(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024170985
(43)【公開日】2024-12-11
(54)【発明の名称】磁界センサ装置及びその制御方法
(51)【国際特許分類】
G01R 33/032 20060101AFI20241204BHJP
【FI】
G01R33/032
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023087794
(22)【出願日】2023-05-29
(71)【出願人】
【識別番号】000166948
【氏名又は名称】シチズンファインデバイス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100114018
【弁理士】
【氏名又は名称】南山 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100180806
【弁理士】
【氏名又は名称】三浦 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100160716
【弁理士】
【氏名又は名称】遠藤 力
(72)【発明者】
【氏名】須江 聡
(72)【発明者】
【氏名】饗場 哲也
【テーマコード(参考)】
2G017
【Fターム(参考)】
2G017AA02
2G017AB09
2G017AD12
2G017AD14
2G017AD15
2G017BA15
(57)【要約】
【課題】検出した磁界を示す検出信号に重畳するドリフトを除去可能な磁界センサ装置を提供することを目的とする。
【解決手段】磁界センサ装置1は、入射光を出射する発光部と、発光部に光学的に接続され、発光部から入射された入射光の偏光面を、印加される磁界に応じて回転させた直線偏波光である戻り光を出射する磁界センサ素子と、戻り光をS偏光成分及びP偏光成分に分離する偏光分離素子と、S偏光成分及びP偏光成分から、磁界センサ素子が配置される磁界に応じた検出信号を生成する検出信号発生部と、を有し、検出信号発生回路は、S偏光成分及びP偏光成分のそれぞれを第1電気信号及び第2電気信号に変換する光電変換回路と、第1電気信号及び第2電気信号に印加されるドリフト量に応じて第1電気信号及び第2電気信号の何れか一方を補正した補正信号、並びに第1電気信号及び第2電気信号の他方から検出信号を生成する演算回路とを有する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
直線偏波光である入射光を出射する発光部と、
前記発光部に光学的に接続され、前記発光部から入射された入射光の偏光面を、印加される磁界に応じて回転させた直線偏波光である戻り光を出射する磁界センサ素子と、
前記戻り光をS偏光成分及びP偏光成分に分離する偏光分離素子と、
前記S偏光成分及び前記P偏光成分から、前記磁界センサ素子が配置される磁界に応じた検出信号を生成する検出信号発生部と、を有し、
検出信号発生回路は、
前記S偏光成分及び前記P偏光成分のそれぞれを第1電気信号及び第2電気信号に変換する光電変換回路と、
前記第1電気信号及び前記第2電気信号に印加されるドリフト量に応じて前記第1電気信号及び前記第2電気信号の何れか一方を補正した補正信号、並びに前記第1電気信号及び前記第2電気信号の他方から前記検出信号を生成し、生成した検出信号を出力する演算回路と、
を有する、ことを特徴とする磁界センサ装置。
【請求項2】
前記演算回路は、
前記第1電気信号及び前記第2電気信号のそれぞれのドリフト量を示す第1ドリフト量及び第2ドリフト量を演算するドリフト量演算部と、
前記第1ドリフト量及び前記第2ドリフト量に基づいて、前記補正信号を生成する補正部と、
前記第1電気信号及び前記第2電気信号の他方から前記補正信号を減算して前記検出信号を生成する信号生成部と、
前記検出信号を出力する信号出力部と、
を有する、請求項1に記載の磁界センサ装置。
【請求項3】
前記第1ドリフト量は、前記第1電気信号の二乗平均平方根であり、
前記第2ドリフト量は、前記第2電気信号の二乗平均平方根である、請求項2に記載の磁界センサ装置。
【請求項4】
前記補正部は、前記第1ドリフト量と前記第2ドリフト量との比率に応じて前記補正信号を生成する、請求項3に記載の磁界センサ装置。
【請求項5】
