(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024171014
(43)【公開日】2024-12-11
(54)【発明の名称】気密評価方法および該気密評価方法に使用される気密評価システムならびに評価用気体放出装置
(51)【国際特許分類】
G01M 3/20 20060101AFI20241204BHJP
【FI】
G01M3/20 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023087848
(22)【出願日】2023-05-29
(71)【出願人】
【識別番号】000198787
【氏名又は名称】積水ハウス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000947
【氏名又は名称】弁理士法人あーく事務所
(72)【発明者】
【氏名】岩山 遼太郎
【テーマコード(参考)】
2G067
【Fターム(参考)】
2G067AA19
2G067BB12
2G067CC04
2G067DD17
2G067EE15
(57)【要約】
【課題】気密評価対象空間の気密評価を容易に行うことを可能にする気密評価方法および該気密評価方法に使用される気密評価システムならびに評価用気体放出装置を提供する。
【解決手段】間仕切壁1の内部空間2に臭気発生装置4を設置し、該臭気発生装置4から間仕切壁1の内部空間2に臭気ガスを放出させる評価用気体放出ステップと、この評価用気体放出ステップの後、臭気発生装置4から間仕切壁1の内部空間2への臭気ガスの放出を停止した状態で、居住空間5において臭気センサ8によって臭気ガスの濃度を測定する測定ステップとを備える。臭気ガスの濃度を測定することにより、間仕切壁1の内部空間2の気密性が十分に得られているか否かを判定することができ、当該内部空間2の気密評価を容易に行うことが可能になる。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
気密評価対象空間の気密評価方法であって、
前記気密評価対象空間に評価用気体放出装置を設置し、該評価用気体放出装置から前記気密評価対象空間に評価用気体を放出させる評価用気体放出ステップと、
前記評価用気体放出ステップの後、前記気密評価対象空間に隣接する空間における前記評価用気体の濃度を測定する測定ステップと、を実施することを特徴とする気密評価方法。
【請求項2】
請求項1記載の気密評価方法において、
前記評価用気体は臭い分子を含んだ臭気ガスであり、
前記測定ステップでは、前記気密評価対象空間に隣接する前記空間において、臭気センサにより前記臭気ガスの濃度を測定することを特徴とする気密評価方法。
【請求項3】
請求項1または2記載の気密評価方法において、
前記評価用気体放出ステップでは、前記評価用気体放出装置から前記気密評価対象空間への前記評価用気体の放出を所定期間実施した後、当該評価用気体の放出を停止し、
前記測定ステップでは、前記気密評価対象空間に隣接する前記空間において測定された前記評価用気体の濃度が所定値を超えるか否かを判定し、その判定結果に応じて前記気密評価対象空間の気密評価を行うことを特徴とする気密評価方法。
【請求項4】
請求項1または2記載の気密評価方法において、
前記評価用気体放出装置は、磁力の作用によって、前記気密評価対象空間に前記評価用気体を放出させる状態と、前記気密評価対象空間への前記評価用気体の放出を停止させる状態とが切り替え可能となっており、
前記評価用気体放出ステップでは、前記気密評価対象空間に隣接する前記空間から前記評価用気体放出装置にN極およびS極のうち一方の磁力を作用させて当該気密評価対象空間に前記評価用気体を放出させる状態とし、その後、
前記気密評価対象空間に隣接する前記空間から前記評価用気体放出装置にN極およびS極のうち他方の磁力を作用させて当該気密評価対象空間への前記評価用気体の放出を停止させる状態とすることを特徴とする気密評価方法。
【請求項5】
請求項1または2記載の気密評価方法に使用される気密評価システムであって、
前記評価用気体の発生源を収容した前記評価用気体放出装置と、
前記気密評価対象空間に隣接する前記空間からの遠隔による切替操作によって前記評価用気体の放出および非放出を切り替える切替手段と、
前記測定ステップにおいて、前記気密評価対象空間に隣接する前記空間における前記評価用気体の濃度を測定する測定装置と、
を含んで構成されることを特徴とする気密評価システム。
【請求項6】
請求項5記載の気密評価システムにおいて、
前記切替手段は、
前記評価用気体放出装置から前記気密評価対象空間に前記評価用気体を放出させる位置と放出を停止させる位置との間で移動可能な移動磁石と、
前記気密評価対象空間に隣接する前記空間から前記移動磁石に磁力を作用させることによって、当該移動磁石を前記気密評価対象空間に前記評価用気体を放出させる位置と放出を停止させる位置との間で移動させる切替用磁石と、を備えていることを特徴とする気密評価システム。
【請求項7】
請求項1または2記載の気密評価方法に使用される評価用気体放出装置であって、
前記評価用気体を前記気密評価対象空間に放出するための開口を備えた筐体と、
前記筐体の内部に収容された評価用気体発生源と、
前記開口を閉塞する位置と開放する位置との間で移動可能な移動磁石とを備え、
