特徴とする靴シミュレーション装置。
【請求項4】
請求項1から3のいずれかに記載の靴シミュレーション装置であって、
前記しきい値は前記足の部位ごとに異なっており、前記部位には少なくともボール部が含まれ、前記ボール部については横幅よりも縦幅の前記しきい値が小さいこと
を特徴とする靴シミュレーション装置。
【請求項5】
ユーザの足の3次元データを取得する3次元データ取得ステップと、
前記ユーザの足の医療データを取得する医療データ取得ステップと、
靴の3次元データを取得する靴データ取得ステップと、
前記靴を履くときの足の変形度を算定するシミュレーションステップと、
前記変形度が所定のしきい値以上か否かで前記ユーザの足に痛みが出る可能性が高いか否かを判定する判定ステップと、
を含むことを特徴とする靴シミュレーション方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、靴シミュレーション装置、靴シミュレーション方法、およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1のように、インターネットを介した既製の靴の仮試着方法に関する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2017-97563号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来、インターネットや電話回線を利用した、靴の通信販売が行われている。靴は、足を靴の内側に密着させ、ある程度足を変形させて履くものであるため、既製の靴を購入する場合、サイズを確認して購入しても、実際に履いてみると、満足する履き心地が得られない場合がある。そして、購入した靴がフィットしない場合、ユーザ(購入者)は、配送された商品を出店者に返送し、出店者は同商品の他のサイズのものを再送したり、ユーザが希望する他の商品を再送したりすることになり、時間、手間、コストを要する。あるいは、ユーザがフィットしない靴を、我慢して履くことになる場合もあった。
【0005】
上述した特許文献1の仮想試着の技術は、靴のサイズと足のサイズの差が所定の範囲内か否かを判定することにより、当たりの強さを演算する。この技術を用いることにより、ユーザは、選択した既製の靴の自分の足に対する当たりの強さ(フィット感)を知ることができる。
【0006】
しかしながら、当該所定の範囲内であっても人によっては、満足する履き心地が得られない場合がある。例えば、外反母趾などの足の不調や異常を有するユーザにとっては、健康なユーザに比べ、靴のサイズと足のサイズの差が小さい方が好ましい。足を変形させて靴を履くことにより、病状を悪化させたり、健康な人に比べ痛みが出やすかったりするからである。上述した特許文献1には、靴がユーザの足に合っているかを、ユーザが有している異常を考慮して判定することは開示されていない。
【0007】
本発明は、かかる問題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、靴を履かなくても、医療データを活用し、靴が足にあっているか判定できる靴シミュレーション装置、靴シミュレーション方法、およびプログラムを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一側面の靴シミュレーション装置は、ユーザの足の3次元データを取得する足データ取得部と、ユーザの足の医療データを取得する医療データ取得部と、靴の3次元データを取得する靴データ取得部と、靴を履くときの足の変形度を算定するシミュレーション部と、変形度が所定のしきい値以上か否かで前記ユーザの足に痛みが出る可能性が高いか否かを判定する判定部と、を備えることを特徴とする。
【0009】
本発明の一側面のプログラムは、入出力装置と情報を授受可能なコンピュータが実行可能なプログラムにおいて、足の3次元データを取得する3次元データ取得ステップと、3次元データに医療データを取得する医療データ取得ステップと、靴の3次元データを取得する靴データ取得ステップと、靴を履くときの足の変形度を算定するシミュレーションステップと、変形度が所定のしきい値以上か否かでユーザの足に痛みが出る可能性が高いか否かを判定する判定ステップと、を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、その目的とするところは、靴を履かなくても、医療データや靴のデータを活用し、靴が足に問題がないかを判定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、靴シミュレーション装置1の構成および利用例を示す図である。
