(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024170992
(43)【公開日】2024-12-11
(54)【発明の名称】光学部材
(51)【国際特許分類】
G02B 5/00 20060101AFI20241204BHJP
【FI】
G02B5/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】19
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023087809
(22)【出願日】2023-05-29
(71)【出願人】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】520124752
【氏名又は名称】株式会社ミライズテクノロジーズ
(74)【代理人】
【識別番号】110001128
【氏名又は名称】弁理士法人ゆうあい特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】安藤 浩
(72)【発明者】
【氏名】石原 和幸
【テーマコード(参考)】
2H042
【Fターム(参考)】
2H042AA02
2H042AA03
(57)【要約】
【課題】ハーフミラーレス構造の光学部材にて、入射光の射出部分と反射部分との周期構造に起因するモアレを低減する。
【解決手段】光学部材は、入射面2aと、複数のプリズム部3を有する射出部2bと、射出部と対向する平滑面2cとを有する導光体2を備える。平滑面2cは、入射面2aからの入射光の一部を全反射により射出部2b側に反射する。射出部2bは、プリズム部3が繰り返し配列された複数の領域2ba~2bcを有する。プリズム部3のピッチ間隔は、領域2ba~2bcごとに異なる。射出部2bの1つの領域内のプリズム部3のピッチ間隔をP1とし、当該1つの領域の隣接領域内のプリズム部3のピッチ間隔をP2とし、ピッチ間隔がP1の領域で反射した特定反射光が隣接領域に到達したときの光のピッチ間隔の変化量をΔPとする。導光体2は、Nを正の整数として、N×(P2+ΔP)=P1または(P2+ΔP)=N×P1を満たす。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
外景光(L1)を内部で反射させて導光する光学部材であって、
前記外景光が入射する入射面(2a)と、複数の突起状のプリズム部(3)を有し、前記入射面に交差する方向に延設される射出部(2b)と、前記射出部と対向する平滑面(2c)と、前記平滑面と対向する反射面(4、5)と、前記入射面とは反対側に位置し、前記射出部と前記平滑面とを繋ぐ終端面(2e)とを有してなり、光透過性材料により構成される導光体(2)を備え、
前記平滑面は、前記入射面からの入射光(L2)の一部を全反射により前記射出部の側に反射し、
前記射出部は、前記プリズム部が繰り返し配列されてなる複数の領域(2ba、2bb、2bc)を有し、
複数の前記領域は、前記プリズム部のピッチ間隔が異なっており、
前記平滑面のなす1つの平面に沿った方向であって、前記入射面から前記終端面に向かう方向を導光方向(D2)とし、複数の前記領域のうち1つの前記領域の隣接する2つの前記プリズム部のピッチ間隔をP1とし、前記導光方向に沿って当該1つの前記領域に隣接する他の1つの前記領域を隣接領域とし、前記隣接領域の隣接する2つの前記プリズム部のピッチ間隔をP2とし、前記入射光のうちピッチ間隔がP1の前記領域で反射した光を特定反射光とし、前記特定反射光が前記隣接領域に到達したときの前記特定反射光の前記導光方向におけるピッチ間隔の変化量をΔPとして、前記導光体は、Nを正の整数として、N×(P2+ΔP)=P1または(P2+ΔP)=N×P1を満たす、光学部材。
【請求項2】
前記平滑面に対する法線方向に沿った方向を厚み方向(D1)とし、
前記射出部と前記平滑面との前記厚み方向における距離をTとし、
前記入射面に入射する前記外景光の進む方向と前記厚み方向とのなす角度である入射角をθとし、
前記入射面の前記厚み方向に対する傾斜角度をψとし、
前記隣接領域における1つの前記プリズム部から外部に射出された射出光(L3)であって、前記射出部の側に位置する視認者の目に入射する光を基準光線とし、
前記隣接領域を構成する複数の前記プリズム部のうち前記基準光線を射出する1つの前記プリズム部に対して前記導光方向とは反対方向において隣接する前記プリズム部を隣接プリズム部とし、
前記隣接プリズム部から外部に射出される射出光のうち前記視認者の目に入射する光と前記基準光線との角度差をΔθとし、
前記光透過性材料の屈折率をnとし、
前記基準光線を射出する前記プリズム部と前記視認者の目との前記基準光線の射出方向における距離をLとして、前記導光体は、以下の(1)式、(2)式を満たす、請求項1に記載の光学部材。
ΔP=2T(1/tan(sin-1(sin(π/2-θ-ψ-Δθ)/n)+ψ)-1/tan(sin-1(sin(π/2-θ-ψ)/n)+ψ))・・・(1)
Δθ=tan-1(P2・cosθ/(L+P2・sinθ))・・・(2)
【請求項3】
前記反射面は、複数の前記プリズム部の一部と交互に繰り返し配列されてなる複数の平坦部(4)であって、前記入射光の一部を全反射により前記平滑面の側に反射する、請求項1に記載の光学部材。
【請求項4】
前記反射面は、前記導光体の内部のうち前記射出部と前記平滑面との間に配置され、前記導光方向に沿って、互いに離れて繰り返し配列されてなる複数の反射層(5)のうち前記平滑面と向き合う面である、請求項1に記載の光学部材。
【請求項5】
複数の前記プリズム部のうち前記入射光の一部を外部に射出する射出面(3a)は、前記入射面と平行である、請求項1に記載の光学部材。
【請求項6】
前記光透過性材料の屈折率をnとし、前記反射面および前記平滑面に対する前記入射光の入射角度をφとして、前記導光体は、sinφ>1/nを満たす、請求項1に記載の光学部材。
【請求項7】
前記平滑面に対する法線方向に沿った方向を厚み方向(D1)とし、前記入射面の前記厚み方向に対する傾斜角度をψとし、前記入射光の前記反射面および前記平滑面に対する入射角度をφとして、前記導光体は、ψ<φを満たす、請求項1に記載の光学部材。
【請求項8】
前記導光体は、前記入射面と前記平滑面とを繋ぐ傾斜面(2d)を有し、
前記平滑面に対する法線方向に沿った方向を厚み方向(D1)とし、前記入射面の前記厚み方向における高さをTdとし、前記射出部と前記平滑面との前記厚み方向における距離をTsとして、前記導光体は、Td>Tsを満たし、
前記入射光の前記反射面および前記平滑面に対する入射角度をφとし、前記傾斜面の前記厚み方向に対する傾斜角度をξとして、前記傾斜面は、ξ<φを満たす、請求項1に記載の光学部材。
【請求項9】
複数の前記領域は、前記終端面に近いほど前記プリズム部のピッチ間隔が小さくなっている、請求項3に記載の光学部材。
【請求項10】
複数の前記反射層は、前記導光方向における前記反射層のピッチ間隔が異なる複数の反射領域を有し、
前記複数の反射領域は、前記終端面に近いほど前記反射層のピッチ間隔が小さくなっている、請求項4に記載の光学部材。
【請求項11】
複数の前記反射層は、空気層、金属反射膜、誘電体多層膜のいずれか1つである、請求項4に記載の光学部材。
【請求項12】
外景光を内部で反射させて導光する光学部材であって、
前記外景光が入射する入射面(2a)と、前記入射面とは隣接しない位置で対向配置され、前記入射面からの入射光(L2)の一部を外部に光を射出するとともに、前記入射光の一部を反射する反射射出面(2f)と、前記入射面と隣接して配置され、前記反射射出面からの光を反射する反射面(2g)と、前記反射射出面と隣接し、かつ前記反射面と対向配置され、前記入射光のうち前記反射面で反射した光の一部を反射するとともに、残部を外部に射出する平滑射出面(2h)と、前記入射面と前記反射射出面とを繋ぐ入射側面(2i)と、前記入射側面とは反対側に位置し、前記反射面と前記平滑射出面とを繋ぐ終端面(2e)とを有してなり、光透過性材料により構成される導光体(2)を備え、
前記反射射出面は、前記入射光を前記反射面の側に反射し、前記入射面に対して傾斜する第1反射部(6a)を有する複数の第1プリズム部(6)と、平坦な面である複数の第1平坦部(7)とが交互に繰り返し配列されてなり、