前記移動磁石は、前記気密評価対象空間に隣接する前記空間からN極およびS極のうち一方の磁力の作用によって移動して前記開口を開放する位置となり、前記気密評価対象空間に隣接する前記空間からN極およびS極のうち他方の磁力の作用によって移動して前記開口を閉塞する位置となる構成とされていることを特徴とする評価用気体放出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、気密評価方法および該気密評価方法に使用される気密評価システムならびに評価用気体放出装置に係る。特に、本発明は、気密評価対象空間の気密評価を容易に行うための対策に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、住宅等の気密性の評価方法として、気密測定法(JIS-A2201「送風機による住宅等の気密性能試験方法」)やトレーサーガス減衰法等が知られている。前記気密測定法は、建物外皮(外壁、1階床、最上階等)の気密性を評価するためのものであり、送風機を用いて建物内外に圧力差を生じさせ、建物における気密性を評価するものである。また、トレーサーガス減衰法は、水道配管の漏れの確認や、室内の換気性能評価等に適した手法であって、例えば建物内にトレーサーガスを発生させ、換気によるガス濃度の時間変化を測定することにより、換気量を算定する手法である。これらの手法は何れも、機材やガスボンベ等が大型であり、評価に手間が掛かるものとなっていた。
【0003】
また、その他の気密評価方法として特許文献1および特許文献2が提案されている。特許文献1には、配管内を加圧することで該配管内の圧力を外部の圧力と異なる値に設定した後、該配管を気密状態にして、該配管内の圧力を予め設定された時間に亘って測定し、単位時間当たりの該配管内の圧力変化量に応じて配管内の気密性を評価することが開示されている。特許文献2には、建物を製造する過程で、建物内を延びるダクトを含む送風流路の施工状態を評価するための方法であって、閉空間が建材で閉じられる前に、ファンを用いて送風流路の入口に予め定められた風量で空気を供給し、送風流路の入口または出口での風量を測定し、この測定された風量と、該風量に対して予め定められた閾値とに基づいて、ダクトの施工状態を評価することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許6999201号公報
【特許文献2】特開2022-113241号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前述した気密測定法、トレーサーガス減衰法、および、各特許文献のものは、建物内における居住空間に隣接する非居住空間(間仕切壁の内部空間や天井裏空間)を対象とした気密評価方法ではない。間仕切壁にはコンセントや分電盤を設置するための開口が設けられていたり、天井にはダウンライトを設置するための開口が設けられていたりするため、この開口の気密処理が十分でない場合には、これら空間に存在する化学物質が居住空間に流入する状況を招いてしまう可能性がある。このため、この非居住空間を気密評価対象空間として気密性を簡易な手法で評価したいといったニーズが高まっている。
【0006】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、気密評価対象空間の気密評価を容易に行うことを可能にする気密評価方法および該気密評価方法に使用される気密評価システムならびに評価用気体放出装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記の目的を達成するための本発明の解決手段は、気密評価対象空間の気密評価方法を対象とする。そして、この気密評価方法は、前記気密評価対象空間に評価用気体放出装置を設置し、該評価用気体放出装置から前記気密評価対象空間に評価用気体を放出させる評価用気体放出ステップと、前記評価用気体放出ステップの後、前記気密評価対象空間に隣接する空間における前記評価用気体の濃度を測定する測定ステップと、を実施することを特徴とする。
【0008】
この特定事項により、評価用気体放出ステップでは、評価用気体放出装置から気密評価対象空間に評価用気体が放出される。この場合、気密評価対象空間の気密性が十分に得られている場合には、気密評価対象空間に隣接する空間に評価用気体が流れ出ることは殆ど無い。しかし、気密評価対象空間の気密性が十分に得られていない場合には、気密評価対象空間に隣接する空間に評価用気体が流れ出ることになる。測定ステップでは、気密評価対象空間に隣接する空間における評価用気体の濃度を測定し、その測定結果によって、気密評価対象空間に隣接する空間に評価用気体が流れ出る状況にあるか否かを判定する。これにより、気密評価対象空間の気密性が十分に得られているか否かを判定することができ、気密評価対象空間の気密評価を容易に行うことが可能である。
【0009】
また、前記評価用気体は臭い分子を含んだ臭気ガスであり、前記測定ステップでは、前記気密評価対象空間に隣接する前記空間において、臭気センサにより前記臭気ガスの濃度を測定する。
【0010】
これにより、臭い分子を含んだ臭気ガスを利用するといった比較的簡単な手法で気密評価対象空間の気密評価を行うことが可能になる。
【0011】
また、前記評価用気体放出ステップでは、前記評価用気体放出装置から前記気密評価対象空間への前記評価用気体の放出を所定期間実施した後、当該評価用気体の放出を停止し、前記測定ステップでは、前記気密評価対象空間に隣接する前記空間において測定された前記評価用気体の濃度が所定値を超えるか否かを判定し、その判定結果に応じて前記気密評価対象空間の気密評価を行う。
【0012】
これにより、気密評価対象空間の気密評価を高い精度で行うことが可能になる。
