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  • -樹脂フィルム及び積層フィルム 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024170987
(43)【公開日】2024-12-11
(54)【発明の名称】樹脂フィルム及び積層フィルム
(51)【国際特許分類】
   C08L 75/04 20060101AFI20241204BHJP
   B32B 27/40 20060101ALI20241204BHJP
   C08K 5/05 20060101ALI20241204BHJP
   C08K 5/09 20060101ALI20241204BHJP
   C08K 3/22 20060101ALI20241204BHJP
   C08K 5/16 20060101ALI20241204BHJP
   C08J 5/18 20060101ALI20241204BHJP
【FI】
C08L75/04
B32B27/40
C08K5/05
C08K5/09
C08K3/22
C08K5/16
C08J5/18 CFF
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023087796
(22)【出願日】2023-05-29
(71)【出願人】
【識別番号】000002141
【氏名又は名称】住友ベークライト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100194250
【弁理士】
【氏名又は名称】福原 直志
(74)【代理人】
【識別番号】100181722
【弁理士】
【氏名又は名称】春田 洋孝
(74)【代理人】
【識別番号】100140718
【弁理士】
【氏名又は名称】仁内 宏紀
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 研太
(72)【発明者】
【氏名】西川 佳樹
【テーマコード(参考)】
4F071
4F100
4J002
【Fターム(参考)】
4F071AA53
4F071AB17A
4F071AC05A
4F071AC18A
4F071AE02A
4F071AE19A
4F071AF08Y
4F071AG34
4F071BA02
4F071BB02
4F071BC02
4F071BC12
4F100AK51A
4F100AT00B
4F100BA02
4F100CA02A
4F100EH462
4F100EH46A
4F100GB15
4F100JD02A
4F100JD04A
4F100YY00A
4J002CK021
4J002DE096
4J002EC076
4J002EG046
4J002ET006
4J002FA040
4J002FD010
4J002FD146
4J002FD200
4J002HA06
(57)【要約】
【課題】低湿度環境下においても優れた水蒸気透過性を有し、且つ優れたガスバリア性を有する樹脂フィルム及び積層体フィルム提供すること。
【解決手段】樹脂フィルム2であって、前記樹脂フィルム2は、水性ポリウレタンと、架橋剤とが配合されており、前記架橋剤が、チタン化合物及び金属キレート系化合物からなる群より選択される1種又は2種以上からなり、前記樹脂フィルム2において、前記架橋剤の配合量が、前記水性ポリウレタンの配合量100質量部に対して、35質量部以上である、樹脂フィルム2、及び、前記樹脂フィルム2上に設けられた基材層3と、を備える、積層フィルム1。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂フィルムであって、
前記樹脂フィルムは、水性ポリウレタンと、架橋剤とが配合されており、
前記架橋剤が、チタン化合物及び金属キレート系化合物からなる群より選択される1種又は2種以上からなり、
前記樹脂フィルムにおいて、前記架橋剤の配合量が、前記水性ポリウレタンの配合量100質量部に対して、35質量部以上である、樹脂フィルム。
【請求項2】
JIS Z 0208に規定のカップ法によって測定した、30℃、75%RHの条件における、前記樹脂フィルムの水蒸気透過量が、5500g/m・day以上であり、
JIS Z 0208に規定のカップ法によって測定した、30℃、45%RHの条件における、前記樹脂フィルムの水蒸気透過量が、3000g/m・day以上であり、
JIS P 8117:2009に規定の王研法によって測定した、23℃、50%RHの条件における、前記樹脂フィルムの空気の透気抵抗度が、5000秒以上である、請求項1に記載の樹脂フィルム。
【請求項3】
前記樹脂フィルムの厚さが、0.1μm以上4.0μm以下である、請求項1又は2に記載の樹脂フィルム。
【請求項4】
請求項1又は2に記載の樹脂フィルムと、前記樹脂フィルム上に設けられた基材層と、を備える、積層フィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂フィルム及び積層フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
医療機器、工業部材、電子部品等の金属製の内容物を包装する際、内容物に錆等が発生するのを防止するため、包装する前に、内容物を乾燥させる必要がある。内容物が完全に乾燥していない場合は、包装後に内容物を乾燥しなければならないが、そのためには、内容物を包装するフィルムに透湿性を担保させる必要がある。
【0003】
従来、透湿性の高い基材フィルムは知られている(例えば、特許文献1)が、従来の高透湿基材フィルムでは、ガスバリア性を担保できないため、内容物が酸化により劣化する恐れがある。また、内容物の劣化を防止するためには、二酸化炭素や窒素等の不活性ガスを封入する必要があるが、従来の高透湿性基材フィルムでは、不活性ガスも透過してしまうため、不活性ガスを封入できず、包装した内容物の劣化を防止することが困難である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2019-163357号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、透湿性の高い基材層に積層することにより、基材層の透湿性の低下を抑制しつつ、基材層にガスバリア性を付与することができる樹脂フィルムを提供することを課題とする。
