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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024170993
(43)【公開日】2024-12-11
(54)【発明の名称】加工基板の分割装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/304 20060101AFI20241204BHJP
【FI】
H01L21/304 611Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023087810
(22)【出願日】2023-05-29
(71)【出願人】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】520124752
【氏名又は名称】株式会社ミライズテクノロジーズ
(74)【代理人】
【識別番号】110001128
【氏名又は名称】弁理士法人ゆうあい特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中林 正助
(72)【発明者】
【氏名】長屋 正武
【テーマコード(参考)】
5F057
【Fターム(参考)】
5F057AA19
5F057AA53
5F057BA01
5F057BB03
5F057BB06
5F057CA02
5F057DA22
5F057DA31
5F057GA13
5F057GA16
5F057GB04
5F057GB24
(57)【要約】
【課題】製造工程が増加することを抑制しつつ、加工基板の分割異常判定を行うことができる加工基板を提供する。
【解決手段】内部に面方向に沿った変質層60が形成された加工基板30を挟持する一対の支持部210、220と、変質層60を境界として加工基板30が分割されるように、一対の支持部の少なくとも一方に力を印加する分割力印加部230と、加工基板30を分割する際の所定の物理量に応じた検出信号を出力する検出部240と、分割力印加部230を制御すると共に、検出信号に基づいた処理を行う制御部250と、を備え、制御部250は、検出信号と所定の基準データとを比較して加工基板の分割異常判定を行うようにする。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
加工基板の分割装置であって、
内部に面方向に沿った変質層(60)が形成された加工基板(30)を挟持する一対の支持部(210、220)と、
前記変質層を境界として前記加工基板が分割されるように、前記一対の支持部の少なくとも一方に力を印加する分割力印加部(230)と、
前記加工基板を分割する際の所定の物理量に応じた検出信号を出力する検出部(240)と、
前記分割力印加部を制御すると共に、前記検出信号に基づいた処理を行う制御部(250)と、を備え、
前記制御部は、前記検出信号と所定の基準データとを比較して前記加工基板の分割異常判定を行う加工基板の分割装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記加工基板の分割異常であると判定し、かつ前記加工基板の分割が途中であると判定した場合には、前記分割力印加部を制御して前記加工基板の分割を停止させる請求項1に記載の加工基板の分割装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記分割異常判定を行う際、前記基準データとしての閾値と前記検出信号とを比較し、前記検出信号が前記閾値より大きいと判定すると、前記加工基板の分割異常であると判定する請求項1または2に記載の加工基板の分割装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記分割異常判定を行う際、前記基準データとしての時間と前記物理量とに関する基準波形データと、前記検出信号に基づく時間と前記物理量とに関する判定波形データとを比較し、前記基準波形データと前記判定波形データとのずれが所定範囲外であると判定すると、前記加工基板の分割異常であると判定する請求項1または2に記載の加工基板の分割装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記分割異常判定を行う際、前記基準データとしての時間と前記物理量とに関する基準波形データにおける所定箇所の傾きと、前記検出信号に基づく時間と前記物理量とに関する判定波形データにおける所定箇所の傾きとを比較し、前記基準波形データに関する傾きと前記判定波形データに関する傾きとのずれが所定範囲外であると判定すると、前記加工基板の分割異常であると判定する請求項1または2に記載の加工基板の分割装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、加工基板を分割する加工基板の分割装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、ウェハ状の加工基板を分割して半導体基板を製造するための加工基板の分割方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。