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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024171010
(43)【公開日】2024-12-11
(54)【発明の名称】吹付け方法
(51)【国際特許分類】
   E04B 1/94 20060101AFI20241204BHJP
【FI】
E04B1/94 E
E04B1/94 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023087839
(22)【出願日】2023-05-29
(71)【出願人】
【識別番号】000000549
【氏名又は名称】株式会社大林組
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】瀬川 紘史
(72)【発明者】
【氏名】池田 雄一
(72)【発明者】
【氏名】坂上 肇
【テーマコード(参考)】
2E001
【Fターム(参考)】
2E001DE01
2E001FA01
2E001FA14
2E001GA06
2E001JA01
2E001JA22
2E001QA01
(57)【要約】
【課題】ムラが少ない状態で被覆材を被覆するための吹付け方法を提供する。
【解決手段】吹付け装置20のロボットアーム25の先端部に取り付けた吹付けノズル30を用いて、H形鋼の梁50に被覆材を吹付ける。この場合、梁50の下面に対して、斜め下方に配置した吹付けノズル30から、斜め上方に向かって、奥側から手前側が厚くなるように、被覆材を吹付けることにより第1層61を形成する。その後、第1層61の下面に対して、第1面を吹付ける方向とは線対称となるように、吹付けノズル30から、斜め上方に向かって、奥側から手前側が厚くなるように、被覆材を吹付ける。これにより、第1層61と一体化する第2層71を形成する。
【選択図】図10
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロボットアームの先端部に取り付けた吹付けノズルを用いて、建築部材に被覆材を吹付ける吹付け方法であって、
前記建築部材の下面に対して、前記下面に直交する鉛直面に対向する第1方向からの第1吹付方法で、前記吹付けノズルから前記被覆材を吹付けることにより第1層を形成し、
前記下面に対して、前記鉛直面に対して前記第1方向と反対となる第2方向からの第2吹付方法で、前記吹付けノズルから前記被覆材を吹付けることにより、前記第1層と一体化する第2層を形成することを特徴とする吹付け方法。
【請求項2】
前記第1吹付方法は、前記下面の第1面側の下方に位置させた前記吹付けノズルから、第1面側の奥から手前に従って厚くなるように、前記下面に対して斜め上方に向けて吹付ける方法であって、
前記第2吹付方法は、前記第1面と対向する第2面側の下方に位置させた前記吹付けノズルから、前記第2面側の奥から手前に従って厚くなるように、前記下面に対して斜め上方に向けて吹付ける方法であることを特徴とする請求項1に記載の吹付け方法。
【請求項3】
前記手前側の間隔が狭くなる経路で、前記下面の長手方向に、前記吹付けノズルを移動させながら、前記被覆材を吹付けることにより、前記第1層及び前記第2層を形成することを特徴とする請求項1又は2に記載の吹付け方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、梁等の建築部材に対して、断熱材等の被覆材を吹付ける吹付け方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ロボットを用いて、鉄骨梁等の建築部材の表面を、ロックウール等の耐火被覆材で被覆することにより、耐火仕上げを行なうことがある。この場合、ロボットによる被覆材の被覆を高精度で効率的に行なう吹付け装置が検討されている(例えば、特許文献1参照。)。この特許文献1に記載の吹付け装置は、吹付け手段を備える多関節構造のロボットアームと、このロボットアームを支持する走行部と、を有する。