【0006】
また、ポリビニルアルコールを含む樹脂フィルムは、湿度が高い環境下においては、透湿性は高いが、湿度が低い環境下においては透湿性が下がってしまうという課題がある。また、樹脂フィルムに含まれる樹脂組成物を基材層の表面に塗布する際に、均一に塗布できないと、基材層上に樹脂フィルムが均一に形成できず、基材層への樹脂フィルムのガスバリア性の付与の低下、透湿性の面内バラつきを招く他、見栄えが悪くなるという課題がある。
そこで、本発明は、低湿度環境下においても、透湿性が高く、外部の湿度環境によらず、高い透湿性を有し、且つ、基材層上に均一に形成できる樹脂フィルムを提供することを課題とする。
【0007】
さらに、本発明は、透湿性に優れ、且つ、ガスバリア性にも優れた積層フィルムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するために、本発明は以下の構成を採用した。
【0009】
[1]樹脂フィルムであって、
前記樹脂フィルムは、水性ポリウレタンと、架橋剤とが配合されており、
前記架橋剤が、チタン化合物及び金属キレート系化合物からなる群より選択される1種又は2種以上からなり、
前記樹脂フィルムにおいて、前記架橋剤の配合量が、前記水性ポリウレタンの配合量100質量部に対して、35質量部以上である、樹脂フィルム。
[2]JIS Z 0208に規定のカップ法によって測定した、30℃、75%RHの条件における、前記樹脂フィルムの水蒸気透過量が、5500g/m・day以上であり、
JIS Z 0208に規定のカップ法によって測定した、30℃、45%RHの条件における、前記樹脂フィルムの水蒸気透過量が、3000g/m・day以上であり、
JIS P 8117:2009に規定の王研法によって測定した、23℃、50%RHの条件における、前記樹脂フィルムの空気の透気抵抗度が、5000秒以上である、[1]に記載の樹脂フィルム。
[3]前記樹脂フィルムの厚さが、0.1μm以上4.0μm以下である、[1]又は[2]に記載の樹脂フィルム。
[4][1]又は[2]に記載の樹脂フィルムと、前記樹脂フィルム上に設けられた基材層と、を備える、積層フィルム。
【発明の効果】
【0010】
本発明の樹脂フィルムは、水性ポリウレタンと、架橋剤とが配合されており、前記架橋剤が、チタン化合物及び金属キレート系化合物からなる群より選択される1種又は2種以上からなり、前記樹脂フィルムにおいて、前記架橋剤の配合量が、前記水性ポリウレタンの配合量100質量部に対して、35質量部以上であるため、基材層の透湿性の低下を抑制しつつ、基材層にガスバリア性を付与することができる。また、本発明の樹脂フィルムは、高湿度環境下においても、低湿度環境下においても、透湿性が高く、外部の湿度環境によらず、高い透湿性を有し、さらに、基材層上に均一に形成することができる。
【0011】
また、本発明の積層フィルムは、前記樹脂フィルムと、前記樹脂フィルム上に設けられた基材層と、を備えるため、透湿性及びガスバリア性に優れ、また、高湿度環境下においても、低湿度環境下においても、透湿性が高く、外部の湿度環境によらず、高い透湿性を有する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明を適用した一実施形態である樹脂フィルムを備えた積層フィルムの構成を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を適用した一実施形態である樹脂フィルム、及びこの樹脂フィルムを備えた積層フィルムについて、詳細に説明する。なお、以下の説明で用いる図面は、特徴をわかりやすくするために、便宜上特徴となる部分を拡大して示している場合があり、各構成要素の寸法比率などが実際と同じであるとは限らない。
【0014】
<<樹脂フィルム>>
本実施形態の樹脂フィルムは、水性ポリウレタンと、架橋剤とが配合されており、前記架橋剤が、チタン化合物及び金属キレート系化合物からなる群より選択される1種又は2種以上からなり、前記樹脂フィルムにおいて、前記架橋剤の配合量が、前記水性ポリウレタンの配合量100質量部に対して、35質量部以上である。
本実施形態の樹脂フィルムは、水性ポリウレタンと、架橋剤とが配合されており、前記架橋剤が、チタン化合物及び金属キレート系化合物からなる群より選択される1種又は2種以上からなり、前記樹脂フィルムにおいて、前記架橋剤の配合量が、前記水性ポリウレタンの配合量100質量部に対して、35質量部以上であるため、基材層の透湿性の低下を抑制しつつ、基材層にガスバリア性を付与することができる。また、本実施形態の樹脂フィルムは、高湿度環境下においても、低湿度環境下においても、透湿性が高く、外部の湿度環境によらず、高い透湿性を有し、さらに、基材層上に均一に形成することができる。
【0015】
本実施形態の樹脂フィルムは、高透湿の基材層に積層することにより、高湿度環境下においても、低湿度環境下においても、基材層の透湿性の低下を抑制しつつ、基材層にガスバリア性を付与することができるため、内容物を完全に乾燥せずに包装しても、包装後に内容物を乾燥させることができる。また、本実施形態の樹脂フィルムは、基材層にガスバリア性を付与することができるため、包装後に不活性ガスを封入することにより、内容物の劣化を防止することができる。そのため、例えば、医療機器、工業部材、電子部品等の金属製の物品を乾燥させないまま包装し、包装後に不活性ガスを封入することにより、包装後に乾燥することができるため、短時間で包装ができ、且つ、錆の発生等による劣化を防止することができる。さらに、本実施形態の樹脂フィルムは、水性ポリウレタンを含む樹脂組成物を基材層の表面に均一に塗布することができるため、基材層上に均一に形成することができる。そのため、基材層への樹脂フィルムのガスバリア性の付与の低下、透湿性の面内バラつきを生じることなく、また、見栄えにも優れる。