前記反射面は、前記反射射出面で反射した光の一部を前記平滑射出面の側に反射する第2反射部(8a)を有する複数の第2プリズム部(8)と、前記反射した光の残部を全反射により反射する平坦な面である複数の第2平坦部(9)とを有してなり、
前記入射面に沿った方向であって、前記入射側面から前記終端面に向かう方向を導光方向(D2)とし、隣接する2つの前記第1プリズム部の前記導光方向におけるピッチ間隔をP1とし、前記反射面のうちピッチ間隔P1の2つの前記第1プリズム部からの反射光が入射する2つの前記第2プリズム部の前記導光方向におけるピッチ間隔をP2とし、前記入射光のうち前記反射射出面で反射する光を特定反射光とし、前記特定反射光が前記反射面に到達したときの前記導光方向における光のピッチ間隔の変化量をΔPとして、前記導光体は、Nを正の整数として、N×(P2+ΔP)=P1または(P2+ΔP)=N×P1を満たす、光学部材。
【請求項13】
前記入射面に対する法線方向に沿った方向を厚み方向(D1)とし、
前記入射面と前記第1平坦部との前記厚み方向における距離をTとし、
前記入射面に入射する前記外景光の進む方向と前記厚み方向とのなす角度である入射角をθとし、
前記第1反射部の前記厚み方向に対する傾斜角度をψとし、
前記平滑射出面から外部に射出された射出光(L3)であって、前記平滑射出面の側に位置する視認者の目に入射する光を基準光線とし、
前記反射面を構成する複数の前記第2プリズム部のうち前記基準光線となる光を反射する1つの前記第2プリズム部に対して前記導光方向とは反対方向において隣接する前記第2プリズム部を隣接第2プリズム部とし、
前記隣接第2プリズム部で反射された後に前記平滑射出面から外部に射出される射出光のうち前記視認者の目に入射する光と前記基準光線との角度差をΔθとし、
前記光透過性材料の屈折率をnとし、
前記平滑射出面のうち前記基準光線を射出する部位と前記視認者の目との前記基準光線の射出方向における距離をLとして、前記導光体は、以下の(3)式、(4)式を満たす、請求項12に記載の光学部材。
ΔP=mT(tan(sin-1(sin(θ+Δθ)/n)+π-2ψ)-tan(sin-1(sin(θ)/n)+π-2ψ))、(mは1または3)・・・(3)
Δθ=tan-1(P2・cosθ/(L+P2・sinθ))・・・(4)
【請求項14】
前記第1平坦部および前記平滑射出面は、前記入射面と平行である、請求項12に記載の光学部材。
【請求項15】
前記第1反射部は、前記第2反射部と平行である、請求項12に記載の光学部材。
【請求項16】
前記光透過性材料の屈折率をnとし、前記入射光の前記第1平坦部および前記第2平坦部に対する入射角度をφとして、前記導光体は、sinφ>1/nを満たす、請求項12に記載の光学部材。
【請求項17】
前記光透過性材料の屈折率をnとし、前記入射光の前記第1反射部および前記第2反射部に対する入射角度をδとして、前記導光体は、sinδ>1/nを満たす、請求項12に記載の光学部材。
【請求項18】
前記第1プリズム部の前記導光方向におけるピッチ間隔は、一定であり、
前記反射面は、前記第2プリズム部の前記導光方向におけるピッチ間隔である第2プリズムピッチが異なる複数の領域(2ga、2gb)を有してなり、
複数の前記領域は、それぞれの前記領域における前記第2プリズムピッチが固定されるとともに、前記終端面に近い前記領域ほど前記第2プリズムピッチが小さくなっており、
複数の前記領域は、前記第1反射部でX回(Xは1以上の整数)反射した前記入射光が入射する第1入射領域(2ga1)と、前記第1反射部で(X+1)回反射した前記入射光が入射する第2入射領域(2ga2)とを有し、
前記第1入射領域は、前記第2入射領域とは前記第2プリズムピッチが異なっている、請求項12に記載の光学部材。
【請求項19】
前記第2プリズム部の前記導光方向におけるピッチ間隔は、一定であり、
前記反射射出面は、前記第1プリズム部の前記導光方向におけるピッチ間隔である第1プリズムピッチが異なる複数の領域(2fa、2fb)を有してなり、
複数の前記領域は、それぞれの前記領域における前記第1プリズムピッチが固定されるとともに、前記終端面に近い前記領域ほど前記第1プリズムピッチが小さくなっており、
複数の前記領域は、前記入射光を前記入射面に反射する第1反射領域(2fa)と、前記入射光を前記反射面に反射する第2反射領域(2fb)とを有し、
前記第1反射領域は、前記第2反射領域とは前記第1プリズムピッチが異なっている、請求項12に記載の光学部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、入射面から入射した光の一部を内部で反射させ、入射した光およびその反射光を入射面とは異なる面から外部に射出する光学部材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の光学部材としては、例えば特許文献1に記載のものが挙げられる。特許文献1に記載の光学部材は、透光性の導光体で構成され、導光体の入射面から入射した外光の一部が内部で全反射により導光されるとともに、入射面とは異なる射出面から外部に射出されることで、射出面側にいるユーザに死角の外景を視認させる。これにより、射出面側に導光体とは異なる反射性材料で構成されたハーフミラーが不要なハーフミラーレス構造となり、導光体内部における導光での外光の吸収による損失が低減される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、本発明者らの鋭意検討の結果、特許文献1に記載の光学部材は、入射光の一部を射出するプリズム部と、入射光の一部を全反射により反射する平坦部とが交互に繰り返し配列されてなる周期構造に起因してモアレが生じ得ることが判明した。
【0005】
本開示は、上記の点に鑑み、ハーフミラーレス構造としつつも、入射光を射出する面における射出部分と反射部分との周期構造に起因するモアレを低減可能な光学部材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の第1の観点による光学部材は、外景光を内部で反射させて導光する光学部材であって、外景光が入射する入射面(2a)と、複数の突起状のプリズム部(3)を有し、入射面に交差する方向に延設される射出部(2b)と、射出部と対向する平滑面(2c)と、平滑面と対向する反射面(4、5)と、入射面とは反対側に位置し、射出部と平滑面とを繋ぐ終端面(2e)とを有してなり、光透過性材料により構成される導光体(2)を備え、平滑面は、入射面からの入射光(L2)の一部を全反射により射出部の側に反射し、射出部は、プリズム部が繰り返し配列されてなる複数の領域(2ba、2bb、2bc)を有し、複数の領域は、プリズム部のピッチ間隔が異なっており、平滑面のなす1つの平面に沿った方向であって、入射面から終端面に向かう方向を導光方向(D2)とし、複数の領域のうち1つの領域の隣接する2つのプリズム部のピッチ間隔をP1とし、導光方向に沿って当該1つの領域に隣接する他の1つの領域を隣接領域とし、隣接領域の隣接する2つのプリズム部のピッチ間隔をP2とし、入射光のうちピッチ間隔がP1の領域で反射した光を特定反射光とし、特定反射光が隣接領域に到達したときの特定反射光の導光方向におけるピッチ間隔の変化量をΔPとして、導光体は、Nを正の整数として、N×(P2+ΔP)=P1または(P2+ΔP)=N×P1を満たす。
【0007】
この光学部材は、入射面と、射出部と、互いに対向する平滑面および反射面と、射出部と平滑面とを繋ぐ終端面とを有する導光体を備え、平滑面が入射面からの入射光の一部を全反射により反射するため、ハーフミラーレス構造となっている。この光学部材は、射出部が繰り返し配列される複数のプリズム部を備え、プリズム部のピッチ間隔が異なる複数の領域を有してなる。また、平滑面のなす1つの平面に沿った方向であって、入射面から終端面に向かう方向を導光方向として、複数の領域のうちプリズム部のピッチ間隔がP1の領域に導光方向において隣接する隣接領域は、プリズム部のピッチ間隔がP2である。そして、入射光のうちピッチ間隔がP1の領域で反射した光を特定反射光とし、特定反射光が隣接領域に到達したときの特定反射光の導光方向におけるピッチ間隔の変化量をΔPとする。このとき、導光体は、Nを正の整数として、N×(P2+ΔP)=P1または(P2+ΔP)=N×P1を満たすことで、モアレが低減される。よって、この光学部材は、ハーフミラーレス構造とされつつ、射出面における入射光の射出部分と反射部分との周期構造に起因するモアレが低減される。
【0008】