具体的には、この分割方法では、加工基板を用意した後、レーザ光を照射して加工基板の内部に変質層を形成する。なお、変質層は、結晶性が崩れた層であり、変質層が形成されていない周囲の部分よりも脆くなっている。その後、この分割方法では、加工基板を一対の保持部で挟持した状態で加工基板を厚さ方向に引張等することにより、変質層を境界として加工基板を分割する。そして、この分割方法では、加工基板を分割して得られる一方の部分を半導体基板としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第7231548号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、レーザ光を照射して変質層を形成する際、加工基板のうちのレーザ光が照射される照射面に異物が付着していたり、レーザ光が通過する部分の結晶性が崩れていたりする場合には、適切に改質層が形成されない可能性がある。この場合、変質層を境界として加工基板を分割しようとしても、加工基板を適切に分割できない可能性がある。このため、例えば、加工基板を分割した後、加工基板が適切に分割されたか否かの分割異常判定を外観検査等によって行うことも考えられるが、分割異常判定を行うためのみの工程が必要となり、製造工程が増加する。
【0005】
本開示は、製造工程が増加することを抑制しつつ、加工基板の分割異常判定を行うことができる加工基板の分割装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の1つの観点によれば、加工基板の分割装置であって、内部に面方向に沿った変質層(60)が形成された加工基板(30)を挟持する一対の支持部(210、220)と、変質層を境界として加工基板が分割されるように、一対の支持部の少なくとも一方に力を印加する分割力印加部(230)と、加工基板を分割する際の所定の物理量に応じた検出信号を出力する検出部(240)と、分割力印加部を制御すると共に、検出信号に基づいた処理を行う制御部(250)と、を備え、制御部は、検出信号と所定の基準データとを比較して加工基板の分割異常判定を行う。
【0007】
これによれば、加工基板を分割する際に加工基板の分割異常判定を行うため、加工基板を分割した後に分割異常判定を行うための外観検査等を行う必要がなく、製造工程が増加することを抑制しつつ、加工基板の分割異常判定を行うことができる。
【0008】
なお、各構成要素等に付された括弧付きの参照符号は、その構成要素等と後述する実施形態に記載の具体的な構成要素等との対応関係の一例を示すものである。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1A】第1実施形態における半導体装置の製造工程を示す断面図である。
図1B図1Aに続く半導体装置の製造工程を示す断面図である。
図1C図1Bに続く半導体装置の製造工程を示す断面図である。
図1D図1Cに続く半導体装置の製造工程を示す断面図である。
図1E図1Dに続く半導体装置の製造工程を示す断面図である。
図1F図1Eに続く半導体装置の製造工程を示す断面図である。
図1G図1Fに続く半導体装置の製造工程を示す断面図である。
図1H図1Gに続く半導体装置の製造工程を示す断面図である。
図1I図1Hに続く半導体装置の製造工程を示す断面図である。
図1J図1Iに続く半導体装置の製造工程を示す断面図である。
図1K図1Jに続く半導体装置の製造工程を示す断面図である。
図2】第1実施形態における分割装置の模式図である。
図3】基準データ波形を示す図である。
図4】第2実施形態における分割装置の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本開示の実施形態について図に基づいて説明する。なお、以下の各実施形態相互において、互いに同一もしくは均等である部分には、同一符号を付して説明を行う。
【0011】
(第1実施形態)
