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特開2024-170994単層カーボンナノチューブ用触媒、及び単層カーボンナノチューブの製造方法
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  • 特開-単層カーボンナノチューブ用触媒、及び単層カーボンナノチューブの製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024170994
(43)【公開日】2024-12-11
(54)【発明の名称】単層カーボンナノチューブ用触媒、及び単層カーボンナノチューブの製造方法
(51)【国際特許分類】
   B01J 23/89 20060101AFI20241204BHJP
   C01B 32/162 20170101ALI20241204BHJP
【FI】
B01J23/89 M
C01B32/162
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023087811
(22)【出願日】2023-05-29
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 令和5年3月1日、第64回 フラーレン・ナノチューブ・グラフェン総合シンポジウムの予稿集に要約として、単層カーボンナノチューブ用触媒、及び単層カーボンナノチューブの製造方法に関する研究について公開した。 令和5年3月3日、第64回 フラーレン・ナノチューブ・グラフェン総合シンポジウムにおいて、単層カーボンナノチューブ用触媒、及び単層カーボンナノチューブの製造方法に関する研究について公開した。 令和5年2月27日、第70回 応用物理学会春季学術講演会の予稿集に要約として、単層カーボンナノチューブ用触媒、及び単層カーボンナノチューブの製造方法に関する研究について公開した。 令和5年3月16日、第70回 応用物理学会春季学術講演会において、単層カーボンナノチューブ用触媒、及び単層カーボンナノチューブの製造方法に関する研究について公開した。
(71)【出願人】
【識別番号】599002043
【氏名又は名称】学校法人 名城大学
(74)【代理人】
【識別番号】110000497
【氏名又は名称】弁理士法人グランダム特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】丸山 隆浩
(72)【発明者】
【氏名】松岡 就
【テーマコード(参考)】
4G146
4G169
【Fターム(参考)】
4G146AA12
4G146AB06
4G146BA12
4G146BC09
4G146BC42
4G146BC43
4G146BC44
4G169AA03
4G169BA04B
4G169BB02A
4G169BB02B
4G169BC29A
4G169BC31B
4G169BC65A
4G169BC67B
4G169BC68B
4G169BC69A
4G169BC70B
4G169BC72B
4G169CB81
4G169DA05
4G169EB18X
(57)【要約】
【課題】品質が安定した単層カーボンナノチューブを製造するための単層カーボンナノチューブ用触媒、及び単層カーボンナノチューブの製造方法を提供する。
【解決手段】単層カーボンナノチューブ用触媒30は、ハイエントロピー合金が含まれた触媒粒子32を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハイエントロピー合金が含まれた触媒粒子を備える、単層カーボンナノチューブ用触媒。
【請求項2】
前記ハイエントロピー合金は、少なくとも五種類の遷移金属を含んでいる、請求項1に記載の単層カーボンナノチューブ用触媒。
【請求項3】
前記ハイエントロピー合金は、少なくとも一種類の白金族元素を含んでいる、請求項2に記載の単層カーボンナノチューブ用触媒。
【請求項4】
前記ハイエントロピー合金は、少なくとも一種類の鉄族元素を含んでいる、請求項2に記載の単層カーボンナノチューブ用触媒。
【請求項5】
前記触媒粒子の粒径は、1nm以上3nm以下である、請求項1に記載の単層カーボンナノチューブ用触媒。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の単層カーボンナノチューブ用触媒を用いて単層カーボンナノチューブを合成する合成工程を備える、単層カーボンナノチューブの製造方法。
【請求項7】
前記単層カーボンナノチューブ用触媒は、前記触媒粒子が酸化チタンで形成された基材に担持された構成であり、
前記合成工程は、アセチレンを用いたCVD法によって前記単層カーボンナノチューブを合成する、請求項6に記載の単層カーボンナノチューブの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は単層カーボンナノチューブ用触媒、及び単層カーボンナノチューブの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、金属基板の表面にバッファ層を積層し、このバッファ層の表面にIr(イリジウム)を蒸着したものにCVD法を実行することによって単層カーボンナノチューブを製造する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2022-120959号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示された製造方法は、単層カーボンナノチューブの成長中に触媒の物理的な性質や化学状態が変化しやすく、単層カーボンナノチューブの直径やカイラリティが不均一になりがちである。したがって、安定した品質の単層カーボンナノチューブを製造する技術が望まれている。