また、本開示の第2の観点による光学部材は、外景光を内部で反射させて導光する光学部材であって、外景光が入射する入射面(2a)と、入射面とは隣接しない位置で対向配置され、入射面からの入射光(L2)の一部を外部に光を射出するとともに、入射光の一部を反射する反射射出面(2f)と、入射面と隣接して配置され、反射射出面からの光を反射する反射面(2g)と、反射射出面と隣接し、かつ反射面と対向配置され、入射光のうち反射面で反射した光の一部を反射するとともに、残部を外部に射出する平滑射出面(2h)と、入射面と反射射出面とを繋ぐ入射側面(2i)と、入射側面とは反対側に位置し、反射面と平滑射出面とを繋ぐ終端面(2e)とを有してなり、光透過性材料により構成される導光体(2)を備え、反射射出面は、入射光を反射面の側に反射し、入射面に対して傾斜する第1反射部(6a)を有する複数の第1プリズム部(6)と、平坦な面である複数の第1平坦部(7)とが交互に繰り返し配列されてなり、反射面は、反射射出面で反射した光の一部を平滑射出面の側に反射する第2反射部(8a)を有する複数の第2プリズム部(8)と、反射した光の残部を全反射により反射する平坦な面である複数の第2平坦部(9)とを有してなり、入射面に沿った方向であって、入射側面から終端面に向かう方向を導光方向(D2)とし、隣接する2つの第1プリズム部の導光方向におけるピッチ間隔をP1とし、反射面のうちピッチ間隔P1の2つの第1プリズム部からの反射光が入射する2つの第2プリズム部の導光方向におけるピッチ間隔をP2とし、入射光のうち反射射出面で反射する光を特定反射光とし、特定反射光が反射面に到達したときの導光方向における光のピッチ間隔の変化量をΔPとして、導光体は、Nを正の整数として、N×(P2+ΔP)=P1または(P2+ΔP)=N×P1を満たす。
【0009】
この光学部材は、隣接して配置される入射面および反射面と、これらと対向して配置される反射射出面および平滑射出面と、入射面と反射射出面とを繋ぐ入射側面と、反射面と平滑射出面とを繋ぐ終端面とを有する導光体を備える。導光体は、反射射出面が複数の第1プリズム部と第1平坦部とが交互に配列されてなり、反射面が複数の第2プリズム部と複数の第2平坦部とを有してなり、第2平坦部が第1反射部からの反射光を全反射により平滑射出面に向けて反射する。また、入射面のなす1つの平面に沿った方向であって、入射側面から終端面に向かう方向を導光方向として、第1プリズム部の導光方向におけるピッチ間隔がP1であり、第2プリズム部の導光方向におけるピッチ間隔がP2である。そして、反射射出面で反射した特定反射光が反射面に到達したときの光のピッチの変化量をΔPとして、導光体は、Nを正の整数として、N×(P2+ΔP)=P1または(P2+ΔP)=N×P1を満たすことで、モアレが低減される。よって、この光学部材は、ハーフミラーレス構造とされつつ、射出面における入射光の射出部分と反射部分との周期構造に起因するモアレが低減される。
【0010】
なお、各構成要素等に付された括弧付きの参照符号は、その構成要素等と後述する実施形態に記載の具体的な構成要素等との対応関係の一例を示すものである。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】第1実施形態の光学部材を示す断面図である。
【
図2】
図1の光学部材における導光の説明図である。
【
図3】比較例の光学部材の内部における光線パターンの変化および構造パターンに起因するモアレ発生についての説明図である。
【
図4】光学部材の射出部側に位置する視認者の目に入射する射出光および射出部から当該視認者の目までの距離についての説明図である。
【
図5】
図4に示す2つの射出光の角度差および第1実施形態の光学部材におけるプリズム部のピッチ間隔の設計についての説明図である。
【
図6】第2実施形態の光学部材を示す断面図である。
【
図7】
図6の光学部材における導光の説明図である。
【
図8】第2実施形態の光学部材の第1変形例を示す断面図である。
【
図9】第2実施形態の光学部材の第2変形例を示す図であって、反射層およびプリズム部の近傍を示す拡大断面図である。
【
図10】第3実施形態の光学部材を示す断面図である。
【
図12】反射射出面における入射光の外部への射出および内部での反射についての説明図である。
【
図13】反射面および平滑射出面における入射光の反射、並びに平滑射出面における入射光の外部への射出についての説明図である。
【
図14】第3実施形態の光学部材の変形例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本開示の実施形態について図に基づいて説明する。なお、以下の各実施形態相互において、互いに同一もしくは均等である部分には、同一符号を付して説明を行う。
【0013】
(第1実施形態)
第1実施形態の光学部材1について、図面を参照して説明する。本実施形態の光学部材1は、例えば、ユーザの視界を遮り、死角を生じさせる部材や障害物等に取り付けられ、当該死角の領域の光景を当該ユーザに視認させる死角補助装置として用いられうる。光学部材1は、例えば、車載用途の場合には、搭載される車両のピラーなどに取り付けられ、当該ピラーにより死角になる領域からの外景光をユーザの側に導光し、死角領域の光景をユーザに視認させる。
【0014】
本実施形態の光学部材1は、例えば
図1に示すように、透光性材料によりなる導光体2で構成され、入射面2aと、射出部2bと、平滑面2cと、傾斜面2dと、終端面2eとを備える。光学部材1は、例えば
図2に示すように、平滑面2cが他の部材100と対向するように取り付けられ、入射面2aから外光を内部に入射させる。光学部材1は、入射面2aから内部に入射した光の一部が射出部2bで反射され、射出部2bで反射した光が平滑面2cで反射され、射出部2b側に再度向かう構成となっている。光学部材1は、例えば、入射面2aから外光を導光体2の内部で導光させ、射出部2bから外部に射出することで、射出部2b側にいるユーザに他の部材100による死角領域の外景を視認させる。なお、他の部材100は、例えば、車載用途の場合、自動車のAピラーなどの死角領域を生じさせるものとされるが、これに限定されるものではなく、適宜変更されうる。
【0015】
以下、説明の便宜上、
図2に示すように、入射面2aに入射する外光を「外景光L1」と称し、入射面2aから導光体2の内部に入射した光を「入射光L2」と称し、導光体2の内部から外部に射出される光を「射出光L3」と称する。また、光学部材1のうち平滑面2cに対する法線方向に沿った方向であって、射出部2bと平滑面2cとを繋ぐ方向を「厚み方向D1」と称し、厚み方向D1に対して直交する方向であって、入射面2aから終端面2eに向かう方向を「導光方向D2」と称する。
【0016】
導光体2は、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリエチレン、アクリル等の樹脂材料やガラスなどの光透過性材料からなる略板状の単一部材である。導光体2は、例えば、図示しない金型等を用いた公知の樹脂成型方法により形成される。導光体2は、例えば
図2に示すように、入射面2aからの入射光L2の一部が射出部2bの後述するプリズム部3に入射するとともに、入射光L2の残部が後述する平坦部4で反射し、この反射光が平滑面2cに向かう構成となっている。そして、導光体2は平坦部4で反射された入射光L2が平滑面2cや平坦部4で全反射し、内部で導光されるように設計されている。具体的には、導光体2は、その構成材料の屈折率をnとし、入射光L2の平滑面2cおよび平坦部4に対する入射角度、すなわち導光角をφとして、導光体2の外部媒質が屈折率1の空気層である場合、以下の(1)式を満たす設計となっている。
【0017】
sinφ>1/n・・・(1)
これにより、導光体2は、ハーフミラーを有さずとも、入射光L2の一部が平坦部4と平滑面2cとの間で繰り返し反射され、入射光L2がプリズム部3の後述する射出面3aから外部に射出される。なお、導光角φとは、入射光L2の進む方向と厚み方向D1とのなす角度に相当する。
【0018】
入射面2aは、