更に、この吹付け装置の走行部は、ロボットアームを昇降する昇降装置と、走行部上で施工対象面に沿う方向にロボットアームを移動させる横行装置と、を備える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-20206号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、吹付けを行なう建築部材の形状や箇所によっては、被覆材を均等に吹付けることが難しいことがある。例えば、建築部材の下面に対して、被覆材を真下から吹付けた場合には、吹付けた被覆材が重力により垂れ下がるため、吹き付けた被覆材が剥落する落綿が生じる可能性もある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決する吹付け方法は、ロボットアームの先端部に取り付けた吹付けノズルを用いて、建築部材に被覆材を吹付ける吹付け方法であって、前記建築部材の下面に対して、前記下面に直交する鉛直面に対向する第1方向からの第1吹付方法で、前記吹付けノズルから前記被覆材を吹付けることにより第1層を形成し、前記下面に対して、前記鉛直面に対して前記第1方向と反対となる第2方向からの第2吹付方法で、前記吹付けノズルから前記被覆材を吹付けることにより、前記第1層と一体化する第2層を形成する。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、ムラが少ない状態で被覆材を被覆することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】実施形態における吹き付け装置の構成を説明する模式図である。
図2】実施形態のハードウェア構成の説明図である。
図3】実施形態におけるH形鋼の梁の被覆材を形成する吹付け処理の処理手順を説明する流れ図である。
図4】実施形態におけるH形鋼の梁の下フランジの下面に被覆材を形成する吹付け処理を説明する説明図である。
図5】実施形態におけるH形鋼の梁の延在方向の吹付け部の移動軌跡を説明する説明図である。
図6】実施形態におけるH形鋼の梁のウェブの第1面(右側面)に被覆材を形成する吹付け処理を説明する説明図である。
図7】実施形態におけるH形鋼の梁の上フランジの下面及び側面(小端)に被覆材を形成する吹付け処理を説明する説明図である。
図8】実施形態におけるH形鋼の梁の下フランジの上面に被覆材を形成する吹付け処理を説明する説明図である。
図9】実施形態におけるH形鋼の梁の下フランジの側面(小端)に被覆材を形成する吹付け処理を説明する説明図である。
図10】実施形態におけるH形鋼の梁の下フランジの下面に被覆材を形成する吹付け処理を説明する説明図である。
図11】実施形態におけるH形鋼の梁のウェブの第2面(左側面)に被覆材を形成する吹付け処理を説明する説明図である。
図12】実施形態におけるH形鋼の梁の上フランジの下面及び側面(小端)に被覆材を形成する吹付け処理を説明する説明図である。
図13】実施形態におけるH形鋼の梁の下フランジの上面に被覆材を形成する吹付け処理を説明する説明図である。
図14】実施形態におけるH形鋼の梁の下フランジの側面(小端)に被覆材を形成する吹付け処理を説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図1図14を用いて、被覆材の施工方法を具体化した一実施形態を説明する。本実施形態では、建築部材としてのH形鋼で構成された鉄骨梁に対して、ロックウール等の耐火被覆材や断熱材等の被覆材を吹付ける吹付け方法として説明する。
【0009】
図1に示すように、本実施形態の吹付け装置20は、本体部21及び端末装置40を備えている。端末装置40は、吹付け装置20の本体部21に内蔵されている。
(ハードウェア構成例)
図2は、端末装置40等として機能する情報処理装置H10のハードウェア構成例である。
【0010】
情報処理装置H10は、通信装置H11、入力装置H12、表示装置H13、記憶装置H14、プロセッサH15を有する。なお、このハードウェア構成は一例であり、他のハードウェアを有していてもよい。