前記補正部は、前記第1ドリフト量に対する前記第2ドリフト量の比率である第1比率を前記第1電気信号に乗じて前記補正信号を生成する、又は前記第2ドリフト量に対する前記第1ドリフト量の比率である第2比率を前記第2電気信号に乗じて前記補正信号を生成する、請求項4に記載の磁界センサ装置。
【請求項6】
前記演算回路は、前記第1ドリフト量及び前記第2ドリフト量の何れが大きいかを判定するドリフト量判定部を更に有し、
前記補正部は、
前記第1ドリフト量が前記第2ドリフト量よりも大きいと判定されたときに、前記第1電気信号を補正して前記補正信号を生成し、
前記第1ドリフト量が前記第2ドリフト量よりも小さいと判定されたときに、前記第2電気信号を補正して前記補正信号を生成する、請求項2~4の何れか一項に記載の磁界センサ装置。
【請求項7】
直線偏波光である入射光を出射する発光部と、
前記発光部に光学的に接続され、前記発光部から入射された入射光の偏光面を、印加される磁界に応じて回転させた直線偏波光である戻り光を出射する磁界センサ素子と、
前記戻り光をS偏光成分及びP偏光成分に分離する偏光分離素子と、
前記S偏光成分及び前記P偏光成分から、前記磁界センサ素子が配置される磁界に応じた検出信号を生成する検出信号発生部と、を有する磁界センサ装置の制御方法であって、
検出信号発生回路は、
前記S偏光成分及び前記P偏光成分のそれぞれを第1電気信号及び第2電気信号に変換し、
前記第1電気信号及び前記第2電気信号に印加されるドリフト量に応じて前記第1電気信号及び前記第2電気信号の何れか一方を補正した補正信号、並びに前記第1電気信号及び前記第2電気信号の他方から前記検出信号を生成し、
前記検出信号を出力する、
処理を実行する、ことを特徴とする磁界センサ装置の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁界センサ装置及びその制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一対の光路を有し、入射される一対の直線偏光のそれぞれを一対の光路のそれぞれに伝搬させることで、一対の直線偏光が伝搬する光路の光路長を等しくする干渉型の光磁界センサ装置が知られている(例えば、特許文献1を参照)。特許文献1に記載される光磁界センサ装置は、P偏光成分の強度に比例する電気信号とS偏光成分の強度に比例する電気信号との差動信号を反転増幅することで、生成する検出信号から直流成分を除去し、検出信号のSN比を高くすることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載される光磁界センサ装置では、装置に生じる外乱による光量の変化、及びビームスプリッタにおける分岐比率の外乱による変化等に起因して、検出した磁界を示す検出信号に重畳するドリフトを除去することは容易ではない。
【0005】
本発明は、このような課題を解決するものであり、検出した磁界を示す検出信号に重畳するドリフトを除去可能な磁界センサ装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る磁界センサ装置は、直線偏波光である入射光を出射する発光部と、発光部に光学的に接続され、発光部から入射された入射光の偏光面を、印加される磁界に応じて回転させた直線偏波光である戻り光を出射する磁界センサ素子と、戻り光をS偏光成分及びP偏光成分に分離する偏光分離素子と、S偏光成分及びP偏光成分から、磁界センサ素子が配置される磁界に応じた検出信号を生成する検出信号発生部と、を有し、検出信号発生回路は、S偏光成分及びP偏光成分のそれぞれを第1電気信号及び第2電気信号に変換する光電変換回路と、第1電気信号及び第2電気信号に印加されるドリフト量に応じて第1電気信号及び第2電気信号の何れか一方を補正した補正信号、並びに第1電気信号及び第2電気信号の他方から検出信号を生成し、検出信号を出力する演算回路とを有する。
【0007】
また、本発明に係る磁界センサ装置では、演算回路は、第1電気信号及び第2電気信号のそれぞれのドリフト量を示す第1ドリフト量及び第2ドリフト量を演算するドリフト量演算部と、第1ドリフト量及び第2ドリフト量に基づいて、補正信号を生成する補正部と、第1電気信号及び第2電気信号の他方から補正信号を減算して検出信号を生成する信号生成部と、検出信号を出力する信号出力部とを有することが好ましい。
【0008】
また、本発明に係る磁界センサ装置では、第1ドリフト量は、第1電気信号の二乗平均平方根であり、第2ドリフト量は、第2電気信号の二乗平均平方根であることが好ましい。
