(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024170996
(43)【公開日】2024-12-11
(54)【発明の名称】ガス分離システムとその制御方法
(51)【国際特許分類】
B01D 53/22 20060101AFI20241204BHJP
【FI】
B01D53/22
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023087815
(22)【出願日】2023-05-29
(71)【出願人】
【識別番号】000005108
【氏名又は名称】株式会社日立製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】石田 直行
(72)【発明者】
【氏名】飯塚 秀宏
(72)【発明者】
【氏名】矢敷 達朗
(72)【発明者】
【氏名】渡部 亜由美
(72)【発明者】
【氏名】河原 洋平
(72)【発明者】
【氏名】金 恩敬
(72)【発明者】
【氏名】稲垣 良平
【テーマコード(参考)】
4D006
【Fターム(参考)】
4D006GA41
4D006KE02Q
4D006KE03Q
4D006KE04Q
4D006KE08P
4D006KE08Q
4D006KE09P
4D006KE09Q
4D006KE11P
4D006KE12P
4D006KE22Q
4D006MC03
4D006MC05
4D006MC09
4D006PA10
4D006PB18
4D006PB66
4D006PB68
(57)【要約】
【課題】ガスグリッドの特定ガス濃度がユーザの指定する濃度を挟んで変動する場合にも容易な操作でユーザの指定する濃度に制御が可能となるガス分離システムを提供する。
【解決手段】分離膜30によって分離した非透過ガスと透過ガスを再混合し特定ガス濃度を一定に制御するガス分離システム1であって、非透過ガス配管13と透過ガス配管16に流量調整弁23,24を備え、圧力調整弁22を備えた非透過ガス配管13から分岐された非透過ガス戻し配管14と圧力調整弁25を備えた透過ガス配管16から分岐された透過ガス戻し配管18のいずれかまたは両方を備えている。制御装置51は、供給ガスの特定ガス濃度と非透過側及び透過側圧力によりあらかじめ用意した制御マップに基づいて流量調整弁23,24及び圧力調整弁22,25を制御する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
分離膜モジュールから排出された非透過ガスと透過ガスを再混合し特定ガス濃度を一定に制御するガス分離システムであって、
前記分離膜モジュールから前記非透過ガスを取り出す、第1流量調整弁を有する非透過ガス配管と、
前記分離膜モジュールから前記透過ガスを取り出す、第2流量調整弁を有する透過ガス配管と、を備え、
前記非透過ガス配管と前記透過ガス配管は、前記第1流量調整弁及び前記第2流量調整弁の下流側で取出し配管に接続され、
さらに、前記非透過ガス配管と前記透過ガス配管については、
前記非透過ガス側の構成として、前記第1流量調整弁の上流側で前記非透過ガス配管から分岐され、第1圧力調整弁を有する非透過ガス戻し配管と、
前記透過ガス側の構成として、前記第2流量調整弁の上流側で前記透過ガス配管から分岐され、第2圧力調整弁を有する透過ガス戻し配管と、のうちいずれか又は両方を備えている
ことを特徴とするガス分離システム。
【請求項2】
請求項1に記載のガス分離システムにおいて、
前記分離膜モジュールにガスを供給する供給ガス配管から分岐され前記分離膜モジュールの透過側に接続した供給ガス分岐配管を備え、
前記供給ガス分岐配管に流量調整弁を有する
ことを特徴とするガス分離システム。
【請求項3】
請求項1に記載のガス分離システムにおいて、
供給ガスの特定のガス濃度を測定する特定ガス濃度計と、前記分離膜モジュールの非透過側の圧力を測定する第1圧力計と、透過側の圧力を測定する第2圧力計と、前記分離膜モジュールにガスを供給する供給ガス配管に流量調整弁とを備え、
前記特定ガス濃度計、前記第1圧力計及び前記第2圧力計の測定値と、前記供給ガス配管の流量調整弁の開度の情報とに基づき、前記第1流量調整弁、前記第2流量調整弁、前記第1圧力調整弁又は/及び前記第2圧力調整弁の圧力調整弁の開度を指定する信号を送信する制御装置を備えている
ことを特徴とするガス分離システム。
【請求項4】
請求項2に記載のガス分離システムにおいて、
供給ガスの特定のガス濃度を測定する特定ガス濃度計と、前記分離膜モジュールの非透過側の圧力を測定する第1圧力計と、透過側の圧力を測定する第2圧力計と、前記分離膜モジュールにガスを供給する供給ガス配管に流量調整弁とを備え、
前記特定ガス濃度計、前記第1圧力計及び前記第2圧力計の測定値と、前記供給ガス配管の流量調整弁の開度の情報とに基づき、前記第1流量調整弁、前記第2流量調整弁、前記第1圧力調整弁又は/及び前記第2圧力調整弁の圧力調整弁の開度と、前記供給ガス分岐配管に備えた流量調整弁の開度とを指定する信号を送信する制御装置を備えている
ことを特徴とするガス分離システム。
【請求項5】
請求項4に記載のガス分離システムにおいて、
前記制御装置は、前記供給ガス分岐配管に備えた流量調整弁の開度を固定して、その他の圧力調整弁及び流量調整弁の開度を制御する
ことを特徴とするガス分離システム。
【請求項6】
請求項3乃至5のいずれか1項に記載のガス分離システムにおいて、