【0011】
通信装置H11は、他の装置との間で通信経路を確立して、データの送受信を実行するインターフェースであり、例えばネットワークインターフェースや無線インターフェース等である。
【0012】
入力装置H12は、ユーザの入力を受け付ける装置であり、例えばマウスやキーボード等である。
表示装置H13は、各種情報を表示するディスプレイやタッチパネル等である。
記憶装置H14は、端末装置40の各種機能を実行するためのデータや各種プログラムを格納する。記憶装置H14の一例としては、ROM、RAM、ハードディスク等がある。
【0013】
プロセッサH15は、記憶装置H14に記憶されるプログラムやデータを用いて、端末装置40における各処理を制御する。プロセッサH15の一例としては、CPUやMPU等がある。このプロセッサH15は、ROM等に記憶されるプログラムをRAMに展開して、各種処理に対応する各種プロセスを実行する。例えば、プロセッサH15は、端末装置40のアプリケーションプログラムが起動された場合、後述する各処理を実行するプロセスを動作させる。
【0014】
プロセッサH15は、自身が実行するすべての処理についてソフトウェア処理を行なうものに限られない。例えば、プロセッサH15は、自身が実行する処理の少なくとも一部についてハードウェア処理を行う専用のハードウェア回路(例えば、特定用途向け集積回路:ASIC)を備えてもよい。すなわち、プロセッサH15は、以下で構成し得る。
【0015】
[1]コンピュータプログラム(ソフトウェア)に従って動作する1つ以上のプロセッサ
[2]各種処理のうち少なくとも一部の処理を実行する1つ以上の専用のハードウェア回路
[3]それらの組み合わせ、を含む回路(circuitry)
【0016】
プロセッサH15は、CPU並びに、RAM及びROM等のメモリを含み、メモリは、処理をCPUに実行させるように構成されたプログラムコード又は指令を格納している。メモリすなわちコンピュータ可読媒体は、汎用又は専用のコンピュータでアクセスできるあらゆる利用可能な媒体を含む。
【0017】
(吹付け装置20の構成)
図1に示すように、吹付け装置20は、本体部21及びロボットアーム25を備える。
本体部21の下端部には、走行部が設けられている。この走行部は、回転可能な離間した4個の車輪22を有する。これら車輪22には回転を止めるストッパ(図示せず)が設けられており、移動先等の任意の位置で吹付け装置20を据え付けることができる。
【0018】
本体部21は、昇降装置を内蔵するとともに横行装置23を備えている。昇降装置は、ロボットアーム25の下端部の高さを昇降する。横行装置23は、吹付け装置20の長手方向(図1の紙面と直交する方向)に沿って、ロボットアーム25の下端部が取り付けられたベース部を、移動させる装置である。このため、横行装置23は、ベース部を摺動可能に嵌合した長手方向に延長するフレーム部を備えている。
【0019】
ロボットアーム25は、6軸自由度の多関節構造を有する。このロボットアーム25の先端には、取付部材27を介して吹付けノズル30が取り付けられている。吹付けノズル30は、筒状の本体部31及び吐出部としてのガンヘッド32を備える。ガンヘッド32は、本体部31の先端に固定される。本体部31のガンヘッド32と反対側には、被覆材を供給する供給ホースが連結される。本実施形態のガンヘッド32は、被覆材を施工対象面に向けて吹付ける。ここで、被覆材としては、グラスウールやモルタル等の耐火被覆材を用いる。なお、吹付けノズル30のガンヘッド32から施工対象面までのベクトルV1の距離が吹付け離間距離L0、施工対象面に対してガンヘッド32が成す角度が吹付け角θsである。
そして、吹付け装置20は、端末装置40によって制御される。
【0020】
(端末装置40の構成)
端末装置40は、制御部41及びジョブデータ記憶部42を備える。
この制御部41は、後述する処理(制御管理段階、配置制御段階及び吐出制御段階等を含む処理)を行なう。このための吹付け処理プログラムを実行することにより、制御部41は、管理部411、配置制御部412及び吐出制御部413等として機能する。