【0005】
本発明は、上記従来の実情に鑑みてなされたものであって、品質が安定した単層カーボンナノチューブを製造するための単層カーボンナノチューブ用触媒、及び単層カーボンナノチューブの製造方法を提供することを解決すべき課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1発明の単層カーボンナノチューブ用触媒は、
ハイエントロピー合金が含まれた触媒粒子を備える。
【0007】
第2発明の単層カーボンナノチューブの製造方法は、
第1発明の単層カーボンナノチューブ用触媒を用いて単層カーボンナノチューブを合成する合成工程を備える。
【0008】
本発明によれば、品質が安定した単層カーボンナノチューブを製造することができる。ここで、ハイエントロピー合金(High Entropy Alloy:HEA)とは、五種類以上の元素を同じ量ずつ含む固溶体合金である。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施例1の単層カーボンナノチューブ用触媒の概略図である。
図2】単層カーボンナノチューブの製造方法に用いる基板の製造から単層カーボンナノチューブを合成するまでの手順を示す概略図である。
図3】単層カーボンナノチューブ用触媒のTEM画像である。
図4】単層カーボンナノチューブ用触媒のSTEM-EDSマッピングを行った結果を示す画像である。
図5】作製されたサンプル1におけるラマンスペクトルを示すグラフである。
図6】(A)、(B)は、サンプル1のTEM画像であり、(C)は、サンプル1のSEM画像である。
図7】単層カーボンナノチューブの製造方法における、反応炉内の温度の変化、及び反応炉内に供給するガスの種類の変化を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明における好ましい実施の形態を説明する。
【0011】
第1発明において、ハイエントロピー合金は、少なくとも五種類の遷移金属を含み得る。この場合、良好に単層カーボンナノチューブを合成することができる。
【0012】
第1発明において、ハイエントロピー合金は、少なくとも一種類の白金族元素を含み得る。この場合、触媒として良好に機能することができる。
【0013】
第1発明において、ハイエントロピー合金は、少なくとも一種類の鉄族元素を含み得る。この場合、触媒として良好に機能することができる。
【0014】
第1発明において、触媒粒子の粒径は、1nm以上3nm以下であり得る。この場合、単層カーボンナノチューブの直径を細く形成することができる。
【0015】
第2発明において、単層カーボンナノチューブ用触媒は、触媒粒子が酸化チタンで形成された基材に担持された構成であり、合成工程は、アセチレンを用いたCVD法によって単層カーボンナノチューブを合成し得る。この場合、CVD法を実行する際に酸化チタンで形成された基材を変質させにくくすることができる。
【0016】
次に、第1発明及び第2発明を具体化した実施例1について、図面を参照しつつ説明する。
【0017】
<実施例1>
図1に示すように、実施例1の単層カーボンナノチューブ用触媒30は、基材31と、触媒粒子32と、を備えている。基材31には、例えば、ルチル型の酸化チタンであるTiO2が用いられる。基材31の粒径は、およそ100nmである。触媒粒子32は、鉄族元素であるCo(コバルト)、鉄族元素であるNi(ニッケル)、銅族元素であるCu(銅)、白金族元素であるRu(ルテニウム)、白金族元素であるPd(パラジウム)が同じ量ずつ含まれたハイエントロピー合金を含んでいる。これら五種類の元素は、遷移金属である。つまり、ハイエントロピー合金は、五種類の遷移金属を含んでおり、二種類の鉄族元素を含んでおり、二種類の白金族元素を含んでいる。ここで、遷移金属とは、周期律表における三族から十一族に含まれる元素を含む。
【0018】
触媒粒子32の粒径は、およそ2nmである。触媒粒子32は、面心立方構造を有している。触媒粒子32は、基材31の外面に配置されている。具体的には、単層カーボンナノチューブ用触媒30は、TiO2粉末(酸化チタン)で形成された基材31に複数の触媒粒子32が担持されて構成されている。単層カーボンナノチューブ用触媒30は、Co、Ni、Cu、Ru、Pdを含んだ触媒粒子32と、TiO2粉末である基材31と、が混合した混合物である。
【0019】
[単層カーボンナノチューブ用触媒の製造方法について]