【0009】
また、本発明に係る磁界センサ装置では、補正部は、第1ドリフト量と第2ドリフト量との比率に応じて補正信号を生成することが好ましい。
【0010】
また、本発明に係る磁界センサ装置では、補正部は、第1ドリフト量に対する第2ドリフト量の比率である第1比率を第1電気信号に乗じて補正信号を生成する、又は第2ドリフト量に対する第1ドリフト量の比率である第2比率を第2電気信号に乗じて補正信号を生成することが好ましい。
【0011】
また、本発明に係る磁界センサ装置では、演算回路は、第1ドリフト量及び第2ドリフト量の何れが大きいかを判定するドリフト量判定部を更に有し、補正部は、第1ドリフト量が第2ドリフト量よりも大きいと判定されたときに、第1電気信号を補正して補正信号を生成し、第1ドリフト量が第2ドリフト量よりも小さいと判定されたときに、第2電気信号を補正して補正信号を生成することが好ましい。
【0012】
本発明に係る磁界センサ装置の制御方法は、直線偏波光である入射光を出射する発光部と、発光部に光学的に接続され、発光部から入射された入射光の偏光面を、印加される磁界に応じて回転させた直線偏波光である戻り光を出射する磁界センサ素子と、戻り光をS偏光成分及びP偏光成分に分離する偏光分離素子と、S偏光成分及びP偏光成分から、磁界センサ素子が配置される磁界に応じた検出信号を生成する検出信号発生部と、を有する磁界センサ装置の制御方法であって、検出信号発生回路は、S偏光成分及びP偏光成分のそれぞれを第1電気信号及び第2電気信号に変換し、第1電気信号及び第2電気信号に印加されるドリフト量に応じて第1電気信号及び第2電気信号の何れか一方を補正した補正信号、並びに第1電気信号及び第2電気信号の他方から検出信号を生成し、検出信号を出力する処理を実行する。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る磁界センサ装置は、検出した磁界を示す検出信号に重畳するドリフトを除去することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】実施形態に係る磁界センサ装置のブロック図である。
【
図2】
図1に示す検出信号発生回路のブロック図である。
【
図3】
図1に示す検出信号発生回路により実行される検出信号生成処理のフローチャートである。
【
図4】変形例に係る検出信号発生回路のブロック図である。
【
図5】
図4に示す検出信号発生回路により実行される検出信号生成処理のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明に係る好適な実施形態について図面を用いて説明する。なお、本発明は以下の実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において適宜変更可能である。また、各図において同一、又は相当する機能を有するものは、同一符号を付し、その説明を省略又は簡潔にすることもある。
【0016】
(実施形態に係る磁界センサ装置の構成及び機能)
図1は、磁界センサ装置1のブロック図である。
【0017】
磁界センサ装置1は、発光部10と、サーキュレータ11と、第1光学素子12と、光路部13と、磁界センサ素子14と、ビームスプリッタ15と、検出信号発生回路16とを有する。発光部10、サーキュレータ11、第1光学素子12、光路部13、磁界センサ素子14、ビームスプリッタ15及び検出信号発生回路16の間の光路は、PANDAファイバによって形成される。なお、発光部10~検出信号発生回路16の間の光路は、ボウタイ(Bow-tie)ファイバ及び楕円ジャケット(Elliptical Jacket)ファイバ等の偏波保持型の光ファイバによって形成されてもよい。
【0018】
発光部10は、発光素子101と、アイソレータ102と、偏光子103とを有する。発光素子101は、例えば半導体レーザ又は発光ダイオードである。具体的には、発光素子101として、ファブリペローレーザー、スーパールミネッセンスダイオード等を好ましく用いることができる。発光部10は、不図示の外部装置からの指示に応じて、レーザ光を出射する。発光部10から出射されるレーザ光は、所定の周期で振幅するsin波形等のAC波形として出力される。
【0019】