図2図2は、靴シミュレーション装置1の内部構成の一例を示す図である。
図3図3は、靴シミュレーション装置1の処理の流れを示すフローチャートである。
図4図4は、靴および足の部位の寸法を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
[一実施の形態]
図1は、靴シミュレーション装置1の外観構成および利用例を示す図である。
【0013】
ユーザWは、靴の着用者であり、選択した靴がユーザWの足に合うか否かを、当該靴を履かずに靴シミュレーション装置1を用いて確認することができる。
【0014】
靴シミュレーション装置1は、図1の例においては、ユーザWの足が収まるような台Aを備えた装置である。
【0015】
靴シミュレーション装置1には、撮影部2が設けられており、撮影部2は、台AにユーザWの足が乗せられた状態で、台A上の足を撮影する。その後靴シミュレーション装置1は、シミュレーションを行い、後述する表示部3に、シミュレーションの結果が表示される。
【0016】
なお、図1に示す靴シミュレーション装置1の外観は一例であり、靴シミュレーション装置1の構造は多様に考えられる。
【0017】
靴シミュレーション装置1は、ユーザWの足の3次元データを作成し、ユーザWが選択した靴の3次元データと比較して、靴を履いた場合にどれくらい足が変形するかを示す変形度を算出する。また、ユーザの足における外反母趾などの異常の有無や病気の種類(異常の種類)を考慮し、許容できる変形度である許容度を設定する。そして、算出した変形度と許容度に基づいて、ユーザWが靴を履くことなく、選択した靴がユーザWに合っているか否かを判定し、その結果を表示する。
【0018】
[靴シミュレーション装置1の内部構成]
図2は、靴シミュレーション装置1の内部構成を示すブロック図である。靴シミュレーション装置1は、撮影部2、表示部3、制御部4、記憶部5、入力部6を含んで構成されている。
【0019】
撮影部2は、例えばビデオカメラであり、制御部4の制御により動作し、撮影映像を制御部4に供給する。
【0020】
表示部3は、例えば液晶や有機EL(Electro Luminescence)表示装置などであり、制御部4による制御に基づいて、各種情報を表示する。表示部3は、靴シミュレーション装置1とは別に配置されてもよく、靴シミュレーション装置1は、表示部3からの情報をBluetooth(登録商標)やWi-Fi(登録商標)、インターネット等を介した無線通信または有線通信で取得することもできる。つまり、例えば、表示部3は、靴シミュレーション装置1と分離されない液晶パネルでもよいし、ユーザが有するパーソナルコンピュータ、携帯電話、携帯情報端末の液晶などでもよい。
【0021】
制御部4は、例えばMCU(Micro Controller Unit)である。制御部4は、記憶部5に記憶された図示せぬアプリケーションプログラムを実行することで、靴シミュレーション装置1全体を制御するとともに、足データ取得部41、医療データ取得部42、靴データ取得部43、シミュレーション部44、および判定部45として機能する。
【0022】
足データ取得部41は、撮影部2で撮影された映像データに基づいて、ユーザの足の3次元データを取得する。3次元データを取得するに際して、例えば、既存のソフトウェアが用いられる。例えば、合焦法や共焦点法などの光学的な手法を用いて3次元データを取得してもよい。足の3次元データには、後述するように、指先部、ボール部縦幅、ボール部横幅、踵幅などの複数箇所の寸法情報が含まれている。また、足データ取得部41は、足の関節の構造を推定することができる。
【0023】
医療データ取得部42は、足データ取得部41が取得した足の3次元データに、記憶部5に記憶されている医療データを付加する。
【0024】
靴データ取得部43は、記憶部5に記憶されている靴の3次元データを取得する。
【0025】
シミュレーション部44は、足データ取得部が取得した足の3次元データおよび靴データ取得部が取得した靴の3次元データに基づいて、ユーザが靴を履いたときや、動作時の足の変形度を算定する。変形度とは、靴を履く前と比較して、靴を履いた後にどれくらい足が変形するかを示す値である。
【0026】
判定部45は、シミュレーション部44が算定した変形度と医療データ取得部42が取得した医療データに基づいて、ユーザの足に痛みが出るか否かを判定するなどし、ユーザの足に対する靴を評価する。
【0027】
記憶部5は、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、不揮発メモリを有する。記憶部5は、上述した制御用アプリケーションプログラムと、その実行のために必要な、医療データや靴データ含む各種データや、これらの処理により生成された情報を記憶する。