【0021】
管理部411は、配置制御部412及び吐出制御部413の制御を管理する。
配置制御部412は、吹付けノズル30のガンヘッド32の位置及び向きを実現するために、ジョブファイルに基づいて、ロボットアーム25の先端部26の位置や向き等の動作を制御する処理を実行する。この場合、配置制御部412は、ロボットアーム25の動きだけでは高さ方向の動きを実現できない場合には、吹付け装置20の昇降装置も制御する。更に、配置制御部412は、梁50の延在方向への移動においては、横行装置23を制御する。
【0022】
吐出制御部413は、吹付けノズル30から被覆材を吐出して吹付け処理を実行する。本実施形態では、吐出制御部413は、予め定めた吐出条件となるように制御を行なう。
【0023】
ジョブデータ記憶部42は、ジョブファイルを記憶している。本実施形態では、ジョブファイルには、後述する吹付け処理を実現するために、ロボットアーム25の先端部26の位置(座標)及び向き等に関する配置情報及び各配置に対応した吐出条件等が記録されている。
【0024】
(吹付け処理)
次に、図3図14を用いて、上述した構成の吹付け装置20を用いた吹付け処理について説明する。
【0025】
ここで、図4に示すように、梁50の上フランジ51の上は、天井スラブC1が形成されている。この吹付け処理においては、まず、梁50の第1面側(右側)に、吹付け装置20を配置して、梁50の右側の面を先行して吹付けた後、反対側となる第2面側(左側)に、吹付け装置20を配置して吹付けを行なう。
【0026】
このため、まず、吹付け装置20を、梁50のウェブ55よりも第1面側(右側)に配置する。この場合、吹付け装置20の横行装置23の長手方向が梁50の延在方向と平行となるように配置した後、ストッパで走行部の車輪22を固定する。
【0027】
そして、図3及び図4に示すように、吹付け装置20の制御部41は、梁50の下フランジ52の下面(小端に接続する接続面)に対して、吹付け装置20に近い手前側が厚くなるように、被覆材を吹付ける(ステップS11)。これが、下面に直交する鉛直面に対向する第1方向からの第1吹付方法に相当する。具体的には、制御部41の配置制御部412は、下フランジ52の第1面側(右側)の下方に吹付けノズル30のガンヘッド32を配置する。この場合、このガンヘッド32から吐出される被覆材の吐出方向が、下フランジ52の延在方向(水平方向)に対して第1面側(右側)から上方に向かった角度θ1となる向きに、吹付けノズル30の姿勢を制御する。
【0028】
そして、制御部41の吐出制御部413が、ガンヘッド32から被覆材を一定条件で吐出しながら、制御部41の配置制御部412は、吹付けノズル30を移動させる。ここでは、角度θ1で斜め上方に向いた姿勢のまま、吹付けノズル30を、梁50の延在方向に沿って移動させながら奥側から手前側に移動させる。具体的には、吹付けノズル30を、梁50の延在方向(順方向)に端から反対側の端まで移動させた後、手前側に移動させ、ここから反対側の端まで延在方向(逆方向)に移動させた後、手前に移動させることを繰り返す。この場合、配置制御部412は、梁50の延在方向に移動させるときには、横行装置23を駆動させることにより、ロボットアーム25のベース部を梁50の延在方向に移動するように制御する。また、配置制御部412は、手前側に移動させるときには、ロボットアーム25の姿勢を変更する。
【0029】
図5は、下フランジ52の下面を下から見た図である。この図においては、ガンヘッド32から吐出される被覆材の吐出方向のベクトルと、吹付け対象の下フランジ52の下面との交点の軌跡T1を示している。このように、梁50の延在方向の端までガンヘッド32を移動させた後、この端から手前側(ここでは第1面側)に、吹付け間隔分、移動させることを繰り返す。このステップS11においては、手前側が徐々に積み重なるように、手前側(第1面側)における吹付け間隔L1,L2,L3,L4が徐々に狭くなるように設定する(L1>L2>L3>L4)。これにより、図6に示すように、第1面側の厚みが徐々に厚くなる第1層61を形成する。
