(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024171022
(43)【公開日】2024-12-11
(54)【発明の名称】月経用カップ
(51)【国際特許分類】
A61F 5/455 20060101AFI20241204BHJP
【FI】
A61F5/455
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023087859
(22)【出願日】2023-05-29
(71)【出願人】
【識別番号】000225359
【氏名又は名称】内山工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002686
【氏名又は名称】協明国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】松木 克則
【テーマコード(参考)】
4C098
【Fターム(参考)】
4C098AA09
4C098CC31
4C098CC37
4C098CD10
4C098DD23
(57)【要約】
【課題】ステム部を指で摘まみ易く、正しい位置を摘まんでいる実感を得やすい月経用カップを提供する。
【解決手段】月経用カップ1は、上方が開口した受入部を有するカップ本体2と、前記カップ本体の下方側から突出して設けられる棒状のステム部3とを備え、前記ステム部は、前記カップ本体の前記下方側の内面と連通し弾性変形する軟質材料からなる中空構造のつまみ部30と、前記つまみ部の下方側に隣接して設けられる中実構造の下方端部31とを有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
上方が開口した受入部を有するカップ本体と、
前記カップ本体の下方側から突出して設けられる棒状のステム部とを備え、
前記ステム部は、前記カップ本体の前記下方側の内面と連通し弾性変形する軟質材料からなる中空構造のつまみ部と、前記つまみ部の下方側に隣接して設けられる中実構造の下方端部とを有する月経用カップ。
【請求項2】
請求項1において、
前記カップ本体には、前記受入部側から前記下方側に向けて貫通した通気孔が設けられている月経用カップ。
【請求項3】
請求項2において、
前記カップ本体は、前記受入部側に前記カップ本体の他の部位より肉厚に形成されたリム部と、前記カップ本体の内方に窪み前記通気孔を通じた空気の流路となる凹部とを有する月経用カップ。
【請求項4】
請求項3において、
前記凹部は、前記通気孔の下方部位よりも内方に窪んで設けられ、
前記通気孔は、前記リム部の上方側から下方側に向けて設けられる月経用カップ。
【請求項5】
請求項3おいて、
前記凹部は、前記リム部と前記カップ本体の側壁部の境目もしくは前記境目の近傍から内方に窪んで設けられ、
前記通気孔は、前記境目もしくは前記境目の近傍に開口して設けられる月経用カップ。
【請求項6】
請求項3において、
前記凹部は、前記カップ本体の上下方向に沿って細長形状に形成されている月経用カップ。
【請求項7】
請求項1または請求項2において、
前記ステム部の内面は、複数の月経用カップを同じ方向に重ね合わせた際に、重ね合わされるステム部の外面と重なり合う形状に形成され、
前記カップ本体の内面は、前記重ね合わせた際に、重ね合わされるリム部の下部が前記リム部の上方端面に重なり合う形状に形成されている月経用カップ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生理用品のひとつである月経用カップに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、日本国内において、生理用品のひとつとして月経用カップ(Menstrual cup)が普及している。月経用カップの形状・構造は種々あり、例えば下記特許文献1~3が挙げられる。ここに開示されている月経用カップは、いずれも経血を溜めるカップ本体と、挿入・取り出しをサポートするステム部とを備えている。
【0003】
下記特許文献1に開示のものは、ステム部がカップ本体に溜めた経血の排出管になっており、中空構造のステム部内にはオリフィス弁を配されている(特許文献1・