前記制御装置は、前記特定ガス濃度計、前記第1圧力計及び第2圧力計の測定値と、前記供給ガス配管の流量調整弁の開度の情報とから流量調整弁及び圧力調整弁の開度を算出する制御マップを備えている
ことを特徴とするガス分離システム。
【請求項7】
請求項4に記載のガス分離システムにおいて、
前記制御装置は、供給ガスの特定ガス濃度が目標の取出しガスの特定ガス濃度よりも低い場合に、供給ガスの特定ガス濃度が上昇したときに前記供給ガス分岐配管に備えた流量調整弁の開度を小さくし、特定ガスの濃度が低下したときは開度を大きくし、供給ガスの特定ガス濃度が目標の取出しガスの特定ガス濃度以上の場合に、前記供給ガス分岐配管に備えた流量調整弁の開度をゼロにする
ことを特徴とするガス分離システム。
【請求項8】
請求項6に記載のガス分離システムにおいて、
前記制御装置は、前記特定ガス濃度計と前記分離膜モジュールの入口までの距離と制御装置により算出した供給ガス流速から、前記特定ガス濃度計を通過した供給ガスが前記分離膜モジュールの入口に到達する時間を算出し、前記算出した時間だけ流量調整弁及び圧力調整弁の制御を遅らせる
ことを特徴とするガス分離システム。
【請求項9】
分離膜モジュールから排出された非透過ガスと透過ガスを再混合し特定ガス濃度を一定に制御するガス分離システムの制御方法であって、
前記ガス分離システムは、
前記分離膜モジュールから前記非透過ガスを取り出す、第1流量調整弁を有する非透過ガス配管と、
前記分離膜モジュールから前記透過ガスを取り出す、第2流量調整弁を有する透過ガス配管と、を備え、
前記非透過ガス配管と前記透過ガス配管は、前記第1流量調整弁及び前記第2流量調整弁の下流側で取出し配管に接続され、
さらに、前記非透過ガス配管と前記透過ガス配管については、
前記非透過ガス側の構成として、前記第1流量調整弁の上流側で前記非透過ガス配管から分岐され、第1圧力調整弁を有する非透過ガス戻し配管と、
前記透過ガス側の構成として、前記第2流量調整弁の上流側で前記透過ガス配管から分岐され、第2圧力調整弁を有する透過ガス戻し配管と、のうちいずれか又は両方を備え、
さらに、供給ガスの特定のガス濃度を測定する特定ガス濃度計と、前記分離膜モジュールの非透過側の圧力を測定する第1圧力計と、透過側の圧力を測定する第2圧力計と、前記分離膜モジュールにガスを供給する供給ガス配管に流量調整弁と、制御装置と、を備え、
前記制御装置は、前記特定ガス濃度計、前記第1圧力計及び前記第2圧力計の測定値と、前記供給ガス配管の流量調整弁の開度の情報とに基づき、前記第1流量調整弁と、前記第2流量調整弁と、前記第1圧力調整弁又は/及び第2圧力調整弁の圧力調整弁の開度とを指定する信号を送信する
ことを特徴とする制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガス分離システムとその制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
複数の混合ガスから特定のガスを分離する方法として、ガスを選択的に透過する分離膜を利用する方法がある。例えば、セラミック膜に代表される分子径の差により分離する分子ふるい膜や膜へのガスの溶解性の差を利用した高分子膜等がある。これらの分離膜では、透過させたい特定ガス以外も一定量透過する。分離膜を透過させる前を非透過側、透過させた後を透過側と呼ぶ。分離膜のガス透過量は、非透過側のガス分圧と透過側のガス分圧の差に膜面積を乗じたものに比例する。高分子素材は比較的加工が容易であり、中空糸状やシート状にしたものを容器に封入したモジュールが実用化されている。分離膜を用いて特定ガスを必要な濃度に制御する方法が特許文献1に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1では、透過ガスにバイパスした原料ガスを混ぜて透過ガスの純度を一定に維持しつつ回収率を高めている。透過ガスの純度が変化する要因として、分離膜モジュールに供給される原料ガス流量が挙げられている。例えば、原料ガス流量が減少すると、分離膜モジュール出口付近で難透過性ガスの分圧が上昇して難透過性ガスの透過量が増え、透過ガスの純度が低下する。この場合、バイパスする純度の低い原料ガスの流量を低下させて透過ガスの純度を一定以上に維持する。
【0005】
既存ガスグリッドに特定ガスとして水素を混合させて輸送する場合、ユーザにより必要とする水素濃度は様々であり、利用状況によりガスグリッド内の水素濃度が変動する。例えば、水素濃度20%を必要とするユーザには、ガスグリッドの水素濃度が20%よりも小さければ特許文献1の構成で水素濃度20%に制御できるが、ガスグリッドの水素濃度が20%を超えると、分離膜を透過するガスの水素濃度は20%以上となり、バイパスガスの水素濃度も20%を超えているので、特許文献1の構成で透過ガス配管の水素濃度を20%に制御することはできない。
【0006】
特許文献1の構成において非透過ガス配管の水素濃度を20%に制御して製品ガスとして取り出すことは可能であるが、非透過ガス配管を製品ガス配管に接続して、非透過ガス配管及び透過ガス配管に弁を取り付ける必要がある。ガスグリッドの水素濃度が20%を挟んで変動した場合、20%以下では透過ガス配管のガスを取出し、20%を超えると非透過ガス配管のガスを取り出すことになり、各配管の弁を不連続に切り替える必要がある。配管の切り替え時にユーザに供給するガスの水素濃度が大きく変動する可能性がある。このため、ガスグリッドの特定ガス濃度がユーザの指定する濃度を挟んで変動する場合にも容易な操作できることが望まれていた。