単層カーボンナノチューブ用触媒の製造方法について説明する。先ず、基材31として、ルチル型のTiO2の粒子(シグマアルドリッチ社製 637262 粒径およそ100nm)0.25gを蒸留水50mlに分散させる。その後、10mM(0.01mol/L)の各金属前駆体溶液(塩化ルテニウムRuCl3・nH2O、硝酸銅Cu(NO32・3H2O、硝酸コバルトCo(NO32・6H2O、硝酸ニッケルNi(NO32・6H2O、及びテトラクロロパラジウム酸ナトリウムNa2PdCl4)を2.375mLずつ加える。そして、この混合物を室温で1時間、マグネットスターラーで攪拌し、その後、溶媒である水をエバポレーターで真空蒸発させ、各金属元素が担持された酸化チタンの粉末を得る。
【0020】
次に、こうして得た酸化チタンの粉末を加熱炉に導入して、加熱炉のチャンバー内の空気をロータリーポンプで5分間排気した後、ロータリーポンプを停止し、排気を止める。その後、加熱炉内のチャンバー内にH2(水素)を流入させ、大気圧(1013hPa)のH2で満たした後、加熱炉のリーク弁を開け、20分間H2置換する。H2置換後、20分かけて加熱炉を室温から400℃まで昇温させて、400℃で3時間H2還元を行い、触媒粒子32の形成を行う。
【0021】
2還元を3時間行った後、50℃まで降温し、チャンバー内へのH2の供給を止めて、ロータリーポンプでH2を5分間排気する。その後、加熱炉内に大気を導入し大気圧にし、その後、試料を取り出す。こうして、単層カーボンナノチューブ用触媒30を得る。
【0022】
[基板に対する単層カーボンナノチューブ用触媒の塗布]
次に、こうして得た単層カーボンナノチューブ用触媒30を、基板50に塗布する。基板50は、Si(ケイ素)製であり平板状をなしている(図2(A)参照)。基板50の表面(図2(A)における上側の面)には、(111)面が露出している。先ず、表面に付着したごみ等の異物を除去するために基板50を洗浄する。具体的には、基板50をアセトンに浸し、超音波洗浄機を用いて5分間洗浄して乾燥させる。次に、基板50をメタノールに浸し、超音波洗浄機を用いて5分間洗浄して乾燥させる。その後、基板50を純水に浸し、超音波洗浄機を用いて5分間洗浄して乾燥させる。
【0023】
次に、洗浄した基板50の表面にSiO2膜51を形成する(図2(B)参照。)。具体的には、基板50を1000℃に加熱した酸化炉内に導入し、14分間保持する。この間、酸化炉内には所定の流量で水蒸気を導入し続ける。これにより、基板50の表面にSiO2膜51を形成する。
【0024】
次に、SiO2膜51の表面に単層カーボンナノチューブ用触媒30を塗布する(図2(C)参照。)。具体的には、先ず、単層カーボンナノチューブ用触媒30をイソプロピルアルコールに超音波分散させて、分散液52を作製する。そして、スピンコーターを用いて分散液52をSiO2膜51の表面に塗布する。この後、分散液52からイソプロピルアルコールを蒸発させることによって、SiO2膜51の表面に単層カーボンナノチューブ用触媒30が担持された基板50が完成する(図2(D)参照)。
【0025】
[触媒粒子についての検討]
上記の製造方法を実行して製造した単層カーボンナノチューブ用触媒30の触媒粒子32は、Co、Ni、Cu、Ru、Pdの各原子が満遍なく混ざり合うように、面心立方構造で配置された固溶体である(図示せず)。触媒粒子32に対してX線回折(XRD)を行った結果、触媒粒子32の格子定数は、およそ3.74オングストロームであり、(111)面の面間隔は、およそ2.16オングストロームであることがわかった。
【0026】
図3に示すように、触媒粒子32を透過型電子顕微鏡(TEM)で観察した結果、触媒粒子32の粒径は、およそ1nmから3nmであり、その平均粒径は、およそ2.25nmであることが分かった。図3に示す触媒粒子32には、(111)面の面間隔(およそ2.16オングストローム)の結晶構造が現れている。
【0027】
図4に上記の製造方法を実行して製造した単層カーボンナノチューブ用触媒30に対してSTEM-EDSマッピングを行った結果を示す。具体的には、図4(A)における四角枠内の領域についてSTEM-EDSマッピングを行った。図4(B)、(C)、(D)、(E)、(F)、(G)における白色の点が、原子の位置に対応している。
【0028】
図4(C)、(D)、(E)、(F)、(G)に示すように、Co、Ni、Cu、Ru、Pdの各々の原子が触媒粒子32の中において満遍なく分布していることがわかった。また、試料全体から見積もられる触媒粒子32の各金属元素のモル比は、Co:20.34、Ni:17.80、Cu:22.27、Ru:20.08、Pd:19.51であった。最も大きいモル比のCuと、最も小さいモル比のNiとのモル比の差は、4.47であった。したがって、触媒粒子32には、各金属元素は、概ね同じ量で含まれていると見なし得る。
【0029】
[単層カーボンナノチューブの合成]
次に、単層カーボンナノチューブ用触媒30を塗布した基板50を用いて単層カーボンナノチューブCを合成する合成工程の一例について説明する。合成工程では、ホットウォール型CVD成長装置(サーモ理工製 均温熱処理装置)を用いて、アセチレンを炭素源として用いたCVD(化学気相成長)法を実行して単層カーボンナノチューブCを合成する。CVD成長装置の反応炉内に基板50を配置する。反応炉内の気体を排気することによって、CVDを実行する反応炉内の圧力を数Pa程度まで低下させる。
【0030】