【0028】
入力部6は、例えばボタン、タッチパネル(いずれも図示せず)などを有し、それらを介して選択する靴の情報の入力を受け付け、制御部4に供給する。
【0029】
[シミュレーション処理]
次に、靴シミュレーション装置1のシミュレーション処理について説明する。はじめに、図3のフローチャートを参照して処理の流れを説明する。具体例は後述する。
【0030】
図1に示すようにユーザWが足を靴シミュレーション装置1の台Aに置き、ユーザWが入力部6を操作し、処理の開始を選択する。これにより、ステップS1において、撮影部2は、ユーザの足の撮影を開始し、ステップS2において、足データ取得部41は、撮影部2で撮影された画像データに基づいて、被計測者であるユーザの足の3次元データを取得する。
【0031】
ステップS3において、ユーザによりシミュレーションをする靴が選択されたか否かを判定し、選択された場合はステップS4に進み、選択されない場合は、ステップS4を繰り返す。靴の選択は、例えば、ユーザが表示部3に表示された複数の靴の中から希望の靴を、入力部6を介して選択することにより行われる。
【0032】
ステップS4において、判定部45は、ユーザがシミュレーションする靴のサイズを選択したか否かを判定し、選択したと判定された場合、ステップS5に進み、選択されていないと判定された場合、ステップS4の判定を繰り返す。
【0033】
ユーザは、シミュレーションする靴のサイズを、入力部6を介して選択する。この場合、サイズとして、少なくとも「足長(例えば、23cmや23.5cmなどの寸法)」を選択する。また、その靴に複数の横幅(例えば、「E」や「EE」など)の設定が有れば、横幅サイズも選択することができる。さらに、ヒールの高さなども複数の設定が有れば、高さサイズも選択する。なお、これらの靴のサイズの選択は、ユーザの足3次元データに基づいて、最適のサイズを自動的に選択してもよい。
【0034】
ステップS5において、靴データ取得部43は、記憶部5から選択された靴の3次元データを取得する。
【0035】
ステップS6において、シミュレーション部44は、足の3次元データ(外寸データ)と靴の3次元データ(内寸データ)を比較して、変形度を求める。変形度とは、靴を履く前と比較して、靴を履いた後にどれくらい足が変形するかを示す値である。具体的には、図4に示すように、指先部La、ボール部縦幅Lb、ボール部横幅Lc、踵幅Leを含む複数箇所について、各足3次元データの値から、靴3次元データの値を差し引いて、寸法差を求める。ここで、ボール部Bとは、拇趾と第5趾の付け根の関節の位置とその周辺をいい、ボール部縦幅Lbとは、ボール部の高さをいい、ボール部横幅Lcとは、ボール部の足幅方向の長さをいう。図4は、靴および足の部位の寸法を説明するための図であり、図4A1は床に置かれた靴を上からみた図であり、図4A2は、床を踏んでいる足を上からみた図であり、図4B1は床に置かれた靴を横からみた図であり、図4B2は、床を踏んでいる足を横からみた図である。
【0036】
そして、各寸法差を各足3次元データの値で割ることで変形度を求めることができる。例えば、ユーザのボール部横幅Lcが10cmで、対応する靴の内寸が8cmである場合、下記のように求めることができる。
寸法差:10cm-8cm=2cm
変形度:2cm/10cm=20%
【0037】
なお、足3次元データの値より、靴3次元データの値の方が大きい場合は、寸法差はマイナスとなり、変形度はマイナスの値で求められる。
【0038】
ステップS7において、シミュレーション部44は、足の3次元データと靴の3次元データの寸法差の許容度を記憶部5から読み出す。
【0039】
許容度とは、足の部位ごとに設定される足の痛みが生じない最大の変形度を示す所定のしきい値である。例えば、許容度は、変形度が大きくても(足が大きく変形しても)痛みが出にくい足の部位については、大きく設定され、変形度が小さくても(わずかな変形でも)痛みが出やすい部位については、小さく設定される。すなわちフィット感に影響を与えやすい部位については、許容度が小さく設定される。記憶部5には、健康的な足に対する許容度がデフォルトで設定されており、例えば指先は10%、ボール部縦幅は5%、ボール部横幅7%、踵幅10%と設定されている。
【0040】
なお、ボール部Bの許容度を最も小さくすること、ボール部横幅Lcよりもボール部縦幅Lbの許容度を小さくすることが好ましい。足のフィット感に関しては、ボール部Bが重要であり、横方向Lcよりも縦方向Lbの変形の方がフィット感に影響することが知られているからである。