【0007】
本発明の目的は、ガスグリッドの特定ガス濃度がユーザの指定する濃度を挟んで変動する場合にも容易な操作でユーザの指定する濃度に制御が可能となるガス分離システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するため、本発明のガス分離システムは、分離膜モジュールから排出された非透過ガスと透過ガスを再混合し特定ガス濃度を一定に制御するガス分離システムであって、前記分離膜モジュールから前記非透過ガスを取り出す、第1流量調整弁を有する非透過ガス配管と、前記分離膜モジュールから前記透過ガスを取り出す、第2流量調整弁を有する透過ガス配管と、を備え、前記非透過ガス配管と前記透過ガス配管は、前記第1流量調整弁及び前記第2流量調整弁の下流側で取出し配管に接続され、前記非透過ガス配管は前記第1流量調整弁の上流側で分岐され、第1圧力調整弁を有する非透過ガス戻し配管と、前記透過ガス配管は前記第2流量調整弁の上流側で分岐され、第2圧力調整弁を有する透過ガス戻し配管とのうちいずれか又は両方を備えていることを特徴とする。本発明のその他の態様については、後記する実施形態において説明する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、ガスグリッドの特定ガス濃度がユーザの指定する濃度を挟んで変動する場合にも容易な操作でユーザの指定する濃度に制御が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】第1の実施の形態に係るガス分離システムを示す概略図である。
【
図2】ガス分離システムの供給ガス水素濃度に対する各弁の開度の例を示した図である。
【
図3】第2の実施の形態に係るガス分離システムのうち、供給ガス水素濃度の変動幅の上限が取出しガス水素濃度の許容変動幅上限よりも低い場合の概略図である。
【
図4】第2の実施の形態に係るガス分離システムのうち、供給ガス水素濃度の変動幅の下限が取出しガス水素濃度の許容変動幅下限よりも高い場合の概略図である。
【
図5】第3の実施の形態に係るガス分離システムを示す概略図である。
【
図6】供給ガス水素濃度に対する水素回収率の第1の実施の形態と第3の実施の形態の比較を示した図である。
【
図7】供給ガス水素濃度に対する水素回収率の第1の実施の形態と第3の実施の形態と第4の実施の形態の比較を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本実施の形態は、既存のメタンを主成分とする天然ガス等のガスグリッドを用いて天然ガスとは異なる特定ガスを天然ガスと混ぜて輸送する場合に、特定ガス利用者が利用場所において必要とする特定ガス濃度に制御するシステム及びガス生産設備や化学プラント等において特定ガス濃度を制御するシステムとその制御方法に関する。
【0012】
以下、本発明のガス分離システムの実施の形態について図面を用いて説明する。
<第1の実施の形態>
図1は、第1の実施の形態に係るガス分離システム1を示す概略図である。第1の実施の形態について
図1を用いて説明する。本実施の形態では、水素とメタンを混合させた供給ガスを対象に、供給ガスの水素濃度がある値を挟んで変動しても、取出しガスの水素濃度を例えば20%(vol%)一定に制御するガス分離システムとその制御方法について説明する。
【0013】
ガス分離システム1は、供給ガスの水素濃度が20%を挟んで変動しても非透過ガス配管13及び透過ガス配管16の弁開度を不連続に変化させずに取出しガスの水素濃度を20%一定に制御ために、分離膜モジュール10で分離した非透過ガスと透過ガスを適量で再混合させるシステムとしている。
【0014】
ガスグリッドの母管(図示せず)から分岐した供給ガス配管11からガス分離システム1(水素分離システム)に混合ガスを供給する。供給ガス配管11には供給ガス流量を調整する流量調整弁20を備えている。ガス分離システム1には分離膜モジュール10を設置している。分離膜モジュール10内は分離膜30を境に非透過側31と透過側32に分けられる。本実施の形態では、水素分離膜として高分子膜を用いる。なお、セラミック系や炭素系の水素分離膜を用いてもよい。各ガスの透過量は、各ガスの透過速度と非透過側31と透過側32の各ガスの分圧差に分離膜の膜面積を掛け合わせた量となる。これらの分離膜30では、水素の透過速度がメタンの透過速度よりも大きく、水素の方が分離膜を透過しやすいため、透過側32の水素濃度は供給ガスの水素濃度よりも高くなる一方で、水素がメタンよりもより多く透過した残りのガスである非透過ガスの水素濃度は供給ガスの水素濃度よりも低くなる。
【0015】
本実施の形態の構成は、分離膜モジュール10の非透過側31に接続し非透過ガスを排出する非透過ガス配管13と透過側32に接続し透過ガスを排出する透過ガス配管16を配置する。非透過ガス配管13は、非透過ガスを母管に戻す非透過ガス戻し配管14と取出しガス配管19に接続する非透過ガス供給配管15に分岐する。同様に、透過ガス配管16は、取出しガス配管19に接続する透過ガス供給配管17と透過ガスを母管に戻す透過ガス戻し配管18に分岐する。
【0016】
非透過ガス戻し配管14と透過ガス戻し配管18には分離膜モジュールの10の非透過側31と透過側32の圧力を調整する圧力調整弁22(第1圧力調整弁)と圧力調整弁25(第2圧力調整弁)をそれぞれ備えている。非透過ガス供給配管15と透過ガス供給配管17には取出しガス配管19に供給するガス流量を調整する流量調整弁23(第1流量調整弁)と流量調整弁24(第2流量調整弁)をそれぞれ備えている。
