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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024170990
(43)【公開日】2024-12-11
(54)【発明の名称】タイミング判定装置
(51)【国際特許分類】
   H04L 7/00 20060101AFI20241204BHJP
   G06F 13/42 20060101ALI20241204BHJP
【FI】
H04L7/00 990
G06F13/42 350Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023087805
(22)【出願日】2023-05-29
(71)【出願人】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】神▲崎▼ 健正
(72)【発明者】
【氏名】松下 悠亮
(72)【発明者】
【氏名】近藤 信行
(72)【発明者】
【氏名】菅島 健司
【テーマコード(参考)】
5K047
【Fターム(参考)】
5K047AA03
5K047AA18
5K047MM56
(57)【要約】
【課題】データ取得の信頼性を向上させる。
【解決手段】転送回路12は、第1,2ハードウェア101,102のそれぞれから互いに同一タイミングで複数の出力データを取得した場合に、複数の出力データのそれぞれについて、出力データに付加されている出力時サイクルカウンタ値と、同一タイミングを示すマスタカウンタの値(以下、同一マスタカウンタ値)との差分を示す第1,2差分値を算出する。転送回路12は、第1,2ハードウェア101,102のそれぞれについて、算出した第1,2差分値と第1,2基準差分値とが一致しているか否かを判断し、一致していないハードウェアが存在する場合には、複数の出力データは同時刻に出力されたものではないと判断する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一定周期が経過する毎にインクリメントするサイクルカウンタ(121,122)を備えてデータを出力する時点における前記サイクルカウンタの値である出力時サイクルカウンタ値を付加した前記データを出力するように構成された複数のハードウェア(101,102)のそれぞれから、前記ハードウェアが出力した前記データである出力データを取得するように構成されたデータ取得部(11)と、
前記一定周期が経過する毎にインクリメントするように構成されたマスタカウンタ(31)と、
複数の前記ハードウェアのそれぞれから互いに同一タイミングで複数の前記出力データを取得した場合に、複数の前記出力データのそれぞれについて、前記出力データに付加されている前記出力時サイクルカウンタ値と、前記同一タイミングを示す前記マスタカウンタの値である同一マスタカウンタ値との差分を示す差分値を算出するように構成された減算部(32)と、
複数の前記ハードウェアのそれぞれについて、前記減算部が算出した前記差分値を基準差分値として設定するように構成された基準設定部(S20,S30)と、
前記基準設定部が複数の前記ハードウェアのそれぞれについて複数の前記基準差分値を設定した後において、複数の前記ハードウェアのそれぞれについて、前記減算部が算出した前記差分値と前記基準差分値とが一致していることを示す予め設定された一致判定条件が成立しているか否かを判断し、複数の前記ハードウェアのうち、前記一致判定条件が成立していない前記ハードウェアが存在する場合には、複数の前記出力データは同時刻に出力されたものではないと判断するように構成された比較判定部(33)と
を備えるタイミング判定装置(1)。
【請求項2】
請求項1に記載のタイミング判定装置であって、
前記データ取得部は、当該タイミング判定装置へ電源が投入された後に、前記出力データを取得するように構成されるタイミング判定装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載のタイミング判定装置であって、
複数の前記出力データは同時刻に出力されたものではないと前記比較判定部が判断した場合に、前記差分値と前記基準差分値とが一致していない前記ハードウェアに対して、前記データの出力を要求するように構成された再送要求部(34)を更に備えるタイミング判定装置。
【請求項4】