【0013】
また、前記評価用気体放出装置は、磁力の作用によって、前記気密評価対象空間に前記評価用気体を放出させる状態と、前記気密評価対象空間への前記評価用気体の放出を停止させる状態とが切り替え可能となっており、前記評価用気体放出ステップでは、前記気密評価対象空間に隣接する前記空間から前記評価用気体放出装置にN極およびS極のうち一方の磁力を作用させて当該気密評価対象空間に前記評価用気体を放出させる状態とし、その後、前記気密評価対象空間に隣接する前記空間から前記評価用気体放出装置にN極およびS極のうち他方の磁力を作用させて当該気密評価対象空間への前記評価用気体の放出を停止させる状態とする。
【0014】
これは、前記評価用気体放出装置から前記気密評価対象空間への前記評価用気体の放出を停止した状態で測定ステップを実施する場合の解決手段である。これによれば、評価用気体放出装置を直接的に操作することなく、気密評価対象空間に隣接する空間から評価用気体放出装置に磁力を作用させることによって、気密評価対象空間に評価用気体を放出させる状態と放出を停止させる状態とを切り替えることができる。このため、気密評価対象空間を施工した後であっても(例えば壁材によって気密評価対象空間を閉鎖空間として施工した後であっても)、気密評価対象空間に評価用気体を放出させる状態と放出を停止させる状態とを遠隔操作によって切り替えることが可能になる。
【0015】
また、前述した気密評価方法に使用される気密評価システムも本発明の技術的思想の範疇である。この気密評価システムは、前記評価用気体の発生源を収容した前記評価用気体放出装置と、前記気密評価対象空間に隣接する前記空間からの遠隔による切替操作によって前記評価用気体の放出および非放出を切り替える切替手段と、前記測定ステップにおいて、前記気密評価対象空間に隣接する前記空間における前記評価用気体の濃度を測定する測定装置と、を含んで構成されることを特徴とする。
【0016】
これにより、前述した気密評価方法を実施するためのシステム(気密評価システム)の実用化を図ることができる。
【0017】
前記切替手段の具体構成としては、前記評価用気体放出装置から前記気密評価対象空間に前記評価用気体を放出させる位置と放出を停止させる位置との間で移動可能な移動磁石と、前記気密評価対象空間に隣接する前記空間から前記移動磁石に磁力を作用させることによって、当該移動磁石を前記気密評価対象空間に前記評価用気体を放出させる位置と放出を停止させる位置との間で移動させる切替用磁石とを備えている。
【0018】
これにより、気密評価対象空間に隣接する空間から評価用気体放出装置に磁力を作用させることによって、気密評価対象空間に評価用気体を放出させる状態と放出を停止させる状態とを切り替えるための構成を具体化することができ、システム(気密評価システム)の実用性を高めることができる。
【0019】
また、前述した気密評価方法に使用される評価用気体放出装置も本発明の技術的思想の範疇である。この評価用気体放出装置は、前記評価用気体を前記気密評価対象空間に放出するための開口を備えた筐体と、前記筐体の内部に収容された評価用気体発生源と、前記開口を閉塞する位置と開放する位置との間で移動可能な移動磁石とを備え、前記移動磁石は、前記気密評価対象空間に隣接する前記空間からN極およびS極のうち一方の磁力の作用によって移動して前記開口を開放する位置となり、前記気密評価対象空間に隣接する前記空間からN極およびS極のうち他方の磁力の作用によって移動して前記開口を閉塞する位置となる構成とされている。
【0020】
これにより、前述した気密評価方法を実施するための評価用気体放出装置の実用化を図ることができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明では、評価用気体放出装置から気密評価対象空間に評価用気体を放出させ、気密評価対象空間に隣接する空間における評価用気体の濃度を測定することによって、気密評価対象空間の気密性が十分に得られているか否かを判定することができるようにしている。これにより、気密評価対象空間の気密評価を容易に行うことが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】間仕切壁の内部空間に臭気発生装置が設置された状態を示す概略図である。
【
図2】臭気放出停止状態にある臭気発生装置の内部構成を示す概略図である。
【
図3】臭気放出状態にある臭気発生装置の内部構成を示す概略図である。
【
図4】臭気発生装置を構成する各部材の磁極を説明するための断面図である。
【
図5】評価用気体放出ステップを説明するための
図1相当図である。
【
図6】測定ステップを説明するための
図1相当図である。
【
図7】気密評価方法の手順を説明するためのフローチャート図である。
【
図8】臭気センサによって検出される臭気ガスの濃度の変化の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。本実施形態は、気密評価対象空間を間仕切壁の内部空間(居住空間に隣接する非居住空間)として本発明を適用した場合について説明する。また、本実施形態は、気密評価のために使用する評価用気体を、臭い分子を含んだ臭気ガスとした場合を例に挙げて説明する。
【0024】
図1は、間仕切壁1の内部空間(気密評価対象空間)2に本発明に係る気密評価システム3を構成する臭気発生装置(評価用気体放出装置)4が設置された状態を示す概略図である。この
