(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024017101
(43)【公開日】2024-02-08
(54)【発明の名称】杭基礎構造
(51)【国際特許分類】
E02D 27/34 20060101AFI20240201BHJP
E02D 27/12 20060101ALI20240201BHJP
E02D 27/00 20060101ALI20240201BHJP
【FI】
E02D27/34 A
E02D27/12 Z
E02D27/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022119518
(22)【出願日】2022-07-27
(71)【出願人】
【識別番号】000003621
【氏名又は名称】株式会社竹中工務店
(74)【代理人】
【識別番号】100154726
【弁理士】
【氏名又は名称】宮地 正浩
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼山 秀俊
(72)【発明者】
【氏名】田中 健嗣
(72)【発明者】
【氏名】慶 祐一
(72)【発明者】
【氏名】犬山 隆博
(72)【発明者】
【氏名】田中 壱成
【テーマコード(参考)】
2D046
【Fターム(参考)】
2D046AA12
2D046AA15
2D046CA03
2D046DA11
(57)【要約】
【課題】複数の杭として杭頭接合部の構成が互いに異なる第1杭及び第2杭を備えた杭基礎構造において、安全性を確保しながら、施工性及び経済性を向上可能な技術を提供する。
【解決手段】杭頭接合部15,25におけるコンクリート基礎5に対する杭頭11,21の固定度については、第1杭10が前記第2杭20よりも小さいものに設定されており、杭頭接合部15,25におけるコンクリート基礎5に対する杭頭11,21の引抜抵抗力については、第1杭10が第2杭20よりも大きいものに設定されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物におけるコンクリート基礎に杭頭が接合されて当該建物の荷重を支持する複数の杭を備え、
前記杭として、前記コンクリート基礎に対して前記杭頭を接合する杭頭接合部の構成が互いに異なる第1杭及び第2杭を備えた杭基礎構造であって、
前記杭頭接合部における前記コンクリート基礎に対する前記杭頭の固定度については、前記第1杭が前記第2杭よりも小さいものに設定されており、
前記杭頭接合部における前記コンクリート基礎に対する前記杭頭の引抜抵抗力については、前記第1杭が前記第2杭よりも大きいものに設定されている杭基礎構造。
【請求項2】
前記建物の外周側に配置された外周側杭が前記第1杭として構成されており、その内側に配置された内側杭が前記第2杭として構成されている請求項1に記載の杭基礎構造。
【請求項3】
前記コンクリート基礎の基礎梁が、建物の外周側に位置して前記外周側杭の杭頭が接合される外周側基礎梁部分と、その内側に位置して前記内側杭の杭頭が接合される内側基礎梁部分とを有し、
前記外周側基礎梁部分の梁成が、前記内側基礎梁部分の梁成よりも、小さいものに設定されている請求項2に記載の杭基礎構造。
【請求項4】
前記第1杭における前記杭頭接合部が、前記杭頭に下端部が定着された芯材の上端部を前記コンクリート基礎に定着させてなる杭頭芯材接合部として構成されている請求項1又は2に記載の杭基礎構造。
【請求項5】
前記第2杭における前記杭頭接合部が、杭頭補強筋が省略された前記杭頭を前記コンクリート基礎に埋設させてなる杭頭半剛接合部として構成されている請求項1又は2に記載の杭基礎構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物におけるコンクリート基礎に杭頭が接合されて当該建物の荷重を支持する複数の杭を備え、前記杭として、前記コンクリート基礎に対して前記杭頭を接合する杭頭接合部の構成が互いに異なる第1杭及び第2杭を備えた杭基礎構造に関する。
【背景技術】
【0002】
杭の杭頭をコンクリート基礎に接合する杭頭接合部として、杭頭CFT接合部(例えば特許文献1を参照。)や杭頭半剛接合部(例えば特許文献2を参照。)が知られている。杭頭CFT接合部は、杭頭に下端部が定着された芯材としてのコンクリート充填鋼管(CFT)の上端部をコンクリート基礎に定着させた杭頭接合部である。一方、杭頭半剛接合部は、杭頭補強筋が省略された杭頭をコンクリート基礎に埋設させてなる杭頭接合部である。
【0003】
