(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024171007
(43)【公開日】2024-12-11
(54)【発明の名称】粘着シート
(51)【国際特許分類】
C09J 7/38 20180101AFI20241204BHJP
C09J 201/02 20060101ALI20241204BHJP
C09J 11/08 20060101ALI20241204BHJP
C09K 3/00 20060101ALI20241204BHJP
【FI】
C09J7/38
C09J201/02
C09J11/08
C09K3/00 110B
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023087830
(22)【出願日】2023-05-29
(71)【出願人】
【識別番号】000003964
【氏名又は名称】日東電工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003845
【氏名又は名称】弁理士法人籾井特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】平山 高正
【テーマコード(参考)】
4J004
4J040
【Fターム(参考)】
4J004AA10
4J004AA17
4J004AB01
4J004AC03
4J004FA08
4J040DF001
4J040JA09
4J040JB09
4J040KA37
4J040LA10
4J040NA20
(57)【要約】
【課題】熱膨張性微小球を含んで加熱後の剥離性に優れ、かつ、透明性に優れる熱膨張微性微小球含有層(粘着剤層)を備える粘着シートを提供すること。
【解決手段】本発明の実施形態による粘着シートは、粘着剤と、熱膨張性微小球とを含む粘着剤層を備え、
該粘着剤が、ベースポリマーを含み、該熱膨張性微小球が、樹脂から形成される殻と、該殻内に含まれる揮発性物質とから構成され、該ベースポリマーの屈折率と該樹脂の屈折率との差の絶対値が、0~0.018である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
粘着剤と、熱膨張性微小球とを含む粘着剤層を備え、
該粘着剤が、ベースポリマーを含み、
該熱膨張性微小球が、樹脂から形成される殻と、該殻内に含まれる揮発性物質とから構成され、
該ベースポリマーの屈折率と該樹脂の屈折率との差の絶対値が、0~0.018である、
粘着シート。
【請求項2】
前記殻を形成する樹脂が、カルボキシル基含有モノマー由来の構成単位を含む、請求項1に記載の粘着シート。
【請求項3】
前記殻を形成する樹脂中、カルボキシル基含有モノマー由来の構成単位の含有割合が、該樹脂100molに対して、21mol%~36mol%である、請求項2に記載の粘着シート。
【請求項4】
前記殻を形成する樹脂が、メタクリル酸由来の構成単位を含む、請求項1に記載の粘着シート。
【請求項5】
前記粘着剤中のベースポリマーは、水酸基含有モノマー由来の構成単位および/またはカルボキシル基含有モノマー由来の構成単位を含む、請求項1に記載の粘着シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粘着シートに関する。
【背景技術】
【0002】
電子部品を製造する工程において、被加工品を仮固定する目的で用いられる粘着シートとして、仮固定時には粘着性を発現し、固定を要さない場面では剥離性を発現するような易剥離性の粘着シートが知られている。このような粘着シートのひとつとして、粘着剤層中に熱膨張性微小球を含有して構成される粘着シートが検討されている(例えば、特許文献1)。この粘着シートは、常温下に代表される比較的低い温度では所望の粘着力を発現する一方、加熱することにより、熱膨張性微小球が膨張し、粘着剤層表面に凹凸が発生して、粘着力が低下する。このような粘着シートにおいては、重力の作用のみで被着体を剥離することも可能となる。
【0003】
上記のような熱膨張性微小球を含む粘着剤層は、高い透明性を求められることがある。例えば、半導体のパターン面のアライメントを、粘着シート越しに取る際には、透明性に劣る粘着シートは使用し難いという問題がある。特に、近年、加工時の環境温度が高くなる傾向にあり、耐熱性に優れる熱膨張微性微小球を利用する機会が増えているが、耐熱性に優れる熱膨張性微小球を含む粘着剤層は透明性が低下する傾向にある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は上記従来の課題を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、熱膨張性微小球を含んで加熱後の剥離性に優れ、かつ、透明性に優れる熱膨張微性微小球含有層(粘着剤層)を備える粘着シートを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
[1]本発明の実施形態による粘着シートは、粘着剤と、熱膨張性微小球とを含む粘着剤層を備え、
該粘着剤が、ベースポリマーを含み、該熱膨張性微小球が、樹脂から形成される殻と、該殻内に含まれる揮発性物質とから構成され、該ベースポリマーの屈折率と該樹脂の屈折率との差の絶対値が、0~0.018である。
[2]上記[1]に記載の粘着シートにおいて、上記殻を形成する樹脂が、カルボキシル基含有モノマー由来の構成単位を含んでいてもよい。
[3]上記[2]に記載の粘着シートにおいて、上記殻を形成する樹脂中、カルボキシル基含有モノマー由来の構成単位の含有割合が、該樹脂100molに対して、21mol%~36mol%であってもよい。
[4]上記[1]に記載の粘着シートにおいて、上記殻を形成する樹脂が、メタクリル酸由来の構成単位を含んでいてもよい。
[5]上記[1]から[4]のいずれかに記載の粘着シートにおいて、上記粘着剤中のベースポリマーが、水酸基含有モノマー由来の構成単位および/またはカルボキシル基含有モノマー由来の構成単位を含んでいてもよい。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、熱膨張性微小球を含んで加熱後の剥離性に優れ、かつ、透明性に優れる熱膨張微性微小球含有層(粘着剤層)を備える粘着シートを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の1つの実施形態による粘着シートの概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
A.粘着シートの概要
図1(a)は、本発明の1つの実施形態による粘着シートの概略断面図である。粘着シート100は、粘着剤層10を備える。本発明の粘着シートは、粘着剤層10のみから構成されていてもよく、該粘着剤層の他に任意の適切な層をさらに備えていてもよい。
【0010】
図1(b)は、本発明の別の実施形態による粘着シートの概略断面図である。粘着シート200は、基材20をさらに備え、基材20の少なくとも片側に粘着剤層10が配置される。
図1(c)は、本発明のさらに別の実施形態による粘着シートの概略断面図である。粘着シート300は、粘着剤層10と、粘着剤層10の少なくとも片側に配置された別の粘着剤層30とを備える。図示例のように粘着剤層10と別の粘着剤層30との間に基材20を配置してもよく、図示していないが、基材を省略して、粘着剤層と別の粘着剤層とから粘着シートを構成してもよい。また、図示していないが、上記粘着シートは、粘着剤層以外の層として、上記粘着シートに弾性を付与しうる弾性層(後述E項)、粘着剤層上に剥離可能に配置されたはく離ライナー等をさらに備え得る。また、基材の両側に粘着剤層が配置されていてもよい。