アイソレータ102は、発光素子101から入射された光をサーキュレータ11側に透過すると共に、サーキュレータ11から入射された光を発光素子101側に透過しないことで、発光素子101を保護する。アイソレータ102は、例えば偏光依存型光アイソレータであり、偏光無依存型光アイソレータであってもよい。
【0020】
偏光子103は、発光素子101が発した光を直線偏波光にするための光学素子であり、その種類は特に限定されない。偏光子103で得られるsin波形状の第1直線偏波光は、サーキュレータ11を介して第1光学素子12に入射される。第1直線偏波光は、入射光とも称される。
【0021】
サーキュレータ11は、発光部10から出射された第1直線偏波光を第1光学素子12に透過すると共に、第1光学素子12から出射されたsin波形状の第2直線偏波光を検出信号発生回路16に分岐する光分岐部である。サーキュレータ11は、例えばファラデー回転子、1/2波長板、偏光ビームスプリッタ、及び複数の反射ミラーによって形成される。第2直線偏波光は、戻り光とも称される。
【0022】
第1光学素子12は、例えばサーキュレータ11から入射される第1直線偏波光の偏光面に対して方位角が22.5度になるように配置された1/2波長板である。第1光学素子12は、サーキュレータ11から入射される第1直線偏波光の偏光面を45度回転し、光路部13に第1直線偏波光を出射する。第1光学素子12で偏光面が45度回転した第1直線偏波光は、P偏光である第1直線偏光CW1と、第1直線偏光CW1に直交するS偏光である第2直線偏光CCW1とを有する。
【0023】
また、第1光学素子12は、光路部13から入射される直線偏波光である第2直線偏波光の偏光面を45度回転し、サーキュレータ11に出射する。
【0024】
光路部13は、第1ビームスプリッタ131と、第2ビームスプリッタ132と、第1光路133と、第2光路134と、第2光学素子135とを有する。
【0025】
第1ビームスプリッタ131は、第1直線偏光CW1を第1光路133に出射すると共に、第2直線偏光CCW1を第2光路134に出射する。また、第1ビームスプリッタ131は、第3直線偏光CW2が第2光路134から入射されると共に、第4直線偏光CCW2が第1光路133から入射される。第3直線偏光CW2及び第4直線偏光CW2は、第1光学素子12に出射される第2直線偏波光の互いに直交する偏光成分である。
【0026】
第2ビームスプリッタ132は、第1直線偏光CW1が第1光路133から入射されると共に、第2直線偏光CCW1が第2光路134から入射され、入射された第1直線偏光CW1及び第2直線偏光CCW1を磁界センサ素子14に出射する。また、第2ビームスプリッタ132は、磁界センサ素子14から入射された第3直線偏光CW2を第2光路134に出射すると共に、磁界センサ素子14から入射された第4直線偏光CCW2を第1光路133に出射する。
【0027】
第1ビームスプリッタ131及び第2ビームスプリッタ132は、第1直線偏波光をP偏光成分とS偏光成分とに分離し、且つ、P偏光成分とS偏光成分とを合成し出射する。第1ビームスプリッタ131及び第2ビームスプリッタ132は、例えばプリズム型ビームスプリッタであるが、平面型ビームスプリッタ又はウェッジ型ビームスプリッタであってもよい。
【0028】
第1光路133は、第1ビームスプリッタ131から導入された第1直線偏光CW1を第2ビームスプリッタ132に導出すると共に、第2ビームスプリッタ132から導入された第4直線偏光CCW2を第1ビームスプリッタ131に導出する。第2光路134は、第1ビームスプリッタ131から導入された第2直線偏光CCW2を第2ビームスプリッタ132に導出すると共に、第2ビームスプリッタ132から導入された第3直線偏光CW2を第1ビームスプリッタ131に導出する。
【0029】
第1光路133は、一端が第1ビームスプリッタ131に光学的に接続され且つ他端が第2ビームスプリッタ132に光学的に接続されたPANDAファイバである。第2光路134は、一端が第1ビームスプリッタ131に光学的に接続され且つ他端が第2ビームスプリッタ132に光学的に接続されたPANDAファイバである。なお、第1光路133及び第2光路134は、ボウタイファイバ及び楕円ジャケットファイバ等の偏波保持ファイバであってもよい。第2光路134には、第2光学素子135が配置される。
【0030】
第2光学素子135は、第1(1/4)波長板136と、第2(1/4)波長板137と、45度ファラデー回転子138とを有する。
【0031】