【0041】
次に、ステップS8において、医療データ取得部42は、記憶部に登録されているユーザごとの医療データを取得する。例えば、ユーザは、入力部6を介して、ユーザが罹患している足の異常や一方健康であるなど医療データを入力し、当該データは記憶部に登録される。足の異常には、例えば、外反母趾、骨折による奇形などが該当する。
【0042】
ステップS9において、判定部45は、医療データ取得部42が取得した医療データに基づいて、ユーザの足に異常があるか否かを判定し、異常があると判定された場合は、ステップS10において、異常の種類を特定し、ステップS11に進む。異常の種類の一例として、例えば、外反母趾や奇形が挙げられる。
【0043】
ステップS11において、シミュレーション部44は、特定された異常の種類ごとに各部位の許容度を変更し、ステップS11に進む。例えば、ユーザの足が外反母趾である場合、指先の許容度を10%から7%に減らす。技術背景でも述べた通り、靴は、足を靴の内側に密着させ、ある程度足を変形させて履くものであるが、健康なユーザに比べ、足の異常を有しているユーザにとって、足の変形は好ましいものでないことが多い。変形により、病状を悪化させたり、健康な人に比べ痛みが出やすかったりするからである。また、足の部位ごとに悪影響が懸念される可能性は異なり、例えば外反母趾の場合は、指先の変形が足に悪影響をあたえると考えられるため、指先の許容度を厳しく(小さく)設定することが好ましい。その後、ステップS12に進む。
【0044】
一方、ステップS9において、異常がないと判定された場合は、許容度が変更されることなくステップS12に進む。ある程度、許容度が高い方が、ユーザの靴の選択の余地を確保することができるからである。
【0045】
ステップS12において、判定部45は、ユーザの足の各部位に対応して靴の評価をする。具体的には、判定部45は、変形度が所定のしきい値以上か否かでユーザの足に痛みが出る可能性が高いか否かを判定する。つまり、変形度が許容度より小さい場合に、痛みがでる可能性が低いと判定し、変形度が許容度の大きい場合に、痛みがでる可能性が高いと判定する。また、変形度と許容度の差に応じて、痛みが出る可能性を段階的に判定することもできる。なお、痛みが出る可能性が高いことを「きつい」と表現することもできる。
【0046】
そして、ステップS13では、シミュレーション部44は、評価結果を表示部3に表示する。表示方法については、後述する。
【0047】
その後処理は終了する。なお、ユーザは、評価結果の表示に基づいて、その靴の購入手続きを行ったり、他のサイズを選択して、シミュレーションを再度行ったりすることができる。
【0048】
(足の3次元データ)
上述では、足の3次元データが静止画像であることを想定しているが、足の3次元データは動画でもよい。撮影部2は、ユーザの足の動画の撮影を開始し、足データ取得部41は、撮影部2で撮影された映像データに基づいて、所定の単位ごとに被計測者の足の3次元データを取得する。所定の単位とは時間単位であり、0.1ミリ秒ごとなど撮影間隔、30fpsなどのフレームレートで設定される。また、足データ取得部41は、時間単位ごとに、撮影された映像に基づいて足の3次元データを取得するだけでなく、撮影開始時点の足の3次元データに基づいて、その後の時間単位ごと足の関節の構造を推定し、時間単位ごとの足の3次元データを作成してもよい。
【0049】
ユーザは、例えば、撮影部2が撮影可能な範囲内において、ベタ足の状態とつま先立ちの状態を繰り返す動作やつま先を上げ下げする運動動作をすることができ、この場合、足の3次元データにおける足の各部の寸法が変化することが想定される。
そこで、所定の単位ごとに被計測者の足の3次元データを取得することにより、シミュレーション部44は、靴を装着して動作するときの足の変形度を算定することができ、判定部45は、許容度と比較して、時間単位ごとに靴の評価をすることができる。
【0050】
(変形度)
上述では、シミュレーション部44は、足の3次元データの寸法データと靴の3次元データの寸法データを比較して、変形度を算定したが、さらに靴の素材の硬さを考慮して変形度を算定してもよい。靴の素材が硬いほど、足にかかる圧力が高くなるため、より変形しやすくなるからである。
【0051】
(医療データの取得)
上述では、医療データ取得部42は、ユーザが入力部6を介して記憶部に登録した医療データを取得したが、別の方法によって医療データを取得してもよい。例えば、医療データ取得部42は、足の3次元データに一般的な足の異常を示すレントゲン写真などを重畳することにより、足の3次元データとレントゲン写真等を比較し、足の異常の有無や異常部位を特定し、特定した情報を医療データとして取得してもよい。