【0011】
上記粘着剤層は、ベースポリマーを含む粘着剤と、熱膨張性微小球とを含む。
【0012】
上記熱膨張性微小球は、樹脂から形成される殻と、該殻内に含まれる揮発性物質(代表的には、有機溶媒)とから構成される。該熱膨張性微小球は所定温度で、揮発性物質の揮発により膨張し得る。このような熱膨張性微小球を含む粘着剤層は、加熱によって熱膨張性微小球が膨張することにより、粘着面(すなわち粘着剤層表面)に凹凸が生じて、粘着力が低下または消失する。本発明の粘着テープを、例えば、電子部品(例えば、セラミックコンデンサ)の加工時、加工物の仮固定用シートとして用いた場合、該加工物に所定の加工を施す際には仮固定に必要な粘着性が発現され、加工後に加工物から粘着テープを剥離する際には、加熱により粘着力が低下または消失して、良好な剥離性が発現される。
【0013】
上記粘着剤中の上記ベースポリマーの屈折率と、上記殻を構成する樹脂の屈折率との差の絶対値は、0~0.018である。このような範囲であれば、粘着剤層内における可視光の乱反射を低減して、透明性に優れる粘着性層を形成することができる。上記粘着剤中の上記ベースポリマーの屈折率と、上記殻を構成する樹脂の屈折率との差の絶対値は、好ましくは0~0.015であり、より好ましくは0~0.006であり、さらに好ましくは0~0.005である。このような範囲であれば、上記効果が顕著となる。
【0014】
本明細書において、ベースポリマーの屈折率および樹脂の屈折率は、ベースポリマーまたは樹脂を構成するモノマー組成に基づき、各モノマーについて、(ポリマーを構成する各モノマー組成のモル分率×当該モノマーの屈折率値)をそれぞれ算出し、算出値の和として求められる。モノマーの屈折率は、20℃におけるナトリウムD線での屈折率値である。
【0015】
上記粘着シートの粘着剤層をポリエチレンテレフタレートに貼着した際の23℃における粘着力(常態粘着力)は、好ましくは0.5N/20mm以上であり、より好ましくは1N/20mm~20N/20mmであり、さらに好ましくは2N/20mm~20N/20mmであり、さらに好ましくは4N/20mm~20N/mmである。このような範囲であれば、例えば、電子部品の製造に用いられる仮固定用シートとして有用な粘着シートを得ることができる。本明細書において、粘着力とは、熱膨張性微小球の膨張による粘着力低下が生じていない状態での粘着力であり、40℃以上の熱履歴を経ていない状態の粘着力を意味する。また、粘着力とは、JIS Z 0237:2009に準じた方法(貼り合わせ条件:2kgローラー1往復、剥離速度(引張速度):300mm/min、剥離角度180°)により測定した粘着力をいう。
【0016】
上記粘着シートの粘着剤層をポリエチレンテレフタレートに貼着した際の粘着力は、加熱により、0.3N/20mm以下(好ましくは0.2N/20mm以下、より好ましくは0.1N/20mm)にまで低下することが好ましい。当該加熱温度は、好ましくは70℃~300℃であり、より好ましくは100℃~280℃である。
【0017】
上記粘着シートは、任意の適切なその他の層をさらに備えていてもよい。1つの実施形態においては、上記粘着シートは、粘着剤層と基材との間に配置された下塗層をさらに備える。下塗層を備えていれば、被着体に対する追従性に優れる粘着シートを得ることができる。また、熱膨張性微小球を含む粘着剤層は、加熱されると熱膨張微性微小球の膨張にともない、厚み方法に膨張しようと変形が生じるが、下塗り層により基材方向への変形が抑制されるため、剥離性が向上する。また、基材の粘着剤層とは反対側に別の粘着剤層を備えていてもよく、すなわち、上記粘着シートは、粘着剤層、必要に応じて配置される下塗り層、基材および別の粘着剤層をこの順に備え得る。
【0018】
上記粘着シートの厚みは、好ましくは3μm~300μmであり、より好ましくは5μm~150μmであり、さらに好ましくは10μm~100μmである。
【0019】
上記粘着シートの全光線透過率は、好ましくは70%以上であり、より好ましくは80%以上であり、さらに好ましくは85%以上であり、さらに好ましくは90%以上であり、特に好ましくは95%以上である。粘着シートの全光線透過率の上限は、例えば、98%である。上記粘着シートのヘイズは、好ましくは70%以下であり、より好ましくは60%以下であり、さらに好ましくは50%以下であり、特に好ましくは40%以下であり、最も好ましくは30%以下である。粘着シートのヘイズの下限は、例えば、10%である。
【0020】
B.粘着剤層
上記粘着剤層は、熱膨張性微小球を含む。実用的には、粘着剤層は、粘着剤をさらに含む。
【0021】
上記粘着剤層の厚みは、好ましくは1μm~50μmであり、より好ましくは3μm~30μmであり、さらに好ましくは5μm~20μmである。このような範囲であれば、封止工程時の加圧によっても、半導体チップの樹脂への埋まり込みがたい粘着シートを得ることができる。1つの実施形態においては、上記粘着剤層の厚みは、2μm~15μmである。このような範囲であれば、粘着剤層からの水分の放散が適度に調整され、封止樹脂前駆体の流動性を好ましいものとすることができる。
【0022】
上記粘着剤層の25℃におけるナノインデンテーション法による弾性率は、好ましくは100MPa未満であり、より好ましくは0.1MPa~50MPaであり、さらに好ましくは0.1MPa~10MPaである。このような範囲であれば、適切な粘着力を有する粘着シートを得ることができる。ナノインデンテーション法による弾性率とは、圧子を試料に押し込んだときの、圧子への負荷荷重と押し込み深さとを負荷時、除荷時にわたり連続的に測定し、得られた負荷荷重-押し込み深さ曲線から求められる弾性率をいう。本明細書において、ナノインデンテーション法による弾性率とは、測定条件を荷重:1mN、負荷・除荷速度:0.1mN/s、保持時間:1sとして上記のように測定した弾性率をいう。
【0023】
上記粘着剤層の全光線透過率は、好ましくは70%以上であり、より好ましくは80%以上であり、より好ましくは85%以上であり、さらに好ましくは90%以上であり、特に好ましくは95%以上である。粘着剤層の全光線透過率の上限は、例えば、98%である。上記粘着剤層のヘイズは、好ましくは70%以下であり、より好ましくは60%以下であり、さらに好ましくは50%以下であり、特に好ましくは40%以下であり、最も好ましくは30%以下である。粘着剤層のヘイズの下限は、例えば、10%である。
【0024】
B-1.熱膨張性微小球
上記熱膨張性微小球としては、加熱により粘着剤層表面を凹凸にするほどに膨張し得る微小球である限りにおいて、任意の適切な熱膨張性微小球を用いることができる。上記熱膨張性微小球としては、殻と、該殻内に含まれる揮発性物質(代表的には、有機溶媒)とから構成された微小球が用いられ得る。
【0025】