請求項3に記載のタイミング判定装置であって、
前記再送要求部は、複数の前記ハードウェアのうち、優先度が高い前記ハードウェアである優先ハードウェアを選択し、前記優先ハードウェア以外の前記ハードウェアに対して、前記優先ハードウェアが前記データを出力した時刻に一致する前記データの出力を要求するように構成されるタイミング判定装置。
【請求項5】
請求項3に記載のタイミング判定装置であって、
前記データの出力を要求した前記ハードウェアが、該当する前記データを出力することができない場合には、前記データが無いことを示すデータ無通知を生成するように構成された通知生成部(S120)を更に備えるタイミング判定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ハードウェアがデータを出力したタイミングを判定するタイミング判定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、自装置におけるデータの伝送遅延時間を示す遅延時間情報を他装置へ送信することにより、他装置において、遅延時間情報に基づいて伝搬遅延時間の補正を行うことができるように構成された車載装置が記載されている。これにより、車載装置間における一方の方向のデータの伝搬遅延時間と他方の方向のデータの伝搬遅延時間とが互いに異なる場合であっても、他装置において、補正後の伝搬遅延時間を用いたより正確な時刻補正を行うことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2023-19384号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
発明者の詳細な検討の結果、今後、車両における自動運転およびサービスの普及と精度向上とにより、扱うデータのタイミングの精度向上が必要となっており、同時刻でデータの取得を行う必要性が増加するという課題が見出された。
【0005】
本開示は、データ取得の信頼性を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様は、データ取得部(11)と、マスタカウンタ(31)と、減算部(32)と、基準設定部(S20,S30)と、比較判定部(33)とを備えるタイミング判定装置(1)である。
【0007】
データ取得部は、一定周期が経過する毎にインクリメントするサイクルカウンタ(121,122)を備えてデータを出力する時点におけるサイクルカウンタの値である出力時サイクルカウンタ値を付加したデータを出力するように構成された複数のハードウェア(101,102)のそれぞれから、ハードウェアが出力したデータである出力データを取得するように構成される。
【0008】
マスタカウンタは、一定周期が経過する毎にインクリメントするように構成される。
減算部は、複数のハードウェアのそれぞれから互いに同一タイミングで複数の出力データを取得した場合に、複数の出力データのそれぞれについて、出力データに付加されている出力時サイクルカウンタ値と、同一タイミングを示すマスタカウンタの値である同一マスタカウンタ値との差分を示す差分値を算出するように構成される。
【0009】
基準設定部は、複数のハードウェアのそれぞれについて、減算部が算出した差分値を基準差分値として設定するように構成される。
比較判定部は、基準設定部が複数のハードウェアのそれぞれについて複数の基準差分値を設定した後において、複数のハードウェアのそれぞれについて、減算部が算出した差分値と基準差分値とが一致していることを示す予め設定された一致判定条件が成立しているか否かを判断し、複数のハードウェアのうち、一致判定条件が成立していないハードウェアが存在する場合には、複数の出力データは同時刻に出力されたものではないと判断するように構成される。
【0010】
このように構成された本開示のタイミング判定装置は、複数の出力データが同時刻に出力されたものであるか否かを判断することができる。このため、本開示のタイミング判定装置は、複数の出力データが同時刻に出力されたものでないにも関わらず、複数の出力データが同時刻に出力されたものであると判断されてしまう事態の発生の抑制することができ、データ取得の信頼性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】データ転送装置の構成を示すブロック図である。