第1(1/4)波長板136は、第2光路134を形成するPANDAファイバの遅相軸及び進相軸に対して光学軸が45度傾斜して配置される1/4波長板である。第1(1/4)波長板136は、直線偏光を円偏光に変換すると共に、円偏光を直線偏光に変換する。
【0032】
第2(1/4)波長板137は、第2光路134を形成するPANDAファイバの遅相軸及び進相軸に対して光学軸が-45度傾斜して配置される1/4波長板である。第2(1/4)波長板137は、45度ファラデー回転子138から円偏光を直線偏光に変換すると共に、直線偏光を円偏光に変換する。
【0033】
45度ファラデー回転子138は、第1(1/4)波長板136及び第2(1/4)波長板137のそれぞれから入射される円偏光の位相を変化させるファラデー回転子である。
【0034】
45度ファラデー回転子138は、第2直線偏光CCW1の位相を45度シフトするように、第1(1/4)波長板136から入射される円偏光の位相を変化させる。また、45度ファラデー回転子138は、第1(1/4)波長板136から出射される第3直線偏光CW2の位相が第2(1/4)波長板137に入射される第3直線偏光CW2の位相から-45度シフトするように、円偏光の位相を変化させる。
【0035】
磁界センサ素子14は、1/4波長板141と、ファラデー回転子142と、ミラー素子143とを有し、PANDAファイバを介して第2ビームスプリッタ132に接続され、少なくともその一部が所定の磁界内に配置可能な素子である。磁界センサ素子14は、発光部10が出射した第1直線偏波光が入射光として入射されると共に、入射された入射光に応じた戻り光を出射する。
【0036】
1/4波長板141は、第2ビームスプリッタ132との間を光学的に接続するPANDAファイバの遅相軸及び進相軸に対して光学軸が45度傾斜して配置される1/4波長板である。1/4波長板141は、直線偏光である入射光の偏光状態を円偏光に変換すると共に、ファラデー回転子142から円偏光として入射される戻り光の偏光状態を直線偏光に変換する。
【0037】
ファラデー回転子142は、誘電体と、誘電体から安定的に相分離した状態で誘電体中に分散しているナノオーダの磁性体粒子とを有するグラニュラー膜であり、1/4波長板141の端面に配置される。磁性体粒子は、例えば最表層等のごく一部では酸化物が形成されていてもよいが、ファラデー回転子142の全体では、磁性体粒子が、バインダとなる誘電体と化合物を作らずに、単独で薄膜中に分散している。ファラデー回転子142内における磁性体粒子の分布は、完全に一様でなくてもよく、多少偏っていてもよい。誘電体として透明性が高いものを用いれば、誘電体中に磁性体粒子が光の波長よりも小さいサイズで存在することにより、ファラデー回転子142は光透過性を有する。
【0038】
ファラデー回転子142は、単層のものに限らず、グラニュラー膜と誘電体膜とが交互に積層した多層膜であってもよい。グラニュラー膜を多層膜することでファラデー回転子142を形成することで、グラニュラー膜内での多重反射によって、より大きなファラデー回転角が得られる。
【0039】
誘電体は、フッ化マグネシウム(MgF2)、フッ化アルミニウム(AlF3)、フッ化イットリウム(YF3)等のフッ化物(金属フッ化物)が好ましい。また、誘電体520は、酸化タンタル(Ta2O5)、二酸化ケイ素(SiO2)、二酸化チタン(TiO2)、五酸化二ニオビウム(Nb2O5)、二酸化ジルコニウム(ZrO2)、二酸化ハフニウム(HfO2)、及び三酸化二アルミニウム(Al2O3)等の酸化物であってもよい。誘電体磁性体粒子との良好な相分離のためには、酸化物よりもフッ化物の方が好ましく、透過率が高いフッ化マグネシウムが特に好ましい。
【0040】
磁性体粒子材質は、ファラデー効果を生じるものであればよく、特に限定されないが、磁性体粒子の材質としては、強磁性金属である鉄(Fe)、コバルト(Co)及びニッケル(Ni)並びにこれらの合金が挙げられる。Fe、Co及びNiの合金としては、例えば、FeNi合金、FeCo合金、FeNiCo合金、NiCo合金が挙げられる。Fe、Co及びNiの単位長さ当たりのファラデー回転角は、従来のファラデー回転子に適用されている磁性ガーネットに比べて2~3桁近く大きい。
【0041】