本明細書において、「低湿度環境下」とは、例えば、相対湿度が45%以下の環境下を意味し、「高湿度環境下」とは、例えば、相対湿度が75%以上の環境下を意味し、「中湿度環境下」とは、例えば、相対湿度が45%超75%未満の環境下を意味する。
【0016】
<ガスバリア性樹脂>
本実施形態の樹脂フィルムは、ガスバリア性樹脂を含む。
ガスバリア性樹脂は、ガスの透過を抑制する樹脂であり、基材層にガスバリア性を付与する。ガスの種類としては、後述する積層フィルムが包装する内容物に影響を及ぼさないものであれば特に制限はなく、例えば、二酸化炭素、窒素等が挙げられる。
【0017】
本実施形態の樹脂フィルムは、ガスバリア性樹脂を構成する樹脂として、水性ポリウレタンを含む。
本明細書において水性ポリウレタンとは、粒径が5~1000nmのポリウレタンの微粒子であって、水分散型のポリウレタンである。ポリウレタンは通常水に不溶であるが、水性ポリウレタンは水に分散させることができる。ポリウレタンの微粒子の粒径は、レーザー回折法により、求められる。
ポリウレタンとしては、ポリエステル系、ポリカーボネート系、ポリエーテル系等が挙げられる。本明細書において、「ポリエステル系ポリウレタン」とは、「ポリエステルセグメントを有するポリウレタン」を意味する。「ポリカーボネート系ポリウレタン」とは、「ポリカーボネートセグメントを有するポリウレタン」を意味する。「ポリエーテル系ポリウレタン」とは、「ポリエーテルセグメントを有するポリウレタン」を意味する。
透湿性を高める効果がある点では、分子鎖に親水性の高いポリエーテルセグメントを有するポリエーテル系ポリウレタンが好ましい。具体的には、ポリオキシエチレングリコールや、ポリオキシエチレンとポリオキシプロピレンのブロック共重合体などのポリエーテルセグメントを有し、また、ウレタン結合間の長さが長いものが好ましい。また、透湿性を向上させるためには、ポリウレタンのTgは25℃以下が好ましく、-20℃以下がより好ましく、-50℃以下が特に好ましい。
また、水性ポリウレタンとして、水性ポリウレタンを水又は水と有機溶媒との混合溶媒に分散させたワニスを用いてもよい。環境を阻害しないこと、及び基材への浸透や浸食を抑える効果がある点では水分散型を使用することが好ましい。水性ポリウレタンを分散させたワニスとしては、例えば、ハイドラン(商品名:DIC株式会社製)等が挙げられる。
【0018】
前記樹脂フィルムに含まれる水性ポリウレタンは、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよく、2種以上である場合は、それらの組み合わせ及び比率は、目的に応じて任意に選択できる。
【0019】
前記樹脂フィルムにおいて、樹脂フィルムの総質量に対する、前記ガスバリア性樹脂の含有量の割合(([樹脂フィルムの水性ポリウレタンの含有量(質量部)]+[樹脂フィルムの架橋剤の含有量(質量部)])/[樹脂フィルムの総質量(質量部)]×100)は、90質量%以上であることが好ましく、例えば、95質量%以上、97質量%以上及び99質量%以上のいずれかであってもよい。前記割合が前記下限値以上であることで、前記樹脂を用いたことによる効果が、より顕著に得られ、また、樹脂フィルムのガスバリア性がより高くなる。
前記割合の上限値は特に限定されず、前記割合は100質量%以下であればよい。
【0020】
前記樹脂フィルムにおいて、樹脂フィルムの総質量に対する、前記ガスバリア性樹脂の含有量の割合は、樹脂フィルムの用途に応じて、上述の数値範囲以外に、さらに異なる数値範囲に設定してもよい。
【0021】
前記樹脂フィルムにおいて、水性ポリウレタンは、架橋構造を有する。例えば、前記樹脂フィルムにおいて、水性ポリウレタン同士は、互いに架橋されている。
前記樹脂フィルムは、前記ガスバリア性樹脂である水性ポリウレタン同士の架橋物以外に、さらに、未架橋の水性ポリウレタンを含んでいてもよいし、含んでいなくてもよい。
【0022】
前記架橋構造は、架橋構造を有しない水性ポリウレタンに、架橋剤を作用させることにより、形成させることができる。水性ポリウレタンが、架橋構造を有することにより、樹脂フィルムの耐水性を向上させることができる。また、基材層の透湿性の低下を抑制しつつ、基材層にガスバリア性を付与することができる。
【0023】
(架橋剤)
架橋剤は、前記水性ポリウレタンと反応して、前記水性ポリウレタンを架橋しているか、又は、前記水性ポリウレタンとは反応せずに、相互作用することによって、これらを架橋している。
【0024】
架橋剤は、チタン化合物及び金属キレート系化合物とから選択される1種又は2種以上からなる。チタン化合物としては、アルコキシドチタン化合物、アシレートチタン化合物等が挙げられる。金属キレート系化合物としては、ジルコニウム化合物(例えば、第一稀元素化学工業社製「ジルコゾールAC-7」、「ジルコゾールZC-20」)等が挙げられる。なかでも、チタン化合物は、多官能性があり、また、水性ポリウレタンの水酸基と反応性が高く、さらに、室温でワニスが作成しやすく、前記ワニスを基材に塗工して乾燥する温度で水性ポリウレタンと十分反応するため好ましく用いられる。すなわち、前記樹脂フィルムは、前記架橋構造にチタン化合物を含んでいることが好ましい。ここで、架橋構造が含んでいるチタン化合物とは、架橋剤である前記チタン化合物自体であるか、又は架橋剤である前記チタン化合物に由来する化合物(構造)である。架橋剤であるチタン化合物の具体例としては、チタンラクテート(例えば、マツモトファインケミカル社製「オルガチックスTC310」)、チタントリエタノールアミネート(例えば、マツモトファインケミカル社製「オルガチックスTC400」)等が挙げられる。
【0025】