上記熱膨張性微小球の発泡開始温度は、80℃以上であり、好ましくは90℃~260℃であり、より好ましくは100℃~220℃であり、特に好ましくは120℃~200℃、最も好ましくは120℃~180℃である。1つの実施形態においては、上記熱膨張性微小球の発泡開始温度は、120℃以上である。本発明は、発泡温度が高い熱膨張性微小球を用いても、上記のように透明性に優れる点で、有利である。本明細書において、熱膨張性微小球が膨張しはじめる温度が発泡開始温度に相当する。より詳細には、発泡開始温度は、例えば、熱膨張性微小球の膨張により、粘着剤層の厚みが変化し始める温度であり得る。また、発泡開始温度は、例えば、粘着剤層の粘着力が、当該粘着剤層の常態粘着力(23℃におけるPETフィルムに対する粘着力)に対して10%以下になる最低温度に相当し得る。このときの粘着力とは、JIS Z 0237:2000に準じた方法(貼り合わせ条件:2kgローラー1往復、剥離速度:300mm/min、剥離角度180°)により測定した粘着力をいう。また、発泡開始温度(および加熱後の測定サンプル)における粘着力は、測定サンプルを常温(23℃)に戻した後に測定される。
【0026】
上記殻は、樹脂から構成される。樹脂を用いれば、加熱により軟化して膨張しやすい熱膨張性微小球を得ることができる。また、樹脂から形成される殻は、粘着剤の密度に近い密度を有することから、粘着剤層中に高い均一性で分散しやすい点でも有利である。1つの実施形態においては、(メタ)アクリル酸アルキルエステル(例えば、(メタ)アクリル酸C1-20アルキルエステル)の1種または2種以上を単量体成分として構成されるアクリル系樹脂が用いられる。
【0027】
上記殻を形成する樹脂としては、例えば、ラジカル重合可能なモノマー由来の構成単位を有する樹脂が用いられる。該モノマーとしては、例えば、アクリロニトリル(屈折率:1.391)、メタクリロニトリル(屈折率:1.400)、α-クロルアクリロニトリル、α-エトキシアクリロニトリル、フマロニトリル等のニトリルモノマー;アクリル酸(屈折率:1.421)、メタクリル酸(屈折率:1.431)、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸等のカルボキシル基含有モノマー;塩化ビニリデン(屈折率:1.426);酢酸ビニル;メチルアクリレート、メチルメタクリレート(屈折率:1.414)、エチルアクリレート(屈折率:1.406)、エチルメタクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、β-カルボキシエチルアクリレート、2-エチルヘキシルアクリレート(屈折率:1.436)、2-ヒドロキシエチルアクリレート(屈折率:1.453)等の(メタ)アクリル酸エステル;スチレン、α-メチルスチレン、クロロスチレン等のスチレンモノマー;アクリルアミド、置換アクリルアミド、メタクリルアミド、置換メタクリルアミド等のアミドモノマー等が挙げられる。これらのモノマーから構成される重合体は、単重合体であってもよく、共重合体であってもよい。好ましくは、共重合体である。
【0028】
樹脂を構成するモノマー成分の組成により、上記殻を形成する樹脂の屈折率を調整することができる。
【0029】
上記殻を構成する樹脂の屈折率は、好ましくは1.30~1.50であり、より好ましくは1.35~1.45であり、さらに好ましくは1.38~1.42であり、さらに好ましくは1.39~1.42であり、特に好ましくは1.40~1.42である。殻を構成する樹脂の屈折率をこのような範囲としつつ、粘着剤のベースポリマーの屈折率を調整すれば、粘着剤層内における可視光の乱反射を低減して、透明性に優れる粘着性層を形成することができる。
【0030】
1つの実施形態においては、殻を形成する樹脂は、カルボキシル基含有モノマー由来の構成単位を含む。カルボキシル基含有モノマー由来の構成単位を含む樹脂を用いれば、粘着剤層中の粘着剤と親和性の高い殻を有する熱膨張性微小球を形成することができる。粘着剤と親和性の高い殻を有する熱膨張性微小球は凝集し難く、粘着剤層中で好ましく分散し得る。このような熱膨張性微小球を含む粘着剤層は、光の乱反射が抑制され透明性に優れる。また、カルボキシル基含有モノマーを用いれば、殻を形成する樹脂の屈折率調整がし易くなる。また、高温下においても好ましく粘弾性を有する粘着剤層、すなわち、耐熱性に優れる(発泡温度が高い)粘着剤層を形成することができる。
【0031】
上記殻を形成する樹脂中、カルボキシル基含有モノマー由来の構成単位の含有割合は、当該樹脂100molに対して、好ましくは10mol%~50mol%であり、より好ましくは15mol%~45mol%であり、さらに好ましくは21mol%~36mol%である。このような範囲であれば、上記効果が顕著となる。また、屈折率が好ましく調製された殻を有する熱膨張性微小球を得ることができる。カルボキシル基含有モノマー由来の構成単位の含有割合が多すぎる場合、加熱膨張し難くなるおそれがある。
【0032】
1つの実施形態においては、殻を形成する樹脂は、メタクリル酸由来の構成単位を含む。メタクリル酸由来の構成単位を含む樹脂を用いれば、粘着剤層中の粘着剤と親和性の高い殻を有する熱膨張性微小球を形成することができる。また、メタクリル酸は、樹脂を構成するその他のモノマーとの反応性に優れるため、メタクリル酸を用いれば、当該樹脂の屈折率調整がし易くなる。
【0033】
上記殻を形成する樹脂中、メタクリル酸由来の構成単位の含有割合は、当該樹脂100molに対して、好ましくは10mol%~50mol%であり、より好ましくは15mol%~45mol%であり、さらに好ましくは18mol%~40mol%である。このような範囲であれば、上記効果が顕著となる。
【0034】
上記殻を形成する樹脂のsp値は、好ましくは10.0(cal/cm3)1/2~15.0(cal/cm3)1/2であり、より好ましくは12.0(cal/cm3)1/2~14.0(cal/cm3)1/2であり、より好ましくは12.5(cal/cm3)1/2~14.0(cal/cm3)1/2である。このような範囲であれば、粘着剤層中で上記熱膨張性微小球を好ましく分散させることができる。その結果、透明性に優れる粘着剤層を形成することができる。sp値は、フェドーズ(Fedors)の方法(山本秀樹著、「sp値 基礎・応用と計算方法」、株式会社情報機構出版、2006年4月3日発行、66~67ページ)により、求められる。具体的には、該sp値は、ポリマーを形成する各原子または原子団の25℃における蒸発エネルギーΔe(cal)と、ポリマーを形成する各原子または原子団の25℃におけるモル容積ΔV(cm3)とから、以下の式により算出される。ポリマーが共重合体である場合、そのsp値は、その共重合体を構成する各構成単位のそれぞれの単独共重合体のsp値を算出し、これらのsp値のそれぞれに各構成単位のモル分率を乗じたものを合算して算出される。
sp値=(ΣΔe/ΣΔv)1/2
【0035】
上記殻の厚みは、好ましくは15μm以下であり、より好ましくは7μm以下であり、さらに好ましくは5μm以下であり、特に好ましくは4μm以下である。また、上記殻の厚みの下限は、好ましくは1μm以上であり、より好ましくは2μm以上である。このような範囲であれば、不意な外力等により破壊されがたい熱膨張性微小球とすることができる。さらには、殻の厚みの上下限を上記範囲とすることにより、発泡する際の温度のバラツキを低減することができる。
【0036】
上記殻内に含まれる揮発性物質は、代表的には有機溶媒である。該有機溶媒としては、例えば、プロパン、シクロプロパン、ブタン、シクロブタン、イソブタン、ペンタン、シクロペンタン、ネオペンタン、イソペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン、2-メチルペンタン、2,2-ジメチルブタン、ヘプタン、シクロヘプタン、オクタン、シクロオクタン、メチルヘプタン類、トリメチルペンタン類等の水素原子および炭素原子のみから構成される炭化水素類;C3F7OCH3、C4F9OCH3、C4F9OC2H5などのハイドロフルオロエーテル類等が挙げられる。こられの有機溶媒は、1種のみを用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0037】
