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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024171019
(43)【公開日】2024-12-11
(54)【発明の名称】車両用灯具、及びヒートシンク
(51)【国際特許分類】
   F21S 45/49 20180101AFI20241204BHJP
   F21S 45/47 20180101ALI20241204BHJP
   F21S 41/143 20180101ALI20241204BHJP
   F21S 41/19 20180101ALI20241204BHJP
   F21S 41/26 20180101ALI20241204BHJP
   F21S 41/27 20180101ALI20241204BHJP
   F21S 41/29 20180101ALI20241204BHJP
   F21V 29/15 20150101ALI20241204BHJP
   F21V 29/503 20150101ALI20241204BHJP
   F21V 29/76 20150101ALI20241204BHJP
【FI】
F21S45/49
F21S45/47
F21S41/143
F21S41/19
F21S41/26
F21S41/27
F21S41/29
F21V29/15 100
F21V29/503
F21V29/76
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023087856
(22)【出願日】2023-05-29
(71)【出願人】
【識別番号】000002303
【氏名又は名称】スタンレー電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【弁理士】
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】上岡 一馬
(57)【要約】
【課題】耐熱温度が低い樹脂レンズを用いた場合でも、当該樹脂レンズの変形や溶損を抑制することができる車両用灯具等を提供する。
【解決手段】車両用灯具10であって、光源20A、20Bと、前記光源が実装された基板前面とその反対側の基板後面とを含む基板30と、前記光源の後方に配置され、前記光源で発生した熱を伝熱し放熱させるヒートシンク40と、前記光源の前方に配置され、前記光源が発光する光を制御する樹脂レンズ50と、を備え、前記ヒートシンクは、ベース前面41aとその反対側のベース後面41bとを含むベース部41と、前記ベース後面に設けられた放熱フィン42と、前記ベース前面から前方に向かって延びるレンズ取付部43と、を含み、前記レンズ取付部は、当該レンズ取付部の先端部に設けられた固定部43aと、前記固定部と前記ベース前面とを接続する接続部43bと、を含む。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源と、
前記光源が実装された基板前面とその反対側の基板後面とを含む基板と、
前記光源の後方に配置され、前記光源で発生した熱を伝熱し放熱させるヒートシンクと、
前記光源の前方に配置され、前記光源が発光する光を制御する樹脂レンズと、を備え、
前記ヒートシンクは、ベース前面とその反対側のベース後面とを含むベース部と、前記ベース後面に設けられた放熱フィンと、前記ベース前面から前方に向かって延びるレンズ取付部と、を含み、
前記レンズ取付部は、当該レンズ取付部の先端部に設けられた固定部と、前記固定部と前記ベース前面とを接続する接続部と、を含み、
前記基板は、前記基板後面と前記ベース前面とが対向した状態で前記ベース部に固定され、
前記樹脂レンズは、前記固定部に当接した状態で当該固定部に固定されている車両用灯具。
【請求項2】
前記接続部には、上下方向に貫通する貫通穴又は切欠部が形成されている請求項1に記載の車両用灯具。
【請求項3】