【0017】
分離膜システムの状態は、供給ガス配管11に設置した水素濃度計C1(第1水素濃度計)、非透過ガス配管13に設置した圧力計P1(第1圧力計)、透過ガス配管16に設置した備えた圧力計P2(第2圧力計)、取出しガス配管19に設置した水素濃度計C2(第2水素濃度計)で監視する。
【0018】
ガス分離システム1に供給する混合ガスの水素濃度が5%から40%の間で変化する場合に取出しガスの水素濃度を20%に制御する方法について説明する。
【0019】
【0020】
ガス流量は供給ガス流量に対する割合で示している。非透過側圧力0.8MPaG、透過側圧力0.1MPaGの条件で供給ガス水素濃度5%に対し、透過ガスの水素濃度は21.9%、流量は供給ガスの5%となる。非透過ガスの水素濃度は4.1%である。取出しガスをなるべく多くするため、圧力調整弁25は完全に閉じ、流量調整弁24から透過ガスの全量を取出しガス配管19に送る。取出しガスの水素濃度を20%にするため、流量調整弁23の開度を調整して供給ガスの0.6%の流量の非透過ガスを取出しガス配管19に送る。残りの非透過ガスは非透過ガス戻し配管14を通して母管に戻す。圧力調整弁22の後流の圧力が母管よりも低い場合には圧縮機42を起動して昇圧して母管に戻す。非透過ガスの圧力調整弁22の開度を調整して非透過側31の圧力を調整する。この条件では、供給ガス中の水素量に対する取出しガス中の水素量で定義する水素回収率は22.4%となる。
【0021】
供給ガス水素濃度が10%に上昇した場合の制御について説明する。供給ガスの水素濃度以外の条件は変更しないとする。非透過側31の水素分圧が上昇するため、分離膜30を透過する水素量が増加し透過側水素濃度が43.1%に上昇する。透過ガス流量も供給ガスの6.8%に増加する。圧力調整弁25は閉じたままで、流量調整弁24を少し開いて透過側32の圧力を維持しながら流量が増えた透過ガスの全量を取出しガス配管19に送る。取出しガスの水素濃度を20%にするため、流量調整弁23の開度を大きくして供給ガスの12.7%の流量の非透過ガスを取出しガス配管19に送る。取出しガス配管19に送る非透過ガス量が増えることで母管に戻す非透過ガス流量が減少することから非透過側31の圧力を維持するため圧力調整弁22の開度は小さくする。この条件では、水素回収率は39.1%となる。
【0022】
供給ガス水素濃度が20%に上昇した場合の制御について説明する。供給ガスの水素濃度が20%なので、分離膜モジュール10で分離した非透過ガスと透過ガスの全量を混合させれば取り出しガスの水素濃度は20%となる。このとき、非透過側の圧力調整弁22と透過側の圧力調整弁25は完全に閉じて母管に戻すガス流量をゼロとする。非透過側の流量調整弁23と透過側の流量調整弁24で流量と圧力を調整する。母管に戻すガスがないので水素回収率は100%となる。
【0023】
供給ガス水素濃度が40%に上昇した場合の制御について説明する。透過ガスの水素濃度は89.9%で流量は供給ガスの37.2%となる。非透過ガスの水素濃度は10.4%である。供給ガス水素濃度が取り出しガス水素濃度よりも高い条件では、非透過ガスは全量を使用し、混合させる透過ガス流量を調整する。非透過側の圧力調整弁22は全閉として非透過ガスの全量を取出しガス配管19に送り、流量調整弁23で非透過側の圧力を調整する。取出しガスの水素濃度を20%にするため、流量調整弁24を調整して供給ガスの8.5%の流量の透過ガスを取出しガス配管19に送る。残りの透過ガスは透過ガス戻し配管18を通して母管に戻す。圧力調整弁25の後流の圧力が母管よりも低い場合には圧縮機41を起動して昇圧して母管に戻す。圧力調整弁25の開度を調整して透過側32の圧力を調整する。この条件では、水素回収率は35.7%となる。
【0024】
図2は、ガス分離システム1の供給ガス水素濃度に対する各弁の開度の例を示した図である。供給ガス水素濃度が20%前後で変動する場合の弁操作について
図2を用いて説明する。
図2は、供給ガス水素濃度に対して各弁の開度を模式的に表したものである。各弁を線種で分けて示しており、各線の番号は
図1の各弁の番号に対応している。圧力調整弁22(第1圧力調整弁)は実線、流量調整弁23(第1流量調整弁)は細かい破線、流量調整弁24(第2流量調整弁)は荒い破線、圧力調整弁25(第2圧力調整弁)は一点鎖線である。
【0025】
供給ガス水素濃度が20%では、圧力調整弁22,25を全閉としている。供給ガス水素濃度が20%を超えて上昇する場合は、圧力調整弁22は全閉のままで、圧力調整弁25を開いて開度を大きくしていくとともに流量調整弁24の開度は小さくしていく。供給ガス水素濃度の上昇に伴い、分離膜30を透過するガス量が増えて非透過ガス流量が減少するので、流量調整弁23の開度を小さくして透過側圧力を一定に制御する。
【0026】
供給ガス水素濃度が20%に向けて低下するときは、圧力調整弁25の開度を小さくするとともに、流量調整弁24の開度は大きくしていく。分離膜30を透過するガス量が減少して非透過ガス流量が増加するので流量調整弁23の開度は大きくしていく。
【0027】