図2に示すように、外景光L1を内部に入射させる面である。入射面2aは、射出部2bに隣接するとともに、射出部2bおよび平滑面2cに交差する方向に沿った面となっている。入射面2aは、例えば、平滑面2c側に向かうにつれて終端面2eに近づくように傾斜するとともに、厚み方向D1とのなす角度である傾斜角度がψで傾斜した平坦面となっている。入射面2aは、傾斜角度ψが導光角φよりも小さくなっている。このとき、外景光L1の厚み方向D1に対する角度をθとして、屈折の条件よりψ<π/2-φであれば、入射光L2は、導光角φが外景光L1の角度θよりも大きくなる方向に屈折し、射出部2bのより広い範囲に導光されることとなる。角度θは、外景光L1の導光体2に対する入射角ともいえる。導光体2は、例えば、φが全反射角になるため、通常の透光性樹脂材料の屈折率が1.4以上であることから、n・sinφ>1よりφ>45.3となり、φ>ψを満たす構造となっている。
【0019】
射出部2bは、入射面2aと隣接し、かつ交差する位置に形成されるとともに、例えば、断面視にて、三角形状の突起である複数のプリズム部3と複数の平坦部4を有してなる。射出部2bは、例えば、プリズム部3同士の導光方向D2におけるピッチ間隔(以下、単に「ピッチ間隔」という)が異なる複数の領域で構成されている。具体的には、射出部2bは、例えば、プリズム部3と平坦部4とが交互に繰り返し配列されてなる第1領域2baおよび第2領域2bbと、プリズム部3のみが連続して繰り返し配列されてなる第3領域2bcとを有してなる。射出部2bは、例えば、入射面2aから終端面2eに向かって、第1領域2ba、第2領域2bb、第3領域2bcとなっている。領域2ba~2bcは、例えば、導光方向D2における幅をWとし、射出部2bのうち平坦部4と平滑面2cとの厚み方向D1における高さをTとして、W=2T・tanφを満たす。すなわち、領域2ba~2bcは、例えば、入射光L2が射出部2bと平滑面2cとの間を一往復する際に導光方向D2において進む距離と同じ幅とされる。第1領域2baおよび第1領域2baは、プリズム部3同士のピッチ間隔がそれぞれ、P1、P2(<P1)となっている。第1領域2baおよび第1領域2baは、モアレ低減のため、P1とP2とが所定の関係を満たすように設計されている。この詳細については、後述する。
【0020】
複数のプリズム部3は、本実施形態では、平坦部4から突出する突起物であって、例えば厚み方向D1における高さが略同一となっている。本明細書における「略同一」とは、完全に同一である場合に加えて、加工誤差などの不可避の要因によりわずかに差があるが、ほぼ同一である場合を含む。複数のプリズム部3は、例えば、断面視にて、入射面2aと平行な面であって、入射光L2の一部を外部に射出する射出面3aと、射出面3aに隣接する隣接面3bとを有してなる。複数のプリズム部3は、例えば、射出面3aが入射面2aと平行、すなわち厚み方向D1に対する傾斜角度がψとされている。これにより、入射光L2のうち射出面3aに到達したものが、外景光L1と同じ角度θの射出光L3として外部に射出されることとなる。このため、射出部2b側に位置するユーザから見て、光学部材1を介しない外景と光学部材1により視認可能となった死角領域の外景との連続性が確保される。複数のプリズム部3は、第1領域2ba、第2領域2bbおよび第3領域2bcにおけるピッチ間隔が異なる配置となっている。
【0021】
複数の平坦部4は、例えば、平滑面2cと対向し、かつ平行に配置された平坦面である。複数の平坦部4は、例えば、同一平面上に配置され、1つの平面を構成する。複数の平坦部4は、入射面2aからの入射光L2が臨界角以上の角度で入射するため、全反射により入射光L2を平滑面2c側に反射する反射面として機能する。
【0022】
平滑面2cは、射出部2bと対向配置された面であって、1つの平坦な面である。平滑面2cは、入射光L2のうち平坦部4で反射した光を全反射により射出部2b側に反射する。平滑面2cは、平坦部4と対をなす面であり、入射光L2の一部を平滑面2cと平坦部4との間で繰り返し反射させ、入射光L2を射出部2bの全域に入射させる。つまり、平滑面2cは、平坦部4を第1の反射面として、第2の反射面となる部位であり、入射光L2の一部を導光方向D2に沿って導光する役割を果たす。
【0023】
傾斜面2dは、入射面2aと平滑面2cとを繋ぐ面であって、例えば、平滑面2cに近づくほど終端面2eに近くなるように傾斜するとともに、平滑面2cよりも突出した面となっている。言い換えると、入射面2aおよび傾斜面2dは、断面視にて、1つの大きな突起状のプリズム部を構成している。つまり、導光体2は、入射面2aと傾斜面2dとのなす1つのプリズム部の厚み方向D1における高さが、射出部2bから平滑面2cまでの高さTよりも大きい構成となっている。これにより、導光体2は、入射面2aからの入射光L2が最初に到達する射出部2bにおける領域を広くできる。傾斜面2dは、例えば、厚み方向D1に対して角度ξで傾斜した1つの平坦面となっている。入射面2aからの入射光L2のうち平滑面2cと傾斜面2dとの境界近傍を通る光と、平滑面2cのうち当該境界近傍で反射する光との間で隙間が生じないようにする観点から、導光体2は、ξ<φを満たす設計とされる。これにより、射出部2bにおいてユーザに視認させる外景に隙間が生じることが抑制され、表示の連続性を確保することができる。
【0024】
なお、傾斜面2dは、入射面2aのうち射出部2bとは反対側の端部と平滑面2cのうち入射面2a側の端部とを繋ぐ仮想直線の厚み方向D1に対する角度であるξが、ξ<φを満たす構成であればよく、1つの平坦面でなくてもよい。例えば、傾斜面2dは、2つ以上の平面を有する多角面であってもよいし、湾曲した1つの湾曲面であってもよく、その形状については任意である。
【0025】
終端面2eは、射出部2bと平滑面2cとを繋ぐ面である。終端面2eは、例えば、1つの平坦面とされる。終端面2eは、その傾斜については任意であるが、例えば、射出部2bのうち最も終端面2eに近いプリズム部3の射出面3aとともに1つの平坦面をなし、導光方向D2における最後の射出面として機能する構成であってもよい。
【0026】
なお、導光体2のうち
図1の紙面平面に対する垂直方向における両端に位置する外表面、すなわち入射面2a、射出部2b、平滑面2c、傾斜面2dおよび終端面2eを繋ぐ側面は、光学的に寄与しない面であるため、その構成については任意である。例えば、導光体2の側面は、他の材料で覆われずに外部に露出していてもよいし、図示しない光吸収膜等で覆うなどの任意の方法により外部からの光を導光体2の内部に侵入させない構成であってもよい。
【0027】
以上が、光学部材1の基本的な構成である。
【0028】
〔プリズム部のピッチ間隔およびモアレの低減〕
次に、射出部2bにおけるプリズム部3のピッチ間隔に起因するモアレの発生およびこれを低減するための設計について説明する。
【0029】
射出部2bにおけるプリズム部3のピッチ間隔がすべて一定である構造を比較例として、本発明者らの鋭意検討の結果、比較例の構造ではプリズム部3の周期構造に起因してモアレが発生することが判明した。
【0030】
具体的には、比較例の構造は、射出部のうち入射面2aからの入射光L2が直接入射する領域を第1領域とし、第1領域で反射した光が平滑面で反射して2回目に入射する領域を第2領域として、第1領域および第2領域のプリズム部3のピッチ間隔が同一である。そして、第1領域に入射する入射光L2の外部への射出と内部での反射とのパターンを光線の明暗パターンとして、第1領域における明暗パターンは、例えば
図3に示すように、明暗が交互に一定間隔で繰り返されるものとなる。第1領域の光線の明暗パターンは、外部に射出される部分が明、内部で反射される部分が暗となるため、第1領域のプリズム部3と平坦部4との構造パターンと同一となる。
【0031】
なお、
図3では、射出部2bから見て明るく見える部分を明とし、暗く見える部分を暗として、明を白、暗を黒で示している。光線の明暗パターンは、明が導光体2の外部に射出される射出光L3となる部分、暗が導光体2の内部で反射する入射光L2となる部分、にそれぞれ相当する。構造パターンは、明がプリズム部3の射出面3a、暗が平坦部4、にそれぞれ相当する。
【0032】
ここで、射出部で反射した光が平滑面で反射し、射出部に再度到達して一往復するまでに所定の距離があるため、第2領域に到達したときの光線の明暗パターンは、第1領域における光線の明暗パターンに対して変化してしまう。第2領域の光線の明暗パターンは、第2領域のうち第1領域で反射された光が到達する部分が明、それ以外の部分が暗となる。一方、比較例の構造は、射出部におけるプリズム部3のピッチ間隔がすべて同一、すなわちプリズム部3および平坦部4の構造パターンが第1領域と第2領域とで同一である。しかしながら、第2領域の光線の明暗パターンは、第1領域の光線の明暗パターンから変化してしまうため、第2領域のプリズム部3と平坦部4との構造パターンに対してわずかにずれてしまう。このため、比較例の構造は、