図2】データ転送装置の機能的な構成を示す機能ブロック図である。
図3】第1,2基準差分値および第1,2差分値を説明する図である。
図4】転送回路が実行する処理を示すフローチャートである。
図5】再送要求によるデータ指示方法を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に本開示の実施形態を図面とともに説明する。
図1に示すように、本実施形態のデータ転送装置1は、通信部11と、転送回路12とを備える。
【0013】
通信部11は、バス15に接続された装置との間で、予め設定された通信プロトコル(例えば、CAN通信プロトコル)に従ってデータの送受信を行う。CANは、Controller Area Networkの略である。CANは登録商標である。
【0014】
バス15には、例えば第1ハードウェア101および第2ハードウェア102が接続される。
転送回路12は、多数の論理回路を含むデジタル回路であり、タイミング取得部21と、差分算出部22と、タイミング判定部23とを備える。
【0015】
タイミング判定部23には、バス16を介して、例えばCPU111、SRAM112およびSDRAM113が接続される。CPUは、Central Processing Unitの略である。SRAMは、Static Random Access Memoryの略である。SDRAMは、Synchronous Dynamic Random Access Memoryの略である。
【0016】
図2に示すように、第1ハードウェア101および第2ハードウェア102はそれぞれ、互いに異なる所定の処理を実行し、第1データフレームおよび第2データフレームを出力するように構成される。第1ハードウェア101は、例えば、車両の前方を撮影する撮影装置である。第2ハードウェア102は、例えば、車両に搭載されたGPSアンテナを介して受信したGPS信号等に基づいて車両の位置を検出する測位装置である。
【0017】
第1,2データフレームはそれぞれ、第1,2ハードウェア101,102が生成したデータに、出力元ハードウェア識別情報(以下、出力元ハードウェアID)およびデータ識別情報(以下、データID)が付加されて形成される。出力元ハードウェアIDは、データフレームの出力元のハードウェアを示す識別情報である。データIDは、生成したデータのデータ種別を示す識別情報である。
【0018】
第1,2データフレームは、ハードウェアIDフィールドと、データIDフィールドと、データフィールドとを備える。
ハードウェアIDフィールドは、出力元ハードウェアIDを格納する。データIDフィールドは、データIDを格納する。
【0019】
第1,2データフレームのデータフィールドはそれぞれ、第1,2ハードウェア101,102が生成したデータを格納する。
第1ハードウェア101および第2ハードウェア102はそれぞれ、第1サイクルカウンタ121および第2サイクルカウンタ122を備える。
【0020】
第1,2サイクルカウンタ121,122は、一定の所定時間が経過する毎にインクリメント(すなわち、1加算)するカウンタである。
第1データフレームには、第1ハードウェア101が第1データフレームを送信するときにおける第1サイクルカウンタ121の値(以下、第1サイクルカウンタ値)が付加される。同様に、第2データフレームには、第2ハードウェア102が第2データフレームを送信するときにおける第2サイクルカウンタ122の値(以下、第2サイクルカウンタ値)が付加される。
【0021】
転送回路12のタイミング取得部21は、第1,2ハードウェア101,102から通信部11を介して受信された第1,2データフレームから第1,2サイクルカウンタ値を抽出することにより、第1,2サイクルカウンタ値を取得する。
【0022】
転送回路12の差分算出部22は、マスタカウンタ31と、減算部32とを備える。マスタカウンタ31は、一定の所定時間が経過する毎にインクリメントするカウンタである。マスタカウンタ31および第1,2サイクルカウンタ121,122において、インクリメントする時間間隔(すなわち、上記の所定時間)は互いに一致している。以下、マスタカウンタ31の値をマスタカウンタ値という。
【0023】
減算部32は、タイミング取得部21が取得した第1サイクルカウンタ値とマスタカウンタ値との差分(以下、第1差分値)と、タイミング取得部21が取得した第2サイクルカウンタ値とマスタカウンタ値との差分(以下、第2差分値)とを算出する。