複数の杭を備えた杭基礎構造として、建物の外周側に配置された外周側杭と、その内側に配置された内側杭とを備えたものが知られている(例えば特許文献3を参照。)。この特許文献3記載の杭基礎構造では、外周側杭と内側杭の夫々の杭頭接合部が異なるものとされている。即ち、外周側杭と内側杭の夫々の杭頭接合部は、共に上記杭頭半剛接合部が採用されているが、外周側杭の杭頭接合部は、内側杭の杭頭接合部とは異なり、杭頭の周囲に粘性体等が設けられて半固定状態の弾性ヒンジとされている。この構成により、杭頭接合部におけるコンクリート基礎に対する杭頭の固定度については、外周側杭が内側杭よりも小さいものとなって、コンクリート基礎から外周側杭に伝達される水平力が低減される。一方、杭頭接合部におけるコンクリート基礎に対する杭頭の引抜抵抗力については、外周側杭と内側杭とは略同じものとなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第6941492号公報
【特許文献2】特許第6648990号公報
【特許文献3】特開2004-316410号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献3記載の杭基礎構造では、外周側杭と内側杭の夫々の杭頭接合部は、共に同じ上記杭頭半剛接合部を採用しているので、その引抜抵抗力は略同等となる。すると、コンクリート基礎から伝達される引抜力は、外周側杭と内側杭の両方で負担されることになる。よって、外周側杭と内側杭の両方の杭頭接合部において、比較的大きな引抜抵抗力を確保するための杭頭補強筋等を採用することが望ましい場合がある。そして、全ての外周側杭と内側杭に杭頭補強筋を採用すると、施工コストが嵩んだり、施工性が悪化したり、などの問題がある。尚、特許文献3記載の杭基礎構造では、コンクリート基礎に埋設された杭頭の周囲に粘性体当を設けることで半固定状態の弾性ヒンジとなる杭頭半剛接合部を採用しているので、上述したように杭頭がコンクリート基礎に埋設されない杭頭CFT接合部を採用することはできない。
また、上述の杭頭CFT接合部を有する杭では、コンクリート基礎から比較的大きな水平力が伝達されると、当該杭における上下中間部である中杭部の曲げ応力が過大となって構造安全上の問題がある。
この実情に鑑み、本発明の主たる課題は、複数の杭として杭頭接合部の構成が互いに異なる第1杭及び第2杭を備えた杭基礎構造において、安全性を確保しながら、施工性及び経済性を向上可能な技術を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1特徴構成は、建物におけるコンクリート基礎に杭頭が接合されて当該建物の荷重を支持する複数の杭を備え、
前記杭として、前記コンクリート基礎に対して前記杭頭を接合する杭頭接合部の構成が互いに異なる第1杭及び第2杭を備えた杭基礎構造であって、
前記杭頭接合部における前記コンクリート基礎に対する前記杭頭の固定度については、前記第1杭が前記第2杭よりも小さいものに設定されており、
前記杭頭接合部における前記コンクリート基礎に対する前記杭頭の引抜抵抗力については、前記第1杭が前記第2杭よりも大きいものに設定されている点にある。
【0007】
本構成によれば、第1杭における杭頭接合部の上記固定度は、第2杭における杭頭接合部の上記固定度よりも小さいものに設定されているので、コンクリート基礎から伝達される水平力については、主に、上記杭頭接合部の固定度が大きい第2杭により抵抗させることができる。一方、第1杭における杭頭接合部の上記引抜抵抗力は、第2杭における杭頭接合部の上記引抜抵抗力よりも大きいものに設定されているので、コンクリート基礎から伝達される引抜力については、主に、上記杭頭接合部の引抜抵抗力が大きい第1杭により抵抗させることができる。このように、コンクリート基礎から伝達される水平力と引抜力とを第1杭と第2杭とに分けて負担させることができるので、これら第1杭及び第2杭の夫々において、固定度や引抜抵抗力を確保するための杭頭補強筋等の構成を省略又は簡素化することができる。
更に、比較的大きい引抜抵抗力を実現するべく比較的高価となる第1杭を、全ての杭のうちの一部に制限しているので、全ての杭を第1杭とする場合と比べて施工コストを削減することができる。また、第1杭では、第2杭と比較して固定度が小さいことで水平力の伝達が抑制された状態となるので、杭の上下中間部である中杭部における過剰な曲げ応力の発生を抑制することができる。
従って、本発明により、複数の杭として杭頭接合部の構成が互いに異なる第1杭及び第2杭を備えた杭基礎構造において、安全性を確保しながら、施工性及び経済性を向上可能な技術を提供することができる。