図3等)。下記特許文献2に開示のものは、カップ本体の形状が、断面視において、上端である一端から中央部に向かう側面を外径が徐々に小さくなる傾斜面とし、中央部から他端までの側面を外径が徐々に大きくなる曲面形状としており、これによれば、カップ本体と膣壁との間の摩擦が最小限に抑えることができると記載されている。また下記特許文献2に開示のステム部は、中実構造のもの(特許文献2・FIG3)と、中空構造のもの(特許文献2・FIG4)があり、中空構造のものは、ステム部がカップ本体に溜めた経血の排出管となっているため、開閉弁が設けられている。下記特許文献3に開示のものは、カップ本体の上方の開口部にキャップが設けられており、これによれば、カップ本体に溜めた経血が体内に逆流することを防止すると記載されている。また下記特許文献3に開示のステム部は、中空構造(特許文献3・
図2)となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】中国特許第103705332号明細書
【特許文献2】米国特許出願公開第2019/0021898号明細書
【特許文献3】国際公開第2019/216483号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、月経用カップのステム部は、挿入・取り出しをサポートするだけでなく、装着中において、正しい位置に装着されているかを確認する大切な機能を有している。よって、挿入・取り出し時だけでなく、装着状態においても、下方側から摘まみ易く、指で正しい位置を摘まんでいる感触が得られるものが求められる。
【0006】
しかし、上記特許文献1及び上記特許文献2のようにステム部に経血を排出する機能を持たせたものの場合は、指でつまむ際に弁が当たって摘まみ難い。またステム部に排出機能を持たせると、ステム部の構造が複雑化する傾向となる。しかし、ステム部の径は1cmに満たないサイズで構成されるので、製造が難しいという課題も生じる。さらにステム部が中実構造であると、指で摘まむと硬く、摘まんでいる感触が得難い。
【0007】
上記特許文献3のステム部は、中空構造となっているので、摘み易いが、下方端部が開口しているので、月経用カップを取り出す際には、指が引っ掛かる部位がないので取り出しにくい。また月経用カップは、洗浄・消毒することで繰り返し使用するものであるので、ステム部の下方端部が開口しているとステム部の下方側から水が入り、ステム部内が乾燥し難い。
【0008】
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであり、ステム部を指で摘まみ易く、正しい位置を摘まんでいる実感を得やすい月経用カップを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明の月経用カップの構成1は、上方が開口した受入部を有するカップ本体と、前記カップ本体の下方側から突出して設けられる棒状のステム部とを備え、前記ステム部は、前記カップ本体の前記下方側の内面と連通し弾性変形する軟質材料からなる中空構造のつまみ部と、前記つまみ部の下方側に隣接して設けられる中実構造の下方端部とを有する。
【0010】
以下の実施の形態の記載により、本発明に係る月経用カップは、以下の従属的構成を備えていてもよいことが開示される。
<構成2>
構成1において、カップ本体には、前記受入部側から前記下方側に向けて貫通した通気孔が設けられていてもよい。
<構成3>
構成2において、カップ本体は、前記受入部側に前記カップ本体の他の部位より肉厚に形成されたリム部と、前記カップ本体の内方に窪み前記通気孔を通じた空気の流路となる凹部とを有していてもよい。
<構成4>
構成3において、前記凹部は、前記通気孔の下方部位よりも内方に窪んで設けられ、前記通気孔は、前記リム部の上方側から下方側に向けて設けられていてもよい。
<構成5>
構成3において、前記凹部は、前記リム部と前記カップ本体の側壁部の境目もしくは前記境目の近傍から内方に窪んで設けられ、前記通気孔は、前記境目もしくは前記境目の近傍に開口して設けられていてもよい。
<構成6>