【0030】
次に、吹付け装置20は、梁50のウェブ55の第1面側(右側)の側面に対して、側方から被覆材を吹付ける(ステップS12)。具体的には、まず、制御部41の配置制御部412は、ウェブ55の垂直方向に対する角度θ21を90度とした側方から、被覆材を吹付けるように、吹付けノズル30の姿勢を制御する。
【0031】
そして、吹付けノズル30を、下方から上方に移動させながら、被覆材を吹付ける。この場合、制御部41の配置制御部412は、ウェブ55の下方において、横行装置23を制御することにより、梁50の延在方向に沿って端から端まで吹付けノズル30を移動させる。その後、制御部41の配置制御部412は、吹付け間隔分、上方に移動させる。この場合、制御部41の吐出制御部413は、吹付け間隔が等間隔で被覆材の被覆が均一となるような吹付け条件で吹付けを行なう。このような処理を繰り返すことにより、ウェブ55の第1面(右側面)に対して、下方から上方に徐々に被覆材を吹付ける。
【0032】
そして、ウェブ55の最上部を吹付ける場合には、吹付けノズル30を、ウェブ55に対して角度θ22となる姿勢(第1面側の下方から斜めに向かう姿勢)に変更した状態で、梁50の延在方向に移動しながら、被覆材を吹付ける。これにより、第1ウェブ被覆層62の形成が終了する。
【0033】
次に、図7に示すように、吹付け装置20は、梁50の上フランジ51の下面(小端に接続する接続面)及び側面(小端)に対して、斜め下方から、被覆材を吹付ける(ステップS13)。ここでは、上フランジ51の水平方向に対して角度θ3で吹付ける。この角度θ3は、吹付けノズル30が、ウェブ55の上端部に対して吹付けした傾きよりも更に上方を向く角度である。具体的には、制御部41の配置制御部412は、第1ウェブ被覆層62と上フランジ51との接続部に向けて、角度θ3の下方から斜めになる姿勢に、吹付けノズル30の姿勢を制御する。そして、配置制御部412は、この姿勢のまま、梁50の延在方向に端から端まで移動させた後、吹付け間隔分、図7の右側(ウェブ55とは反対側)に移動させる。そして、再び、梁50の延在方向に端から端まで移動させた後、吹付け間隔分、右側に移動させることを繰り返す。この場合、制御部41の吐出制御部413は、吹付け間隔が等間隔で被覆材の被覆が均一となるような吹付け条件で吹付けを行なう。
【0034】
そして、上フランジ51の下面に対する吹付けから続けて上フランジ51の側面(小端)に対する吹付けを行なう。この場合においても、梁50の延在方向に端から端まで移動させながら吹付けを行なう。
以上により、上フランジ51の下面被覆層63、角被覆層64及び後続被覆層としての側面被覆層65が形成される。
【0035】
次に、図8に示すように、吹付け装置20は、梁50の下フランジ52の上面(小端に接続する接続面)に対して、斜め上方から、被覆材を吹付ける(ステップS14)。ここでは、水平方向に延在する下フランジ52に対して角度θ4で吹付ける。具体的には、制御部41の配置制御部412は、斜め上方に向いていた吹付けノズル30を、第1ウェブ被覆層62と下フランジ52との接続部に対して向くように(角度θ4の斜め下方に向くように)姿勢を制御する。そして、配置制御部412は、この姿勢の吹付けノズル30を、梁50の延在方向に沿って端から端まで移動した後、吹付け間隔分、図8の右側(ウェブ55とは反対側)に移動させることを繰り返す。この場合においても、制御部41の吐出制御部413は、吹付け間隔が等間隔で被覆材の被覆が均一となるような吹付け条件で吹付けを行なう。
以上により、下フランジ52の上面被覆層66が形成される。
【0036】
次に、図9に示すように、吹付け装置20は、梁50の下フランジ52の側面(小端)に対して、側方から、被覆材を吹付ける(ステップS15)。具体的には、まず、下フランジ52の上面の第1面側の端部の吹付けに続けて、吹付けノズル30を、水平方向となるように回転させる。
【0037】