図3に示すように、第2領域の光線の明暗パターンと、プリズム部3および平坦部4の構造パターンとのわずかなズレにより、モアレが発生してしまう。つまり、比較例の構造は、プリズム部3および平坦部4の周期構造が一定であるのに対し、入射光の明暗パターンが導光体内部の導光に伴って変化することで、モアレが発生する。
【0033】
これに対し、本実施形態の光学部材1は、第1領域2baのプリズム部3のピッチ間隔P1と第2領域2bbのプリズム部3のピッチ間隔P2とが異なるとともに、入射光L2の明暗パターンの変化を考慮した設計とされることで、モアレを低減可能となっている。具体的には、光学部材1は、第2領域2bbのプリズム部3のピッチ間隔P2が、第1領域2baの光線の明暗パターンから変化した後の第2領域2bbの光線の明暗パターンと一致するように設計されている。言い換えると、光学部材1は、第2領域2bbにおいて光線の明暗パターンとプリズム部3および平坦部4の構造パターンとが一致する構成とされることで、モアレ発生を抑制する。
【0034】
具体的には、入射光L2のうち第1領域2baで反射した光を便宜上「特定反射光」とし、特定反射光が第2領域2bbに到達したときの導光方向D2における光同士のピッチ間隔の変化量をΔPとする。つまり、ΔPとは、特定反射光の第1領域2baでの反射時における光同士のピッチ間隔と、特定反射光が第2領域2bbに到達したときの光同士のピッチ間隔との差、すなわち特定反射光の一往復によるピッチの変化量である。このとき、光学部材1は、射出部2bのうち特定反射光を反射する領域と、当該領域に隣接する隣接領域であって、特定反射光が到達する領域との間で、以下の(2)式、または(3)式を満たすことで、モアレを低減する。
【0035】
N×(P2+ΔP)=P1・・・(2)
(P2+ΔP)=N×P1・・・(3)
(2)式および(3)式におけるNは、正の整数である。
【0036】
ここで、例えば、
図4および
図5に示すように、射出部2b側に位置し、第2領域bbにおいてピッチ間隔P2で隣接する2つのプリズム部3からの射出光L3A、L3Bが入射する視認者の視点P
Eと、射出光L3Aを射出するプリズム部3との距離をLとする。Lは、射出光L3Aの射出方向に沿った距離である。射出光L3Aとは、第2領域2bbにおいて隣接する2つのプリズム部3のうち第2領域2bbの中心に位置するプリズム部3から射出される射出光L3である。射出光L3Bとは、第2領域2bbにおいて射出光L3Aを射出するプリズム部3に対して、導光方向D2とは反対方向において隣接するプリズム部3である隣接プリズム部から射出される射出光L3である。なお、
図4、
図5では、見易くするため、射出光L3Aおよび射出光L3Aとして射出される入射光L2Aを実線で示し、射出光L3Bおよび射出光L3Bとして射出される入射光L2Bを破線で示している。また、
図5では、後述する入射光L2Cを一点鎖線で示している。
【0037】
例えば
図5に示すように、射出光L3Aの射出角度をθとすると、同じ視点P
Eに入射する射出光L3Bは、射出光L3Aとは異なる射出角度となっている。射出光L3Bは、射出光L3Aの射出角度との差をΔθとすると、その射出角度がθ+Δθとなる。この角度差Δθは、以下の(4)式で表される。そして、(4)式は、(5)式に近似できる。
【0038】
Δθ=tan-1(P2・cosθ/(L+P2・sinθ))・・・(4)
Δθ≒P2・cosθ/(L+P2・sinθ)・・・(5)
射出光L3A、L3Bを隣接射出光とし、隣接射出光の導光体2内における導光角の差、すなわち入射光L2Aと入射光L2Bとの角度差をΔφとすると、Δφは、(6)式で表される。
【0039】
Δφ=sin
-1(sin(π/2-θ-ψ)/n)-sin
-1(sin(π/2-θ-ψ-Δθ)/n)・・・(6)
このとき、ΔPは、
図5に示すように、入射光L2A、L2Bの第2領域2bbの射出領域におけるピッチ間隔P2からの第1領域2baにおいて反射する位置における入射光L2A、L2Bのピッチの変化量であり、以下の(7)式で表される。
【0040】
ΔP=2T(1/tan(sin
-1(sin(π/2-θ-ψ-Δθ)/n)+ψ)-1/tan(sin
-1(sin(π/2-θ-ψ)/n)+ψ))・・・(7)
ここで、射出光L3Bと同じプリズム部3に入射し、かつ入射光L2Aと同じ導光角φである入射光を入射光L2Cとする。このとき、入射光L2A、L2Cが平行となるため、第1領域2baのうち入射光L2A、L2Cが反射する位置における入射光L2A、L2Cのピッチは、P2となる。また、
図5に示すように、射出部2bのうち入射光L2A、L2Cのピッチ間隔がP2となる反射領域において、入射光L2Aと入射光L2Bとの導光方向D2における間隔をXとする。このとき、入射光L2A、L2Bの反射領域における間隔Xは、同領域における入射光L2A、L2Cのピッチ間隔P2に、ピッチの変化量ΔPが加わったものとなる。そして、Xが(8)式を満たすことで、視点P
Eから見たときの第2領域2bbにおける光線の明暗パターンとプリズム部3および平坦部4の構造パターンとが一致し、これら2つのパターンが完全に重なる状態となるため、モアレの強度が最小となる。
【0041】
X=P2+ΔP=P1・・・(8)
また、光線の明暗パターンとプリズム部3および平坦部4の構造パターンとの重なりは、Nを正の整数としてN倍であっても成立するため、(2)式または(3)式を満たす場合には、モアレが生じなくなる。
【0042】
このように、光学部材1は、第1領域2baのプリズム部3のピッチ間隔P1に対して、第2領域2bbのプリズム部3のピッチ間隔P2が入射光L2の明暗パターンの変化分に合わせて小さく設計されている。これにより、視点PEから見たときの光線の明暗パターンと射出部2bの構造パターンとが一致し、わずかに周期が異なる周期パターン同士が重なることで生じるモアレの発生が抑制される。
【0043】
本実施形態によれば、導光体2が射出部2bの平坦部4および平滑面2cにおいて、全反射により入射光L2を反射する設計とされることで、ハーフミラーレス構造の光学部材1となる。また、導光体2は、射出部2bを所定の幅でピッチ間隔の異なる複数の領域2ba~2bcを有する構成とし、射出部2bと平滑面2cとの反射による一往復における入射光L2の明暗パターンの変化分に合わせて、ピッチ間隔P1、P2が所定の関係を満たす。これにより、視点PEから見たときの光線の明暗パターンと射出部2bの構造パターンとのズレがなくなり、モアレの発生を抑制することが可能となるため、ハーフミラーレス構造とされつつ、モアレが低減された光学部材1となる。
【0044】
なお、上記では、射出部2bを3つの領域で構成した例について説明したが、これに限定されるものではなく、射出部2bをプリズム部3のピッチ間隔が異なる4つ以上の領域で構成してもよい。この場合、複数のプリズム部3のみで構成される領域を除き、導光方向D2において隣接する2つの領域におけるピッチ間隔の差が(2)式または(3)式を満たす設計とされることで、第2領域以降におけるモアレの発生を抑制することができる。
【0045】
(第2実施形態)
第2実施形態の光学部材1について、図面を参照して説明する。
【0046】
本実施形態の光学部材1は、例えば
図6に示すように、導光体2の内部に複数の反射層5が形成されている点で上記第1実施形態と相違する。本実施形態では、この相違点について主に説明する。
【0047】
導光体2は、本実施形態では、導光方向D2に沿って複数の反射層5が形成されており、例えば
図7に示すように、入射光L2が平坦部4に代わって複数の反射層5で反射される構成となっている。
【0048】
複数の反射層5は、導光体2の内部において、導光方向D2に沿って互いに所定の間隔で離れて形成されている。複数の反射層5は、例えば、入射面2aおよび平滑面2cと、射出部2bとの間であって、第1領域2baおよび第2領域2bbに相当する位置に配置されている。複数の反射層5は、例えば、平滑面2c側の面が入射光L2の一部を反射する反射面5aとされ、反射面5aが平滑面2cと略平行になっている。略平行とは、完全に平行な場合に加えて、加工誤差などにより不可避のわずかな差があるものの、ほぼ平行である場合を含む。複数の反射層5は、例えば