供給ガス水素濃度がさらに低下して20%よりも低くなると、圧力調整弁25は全閉とする。供給ガス水素濃度の低下により分離膜30を透過するガス量が減少するため、流量調整弁24は供給ガス水素濃度20%時の開度から小さくしていく。透過ガスの水素濃度、流量が減少することから、取出しガス水素濃度を20%に調整する非透過ガス流量も少なくてよく流量調整弁23の開度は小さくしていく。分離膜モジュール10の非透過側31から排出される非透過ガス流量が増加し、取出しガス配管19に送る非透過ガス流量は減少するため、母管に戻す非透過ガスの流量を増加させて非透過側圧力を一定に制御するために圧力調整弁22の開度は大きくしていく。
【0028】
なお、圧力調整弁22,25や流量調整弁23,24は全閉から弁体を操作して流体が流れ始めるまで遊び代があるため、弁を開く制御信号に対して遊び代の分だけ時間遅れが発生し、取出しガスの水素濃度の変動幅が大きくなる可能性がある。この時間遅れをなくすため、供給ガス水素濃度20%以上の条件において圧力調整弁22を全閉とせずに少し開けて微量の非透過ガスを流し、供給ガス水素濃度が20%以下の条件において圧力調整弁25を全閉とせずに少し開けて微量の透過ガスを流してもよい。この場合、水素回収率は若干低下するが、圧力調整弁22と25を全閉から操作する際の時間遅れを解消し、取出しガスの水素濃度の変動幅を抑制することができる。
【0029】
このように、供給ガスの水素濃度が取出しガスの設定水素濃度を挟んで変動した場合でも圧力調整弁22,25や流量調整弁23,24の開度を連続的に変化させて取出しガスの水素濃度を制御することができる。
【0030】
(制御システム)
次に本実施の形態での制御システムについて説明する。本実施の形態のガス分離システム1は、供給ガスの水素濃度計C1、非透過側31の圧力計P1、透過側32の圧力計P2からシステムの状態量と流量調整弁20の開度状態を受信し、状態量から取出しガスの水素濃度を一定にする弁開度を演算して制御信号を生成する制御装置51を有する。さらに、制御装置51からの制御信号を流量調整弁20,23,24、圧力調整弁22,25に送る制御信号送信装置52を有する。制御装置51に信号を送るラインを一点鎖線で、制御信号送信装置52から流量調整弁20,23,24、圧力調整弁22,25に信号を送るラインを破線で示している。
【0031】
各ガスの透過速度と分離膜30を介した非透過側31と透過側32の各ガスの分圧差と分離膜30の膜面積を掛け合わせれば分離膜を透過する各ガスの流量が計算できる。ただし、分離膜モジュール10の場合、モジュール入口から出口に向かって、ガスの透過速度の違いによりガス成分比が変化し各ガスの分圧も変化するため、モジュール内の各ガスの分圧変化を考慮した解析により透過量を求める。分離膜モジュール10への供給ガス流量が多いとモジュール出入口間の分圧差の変化が小さく、供給ガス流量が少ないモジュール出入口間の分圧差の変化が大きくなる。以上から、非透過ガスと透過ガスの流量と水素濃度を求めるには、供給ガス流量と水素濃度、分離膜モジュール10の非透過側と透過側の圧力が分かればよく、本実施の形態では、水素濃度計C1と圧力計P1,P2でシステムの状態量を測定して、その信号を制御装置に送信している。供給ガス流量は、水素濃度計C1と圧力計P1の状態量から求めたガス密度と流量調整弁20の開度から計算により求めることができるため、流量調整弁20の開度を示す信号を制御装置51に送信し、制御装置51で供給ガス流量を算出する。なお、流量調整弁20の開度の情報は、供給ガス配管11に流量計を有している場合は、流量計測による流量の情報で代替えできる。
【0032】
水素濃度計C1と圧力計P1,P2の測定値と流量調整弁20の開度から算出した供給ガス流量を用いて分離膜モジュール10の非透過ガスと透過ガスの流量と水素濃度をあらかじめ解析で算出して制御マップを作成しておき、制御装置51では水素濃度、圧力、供給ガス流量を制御マップに照合して圧力調整弁22,25と流量調整弁23,24の開度を決定し、その信号を、制御信号送信装置52を経由して各調整弁に開度信号を送信して開度を変更する。
【0033】
水素濃度計C1と分離膜モジュール10の入口までの距離があるため、水素濃度計C1で水素濃度の変化を検知しても、検知したガスが分離膜モジュール10に到達するまでには時間遅れがある。制御装置51ではこの時間遅れを考慮した制御マップを導入して、各弁の開度を変えるタイミングも調整する。例えば、分離膜モジュール10の入口から100m手前の水素濃度計C1で供給ガスの水素濃度が5%から10%に上昇したのを検知したとき、供給ガス配管11内のガス流速が例えば10m/sであれば、水素濃度が変化した供給ガスが分離膜モジュール10の入口に到達するのは検知してから10秒後となる。
【0034】
水素濃度が高くなったときに取出しガスの水素濃度を20%に維持するためには、圧力調整弁22の開度は小さくして取出しガス配管19に送る水素濃度の低い非透過ガス流量を増やし、流量調整弁23,24の開度は大きくする。時間遅れを考慮せずに弁開度を変更すると、取出しガス配管19に送る水素濃度の低い非透過ガスの流量が増えることから取出しガスの水素濃度が20%から低下する。この低下した状態が10秒間続くこととなる。このため、制御装置51は、時間遅れを考慮して、水素濃度計C1で水素濃度の変化を検知してから10秒後に変化するように、制御マップに基づいた圧力調整弁22、流量調整弁23,24の開度を指定する信号を10秒後に送る。取出しガスの水素濃度の変動幅を抑制するため、制御装置51では、水素濃度計C1と分離膜モジュール10の距離とガス流速に基づく時間遅れを考慮して制御信号を生成する。
【0035】
本実施形態によれば、弁操作を連続的に行うことができユーザが指定する取出しガスの特定ガス濃度の制御が容易となる。