前記貫通穴又は切欠部は、前記接続部のうち、前記貫通穴又は切欠部を形成する前と比べ、当該接続部を介して前記固定部へ伝熱される熱が少なくなる部分に形成される請求項2に記載の車両用灯具。
【請求項4】
前記部分は、前記接続部のうち前記固定部の、前後方向に延びる中心軸を含む部分である請求項3に記載の車両用灯具。
【請求項5】
前記貫通穴又は切欠部の左右方向の幅は、前記固定部の、左右方向の幅以上である請求項2から4のいずれか1項に記載の車両用灯具。
【請求項6】
光源で発生した熱を伝熱し放熱させるヒートシンクであって、
ベース前面とその反対側のベース後面とを含むベース部と、
前記ベース後面に設けられた放熱フィンと、
前記ベース前面から前方に向かって延びるレンズ取付部と、を含み、
前記レンズ取付部は、当該レンズ取付部の先端部に設けられた固定部と、前記固定部と前記ベース前面とを接続する接続部と、を含み、
前記固定部には、樹脂レンズが当該固定部に当接した状態で固定されるヒートシンク。
【請求項7】
前記接続部には、上下方向に貫通する貫通穴又は切欠部が形成されている請求項6に記載のヒートシンク。
【請求項8】
前記ベース部の外形は、正面視で、矩形形状であり、
前記光源は、正面視で、前記ベース前面の中心付近に配置されており、
前記レンズ取付部は、前記ベース前面の四隅それぞれから前方側に延びている請求項1に記載に記載の車両用灯具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、車両用灯具、及びヒートシンクに関する。
【背景技術】
【0002】
光源が実装された基板前面とその反対側の基板後面とを含む基板と、光源で発生した熱を伝熱し放熱させるヒートシンクと、光源が発光する光を制御する樹脂レンズと、を備える車両用灯具が知られている(例えば、特許文献1の図4参照)。ヒートシンクは、ベース前面とその反対側のベース後面とを含むベース部と、ベース後面に設けられた放熱フィンと、を含む。樹脂レンズは、当該樹脂レンズからヒートシンクに向かって延びる脚部(筒状部)の先端部に設けられたフランジ部をヒートシンク(ベース前面)に直接固定(ねじ固定)することにより、光源の前方に配置された状態でヒートシンクに取り付けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2022-134640号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1に記載の車両用灯具においては、樹脂レンズの脚部(フランジ部)がヒートシンクのうち光源(熱源)に近い部分(ベース前面)に固定されているため、光源(熱源)からヒートシンクを介して伝わる熱により、樹脂レンズ(フランジ部)とヒートシンク(固定部)との当接箇所の温度が高くなる結果、耐熱温度が低い樹脂レンズ(例えば、安価なアクリル製樹脂レンズの場合、耐熱温度は100℃程度)の変形や溶損を引き起こし、配光不良が発生する可能性があるという課題がある。
【0005】
本開示は、このような問題点を解決するためになされたものであり、耐熱温度が低い樹脂レンズ(例えば、安価なアクリル製樹脂レンズ)を用いた場合でも、当該樹脂レンズの変形や溶損を抑制することができる車両用灯具、及びヒートシンクを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示にかかる車両用灯具は、光源と、前記光源が実装された基板前面とその反対側の基板後面とを含む基板と、前記光源の後方に配置され、前記光源で発生した熱を伝熱し放熱させるヒートシンクと、前記光源の前方に配置され、前記光源が発光する光を制御する樹脂レンズと、を備え、前記ヒートシンクは、ベース前面とその反対側のベース後面とを含むベース部と、前記ベース後面に設けられた放熱フィンと、前記ベース前面から前方に向かって延びるレンズ取付部と、を含み、前記レンズ取付部は、当該レンズ取付部の先端部に設けられた固定部と、前記固定部と前記ベース前面とを接続する接続部と、を含み、前記基板は、前記基板後面と前記ベース前面とが対向した状態で前記ベース部に固定され、前記樹脂レンズは、前記固定部に当接した状態で当該固定部に固定されている。
【0007】