上記有機溶媒の含有割合は、熱膨張性微小球の加熱前重量に対して、好ましくは5重量%~35重量%であり、より好ましくは10重量%~30重量%である。このような範囲であれば、熱膨張性微小球が、粘着剤層中において、高い均一性で分散している粘着テープを得ることができる。含有割合が5重量%未満の場合、密度が低いなどの理由で粘着剤層製造中に、熱膨張微性微小球が粘着剤層表面に偏在しやすくなり、加熱後には過剰な大きさの凸凹が粘着剤層表面に生じるおそれがある。含有割合が35重量%を超える場合、密度が高く粘着剤層内で沈降して、加熱しても、粘着剤層表面に十分な凹凸ができず、所望の剥離性が得られないおそれがあり、また、糊残りが発生するおそれもある。
【0038】
上記熱膨張性微小球の加熱前の粒子径は、好ましくは0.5μm~80μmであり、より好ましくは5μm~45μmであり、さらに好ましくは10μm~20μmであり、特に好ましくは10μm~15μmである。よって、上記熱膨張性微小球の加熱前の粒子サイズを平均粒子径で言えば、好ましくは6μm~45μmであり、より好ましくは15μm~35μmである。上記の粒子径と平均粒子径はレーザー散乱法における粒度分布測定法によって求められる値である。
【0039】
上記熱膨張性微小球は、体積膨張率が好ましくは5倍以上、より好ましくは7倍以上、さらに好ましくは10倍以上となるまで破裂しない適度な強度を有することが好ましい。このような熱膨張性微小球を用いる場合、加熱処理により粘着力を効率よく低下させることができる。
【0040】
上記粘着剤層における熱膨張性微小球の含有割合は、所望とする粘着力の低下性等に応じて適切に設定し得る。熱膨張性微小球の含有割合は、粘着剤層を形成するベースポリマー100重量部に対して、例えば1重量部~150重量部であり、好ましくは10重量部~130重量部であり、さらに好ましくは25重量部~100重量部である。
【0041】
熱膨張性微小球が膨張する前(すなわち、加熱前)の粘着剤層の算術表面粗さRaは、好ましくは500nm以下であり、より好ましくは400nm以下であり、さらに好ましくは300nm以下である。このような範囲であれば、被着体に対する密着性に優れる粘着シートを得ることができる。
【0042】
上記粘着剤層は、80℃における動的貯蔵弾性率が5kPa~1MPa(より好ましくは10kPa~0.8MPa)の範囲にあるベースポリマーから構成される粘着剤を含むことが好ましい。このような粘着剤層であれば、加熱前に適度な粘着性を有し、加熱により粘着力が低下しやすい粘着シートを形成し得る。なお、動的貯蔵弾性率は、動的粘弾性測定装置(例えば、レオメトリックス社製の商品名「ARES」)を用いて、周波数1Hz、昇温速度10℃/minの測定条件により測定され得る。
【0043】
上記熱膨張性微小球は、任意の適切な方法により、製造され得る。1つの実施形態においては、上記熱膨張性微小球は、懸濁重合法により得られる。懸濁重合は、通常、分散剤を含有する水系分散媒体中に単量体(殻形成材料)および有機溶媒を分散させ有機溶媒の存在下に単量体を重合させて行う。また、分散を安定させる分散安定剤を利用してもよい。水系分散媒体中における分散安定剤としては、例えばシリカ、水酸化マグネシウム、リン酸カルシウム、水酸化アルミニウムなどの無機微粒子等が挙げられる。また、分散安定補助剤として、例えば、ジエタノールアミンと脂肪族ジカルボン酸の縮合生成物、ポリビニルピロリドン、メチルセルロース、ポリエチレンオキサイド、ポリビニルアルコール、各種乳化剤等を用いてもよい。
【0044】
上記懸濁重合の重合条件、混合成分の種類・添加量等により、粒径、有機溶媒の含有量等の熱膨張性微小球の特性を制御することができる。例えば、分散剤の添加量を少なくする、重合時の攪拌速度を遅くする等の操作により、大粒径の熱膨張性微小球を得ることができる。また、単量体の配合量を多くしたり、重合時の攪拌速度を遅くすれば、殻の厚みが厚い熱膨張性微小球を得ることができる。
【0045】
B-2.粘着剤
上記粘着剤層を構成する粘着剤としては、本発明の効果が得られる限りにおいて、任意の適切な粘着剤が用いられ得る。上記粘着剤としては、例えば、アクリル系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ビニルアルキルエーテル系粘着剤、ポリエステル系粘着剤、ポリアミド系粘着剤、ウレタン系粘着剤、フッ素系粘着剤、スチレン-ジエンブロック共重合体系粘着剤、活性エネルギー線硬化型粘着剤等が挙げられる。中でも好ましくは、アクリル系粘着剤、ゴム系粘着剤またはシリコーン系粘着剤であり、より好ましくはアクリル系粘着剤である。
【0046】
上記ベースポリマーの屈折率は、好ましくは1.30~1.50であり、より好ましくは1.35~1.46であり、さらに好ましくは1.38~1.43であり、特に好ましくは1.39~1.42である。このような範囲であれば、粘着剤層内における可視光の乱反射を低減して、透明性に優れる粘着性層を形成することができる。
【0047】
1つの実施形態においては、粘着剤中のベースポリマー(好ましくは、アクリル系ポリマー)は、水酸基含有モノマー由来の構成単位および/またはカルボキシル基含有モノマー由来の構成単位を含む。このようなベースポリマーを用いれば、好ましく屈折率が調整された粘着剤層を容易に得ることができる。また、このようなベースポリマーを用いれば、粘着剤層中で上記熱膨張性微小球を好ましく分散させることができる。その結果、透明性に優れる粘着剤層を形成することができる。
【0048】
上記ベースポリマー中、水酸基含有モノマー由来の構成単位の含有割合は、当該ベースポリマー100molに対して、好ましくは1mol%~20mol%であり、より好ましくは2mol%~10mol%である。このような範囲であれば、上記効果が顕著となる。また、屈折率が好ましく調製された殻を有する熱膨張性微小球を得ることができる。
【0049】
上記ベースポリマー中、カルボキシル基含有モノマー由来の構成単位の含有割合は、当該ベースポリマー100molに対して、好ましくは1mol%~20mol%であり、より好ましくは2mol%~10mol%である。このような範囲であれば、上記効果が顕著となる。また、屈折率が好ましく調製された殻を有する熱膨張性微小球を得ることができる。
【0050】
水酸基を有する上記ベースポリマーの水酸基価は、好ましくは0~50であり、より好ましくは20~30である。また、カルボキシル基を有する上記ベースポリマーの酸価は、好ましくは10~100であり、より好ましくは20~50である。このような範囲の水酸基価、酸価を有するベースポリマーを用いれば、粘着剤層中で上記熱膨張性微小球を好ましく分散させることができる。その結果、透明性に優れる粘着剤層を形成することができる。なお、粘着剤層中ポリマーの水酸基価および酸価は、粘着剤層中の溶媒可溶分を抽出して測定することができる。具体的には、以下の方法で溶媒可溶分を抽出することができる。
(i)粘着剤層を、溶媒に投入し、粘着剤層中の溶媒可溶分を上記溶媒に溶解させる溶液試料を調製する。