【0008】
本発明の第2特徴構成は、前記建物の外周側に配置された外周側杭が前記第1杭として構成されており、その内側に配置された内側杭が前記第2杭として構成されている点にある。
【0009】
本構成によれば、軸力が比較的小さいことで引抜力が大きくなり易い上記外周側杭は、上記第2杭として構成された内側杭と比べて上記固定度が小さいが上記引抜抵抗力が大きい杭頭接合部を有する第1杭として構成されている。よって、建物の外周側において、コンクリート基礎から伝達される比較的大きな引抜力を外周側杭により適切に負担しながら、コンクリート基礎から外周側杭に伝達される水平力を小さくすることにより、当該コンクリート基礎に生じる曲げ応力を軽減することができる。
一方、軸力が比較的大きいことで引抜力が大きくなり難い上記内側杭は、上記第1杭として構成された外周側杭と比べて上記引抜抵抗力は小さいが上記固定度が大きい杭頭接合部を有する第2杭として構成されている。よって、建物の内側において、内側杭の杭頭接合部において引抜抵抗力を発現させるための杭頭補強筋を省略しながら、コンクリート基礎から伝達される比較的大きな水平力を内側杭により適切に負担することができる。
【0010】
本発明の第3特徴構成は、前記コンクリート基礎の基礎梁が、建物の外周側に位置して前記外周側杭の杭頭が接合される外周側基礎梁部分と、その内側に位置して前記内側杭の杭頭が接合される内側基礎梁部分とを有し、
前記外周側基礎梁部分の梁成が、前記内側基礎梁部分の梁成よりも、小さいものに設定されている点にある。
【0011】
本構成によれば、コンクリート基礎において、上記引抜抵抗力が比較的大きいが上記固定度が比較的小さい第1杭として構成された外周側杭の杭頭が接合される外周側基礎梁部分が、上記引抜抵抗力が比較的小さいが上記固定度が比較的大きい第2杭として構成された内側杭の杭頭が接合される内側基礎梁部分と比べて、曲げ応力が軽減された状態となる。よって、外周側基礎梁部分の梁成を内側基礎梁部分の梁成よりも小さいものに設定することで、夫々の生じる曲げ応力を適切に処理することができる。そして、外周側基礎梁部分の梁成が比較的小さいものに設定されているので、それに隣接して配置される山留の長さや断面を小さくして、山留の施工コストの削減を図ることができる。
更に、外周側基礎梁部分において、外周側杭の杭頭が接続されるフーチングを省略すれば、それに隣接して山留を直線的に配置することができるので、山留の施工コストの一層の削減を図ることができる。
【0012】
本発明の第4特徴構成は、前記第1杭における前記杭頭接合部が、前記杭頭に下端部が定着された芯材の上端部を前記コンクリート基礎に定着させてなる杭頭芯材接合部として構成されている点にある。
【0013】
本構成によれば、第1杭における杭頭接合部が上記杭頭芯材接合部として構成されているので、当該第1杭における杭頭接合部において、杭頭補強筋を省略した合理的な構成で適切に、上記固定度を比較的小さく設定すると共に、上記引抜抵抗力を比較的大きく設定することができる。
【0014】
本発明の第5特徴構成は、前記第2杭における前記杭頭接合部が、杭頭補強筋が省略された前記杭頭を前記コンクリート基礎に埋設させてなる杭頭半剛接合部として構成されている点にある。
【0015】
本構成によれば、第2杭における杭頭接合部が上記杭頭半剛接合部として構成されているので、当該第2杭における杭頭接合部において、杭頭補強筋を省略した合理的な構成で適切に、上記固定度を比較的大きく設定すると共に、上記引抜抵抗力を比較的小さく設定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本実施形態の杭基礎構造の全体構成を示す縦断面図
【
図2】本実施形態の杭基礎構造における第1杭の配置部分の平面図
【
図3】本実施形態の杭基礎構造における第2杭の配置部分の平面図
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の実施形態について図面に基づいて説明する。
図1に示すように、本実施形態の杭基礎構造(以下「本杭基礎構造」と呼ぶ。)は、建物1におけるコンクリート基礎5に杭頭11,21が接合されて当該建物1の荷重を支持する複数の杭10,20として、第1杭10と第2杭20とを備えたものとして構成されている。
【0018】
本実施形態では、コンクリート基礎5の基礎梁6において、建物1の外周側1aに位置する部分を外周側基礎梁部分6Aと呼び、その内側に位置する部分を内側基礎梁部分6Bと呼ぶ。そして、第1杭10は、外周側基礎梁部分6Aに杭頭11が接合された外周側杭10として設けられており、一方、第2杭20は、内側基礎梁部分6Bに杭頭が接合された内側杭20として設けられている。