このような構成により、耐熱温度が低い樹脂レンズ(例えば、安価なアクリル製樹脂レンズ)を用いた場合でも、当該樹脂レンズの変形や溶損を抑制することができる。その結果、樹脂レンズの変形や溶損に起因して、配光不良が発生するのを抑制することができる。
【0008】
これは、樹脂レンズがベース前面から前方に向かって延びるレンズ取付部(固定部)に固定されていることによるものである。
【0009】
上記車両用灯具において、前記接続部には、上下方向に貫通する貫通穴又は切欠部が形成されていてもよい。
【0010】
このような構成により、接続部に貫通穴(又は切欠部)を形成しない場合と比べ、樹脂レンズとレンズ取付部(固定部)との当接箇所に伝熱される熱が減少する。これは、主に、接続部に形成された貫通穴(貫通穴の内壁)の分、放熱面積が増加すること、及び、上下方向に貫通する貫通穴(又は切欠部)においてその煙突効果等により発生する対流により放熱が促進されること、によるものである。
【0011】
そのため、耐熱温度が低い樹脂レンズ(例えば、安価なアクリル製樹脂レンズ)を用いた場合でも、当該樹脂レンズの変形や溶損をさらに抑制することができる。その結果、樹脂レンズの変形や溶損に起因して、配光不良が発生するのをさらに抑制することができる。
【0012】
また、上記車両用灯具において、前記貫通穴又は切欠部は、前記接続部のうち、前記貫通穴又は切欠部を形成する前と比べ、当該接続部を介して前記固定部へ伝熱される熱が少なくなる部分に形成されていてもよい。
【0013】
また、上記車両用灯具において、前記部分は、前記接続部のうち前記固定部の、前後方向に延びる中心軸を含む部分であってもよい。
【0014】
また、上記車両用灯具において、前記貫通穴又は切欠部の左右方向の幅は、前記固定部の左右方向の幅以上であってもよい。
【0015】
本開示にかかるヒートシンクは、光源で発生した熱を伝熱し放熱させるヒートシンクであって、ベース前面とその反対側のベース後面とを含むベース部と、前記ベース後面に設けられた放熱フィンと、前記ベース前面から前方に向かって延びるレンズ取付部と、を含み、前記レンズ取付部は、当該レンズ取付部の先端部に設けられた固定部と、前記固定部と前記ベース前面とを接続する接続部と、を含み、前記固定部には、樹脂レンズが当該固定部に当接した状態で固定される。
【0016】
このような構成により、耐熱温度が低い樹脂レンズ(例えば、安価なアクリル製樹脂レンズ)を用いた場合でも、当該樹脂レンズの変形や溶損を抑制することができる。その結果、樹脂レンズの変形や溶損に起因して、配光不良が発生するのを抑制することができる。
【0017】
これは、樹脂レンズがベース前面から前方に向かって延びるレンズ取付部(固定部)に固定されていることによるものである。
【0018】
上記ヒートシンクにおいて、前記接続部には、上下方向に貫通する貫通穴又は切欠部が形成されていてもよい。
【0019】
このような構成により、接続部に貫通穴(又は切欠部)を形成しない場合と比べ、樹脂レンズとレンズ取付部(固定部)との当接箇所に伝熱される熱が減少する。これは、主に、接続部に形成された貫通穴(貫通穴の内壁)の分、放熱面積が増加すること、及び、上下方向に貫通する貫通穴(又は切欠部)においてその煙突効果等により発生する対流により放熱が促進されること、によるものである。
【0020】
そのため、耐熱温度が低い樹脂レンズ(例えば、安価なアクリル製樹脂レンズ)を用いた場合でも、当該樹脂レンズの変形や溶損をさらに抑制することができる。その結果、樹脂レンズの変形や溶損に起因して、配光不良が発生するのをさらに抑制することができる。
【0021】
また、上記車両用灯具において、前記ベース部の外形は、正面視で、矩形形状であり、前記光源は、正面視で、前記ベース前面の中心付近に配置されており、前記レンズ取付部は、前記ベース前面の四隅それぞれから前方側に延びていてもよい。
【発明の効果】
【0022】
本開示により、耐熱温度が低い樹脂レンズ(例えば、安価なアクリル製樹脂レンズ)を用いた場合でも、当該樹脂レンズの変形や溶損を抑制することができる車両用灯具、及びヒートシンクを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】車両用灯具10の斜視図である。