構成3において、前記凹部は、前記カップ本体の上下方向に沿って細長形状に形成されていてもよい。
<構成7>
構成1または構成2において、前記ステム部の内面は、複数の月経用カップを同じ方向に重ね合わせた際に、重ね合わされるステム部の外面と重なり合う形状に形成され、前記カップ本体の内面は、前記重ね合わせた際に、重ね合わされるリム部の下部が前記リム部の上方端面に重なり合う形状に形成されていてもよい。
【発明の効果】
【0011】
本発明の月経用カップは、上述した構成とされているため、ステム部を指で摘まみ易く、正しい位置を摘まんでいる実感を得やすい。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る月経用カップの一例を模式的に示す斜視図である。
【
図2】(a)は
図1のX-X線断面図であり、(b)は
図2のA部の拡大図、(c)はA部が弾性変形した状態を示す断面図である。
【
図3】(a)は
図2(a)のY-Y線断面図であり、(b)は
図3(a)のB部拡大図である。
【
図4】(a)及び(b)は同実施形態に係る月経用カップの持ち方(畳み方)の一例を模式的に示す斜視図である。
【
図5】(a)本発明の第2実施形態に係る月経用カップの一例を模式的に示す斜視図であり、(a)に示す月経用カップを異なる角度から模式的に示す斜視図である。
【
図6】(a)は
図5のZ-Z線断面図であり、(b)は(a)のC部拡大図である。
【
図7】(a)は同月経用カップを複数個、重ね合わせた状態を示す断面図あり、(b)はカップ本体の角度を説明するための説明図である。
【
図8】第1実施形態に係る月経用カップの製造方法を説明するための図であり、成形型の一例を模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
一部の図では、他図に付している詳細な符号の一部を省略している。また以下では、月経用カップが膣内に装着された状態を基準に上下方向を説明する。
【0014】
まずは
図1~
図4を参照しながら、第1実施形態に係る月経用カップ1について説明する。本実施形態に係る月経用カップ1は、
図1等に示すように、上方が開口した受入部4を有するカップ本体2と、カップ本体2の下方側から突出して設けられる棒状のステム部3とを備える。月経用カップ1は、医療用シリコーン樹脂や医療用TPE(熱可塑性エラストマー)等、手で折り畳んで膣内に挿入できる柔らかさ(
図4(a)及び
図4(b)参照)と、膣内に装着し手を放した後には、元の形状(
図1等参照)に復元可能な素材で形成される。また月経用カップ1は洗浄してくり返し使用可能に構成されるため、洗剤による洗浄や煮沸消毒等に耐えられる素材が採用される。
【0015】
月経用カップ1は、膣内に使用者自らによって装着され、膣内で経血を溜める仕組みになっている。カップ本体2は、開口した受入部4が上方になるように膣内に装着され、経血が溜められる形状に形成される。図例のものは、上方が開口した釣鐘状(ベル型)からなり、平面視において円形状のカップ本体2を示しており、カップ本体2は受入部4が最も径が大きく、ステム部3側に向けて次第に径が小さくなる形状となっている。カップ本体2は、受入部4側から下方側に向けてまた下方側から受入部4側に向けて空気が通じるように貫通して設けられた通気孔5と、受入部4側に形成されるとともにカップ本体2の他の部位より肉厚に形成されたリム部20と、カップ本体2の内方に窪み、通気孔5を通じた空気の流路となる凹部21とを有する。カップ本体2に溜められる経血量は、特に限定されないが、例えば25ml~35ml程度としてもよい。
【0016】
リム部20は、カップ本体2の上方の開口部位に周方向に設けられ、カップ本体2の側壁部23の厚みより肉厚に形成されている。リム部20は、膣の形状に応じて形状を変えられる柔軟性と受入部4の形状を保持する保形性を備えている。このリム部20があることで、受入部4の形状を保持した状態で、リム部20を膣壁に安定して密着させることができ、カップ本体2と膣壁との間から経血が漏れるのを防ぐことができる。リム部20の上方端面20aは、凹凸のない平坦面とされ、角部は丸みを帯びた形状とされる。凹部21の形成位置の直上部位に相当するリム部20の上方端面20aには、凹部21が内方へ窪んだ分だけ、幅広に形成された幅広部20bが設けられ、この幅広部20bに通気孔5が形成されている。