図1に示すように、間仕切壁1は、図示しない間仕切枠に壁材(仕切ボードとも呼ばれる)11が組み付けられて構成されており、この間仕切壁1の内部空間2は居住空間(気密評価対象空間に隣接する空間)5から区画されている。
【0025】
間仕切壁1には、コンセント6が設置されている。コンセント6は、壁材11や図示しない間柱に固定されたコンセントボックス(埋め込みボックスとも呼ばれる)61、壁材11に形成された開口12の内側に配設されたコンセント本体62、開口12を居住空間5側から覆うフェイスプレート63等を含んで構成されている。また、コンセント本体62には電力配線64が接続されている。コンセント本体62と開口12の開口縁との間やフェイスプレート63と壁材11との間は、間仕切壁1の内部空間2の気密性を確保するために気密処理が行われるが、この気密処理が十分でない場合には、間仕切壁1の内部空間2に存在する化学物質が居住空間5に流入する状況を招いてしまう可能性がある。本実施形態は、この気密処理が適切に行われているか否かを判定するための気密評価方法を提案するものである。この気密評価方法は後述する気密評価システム3を使用して実施される。
【0026】
-気密評価システムの構成-
本実施形態に係る気密評価システム3は、臭気発生装置4、装置開閉用磁石7(後述する評価用気体放出ステップを示す
図5を参照)および臭気センサ8(後述する測定ステップを示す
図6を参照)を含んで構成されている。この気密評価システム3を使用した気密評価方法の概要としては、装置開閉用磁石(切替用磁石)7の磁力を利用して、臭気発生装置4を開放することで該臭気発生装置4から間仕切壁1の内部空間2に臭気ガス(評価用気体)を所定期間放出し(
図5を参照)、居住空間5において臭気センサ(測定装置)8によって臭気ガスの漏れを検出し(
図6を参照)、この検出された臭気ガスの濃度を算出することによって間仕切壁1の内部空間2の気密評価を行う。気密評価方法の詳細については後述する。以下、気密評価システム3の構成について説明する。
【0027】
図1に示すように、臭気発生装置4は、間仕切壁1の内部空間2に設置され、後述する評価用気体放出ステップにおいて間仕切壁1の内部空間2に臭気ガスを放出する機能を備えている。
【0028】
図2は、臭気放出停止状態にある臭気発生装置4の内部構成を示す概略図である。この
図2に示すように、臭気発生装置4は、筐体41の内部に臭気発生源(評価用気体発生源)42および臭気発生切替機構(切替手段)43が収容された構成となっている。
【0029】
筐体41は、直方体形状の箱体で成り、居住空間5側(
図2における左側)に位置する側板41aが壁材11の表面(間仕切壁1の内部空間2に臨む面)11aに取り付けられている(
図1を参照)。この取り付けのための手段としては接着等が採用される。
【0030】
また、筐体41における居住空間5とは反対側(
図2における右側)に位置する側板41bには、複数の円形の開口41c,41c,…が設けられている。本実施形態では、上下方向に6個、水平方向に4個(図には現れない)の合計24個の開口41c,41c,…がマトリックス状に配置されている。これら開口41c,41c,…の個数や配置形態としてはこれに限定されるものではなく適宜設定が可能である。また、これら開口41c,41c,…の内径寸法は、後述する臭気発生切替機構43を構成する玉(移動磁石)43bの外径寸法よりも所定寸法だけ小さく設定されている。
【0031】
臭気発生源42は、筐体41の内部に収容されている。本実施形態における臭気発生源42はニオイチップを含んだ構成となっている。例えば、多数の開口が形成された容器内に所定量のニオイチップが充填されて臭気発生源42が構成されている。臭気発生源42の構成としては、これに限定されることなく、
図2に示す状態(臭気放出停止状態)において、筐体41の内部が、臭い分子を含んだ臭気ガスで満たされる構成となっておればよい。尚、この臭い分子としては、間仕切壁1を構成する建材等から発生する物質とは異なる物質が採用されている。
【0032】
臭気発生切替機構43は、磁石受けプレート43aおよび玉43bを含んだ構成となっている。
【0033】
磁石受けプレート43aは、筐体41における居住空間5とは反対側の側板(開口41c,41c,…が設けられている側板)41bと臭気発生源42との間に配設されている。また、この磁石受けプレート43aは、矩形状であって外縁が筐体41の内面に接合されている。
【0034】
更に、この磁石受けプレート43aは、磁石受け部43c,43c,…およびメッシュ部43dを備えている。
【0035】
磁石受け部43c,43c,…は、各開口41c,41c,…それぞれに対向するように複数箇所に設けられている。本実施形態では、各開口41c,41c,…の個数や配置形態に対応して、上下方向に6個、水平方向に4個(図には現れない)の合計24個の磁石受け部43c,43c,…がマトリックス状に配置されている。この磁石受け部43cは、臭気発生源42の配設位置側(
図2における左側)に向かって半球形状に凹陥した構成となっている。この磁石受け部43cの内面の曲率は玉43bの外面の曲率に略一致している。このため、
図3(臭気放出状態にある臭気発生装置4の内部構成を示す概略図)に示すように、玉43bが磁石受けプレート43a側に移動した場合には、磁石受け部43cに玉43bが嵌まり込む構成となっている。
【0036】