【0024】
転送回路12のタイミング判定部23は、第1,2ハードウェア101,102から通信部11を介して受信された第1,2データフレームをCPU111、SRAM112およびSDRAM113へ出力する。
【0025】
タイミング判定部23は、比較判定部33と、再送要求部34とを備える。
比較判定部33は、第1,2ハードウェア101,102から第1,2データフレームを同じタイミングで取得した場合に、第1,2データフレームが同時刻に出力されたか否かを判断する。そして、第1,2データフレームが同時刻に出力されている場合に、比較判定部33は、第1,2データフレームをCPU111、SRAM112およびSDRAM113へ出力する。
【0026】
再送要求部34は、第1,2データフレームが同時刻に出力されていない場合に、第1,2ハードウェア101,102の何れかに対して、後述する再送要求を出力する。
次に、転送回路12が実行する処理の概略を説明する。
【0027】
転送回路12は、データ転送装置1へ電源が投入された後に、任意のタイミングで、第1ハードウェア101および第2ハードウェア102から、第1データフレームおよび第2データフレームを取得し、第1データフレームおよび第2データフレームから第1サイクルカウンタ値および第2サイクルカウンタ値を抽出する。
【0028】
転送回路12は、第1データフレームまたは第2データフレームを取得した時点で、マスタカウンタ31からマスタカウンタ値を取得する。
転送回路12は、第1サイクルカウンタ値からマスタカウンタ値を減算した値を第1基準差分値として算出し、第2サイクルカウンタ値からマスタカウンタ値を減算した値を第2基準差分値として算出する。
【0029】
転送回路12は、算出した第1基準差分値および第2基準差分値を、転送回路12内に記憶する。
例えば、図3の枠FL1内に示すように、電源が投入された後に任意のタイミングで取得した第1サイクルカウンタ値および第2サイクルカウンタ値がそれぞれ「200」および「300」であり、第1データフレームまたは第2データフレームを取得した時点におけるマスタカウンタ値が「100」であるとする。
【0030】
この場合には、第1基準差分値は「100」であり、第2基準差分値は「200」である。
その後、転送回路12は、第1ハードウェア101および第2ハードウェア102から同じタイミングで第1データフレームおよび第2データフレームを取得すると、第1データフレームおよび第2データフレームから、それぞれ第1サイクルカウンタ値および第2サイクルカウンタ値を抽出する。
【0031】
転送回路12は、第1データフレームまたは第2データフレームを取得した時点で、マスタカウンタ31からマスタカウンタ値を取得する。
転送回路12は、第1サイクルカウンタ値からマスタカウンタ値を減算した値を第1差分値として算出し、第2サイクルカウンタ値からマスタカウンタ値を減算した値を第2差分値として算出する。
【0032】
転送回路12は、第1差分値が第1基準差分値に一致し且つ第2差分値が第2基準差分値に一致している場合に、第1データフレームおよび第2データフレームは同時刻に出力されたと判断する。
【0033】
転送回路12は、第1差分値が第1基準差分値に一致していない場合、または、第2差分値が第2基準差分値に一致していない場合に、第1データフレームおよび第2データフレームは同時刻に出力されなかったと判断する。
【0034】
図3の枠FL2内に示すように、同じタイミングで取得した第1,2データフレームに付加されている第1サイクルカウンタ値および第2サイクルカウンタ値がそれぞれ「500」および「600」であり、第1データフレームまたは第2データフレームを取得した時点におけるマスタカウンタ値が「400」であるとする。
【0035】
この場合には、第1差分値は「100」であり、第2差分値は「200」である。このため、第1差分値が第1基準差分値に一致し、且つ、第2差分値が第2基準差分値に一致する。このため、転送回路12は、第1データフレームおよび第2データフレームは同時刻に出力されたと判断する。
【0036】
図3の枠FL3内に示すように、同じタイミングで取得した第1,2データフレームに付加されている第1サイクルカウンタ値および第2サイクルカウンタ値がそれぞれ「1100」および「1500」であり、第1データフレームまたは第2データフレームを取得した時点におけるマスタカウンタ値が「900」であるとする。