【0036】
<第2の実施の形態>
第1の実施の形態の構成では、供給ガスの水素濃度が5%から40%まで変化しても取出しガスの水素濃度20%を一定に制御できるが、供給ガスの水素濃度の変動幅が小さい場合、取出しガスの水素濃度の許容変動幅を考慮してガス分離システム1の構成を簡略化できる。
【0037】
図3は、第2の実施の形態に係るガス分離システム1Aのうち、供給ガス水素濃度の変動幅の上限が取出しガス水素濃度の許容変動幅上限よりも低い場合の概略図である。例えば、取出しガスの水素濃度20%に対して許容変動幅が18%~22%とする。供給ガス水素濃度が22%を超えないことが分かっている場合は、
図3に示すように、
図1の透過ガス戻し配管18と圧力調整弁25を削除することができる。供給ガス水素濃度が20%以下では第1の実施の形態と同じ制御を行い、水素濃度が20%~22%の範囲では非透過ガスと透過ガスの全量を再混合させる。この場合、取出しガスの水素濃度は供給ガスの水素濃度と一致し、許容変動幅以内となる。
【0038】
図4は、第2の実施の形態に係るガス分離システム1Bのうち、供給ガス水素濃度の変動幅の下限が取出しガス水素濃度の許容変動幅下限よりも高い場合の概略図である。
図3とは反対に、供給ガス水素濃度が18%を下回らないことが分かっている場合は、
図4に示すように、
図1の非透過ガス戻し配管14と圧力調整弁22を削除することができる。供給ガス水素濃度が20%以上では第1の実施の形態と同じ制御を行い、水素濃度が18%~20%の範囲では非透過ガスと透過ガスの全量を再混合させる。この場合、取出しガスの水素濃度は供給ガスの水素濃度と一致し、許容変動幅以内となる。
【0039】
<第3の実施の形態>
図5は、第3の実施の形態に係るガス分離システム1Cを示す概略図である。
第3の実施の形態を、
図5を用いて説明する。第3の実施の形態が第1の実施の形態と異なるのは、供給ガス配管11から分岐させた供給ガス分岐配管12を設け、分離膜モジュール10の透過側32に供給ガスの一部を希釈ガスとして供給していることである。供給ガス分岐配管12には希釈ガス流量を調整する流量調整弁21を設けている。
【0040】
非透過側31と透過側32のガス分圧差が大きいと分離膜30を透過するガス流量が増加するため、分離膜30を透過して水素濃度が高くなった透過側32に水素濃度の低い希釈ガスを供給して分離膜モジュール10内の透過側32の水素濃度を下げることで非透過側31と透過側32の水素ガス分圧差を拡大して分離膜30を透過する水素量を増やし水素回収率を向上させることができる。
【0041】
流量調整弁21を開けて希釈ガスを分離膜30の透過側32に供給する場合の制御方法について説明する。発明者らの解析結果の一例を表2に示す。
図6は、供給ガス水素濃度に対する水素回収率の第1の実施の形態と第3の実施の形態の比較を示した図である。
【0042】
【0043】
供給ガス水素濃度5%時に供給ガス分岐配管12から希釈ガスを混ぜて透過側32において水素濃度を20%にする。流量調整弁21の開度を調整して供給ガス分岐配管12に供給ガスの約12%の流量を流すと透過側32の水素濃度が20%となり、流量は供給ガスの約19%となる。トータルの透過ガス流量から希釈ガス流量を差し引くと、分離膜30を透過したガス流量は2%増加する。これは、透過側32の水素濃度が低下したため、非透過側31と透過側32の水素分圧差が拡大したことで水素の透過量が増えたことによるものである。非透過ガスの水素濃度は1.6%である。非透過ガスは非透過ガス戻し配管14からすべて母管に戻す。この条件では、水素回収率は74.4%となり、希釈ガスを用いない第1の実施の形態と比較して大幅に向上する。
【0044】
供給ガス水素濃度が10%に上昇した場合の制御について説明する。本実施の形態では、操作弁数を増加させないために流量調整弁21の開度を変更しない。この条件では、透過側水素濃度が35.9%に上昇する。透過ガス流量も供給ガスの22.2%に増加する。圧力調整弁25は閉じたままで、流量調整弁24を少し開いて透過側32の圧力を維持しながら流量が増えた透過ガスの全量を取出しガス配管19に送る。取出しガスの水素濃度を20%にするため供給ガスの20%の流量の非透過ガスを取出しガス配管19に送る。取出しガス配管19に送る非透過ガス流量が増えるため流量調整弁23の開度を大きくし、母管に戻す非透過ガス流量が減少することから非透過側31の圧力を維持するため圧力調整弁22の開度は小さくする。この条件では、水素回収率は84.9%となり、希釈ガスを用いない第1の実施の形態と比較して大幅に向上する。
【0045】
供給ガス水素濃度が20%に上昇した場合の制御について説明する。供給ガスの水素濃度が20%なので、分離膜モジュール10で分離した非透過ガスと透過ガスの全量を混合させれば取出しガスの水素濃度は20%となる。このとき、非透過側の圧力調整弁22と透過側の圧力調整弁25は完全に閉じ、非透過側の流量調整弁23と透過側の流量調整弁24で流量と圧力を調整する。母管に戻すガスがないので水素回収率は100%となる。
【0046】