溶媒としては、極性等を考慮して、クロロホルム(CHCl3)、塩化メチレン(CH2Cl2)、テトラヒドロフラン(THF)、アセトン、ジメチルスルホキシド(DMSO)、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)、メタノール、エタノール、トルエンおよび水等から選択されるいずれか1種の溶媒または2種以上を任意の比率で含む混合溶媒を用いることができる。
典型的には、粘着剤層0.2g程度に溶媒30mL程度を加え、室温から用いる溶媒の沸点程度までの温度域で30分~12時間程度撹拌する。必要に応じて、例えば分析対象成分の抽出効率が低い場合等には、上記溶液を分取した後の試料に、分取した溶液と概ね同量の溶媒を新たに加えて撹拌し、その溶液を分取する操作を1回または複数回繰り返して溶液試料を調製してもよい。
(ii)上記溶液試料から溶媒を、蒸発等の方法により、溶媒を除去し、溶媒可溶性ポリマーを取り出すことができる。
なお溶媒可溶性ポリマーには未反応架橋剤の低分子量分など測定対象とならない溶媒可溶分が含まれることがある。その際には、前記溶液試料をポリマー成分のみ不溶な溶媒に投入する方法(再沈殿法)や、前記溶液試料を用いたゲル濾過クロマトグラフィーで分子量分画(分取液体クロマトグラフィ法)するなどして測定対象のみからなる溶媒可溶性ポリマーを調整する。
【0051】
上記ベースポリマーのsp値は、好ましくは10.0(cal/cm3)1/2~15.0(cal/cm3)1/2であり、より好ましくは10.0(cal/cm3)1/2~14.0(cal/cm3)1/2であり、より好ましくは10.0(cal/cm3)1/2~12.0(cal/cm3)1/2である。このような範囲であれば、粘着剤層中で上記熱膨張性微小球を好ましく分散させることができる。その結果、透明性に優れる粘着剤層を形成することができる。
【0052】
(アクリル系粘着剤)
上記アクリル系粘着剤としては、例えば、(メタ)アクリル酸アルキルエステルの1種または2種以上を単量体成分として用いたアクリル系ポリマー(ホモポリマーまたはコポリマー)をベースポリマーとするアクリル系粘着剤等が挙げられる。(メタ)アクリル酸アルキルエステルの具体例としては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸s-ブチル、(メタ)アクリル酸t-ブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸ヘプチル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸ノニル、(メタ)アクリル酸イソノニル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸イソデシル、(メタ)アクリル酸ウンデシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸トリデシル、(メタ)アクリル酸テトラデシル、(メタ)アクリル酸ペンタデシル、(メタ)アクリル酸ヘキサデシル、(メタ)アクリル酸ヘプタデシル、(メタ)アクリル酸オクタデシル、(メタ)アクリル酸ノナデシル、(メタ)アクリル酸エイコシル等の(メタ)アクリル酸C1-20アルキルエステルが挙げられる。なかでも、炭素数が4~18の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルが好ましく用いられ得る。
【0053】
1つの実施形態においては、上記アクリル系ポリマーは、ホモポリマーのガラス転移温度(Tg)が80℃以上(好ましくは90℃以上、さらに好ましくは100℃以上)となるモノマー由来の構成単位を含む。このようなポリマーを用いれば、適度な弾性率を有する粘着剤層を形成することができる。当該モノマーとして、例えば、メタクリル酸シクロヘキシル(Tg:83℃)、アクリル酸ジシクロペンタニル(Tg:120℃)、メタクリル酸ジシクロペンタニル(Tg:175℃)、アクリル酸イソボルニル(Tg:94℃)、メタクリル酸イソボルニル(Tg:150℃)、メタクリル酸t-ブチル(Tg:118℃)、メタクリル酸メチル(Tg:105℃)、トリメチロールプロパントリアクリレート(Tg:>250℃)、スチレン(Tg:80℃)、アクリルニトリル(Tg:97℃)、N-アクリロイルモルホリン(Tg:145℃)等が挙げられる。なかでも、メタクリル酸メチルが好ましい。ホモポリマーのガラス転移温度(Tg)が80℃以上となるモノマー由来の構成単位の含有割合は、ベースポリマー(アクリル系ポリマー)100重量部に対して、好ましくは1重量部~20重量部であり、より好ましくは1重量部~10重量部である。
【0054】
上記アクリル系ポリマーは、凝集力、耐熱性、架橋性等の改質を目的として、必要に応じて、上記(メタ)アクリル酸アルキルエステルと共重合可能な他のモノマーに対応する単位を含んでいてもよい。このようなモノマーとして、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、カルボキシエチルアクリレート、カルボキシペンチルアクリレート、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、クロトン酸等のカルボキシル基含有モノマー;無水マレイン酸、無水イコタン酸等の酸無水物モノマー;(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシヘキシル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシオクチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシデシル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシラウリル、(4-ヒドロキシメチルシクロヘキシル)メチルメタクリレート等の水酸基含有モノマー;スチレンスルホン酸、アリルスルホン酸、2-(メタ)アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸、(メタ)アクリルアミドプロパンスルホン酸、スルホプロピル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロイルオキシナフタレンスルホン酸等のスルホン酸基含有モノマー;(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド、N-ブチル(メタ)アクリルアミド、N-メチロール(メタ)アクリルアミド、N-メチロールプロパン(メタ)アクリルアミド等の(N-置換)アミド系モノマー;(メタ)アクリル酸アミノエチル、(メタ)アクリル酸N,N-ジメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸t-ブチルアミノエチル等の(メタ)アクリル酸アミノアルキル系モノマー;(メタ)アクリル酸メトキシエチル、(メタ)アクリル酸エトキシエチル等の(メタ)アクリル酸アルコキシアルキル系モノマー;N-シクロヘキシルマレイミド、N-イソプロピルマレイミド、N-ラウリルマレイミド、N-フェニルマレイミド等のマレイミド系モノマー;N-メチルイタコンイミド、N-エチルイタコンイミド、N-ブチルイタコンイミド、N-オクチルイタコンイミド、N-2-エチルヘキシルイタコンイミド、N-シクロヘキシルイタコンイミド、N-ラウリルイタコンイミド等のイタコンイミド系モノマー;N-(メタ)アクリロイルオキシメチレンスクシンイミド、N-(メタ)アクルロイル-6-オキシヘキサメチレンスクシンイミド、N-(メタ)アクリロイル-8-オキシオクタメチレンスクシンイミド等のスクシンイミド系モノマー;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、N-ビニルピロリドン、メチルビニルピロリドン、ビニルピリジン、ビニルピペリドン、ビニルピリミジン、ビニルピペラジン、ビニルピラジン、ビニルピロール、ビニルイミダゾール、ビニルオキサゾール、ビニルモルホリン、N-ビニルカルボン酸アミド類、スチレン、α-メチルスチレン、N-ビニルカプロラクタム等のビニル系モノマー;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のシアノアクリレートモノマー;(メタ)アクリル酸グリシジル等のエポキシ基含有アクリル系モノマー;(メタ)アクリル酸ポリエチレングリコール、(メタ)アクリル酸ポリプロピレングリコール、(メタ)アクリル酸メトキシエチレングリコール、(メタ)アクリル酸メトキシポリプロピレングリコール等のグリコール系アクリルエステルモノマー;(メタ)アクリル酸テトラヒドロフルフリル、フッ素(メタ)アクリレート、シリコーン(メタ)アクリレート等の複素環、ハロゲン原子、ケイ素原子等を有するアクリル酸エステル系モノマー;ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、エポキシアクリレート、ポリエステルアクリレート、ウレタンアクリレート等の多官能モノマー;イソプレン、ブタジエン、イソブチレン等のオレフィン系モノマー;ビニルエーテル等のビニルエーテル系モノマー等が挙げられる。これらのモノマーは、単独で、または2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0055】
(添加剤)
上記粘着剤は、必要に応じて、任意の適切な添加剤を含み得る。該添加剤としては、例えば、架橋剤、粘着付与剤、可塑剤、顔料、染料、充填剤、老化防止剤、導電材、帯電防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、剥離調整剤、軟化剤、界面活性剤、難燃剤、酸化防止剤等が挙げられる。
【0056】
上記粘着付与剤としては、任意の適切な粘着付与剤が用いられる。粘着付与剤としては、例えば、粘着付与樹脂が用いられる。粘着付与樹脂の具体例としては、ロジン系粘着付与樹脂(例えば、未変性ロジン、変性ロジン、ロジンフェノール系樹脂、ロジンエステル系樹脂など)、テルペン系粘着付与樹脂(例えば、テルペン系樹脂、テルペンフェノール系樹脂、スチレン変性テルペン系樹脂、芳香族変性テルペン系樹脂、水素添加テルペン系樹脂)、炭化水素系粘着付与樹脂(例えば、脂肪族系炭化水素樹脂、脂肪族系環状炭化水素樹脂、芳香族系炭化水素樹脂(例えば、スチレン系樹脂、キシレン系樹脂など)、脂肪族・芳香族系石油樹脂、脂肪族・脂環族系石油樹脂、水素添加炭化水素樹脂、クマロン系樹脂、クマロンインデン系樹脂など)、フェノール系粘着付与樹脂(例えば、アルキルフェノール系樹脂、キシレンホルムアルデヒド系樹脂、レゾール、ノボラックなど)、ケトン系粘着付与樹脂、ポリアミド系粘着付与樹脂、エポキシ系粘着付与樹脂、エラストマー系粘着付与樹脂などが挙げられる。
【0057】
上記粘着付与剤の添加量は、ベースポリマー100重量部に対して、好ましくは5重量部~100重量部であり、より好ましくは10重量部~50重量部である。
【0058】
上記架橋剤としては、例えば、イソシアネート系架橋剤、エポキシ系架橋剤、メラミン系架橋剤、過酸化物系架橋剤の他、尿素系架橋剤、金属アルコキシド系架橋剤、金属キレート系架橋剤、金属塩系架橋剤、カルボジイミド系架橋剤、オキサゾリン系架橋剤、アジリジン系架橋剤、アミン系架橋剤などが挙げられる。なかでも好ましくは、イソシアネート系架橋剤またはエポキシ系架橋剤である。
【0059】
上記イソシアネート系架橋剤の具体例としては、ブチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート等の低級脂肪族ポリイソシアネート類;シクロペンチレンジイソシアネート、シクロへキシレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート等の脂環族イソシアネート類;2,4-トリレンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート等の芳香族イソシアネート類;トリメチロールプロパン/トリレンジイソシアネート3量体付加物(日本ポリウレタン工業社製、商品名「コロネートL」)、トリメチロールプロパン/へキサメチレンジイソシアネート3量体付加物(日本ポリウレタン工業社製、商品名「コロネートHL」)、ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート体(日本ポリウレタン工業社製、商品名「コロネートHX」)等のイソシアネート付加物;等が挙げられる。イソシアネート系架橋剤の含有量は、所望とする粘着力、粘着剤層の弾性等に応じて、任意の適切な量に設定され得、ベースポリマー100重量部に対して、代表的には0.1重量部~20重量部であり、より好ましくは0.5重量部~10重量部である。
【0060】
前記エポキシ系架橋剤としては、例えば、N,N,N’,N’-テトラグリシジル-m-キシレンジアミン、ジグリシジルアニリン、1,3-ビス(N,N-グリシジルアミノメチル)シクロヘキサン(三菱ガス化学社製、商品名「テトラッドC」)、1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテル(共栄社化学社製、商品名「エポライト1600」)、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル(共栄社化学社製、商品名「エポライト1500NP」)、エチレングリコールジグリシジルエーテル(共栄社化学社製、商品名「エポライト40E」)、プロピレングリコールジグリシジルエーテル(共栄社化学社製、商品名「エポライト70P」)、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル(日本油脂社製、商品名「エピオールE-400」)、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル(日本油脂社製、商品名「エピオールP-200」)、ソルビトールポリグリシジルエーテル(ナガセケムテックス社製、商品名「デナコール EX-611」)、グリセロールポリグリシジルエーテル(ナガセケムテックス社製、商品名「デナコール EX-314」)、ペンタエリスリトールポリグリシジルエーテル、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル(ナガセケムテックス社製、商品名「デナコール EX-512」)、ソルビタンポリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル、アジピン酸ジグリシジルエステル、o-フタル酸ジグリシジルエステル、トリグリシジル-トリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレート、レゾルシンジグリシジルエーテル、ビスフェノール-S-ジグリシジルエーテル、分子内にエポキシ基を2つ以上有するエポキシ系樹脂等が挙げられる。エポキシ系架橋剤の含有量は、所望とする粘着力、粘着剤層の弾性等に応じて、任意の適切な量に設定され得、ベースポリマー100重量部に対して、代表的には0.01重量部~10重量部であり、より好ましくは0.03重量部~5重量部である。