【0037】
この場合には、第1差分値は「200」であり、第2差分値は「600」である。このため、第1差分値が第1基準差分値に一致しておらず、第2差分値が第2基準差分値に一致していない。このため、転送回路12は、第1データフレームおよび第2データフレームは同時刻に出力されなかったと判断する。
【0038】
次に、転送回路12が実行する処理の手順を説明する。
図4に示すように、転送回路12は、S10にて、第1基準差分値および第2基準差分値を記憶しているか否かを判断する。ここで、第1基準差分値および第2基準差分値を記憶している場合には、転送回路12は、S40に移行する。一方、第1基準差分値および第2基準差分値を記憶してない場合には、転送回路12は、S20にて、予め設定された基準算出条件が成立したか否かを判断する。本実施形態の基準算出条件は、同じタイミングで第1,2データフレームを取得することである。転送回路12は、第1データフレームが通信部11で受信されてから予め設定された同一タイミング判定時間が経過するまでに第2データフレームが通信部11で受信された場合に、同じタイミングで第1,2データフレームを取得したと判断する。同様に、転送回路12は、第2データフレームが通信部11で受信されてから同一タイミング判定時間が経過するまでに第1データフレームが通信部11で受信された場合に、同じタイミングで第1,2データフレームを取得したと判断する。
【0039】
ここで、基準算出条件が成立していない場合には、転送回路12は、処理を一旦終了する。一方、基準算出条件が成立した場合には、転送回路12は、S30にて、上述した手順で第1基準差分値および第2基準差分値を算出し、算出した第1基準差分値および第2基準差分値を記憶する。第1基準差分値および第2基準差分値を記憶すると、転送回路12は、S40に移行する。
【0040】
S40に移行すると、転送回路12は、第1データフレームまたは第2データフレームが通信部11で受信されたか否かを判断する。ここで、第1,2データフレームが通信部11で受信されていない場合には、転送回路12は、処理を一旦終了する。
【0041】
一方、第1データフレームまたは第2データフレームが通信部11で受信された場合には、転送回路12は、S50にて、マスタカウンタ31からマスタカウンタ値を取得する。
【0042】
転送回路12は、S60にて、第1データフレームおよび第2データフレームが同じタイミングで受信されたか否かを判断する。第1データフレームおよび第2データフレームが同じタイミングで受信されたか否かは、上記の基準算出条件と同一の条件で判断される。
【0043】
ここで、第1データフレームおよび第2データフレームが同じタイミングで受信されていない場合には、転送回路12は、S130に移行する。
一方、第1データフレームおよび第2データフレームが同じタイミングで受信された場合には、転送回路12は、S70にて、受信した第1データフレームの第1差分値が第1基準差分値に一致し、且つ、受信した第2データフレームの第2差分値が第2基準差分値に一致しているか否かを判断する。
【0044】
ここで、第1差分値が第1基準差分値に一致し且つ第2差分値が第2基準差分値に一致している場合には、転送回路12は、S130に移行する。
一方、第1差分値が第1基準差分値に一致していないか、第2差分値が第2基準差分値に一致していない場合には、転送回路12は、S80にて、第1ハードウェア101および第2ハードウェア102の優先順位を判別する。具体的には、第1ハードウェア101および第2ハードウェア102に対して予め設定されている優先度に基づいて、優先順位を判別する。例えば、第1ハードウェア101の優先度が第2ハードウェア102の優先度より高い場合には、優先順位の1位は第1ハードウェア101であり、優先順位の2位は第2ハードウェア102である。
【0045】
転送回路12は、S90にて、優先順位が低いハードウェアに対して再送要求を出力する。例えば、優先順位の1位が第1ハードウェア101であり、優先順位の2位が第2ハードウェア102である場合には、転送回路12は、第2ハードウェア102に対して再送要求を出力する。
【0046】
例えば、図5に示すように、第1差分値と第1基準差分値との差分値が「100」であり、第2差分値と第2基準差分値との差分値が「400」である場合には、上記の「100」と上記の「400」との差分値は「300」である。