第1実施形態について、図面を参照しつつ説明する。なお、本実施形態では、GaNを用いて構成される加工ウェハ30を分割する方法を含む半導体装置1の製造方法について説明する。
【0012】
まず、図1Aに示されるように、一面10aおよび他面10bを有し、バルクウェハ状とされている基礎基板としてのGaNウェハ10を用意する。例えば、GaNウェハ10は、シリコン、酸素、ゲルマニウム等がドーパントされ、不純物濃度が5×1017~5×1019cm-3とされたものが用いられる。
【0013】
なお、GaNウェハ10の厚みについては任意であるが、例えば400μm程度のものが用意される。また、本実施形態のGaNウェハ10は、一面10aがガリウム面とされると共に他面10bが窒素面とされている。また、このGaNウェハ10は、下記半導体装置1の製造工程を行った後では、後述する図1Kのリサイクルウェハ80を再利用することで用意される。さらに、このGaNウェハ10は、ウェハ状の基礎基板であるともいえる。
【0014】
次に、図1Bに示されるように、GaNウェハ10の一面10a上に10~100μm程度のGaNで構成されるエピタキシャル膜20を形成し、複数の装置形成領域RAがダイシングラインDLで区画される加工ウェハ30を用意する。本実施形態のエピタキシャル膜20は、GaNウェハ10の一面10a側から、n型のエピタキシャル層、n型のエピタキシャル層が順に成膜されて構成される。n型のエピタキシャル膜は、例えば、シリコン、酸素、ゲルマニウム等がドーパントされ、不純物濃度が5×1017~1×1018cm-3程度とされる。n型のエピタキシャル層は、例えば、シリコン等がドーパントされ、不純物濃度が1×1016~1×1017cm-3程度とされる。なお、本実施形態では、ダイシングラインDLで囲まれる各装置形成領域RAは、平面矩形状とされている。また、加工ウェハ30は、ウェハ状の加工基板であるともいえ、本実施形態の加工基板に相当する。
【0015】
以下では、加工ウェハ30のうちのエピタキシャル膜20側の面を加工ウェハ30の一面30aとし、加工ウェハ30のうちのGaNウェハ10側の面を加工ウェハ30の他面30bとする。そして、各装置形成領域RAは、加工ウェハ30の一面30a側に構成される。
【0016】
次に、図1Cに示されるように、一般的な半導体製造プロセスのうちの一面10a側に対するプロセスである表面側プロセスを行う。具体的には、表面側プロセスとして、イオン注入、蒸着、ウェットプロセス等を適宜行い、各装置形成領域RAに、拡散層41やゲート電極42、図示しない表面電極、配線パターン、パッシベーション膜等の半導体素子における一面側素子構成部分を形成する工程を行う。なお、ここでの半導体素子は、種々の構成のものが採用され、例えば、縦型MOSトランジスタ等のパワーデバイスや、発光ダイオード等の光半導体素子、半導体レーザ等が採用される。その後、必要に応じ、加工ウェハ30の一面30a側に、レジスト等で構成される表面保護膜を形成する。
【0017】
続いて、図1Dに示されるように、加工ウェハ30の一面30a側に第1保持部材50を配置する。第1保持部材50は、例えば、基材51と粘着剤52とを有するダイシングテープ等が用いられる。基材51は、製造工程中に反り難い材料で構成され、例えば、ガラス、シリコン基板、セラミックス等で構成される。粘着剤52は、粘着力を変化させることができる材料で構成され、例えば、温度や光によって粘着力が変化するものが用いられる。この場合、粘着剤52は、例えば、紫外線硬化樹脂、ワックス、両面テープ等で構成される。但し、粘着剤52は、後述する図1Fの分割工程を行う際にも粘着力を維持する材料で構成される。また、本実施形態では、第1保持部材50は、平面の大きさが加工ウェハ30の一面30aよりも大きくされている。そして、第1保持部材50は、加工ウェハ30の一面30aに対する法線方向(以下では、単に法線方向ともいう)において、外縁部の全体が加工ウェハ30から突き出した状態とされている。なお、加工ウェハ30の一面30aに対する法線方向とは、言い換えると、加工ウェハ30の一面30aに対する法線方向から視たときということもできる。
【0018】
次に、図1Eに示されるように、加工ウェハ30の他面30bからレーザ光Lを照射し、加工ウェハ30の一面30aから所定深さDとなる位置に、加工ウェハ30の面方向に沿った変質層60を形成する。なお、レーザ光Lは、加工ウェハ30の他面30bに対する法線方向に沿って照射される。
【0019】