図6に示すように、それぞれの反射面5aが同一平面上に位置しつつ、第3領域2bcに入射する入射光L2を妨げないように、第3領域2bcおよびこの近傍には配置されていない。複数の反射層5は、例えば、第1領域2baおよび第2領域2bbにおいて、導光角φの入射光L2がプリズム部3の射出面3aに入射するのを妨げないように、射出面3aを通り、厚み方向D1に対する角度がφの仮想直線上を避けるように配置されている。
【0049】
複数の反射層5は、第1領域2baでは当該領域におけるプリズム部3のピッチ間隔P1と略同一のピッチP31で配置され、第2領域2bbでは当該領域におけるプリズム部3のピッチ間隔P2と略同一のピッチP32で配置されている。言い換えると、導光体2は、反射層5の導光方向D2におけるピッチ間隔が異なる複数の反射領域を備える構成となっている。複数の反射層5は、射出部2bの近傍に配置されている。具体的には、反射面5aと平滑面2cとの厚み方向D1における距離をTrとして、複数の反射層5は、平滑面2cと平坦部4との厚み方向D1における距離、すなわち導光体厚みに相当するTとTrとの差がTよりも十分小さくなる位置に形成される。言い換えると、複数の反射層5は、T≫(T-Tr)が成立する位置に形成されている。
【0050】
複数の反射層5は、例えば、空気が充填された空洞層、もしくは導光体2の構成材料とは異なる反射性材料、あるいは誘電体多層膜により構成される。導光体2の構成材料の屈折率n1が1よりも大きい場合、反射層5は、屈折率1の空気が充填される空洞層とされてもよい。この場合、反射層5に入射する導光角φの入射光L2は、sinφ>1/n1を満たすため、全反射により平滑面2c側に反射されることとなる。反射性材料としては、例えば、銀、アルミニウム、クロムなどの可視光反射率が所定以上の金属材料などが挙げられるが、これらに限定されない。また、反射層5は、可視光線を反射する構成であればよく、例えば、TiO2とSiO2などの相対的に高屈折率材料と低屈折率材料とが交互に繰り返し積層されてなる公知の誘電体多層膜で構成されてもよい。
【0051】
本実施形態の光学部材1は、第1領域2baにおける反射層5のピッチ間隔をP31とし、第2領域2bbにおける反射層5のピッチ間隔をP32として、以下の(9)式または(10)式を満たす。
【0052】
N×(P32+ΔPr)=P31・・・(9)
(P32+ΔPr)=N×P31・・・(10)
(9)式および(10)式におけるNは、正の整数である。ΔPrとは、第1領域2baの反射層5で反射した光を特定反射光として、特定反射光が導光体2の内部反射により一往復し、第2領域2bbに到達したときの導光方向D2における光同士のピッチ間隔の変化量である。P31=P1、P32=P2であるとき、ΔPrは、上記第1実施形態におけるΔPに相当する。また、このとき、(9)式および(10)式がそれぞれ上記第1実施形態における(2)式、(3)式に相当し、本実施形態の光学部材1は、上記した(4)式、(7)式を満たすように設計されている。これにより、射出部2bに位置するユーザの視点PEから見て、第2領域2bbにおける光線の明暗パターンと構造パターンとが一致することとなり、モアレの発生が低減される。
【0053】
なお、導光体2は、例えば、厚み方向D1において複数の反射層5よりも平滑面2c側の上半分を図示しない金型を用いた公知の樹脂成型法により形成した後、図示しない金型を変えて残りの下半分を公知の樹脂成型法により形成することにより得ることができる。導光体2は、例えば、反射層5を空洞層で構成する場合には前述の二段階の樹脂成型工程の一方において凹部を形成し、他方の工程において当該凹部を残して空気で充填された空洞を形成することにより得られる。導光体2は、例えば、反射層5を金属材料などの反射性材料で構成される金属反射膜、または公知の誘電体多層膜で構成する場合には、前述の二段階の樹脂成型工程の間にスパッタリングやCVDなどの反射層5の成膜工程を挟むことにより得られる。
【0054】
本実施形態によっても、上記第1実施形態と同様の効果が得られる光学部材1となる。
【0055】
(第2実施形態の変形例)
光学部材1は、例えば
図8に示すように、導光体2が単一部材でなく、複数の部材で構成されていてもよい。例えば、導光体2は、複数の反射層5を有し、平滑面2cおよび傾斜面2dを構成する導光部21と、射出部2bを構成し、複数のプリズム部3を有してなるプリズムシート23と、導光部21とプリズムシート23とを繋ぐ透明層22とにより構成されてもよい。この場合、導光部21、透明層22およびプリズムシート23は、いずれも光透過性材料で構成され、互いの界面で全反射が生じないように屈折率が調整される。これにより、導光体2は、単一部材で構成する場合よりも製造が容易となる。
【0056】
上記した第1変形例によれば、上記第2実施形態と同様の効果に加えて、製造が容易になる効果も得られる光学部材1となる。
【0057】
また、光学部材1は、例えば
図9に示すように、射出部2bが平坦部4を有さず、プリズム部3のみで構成されていてもよい。この場合、プリズム部3は、隣接面3bの導光方向D2における幅が射出面3aよりも大きくされ、ピッチ間隔をPpとし、反射層5のピッチ間隔をPrとして、PpがPrと略同一とされる。ピッチ間隔Ppは、第1領域2baではP1、第2領域2bbではP2である。また、射出部2bは、プリズム部3のみで構成される場合には、隣接面3bに図示しない遮光膜が形成されてもよい。これにより、射出部2b側からの外光が導光体2に侵入することを防ぐことができ、意図しない射出部2b側からの外光が射出光L3に重畳しなくなり、ノイズを抑制する効果も得られる。なお、遮光膜としては、例えば、可視光を吸収する光吸収膜や可視光を散乱させる光散乱膜とされ、塗布あるいは粗面処理などにより形成されうる。
【0058】
上記した第2変形例によっても、上記第2実施形態と同様の効果が得られる光学部材1となる。また、プリズム部3の隣接面3bに図示しない遮光膜を形成した場合には、ノイズを抑制する効果も得られる。
【0059】
(第3実施形態)
第3実施形態の光学部材1について、図面を参照して説明する。
【0060】
本実施形態の光学部材1は、例えば
図10に示すように、導光体2の構成が変更されている点で上記第1実施形態と相違する。本実施形態では、この相違点について主に説明する。
【0061】
なお、本実施形態における「厚み方向D1」は、例えば
図10に示すように、上記各実施形態における平滑面2cに相当する後述の複数の第2平坦部9に対する法線方向に沿った方向である。また、本実施形態における「導光方向D2」は、厚み方向D1に対して直交する方向であって、後述する入射側面2iから終端面2eに向かう方向である。
【0062】
導光体2は、本実施形態では、隣接する入射面2aおよび反射面2gと、入射面2aに対して対向配置される反射射出面2fと、反射面2gに対して対向配置され、反射射出面2fに隣接する平滑射出面2hとを備える。導光体2は、本実施形態では、入射面2aと反射射出面2fとを繋ぐ入射側面2iと、入射側面2iとは反対側の面であって、反射面2gと平滑射出面2hとを繋ぐ終端面2eとを備える。導光体2は、例えば
図11に示すように、入射面2aからの入射光L2の一部を反射射出面2fから外部に射出し、残部を内部で反射面2g側に反射し、この反射光を反射面2gで二方向の異なる方向に反射する。そして、導光体2は、反射面2gのうち後述する第2プリズム部8で反射された光を平滑射出面2hから外部に射出し、第2平坦部9で反射された光を平滑射出面2hで内部反射して導光する構成となっている。この詳細については、後述する。
【0063】
入射面2aは、本実施形態では、上記第1実施形態における射出部2bに相当する反射射出面2fに隣接しておらず、反射射出面2fの第1平坦部7と略平行になるように対向配置されている。略平行とは、完全に平行である場合に加えて、加工誤差などの不可避の要因によりわずかにズレがあるが、ほぼ平行である場合を含む。入射面2aは、上記第1実施形態における平滑面2cに相当する反射面2gに隣接するとともに、反射面2gのうち複数の第2平坦部9と同一平面上に位置している。入射面2aは、反射面2gとは反対側が入射側面2iに隣接している。入射面2aは、上記各実施形態と同様に、光学部材1が取り付けられる他の部材100からはみ出した状態とされ、外景光L1を導光体2の内部に入射させる。入射面2aは、本実施形態では、反射射出面2fで反射した入射光L2の一部が臨界角以上の角度で入射する位置にあるため、この一部の入射光L2を全反射により平滑射出面2h側に反射する導光面としても機能する。