そして、本杭基礎構造は、安全性を確保しながら、施工性及び経済性を向上するための特徴構成を採用しており、その詳細について以下に説明する。
【0019】
外周側杭10及び内側杭20の夫々は、コンクリート基礎5に対して杭頭11,21を接合する杭頭接合部15,25の構成が互いに異なるものとして構成されており、これら夫々の杭頭接合部15,25は、以下の固定度及び引抜抵抗力が適宜異なるものに設定されている。詳しくは、杭頭接合部15,25におけるコンクリート基礎5に対する杭頭11,21の固定度については、外周側杭10が内側杭20よりも小さいものに設定されている。一方、杭頭接合部15,25におけるコンクリート基礎5に対する杭頭11,21の引抜抵抗力については、外周側杭10が内側杭20よりも大きいものに設定されている。
【0020】
本杭基礎構造では、上述のような固定度及び引抜抵抗力の夫々の関係を実現するために、外周側杭10の杭頭接合部15は後述する杭頭芯材接合部として構成されており、一方、内側杭20の杭頭接合部25は後述する杭頭半剛接合部として構成されている。
【0021】
即ち、
図1及び
図2に示すように、外周側杭10の杭頭芯材接合部15は、複数のスタッドボルト17を外周に有する芯材16の下端部を杭頭11に埋め込んで定着させると共に、同じく複数のスタッドボルト17を外周に有する芯材16の上端部をコンクリート基礎5の外周側基礎梁部分6Aに埋め込んで定着させるように構成されている。尚、杭頭芯材接合部15としては、上記芯材16としてコンクリート充填鋼管(CFT)を利用した公知の杭頭CFT接合部(例えば特許第6941492号公報を参照。)が採用されている。また、この芯材16は、上方に延長されて外周側基礎梁部分6A上に構築されるコンクリート充填鋼管造の柱7Aとなる。そして、このような杭頭芯材接合部15は、杭頭11とコンクリート基礎5(外周側基礎梁部分6A)とを一体化させるための杭頭補強筋を省略した合理的な構成を採用しながら、上記固定度が比較的小さく設定されると共に、上記引抜抵抗力が比較的大きく設定されることになる。
【0022】
一方、
図1及び
図3に示すように、内側杭20の杭頭半剛接合部25は、杭頭補強筋が省略された杭頭21を、コンクリート基礎5の内側基礎梁部分6Bに構築されたフーチング6Baに埋設させて構成されている。かかる杭頭半剛接合部25としては、公知の杭頭半剛接合部(例えば特許第6648990号公報を参照。)が採用されている。そして、このような杭頭半剛接合部25は、杭頭21とコンクリート基礎5(フーチング6Ba)とを一体化させるための杭頭補強筋を省略した合理的な構成を採用しながら、上記固定度を比較的大きく設定されると共に、上記引抜抵抗力が比較的小さく設定されることになる。尚、フーチング6Ba上には柱7Bが構築される。
【0023】
上述のような構成を採用することにより、本杭基礎構造において、コンクリート基礎5から伝達される水平力については、主に、外周側杭10の杭頭CFT接合部15よりも上記固定度が大きい杭頭半剛接合部25を採用した内側杭20により抵抗されることになる。一方、コンクリート基礎5から伝達される引抜力については、主に、内側杭20の杭頭半剛接合部25よりも上記引抜抵抗力が大きい杭頭CFT接合部15を採用した外周側杭10により抵抗されることになる。そして、本杭基礎構造は、コンクリート基礎5から伝達される水平力と引抜力とを外周側杭10と内側杭20とに分けて負担させるので、これら外周側杭10及び内側杭20の夫々において、固定度や引抜抵抗力を確保するための杭頭補強筋等の構成が省略又は簡素化されている。
更に、比較的大きい引抜抵抗力を実現するべく比較的高価となる外周側杭10が、全ての杭10,20のうちの一部に制限されているので、施工コストが削減されている。また、外周側杭10では、内側杭20と比較して固定度が小さいことで水平力の伝達が抑制された状態となる。このことで、外周側杭10の上下中間部である中杭部における過剰な曲げ応力の発生が抑制されている。
【0024】
軸力が比較的小さいことで引抜力が大きくなり易い外周側杭10の杭頭CFT接合部15は、内側杭20の杭頭半剛接合部25と比べて、上記固定度が小さいが上記引抜抵抗力が大きいものとされている。よって、建物1の外周側1aでは、コンクリート基礎5の外周側基礎梁部分6Aから伝達される比較的大きな引抜力を外周側杭10により適切に負担しながら、当該外周側基礎梁部分6Aから外周側杭10に伝達される水平力が小さくなって、当該外周側基礎梁部分6Aに生じる曲げ応力が軽減されている。このことで、外周側基礎梁部分6Aでは、フーチングが省略されており外周側基礎梁部分6Aに対して直接的に外周側杭10の杭頭11が接続されている。