具体的には、図示しない、レーザ光Lを発振するレーザ光源、レーザ光の光軸を変えるように配置されたダイクロイックミラー、レーザ光を集光するための集光レンズ、および変位可能なステージ等を有するレーザ装置を用意する。そして、変質層60を形成する際には、レーザ光Lの集光点が加工ウェハ30の面方向に沿って相対的に走査されるように、ステージ等の位置を調整する。これにより、加工ウェハ30には、面方向に沿った変質層60が形成される。より詳しくは、レーザ光Lを照射することにより、窒素がガスとして蒸発すると共にガリウムが析出された変質層60が形成される。この際、加工ウェハ30の他面30bに異物が付着していたり、加工ウェハ30のうちのレーザ光Lが通過する部分の結晶性が崩れていたりすると、変質層60が適切に形成されない可能性がある。
【0020】
なお、変質層60は、結晶性が崩れた層であり、変質層60が形成されていない周囲の部分よりも脆くなっている。また、変質層60を形成する際の所定深さDは、後述する半導体装置1のハンドリングのし易さや狙いのオン抵抗等に応じて設定され、例えば、65μm程度とされる。そして、変質層60は、エピタキシャル膜20の厚さに応じて形成される場所が変更され、エピタキシャル膜20の内部、エピタキシャル膜20とGaNウェハ10との境界、またはGaNウェハ10の内部のいずれかに形成される。
【0021】
また、特に限定されるものではないが、本実施形態では、変質層60を形成する際のレーザ光Lは、固体レーザ光であって、波長が532nmのグリーンレーザが用いられる。そして、レーザ光Lは、加工点出力が0.1~0.3μJ、パルス幅が500ps、加工速度が50~500mm/sとされて照射される。但し、これらの条件は1例であり、本発明者らは、レーザ光の加工点出力がさらに低い場合やパルス幅等がさらに短い場合等においても、変質層60が形成され得ることを確認している。また、本発明者らは、レーザ光Lの加工点出力がさらに高い場合やパルス幅がさらに長い場合等においても、変質層60が形成され得ることを確認している。さらに、ここではレーザ光Lとしてグリーンレーザを例に挙げたが、レーザ光Lは、加工ウェハ30を構成する材料に応じて、波長が355nmである紫外線レーザ、波長が1064nmであるYAG(イットリウム、アルミニウム、ガーネット)レーザ、波長が10.6μmである炭酸ガスレーザ等が用いられてもよい。
【0022】
以下では、加工ウェハ30のうちの変質層60より一面30a側の部分を半導体ウェハ70とし、加工ウェハ30のうちの変質層60より他面30b側の部分をリサイクルウェハ80として説明する。
【0023】
続いて、図1Fに示されるように、加工ウェハ30の他面30b側に第2保持部材90を配置する。なお、第2保持部材90は、例えば、基材91と粘着剤92とを有するダイシングテープ等で構成され、第1保持部材50と同様の構成とされるが、第1保持部材50と異なる構成とされていてもよい。また、本実施形態の第2保持部材90は、第1保持部材50と同様に、平面の大きさが加工ウェハ30の他面30bよりも大きくされている。そして、第2保持部材90は、法線方向において、外縁部の全体が加工ウェハ30から突き出した状態とされている。
【0024】
そして、加工ウェハ30を後述の分割装置Sに配置し、変質層60を境界として、加工ウェハ30を半導体ウェハ70とリサイクルウェハ80とに分割する。なお、本実施形態では半導体ウェハ70が半導体基板に相当する。また、本実施形態の半導体ウェハ70は、ウェハ状の半導体基板ともいえる。
【0025】
以下では、半導体ウェハ70のうちのゲート電極42等が形成されている側の面を一面70aとし、半導体ウェハ70のうちの分割された面側を他面70bとし、リサイクルウェハ80のうちの分割された面側を一面80aとして説明する。なお、図1F以降の各図では、半導体ウェハ70の他面70bおよびリサイクルウェハ80の一面80aに残存する変質層60等を適宜省略して示している。
【0026】
以下、本実施形態における加工ウェハ30を分割する分割装置Sおよび分割方法について説明する。
【0027】
分割装置Sは、図2に示されるように、一対の第1支持部210および第2支持部220、分割力印加部230、検出部240、制御部250等を備えている。第1支持部210および第2支持部220は、SUS等の金属部材で構成され、相対する第1、第2支持面210a、220aを有している。そして、第1支持部210および第2支持部220は、第1支持部210の第1支持面210aと第2支持部220の第2支持面220aとの間に加工ウェハ30が配置されて当該加工ウェハ30を挟持する。
【0028】
本実施形態では、加工ウェハ30の一面30a側に配置されている第1保持部材50には、基材51を挟んで粘着剤52側と反対側に粘着剤53が備えられる。同様に、加工ウェハ30の他面30b側に配置されている第2保持部材90には、基材91を挟んで粘着剤92側と反対側に粘着剤93が備えられる。なお、これらの粘着剤53、93は、例えば、粘着剤52、92と同様の構成とされる。