図2】車両用灯具10の正面図である。
図3】車両用灯具10の分解斜視図である。
図4】(a)ヒートシンク40の正面図、(b)上面図、(c)下面図、(d)右側面図、(e)左側面図である。
図5図2のB-B断面図である。
図6図2のA-A断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本開示の実施形態である車両用灯具10について添付図面を参照しながら説明する。各図において対応する構成要素には同一の符号が付され、重複する説明は省略される。
【0025】
図1は車両用灯具10の斜視図、図2は正面図、図3は分解斜視図である。
【0026】
本実施形態の車両用灯具10は、ロービーム用又はハイビーム用のヘッドランプとして機能する車両用前照灯で、自動車等の車両(図示せず)の前端部の左右両側にそれぞれ搭載される。左右両側に搭載される車両用灯具10は左右対称の構成であるため、以下、代表して、車両の前端部の右側(車両前方に向かって右側)に搭載される車両用灯具10について説明する。
【0027】
図1図3に示すように、車両用灯具10は、ロービーム用光源20A、ハイビーム用光源20B(以下、両者を区別しない場合、光源20とも記載する)と、光源20が実装された基板前面31とその反対側の基板後面とを含む基板30と、光源20(基板30)の後方に配置され、光源20で発生した熱を伝熱し放熱させるヒートシンク40と、光源20(基板30)の前方に配置され、光源20が発光する光を制御する樹脂レンズ50と、光源20と樹脂レンズ50との間に配置されたインナーレンズ60と、基板後面とベース前面41aとの間に配置された熱伝導部材70と、を備えている。以下、説明の便宜のため、XYZ軸を定義する。図2等に示すように、X軸は車両前後方向に延びており、Y軸は車幅方向に延びており、Z軸は鉛直方向に延びている。
【0028】
ロービーム用光源20A、ハイビーム用光源20Bは、それぞれ、LED等の半導体発光素子である。図3に示すように、本実施形態では、基板前面の上段に4個のロービーム用光源20AがY軸方向に互いに間隔をあけて一列に配置された状態で実装されている。また、基板前面の下段に3個のハイビーム用光源20BがY軸方向に互いに間隔をあけて一列に配置された状態で実装されている。なお、ロービーム用光源20Aの個数は、4に限らず、1又は複数であってよい。同様に、ハイビーム用光源20Bの個数は、3に限らず、1又は複数であってよい。
【0029】
基板30は、アルミニウム製である。なお、基板30は、アルミニウム製に限らず、熱伝導性が高い金属製であってもよい。
【0030】
図4(a)はヒートシンク40の正面図、図4(b)は上面図、図4(c)は下面図、図4(d)は右側面図、図4(e)は左側面図である。
【0031】
ヒートシンク40は、アルミニウム製で、図4(a)~図4(e)に示すように、ベース前面41aとその反対側のベース後面41bとを含むベース部41と、ベース前面41a及びベース後面41bに設けられた放熱フィン42と、ベース前面41aから前方に向かって延びるレンズ取付部43と、を含む。ベース部41の外形は、正面視で矩形形状である(図4(a)参照)。また、ベース前面41aは平面である。なお、ヒートシンク40は、アルミニウム製に限らず、熱伝導性が高い金属製であってもよい。ヒートシンク40は、例えば、鋳造(ダイカスト)により製造される。なお、ヒートシンク40は、切削、押出、差込み、ロウ付け等の製法で製造してもよい。
【0032】
レンズ取付部43は、当該レンズ取付部43の先端部に設けられた固定部43aと、固定部43aとベース前面41aとを接続する接続部43bと、を含む。レンズ取付部43は、矩形形状のベース前面41aの四隅それぞれに設けられている(図4(a)参照)。
【0033】
固定部43aには、ねじN1(図3参照)が螺合するねじ穴H43aが形成されている。図5に示すように、ねじ穴H43aは、固定部43aの中心軸AX43a方向に延びている。図5図2のB-B断面図である。なお、固定部43aの中心軸AX43aは、前後方向(X軸方向又はベース前面41aに直交する方向)に延びている。