【0064】
入射側面2iは、例えば、入射面2aおよび反射射出面2fに対して交差するとともに、これらの面を繋ぐ1つの平坦面である。
【0065】
反射射出面2fは、入射面2aからの入射光L2が最初に到達する面であり、複数の第1プリズム部6と、複数の第1平坦部7とを有する。反射射出面2fは、例えば、導光方向D2に沿って第1プリズム部6と第1平坦部7とが交互に繰り返し配列された構成となっている。反射射出面2fは、入射側面2iとは反対側が平滑射出面2hに隣接するとともに、複数の第1平坦部7が平滑射出面2hと同一平面上に位置している。
【0066】
反射射出面2fは、例えば、第1反射領域2faと、第2反射領域2fbとを有し、平滑射出面2hの側が第1反射領域2fa、入射側面2iの側が第2反射領域2fbとなっている。第1反射領域2faおよび第2反射領域2fbは、いずれも第1プリズム部6と第1平坦部7とが交互に繰り返し配列されたプリズムアレイとなっている。第1反射領域2faは、入射面2aからの入射光L2を反射面2gに反射する領域である。第2反射領域2fbは、例えば
図11に示すように、入射光L2を入射面2aに反射する領域である。つまり、導光体2は、第1反射領域2faで反射した入射光L2が反射面2gに直接到達するとともに、第2反射領域2fbで反射した入射光L2が入射面2aを経由して反射面2gに到達する構成となっている。反射射出面2fは、導光方向D2における幅をWとし、第2平坦部9と平滑射出面2hとの厚み方向D1における距離をTとして、Wが(11)式で表される。
【0067】
W=2T・tan(sin-1(sin(θ)/n)+π-2ψ)・・・(11)
なお、導光体2の厚みに相当する高さTを小さくし、薄型化したい場合には、第2平坦部9への導光角φ1が70°以上、すなわちφ1+2ψ≧70を満たすように設計されることが好ましい。
【0068】
複数の第1プリズム部6は、複数の第1平坦部7のなす平面から導光体2の内部に向かって設けられた凹部となっている。複数の第1プリズム部6は、例えば
図10に示すように、断面視にて、互いに対向し、交差する2つの壁面で構成された溝形状とされ、2つの壁面の一方が第1反射部6a、他方が繋ぎ面6bとなっている。複数の第1プリズム部6は、第1反射領域2faおよび第2反射領域2fbのいずれにおいても、ピッチ間隔がP1となっている。
【0069】
第1反射部6aは、例えば、1つの平坦面とされ、第1プリズム部6の2つの壁面のうち当該壁面の法線方向が反射面2g側を向く面である。言い換えると、第1反射部6aは、入射面2aに対して反射面2gを向くように、厚み方向D1に対して傾斜角度ψで傾いた傾斜面である。第1反射部6aは、例えば
図11に示すように、入射面2aからの入射光L2を全反射により反射面2gの側に反射する第1反射面として機能する部位である。つまり、第1反射部6aは、上記第1実施形態における平坦部4に相当する部位である。繋ぎ面6bは、第1プリズム部6の2つの壁面のうち第1反射部6aと第1平坦部7とを繋ぐ面であり、例えば、1つの平坦面とされる。
【0070】
複数の第1平坦部7は、例えば
図11に示すように、入射面2aと対向かつ略平行に配置された平滑面であり、入射面2aからの入射光L2が臨界角未満で入射する。複数の第1平坦部7に入射した入射光L2は、外部に射出される。つまり、複数の第1平坦部7は、上記第1実施形態における射出面3aに相当する部位である。
【0071】
反射面2gは、入射面2aに隣接する面であって、反射射出面2fからの反射光を反射する部位である。反射面2gは、複数の第2プリズム部8および第2平坦部9を有し、例えば、一部が導光方向D2に沿って第2プリズム部8および第2平坦部9が交互に配列されてなるプリズムアレイとなっている。反射面2gは、複数の第1反射部6aを第一反射面として、第一反射面と対をなす第二反射面、第三反射面に相当する第2プリズム部8および第2平坦部9を有する。反射面2gは、例えば
図11に示すように、図示しない取付治具等により光学部材1が他の部材100に取り付けられたとき、他の部材100と所定の隙間を隔てて対向することとなる。
【0072】
反射面2gは、例えば、第2プリズム部8のピッチ間隔が異なる第1領域2gaおよび第2領域2gbを有する。第1領域2gaは、第2プリズム部8と第2平坦部9とが交互に繰り返し配列された領域であり、入射した入射光L2を二方向に反射する。第2領域2gbは、複数の第2プリズム部8のみにより構成された領域であり、入射した入射光L2を一方向に反射する。
【0073】
第1領域2gaは、第1入射領域2ga1と、第2入射領域2ga2とを有し、入射面2aの側が第1入射領域2ga1、第2領域2gb側が第2入射領域2ga2となっている。第1入射領域2ga1および第2入射領域2ga2は、いずれも第2プリズム部8と第2平坦部9とが交互に繰り返し配列されたプリズムアレイであるが、第2プリズム部8のピッチ間隔P2が異なっている。第1入射領域2ga1は、例えば
図11に示すように、第1反射領域2faからの反射光が直接入射する領域であり、第1反射領域2faで1回反射した入射光L2が到達する。第2入射領域2ga2は、第2反射領域2fbからの反射光であって、少なくとも入射面2aで1回反射した光が入射する領域であり、第2反射領域2fb、入射面2aおよび平滑射出面2hで3回反射した入射光L2が到達する。
【0074】
複数の第2プリズム部8は、複数の第2平坦部9のなす平面から外部に突出する突起であって、例えば、断面視にて三角形状とされる。複数の第2プリズム部8は、互いに対向し、交差する2つの面を有し、一方が第1反射部6aで反射した光を反射する第2反射部8a、他方が隣接面8bとなっている。
【0075】
複数の第2反射部8aは、例えば、第1反射部6aに対して平行な平坦面であり、厚み方向D1に対して傾斜角度ψで傾斜している。複数の第2反射部8aは、
図11に示すように、第1反射部6aでの反射光の一部を全反射により平滑射出面2hに反射する。複数の第2反射部8aは、第1反射部6aでの反射光を平滑射出面2hの側であって、第2平坦部9での反射光とは異なる方向に反射する。複数の第2反射部8aで反射した光は、臨界角未満の導光角で平滑射出面2hに入射し、平滑射出面2hから外部に射出される。つまり、第2反射部8aは、第1反射部6aで反射した光を平滑射出面2hからの射出させるために用いられる反射面であり、いわば「射出反射面」として機能する。このため、複数の第2プリズム部8のみで構成された第2領域2gbに入射した入射光は、第2反射部8aで反射され、ほぼすべて平滑射出面2hから外部に射出される。
【0076】
複数の第2平坦部9は、例えば、入射面2aと同一平面上に位置し、第1反射部6aで反射した光を全反射により平滑射出面2h側であって、第1反射部6aでの反射光とは異なる方向に反射する部位である。複数の第2平坦部9は、例えば、平滑射出面2hに対して平行である。これにより、第2平坦部9で反射した光は、臨界角以上の導光角で平滑射出面2hに入射し、平滑射出面2hで全反射する。つまり、第2平坦部9は、第1反射部6aで反射した光を導光体2内部で導光するための反射面であり、いわば「導光反射面」として機能する。
【0077】
平滑射出面2hは、反射射出面2fに連続して配置されるとともに、入射面2aおよび第2平坦部9に対して平行な平滑面である。平滑射出面2hは、反射面2gに対して対向配置されており、例えば、入射面2aからの入射光L2、入射面2aで内部反射した光、および反射面2gで内部反射した光が入射する。平滑射出面2hは、第2平坦部9からの反射光を反射面2g側に反射するとともに、第2反射部8aからの反射光を外部に射出する。
【0078】
終端面2eは、導光方向D2における終端に位置し、本実施形態では、反射面2gと平滑射出面2hとを繋ぐ側面である。入射光L2のうち終端面2eに到達した光は、例えば、外部に射出されるが、終端面2eを図示しない光吸収膜で覆うことで、外部に射出されなくてもよい。
【0079】
以上が、導光体2の本実施形態における基本的な構成である。
〔光学部材における導光およびモアレの低減〕
次に、反射射出面2f、反射面2g、および平滑射出面2hにおける導光について説明する。
【0080】
導光体2は、本実施形態では、入射光L2が第1反射部6a、反射面2gの第2反射部8aおよび第2平坦部9で全反射するとともに、第2平坦部9で反射した光が平滑射出面2hで全反射し、内部で導光されるように設計されたハーフミラーレス構造である。例えば