【0029】
そして、加工ウェハ30は、第1保持部材50における粘着剤53が第1支持部210の第1支持面210aに接合されている。同様に、加工ウェハ30は、第2保持部材90における粘着剤93が第2支持部220の第2支持面220aに接合されている。本実施形態では、このようにして加工ウェハ30が第1支持部210と第2支持部220との間に挟持されている。なお、第1保持部材50における粘着剤53は、図1Fの工程の前から備えられていてもよい。
【0030】
また、本実施形態では、第1支持面210aは、第1保持部材50の平面形状と略同じとされており、第2支持面220aは、第2保持部材90の平面形状と略同じとされている。このため、第1支持面210aおよび第2支持面220aは、加工ウェハ30が配置された際、法線方向において、外縁部の全体が加工ウェハ30の一面30aから突き出した状態とされている。
【0031】
本実施形態の第1支持部210は、第1プレート211および第2プレート212を有しており、検出部240が第1プレート211と第2プレート212との間に配置されるようになっている。なお、本実施形態の第1支持部210は、加工ウェハ30側から第2プレート212、第1プレート211の順に配置され、第1支持面210aが第2プレート212で構成されている。
【0032】
分割力印加部230は、駆動部231および作動部232等を有しており、本実施形態では、第1支持部210の第1プレート211に作動部232が配置されると共に駆動部231が制御部250と接続されている。そして、分割力印加部230は、駆動部231が制御部250から駆動信号を受信すると、駆動部231が作動部232を制御して第1支持部210を引き上げる。これにより、加工ウェハ30は、変質層60を境界として半導体ウェハ70とリサイクルウェハ80とに分割される。
【0033】
この際、第1支持面210a、第2支持面220a、第1保持部材50、および第2保持部材90は、法線方向において、外縁部の全体が加工ウェハ30から突き出した状態とされている。このため、例えば、法線方向において、第1支持面210a、第2支持面220a、第1保持部材50、および第2保持部材90が加工ウェハ30から突き出していない場合と比較して、加工ウェハ30に印加される分割力が局所的にばらつくことを抑制できる。
【0034】
検出部240は、加工ウェハ30を分割する際の物理量に応じた検出信号を出力するものである。本実施形態では、検出部240は、ロードセル等で構成され、第1プレート211と第2プレート212との間に配置されると共に制御部250と接続されている。そして、検出部240は、加工ウェハ30を分割する際の分割力に応じた検出信号を出力する。なお、本実施形態では、第1支持部210を引き上げることで加工ウェハ30を分割するため、検出部240は、引張力に応じた検出信号を出力する。また、本実施形態における分割装置Sを用いて加工ウェハ30を分割する場合、分割に要する時間は1秒以内という短期間で行われる。このため、分割に関する要因と異なる要因が検出信号に入り込み難く、検出信号は、分割装置Sに発生し得る振動等のノイズを含み難い信号となる。
【0035】
制御部250は、CPUや、ROM、RAM、不揮発性RAM、フラッシュメモリ、HDD等の非遷移的実体的記憶媒体で構成される記憶部等を備えたマイクロコンピュータ等で構成されている。そして、制御部250は、CPUがROM等からプログラムを読み出して実行することで各種の制御作動を実現する。なお、ROM等には、プログラムの実行の際に用いられる各種のデータ(例えば、初期値、ルックアップテーブル、マップ等)が予め格納されている。また、CPUは、Central Processing Unitの略であり、ROMは、Read Only Memoryの略であり、RAMは、Random Access Memoryの略であり、HDDはHard Disk Driveの略である。
【0036】
具体的には、制御部250は、分割力印加部230と接続されている。そして、制御部250は、所定タイミングで分割力印加部230に駆動信号を送信する。これにより、分割力印加部230によって第1支持部210が引き上げられ、加工ウェハ30が変質層60を境界として半導体ウェハ70とリサイクルウェハ80とに分割される。
【0037】