ミラー素子143は、ファラデー回転子142上に形成されており、ファラデー回転子142を透過した光をファラデー回転子142に向けて反射する。ミラー素子143としては、例えば、銀(Ag)膜、金(Au)膜、アルミニウム(Al)膜又は誘電体多層膜ミラー等を用いることができる。特に、反射率の高いAg膜及び耐食性が高いAu膜が成膜上簡便で好ましい。ミラー素子143の厚さは、98%以上の十分な反射率を確保できる大きさであればよく、例えばAg膜の場合には、50nm以上かつ200nm以下であることが好ましい。ミラー素子143を用いてファラデー回転子142内で光を往復させることにより、ファラデー回転角を大きくすることができる。
【0042】
1/4波長板141からファラデー回転子142に入射した円偏光は、ファラデー回転子142を透過し、ミラー素子143で反射し、再びファラデー回転子142を透過して戻り光となる。ファラデー回転子142を透過した戻り光は、1/4波長板141に再度入射される。
【0043】
1/4波長板141からファラデー回転子142に入射した円偏光は、ファラデー回転子142に印加される磁界に応じて位相を変化させる。また、ミラー素子143で反射した円偏光は、ファラデー回転子142に印加される磁界に応じて位相を更に変化させる。
【0044】
ビームスプリッタ15は、ビームスプリッタ15は、プリズム型、平面型、ウェッジ基板型及び光導波路型等の偏光ビームスプリッタ(PBS)であり、サーキュレータ11で分岐されたsin波形状の第2直線偏波光をP偏光成分とS偏光成分とに分離する。
【0045】
検出信号発生回路16は、ビームスプリッタ15で第2直線偏波光から分離されたP偏光成分及びS偏光成分を受光して電気信号に変換して差動増幅することで、磁界センサ装置1に印加される磁界に応じた検出信号Edを出力する。
【0046】
【0047】
検出信号発生回路16は、光電変換回路20と、演算回路30とを有する。光電変換回路20は、第1受光素子21と、第2受光素子22とを有し、ビームスプリッタ15から入力されるP偏光成分LP及びS偏光成分LSのそれぞれを第1電気信号PP及び第2電気信号PSに光電変換する。第1受光素子21及び第2受光素子22のそれぞれは、例えばPINフォトダイオードである。第1受光素子21は、P偏光成分LPを受光し、受光したP偏光成分LPに応じた第1電気信号PPを出力する。第2受光素子22は、S偏光成分LSを受光し、受光したS偏光成分LSに応じた第2電気信号PSを出力する。P偏光成分LPに対応する第1電気信号PPは式(1)で示され、S偏光成分LSに対応する第2電気信号PSは式(2)で示される。
【0048】
【0049】
ここで、E0は第2直線偏光のP偏光成分及びS偏光成分の電界の振幅を示し、θFはファラデー回転子142に印加される磁界に応じたファラデー回転角である。
【0050】
演算回路30は、例えばCPU(Central Processing Unit)又はMPU(Micro Processing Unit)であり、入力回路31と、記憶回路32と、出力回路33と、処理回路40とを有する。演算回路30は、第1電気信号PP及び第2電気信号PSに印加されるドリフト量に応じて第2電気信号PSを補正した補正信号、及び第1電気信号PPから検出信号Edを生成する検出信号生成処理を実行する。
【0051】
入力回路31は、外部装置に接続可能な入力パッド及び入力パッドに接続された入力インタフェース回路を有し、第1受光素子21及び第2受光素子22のそれぞれに接続される。入力回路31は、第1受光素子21及び第2受光素子22のそれぞれから入力される第1電気信号PP及び第2電気信号PSを処理回路40に出力する。記憶回路32は、フラッシュメモリ等の不揮発性メモリ及びSRAM等の揮発性メモリを含み、検出信号生成処理を処理回路に実行するために使用される検出信号生成プログラムを記憶する。出力回路33は、外部装置に接続可能な出力パッド及び出力パッドに接続された出力インタフェース回路を有し、処理回路40から入力される検出信号Edを出力する。
【0052】
処理回路40は、AD変換回路等のアナログ回路、及びCMOSロジック回路等のデジタル回路を有し、第1電気信号PP及び第2電気信号PSが入力されることに応じて、検出信号Edを生成し、生成した検出信号Edを出力する。処理回路40は、信号取得部41と、ドリフト量演算部42と、補正部43と、信号生成部44と、信号出力部45とを有する。これらの各部は、処理回路40が有するプロセッサで実行されるプログラムにより実現される機能モジュールである。
【0053】
(実施形態に係る検出信号発生回路による検出信号生成処理)
図3は、検出信号発生回路16により実行される検出信号生成処理のフローチャートである。