【0034】
樹脂レンズ50(脚部52の先端部に設けられたフランジ部52a)は、ベース前面41aから前方に向かって延びるレンズ取付部43(固定部43a)に固定される(図1参照)。
【0035】
このように、樹脂レンズ50(フランジ部52a)をベース前面41aから前方に向かって延びるレンズ取付部43(固定部43a)に固定することの利点は次のとおりである。すなわち、樹脂レンズ50(フランジ部52a)をベース前面41aから前方に向かって延びるレンズ取付部43(固定部43a)に固定した場合、樹脂レンズ50(フランジ部52a)をベース前面41aに直接固定した場合と比べ、樹脂レンズ50(フランジ部52a)に伝熱される熱が減少する。これは、主に、ロービーム用光源20A及びハイビーム用光源20Bの少なくとも一方を点灯した場合に発生し、基板30、基板後面とベース前面41aとの間に配置された熱伝導部材70、ベース部41、レンズ取付部43、樹脂レンズ50(フランジ部52a)の順に伝熱される熱が、熱伝導部材70において放熱されることによるものである。
【0036】
そのため、耐熱温度が低い樹脂レンズ50(例えば、安価なアクリル製樹脂レンズ)を用いた場合でも、当該樹脂レンズ50の変形や溶損を抑制することができる。その結果、樹脂レンズ50の変形や溶損に起因して、配光不良が発生するのを抑制することができる。
【0037】
上側左右二つの接続部43bには、上下方向に貫通する貫通穴H43b(又は切欠部)が形成されている(図3図5等参照)。温められた空気は上方向に移動するため、上側下側にそれぞれ接続部43bが設けられている場合においては下側の接続部43bより上側の接続部43bに貫通穴H43b(又は切欠部)を設けた方が樹脂レンズ50に伝わる熱を減少させ樹脂レンズ50の温度を低下させる効果が高い。なお、下側左右二つの接続部43bにも、上下方向に貫通する貫通穴H43b(又は切欠部)を形成してもよい。貫通穴H43b(又は切欠部)は、接続部43bのうち、貫通穴H43b(又は切欠部)を形成する前と比べ、当該接続部43bを介して固定部43aへ伝熱される熱が少なくなる部分に形成される。この部分は、例えば、接続部43bのうち固定部43aの中心軸AX43aを含む部分である(図4(b)参照)。貫通穴H43b(又は切欠部)左右方向(Y軸方向)の幅WH43bは、固定部43aの左右方向(Y軸方向)の幅W43a以上である(図1参照)。なお、貫通穴H43b(又は切欠部)の形状は矩形形状に限らず、円形状等、他の形状であってもよい。
【0038】
このように、接続部43bに上下方向に貫通する貫通穴H43b(又は切欠部)を形成することの利点は次のとおりである。すなわち、接続部43bに上下方向に貫通する貫通穴H43b(又は切欠部)を形成した場合、接続部43bに当該貫通穴H43b(又は切欠部)を形成しない場合と比べ、樹脂レンズ50(フランジ部52a)に伝熱される熱が減少する。これは、主に、接続部43bに形成された貫通穴H43b(貫通穴H43bの内壁)の分、放熱面積が増加すること、及び、上下方向に貫通する貫通穴H43b(又は切欠部)においてその煙突効果等により発生する対流(図5中の上向きの矢印参照)により放熱が促進されること、によるものである。
【0039】
そのため、耐熱温度が低い樹脂レンズ50(例えば、安価なアクリル製樹脂レンズ)を用いた場合でも、当該樹脂レンズ50の変形や溶損をさらに抑制することができる。その結果、樹脂レンズ50の変形や溶損に起因して、配光不良が発生するのをさらに抑制することができる。
【0040】
基板30は、基板後面とベース前面41aとが対向した状態でベース部41に固定(ねじ固定)される。その際、基板後面とベース前面41aとの間には、両者の密着性を高め、接触熱抵抗を低減するため、熱伝導部材70が設けられる。熱伝導部材70は、例えば、シリコーン等の熱伝導グリス、熱伝導シートである。
【0041】