【0025】
一方、軸力が比較的大きいことで引抜力が大きくなり難い内側杭20の杭頭半剛接合部25は、上記外周側杭10として構成された外周側杭10と比べて上記引抜抵抗力は小さいが上記固定度が大きい。よって、建物1の内側1bにおいて、内側杭20の杭頭半剛接合部25における杭頭補強筋を省略しながら、コンクリート基礎5の内側基礎梁部分6Bに構築されたフーチング6Baから伝達される比較的大きな水平力を内側杭20により適切に負担することができる。
【0026】
コンクリート基礎5において、建物1の外周側1aに位置する外周側基礎梁部分6Aには、引抜抵抗力が比較的大きいが固定度が比較的小さい杭頭CFT接合部15を採用した外周側杭10の杭頭11が接合される。一方、コンクリート基礎5において、建物1の内側1bに位置する内側基礎梁部分6Bには、引抜抵抗力が比較的小さいが固定度が比較的大きい杭頭半剛接合部25を採用した内側杭20の杭頭21が接合される。
このことで、外周側基礎梁部分6Aが、内側基礎梁部分6Bと比べて、曲げ応力が軽減された状態となる。このことを利用して、本杭基礎構造では、
図1に示すように、コンクリート基礎5を構成する基礎梁6において、外周側基礎梁部分6Aの梁成Haが、内側基礎梁部分6Bの梁成Hbよりも小さいものに設定されており、夫々の生じる曲げ応力がこれら基礎梁部分6A,6Bにて適切に処理されている。
【0027】
建物1の外周側1aでは、外周側基礎梁部分6Aに隣接して山留8が配置されるが、当該外周側基礎梁部分6Aが比較的コンパクトなものとなるので、山留8の長さや断面を小さくして当該山留8の施工コストの削減が図られている。更に、外周側基礎梁部分6Aでは、外周側杭10の杭頭11が接続されるフーチングが省略されているので、それに隣接する山留8が直線的に配置されており、山留8の施工コストの一層の削減が図られている。
【0028】
〔別実施形態〕
本発明の他の実施形態について説明する。尚、以下に説明する各実施形態の構成は、それぞれ単独で適用することに限らず、他の実施形態の構成と組み合わせて適用することも可能である。
【0029】
(1)上記実施形態では、建物1の外周側1aに配置された外周側杭10を、引抜抵抗力が比較的大きいが固定度が比較的小さい杭頭接合部15を有する第1杭とし、建物1の内側1bに配置された内側杭20を、引抜抵抗力が比較的小さいが固定度が比較的大きい第2杭としたが、外周側杭10以外を上記第1杭としたり、内側杭20以外を上記第2杭としたりなど、外周側1aか内側1bかに関わらず第1杭及び第2杭を適宜配置しても構わない。
【0030】
(2)上記実施形態では、外周側杭10の杭頭芯材接合部15として、芯材16としてのコンクリート充填鋼管(CFT)の上端部をコンクリート基礎5に定着させてなる杭頭CFT接合部を採用したが、H形鋼などのコンクリート充填鋼管以外の芯材16を採用した杭頭芯材接合部を採用しても構わない。
【0031】
(3)上記実施形態では、外周側基礎梁部分6Aの梁成Haを内側基礎梁部分6Bの梁成Hbよりも小さいものに設定したが、これらの梁成Ha,Hbについては、同じものに設定するなど適宜変更しても構わない。
【0032】
(4)上記実施形態では、第1杭(外周側杭)10の杭頭接合部15として杭頭芯材接合部を採用することで、当該杭頭接合部15における引抜抵抗力を比較的大きいものしながら固定度を比較的小さいものとしたが、同様の引抜抵抗力及び固定度を実現可能な範囲内において、第1杭(外周側杭)10の杭頭接合部15の構成を適宜変更しても構わない。
【0033】
(5)上記実施形態では、第2杭(内側杭)20の杭頭接合部25として杭頭半剛接合部を採用することで、当該杭頭接合部25における引抜抵抗力を比較的小さいものしながら固定度を比較的大きいものとしたが、同様の引抜抵抗力及び固定度を実現可能な範囲内において、第2杭(内側杭)30の杭頭接合部25の構成を適宜変更しても構わない。
【符号の説明】
【0034】
1 建物
1a 外周側
1b 内側
5 コンクリート基礎
6 基礎梁
6A 外周側基礎梁部分
6B 内側基礎梁部分
6Ba フーチング(内側基礎梁部分)
10 外周側杭(第1杭)
11 杭頭
15 杭頭CFT接合部(杭頭芯材接合部)
16 芯材
20 内側杭(第2杭)
21 杭頭
25 杭頭半剛接合部
Ha 梁成
Hb 梁成