次に、図7に示すように、気体が排気された反応炉にAr及びH2(H2の割合5%)の混合ガスを1000sccmで流して還元雰囲気とし、25分かけておよそ800℃まで昇温する。800℃に達したところで、反応炉内へのAr及びH2の混合ガスの供給を停止し、Ar及びアセチレン(アセチレンの割合2.5%)の混合ガスを800sccmで供給した状態を10分間継続する。すると、単層カーボンナノチューブ用触媒30の触媒粒子32から単層カーボンナノチューブCが成長する(図2(E)参照)。
【0031】
Ar及びアセチレンの混合ガスの供給を10分間継続したところで、反応炉内へのAr及びアセチレンの混合ガスの供給を停止し、Ar及びH2(H2の割合5%)の混合ガスを1000sccmで流した状態を継続しつつ、反応炉の温度を室温まで降温させる。反応炉の温度が室温に到達したところで、反応炉内へのAr及びH2の供給を停止する。そして、反応炉内を大気で満たした後、反応炉から基板50を取り出す。
【0032】
図5に、上記の単層カーボンナノチューブの製造方法を実行して作製したサンプル1に対して、488nm、532nm、671nm、785nmの4種類の波長の光を照射した際に得られたラマンスペクトルを示す。
【0033】
サンプル1において、高波数領域(図5における右側)には、G-bandのスペクトルのピークが明瞭に現れている。このため、単層カーボンナノチューブCが成長していることがわかる。そして、低波数領域(図5における左側)の100cm-1から300cm-1付近には、複数のRBM(ラジアルブリ―ジングモード)のスペクトルのピークが現れている。以上の結果から、単層カーボンナノチューブ用触媒30を用いてCVD法を実行することによって単層カーボンナノチューブCが合成されることがわかった。また、RBMのスペクトルのピークの位置から、サンプル1における単層カーボンナノチューブCの直径は、概ね0.7nmから2nmの間に分布していることがわかった。図6(A)、(B)に示すように、サンプル1において触媒粒子32から単層カーボンナノチューブCが成長していることが分かった。図6(C)に示すように、サンプル1において単層カーボンナノチューブ用触媒30の表面には、単層カーボンナノチューブCが成長していることがわかった。
【0034】
次に、上記実施例における作用効果を説明する。
【0035】
単層カーボンナノチューブ用触媒30は、ハイエントロピー合金が含まれた触媒粒子32を備える。この構成によれば、単層カーボンナノチューブの成長中に触媒粒子32の物理的な性質や化学状態が変化しにくくなり、単層カーボンナノチューブの直径やカイラリティが変化しにくくなるので、安定した品質の単層カーボンナノチューブを製造することができる。
【0036】
ハイエントロピー合金は、五種類の遷移金属を含んでいる。このため、良好に単層カーボンナノチューブCを合成することができる。
【0037】
ハイエントロピー合金は、二種類の白金族元素を含んでいる。このため、触媒として良好に機能することができる。
【0038】
ハイエントロピー合金は、二種類の鉄族元素を含んでいる。このため、触媒として良好に機能することができる。
【0039】
触媒粒子32の粒径は、1nm以上3nm以下である。このため、単層カーボンナノチューブCの直径を細く形成することができる。
【0040】
単層カーボンナノチューブの製造方法は、単層カーボンナノチューブ用触媒30を用いて単層カーボンナノチューブCを合成する合成工程を備える。この構成によれば、単層カーボンナノチューブCの成長中に触媒粒子32の物理的な性質や化学状態が変化しにくくなり、単層カーボンナノチューブCの直径やカイラリティが変化しにくくなるので、安定した品質の単層カーボンナノチューブCを製造することができる。
【0041】
単層カーボンナノチューブ用触媒30は、触媒粒子32が酸化チタンで形成された基材31に担持された構成であり、合成工程は、アセチレンを用いたCVD法によって単層カーボンナノチューブCを合成する。このため、CVD法を実行する際に酸化チタンで形成された基材31を変質させにくくすることができる。
【0042】
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施例に限定されるものではなく、例えば次のような実施例も本発明の技術的範囲に含まれる。
(1)実施例1とは異なり、ハイエントロピー合金に六種類以上の遷移金属を含ませてもよい。
(2)実施例1とは異なり、ハイエントロピー合金に鉄族元素を一種類または、三種類含ませてもよい。ハイエントロピー合金に白金族元素を一種類または、三種類以上含ませてもよい。ハイエントロピー合金に鉄族元素、白金族元素を含まない構成としてもよい。
(3)実施例1とは異なり、基板として、SiO2(酸化ケイ素)等を用いてもよい。
(4)触媒粒子の粒径は、実施例1に開示された大きさに限定されない。
(5)実施例1とは異なり、基材として、Al23(アルミナ)等を用いてもよい。
(6)実施例1とは異なり、合成工程において、アセチレンに代えてメタンやエチレンを用いてもよい。
【符号の説明】
【0043】
30…単層カーボンナノチューブ用触媒
31…基材
32…触媒粒子
C…単層カーボンナノチューブ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7