樹脂レンズ50は、アクリル製で、耐熱温度は100℃程度である。図1に示すように、樹脂レンズ50は、固定部43aに当接した状態で当該固定部43aに固定(ねじ固定)される。具体的には、図3に示すように、樹脂レンズ50は、レンズ本体51と、レンズ本体51の両側からヒートシンク40に向かって延びる左右一対の脚部52と、を含む。脚部52の先端部には、フランジ部52aが設けられている。フランジ部52aは、4つのレンズ取付部43(固定部43a)に対応して4つ設けられている。フランジ部52aには、ねじN1(図3参照)が挿入される貫通穴H52aが形成されている。貫通穴H52aに挿入されたねじN1は、固定部43aに形成されたねじ穴H43aに螺合される。これにより、樹脂レンズ50は、固定部43aに当接した状態で当該固定部43aに固定(ねじ固定)される(図1参照)。
【0042】
レンズ本体51は、投影レンズ(非球面レンズ)である。図6に示すように、レンズ本体51の焦点F51は、ロービーム用導光レンズ60Aのロービーム用出光面62Aの下端縁近傍に配置されている。図6は、図2のA-A断面図である。樹脂レンズ50の光軸AX50は、X軸方向に延びている。
【0043】
インナーレンズ60は、ポリカーボネイト製で、耐熱温度は140℃程度である。図6に示すように、インナーレンズ60は、ロービーム用導光レンズ60A、ハイビーム用導光レンズ60Bを含む。ロービーム用導光レンズ60Aは、樹脂レンズ50(レンズ本体51)の焦点F51(及び樹脂レンズ50の光軸AX50)より上方に配置されている。ロービーム用導光レンズ60Aは、車両後方側に配置されたロービーム用入光部61A、車両前方側に配置されたロービーム用出光面62A、ロービーム用入光部61Aとロービーム用出光面62Aとの間に配置されたロービーム用導光部63Aを含む。
【0044】
ロービーム用入光部61Aは、4個のロービーム用光源20Aに対応して4つ設けられている(図3参照)。ロービーム用入光部61Aは、ロービーム用光源20Aが対向した状態でY軸方向に一列に配置されている。ロービーム用光源20Aが発光した光は、当該ロービーム用光源20Aが対向するロービーム用入光部61Aからロービーム用導光レンズ60A内に入光する。なお、図示しないが、ロービーム用出光面62Aの下端縁は、ロービーム用配光パターンの上端縁であるカットオフラインに対応するカットオフ形状(Z型段差部)を含む。
【0045】
一方、図6に示すように、ハイビーム用導光レンズ60Bは、樹脂レンズ50(レンズ本体51)の焦点F51(及び樹脂レンズ50の光軸AX50)より下方に配置されている。ハイビーム用導光レンズ60Bは、車両後方側に配置されたハイビーム用入光部61B、車両前方側に配置されたハイビーム用出光面62B、ハイビーム用入光部61Bとハイビーム用出光面62Bとの間に配置されたハイビーム用導光部63Bを含む。
【0046】
図示しないが、ハイビーム用入光部61Bは、3個のハイビーム用光源20Bに対応して3つ設けられている。ハイビーム用入光部61Bは、ハイビーム用光源20Bが対向した状態でY軸方向に一列に配置されている。ハイビーム用光源20Bが発光した光は、当該ハイビーム用光源20Bが対向するハイビーム用入光部61Bからハイビーム用導光レンズ60B内に入光する。なお、図示しないが、ハイビーム用出光面62Bの上端縁は、ハイビーム用配光パターンの下端縁であるカットオフラインに対応するカットオフ形状(Z型段差部)を含む。上記構成のインナーレンズ60は、ロービーム用入光部61Aとロービーム用光源20Aが互いに対向し、かつ、ハイビーム用入光部61Bとハイビーム用光源20Bが互いに対向した状態で、ベース部41に固定(ねじ固定)される。
【0047】
上記構成の車両用灯具10においては、ロービーム用光源20Aを点灯することにより、ロービーム用配光パターンが形成される。ロービーム用配光パターンは、車両前面に正対した仮想鉛直スクリーン(車両前面から約25m前方に配置されている)上に形成される。
【0048】
具体的には、ロービーム用配光パターンは、次のようにして形成される。
【0049】