前記水性ポリウレタンと反応させる前記架橋剤は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよく、2種以上である場合は、それらの組み合わせ及び比率は、目的に応じて任意に選択できる。
【0026】
前記樹脂フィルムにおいて、架橋剤の配合量は、水性ポリウレタンの配合量(質量部)100質量部に対して、35質量部以上であり、40質量部以上が好ましく、50質量部以上がより好ましく、60質量部以上が特に好ましく、65質量部以上、70質量部以上、75質量部以上、80質量部以上、85質量部以上、90質量部以上、95質量部以上であってもよい。ただし、これらは前記配合量の一例である。架橋剤の配合量が、水性ポリウレタンの配合量(質量部)100質量部に対して、上記下限値以上であることにより、基材層上に樹脂フィルムを均一に形成でき、基材層にガスバリア性を付与することができる。
また、前記樹脂フィルムにおいて、架橋剤の配合量は、水性ポリウレタンの配合量(質量部)100質量部に対して、130質量部以下が好ましく、120質量部以下がより好ましく、100質量部以下が特に好ましい。ただし、これらは前記配合量の一例である。架橋剤の配合量が、水性ポリウレタンの配合量(質量部)100質量部に対して、上記上限値以下であることにより、未反応物の残存をなくすことができ、当該未反応物が水に溶解することによるガスバリア性の低下を抑制できる。
【0027】
水性ポリウレタンに、架橋剤を作用させるときの温度(架橋温度)は、70~120℃であることが好ましく、90~110℃であることがより好ましい。
架橋剤を作用させるときの時間(架橋時間)は、0.1分~2時間であることが好ましく、0.2分~10分間であることがより好ましく、0.3分~3分間であることがさらに好ましい。
【0028】
水性ポリウレタンに、架橋剤を作用させるときには、溶媒を用いることが好ましい。
前記溶媒としては、例えば、水、エタノール、2-プロパノール、酢酸エチル等が挙げられる。
前記溶媒は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよく、2種以上である場合は、それらの組み合わせ及び比率は、目的に応じて任意に選択できる。
架橋後のガスバリア性樹脂は、溶媒を除去するため乾燥させることが好ましい。乾燥温度は、90~120℃が好ましく、乾燥時間は、0.2分~10分間であることが好ましく、1分~3分間がより好ましい。
【0029】
前記樹脂フィルムは、水性ポリウレタンと、架橋剤とが配合されており、前記架橋剤が、チタン化合物及び金属キレート系化合物からなる群より選択される1種又は2種以上からなり、前記樹脂フィルムにおいて、前記架橋剤の配合量が、前記ポリエーテル系水性ポリウレタンの配合量100質量部に対して、35質量部以上であることにより、高湿度環境下だけでなく、低湿度環境下においても、前記樹脂フィルムは高い透湿性を有する。また、水性ポリウレタンを含む樹脂組成物を基材層の表面に均一に塗布することができるため、樹脂フィルムを基材層上に均一に形成させることができる。樹脂フィルムの高湿度環境下における透湿性は、例えば、JIS Z 0208に規定のカップ法によって測定した、30℃、75%RHの条件における水蒸気透過量により評価することができる。また、樹脂フィルムの低湿度環境下における透湿性は、JIS Z 0208に規定のカップ法によって測定した、30℃、45%RHの条件における水蒸気透過量により評価することができる。
【0030】
前記樹脂フィルムのJIS Z 0208に規定のカップ法によって測定した、30℃、75%RH(相対湿度75%)の条件における水蒸気透過量は、5500g/m・day以上であることが好ましく、5600g/m・day以上であることがより好ましく、5700g/m・day以上であることがさらに好ましく、5800g/m・day以上であることが特に好ましく、5900g/m・day以上であることが最も好ましく、6000g/m・day以上、6500g/m・day以上、7000g/m・day以上、7500g/m・day以上、8000g/m・day以上、8500g/m・day以上、9000g/m・day以上、9500g/m・day以上、10000g/m・day以上、11000g/m・day以上、及び12000g/m・day以上のいずれであってもよい。前記樹脂フィルムのJIS Z 0208に規定のカップ法によって測定した、30℃、75%RHの条件における水蒸気透過量が、上記下限値以上であることにより、高湿度環境下においても、高い透湿性を有する。
【0031】
前記樹脂フィルムのJIS Z 0208に規定のカップ法によって測定した、30℃、45%RH(相対湿度45%)の条件における水蒸気透過量は、3000g/m・day以上であることが好ましく、3500g/m・day以上であることがより好ましく、4000g/m・day以上であることがさらに好ましく、4500g/m・day以上であることが特に好ましく、5000g/m・day以上、6000g/m・day以上、及び7000g/m・day以上のいずれであってもよい。前記樹脂フィルムのJIS Z 0208に規定のカップ法によって測定した、30℃、45%RHの条件における水蒸気透過量が、上記下限値以上であることにより、低湿度環境下においても、高い透湿性を有する。
一方、前記樹脂フィルムのJIS Z 0208に規定のカップ法によって測定した、30℃、45%RHの条件における水蒸気透過量は、5000g/m・day以下であってもよい。前記樹脂フィルムのJIS Z 0208に規定のカップ法によって測定した、30℃、45%RHの条件における水蒸気透過量が、上記上限値以下であることにより、低湿度環境下における透湿性とガスバリア性との両立を図ることができる。
【0032】