メッシュ部43dは、磁石受けプレート43aにおける磁石受け部43c,43c,…以外の領域を構成する金網で構成されており、筐体41の内部空間における臭気発生源42が収容されている空間と、磁石受けプレート43aと側板41bとの間の空間とを連通している。また、このメッシュ部43dと側板41bとの間の間隔寸法(水平方向での間隔寸法)は玉43bの外径寸法よりも小さく設定されており、玉43bの落下を防止している。
【0037】
玉43bは、磁石受けプレート43aと側板41bとの間の空間において、各開口41c,41c,…それぞれに対向するように複数箇所に配設されている。本実施形態では、各開口41c,41c,…の個数や配置形態に対応して、上下方向に6個、水平方向に4個(図には現れない)の合計24個の玉43b,43b,…が配設されている。前述した如く、この玉43bの外径寸法は開口41cの内径寸法よりも所定寸法だけ大きく設定されている。このため、
図2に示すように、玉43bが側板41b側に移動した場合には、側板41bに設けられている各開口41c,41c,…それぞれに玉43b,43b,…が嵌まり込み、これによって各開口41c,41c,…が閉塞される構成となっている。この状態では、筐体41の内部空間は外部(間仕切壁1の内部空間2)から遮断され、臭気ガスが間仕切壁1の内部空間2に放出されない状態となる。一方、
図3に示すように、玉43bが磁石受けプレート43a側に移動した場合には、磁石受け部43c,43c,…それぞれに玉43b,43b,…が嵌まり込み、これによって各開口41c,41c,…が開放される構成となっている。この状態では、筐体41の内部空間は外部(間仕切壁1の内部空間2)に連通され、臭気ガスが間仕切壁1の内部空間2に放出される状態となる。
【0038】
磁石受けプレート43a、玉43bおよび側板41bそれぞれは磁石で構成されている。以下、これら部材43a,43b,41bの磁極について説明する。
図4は、磁石受けプレート43a、玉43bおよび側板41bそれぞれの磁極を説明するための断面図である。この
図4に示すように、磁石受けプレート43aにおける臭気発生源42側(
図4における左側)の面がN極とされ、臭気発生源42とは反対側(
図4における右側)の面がS極とされている。また、玉43bは、中空体で成り、外周面がN極とされ内周面がS極とされている。また、側板41bにおける磁石受けプレート43a側(
図4における左側)の面がS極とされ、磁石受けプレート43aとは反対側(
図4における右側)の面がN極とされている。
【0039】
このように磁石受けプレート43a、玉43bおよび側板41bそれぞれの磁極が設定されていることにより、
図2に示すように側板41bに設けられている開口41cに玉43bが嵌まり込んだ状態にあっては、他の磁力が作用しない限り(具体的には前記装置開閉用磁石7から玉43bを磁石受けプレート43a側に移動させる磁力が作用しない限り)、側板41bと玉43bとの間で発生する磁力(吸引力)によって開口41cに玉43bが嵌まり込んだ状態が保持される。つまり、開口41cが閉塞された状態が保持されることになる。一方、
図3に示すように磁石受けプレート43aの磁石受け部43cに玉43bが嵌まり込んだ状態にあっては、他の磁力が作用しない限り(具体的には前記装置開閉用磁石7から玉43bを側板41b側に移動させる磁力が作用しない限り)、磁石受けプレート43aと玉43bとの間で発生する磁力(吸引力)によって磁石受けプレート43aの磁石受け部43cに玉43bが嵌まり込んだ状態が保持される。つまり、開口41cが開放された状態が保持されることになる。
【0040】
尚、磁石受けプレート43aの磁力と側板41bの磁力とは同程度に設定されている。これにより、
図2に示すように側板41bに設けられている開口41cに玉43bが嵌まり込んだ状態や、
図3に示すように磁石受けプレート43aの磁石受け部43cに玉43bが嵌まり込んだ状態が安定的に維持されるようになっている。
【0041】
装置開閉用磁石7は、
図5および
図6に示すように、居住空間5から臭気発生装置4に磁力を作用させることによって臭気発生切替機構43を作動させるためのものである。具体的には、玉43bに磁力を作用させて移動させることにより、開口41cの開放と閉塞とを切り替えて、臭気発生源42からの臭気ガスを外部へ放出させる状態と、臭気発生源42からの臭気ガスの外部への放出を停止する状態とを切り替えるためのものである。この装置開閉用磁石7は、磁石で成り、一方の面がS極とされ、他方の面がN極とされている。
【0042】
ここで、装置開閉用磁石7の磁力と、磁石受けプレート43a、玉43bおよび側板41bそれぞれの磁力との関係について説明する。装置開閉用磁石7の磁力は、磁石受けプレート43a、玉43bおよび側板41bそれぞれの磁力よりも大きく設定されている。このため、
図5に示すように、装置開閉用磁石7のS極の面を壁材11の表面(居住空間5に臨む面)11bに当接または近づけると、この装置開閉用磁石7の磁力によって各玉43b,43b,…が移動して、
図3に示すように磁石受けプレート43aの磁石受け部43cに嵌まり込む状態となり、開口41cが開放されることになる。一方、
図6に示すように、装置開閉用磁石7のN極の面を壁材11の表面(居住空間5に臨む面)11bに当接または近づけると、この装置開閉用磁石7の磁力によって各玉43b,43b,…が移動して、
図2に示すように側板41bに設けられている開口41cに嵌まり込む状態となり、開口41cが閉塞されることになる。
【0043】
臭気センサ8は、
図6に示す測定ステップにおいて、居住空間5において作業者が把持してコンセント6の周辺に位置させることによって、コンセント6の周辺からの臭気ガスの漏れを検出し、このコンセント6の周辺における臭気ガスの濃度を算出する周知のセンサである。