すなわち、ロービーム用光源20Aが発光する光は、当該ロービーム用光源20Aが対向するロービーム用入光部61Aからロービーム用導光レンズ60A内に入光する。このロービーム用入光部61Aから入光した光のうち一部の光はロービーム用導光部63Aの下面で全反射されて折り返されロービーム用出光面62Aのうち下端縁近傍及び樹脂レンズ50の光軸AX50近傍の領域から出光する。一方、他の一部の光はロービーム用出光面62Aから直接出光する。これにより、ロービーム用出光面62A(後方焦点面(像面湾曲)近傍)にロービーム用光度分布が形成される。このロービーム用光度分布は、その下端縁近傍及び樹脂レンズ50の光軸AX50近傍の光度が相対的に高い。このロービーム用光度分布が、樹脂レンズ50により前方に反転投影されることにより、ロービーム用配光パターンが形成される。このロービーム用配光パターンは、カットオフライン近傍及びH線とV線との交点近傍の領域が相対的に明るい遠方視認性に優れたものとなる。
【0050】
一方、上記構成の車両用灯具10においては、ハイビーム用光源20Bを点灯することにより、ハイビーム用配光パターンが形成される。ハイビーム用配光パターンは、車両前面に正対した仮想鉛直スクリーン上に形成される。
【0051】
具体的には、ハイビーム用配光パターンは、次のようにして形成される。
【0052】
すなわち、ハイビーム用光源20Bが発光する光は、当該ハイビーム用光源20Bが対向するハイビーム用入光部61Bからハイビーム用導光レンズ60B内に入光する。このハイビーム用入光部61Bから入光した光のうち一部の光はハイビーム用導光部63Bの上面で全反射されて折り返されハイビーム用出光面62Bのうち上端縁近傍及び樹脂レンズ50の光軸AX50近傍の領域から出光する。一方、他の一部の光はハイビーム用出光面62Bから直接出光する。これにより、ハイビーム用出光面62B(後方焦点面(像面湾曲)近傍)にハイビーム用光度分布が形成される。このハイビーム用光度分布は、その上端縁近傍及び樹脂レンズ50の光軸AX50近傍の光度が相対的に高い。このハイビーム用光度分布が、樹脂レンズ50により前方に反転投影されることにより、ハイビーム用配光パターンが形成される。このハイビーム用配光パターンは、カットオフライン近傍及びH線とV線との交点近傍の領域が相対的に明るい遠方視認性に優れたものとなる。
【0053】
また、上記構成の車両用灯具10においては、ロービーム用光源20A及びハイビーム用光源20Bを同時に点灯することにより、ロービーム用配光パターンとハイビーム用配光パターンとを合成した合成配光パターンを形成することができる。
【0054】
次に、ロービーム用光源20A及びハイビーム用光源20Bの少なくとも一方を点灯した場合に発生する熱が伝わる経路について説明する。
【0055】
ロービーム用光源20A及びハイビーム用光源20Bの少なくとも一方を点灯した場合に発生する熱は、基板30、基板後面とベース前面41aとの間に配置された熱伝導部材70、ベース部41、放熱フィン42の順に伝熱されて放熱フィン42から放熱される。その際、一部の熱は、ベース前面41aに設けられたレンズ取付部43(接続部43b、固定部43a)、樹脂レンズ50(フランジ部52a)の順に伝熱される。
【0056】
その際、樹脂レンズ50(フランジ部52a)はベース前面41aから前方に向かって延びるレンズ取付部43(固定部43a)に固定されているため、樹脂レンズ50(フランジ部52a)をベース前面41aに直接固定した場合と比べ、樹脂レンズ50(フランジ部52a)に伝熱される熱が減少する。また、接続部43bに上下方向に貫通する貫通穴H43b(又は切欠部)が形成されているため、接続部43bに当該貫通穴H43b(又は切欠部)を形成しない場合と比べ、樹脂レンズ50(フランジ部52a)に伝熱される熱が減少する。そのため、耐熱温度が低い樹脂レンズ50(例えば、安価なアクリル製樹脂レンズ)を用いた場合でも、当該樹脂レンズ50の変形や溶損をさらに抑制することができる。その結果、樹脂レンズ50の変形や溶損に起因して、配光不良が発生するのをさらに抑制することができる。また、上記のように、ベース部41(ベース前面41a)の外形は正面視で矩形形状であり、ロービーム用光源20A、ハイビーム用光源20Bは正面視でベース部41(ベース前面41a)の中心付近に配置されており、かつ、レンズ取付部43はベース部41(ベース前面41a)の四隅から前方側に延びている。このように、熱源となる光源(ロービーム用光源20A、ハイビーム用光源20B)とレンズ取付部43とを両者間の距離ができる限り遠くなるように配置することで樹脂レンズ50に伝熱される熱さらに減少させることができる。