【0052】
(評価内容)
上述では、判定部45は、選択した靴をユーザが履いた場合に、ユーザの足に痛みが出る可能性について評価したが、逆にゆるいか否かを判定することもできる。具体的には、判定部45は、変形度が所定の値(例えば、-10%)より低い場合に、ゆるいと判定することができる。また、変形度と当該所定の値の差に応じて、段階的に評価することもできる。なお、判定部45は、上述した痛みが出る可能性の評価と合わせて、選択した靴が「きつい」、「少しきつい」、「ぴったり」、「少しゆるい」、「ゆるい」などの複数段階で評価することもできる。
【0053】
(表示の例)
評価結果の表示は、表示部3に足3次元データの立体表示画像を表示し、この立体表示画の上において、前述した靴3次元データと足3次元データとの差分を求めた箇所に対応する表示箇所に、評価の内容を、着色表示により提示することができる。この着色表示としては、例えば、「きつい」を赤で表示し、「ぴったり」を緑で表示し、「緩い」を青で表示し、これらの中間の「ややきつい」を、赤と緑の中間の黄色で表示し、一方、「やや緩い」を、青と緑との中間の青緑で表示する。また、足の異常の有無や異常の種類を、テキストなどにより表示してもよい。
【0054】
なお、シミュレーション部44は、変形度に基づいて靴の履き始めから履き終わりまでの足の変形の様子や評価の内容の変化を示す動画を、表示部3を介して表示してもよい。また、ユーザが動いているときの足の変形の様子や評価の内容の変化を示す動画を表示してもよい。
【0055】
[実施形態の補足説明]
上述した実施の形態は、いずれも本発明の好ましい一具体例を示すものである。以下の実施の形態で示される数値、構成要素、構成要素の配置位置および接続形態の順序、フローチャートにおける処理の順序等は、一例であり、本発明を限定する主旨ではない。また、各図は、必ずしも厳密に図示されたものではない。
【0056】
上述した一連の処理は、ハードウェアにより実行することもできるし、ソフトウェアにより実行することもできる。一連の処理をソフトウェアにより実行する場合には、そのソフトウェアを構成するプログラムが、専用のハードウェアに組み込まれているコンピュータ、または、各種のプログラムをインストールすることで、各種の機能を実行することが可能な、例えば汎用のパーソナルコンピュータなどに、プログラム記録媒体からインストールされる。
【0057】
なお、コンピュータが実行するプログラムは、本明細書で説明する順序に沿って時系列に処理が行われるプログラムであっても良いし、並列に、あるいは呼び出しが行われたとき等の必要なタイミングで処理が行われるプログラムであっても良い。
[発明のまとめ]
【0058】
上述した靴シミュレーション装置1は、
ユーザの足の3次元データを取得する足データ取得部41と、
ユーザの足の医療データを取得する医療データ取得部42と、
靴の3次元データを取得する靴データ取得部43と、
靴を履くときの足の変形度を算定するシミュレーション部44と、
変形度が所定のしきい値以上か否かでユーザの足に痛みが出る可能性が高いか否かを判定する判定部45と、
を備えることを特徴とする。
【0059】
この構成により、靴を履かなくても、医療データや靴のデータを活用し、靴が足に問題がないかを判定することができる。
【0060】
さらに、シミュレーション部44は、靴を装着して動作するときの足の変形度を算定する
ことを特徴とする。
【0061】
この構成により、足が静止している状態だけでなく、動作時における足の変形などを考慮して靴が足に問題がないかを判定することができる。
【0062】
さらに、足データ取得部41は、足の3次元データを取得した時に足の関節の構造を推定する
ことを特徴とする。
【0063】
この構成により、撮影部2が静止状態の足のみを撮影した場合であっても、動作時における足の変形などを考慮して靴が足に問題がないかを判定することができる。
【0064】
さらに、しきい値は足の部位ごとに異なっており、前記部位には少なくともボール部Bが含まれ、ボール部Bについては横幅Lcよりも縦幅Lbのしきい値が小さいこと
を特徴とする。
【0065】
この構成により、足のフィット感に関してボール部Bが重要であり、横方向Lcよりも縦方向Lbの変形の方がフィット感に影響することを考慮したうえで、靴が足に問題がないかを判定することができる。
【符号の説明】
【0066】
1…靴シミュレーション装置、2…撮影部、3…表示部、4…制御部、5…記憶部、6…入力部、41…足データ取得部、42…医療データ取得部、43…靴データ取得部、44…シミュレーション部、45…判定部
図1
図2
図3
図4