本実施形態の好ましい樹脂フィルムとしては、例えば、前記樹脂フィルムのJIS Z 0208に規定のカップ法によって測定した、30℃、75%RHの条件における水蒸気透過量が、好ましくは5500g/m・day以上、より好ましくは5600g/m・day以上、さらに好ましくは5700g/m・day以上、特に好ましくは5800g/m・day以上、最も好ましくは5900g/m・day以上であり、かつ、前記樹脂フィルムのJIS Z 0208に規定のカップ法によって測定した、30℃、45%RHの条件における水蒸気透過量が、好ましくは3000g/m・day以上、より好ましくは3500g/m・day以上、さらに好ましくは4000g/m・day以上であり、特に好ましくは4500g/m・day以上である樹脂フィルムが挙げられる。前記樹脂フィルムの、JIS Z 0208に規定のカップ法によって測定した、30℃、75%RHの条件における水蒸気透過量と、30℃、45%RHの条件における水蒸気透過量と、が、上記下限値以上であることにより、高湿度環境下においても、低湿度環境下においても高い透湿性を有し、前記樹脂フィルムは外部環境によらず高い透湿性を有する。
一方、前記樹脂フィルムのJIS Z 0208に規定のカップ法によって測定した、30℃、75%RHの条件における水蒸気透過量は、10000g/m・day以下であってもよい。前記樹脂フィルムのJIS Z 0208に規定のカップ法によって測定した、30℃、75%RHの条件における水蒸気透過量が、上記上限値以下であることにより、高湿度環境下における透湿性とガスバリア性との両立を図ることができる。
【0033】
上記30℃、75%RHの条件における水蒸気透過量及び上記30℃、45%RHの条件における水蒸気透過量は、例えば、ガスバリア性樹脂の種類又はその含有量、或いは樹脂フィルムの厚さにより調節することができる。
【0034】
前記樹脂フィルムのJIS P 8117:2009に規定の王研法によって測定した、23℃、50%RH(相対湿度50%)の条件における、空気の透気抵抗度は、5000秒以上が好ましく、10万秒以上が好ましく、100万秒以上がより好ましく、200万秒以上、300万秒以上、400万秒以上、500万秒以上、800万秒以上、及び1000万秒以上のいずれであってもよい。上記空気の透気抵抗度が前記下限値以上であることにより、ガスバリア性に優れる。上記空気の透気抵抗度は、例えば、ガスバリア性樹脂の種類又はその含有量、或いは樹脂フィルムの厚さにより調節することができる。
一方、前記樹脂フィルムのJIS P 8117:2009に規定の王研法によって測定した、23℃、50%RHの条件における、空気の透気抵抗度は、1500万秒以下であってもよい。前記樹脂フィルムのJIS P 8117:2009に規定の王研法によって測定した、23℃、50%RHの条件における、空気の透気抵抗度が、上記上限値以下であることにより、ガスバリア性と水蒸気透過性との両立を図ることができ、かつ高い装置の測定精度を保つことができる。
【0035】
本実施形態のより好ましい樹脂フィルムとしては、例えば、前記樹脂フィルムのJIS Z 0208に規定のカップ法によって測定した、30℃、75%RHの条件における水蒸気透過量が、好ましくは5500g/m・day以上、より好ましくは5600g/m・day以上、さらに好ましくは5700g/m・day以上、特に好ましくは5800g/m・day以上、最も好ましくは5900g/m・day以上であり、かつ、前記樹脂フィルムのJIS Z 0208に規定のカップ法によって測定した、30℃、45%RHの条件における水蒸気透過量が、好ましくは3000g/m・day以上、より好ましくは3500g/m・day以上、さらに好ましくは4000g/m・day以上であり、特に好ましくは4500g/m・day以上であり、かつ、前記樹脂フィルムのJIS P 8117:2009に規定の王研法によって測定した、23℃、50%RHの条件における、空気の透気抵抗度が、好ましくは5000秒以上、より好ましくは10万秒以上、さらに好ましくは100万秒以上である樹脂フィルムが挙げられる。
【0036】
前記樹脂フィルムは、前記ガスバリア性樹脂のみを含んでいてもよい(すなわち、前記ガスバリア性樹脂からなるものであってもよい)し、前記ガスバリア性樹脂のいずれにも該当しない他の成分を含んでいてもよい(すなわち、前記ガスバリア性樹脂と、前記他の成分と、からなるものであってもよい)。
【0037】
<他の成分>
前記樹脂フィルムが含む前記他の成分は、特に限定されず、目的に応じて任意に選択できる。
【0038】
前記他の成分としては、例えば、当該分野で公知の添加剤が挙げられる。
前記添加剤としては、例えば、防曇剤、アンチブロッキング剤、酸化防止剤、帯電防止剤、結晶核剤、無機粒子、有機粒子、無機繊維、有機繊維、減粘剤、増粘剤、熱安定化剤、滑剤、赤外線吸収剤、紫外線吸収剤等が挙げられる。防曇剤は、樹脂フィルム表面を水に馴染みやすくすることができることにより、透湿性を向上させることできるため好ましく用いられる。防曇剤としては、例えば、グリセリンラウレート、ジグリセリンラウレート、デカグリセリンラウレート、グリセリンモノステアレート、ソルビタンステアレート等が挙げられる。無機繊維及び有機繊維は、フィルムの膜強度と耐水性を向上させることができる。有機繊維としては、例えば、セルロース等が挙げられ、セルロースナノファイバー(CNF)が好ましく用いられる。
【0039】
前記樹脂フィルムが含む前記他の成分は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は、目的に応じて任意に選択できる。
【0040】
本実施形態の樹脂フィルムは、1層(単層)からなるものであってもよいし、2層以上の複数層からなるものであってもよい。樹脂フィルムが複数層からなる場合、これら複数層は、互いに同一でも異なっていてもよく、これら複数層の組み合わせは、本発明の効果を損なわない限り、特に限定されない。
【0041】
本実施形態の樹脂フィルムの厚さとしては、特に限定されないが、0.1μm以上4.0μm以下であることが好ましく、0.3μm以上4.0μm以下がより好ましく、例えば、0.3μm以上3.0μm以下、0.3μm以上2.0μm以下、及び0.3μm以上1.5μm以下のいずれであってもよい。樹脂フィルムの厚さが前記下限値以上であることにより、基材層にガスバリア性を付与する効果が向上する。樹脂フィルムの厚さが前記上限値以下であることにより、基材層の透湿性の低下をより抑制することができる。