また、制御部250は、検出部240と接続されており、検出部240から送信される検出信号に基づいて加工ウェハ30の分割異常判定を行う。そして、制御部250は、例えば、図示しない報知部等とも接続され、報知部を介して分割異常判定の結果を報知する。この場合、制御部250は、分割異常判定の結果を記憶部に記憶し、判定結果に基づいて別の処理を行うようにしてもよい。
【0038】
制御部250における分割異常判定の方法は適宜変更可能であるが、例えば、以下のように行われる。すなわち、記憶部には、変質層60が適切に形成され、変質層60を境界として加工ウェハ30が適切に分割された際の基準データが記憶されるようにする。例えば、記憶部は、基準データとして、図3のように、時間と分割力との関係に関する基準波形データを記憶する。本実施形態では、上記のように第1支持部210を引き上げることで加工ウェハ30を分割するため、分割力は、引張力となる。そして、制御部250は、検出信号と基準データとを比較して分割異常判定を行う。
【0039】
例えば、制御部250は、基準波形データにおける分割力の最大値Mに基づいて分割力の最大値Mより大きい値の閾値を設定し、検出信号が閾値より大きい場合に分割異常であると判定する。なお、この場合の閾値は、例えば、最大値Mの5~10%程度大きい値とされる。
【0040】
また、例えば、制御部250は、基準波形データと同じように、検出信号から時間と分割力との関係に関する判定波形データを作成し、基準波形データと判定波形データとを比較してずれが所定範囲外である場合に分割異常であると判定する。なお、ずれの所定範囲は、例えば、5~10%とされる。
【0041】
さらに、制御部250は、例えば、基準波形データと判定波形データとを比較する場合、所定箇所の傾きを比較してずれが所定範囲外である場合に分割異常であると判定するようにしてもよい。この場合、所定箇所の傾きは、例えば、分割力の最大値から急峻に低下する箇所の傾きとされる。なお、ずれの所定範囲は、例えば、5~10%程度とされる。
【0042】
このように、本実施形態では、加工ウェハ30を分割する際に加工ウェハ30の分割異常判定を行う。このため、加工ウェハ30を分割した後に加工ウェハ30の分割異常判定を行う場合と比較して、製造工程が増加することを抑制できる。
【0043】
また、制御部250は、加工ウェハ30を分割している途中で分割異常であると判定した場合には、分割力印加部230を制御して加工ウェハ30の分割を停止させるようにしてもよい。これによれば、未だ加工ウェハ30の分割を完了していないため、図1Eの工程を再び行って変質層60を新たに形成する等の対応をすることができ、加工ウェハ30を無駄に消費することを抑制できる。なお、加工ウェハ30を分割している途中で分割を停止するとは、例えば、閾値と検出信号とを比較して分割異常判定を行う場合、想定される終了時間よりも極めて早い時間に検出信号が閾値より大きいと判定した場合等である。
【0044】
ここで、上記の基準データに関する変質層60が適切に形成されているとは、変質層60が加工ウェハ30の面方向に沿って所望の位置に形成された状態のことである。また、上記の変質層60を境界として加工ウェハ30が適切に分割されるとは、加工ウェハ30を分割した際の分割面に大きな凹凸が存在せず、分割面が加工ウェハ30の面方向に沿った方向となっていることである。なお、変質層60が適切に形成されていない状態で加工ウェハ30を分割すると、変質層60が形成されていない部分で分割された箇所が発生する。この場合、変質層60が適切に形成されている状態で加工ウェハ30を分割する際と比較して、分割するための必要な力が大きくなると共に、分割された面に大きな凹凸が発生する。
【0045】
加工ウェハ30を分割した後は、加工ウェハ30の分割が正常に行われたと判定された半導体ウェハ70に対し、次の工程を行う。すなわち、図1Gに示されるように、残りの半導体製造プロセスとして、半導体ウェハ70の他面70bに、裏面電極43等を形成する裏面側プロセスを行う。
【0046】
なお、裏面電極43等の裏面側プロセスを行う前に、必要に応じて、CMP(chemical mechanical polishingの略)法等で半導体ウェハ70の他面70bを平坦化する工程を行うようにしてもよい。図1Gは、半導体ウェハ70の他面70bを平坦化した場合の図を示している。さらに、裏面電極43を形成する工程を行った後、必要に応じて、裏面電極43と半導体ウェハ70の他面70bとをオーミック接触とするためのレーザアニール等の加熱処理を行うようにしてもよい。
【0047】