図3に示す検出信号生成処理は、予め記憶回路32に記憶されている検出信号生成プログラムに基づいて、主に処理回路40により磁界センサ装置1の各要素と協働して実行される。検出信号生成処理は、磁界センサ装置1を使用して磁界を測定するオペレータの指示に応じて実行される。
【0054】
まず、信号取得部41は、第1電気信号PPを取得する(S101)。信号取得部41は、例えば磁界センサ装置1を使用して磁界を測定するオペレータによる外部装置を介する測定開始指示が入力されることに応じて、第1受光素子21を介して、複数の周期に亘って第1電気信号PPを取得する。信号取得部41は、取得した第1電気信号PPを記憶回路32に記憶する。
【0055】
次いで、信号取得部41は、第2電気信号PSを取得する(S102)。信号取得部41は、第2受光素子22を介して、複数の周期に亘って第2電気信号PSを取得する。信号取得部41は、取得した第2電気信号PSを記憶回路32に記憶する。
【0056】
次いで、ドリフト量演算部42は、第1電気信号PPのドリフト量を示す第1ドリフト量PP_RMSを演算する(S103)。次いで、ドリフト量演算部42は、第2電気信号PSのドリフト量を示す第2ドリフト量PS_RMSを演算する(S104)。ドリフト量演算部42は、第1電気信号PP及び第2電気信号PSの二乗平均平方根を第1ドリフト量PP_RMS及び第2ドリフト量PS_RMSとして演算する。二乗平均平方根RMSは、式(3)に示される。式(3)において、S(n)は、第1電気信号PP及び第2電気信号PSの瞬時値である。ドリフト量演算部42は、演算した第1ドリフト量PP_RMS及び第2ドリフト量PS_RMSを記憶回路32に記憶する。
【0057】
【0058】
次いで、補正部43は、第1ドリフト量PP_RMS及び第2ドリフト量PS_RMSに基づいて、補正信号PSCを生成する(S105)。補正部43は、第1ドリフト量PP_RMSと第2ドリフト量PS_RMSとの比率に応じて補正信号PSCを生成する。補正部43は、式(4)に示すように、第2ドリフト量PS_RMSに対する第1ドリフト量PP_RMSの比率である第2比率(PP_RMS/PS_RMS)を第2電気信号PSに乗ずることで、補正信号PSCを生成する。補正部43は、生成した補正信号PSCを記憶回路32に記憶する。
【0059】
【0060】
次いで、信号生成部44は、式(5)に示すように、S404の処理で生成された補正信号PSCを第1電気信号PPから減算して検出信号Edを生成する(S106)。信号生成部44は、生成した検出信号Edを記憶回路32に記憶する。
【0061】
【0062】
そして、信号出力部45は、S106の処理で生成された検出信号Edを出力する(S107)。信号出力部45は、記憶回路32に記憶される検出信号Edを、出力回路33を介して不図示の外部装置に出力する。
【0063】
(実施形態に係る磁界センサ装置の作用効果)
磁界センサ装置1では、第1電気信号PP及び第2電気信号PSに印加されるドリフト量に応じて補正された補正信号PSCを使用して検出信号Edを生成するので、ドリフト量に起因するノイズの影響を抑制して検出信号Edを生成することができる。
【0064】
また、磁界センサ装置1は、簡単な演算で演算できる二乗平均平方根を第1電気信号PP及び第2電気信号PSのドリフト量として使用するので、簡単な演算プログラムでドリフト量を演算することができる。
【0065】
また、磁界センサ装置1は、第1ドリフト量と第2ドリフト量との比率を第2電気信号PSに乗じて生成される補正信号を第1電気信号PPから減算した差動信号として検出信号を生成するので、従来の磁界センサ装置の演算アルゴリズムを流用できる。
【0066】
(実施形態に係る磁界センサ装置の変形例)
磁界センサ装置1では、ドリフト量演算部42は、式(3)で示す二乗平均平方根を第1電気信号PP及び第2電気信号PSのドリフト量として演算する。しかしながら、実施形態に係る磁界センサ装置では、ドリフト量演算部は、算術平均等の二乗平均平方根以外のパラメータを第1電気信号PP及び第2電気信号PSのドリフト量として演算してもよい。
【0067】
また、磁界センサ装置1では、補正部43は、第2比率(PP_RMS/PS_RMS)を第2電気信号PSに乗ずることで補正信号PSCを生成する。しかしながら、実施形態に係る磁界センサ装置では、補正部は、第2比率(PP_RMS/PS_RMS)以外のパラメータを使用して、補正信号を生成してもよい。