【0047】
このため、転送回路12は、第2サイクルカウンタ値とマスタカウンタ値との差が「300」になる第2サイクルカウンタ値(すなわち、「1200」)におけるデータを格納した第2データフレームを再送することを要求する再送要求を第2ハードウェア102に対して出力する。
【0048】
S90の処理が終了すると、転送回路12は、図4に示すように、S100にて、再送要求の出力先から返信があるか否かを判断する。ここで、再送要求の出力先から返信がない場合には、転送回路12は、S100の処理を繰り返すことにより、再送要求の出力先から返信があるまで待機する。
【0049】
そして、再送要求の出力先から返信があると、転送回路12は、S110にて、返信が、再送要求で要求したデータフレームであるか、再送要求に対応したデータが無いことを示すデータ無通知であるかを判断する。
【0050】
ここで、返信が、再送要求で要求したデータフレームである場合には、転送回路12は、S130に移行する。一方、返信が、データ無通知である場合には、転送回路12は、S120にて、CPU111、SRAM112およびSDRAM113へ出力するためのデータ無通知を生成し、S130に移行する。
【0051】
S130に移行すると、転送回路12は、第1,2ハードウェア101,102から受信したデータをCPU111、SRAM112およびSDRAM113へ転送し、処理を一旦終了する。転送回路12の転送態様として、以下の第1転送態様、第2転送態様、第3転送態様および第4転送態様が挙げられる。
【0052】
第1転送態様では、転送回路12は、第1データフレームに対応するデータのみを出力する。
第2転送態様では、転送回路12は、第2データフレームに対応するデータのみを出力する。
【0053】
第3転送態様では、転送回路12は、第1データフレームに対応するデータと、第2データフレームに対応するデータとの両方を出力する。
第4転送態様では、転送回路12は、第1データフレームに対応するデータと、データ無通知とを出力する。
【0054】
なお、転送回路12は、転送回路12の動作中において、S10~S130の処理を繰り返し実行する。
データ転送装置1を構成するこれらの要素を実現する手法はソフトウェアであってもよく、その一部または全部の要素について、一つあるいは複数のハードウェアを用いて実現してもよい。例えば、上記機能がハードウェアである電子回路によって実現される場合、その電子回路は多数の論理回路を含むデジタル回路、またはアナログ回路、あるいはこれらの組合せによって実現してもよい。
【0055】
このように構成されたデータ転送装置1は、通信部11と、マスタカウンタ31と、転送回路12とを備える。
通信部11は、一定周期が経過する毎にインクリメントする第1,2サイクルカウンタ121,122を備えてデータを出力する時点における第1,2サイクルカウンタ121,122の値(以下、出力時サイクルカウンタ値)を付加したデータを出力するように構成された第1,2ハードウェア101,102のそれぞれから、第1,2ハードウェア101,102が出力したデータ(以下、出力データ)を取得するように構成される。
【0056】
マスタカウンタ31は、一定周期が経過する毎にインクリメントするように構成される。
転送回路12は、第1,2ハードウェア101,102のそれぞれから互いに同一タイミングで複数の出力データを取得した場合に、複数の出力データのそれぞれについて、出力データに付加されている出力時サイクルカウンタ値と、同一タイミングを示すマスタカウンタ31の値(以下、同一マスタカウンタ値)との差分を示す第1,2差分値を算出するように構成される。
【0057】
転送回路12は、第1,2ハードウェア101,102のそれぞれについて、算出した第1,2差分値を第1,2基準差分値として設定するように構成される。
転送回路12は、第1,2ハードウェア101,102のそれぞれについて第1,2基準差分値を設定した後において、第1,2ハードウェア101,102のそれぞれについて、算出した第1,2差分値と第1,2基準差分値とが一致しているか否かを判断し、第1,2ハードウェア101,102のうち、一致していないハードウェアが存在する場合には、複数の出力データは同時刻に出力されたものではないと判断するように構成される。
【0058】