【0017】
カップ本体2の外面23aにおける下方側の次第に縮径する湾曲部位には、複数のリブ22が設けられている。複数のリブ22は、カップ本体2の外面23aに周方向に間隔を空けて、略平行に且つ筋状の突条に形成され、その断面は半円弧状(
図3(a)参照)に形成されている。リブ22は、図例のように複数設けられることで、カップ本体2を指で掴むときの滑り止めとして機能する。またこのリブ22は、月経用カップ1を膣内から取り出すときの、カップ本体2の位置の手がかりにすることができる。さらにリブ22があることで、
図4(a)や
図4(b)に示すように折り畳まれた状態から元の形状に戻りやすくすることができる。
【0018】
図2(b)及び
図2(c)に示すようにステム部3は、外側から指で摘まむと弾性変形する軟質材料からなる中空構造のつまみ部30と、つまみ部30の下方側に隣接して設けられる中実構造の下方端部31とを有する。カップ本体2の内面23b側とステム部3のつまみ部30の内面30b側とは、連通して形成されており、カップ本体2とステム部3との境目に連通部6が設けられている。連通部6は、中空構造で構成され、弁等の突起がないため、月経用カップ1を洗浄する際に、つまみ部30内に水が浸入しても、連通部6を介してカップ本体2から速やかに水を排水させることができ、清潔に使用することができる。ステム部3は、月経用カップ1の挿入・取り出しをサポートするだけでなく、装着中において、正しい位置に装着されているかを確認する機能を有する。つまみ部30の長さ寸法は、特に限定されないが、親指と人差し指とで摘まんだ際に摘まみ易いサイズがよい。よって、1.5mm~2.2mm程度が望ましい。またつまみ部30の側壁部30cの厚みは、図例のようにカップ本体2の側壁部23の厚みと同等としてもよい。ステム部3の下方端部31は、
図2(b)等に示すとおり、断面略円形状に形成されており、先端部31aは、円弧状に形成され、丸みを帯びた形状とされる。下方端部31の寸法は、特に限定されないが、0.3mm~0.6mm程度が望ましい。
【0019】
このようにステム部3のつまみ部30が、弾性変形する軟質材料からなる中空構造で、つまみ部30に隣接する下方端部31が中実構造とされているので、使用者が指でつまみ部30を摘まむと、
図2(c)に示すとおり、つまみ部30が容易に弾性変形する。よって、ステム部3を指で摘まみ易く、正しい位置を摘まんでいる実感が得やすい。すなわち、月経用カップ1を装着後に使用者自らが正しい位置に装着されているか、視認することができないため、手探りでステム部3の位置を確認することになるが、つまみ部30が中空構造で、指で摘まむと凹むため、その凹みを感じて装着状態が正しくなされているか、確認することができる。またステム部3の下方端部31が、中実構造とされているので、つまみ部30を摘まんだ指の引っ掛かり部位(だまができる)となる。よって、月経用カップ1を装着後、取り出す際の手がかりとすることができ、下方端部31に摘まんだ指をかるく引っ掛けるようにすれば、スムーズに取り出し易くなる。
【0020】
凹部21は、カップ本体2の外面23aの一部が内方に窪み、通気孔5を通じた空気の流路となる。凹部21は、カップ本体2の上下方向に沿って細長形状に且つ側面視において略U字形状に窪んで形成されている。カップ本体2の側壁部23の厚み自体は凹部21の形成部位も同じ厚みで構成されている。よって、凹部21の形成部位における側壁部23の内面23bは、
図1に示すように内面23b側へ出っ張っている。
【0021】
通気孔5は、リム部20の上方側から下方側、具体的には、リム部20の上方端面20aの幅広部20bからリム部20の下部20c(ステム部3側)に向けて設けられた貫通孔で、1mm前後の中空の小さな孔である。通気孔5は、肉厚のリム部20内を貫通して設けられ、空気を出し入れする役割を担っている。例えば、月経用カップ1を膣内に装着する際には、折り畳んだ状態で膣内に挿入されたカップ本体2から指を放したときに、カップ本体2が