そして、吹付けノズル30を、上方から下方に移動させながら、下フランジ52の側面(小端)に対して、角度θ5が90度となる側方から被覆材を吹付ける。具体的には、制御部41の配置制御部412は、梁50の延在方向に沿って端から端まで吹付けノズル30を移動させた後、吹付け間隔分、下方に移動させることを繰り返す。この場合、制御部41の吐出制御部413は、吹付け間隔が等間隔でウェブ55に吹付ける被覆材が均一となるような吹付け条件で吹付けを行なう。これにより、下フランジ52の側面に、後続被覆層としての側面被覆層67が形成される。この側面被覆層67は、先に形成された上面被覆層66の被覆材と絡み合って一体化される。
【0038】
その後、吹付け装置20を、梁50の第1面の反対側の第2面側(左側)に配置する。この場合にも、吹付け装置20の横行装置23の長手方向が梁50の延在方向と平行となるように配置した後、ストッパで走行部の車輪22を固定する。
【0039】
そして、梁50の第2面側に対して、第1面側と、ほぼ同じ吹付け処理を実行する。
具体的には、図10に示すように、まず、吹付け装置20は、梁50の下フランジ52の下面(小端に接続する接続面)を、手前側が厚くなるように、被覆材を吹付ける(ステップS16)。これが、鉛直面に対して第1方向と反対となる第2方向からの第2吹付方法に相当する。ここでは、ステップS11とは、ウェブ55に対して線対称となるように、第2面側(左側)から上方に向かった角度θ1で、吹付けノズル30から被覆材を吹付ける。この場合、ステップS11と同様な吹付け処理を実行する。ただし、この場合には、下フランジ52の下面に先に形成された第1層61と一体化されて下面が平らとなるように吹付ける。これにより、第2面側の厚みが徐々に厚くなる第2層71が形成される。この第2層71は、第1層61と一体化した下面被覆層81を、下フランジ52の下面に形成する。
【0040】
次に、図11に示すように、吹付け装置20は、梁50のウェブ55の第2面側(左側)の側面に対して、側方から被覆材を吹付ける(ステップS17)。ここでは、ステップS12と同様に、下方において角度θ21の方向から吹付けた後、下方から上方に移動しながら、被覆材を吹付ける。更に、ウェブ55の最上部の移動軌跡においては、第2面側の下方から斜めに角度θ22で被覆材を吹付ける。これにより、第2ウェブ被覆層72が形成される。
【0041】
そして、図12に示すように、吹付け装置20は、梁50の上フランジ51の下面(小端に接続する接続面)及び側面(小端)に対して、斜め下方から、被覆材を吹付ける(ステップS18)。ここでは、ステップS13と同様に、上フランジ51の水平方向に対して角度θ3で吹付ける。そして、上フランジ51の下面に対する吹付けから続けて上フランジ51の側面に対する吹付けを行なう。これにより、上フランジ51の下面被覆層73、角被覆層74及び後続被覆層としての側面被覆層75が形成される。
【0042】
次に、図13に示すように、吹付け装置20は、梁50の下フランジ52の上面(小端に接続する接続面)に対して、斜め上方から、被覆材を吹付ける(ステップS19)。ここでは、ステップS14と同様に、下フランジ52の水平方向に対して角度θ4で、左側(ウェブ55とは反対側)に移動させながら吹付けを行なう。これにより、下フランジ52の上面被覆層76が形成される。
【0043】
次に、図14に示すように、吹付け装置20は、梁50の下フランジ52の側面(小端)に対して、側方から、被覆材を吹付ける(ステップS20)。ここでは、ステップS15と同様に、吹付けノズル30の方向を回転させた後、梁50の延在方向及び下方に順次、移動させながら吹付ける。これにより、下フランジ52の後続被覆層としての側面被覆層77が形成される。
【0044】
(作用)
梁50の下フランジ52の下面に対して、第1面側(右側)から手前側が厚くなるように、吹付けノズル30を斜め上方に向けて吹付けることにより、第1層61を形成する。その後、下フランジ52の下面に対して、第1面の反対側の第2面側(左側)から手前側が厚くなるように、吹付けノズル30を、斜め上方に向けて吹付ける。これにより、下フランジ52の下面に、先に形成した第1層61と、これに一体化した第2層71とによって下面被覆層81が均一な厚みになる。