【0061】
上記可塑剤としては、任意の適切な可塑剤が用いられ得る。可塑剤の具体例としては、例えば、トリメット酸エステル系可塑剤、ピロメリット酸エステル系可塑剤、ポリエステル系可塑剤、アジピン酸系可塑剤等が挙げられる。なかでも好ましくは、トリメリット酸エステルエステル系可塑剤(例えば、トリメリット酸トリ(n-オクチル)、トリメリット酸トリ(2-エチルヘキシル)等)またはピロメリット酸エステル系可塑剤(例えば、ピロメリット酸テトラ(n-オクチル)、ピロメリット酸テトラ(2-エチルヘキシル)等)である。可塑剤は、単独で、または2種以上組み合わせて用いてもよい。可塑剤の含有量は、ベースポリマー100重量部に対して、好ましくは1重量部~20重量部であり、より好ましくは1重量部~5重量部である。
【0062】
C.基材
上記基材としては、例えば、樹脂シート、不織布、紙、金属箔、織布、ゴムシート、発泡シート、これらの積層体(特に、樹脂シートを含む積層体)等が挙げられる。樹脂シートを構成する樹脂としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、エチレン-プロピレン共重合体、エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)、ポリアミド(ナイロン)、全芳香族ポリアミド(アラミド)、ポリイミド(PI)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、フッ素系樹脂、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)等が挙げられる。不織布としては、マニラ麻を含む不織布等の耐熱性を有する天然繊維による不織布;ポリプロピレン樹脂不織布、ポリエチレン樹脂不織布、エステル系樹脂不織布等の合成樹脂不織布等が挙げられる。金属箔としては、銅箔、ステンレス箔、アルミニウム箔等が挙げられる。紙としては、和紙、クラフト紙等が挙げられる。上記基材は、単層であってもよく、多層であってもよい。上記基材が多層である場合、各層の構成は同じであってもよく、異なっていてもよい。
【0063】
上記基材の厚さは、所望とする強度または柔軟性、ならびに使用目的等に応じて、任意の適切な厚さに設定され得る。基材の厚さは、好ましくは1000μm以下であり、より好ましくは1μm~1000μmであり、さらに好ましくは1μm~500μmであり、特に好ましくは3μm~300μmであり、最も好ましくは5μm~250μmである。
【0064】
上記基材は、表面処理が施されていてもよい。表面処理としては、例えば、コロナ処理、クロム酸処理、オゾン暴露、火炎暴露、高圧電撃暴露、イオン化放射線処理、下塗り剤によるコーティング処理等が挙げられる。
【0065】
上記有機コーティング材料としては、例えば、「プラスチックハードコート材料II(CMC出版、(2004))」に記載される材料が挙げられる。好ましくはウレタン系ポリマー、より好ましくはポリアクリルウレタン、ポリエステルウレタンまたはこれらの前駆体が用いられる。基材への塗工・塗布が簡便であり、かつ、工業的に多種のものが選択でき安価に入手できるからである。該ウレタン系ポリマーは、例えば、イソシアナートモノマーとアルコール性水酸基含有モノマー(例えば、水酸基含有アクリル化合物又は水酸基含有エステル化合物)との反応混合物からなるポリマーである。有機コーティング材料は、任意の添加剤として、ポリアミンなどの鎖延長剤、老化防止剤、酸化安定剤等を含んでいてもよい。有機コーティング層の厚さは特に限定されないが、例えば、0.1μm~10μm程度が適しており、0.1μm~5μm程度が好ましく、0.5μm~5μm程度がより好ましい。
【0066】
D.別の粘着剤層
上記別の粘着剤層としては、任意の適切な粘着剤層が形成され得る。別の粘着剤層を形成する粘着剤としては、例えば、ゴム系粘着剤、アクリル系粘着剤、ビニルアルキルエーテル系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ポリエステル系粘着剤、ポリアミド系粘着剤、ウレタン系粘着剤、フッ素系粘着剤、スチレン-ジエンブロック共重合体系粘着剤等が挙げられる。粘着剤には、例えば、可塑剤、充填剤、界面活性剤、老化防止剤、粘着性付与剤などの公知乃至慣用の添加剤が配合されていてもよい。
【0067】
別の粘着剤層の厚さは、好ましくは300μm以下であり、より好ましくは1μm~300μmであり、さらに好ましくは5μm~100μmである。
【0068】
E.弾性層
本発明の粘着シートは、弾性層をさらに備えていてもよい。弾性層は、粘着剤層の片面に配置され得る。粘着シートが基材を備える場合、弾性層は、粘着剤層と基材との間に配置され得る。弾性層を備えることにより、被着体に対する追従性が向上する。また、弾性層を備える粘着シートは、剥離時に加熱した際には、粘着剤層の面方向の変形(膨張)が拘束され、厚み方向の変形が優先される。その結果、剥離性が向上する。
【0069】
上記弾性層はベースポリマーを含み、該ベースポリマーとしては、上記粘着剤層を構成するベースポリマーとして例示したポリマーが用いられ得る。1つの実施形態においては、上記弾性層は、天然ゴム、合成ゴム、合成樹脂等を含んでいてもよい。該合成ゴムおよび合成樹脂としては、ニトリル系、ジエン系、アクリル系の合成ゴム;ポリオレフィン系、ポリエステル系等の熱可塑性エラストマー;エチレン-酢酸ビニル共重合体;ポリウレタン;ポリブタジエン;軟質ポリ塩化ビニル等が挙げられる。上記弾性層を構成するベースポリマーは、上記粘着剤層を形成するベースポリマーと同じであってもよく、異なっていてもよい。上記弾性層は、上記ベースポリマーから形成される発泡フィルムであってもよい。該発泡フィルムは、任意の適切な方法により得ることができる。なお、弾性層と粘着剤層とは、ベースポリマーの相違および/または熱膨張性微小球の有無(弾性層は熱膨張性微小球を含まない)で区別することができる。より詳細には、弾性層と粘着剤層とが異なるベースポリマーから形成されている場合など、断面観察により弾性層と粘着剤層との界面が識別できる場合には、弾性層と粘着剤層との境界は該界面により規定される。また、断面観察により弾性層と粘着剤層との界面が識別できない場合には、断面観察により熱膨張性微小球が観察される領域が、粘着剤層である。
【0070】
上記弾性層は、必要に応じて、任意の適切な添加剤を含み得る。該添加剤としては、例えば、架橋剤、加硫剤、粘着付与樹脂、可塑剤、柔軟剤、充填剤、老化防止剤等が挙げられる。ベースポリマーとして、ポリ塩化ビニル等の硬質樹脂を用いる場合、可塑剤および/また柔軟剤を併用して、所望の弾性を有する弾性層を形成することが好ましい。
【0071】
上記弾性層の厚さは、好ましくは3μm~200μmであり、より好ましくは5μm~100μmである。このような範囲であれば、弾性層の上記機能を十分に発揮させることができる。
【0072】
上記弾性層の25℃における引っ張り弾性率は、好ましくは0.2MPa~500MPaであり、より好ましくは0.3MPa~500MPaであり、さらに好ましくは0.5MPa~500MPaである。このような範囲であれば、弾性層の上記機能を十分に発揮させることができる。なお、引っ張り弾性率は、JIS K 7161:2008に準じて測定することができる。