【0042】
<樹脂フィルムの製造方法>
本実施形態の樹脂フィルムは、例えば、前記ガスバリア性樹脂と、必要に応じて前記他の成分と、を含む樹脂組成物を、後述する基材層の一方の面に塗工し、必要に応じて乾燥させることで、前記基材層上に形成できる。この場合、目的とする積層フィルム自体又はその一部の構成を、直ちに得られる。
【0043】
前記樹脂組成物は、その塗工適性が向上する点から、溶媒を含有していてもよい。
前記溶媒としては、例えば、水、2-プロパノール(IPA)、エタノール、メタノール、メチルエチルケトン(MEK)、酢酸エチル、トルエン、アセトン等が挙げられる。
【0044】
樹脂組成物が含む前記溶媒は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は、目的に応じて任意に選択できる。
【0045】
前記樹脂フィルムを、このように樹脂組成物の塗工を経て製造する方法は、目的とする樹脂フィルムが、比較的低温で分解、発火又は気化する成分等を含む場合に、特に有効である。このような、高温での取り扱いに適さない成分としては、例えば、ソルビン酸カリウム、乳酸ナトリウム等が挙げられる。
【0046】
樹脂組成物の塗工は、公知の方法で行えばよい。例えば、各種コーターを用いる方法で、樹脂組成物を塗工できる。
【0047】
樹脂組成物の乾燥条件は、特に限定されないが、樹脂組成物は、後述する溶媒を含有している場合、加熱乾燥させることが好ましく、この場合、例えば、40~120℃で乾燥させることが好ましい。
【0048】
<<積層フィルム>>
本発明を適用した一実施形態である積層フィルムの構成について説明する。図1は、本発明を適用した一実施形態である積層フィルム1の断面模式図である。図1に示すように、本実施形態の積層フィルム1は、本発明の樹脂フィルム2と、前記樹脂フィルム2上に設けられた基材層3と、を備えて、概略構成されている。本実施形態の積層フィルム1は、包装体、特に医療機器、工業部材、電子部品等の金属製の物品の包装用のフィルムとして用いることができる。
【0049】
<基材層>
基材層(コア層ともいう)3は、上述した樹脂フィルム2上に設けられた樹脂層である。基材層3は、多層フィルム1に柔軟性を付与することができる。基材層3に用いることが可能な樹脂としては、上記機能を付与することが可能な樹脂であって、透湿性を有する樹脂であれば特に制限されないが、ポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂やナイロン系樹脂、エチレン酢酸ビニル共重合体、オレフィン系エラストマー等が挙げられる。基材層は、透湿性を有していれば、多孔質性のものであっても、多孔質性のものでなくてもよい。
【0050】
ポリオレフィン系樹脂としては、ポリエチレン系共重合体、ポリプロピレン系共重合体、ブテン系共重合体が挙げられ、これらの中でも、ポリエチレン系共重合体およびポリプロピレン系共重合体が好ましい。
また、これら共重合体の形態としては、接着性を向上できる観点から、ランダム共重合体、グラフト共重合体、ブロック共重合体、グラフト共重合体が用いられ、特にランダム共重合体が好ましい。
【0051】
前記ポリオレフィン系樹脂とは、オレフィンの共重合物である。
前記ポリエチレン系共重合体とは、エチレンと、エチレン以外のモノマーと、の共重合物である。
前記ポリプロピレン系共重合体とは、プロピレンと、プロピレン以外のモノマーと、の共重合物である。
前記ブテン系共重合体とは、ブテンと、ブテン以外のモノマーと、の共重合物である。
【0052】
ポリエチレン系共重合体としては、特に限定されないが、エチレンとビニル基含有モノマーとの共重合体等が挙げられる。
【0053】
エチレンとビニル基含有モノマーとの共重合体としては、無水マレイン酸グラフト変性直鎖状低密度ポリエチレン(以下、「LLDPE-g-MAH」と記載する。)、エチレン-酢酸ビニル共重合体(以下、「EVA樹脂」と記載する。)、エチレン-メチルメタクリレート共重合体(以下、「EMMA樹脂」と記載する。)、エチレン-エチルアクリレート共重合体(以下、「EEA樹脂」と記載する。)、エチレン-メチルアクリレート共重合体(以下、「EMA樹脂」と記載する。)、エチレン-エチルアクリレート-無水マレイン酸共重合体(以下、「E-EA-MAH樹脂」と記載する。)、エチレン-アクリル酸共重合体(以下、「EAA樹脂」と記載する。)、エチレン-メタクリル酸共重合体(以下、「EMAA樹脂」と記載する。)、アイオノマー(以下、「ION樹脂」と記載する。)、エチレン系熱可塑性エラストマー等が挙げられる。なお、本明細書において、ION樹脂とは、エチレンと少量のアクリル酸又はメタクリル酸との共重合体を、酸部分と金属イオンとの塩形成によってイオン橋かけ構造にしたものを指す。
【0054】
ポリエステル系樹脂としては、具体的には、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリテトラメチレンテレフタレート、ポリヘキサメチレンテレフタレートなどが挙げられる。
【0055】
ナイロン系樹脂としては、例えば、4-ナイロン、6-ナイロン、7-ナイロン、11-ナイロン、12-ナイロン、46-ナイロン、66-ナイロン、69-ナイロン、610-ナイロン、611-ナイロン、612-ナイロン、6T-ナイロン、6Iナイロン、6-ナイロンと66-ナイロンのコポリマー(ナイロン6/66)、6-ナイロンと610-ナイロンのコポリマー、6-ナイロンと611-ナイロンのコポリマー、6-ナイロンと12-ナイロンのコポリマー(ナイロン6/12)、6-ナイロンと612ナイロンのコポリマー、6-ナイロンと6T-ナイロンのコポリマー、6-ナイロンと6I-ナイロンのコポリマー、6-ナイロンと66-ナイロンと610-ナイロンのコポリマー、6-ナイロンと66-ナイロンと12-ナイロンのコポリマー(ナイロン6/66/12)、6-ナイロンと66-ナイロンと612-ナイロンのコポリマー、66-ナイロンと6T-ナイロンのコポリマー、66-ナイロンと6I-ナイロンのコポリマー、6T-ナイロンと6I-ナイロンのコポリマー、及び66-ナイロンと6T-ナイロンと6I-ナイロンのコポリマー、非晶性ナイロン等が挙げられる。中でも、耐熱性、機械的強度、及び入手の容易性の点から、6-ナイロン、12-ナイロン、66-ナイロン、ナイロン6/66、ナイロン6/12、及びナイロン6/66/12等が好ましく、6-ナイロンがより好ましい。