供給ガス水素濃度が40%に上昇した場合の制御について説明する。透過ガスの水素濃度は76.8%で流量は供給ガスの46.1%となる。非透過ガスの水素濃度は8.5%である。供給ガス水素濃度が取り出しガス水素濃度よりも高い条件では、非透過ガスは全量を使用し、混合させる透過ガス流量を調整する。非透過側の圧力調整弁22は全閉として非透過ガスの全量を取出しガス配管19に送り、流量調整弁23で非透過側の圧力を調整する。取出しガスの水素濃度を20%にするため供給ガスの10.9%の流量の透過ガスを取出しガス配管19に送る。残りの透過ガスは透過ガス戻し配管18を通して母管に戻す。圧力調整弁25の開度を調整して透過側32の圧力を調整する。この条件では、水素回収率は32.4%となる。この条件では透過ガスを母管に戻しているため、希釈ガスにより透過ガス量が多くなっていることから水素回収率は第1の実施の形態と比較して約3%低下する。供給ガスの水素濃度が低下する場合は、前述した弁操作の逆の手順で取出しガスの水素濃度を制御する。
【0047】
供給ガス水素濃度が20%前後で変動する場合の弁操作は、流量調整弁21が加わっているが開度を固定しており、他の弁の操作方法は第1の実施の形態と同じである。
【0048】
このように、供給ガスの水素濃度が取出しガスの設定水素濃度を挟んで変動した場合でも圧力調整弁や流量調整弁の開度を連続的に変化させて取出しガスの水素濃度を制御することができ、供給ガスの一部を分離膜モジュールの透過側に供給することで、供給ガスの水素濃度が取出しガスの設定水素濃度よりも低い条件で水素回収率を向上させることができる。また、流量調整弁21の開度は固定しているため、制御する弁の数は第1の実施の形態と同じであり、制御が第1の実施の形態と比較して複雑になることはない。
【0049】
<第4の実施の形態>
第3の実施の形態では、供給ガス分岐配管12の流量調整弁21の開度を一定にしたが、本実施の形態では供給ガス水素濃度が5~20%の間では開度を調整し、供給ガス水素濃度が20%以上では全閉とする制御を行う。
【0050】
具体的には、供給ガス水素濃度5%時に供給ガス分岐配管12から希釈ガスを混ぜて透過側32において水素濃度を20%にする流量を流すために調整した流量調整弁21の開度を最大として、供給ガス水素濃度が20%に近づくほど流量調整弁21の開度を小さくしていき、供給ガス水素濃度が20%になったときに全閉となるように連続的に開度を調整する。
【0051】
供給ガス水素濃度が20%よりも低い条件では、第3の実施の形態と比較して希釈ガス流量が減少するため、水素回収率がやや低下するものの希釈ガスを供給しない第1の実施の形態と比較すると水素回収率は高くなる。
【0052】
また、供給ガス水素濃度が20%以上の条件では、流量調整弁21を全閉とすることから、第1の実施の形態と同じ構成となり、供給ガス水素濃度20%以上では水素回収率は第1の実施の形態と同じになる。
【0053】
図7は、供給ガス水素濃度に対する水素回収率の第1の実施の形態と第3の実施の形態と第4の実施の形態の比較を示した図である。
図7には、供給ガス水素濃度と回収率の関係を解析して、第1の実施の形態及び第3の実施の形態と比較したものを示す。供給ガス水素濃度が20%よりも低い条件で第1の実施の形態よりも水素回収率を向上し、供給ガス水素濃度が20%以上では第3の実施の形態よりも水素回収率を向上でき第1の実施の形態と同じ水素回収率にできる。
【0054】
本実施形態によれば、弁操作を連続的に行うことができユーザが指定する取出しガスの特定ガス濃度の制御が容易となる。また、製品ガスとして回収したいガスの回収率を高めることによりシステムの低コスト化が図れる。
【0055】
本実施形態のガス分離システム及びその制御方法は、次の特徴を有する。
(1)分離膜モジュール10から排出された非透過ガスと透過ガスを再混合し特定ガス濃度を一定に制御するガス分離システム1であって、分離膜モジュール10から非透過ガスを取り出す、第1流量調整弁(流量調整弁23)を有する非透過ガス配管13と、分離膜モジュール10から透過ガスを取り出す、第2流量調整弁(流量調整弁24)を有する透過ガス配管16と、を備え、非透過ガス配管13と透過ガス配管16は、第1流量調整弁(流量調整弁23)及び第2流量調整弁(流量調整弁24)の下流側で取出しガス配管19に接続され、さらに、非透過ガス配管13と透過ガス配管16については、非透過ガス側の構成として、第1流量調整弁の上流側で非透過ガス配管13から分岐され、第1圧力調整弁(圧力調整弁22)を有する非透過ガス戻し配管14と、透過ガス側の構成として、第2流量調整弁の上流側で透過ガス配管16から分岐され、第2圧力調整弁(圧力調整弁25)を有する透過ガス戻し配管18と、のうちいずれか又は両方を備えていることを特徴とする(
図1、
図3、
図4参照)。これによれば、ガスグリッドの特定ガス濃度がユーザの指定する濃度を挟んで変動する場合にも容易な操作でユーザの指定する濃度に制御が可能となるガス分離システムを提供できる。
【0056】
すなわち、分離膜30によって分離した非透過ガスと透過ガスを再混合し特定ガス濃度を一定に制御するガス分離システム1であって、非透過ガス配管13と透過ガス配管16に流量調整弁23,24を備え、圧力調整弁22を備えた非透過ガス配管13から分岐された非透過ガス戻し配管14と圧力調整弁25を備えた透過ガス配管16から分岐された透過ガス戻し配管18のいずれかまたは両方を備えている。
【0057】
(2)前記(1)のガス分離システム1において、分離膜モジュール10にガスを供給する供給ガス配管11から分岐され分離膜モジュール10の透過側32に接続した供給ガス分岐配管12を備え、供給ガス分岐配管12に流量調整弁21を有する。
【0058】