【0044】
-気密評価方法-
次に、前述の如く構成された気密評価システム3を使用した気密評価方法について説明する。この気密評価方法では、評価用気体放出ステップが実施された後、測定ステップが実施される。前述した如く、評価用気体放出ステップでは、臭気発生装置4から間仕切壁1の内部空間2に臭気ガスを放出させる。また、測定ステップでは、臭気発生装置4から間仕切壁1の内部空間2への臭気ガスの放出を停止した後、当該内部空間2において臭気センサ8によって臭気ガスの濃度を測定する。
【0045】
図7は、気密評価方法の手順を説明するためのフローチャート図である。先ず、ステップST1において、間仕切壁1の施工時に、当該間仕切壁1の表面(間仕切壁1の内部空間2に臨む面)11aに臭気発生装置4を取り付けておく。
【0046】
その後、各種の施工が完了した後(ステップST2)、ステップST3では、建物に予め備えられた24時間換気扇を稼働させると共に、キッチンファン等の局所換気装置を稼働させる。これは、居住空間5の圧力を間仕切壁1の内部空間2の圧力よりも低くし、気密処理が適切に行われていなかった場合に、間仕切壁1の内部空間2から居住空間5に臭気ガスが流出しやすい環境にするためである。
【0047】
その後、ステップST4に移り、評価用気体放出ステップを実施する。この評価用気体放出ステップでは、
図5に示すように、装置開閉用磁石7のS極の面を壁材11の表面(居住空間5に臨む面)11bに当接または近づけることにより、この装置開閉用磁石7の磁力によって各玉43b,43b,…が移動して、
図3に示すように磁石受けプレート43aの磁石受け部43cに嵌まり込む状態となり、開口41cが開放される。これにより、臭気ガスが間仕切壁1の内部空間2に放出されることになる。この状態を所定時間維持した後、
図6に示すように、装置開閉用磁石7のN極の面を壁材11の表面(居住空間5に臨む面)11bに当接または近づけることにより、この装置開閉用磁石7の磁力によって各玉43b,43b,…が移動して、
図2に示すように側板41bに設けられている開口41cに嵌まり込む状態となり、開口41cが閉塞されることになる。これにより、臭気ガスの間仕切壁1の内部空間2への放出が停止される。
【0048】
評価用気体放出ステップの実施後、ステップST5に移り、測定ステップを実施する。この測定ステップでは、
図6に示すように、居住空間5において作業者が臭気センサ8を把持してコンセント6の周辺に位置させることによって、コンセント6の周辺からの臭気ガスの漏れを検出し、このコンセント6の周辺における臭気ガスの濃度が算出される。尚、この測定ステップでは、装置開閉用磁石7のN極の面を壁材11の表面11bに当接または近づけておく必要はない。臭気センサ8によって検出される臭気ガスの濃度の変化勾配としては、測定ステップの開始初期時には大きいものの、次第に小さくなっていく。
図8は、この臭気ガスの濃度の変化の例を示している。
【0049】
ステップST6では、この検出される臭気ガスの濃度の変化勾配がある程度小さくなった状態で(単位時間当たりの濃度変化が予め設定された所定量以下となった状態で)、当該濃度が所定の閾値(
図8における閾値A)を超えているか否かを判定する。この閾値Aは、臭気発生源42におけるニオイチップの量や、予め規定された開口41cを開放させる期間(臭気ガスを放出させる期間)や、気密性を確保するための修繕(気密処理のやり直し)が必要となる気密性の度合い等に基づいて予め決定されたものである。
【0050】
そして、臭気ガスの濃度が所定の閾値Aを超えておらず(例えば
図8において実線で示す濃度変化を参照)、ステップST6でYES判定された場合には、気密処理が適切に行われており、間仕切壁1の気密性が十分に確保されていると評価する。この場合、気密性を確保するための修繕は必要ない。
【0051】
一方、臭気ガスの濃度が所定の閾値Aを超えており(例えば
図8において一点鎖線で示す濃度変化を参照)、ステップST6でNO判定された場合には、気密処理が適切に行われておらず、間仕切壁1の気密性が十分に確保されていないと評価し、気密性を確保するための修繕(気密処理のやり直し)が行われることになる(ステップST7)。そして、この気密性を確保するための修繕が行われた後、再び、ステップST3以降の処理を実施し、前述と同様に、気密処理が適切に行われたか否かの評価を行うことになる。
【0052】
-発明の効果-
以上説明したように、本実施形態では、臭気発生装置4から間仕切壁1の内部空間2に臭気ガスを放出させ、居住空間5における臭気ガスの濃度を測定することによって、間仕切壁1の内部空間2の気密性が十分に得られているか否かを判定することができるようにしている。これにより、間仕切壁1の内部空間2の気密評価を容易に行うことが可能になる。
【0053】
また、本実施形態では、評価用気体として臭い分子を含んだ臭気ガスを採用していることにより、比較的簡単な手法で間仕切壁1の内部空間2の気密評価を行うことが可能である。
【0054】
更に、本実施形態では、装置開閉用磁石7を利用して玉43bを移動させて開口41cの開放と閉塞とを切り替えることにより、臭気ガスを間仕切壁1の内部空間2に放出させる状態と放出を停止する状態とを切り替えるようにしている。つまり、臭気発生装置4を直接的に操作することなく、居住空間5から臭気発生装置4に磁力を作用させることによって前記切り替えが行えるようにしている。このため、間仕切壁1を施工した後であっても、遠隔操作によって前記切り替えが可能になる。また、前述した気密測定法等において必要としていたマスキングテープ等による目張りの必要が無いため、建物の仕上げ材を傷付ける虞もない。