このようなデータ転送装置1は、複数の出力データが同時刻に出力されたものであるか否かを判断することができる。このため、データ転送装置1は、複数の出力データが同時刻に出力されたものでないにも関わらず、複数の出力データが同時刻に出力されたものであると判断されてしまう事態の発生の抑制することができ、データ取得の信頼性を向上させることができる。
【0059】
通信部11は、当該データ転送装置1へ電源が投入された後に、出力データを取得するように構成される。これにより、データ転送装置1は、第1,2ハードウェア101,102に電源が投入されておらず第1,2ハードウェア101,102がデータを出力していないにも関わらず、出力データを取得する処理を行ってしまうという無駄の発生を抑制することができる。
【0060】
データ転送装置1は、複数の出力データは同時刻に出力されたものではないと判断した場合に、差分値と基準差分値とが一致していないハードウェア(すなわち、第1,2ハードウェア101,102の少なくとも一方)に対して、データの出力を要求するように構成された再送要求部34を更に備える。これにより、データ転送装置1は、第1,2ハードウェア101,102から同時刻のデータを取得する頻度を増加させることができる。
【0061】
再送要求部34は、第1,2ハードウェア101,102のうち、優先度が高いハードウェア(以下、優先ハードウェア)を選択し、優先ハードウェア以外のハードウェアに対して、優先ハードウェアがデータを出力した時刻に一致するデータの出力を要求するように構成される。これにより、データ転送装置1は、第1,2ハードウェア101,102から同時刻のデータを取得するための処理負荷を低減することができる。
【0062】
データ転送装置1は、データの出力を要求したハードウェアが、該当するデータを出力することができない場合には、データが無いことを示すデータ無通知を生成するように構成される。これにより、データ転送装置1は、同時刻のデータを取得することができなかったことを、転送先(すなわち、CPU111、SRAM112およびSDRAM113)に通知することができる。
【0063】
以上説明した実施形態において、データ転送装置1はタイミング判定装置に相当し、通信部11はデータ取得部に相当し、S20,S30は基準設定部としての処理に相当し、S120は通知生成部としての処理に相当する。
【0064】
また、一定の所定時間は一定周期に相当し、第1,2サイクルカウンタ121,122はサイクルカウンタに相当し、第1,2ハードウェア101,102はハードウェアに相当し、第1,2差分値は差分値に相当し、第1,2基準差分値は基準差分値に相当し、S70の判定条件は一致判定条件に相当する。
【0065】
以上、本開示の一実施形態について説明したが、本開示は上記実施形態に限定されるものではなく、種々変形して実施することができる。
[変形例1]
上記実施形態では、データ転送装置1が2つのハードウェアに接続されている形態を示したが、データ転送装置1が3つ以上のハードウェアに接続されていてもよい。
【0066】
[変形例2]
上記実施形態では、差分値と基準差分値との差が0である場合に、差分値が基準差分値に一致していると判断する形態を示した。しかし、差分値と基準差分値との差が予め設定された一致判定値(例えば、10)以下である場合に、差分値が基準差分値に一致していると判断するようにしてもよい。
【0067】
本開示に記載の転送回路12およびその手法は、コンピュータプログラムにより具体化された一つ乃至は複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサおよびメモリを構成することによって提供された専用コンピュータにより、実現されてもよい。あるいは、本開示に記載の転送回路12およびその手法は、一つ以上の専用ハードウェア論理回路によってプロセッサを構成することによって提供された専用コンピュータにより、実現されてもよい。もしくは、本開示に記載の転送回路12およびその手法は、一つ乃至は複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサおよびメモリと一つ以上のハードウェア論理回路によって構成されたプロセッサとの組み合わせにより構成された一つ以上の専用コンピュータにより、実現されてもよい。また、コンピュータプログラムは、コンピュータにより実行されるインストラクションとして、コンピュータ読み取り可能な非遷移有形記録媒体に記憶されてもよい。転送回路12に含まれる各部の機能を実現する手法には、必ずしもソフトウェアが含まれている必要はなく、その全部の機能が、一つあるいは複数のハードウェアを用いて実現されてもよい。