また、加工ウェハ30の分割異常と判定された際の半導体ウェハ70は、廃棄するようにしてもよいが、次のようにしてもよい。すなわち、加工ウェハ30の分割異常と判定された際の半導体ウェハ70には大きな凹凸が存在する可能性がある。この場合、CMP法等を行うことによって分割時に発生した凹凸に対応できる場合には、CMP法を行った後、図1G以降の工程をそのまま行うようにしてもよい。この場合、図1Gの工程におけるCMP法は、分割異常と判定されなかった場合のCMP法を行う期間よりも長くするようにしてもよい。
【0048】
続いて、図1Hに示されるように、半導体ウェハ70のうちの他面70b側、つまり裏面電極43側に第3保持部材100を配置する。第3保持部材100は、例えば、基材101と粘着剤102とを有するダイシングテープ等で構成され、第1保持部材50と同様の構成とされるが、第1保持部材50と異なる構成とされていてもよい。
【0049】
その後、図1Iに示されるように、半導体ウェハ70のうちの一面70a側に貼り付けてある第1保持部材50を剥離する。ここでは、第1保持部材50のうちの半導体ウェハ70に貼り付けている粘着剤52の接着力を低下させる処理、例えば、粘着剤52をUV樹脂接着材で構成している場合にはUV照射を行う。
【0050】
続いて、図1Jに示されるように、ダイシングソー、またはレーザダイシング等により、半導体ウェハ70を装置単位に個片化することで半導体装置1を構成する。この際、半導体ウェハ70を装置単位に分割しつつも、第3保持部材100については切断されること無く繋がったままの状態となるように、ダイシング深さを調整することが好ましい。
【0051】
半導体装置1に関するこの後の工程については図示しないが、例えば、次の工程が行われる。すなわち、第3保持部材100をエキスパンドし、ダイシングカットした部分にて各半導体装置1の間隔を広げる。その後、加熱処理や光を照射する等して粘着剤102の粘着力を弱まらせ、半導体装置1をピックアップする。これにより、半導体装置1が製造される。
【0052】
また、図1Kに示されるように、図1Fで構成されたリサイクルウェハ80には、一面80aに対して研磨装置110等を用いたCMP法を行うことにより、当該一面80aを平坦化する。そして、平坦化したリサイクルウェハ80をGaNウェハ10とし、再び上記図1A以降の工程を行う。これにより、GaNウェハ10は、半導体装置1を構成するのに複数回利用されることができる。
【0053】
なお、本実施形態では、図1Fの工程にて加工ウェハ30を分割する際、制御部250は、加工ウェハ30の分割異常判定を行う。そして、加工ウェハ30の分割異常と判定された際のリサイクルウェハ80は、一面80aに大きな凹凸が形成されている可能性がある。このため、リサイクルウェハ80の一面80aに対するCMP法を行う場合、加工ウェハ30の分割異常と判定されている場合には、分割異常と判定されなかった場合よりもCMP法を行う期間を長くするようにしてもよい。
【0054】
以上説明した本実施形態によれば、分割装置Sには、加工ウェハ30を分割する際に発生する物理量に応じた検出信号を出力する検出部240が備えられている。また、分割装置Sには、検出信号に応じて分割異常判定を行う制御部250が備えられている。そして、分割装置Sは、加工ウェハ30を分割する際に加工ウェハ30の分割異常判定を行っている。このため、加工ウェハ30を分割した後に分割異常判定を行うための外観検査等を行う必要がなく、製造工程が増加することを抑制しつつ、加工ウェハ30の分割異常判定を行うことができる。
【0055】
(1)本実施形態では、制御部250は、加工ウェハ30を分割している途中で分割異常であると判定した場合には、分割力印加部230を制御して加工ウェハ30の分割を停止させるようにしてもよい。これによれば、未だ加工ウェハ30の分割を完了していないため、加工ウェハ30に変質層60を新たに形成する等の対応をすることができ、加工ウェハ30を無駄に消費することを抑制できる。
【0056】
(第2実施形態)
第2実施形態について説明する。本実施形態は、第1実施形態に対し、分割力印加部230の配置位置を変更したものである。その他に関しては、第1実施形態と同様であるため、ここでは説明を省略する。
【0057】
本実施形態の分割装置Sは、図4に示されるように、第1支持部210が1つのプレートで構成され、作動部232が第1支持部210の面方向における端部に備えられている。そして、本実施形態では、作動部232が第1支持部210を加工ウェハ30の面方向に沿ってスライドするように変位させることにより、加工ウェハ30を半導体ウェハ70とリサイクルウェハ80とに分割する。言い換えると、作動部232は、加工ウェハ30の一面30a側を面方向にスライドさせることにより、加工ウェハ30を半導体ウェハ70とリサイクルウェハ80とに分割する。つまり、作動部232は、加工ウェハ30にせん断力を印加して加工ウェハ30を半導体ウェハ70とリサイクルウェハ80とに分割する。