【0068】
また、磁界センサ装置1では、補正部43は、第2電気信号PSを補正して補正信号PSCを生成するが、実施形態に係る磁界センサ装置では、補正部は、第1電気信号PPを補正して補正信号を生成してもよい。第1電気信号PPを補正して生成される補正信号PPCは、式(6)で示される。補正部43は、第1ドリフト量PP_RMSに対する第2ドリフト量PS_RMSの比率である第1比率(PS_RMS/PP_RMS)を第1電気信号PPに乗じて補正信号PPCを生成する。
【0069】
【0070】
第1電気信号PPを補正して補正信号PPCを生成するとき、検出信号Edは、式(7)で示される。
【0071】
【0072】
また、実施形態に係る磁界センサ装置では、補正部は、第1ドリフト量PP_RMSと第2ドリフト量PS_RMSとの比較結果に基づいて第1比率及び第2比率の一方を選択して、補正信号を生成してもよい。
【0073】
図4は、変形例に係る検出信号発生回路のブロック図である。
図4に示す検出信号発生回路2は、検出信号発生回路16の代わりに磁界センサ装置1に配置され、第2直線偏波光のP偏光成分及びS偏光成分から、磁界センサ素子14が配置される磁界に応じた検出信号Edを生成する。
【0074】
検出信号発生回路2は、演算回路35を演算回路30の代わりに有することが検出信号発生回路16と相違する。演算回路35は、処理回路50を処理回路40の代わりに有することが演算回路30と相違する。処理回路50は、ドリフト量判定部51を有することが処理回路40と相違する。ドリフト量判定部51以外の検出信号発生回路2の構成要素の構成及び機能は、同一符号が付された検出信号発生回路16の構成要素の構成及び機能と同一なので、ここでは詳細な説明は省略する。
【0075】
(変形例に係る検出信号発生回路による検出信号生成処理)
図5は、検出信号発生回路2により実行される検出信号生成処理のフローチャートである。
図5に示す検出信号生成処理は、予め記憶回路32に記憶されている検出信号生成プログラムに基づいて、主に処理回路50により磁界センサ装置1の各要素と協働して実行される。検出信号生成処理は、磁界センサ装置1を使用して磁界を測定するオペレータの指示に応じて実行される。
【0076】
S201~S204の処理は、S101~S104の処理と同様なので、ここでは省略する。S204の処理に次いで、ドリフト量判定部51は、S203の処理で演算された第1ドリフト量PP_RMS及びS204の処理で演算された第2ドリフト量PS_RMSの何れが大きいかを判定する(S205)。ドリフト量判定部51は、第1ドリフト量PP_RMSが第2ドリフト量PS_RMSより大きいか否かを判定する
【0077】
ドリフト量判定部51によって第1ドリフト量PP_RMSが第2ドリフト量PS_RMSよりも大きい(205-YES)と判定されると、補正部43は、式(6)を使用して、第1電気信号PPを補正して補正信号PSCを生成する(S206)。一方、ドリフト量判定部51によって第1ドリフト量PP_RMSが第2ドリフト量PS_RMSよりも小さい(205-NO)と判定されると、補正部43は、式(4)を使用して、第2電気信号PSを補正して補正信号PSCを生成する(S207)。
【0078】
次いで、信号生成部44は、検出信号Edを生成する(S208)。信号生成部44は、ドリフト量判定部51によって第1ドリフト量PP_RMSが第2ドリフト量PS_RMSよりも大きい(205-YES)と判定されるとき、式(7)を使用して検出信号Edを生成する。また、信号生成部44は、ドリフト量判定部51によって第1ドリフト量PP_RMSが第2ドリフト量PS_RMSよりも小さい(205-NO)と判定されるとき、式(5)を使用して検出信号Edを生成する。
【0079】
そして、信号出力部45は、S106の処理と同様に、S208の処理で生成された検出信号Edを出力する(S209)。
【0080】
(変形例に係る検出信号発生回路の作用効果)
検出信号発生回路2は、第1電気信号PP及び第2電気信号PSのドリフト量を比較して、ドリフト量が大きい電気信号を補正して補正信号を生成するので、ドリフト量に起因するノイズの影響を更に抑制して検出信号Edを生成することができる。
【符号の説明】
【0081】
1 磁界センサ装置
2、16 検出信号発生回路
41 信号取得部
42 ドリフト量演算部
43 補正部
44 信号生成部
45 信号出力部
51 ドリフト量判定部