図12に示すように、入射光L2のうち第1平坦部7に入射する光の入射角度をφ
0として、入射光L2の一部は、傾斜角度ψで傾斜した第1反射部6aにはφ
0+ψの入射角度で入射する。入射角φ
0は、第1平坦部7に対する臨界角未満である。このため、第1平坦部7に入射する入射光L2は、角度θで外部に射出される。一方、φ
0+ψの入射角度は、第1反射部6aのなす面に対する法線方向をN1として、第1反射部6aに入射する入射光L2の進む方向と法線方向N1とのなす角度である。このとき、第1反射部6aは、導光体2の屈折率がn、かつ外部の媒質が屈折率1の空気である場合、以下の(12)式の全反射の条件を満たす。
【0081】
sin(φ
0+ψ)>1/n・・・(12)
第1反射部6aで反射される入射光L2は、入射角度と同じ角度で反射されるため、厚み方向D1とのなす角度、すなわち導光角をφ
1として、φ
1=φ
0+2ψとなる。そして、第1反射部6aで反射される入射光L2のうち入射面2aに入射する光は、
図11に示すように角度がφで入射するが、φ=φ
1であり、導光体2が(12)式を満たすため、臨界角より大きい角度となり、全反射により平滑射出面2hに反射される。また、第1反射部6aで反射される入射光L2のうち第2平坦部9に入射する光は、
図13に示すように、臨界角より大きい導光角φ
1で入射するため、入射面2aと同様に、全反射により平滑射出面2hに反射される。さらに、入射面2aで反射された光および第2平坦部9で反射された光は、いずれも導光角φ
1で平滑射出面2hに入射するため、全反射により反射面2g側に反射される。
【0082】
一方、第1反射部6aで反射される入射光L2のうち第2反射部8aに入射する光は、第2反射部8aに対する法線方向N1とのなす角度δで入射する。このとき、第2反射部8aは、導光体2の屈折率がn、かつ外部の媒質が屈折率1の空気である場合、以下の(13)式の全反射の条件を満たす。
【0083】
sinδ>1/n・・・(13)
第2反射部8aは、第1反射部6aと平行、すなわち厚み方向D1に対する傾斜がψであり、角度δで入射した入射光L2を平滑射出面2hに対して入射角φ0となるように反射する。第2反射部8aで反射された光は、臨界角未満の入射角φ0で平滑射出面2hに到達するため、外部に角度θで射出される。なお、角度δは、φ1+ψ-π/2となる。
【0084】
ここで、本実施形態では、反射射出面2fで反射される光線の明暗パターンが、反射面2gの第1領域2gaに到達したときに変化する。このため、第1領域2gaにおける第2プリズム部8のピッチ間隔P2が、反射射出面2fの第1プリズム部6のピッチ間隔P1と同じである場合には、パターンのズレによりモアレが発生してしまう。そこで、導光体2は、モアレを抑制するため、以下の(14)式を満たす設計となっている。
【0085】
P2+ΔP=P1・・・(14)
ΔPは、本実施形態では、入射光L2のうち反射射出面2fで反射した光を特定反射光とし、特定反射光が反射面に到達したときの導光方向D2における光同士のピッチ間隔の変化量であり、(15)式で表される。
【0086】
ΔP=mT(tan(sin-1(sin(θ+Δθ)/n)+π-2ψ)-tan(sin-1(sin(θ)/n)+π-2ψ))・・・(15)
(15)式におけるmは、反射面2gに到達した入射光L2の導光体2内部における反射の回数であって、1または3である。(15)式においてm=1のときのΔPは、内部での反射回数が1の入射光L2が入射する領域、すなわち第1入射領域2ga1に対応するものである。(15)式においてm=3のときのΔPは、内部での反射回数が3の入射光L2が入射する領域、すなわち第2入射領域2ga2に対応するものである。つまり、第1領域2gaは、第1入射領域2ga1と第2入射領域2ga2のピッチ間隔P2が、到達する入射光L2の導光体2内部における反射回数に応じて異なっている。
【0087】
(15)式におけるΔθは、第1領域2gaにおいて隣接する2つの第2プリズム部8の第2反射部8aで反射し、平滑射出面2hから射出される2つの射出光L3であって、平滑射出面2h側の視認者の目に到達するものの角度差である。なお、上記した平滑射出面2hから射出される2つの射出光L3のうち終端面2e側のものが上記第1実施形態で説明した基準光線に相当する。また、基準光線となる入射光L2を反射する第2プリズム部8に対して、導光方向D2とは反対方向において隣接する第2プリズム部8を隣接第2プリズム部とする。つまり、Δθは、隣接第2プリズム部で反射され、平滑射出面2hから射出される射出光L3のうち視認者の目に到達する光と基準光線との角度差に相当する。このため、Δθは、上記第1実施形態と同様に、(4)式で表され、(5)式に近似される。導光体2は、(15)式を満たすことにより、反射射出面2fで反射し、直接または入射面2aおよび平滑射出面2hを経由して第1領域2gaに到達した入射光L2のパターン間隔と、第2プリズム部8のパターン間隔とが一致することとなる。このため、導光体2は、ハーフミラーレス構造、かつモアレを低減する構成となっている。
【0088】
本実施形態によっても、上記第1実施形態と同様の効果が得られる光学部材1となる。
【0089】
(第3実施形態の変形例)
上記第3実施形態では、第1プリズム部6がV字状の溝とされ、第2プリズム部8が突起とされた例について説明したが、これに限定されない。光学部材1は、例えば
図14に示すように、第1プリズム部6が第1平坦部7から突き出た突起とされ、第2プリズム部8が第2平坦部9よりも内部に凹んだV字状の溝とされてもよい。
【0090】
また、上記第3実施形態では、第1プリズム部6のピッチ間隔を第1プリズムピッチとし、第2プリズム部8のピッチ間隔を第2プリズムピッチとして、第1反射領域2faおよび第2反射領域2fbにおいて第1プリズムピッチのP1が同一であった。そして、反射面2gにおける第2プリズムピッチのP2が(15)式を満たすように小さくされた例について説明した。
【0091】
しかしながら、これに限定されるものではなく、第1入射領域2ga1および第2入射領域2ga2において第2プリズムピッチのP2が同一、かつ第1反射領域2faおよび第2反射領域2fbにおける第1プリズムピッチのP1が異なる値とされてもよい。ピッチ間隔P2を固定し、ピッチ間隔P1側を領域2ga1、2ga2ごとに異なる値とする場合であっても、(15)式を満たすことでモアレの発生を抑制することができる。
【0092】
これらの変形例によっても、上記第3実施形態と同様の効果が得られる光学部材1となる。
【0093】
(他の実施形態)
本開示は、実施例に準拠して記述されたが、本開示は当該実施例や構造に限定されるものではないと理解される。本開示は、様々な変形例や均等範囲内の変形をも包含する。加えて、様々な組み合わせや形態、さらには、それらの一要素のみ、それ以上、あるいはそれ以下、を含む他の組み合わせや形態をも、本開示の範疇や思想範囲に入るものである。
【0094】
なお、上記各実施形態において、実施形態を構成する要素は、特に必須であると明示した場合および原理的に明らかに必須であると考えられる場合等を除き、必ずしも必須のものではないことは言うまでもない。また、上記各実施形態において、実施形態の構成要素の個数、数値、量、範囲等の数値が言及されている場合、特に必須であると明示した場合および原理的に明らかに特定の数に限定される場合等を除き、その特定の数に限定されるものではない。また、上記各実施形態において、構成要素等の形状、位置関係等に言及するときは、特に明示した場合および原理的に特定の形状、位置関係等に限定される場合等を除き、その形状、位置関係等に限定されるものではない。
【符号の説明】
【0095】
2…導光体、2a…入射面、2b…射出部、2c…平滑面、2d…傾斜面、2e…終端面
2ba~2bc…(射出部の)第1~第3領域、2f…反射射出面
2fa…(反射射出面の)第1入射領域、2fb…(反射射出面の)第2入射領域
2g…反射面、2ga…(反射面の)第1領域、2ga1…第1反射領域
2ga2…第2反射領域、2gb…(反射面の)第2領域、2h…平滑射出面
2i…接続面、3…プリズム部、3a…射出面、4…平坦部、5…反射層
6…(反射射出面の)第1プリズム部、6a…(第1プリズム部の)反射部
7…(反射射出面の)第1平坦部、8…(反射面の)第2プリズム部
8a…(第2プリズム部の)反射部、9…(反射面の)第2平坦部、D1…厚み方向
D2…導光方向、L1…外景光、L2…入射光、L3…射出光