【0073】
F.粘着シートの製造方法
本発明の粘着シートは、任意の適切な方法により製造することができる。本発明の粘着シートは、例えば、基材(基材を含まない粘着シート得る場合には、任意の適切な基体)上に直接、粘着剤および熱膨張性微小球を含む組成物を塗工する方法、または任意の適切な基体上に粘着剤および熱膨張性微小球を含む組成物を塗工し形成された塗工層を基材に転写する方法等が挙げられる。粘着剤および熱膨張性微小球を含む組成物は、任意の適切な溶媒を含み得る。また、粘着剤を含む組成物により粘着剤塗工層を形成した後、該粘着剤塗工層に熱膨張性微小球を振りかけた後、ラミネーター等を用いて、該熱膨張性微小球を該塗工層中に埋め込んで、熱膨張性微小球を含む粘着剤層を形成してもよい。
【0074】
粘着剤層が上記弾性層を有する場合、弾性層は、例えば、基材上または粘着剤層上に、弾性層を形成するための組成物を塗工して形成することができる。
【0075】
上記各組成物の塗工方法としては、任意の適切な塗工方法が採用され得る。例えば、塗布した後に乾燥して各層を形成することができる。塗布方法としては、例えば、マルチコーター、ダイコーター、グラビアコーター、アプリケーター等を用いた塗布方法が挙げられる。乾燥方法としては、例えば、自然乾燥、加熱乾燥等が挙げられる。加熱乾燥する場合の加熱温度は、乾燥対象となる物質の特性に応じて、任意の適切な温度に設定され得る。
【実施例0076】
以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、本発明はこれら実施例によって限定されるものではない。実施例における評価方法は以下のとおりである。なお、下記評価においては、はく離ライナーを剥離した粘着シートを用いた。また、実施例において、特に明記しない限り、「部」および「%」は重量基準である。
【0077】
<評価方法>
(1)透明性評価
A4サイズの粘着シートを作成し、当該粘着シートそれぞれを同じ新聞紙上に置き、粘着シート越しの当該新聞紙の文字の視認性により、透明性の評価を行った。A4サイズ内ですべて文字を読み取れたら優(〇)、読み取れない文字が10%未満なら良(△)、10%以上読み取れないなら不合格(×)とした。
(2)発泡開始温度
粘着テープ(20mm×50mm)を、ホットプレート(アズワン社製、デジタルホットプレートPC-400D)に、粘着剤層がホットプレート側となるようにして配置し、粘着テープの上に、ガラス板を設置してホットプレート/粘着テープ/ガラス板のサンドイッチ構造とした。
ホットプレートの温度を50℃~300℃の範囲で変化させ、粘着剤層膨張率(所定温度で1分間加熱した後のテープ厚み/加熱されていない粘着テープの室温での厚み)が105%以上となるホットプレートの最低温度を発砲開始温度とした。
【0078】
[製造例1]熱膨張性微小球Aの作製
塩化ナトリウム150gと、シリカ有効成分20重量%であるコロイダルシリカ(日産化学株式会社製、商品名「スノーテックス」)70gと、ポリビニルピロリドン1gと、ジエタノールアミンとアジピン酸の縮合物0.5gとを、蒸留水600gに加えた後、得られた混合物のpHを2.8~3.2に調整して水性溶液を得た。
上記水性溶液に、殻の材料となる油系添加剤として、アクリロニトリル36gと、メチルメタクリレート36gと、メタクリル酸28gとを加えた。さらに、架橋剤としてのエチレングリコールジメタクリレート1gを加え、反応溶液を得た。
上記反応溶液をホモミキサー(特殊機化工業社製、商品名「TKホモミキサー」)付き耐圧反応容器に加え、さらに、殻に内包されることを意図した有機溶媒としてイソブタン(沸点:-11.7℃)70gと、開始剤(ジイソプロピルオキシジカーボネート)5gとを耐圧反応容器に加えた。
ホモミキサーを所定の初期攪拌条件(攪拌速度:6000rpm、攪拌時間:2分間)で回転させて前記混合物を撹拌した後、80rpmで攪拌しながら60℃に加温して24時間反応を行った。反応後の反応溶液をろ過することで得られる固形分を窒素気流下室温1週間放置することで熱膨張性微小球を得た。
なお、得られた熱膨張性微小球は、島津製作所製の商品名「SALD-2000J」で計測したところ、平均粒径が14μmであった。また、X線CT(ZEISS社製 Xradia520versa(測定条件:管電圧60KV 管電流83μA、ピクセルサイズ0.20μm/pixel))により、熱膨張微性微小球内のイソブタン溶媒は、熱膨張性微小球の重量に対して、12重量%含むことがわかった。また、上記X線CTにより測定したところ、熱膨張性微小球の殻の厚みは、2μmであった。
【0079】
[製造例2~7]熱膨張性微小球B~Gの作製
モノマー成分を表1に記載のとおりとしたこと以外は、製造例1と同様にして熱膨張性微小球を得た。
【0080】
【0081】
[製造例8]アクリル系コポリマーIの作製
トルエン溶媒中に、2-エチルヘキシルアクリレート(EHA)、エチルアクリレート(EA)、メチルメタクリレート(MMA)、2-ヒドロキシエチルアクリレート(HEA)を30:70:5:4(重量比)を加え、さらに重合開始剤としてt-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート(日本油脂社製、商品名:パーブチルO(登録商標))を0.5重量部加えて80~90℃で12時間撹拌して固形分濃度40%のアクリル系コポリマーIのトルエン溶液を得た。
なお、アクリル系コポリマーIの屈折率(計算屈折率)は1.413であり、SP値は10.1である。
【0082】
[製造例9]アクリル系コポリマーIIの作製
トルエン溶媒中に、2-エチルヘキシルアクリレート(EHA)、エチルアクリレート(EA)、メチルメタクリレート(MMA)、アクリル酸(AA)を30:70:5:5.5(重量比)を加え、さらに重合開始剤としてt-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート(日本油脂社製、商品名:パーブチルO(登録商標))を0.5重量部加えて80~90℃で12時間撹拌して固形分濃度40%のアクリル系コポリマーIIのトルエン溶液を得た。
なお、アクリル系コポリマーIIの屈折率(計算屈折率)は1.413であり、SP値は10.1である。
【0083】
[実施例1]
ベースポリマーとしてのアクリル系コポリマーIを100重量部と、イソシアネート系架橋剤(東ソー社製、商品名「コロネートL」)2重量部と、熱膨張性微小球Aを35重量部と、トルエン210重量部とを混合し、粘着剤層形成用組成物を調製した。
アクリル系コポリマーIを100重量部と、イソシアネート系架橋剤(東ソー社製、商品名「コロネートL」)2重量部と、トルエン210重量部とを混合し、弾性層形成用組成物を調製した。
基材としてのPETフィルム(厚さ:38μm)上に、弾性層形成用組成物を塗布し、乾燥して、厚さ20μmの弾性層を形成した。さらに、弾性層上に、上記粘着剤層形成用組成物を塗布し、乾燥して、粘着シート(粘着剤層(厚さ:30μm)/弾性層(20ミクロン)/基材)を得た。さらに、基材の弾性層とは反対側に別の粘着剤層を形成した。
得られた粘着テープを上記評価に供した。結果を表2に示す。
【0084】
[実施例2~7、比較例1~2]
粘着剤層中のベースポリマー、および熱膨張性微小球の種類を表2に示す組成としたこと以外は、実施例1と同様にして粘着テープを得た。得られた粘着テープを上記評価に供した。結果を表2に示す。
【0085】