【0056】
基材層3は、1層のみでもよいし、2層以上の複数層でもよい。例えば、基材層3を、異なる材質の複数層からなるものとすることで、基材層3の硬さや透湿性等の特性を調節できる。
【0057】
基材層3の、積層フィルム1の全層に対する厚さの比率は、75~99.9%が好ましく、90~99.9%がより好ましく、95~99.9%がさらに好ましく、97~99.5%が特に好ましい。上記厚さの比率が、上記下限値以上であると、多層フィルム1に柔軟性を付与することができる。上記厚さの比率が、上記上限値以下であると、樹脂フィルムを積層した際の透湿性の低下が抑制される。
【0058】
基材層3の厚さは、10~100μmであることが好ましく、15~50μmであることがより好ましい。上記厚さが好ましい範囲の下限値以上であると、樹脂フィルムを積層した際の透湿性の低下が抑制され、上限値以下であると、柔軟性が得られる。
【0059】
<積層フィルムの製造方法>
次に、上述した積層フィルム1の製造方法について説明する。
本実施形態の積層フィルム1の製造方法は、特に限定されるものではないが、例えば、基材層の一方の面上に、樹脂フィルムを形成するための前記樹脂組成物を塗工し、必要に応じて乾燥させて、基材層の一方の面上に前記樹脂フィルム積層することにより、製造することができる。
【0060】
<<包装体及びその製造方法>>
前記積層フィルムを用いて、その中の前記樹脂フィルムを、包装対象物側に配置し、包装対象物を包装することにより、包装体を製造できる。
前記包装体が前記樹脂フィルムを備えていることにより、前記包装体中の内容物を包装後に乾燥させることができ、且つ、包装体の中に不活性ガスを封入することにより、内容物の劣化を防止することができる。そのため、例えば、医療機器、工業部材、電子部品等の金属製の物品の錆の発生等による劣化を防止することができる。
【0061】
包装時には、例えば、1枚の前記積層フィルムで包装対象物を包み込み、積層フィルムの余剰部位(包装対象物を包み込んでいない部位)を積層フィルムの他の部位と重ね合わせて、シールすることで、包装対象物を包装できる。このとき、積層フィルム中の樹脂フィルム同士を重ね合わせてもよいし、樹脂フィルムと基材層を重ね合わせてもよい。
また、包装時には、例えば、2枚の前記積層フィルムで包装対象物を挟み込み、これら積層フィルム同士を重ね合わせて、シールすることで、包装対象物を包装できる。このとき、積層フィルム中の樹脂フィルム同士を重ね合わせてもよいし、樹脂フィルムと基材層を重ね合わせてもよい。
また、トレーを用いて、その上に包装対象物を載置し、前記積層フィルム中の樹脂フィルムを、トレーの周縁部とシールすることで、包装対象物を包装できる。
【実施例0062】
以下、本発明の効果を実施例及び比較例を用いて詳細に説明するが、本発明は下記の実施例に限定されるものではない。
【0063】
[実施例1]
<<樹脂フィルム及び積層フィルムの製造>>
水性ポリウレタン(DIC社製「ハイドランWLS-230」)(固形分濃度:35質量%)を溶媒(水:2-プロパノール=8:2の混合溶媒)で固形分濃度を3質量%に希釈したものと、チタン系架橋剤(マツモトファインケミカル社製「オルガチックスTC400」、成分濃度:79質量%)60phr(水性ポリウレタン100質量部に対してオルガチックスTC400 60質量部)と、を混合して得られた樹脂溶液を、基材フィルム(3M社製「マイクロポーラスフィルム」、厚さ30μm)の一方の面に塗工し、100℃で2分間乾燥させることによって、基材フィルム上に樹脂フィルム(厚さ1.05μm)を形成した。前記樹脂溶液は、樹脂フィルムを形成するための前記樹脂組成物に相当し、前記基材フィルムは、先に説明した基材層に相当する。
以上により、基材フィルムに、樹脂フィルムが積層されて構成された積層フィルムを得た。
【0064】
[実施例2]
<<樹脂フィルム及び積層フィルムの製造>>
チタン系架橋剤(マツモトファインケミカル社製「オルガチックスTC400」)を、60phr用いる代わりに、50phr(水性ポリウレタン100質量部に対してオルガチックスTC400 50質量部)を用いる以外は、実施例1と同様にして、基材フィルム上に樹脂フィルム(厚さ1.05μm)を形成した。
以上により、基材フィルムに、樹脂フィルムが積層されて構成された積層フィルムを得た。
【0065】
[実施例3]
<<樹脂フィルム及び積層フィルムの製造>>
チタン系架橋剤(マツモトファインケミカル社製「オルガチックスTC400」)を、60phr用いる代わりに、40phr(水性ポリウレタン100質量部に対してオルガチックスTC400 40質量部)を用いる以外は、実施例1と同様にして、基材フィルム上に樹脂フィルム(厚さ1.05μm)を形成した。
以上により、基材フィルムに、樹脂フィルムが積層されて構成された積層フィルムを得た。
【0066】
[実施例4]
<<樹脂フィルム及び積層フィルムの製造>>
水性ポリウレタン(DIC社製「ハイドランWLS-230」)(固形分濃度:35質量%)を溶媒(水:2-プロパノール=8:2の混合溶媒)で固形分濃度を3質量%に希釈したものの代わりに、水性ポリウレタン(DIC社製「ハイドランWLS-230」)(固形分濃度:35質量%)を溶媒(水:2-プロパノール=8:2の混合溶媒)で固形分濃度を8.1質量%に希釈したものを用い、チタン系架橋剤(マツモトファインケミカル社製「オルガチックスTC400」)を、60phr用いる代わりに、50phr(水性ポリウレタン100質量部に対してオルガチックスTC400 50質量部)を用いる以外は、実施例1と同様にして、基材フィルム上に樹脂フィルム(厚さ2.8μm)を形成した。