(3)前記(1)のガス分離システム1において、供給ガスの特定のガス濃度を測定する特定ガス濃度計(例えば、水素濃度計C1)と、分離膜モジュール10の非透過側の圧力を測定する第1圧力計(圧力計P1)と、透過側の圧力を測定する第2圧力計(圧力計P2)と、分離膜モジュール10にガスを供給する供給ガス配管11に流量調整弁20とを備え、特定ガス濃度計、第1圧力計及び前記第2圧力計の測定値と、供給ガス配管11の流量調整弁20の開度の情報とに基づき、第1流量調整弁、第2流量調整弁、第1圧力調整弁又は/及び第2圧力調整弁の圧力調整弁の開度を指定する信号を送信する制御装置51を備えている。なお、流量調整弁20の開度の情報は、供給ガス配管11に流量計を有している場合は、流量計測による流量の情報で代替えできる。
【0059】
(4)前記(2)のガス分離システムにおいて、供給ガスの特定のガス濃度を測定する特定ガス濃度計(例えば、水素濃度計C1)と、分離膜モジュール10の非透過側の圧力を測定する第1圧力計と、透過側の圧力を測定する第2圧力計と、分離膜モジュール10にガスを供給する供給ガス配管11に流量調整弁20とを備え、特定ガス濃度計、第1圧力計及び第2圧力計の測定値と、供給ガス配管11の流量調整弁20の開度の情報とに基づき、第1流量調整弁、第2流量調整弁、第1圧力調整弁又は/及び第2圧力調整弁の圧力調整弁の開度と、供給ガス分岐配管12に備えた流量調整弁21の開度と、を指定する信号を送信する制御装置51を備えている(
図5参照)。
【0060】
(5)前記(4)のガス分離システムにおいて、制御装置51は、供給ガス分岐配管12に備えた流量調整弁21の開度を固定して、その他の圧力調整弁及び流量調整弁の開度を制御する。
【0061】
(6)前記(3)乃至5のいずれかのガス分離システムにおいて、制御装置51は、特定ガス濃度計、第1圧力計(圧力計P1)及び第2圧力計(圧力計P2)の測定値と、供給ガス配管11の流量調整弁20の開度の情報とから流量調整弁23,24及び圧力調整弁22,25の開度を算出する制御マップを備えている。すなわち、制御装置51は、供給ガスの特定ガス濃度と非透過側及び透過側圧力によりあらかじめ用意した制御マップに基づいて流量調整弁23,24及び圧力調整弁22,25を制御することができる。
【0062】
(7)前記(4)のガス分離システムにおいて、制御装置51は、供給ガスの特定ガス濃度が目標の取出しガスの特定ガス濃度よりも低い場合に、供給ガスの特定ガス濃度が上昇したときに供給ガス分岐配管12に備えた流量調整弁21の開度を小さくし、特定ガスの濃度が低下したときは開度を大きくし、供給ガスの特定ガス濃度が目標の取出しガスの特定ガス濃度以上の場合に、前記供給ガス分岐配管に備えた流量調整弁の開度をゼロにする。
【0063】
(8)前記(6)のガス分離システムにおいて、前記制御装置51は、特定ガス濃度計と分離膜モジュール10の入口までの距離と制御装置により算出した供給ガス流速から、特定ガス濃度計を通過した供給ガスが前記分離膜モジュールの入口に到達する時間を算出し、前記算出した時間だけ流量調整弁23,24及び圧力調整弁22,25の制御を遅らせる。
【0064】
(9)分離膜モジュール10から排出された非透過ガスと透過ガスを再混合し特定ガス濃度を一定に制御するガス分離システムの制御方法であって、ガス分離システム1は、分離膜モジュール10から非透過ガスを取り出す、第1流量調整弁(流量調整弁23)を有する非透過ガス配管13と、分離膜モジュール10から透過ガスを取り出す、第2流量調整弁(流量調整弁24)を有する透過ガス配管16と、を備え、非透過ガス配管13と透過ガス配管16は、第1流量調整弁及び2流量調整弁の下流側で取出し配管(取出しガス配管19)に接続され、さらに、非透過ガス配管13と透過ガス配管16については、非透過ガス側の構成として、第1流量調整弁の上流側で非透過ガス配管13から分岐され、第1圧力調整弁(圧力調整弁22))を有する非透過ガス戻し配管14と、透過ガス側の構成として、第2流量調整弁の上流側で透過ガス配管16から分岐され、第2圧力調整弁(圧力調整弁25)を有する透過ガス戻し配管18と、のうちいずれかまたは両方を備え、さらに、供給ガスの特定のガス濃度を測定する特定ガス濃度計(例えば、水素濃度計C1)と、分離膜モジュールの非透過側の圧力を測定する第1圧力計(圧力計P1)と、透過側の圧力を測定する第2圧力計(圧力計P2)と、分離膜モジュール10にガスを供給する供給ガス配管11に流量調整弁20と、制御装置51と、を備え、制御装置51は、特定ガス濃度計、第1圧力計及び第2圧力計の測定値と、供給ガス配管11の流量調整弁20の開度の情報とに基づき、第1流量調整弁と、第2流量調整弁と、前記第1圧力調整弁又は/及び第2圧力調整弁の圧力調整弁の開度とを指定する信号を送信する。
【符号の説明】
【0065】
1,1A,1B,1C ガス分離システム(水素分離システム)
10 分離膜モジュール
11 供給ガス配管
12 供給ガス分岐配管
13 非透過ガス配管
14 非透過ガス戻し配管
15 非透過ガス供給配管
16 透過ガス配管
17 透過ガス供給配管
18 透過ガス戻し配管
19 取出しガス配管(取出し配管)
20,21 流量調整弁
23 流量調整弁(第1流量調整弁)
24 流量調整弁(第2流量調整弁)
22 圧力調整弁(第1圧力調整弁)
25 圧力調整弁(第2圧力調整弁)
30 分離膜
31 非透過側
32 透過側
41,42 圧縮機
51 制御装置
52 制御信号送信装置
C1 水素濃度計(特定ガス濃度計、第1水素濃度計)
C2 水素濃度計(特定ガス濃度計、第2水素濃度計)
P1 圧力計(第1圧力計)
P2 圧力計(第2圧力計)