【0055】
また、本実施形態では、大型の機材を必要とすることなく、また、作業者に専門知識を必要とするものでもないため、実用性の高い気密評価を実現することができる。
【0056】
更に、本実施形態では、磁力を利用していることにより、臭気発生装置4を作動させるための電源配線や電池を使用する必要が無い。このため、この電源配線の回収が不要であり、また電池の液漏れの心配も無い。また、気密評価後には臭気発生装置4をそのまま間仕切壁1の内部空間2に放置しても特に問題が無いため、臭気発生装置4の回収作業が不要である。
【0057】
-変形例-
次に、変形例について説明する。以下の変形例は、臭気発生切替機構43の構成が前述した実施形態のものと異なっている。その他の構成および動作は前述した実施形態のものと同様であるので、ここでは臭気発生切替機構43の構成のみについて説明する。
【0058】
(変形例1)
図9は、変形例1における
図4相当図である。本変形例に係る臭気発生切替機構43は、玉43bの中心部に水平方向に延在する貫通孔43eを設けた構成としている。そして、磁石受けプレート43aの磁石受け部43cに、開口41cに向けて水平方向に延在する支持棒43fを備えさせ、玉43bの貫通孔43eに支持棒43fを挿入することによって、玉43bを支持棒43fに沿って移動自在(水平方向にスライド移動自在)としたものである。
【0059】
また、本変形例にあっては、磁石受けプレート43aにおける臭気発生源42側(
図9における左側)の面がS極とされ、臭気発生源42とは反対側(
図9における右側)の面がN極とされている。また、玉43bは、磁石受けプレート43a側(
図9における左側)がS極とされ、側板41b側(
図9における右側)がN極とされている。また、側板41bにおける磁石受けプレート43a側(
図9における左側)の面がS極とされ、磁石受けプレート43aとは反対側(
図9における右側)の面がN極とされている。
【0060】
このように磁石受けプレート43a、玉43bおよび側板41bそれぞれの磁極が設定されていることにより、本変形例にあっても、側板41bに設けられている開口41cに玉43bが嵌まり込んだ状態にあっては、他の磁力が作用しない限り(具体的には前記装置開閉用磁石7から玉43bを磁石受けプレート43a側に移動させる磁力が作用しない限り)、側板41bと玉43bとの間で発生する磁力によって開口41cに玉43bが嵌まり込んだ状態が保持される。つまり、開口41cが閉塞された状態が保持されることになる。一方、磁石受けプレート43aの磁石受け部43cに玉43bが嵌まり込んだ状態にあっては、他の磁力が作用しない限り(具体的には前記装置開閉用磁石7から玉43bを側板41b側に移動させる磁力が作用しない限り)、磁石受けプレート43aと玉43bとの間で発生する磁力によって磁石受けプレート43aの磁石受け部43cに玉43bが嵌まり込んだ状態が保持される。つまり、開口41cが開放された状態が保持されることになる。
【0061】
本変形例の構成によれば、玉43bを中空体で構成する必要がないため、玉43bの作製が容易である。また、玉43bの貫通孔43eに支持棒43fが挿入されていることにより玉43bの移動を安定的に行うことができる。
【0062】
(変形例2)
図10は、変形例2における
図4相当図である。本変形例に係る臭気発生切替機構43は、磁力によって移動する移動体を玉に代えて直方体形状の磁石44としたものである。また、磁石受け部43cの構成としては、この直方体形状の磁石44が嵌まり込むことが可能な直方体形状の凹陥部として構成されている。更に、側板41bに設けられる開口41cとしては、この直方体形状の磁石44によって閉塞可能とされる例えば矩形状となっている。
【0063】
また、本変形例にあっても、メッシュ部43dと側板41bとの間の間隔寸法(水平方向での間隔寸法)は磁石44の水平方向(
図10における左右方向)の寸法よりも小さく設定されており、磁石44の落下を防止している。尚、本変形例における各部材43c,44,41bの極性としては、前述した変形例1のものと同様であるので、ここでの説明は省略する。
【0064】
本変形例の構成によれば、磁石44の移動は磁石受け部43cの内面によって案内されることになるので、当該磁石44の移動を安定的に行うことができる。
【0065】
-他の実施形態-
尚、本発明は、前記実施形態および前記各変形例に限定されるものではなく、特許請求の範囲および該範囲と均等の範囲で包含される全ての変形や応用が可能である。
【0066】
例えば、前記実施形態および前記各変形例では、コンセント6を設置するために設けられた開口12に対する気密処理が適切に行われているか否かの評価を行うものとして本発明を適用した場合について説明した。本発明はこれに限らず、分電盤等を設置するために設けられた開口に対する気密処理が適切に行われているか否かの評価を行うものとして適用することも可能である。また、気密評価対象空間としては間仕切壁1の内部空間2に限らず、天井裏空間やその他の非居住空間とすることも可能である。例えばダウンライトを設置するために設けられた天井の開口における気密処理が適切に行われているか否かの評価を行うものとして適用することが挙げられる。
【0067】