【0058】
制御部250は、上記第1実施形態と同様の構成とされている。但し、本実施形態の制御部250には、基準データとして、変質層60が適切に形成され、加工ウェハ30の一面10a側を面方向にスライドさせた際のデータが記憶されている。
【0059】
以上説明したように、加工ウェハ30の面方向に力を印加して加工ウェハ30を分割するようにしても、上記第1実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0060】
(他の実施形態)
本開示は、実施形態に準拠して記述されたが、本開示は当該実施形態や構造に限定されるものではないと理解される。本開示は、様々な変形例や均等範囲内の変形をも包含する。加えて、様々な組み合わせや形態、さらには、それらに一要素のみ、それ以上、あるいはそれ以下、を含む他の組み合わせや形態をも、本開示の範疇や思想範囲に入るものである。
【0061】
例えば、上記各実施形態では、加工ウェハ30がGaNで構成される例を説明したが、加工ウェハ30は、炭化珪素等で構成されるものであってもよい。
【0062】
また、上記第1実施形態では、ウェハ状の基板としての加工ウェハ30を分割する例について説明したが、基板は、ウェハ状ではなく、予めチップ単位等に分割されていてもよい。
【0063】
さらに、上記各実施形態では、加工ウェハ30を分割する前に半導体素子における一面側素子構成部分を形成する例について説明した。しかしながら、加工ウェハ30を分割した後に半導体素子における一面側素子構成部分を形成するようにしてもよい。
【0064】
また、上記各実施形態では、加工ウェハ30を分割する際に発生する物理量としての力に基づいて分割異常判定を行う例について説明した。しかしながら、分割異常判定に用いる物理量は適宜変更可能であり、例えば、時間と第1支持部210の変位量との関係を基準データとして分割異常判定を行うようにしてもよい。なお、変質層60が適切に形成されていない場合には、加工ウェハ30を分割し難くなるため、変質層60が適切に形成されている場合と比較して、変位量が最大となる時間が遅くなる。
【0065】
また、上記第1実施形態では、作動部232を第1支持部210に配置し、第1支持部210を引き上げることで加工ウェハ30を分割する例に説明した。しかしながら、加工ウェハ30を分割する際には、第2支持部220を引き下げることで加工ウェハ30を分割するようにしてもよいし、第1支持部210を引き上げると共に第2支持部220を引き下げることで加工ウェハ30を分割するようにしてもよい。なお、このような場合は、作動部232の数や配置される場所が適宜調整される。
【0066】
同様に、第2実施形態では、第2支持部220をスライドさせることで加工ウェハ30を分割するようにしてもよいし、第1支持部210および第2支持部220をスライドさせることで加工ウェハ30を分割するようにしてもよい。なお、このような場合は、作動部232の数や配置される場所が適宜調整される。また、第1支持部210および第2支持部220をスライドさせる際には、第1支持部210をスライドさせる方向と第2支持部220をスライドさせる方向とが逆向きとなるようにすることが好ましい。
【0067】
本開示に記載の制御部及びその手法は、コンピュータプログラムにより具体化された一つ乃至は複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサ及びメモリーを構成することによって提供された専用コンピュータにより、実現されてもよい。あるいは、本開示に記載の制御部及びその手法は、一つ以上の専用ハードウエア論理回路によってプロセッサを構成することによって提供された専用コンピュータにより、実現されてもよい。もしくは、本開示に記載の制御部及びその手法は、一つ乃至は複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサ及びメモリーと一つ以上のハードウエア論理回路によって構成されたプロセッサとの組み合わせにより構成された一つ以上の専用コンピュータにより、実現されてもよい。また、コンピュータプログラムは、コンピュータにより実行されるインストラクションとして、コンピュータ読み取り可能な非遷移有形記録媒体に記憶されていてもよい。
【符号の説明】
【0068】
30 加工基板
60 変質層
210 第1支持部
220 第2支持部
230 分割力印加部
240 検出部
250 制御部
図1A
図1B
図1C
図1D
図1E
図1F
図1G
図1H
図1I
図1J
図1K
図2
図3
図4