【0057】
次に、上記のように接続部43bに上下方向に貫通する貫通穴H43b(又は切欠部)を形成することの効果について、比較例と対比しながら説明する。
【0058】
比較例の車両用灯具は、接続部43bに貫通穴H43bが形成されていない点以外、上記構成の車両用灯具10と同様である。
【0059】
シミュレーションで確認したところ、比較例の車両用灯具においては、樹脂レンズ(フランジ部)とヒートシンク(固定部)との当接箇所の温度が最大101.6℃で、樹脂レンズの耐熱温度100℃を超えることが判明した。そこで、本実施形態の車両用灯具10において接続部43bに貫通穴H43bを形成したところ、樹脂レンズ50(フランジ部52a)とヒートシンク40(固定部43a)との当接箇所の温度が3℃程度低下し、樹脂レンズ50の耐熱温度100℃以下となることが判明した。
【0060】
以上のように、接続部43bに上下方向に貫通する貫通穴H43b(又は切欠部)を形成することにより、接続部43bに当該貫通穴H43b(又は切欠部)を形成しない場合と比べ、樹脂レンズ50(フランジ部52a)に伝熱される熱が減少することが分かる。
【0061】
以上説明したように、本実施形態によれば、耐熱温度が低い樹脂レンズ50(例えば、安価なアクリル製樹脂レンズ)を用いた場合でも、当該樹脂レンズ50の変形や溶損を抑制することができる。その結果、樹脂レンズ50の変形や溶損に起因して、配光不良が発生するのを抑制することができる。
【0062】
これは、樹脂レンズ50がベース前面41aから前方に向かって延びるレンズ取付部43(固定部43a)に固定されていることによるものである。
【0063】
また、本実施形態によれば、接続部43bに貫通穴H43b(又は切欠部)を形成しない場合と比べ、樹脂レンズ50に伝熱される熱が減少する。これは、主に、接続部43bに形成された貫通穴H43b(貫通穴H43bの内壁)の分、放熱面積が増加すること、及び、上下方向に貫通する貫通穴H43b(又は切欠部)においてその煙突効果等により発生する対流(図5中の上向きの矢印参照)により放熱が促進されること、によるものである。
【0064】
そのため、耐熱温度が低い樹脂レンズ50(例えば、安価なアクリル製樹脂レンズ)を用いた場合でも、当該樹脂レンズ50の変形や溶損をさらに抑制することができる。その結果、樹脂レンズ50の変形や溶損に起因して、配光不良が発生するのをさらに抑制することができる。
【0065】
上記実施形態で示した数値は全て例示であり、これと異なる適宜の数値を用いることができるのは無論である。
【0066】
上記実施形態はあらゆる点で単なる例示にすぎない。上記実施形態の記載によって本発明は限定的に解釈されるものではない。本発明はその精神又は主要な特徴から逸脱することなく他の様々な形で実施することができる。
【符号の説明】
【0067】
10…車両用灯具
20…光源
20A…ロービーム用光源
20B…ハイビーム用光源
30…基板
31…基板前面
40…ヒートシンク
41…ベース部
41a…ベース前面
41b…ベース後面
42…放熱フィン
43…レンズ取付部
43a…固定部
43b…接続部
50…樹脂レンズ
51…レンズ本体
52…脚部
52aフランジ部
60…インナーレンズ
60A…ロービーム用導光レンズ
60B…ハイビーム用導光レンズ
61A…ロービーム用入光部
61B…ハイビーム用入光部
62A…ロービーム用出光面
62B…ハイビーム用出光面
63A…ロービーム用導光部
63B…ハイビーム用導光部
70…熱伝導部材
AX43a…中心軸
AX50…光軸
51…焦点
43a…ねじ穴
43b…貫通穴
52a…貫通穴
N1…ねじ
図1
図2
図3
図4
図5
図6