また、前記実施形態および前記各変形例では、気密評価のために使用する評価用気体を臭い分子を含んだ臭気ガスとした場合を例に挙げて説明した。本発明はこれに限らず、その他のガスを評価用気体として採用することも可能である。この場合、前述したように、建材等から発生する物質とは異なる物質で成るガスである必要がある。この評価用気体としては、例えば二酸化炭素等が挙げられる。
【0068】
また、前記実施形態および前記各変形例で説明した各部材の磁極(N極およびS極)は前述のものとは逆の形態としてもよい。
【0069】
また、前記実施形態および前記各変形例では、磁力を利用することによって移動磁石(玉43b等)を移動させて開口41cの開放と閉塞とを切り替えるようにしていた。本発明はこれに限らず、電波を利用した遠隔操作によって電動により開口の開放と閉塞とを切り替えるようにしてもよい。
【0070】
また、前記実施形態および前記各変形例では、臭気発生装置4から間仕切壁1の内部空間2への臭気ガスの放出を停止した後に測定ステップを実施するようにしていた。本発明はこれに限らず、臭気発生装置4から間仕切壁1の内部空間2への臭気ガスの放出を継続した状態で測定ステップを実施するようにしてもよい。この場合、測定ステップの終了後には、装置開閉用磁石7の磁力を利用して臭気発生装置4からの臭気ガスの放出を停止しておくことが好ましい。
【0071】
また、本明細書に開示した実施形態その他の事項は、以下の付記に示す技術的思想として把握することもできる。
(付記1)
気密評価対象空間の気密評価方法であって、
前記気密評価対象空間に評価用気体放出装置を設置し、該評価用気体放出装置から前記気密評価対象空間に評価用気体を放出させる評価用気体放出ステップと、
前記評価用気体放出ステップの後、前記気密評価対象空間に隣接する空間における前記評価用気体の濃度を測定する測定ステップと、を実施することを特徴とする気密評価方法。
(付記2)
付記1記載の気密評価方法において、
前記評価用気体は臭い分子を含んだ臭気ガスであり、
前記測定ステップでは、前記気密評価対象空間に隣接する前記空間において、臭気センサにより前記臭気ガスの濃度を測定することを特徴とする気密評価方法。
(付記3)
付記1または2記載の気密評価方法において、
前記評価用気体放出ステップでは、前記評価用気体放出装置から前記気密評価対象空間への前記評価用気体の放出を所定期間実施した後、当該評価用気体の放出を停止し、
前記測定ステップでは、前記気密評価対象空間に隣接する前記空間において測定された前記評価用気体の濃度が所定値を超えるか否かを判定し、その判定結果に応じて前記気密評価対象空間の気密評価を行うことを特徴とする気密評価方法。
(付記4)
付記1または2記載の気密評価方法において、
前記評価用気体放出装置は、磁力の作用によって、前記気密評価対象空間に前記評価用気体を放出させる状態と、前記気密評価対象空間への前記評価用気体の放出を停止させる状態とが切り替え可能となっており、
前記評価用気体放出ステップでは、前記気密評価対象空間に隣接する前記空間から前記評価用気体放出装置にN極およびS極のうち一方の磁力を作用させて当該気密評価対象空間に前記評価用気体を放出させる状態とし、その後、
前記気密評価対象空間に隣接する前記空間から前記評価用気体放出装置にN極およびS極のうち他方の磁力を作用させて当該気密評価対象空間への前記評価用気体の放出を停止させる状態とすることを特徴とする気密評価方法。
(付記5)
付記1または2記載の気密評価方法に使用される気密評価システムであって、
前記評価用気体の発生源を収容した前記評価用気体放出装置と、
前記気密評価対象空間に隣接する前記空間からの遠隔による切替操作によって前記評価用気体の放出および非放出を切り替える切替手段と、
前記測定ステップにおいて、前記気密評価対象空間に隣接する前記空間における前記評価用気体の濃度を測定する測定装置と、
を含んで構成されることを特徴とする気密評価システム。
(付記6)
付記5記載の気密評価システムにおいて、
前記切替手段は、
前記評価用気体放出装置から前記気密評価対象空間に前記評価用気体を放出させる位置と放出を停止させる位置との間で移動可能な移動磁石と、
前記気密評価対象空間に隣接する前記空間から前記移動磁石に磁力を作用させることによって、当該移動磁石を前記気密評価対象空間に前記評価用気体を放出させる位置と放出を停止させる位置との間で移動させる切替用磁石と、を備えていることを特徴とする気密評価システム。
(付記7)
付記1または2記載の気密評価方法に使用される評価用気体放出装置であって、
前記評価用気体を前記気密評価対象空間に放出するための開口を備えた筐体と、
前記筐体の内部に収容された評価用気体発生源と、
前記開口を閉塞する位置と開放する位置との間で移動可能な移動磁石とを備え、
前記移動磁石は、前記気密評価対象空間に隣接する前記空間からN極およびS極のうち一方の磁力の作用によって移動して前記開口を開放する位置となり、前記気密評価対象空間に隣接する前記空間からN極およびS極のうち他方の磁力の作用によって移動して前記開口を閉塞する位置となる構成とされていることを特徴とする評価用気体放出装置。
【産業上の利用可能性】
【0072】
本発明は、間仕切壁の内部空間等の非居住空間の気密評価を行う気密評価方法および該気密評価方法に使用される気密評価システムならびに評価用気体放出装置に適用可能である。
【符号の説明】
【0073】
2 内部空間(気密評価対象空間)
3 気密評価システム
4 臭気発生装置(評価用気体放出装置)
42 臭気発生源(評価用気体発生源)
43 臭気発生切替機構(切替手段)
5 居住空間(気密評価対象空間に隣接する空間)
7 装置開閉用磁石(切替用磁石)
8 臭気センサ(測定装置)