【0045】
本実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1)本実施形態の吹付け方法においては、梁50の下フランジ52の下面に対して、第1面側(右側)から手前側が厚くなるように、吹付けノズル30を斜め上方に向けて吹付ける。これにより、第1層61を形成する。その後、下フランジ52の下面に対して、第1面の反対側の第2面側(左側)から手前側が厚くなるように、吹付けノズル30を、斜め上方に向けて吹付ける。これにより、下フランジ52の下面に、先に形成した第1層61と一体化して第2層71を形成するので、落綿し難い被覆材を形成することができる。
【0046】
(2)本実施形態の吹付け方法においては、梁50の下フランジ52の下面に被覆材を吹付ける際には、手前側の吹付け間隔が狭くなるように、吹付けノズル30を梁50の延在方向に移動させる。これにより、効率的に、下フランジ52の奥側を薄く、手前側を厚くなるような吹付けを行なうことができる。
【0047】
(3)本実施形態の吹付け方法においては、第2面側から下フランジ52の下面に対して吹付けノズル30を吹付ける前に、第1層61の端に一体化する側面被覆層67を形成する。この側面被覆層67は、上面被覆層66と一体化されているため、第1層61に一体化して重くなる第2層71を形成する前に、第1層61の端を固定するので、形成する第2層71が落綿し難くすることができる。
【0048】
(4)本実施形態の吹付け方法は、梁50の下フランジ52の下面に形成した第1層61及び下フランジ52の上面に形成した上面被覆層66を形成した後、下フランジ52の側面(小端)に対して、吹付けノズル30から吐出される被覆材を側方から吹付ける。これにより、下フランジ52の側面の側面被覆層67は、既に形成されている第1層61及び上面被覆層66に絡みながら一体化されるため、落綿し難くなる。
【0049】
(5)本実施形態の吹付け方法は、梁50の上フランジ51の下面に対して、吹付けノズル30は、斜め上方に向けて被覆材を吹付けることにより、下面被覆層63を形成する。そして、この下面被覆層63に続けて、吹付けノズル30は、斜め上方に向けて被覆材を吹付けることにより、角被覆層64及び側面被覆層65を形成する。これにより、上フランジ51の側面に吹付けられた被覆材は、既に形成されている下面被覆層63に絡みながら一体化されるため、落綿し難くなる。
【0050】
(6)本実施形態の吹付け方法は、梁50のウェブ55の第1面側に対して、下方から上方に吹付けノズル30を移動させながら吹付けを行なった後、上フランジ51の下面及び側面に対して吹付けを行なう。その後、下フランジ52の上面及び側面を吹付ける。これにより、広い面積のウェブ55に対して先に吹付けを行なった後に、他の箇所の吹付けを行なうことにより、被覆材を落綿し難くすることができる。
【0051】
(7)本実施形態の吹付け方法は、梁50の延在方向に、吹付けノズル30を移動させながら被覆材を吹付ける。これにより、吹付けノズル30からの被覆材の吹付け条件が安定した一定状態で長時間の吹付けを行なえるので、より均等な吹付けを行なうことができる。
【0052】
(8)本実施形態の吹付け方法は、第1面側において、梁50の下フランジ52の下面に吹付けした後、ウェブ55に対して下方から上方に向けて吹付けを行なう。そして、上フランジ51の下面及び側面に対して吹付けを行なった後、下フランジ52の上面及び側面を吹付ける。そして、吹付けノズル30は、梁50の下フランジ52の下方を通過して第2面側に移動した後、第2面側について、同様な処理で吹付けを行なう。これにより、第2面側の吹付け処理を、第1面側と同じ処理で行なうことができる。
【0053】
(9)本実施形態の吹付け方法は、第1面側の吹付け手順と同じ手順で、第1面と対向する第2面側も吹付けを実行する。これにより、梁50の全体の吹付け処理を簡素化することができる。