【0068】
上記実施形態における1つの構成要素が有する複数の機能を、複数の構成要素によって実現したり、1つの構成要素が有する1つの機能を、複数の構成要素によって実現したりしてもよい。また、複数の構成要素が有する複数の機能を、1つの構成要素によって実現したり、複数の構成要素によって実現される1つの機能を、1つの構成要素によって実現したりしてもよい。また、上記実施形態の構成の一部を省略してもよい。また、上記実施形態の構成の少なくとも一部を、他の上記実施形態の構成に対して付加または置換してもよい。
【0069】
上述したデータ転送装置1の他、当該データ転送装置1を構成要素とするシステム、当該データ転送装置1としてコンピュータを機能させるためのプログラム、このプログラムを記録した半導体メモリ等の非遷移的実体的記録媒体、タイミング判定方法など、種々の形態で本開示を実現することもできる。
[本明細書が開示する技術思想]
[項目1]
一定周期が経過する毎にインクリメントするサイクルカウンタ(121,122)を備えてデータを出力する時点における前記サイクルカウンタの値である出力時サイクルカウンタ値を付加した前記データを出力するように構成された複数のハードウェア(101,102)のそれぞれから、前記ハードウェアが出力した前記データである出力データを取得するように構成されたデータ取得部(11)と、
前記一定周期が経過する毎にインクリメントするように構成されたマスタカウンタ(31)と、
複数の前記ハードウェアのそれぞれから互いに同一タイミングで複数の前記出力データを取得した場合に、複数の前記出力データのそれぞれについて、前記出力データに付加されている前記出力時サイクルカウンタ値と、前記同一タイミングを示す前記マスタカウンタの値である同一マスタカウンタ値との差分を示す差分値を算出するように構成された減算部(32)と、
複数の前記ハードウェアのそれぞれについて、前記減算部が算出した前記差分値を基準差分値として設定するように構成された基準設定部(S20,S30)と、
前記基準設定部が複数の前記ハードウェアのそれぞれについて複数の前記基準差分値を設定した後において、複数の前記ハードウェアのそれぞれについて、前記減算部が算出した前記差分値と前記基準差分値とが一致していることを示す予め設定された一致判定条件が成立しているか否かを判断し、複数の前記ハードウェアのうち、前記一致判定条件が成立していない前記ハードウェアが存在する場合には、複数の前記出力データは同時刻に出力されたものではないと判断するように構成された比較判定部(33)と
を備えるタイミング判定装置(1)。
【0070】
[項目2]
項目1に記載のタイミング判定装置であって、
前記データ取得部は、当該タイミング判定装置へ電源が投入された後に、前記出力データを取得するように構成されるタイミング判定装置。
【0071】
[項目3]
項目1または項目2に記載のタイミング判定装置であって、
複数の前記出力データは同時刻に出力されたものではないと前記比較判定部が判断した場合に、前記差分値と前記基準差分値とが一致していない前記ハードウェアに対して、前記データの出力を要求するように構成された再送要求部(34)を更に備えるタイミング判定装置。
【0072】
[項目4]
項目3に記載のタイミング判定装置であって、
前記再送要求部は、複数の前記ハードウェアのうち、優先度が高い前記ハードウェアである優先ハードウェアを選択し、前記優先ハードウェア以外の前記ハードウェアに対して、前記優先ハードウェアが前記データを出力した時刻に一致する前記データの出力を要求するように構成されるタイミング判定装置。
【0073】
[項目5]
項目3または項目4に記載のタイミング判定装置であって、
前記データの出力を要求した前記ハードウェアが、該当する前記データを出力することができない場合には、前記データが無いことを示すデータ無通知を生成するように構成された通知生成部(S120)を更に備えるタイミング判定装置。
【符号の説明】
【0074】
1…データ転送装置、11…通信部、12…転送回路、31…マスタカウンタ、32…減算部、33…比較判定部、101…第1ハードウェア、102…第2ハードウェア、121…第1サイクルカウンタ、122…第2サイクルカウンタ
図1
図2
図3
図4
図5