以上により、基材フィルムに、樹脂フィルムが積層されて構成された積層フィルムを得た。
【0067】
[実施例5]
<<樹脂フィルム及び積層フィルムの製造>>
水性ポリウレタン(DIC社製「ハイドランWLS-230」)(固形分濃度:35質量%)を溶媒(水:2-プロパノール=8:2の混合溶媒)で固形分濃度を3質量%に希釈したものの代わりに、水性ポリウレタン(DIC社製「ハイドランWLS-230」)(固形分濃度:35質量%)を溶媒(水:2-プロパノール=8:2の混合溶媒)で固形分濃度を9.5質量%に希釈したものを用いる以外は、実施例1と同様にして、基材フィルム上に樹脂フィルム(厚さ3.3μm)を形成した。
以上により、基材フィルムに、樹脂フィルムが積層されて構成された積層フィルムを得た。
【0068】
[比較例1]
<<樹脂フィルム及び積層フィルムの製造>>
チタン系架橋剤(マツモトファインケミカル社製「オルガチックスTC400」)を、60phr用いる代わりに、30phr(水性ポリウレタン100質量部に対してオルガチックスTC400 30質量部)を用いる以外は、実施例1と同様にして、基材フィルム上に樹脂フィルム(厚さ1.05μm)を形成した。
以上により、基材フィルムに、樹脂フィルムが積層されて構成された積層フィルムを得た。
【0069】
[比較例2]
<<樹脂フィルム及び積層フィルムの製造>>
チタン系架橋剤(マツモトファインケミカル社製「オルガチックスTC400」)を、60phr用いる代わりに、20phr(水性ポリウレタン100質量部に対してオルガチックスTC400 20質量部)を用いる以外は、実施例1と同様にして、基材フィルム上に樹脂フィルム(厚さ1.05μm)を形成した。
以上により、基材フィルムに、樹脂フィルムが積層されて構成された積層フィルムを得た。
【0070】
[比較例3]
<<樹脂フィルム及び積層フィルムの製造>>
チタン系架橋剤(マツモトファインケミカル社製「オルガチックスTC400」)を、60phr用いる代わりに、10phr(水性ポリウレタン100質量部に対してオルガチックスTC400 10質量部)を用いる以外は、実施例1と同様にして、基材フィルム上に樹脂フィルム(厚さ1.05μm)を形成した。
以上により、基材フィルムに、樹脂フィルムが積層されて構成された積層フィルムを得た。
【0071】
<<樹脂フィルムの水蒸気透過量の測定>>
上記で得られた実施例1~5、比較例1~3の積層フィルム、及び、前記実施例及び比較例で用いた基材フィルム(3M社製「マイクロポーラスフィルム」、厚さ30μm)について、JIS Z 0208に規定のカップ法により、30℃、75%RHの条件及び30℃、45%RHの条件における水蒸気透過量をそれぞれ測定した。測定は、直径60mmの容器に、乾燥した10gの塩化カルシウムを入れて実施した。次に、実施例1~5、比較例1~3の積層フィルムについては、下記の式により、測定された積層フィルムの水蒸気透過量から、基材フィルムを含まない樹脂フィルムの水蒸気透過量を算出した。結果を表1に示す。
【0072】
【数1】
【0073】
<<樹脂フィルムの透気抵抗度の測定>>
上記で得られた実施例1~5、比較例1~3の積層フィルム、及び、前記実施例及び比較例で用いた基材フィルム(3M社製「マイクロポーラスフィルム」、厚さ30μm)について、JIS P 8117:2009に規定の王研法により、23℃、50%の条件における、空気の透気抵抗度を測定した。次に、実施例1~5、比較例1~3の積層フィルムについては、基材フィルムの透気抵抗度から、各実施例の積層フィルムの透気抵抗度を減算することにより、各実施例の樹脂フィルムの透気抵抗度を算出した。結果を表1に示す。
【0074】
<<積層フィルムにおける樹脂フィルムの形成状態の評価>>
上記で得られた実施例1~5、及び、比較例1~3の積層フィルムの、樹脂フィルムの表面(基材フィルム側とは反対側の露出面)を目視観察し、以下の評価基準により、積層フィルムにおける樹脂フィルムの形成状態を評価した。
<評価基準>
A:樹脂フィルムが基材フィルム上に均一に形成されている。
B:樹脂フィルムが基材フィルム上に均一に形成されていない領域が一部認められるが、全体的にはほぼ均一に基材フィルム上に樹脂フィルムが形成されている。
C:樹脂フィルムが基材フィルム上に均一に形成されておらず、基材フィルムの大部分に樹脂フィルムが形成されていない領域がある。
【0075】
【表1】
【0076】
上記結果から明らかなように、実施例1~5の樹脂フィルムは、30℃、75%RHの条件における水蒸気透過量が、5500g/m・day以上の条件を満たし、且つ、30℃、45%RHの条件における水蒸気透過量が、3000g/m・day以上の条件を満たしており、高湿度環境下であっても、低湿度環境下であっても、優れた透湿性を有していた。また、空気の透気抵抗度が、5000秒以上の条件を満たしているため、ガスバリア性にも優れていた。さらに、樹脂フィルムの形成状態も、実施例1、4及び5の樹脂フィルムの評価は「A」、実施例2及び3の樹脂フィルムの評価は「B」であり、樹脂フィルムの形成状態も優れていた。それに対し、架橋剤の配合量が、水性ポリウレタン100質量部に対して35質量部未満の比較例1~3の樹脂フィルムは、樹脂フィルムの形成状態の評価が「C」であり、樹脂フィルムの形成状態が悪く、水蒸気透過量の測定はできなかった。すなわち、比較例1~3の樹脂フィルムでは透湿性を制御することができなかった。また、架橋剤の配合量が、水性ポリウレタン100質量部に対して、それぞれ20質量部、10質量部の比較例2、3の樹脂フィルムは、空気の透気抵抗度が、5000秒未満であるため、ガスバリア性においても劣っていた。
【産業上の利用可能性】
【0077】
本発明は、医療機器、工業部材、電子部品等の金属製の物品の包装に利用可能である。
【符号の説明】
【0078】
1…積層フィルム
2…樹脂フィルム
3…基材層
図1