【0054】
本実施形態は、以下のように変更して実施することができる。本実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
・上記実施形態においては、下フランジ52の下面に対して、下方に配置された吹付けノズル30から、角度θ1の斜め上方に向けて吹付けを行なった。これに代えて、奥側から手前に移動するに従って、角度θ1を徐々に変更してもよい。例えば、手前側を吹付けるときの角度を、奥側を吹付けるときの角度より小さくすることにより、手前側の角度を垂直に近い角度としてもよい。ここで、手前側から吹付ける場合には、奥側まで広く吹付けることができるため、吹付けノズル30からの被覆材を、奥側がより薄くなるように吹付けることができる。
【0055】
・上記実施形態においては、下フランジ52の下面に対して吹付けを行なった後、ウェブ55の吹付けを行なった。これに代えて、ウェブ55の吹付けを最初に行なって、下フランジ52の下面への吹付けを最後に行なってもよい。これにより、大きな面積を有するウェブ55の側面を先に吹付けた後に、他の箇所の吹付けを行なうことにより、被覆材を落綿し難くすることができる。
【0056】
・上記実施形態では、梁50の全体を、ロボットアーム25に取り付けた吹付けノズル30を用いて、梁50の全体に対して被覆材を吹付けた。これに代えて、一部を人手で行なってもよい。例えば、下フランジ52の下面等の落綿し易い部分や吹付ける領域が狭い梁の下フランジ52の側面(小端)等については、ロボットで被覆材を被覆する前又は被覆した後に、技能工によって吹付けを行なってもよい。
【0057】
・上記実施形態では、建築部材として、H形鋼の梁50全体に対して吹付けを行なった。これに限らず、例えば、天井や角形鋼管の梁等の建築部材の下面に被覆材を吹付ける吹付け方法に適用してもよい。
【0058】
・上記実施形態では、被覆材としてロックウール等の断熱材を吹付けた。吹き付ける被覆材は、これに限られず、例えば、ガラスウール等の断熱材や塗料等を吹付けしてもよい。
【0059】
次に、上記実施形態及び別例から把握できる技術的思想について、以下に追記する。
(a)前記第2層を形成する前に、前記建築部材の他の部分を覆う被覆材に、前記第1層の一部を一体化させるように、前記他の部分に対して前記被覆材を吹付けることを特徴とする請求項1~3の何れか1項に記載の吹付け方法。
【0060】
(b)前記建築部材は、H形鋼の梁であって、前記下面は、前記梁の下フランジであって、前記下面に対して、前記吹付けノズルから前記被覆材を吹付けた直後に、前記梁のウェブに対して、前記吹付けノズルを、前記下方から上方へと移動させることにより吹付けを実行することを特徴とする請求項1~3の何れか1項又は前記(a)に記載の吹付け方法。
【0061】
(c)前記下面に対して、前記吹付けノズルは、予め定めた角度で前記被覆材を吹付けることを特徴とする請求項1~3の何れか1項、前記(a)又は(b)に記載の吹付け方法。
【符号の説明】
【0062】
θ1,θ21,θ22,θ3,θ4,θ5…角度、θs…吹付け角、C1…天井スラブ、L0…吹付け離間距離、L1,L2,L3,L4…吹付け間隔、T1…軌跡、V1…ベクトル、20…吹付け装置、21,31…本体部、22…車輪、23…横行装置、25…ロボットアーム、26…先端部、27…取付部材、30…吹付けノズル、32…ガンヘッド、40…端末装置、41…制御部、42…ジョブデータ記憶部、50…梁、51…上フランジ、52…下フランジ、55…ウェブ、61…先行被覆層としての第1層、62…第1ウェブ被覆層、63,73…先行被覆層としての下面被覆層、64,74…角被覆層、65,75,67,77…後続被覆層としての側面被覆層、66,76…先行被覆層としての上面被覆層、71…先行被覆層としての第2層、72…第2ウェブ被覆層、81…先行被覆層としての下面被覆層、411…管理部、412…配置制御部、413…吐出制御部。
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