図1に示す本来の形状にぱっと開いて元に戻すために、通気孔5を通じて空気を取り込む。このとき、カップ本体2と子宮側との間に吸引力が発生するが、通気孔5から空気を取り込むことで、カップ本体2を膣壁に密着させることができる。また、月経用カップ1を膣内から取り外す際には、密閉状態になっているカップ本体2の底、すなわちリブ22周辺を押して空気を抜く必要があるが、このときの空気抜きは、通気孔5を通じて行われる。通気孔5は、リム部20の上方端面20aの幅広部20bの略中央に形成され、その上方部位5aから下方部位5bに向けて湾曲することなくストレートに形成されている。月経用カップの中には、カップ本体の側壁部に通気孔が形成され、横方向に空気が抜けるタイプのものがあるが、装着の仕方によっては空気が抜きにくい場合がある。本実施形態によれば、凹部21は、通気孔5の下方部位5bよりもさらに内方に窪んで設けられ、通気孔5は、リム部20の上方端面20aから下方側に向けて設けられているので、通気孔5を通じた空気が上方部位5aから下方部位5b、すなわち縦方向に空気が流通することを邪魔するものがない。よって、通気孔5を通じる空気を確実にカップ本体2の内外へ抜くことができる。また本実施形態に係る凹部21と通気孔5の構成によれば、カップ本体2の容積減少を抑制しつつ、リム部20の上方端面20aから下部20c側に向けて縦方向に貫通した通気孔5が設けられた月経用カップ1を構成することができる。また通気孔5が、リム部20に形成されているので、カップ本体2の容量に影響がなく、また通気孔5から経血が漏れることも抑制できる。
【0022】
通気孔5の形成位置や数は図例に限定されないが、本実施形態によれば、縦方向へ空気が出入りできる通気孔5を備えたものとできるので、対向して2つ形成されていれば十分である。また月経用カップ1の持ち方(畳み方)も特に限定されないが、
図4には、月経用カップ1の持ち方の一例を示している。
図4(a)は、半分に折り畳むCフォールドと呼ばれている持ち方で、通気孔5,5が形成されている位置で半分に折り畳んだ状態を示している。
図4(b)は、リム部20の一部を内側に押し込むようにして折り畳むパンチダウンフォールドと呼ばれる持ち方で、通気孔5,5が形成されていない位置を内側に折り畳んだ状態を示している。いずれの場合も、本実施形態によれば、対向して設けられた通気孔5,5の位置を目印にすれば、容易に折り畳むことができる。
【0023】
次に
図5~
図7を参照しながら、第1実施形態に係る月経用カップ1とは異なる実施形態として、第2実施形態に係る月経用カップ1Aについて説明する。同様の構成については同一の符号を付し、主に第1実施形態のものと異なる点について説明をする。
【0024】
本実施形態に係る月経用カップ1Aは、カップ本体2の受入部4側から下方側に向けて貫通した通気孔5が設けられている点では共通するが、凹部21がリム部20とカップ本体2の側壁部23の境目(リム部20の下部20c)から内方に窪んで設けられ、通気孔5が境目(リム部20の下部20c)部位に開口して設けられている点で第1実施形態とは異なる。またステム部3の長さは、第1実施形態のものより長く構成されており、カップ本体2の外面23a及びステム部3の外面30aの傾斜角度θが、月経用カップ1Aを
図7(a)に示すように重ねた際に、重なり合うように構成されている点でも第1実施形態とは異なる。なお、ここでは、凹部21が、リム部20とカップ本体2の側壁部23の境目から内方に窪んで設けられている例を示しているが、境目(リム部20の下部20c)から間隔を空けた位置、すなわち、凹部21がリム部20とカップ本体2の側壁部23の境目の近傍から内方に窪んで設けられていてもよい。また、ここでは通気孔5がリム部20とカップ本体2の側壁部23の境目に開口して設けられている例を示しているが、通気孔5の形成されている部位は、当該境目(リム部20の下部20c)から間隔を空けた位置、すなわち境目の近傍であってもよい。
【0025】
通気孔5は、貫通して形成され、
図5(a)及び
図5(b)に示すように平面視において三日月型に形成されるため、第1実施形態に示す円形の通気孔5に比べて、大きい通気孔とすることができる。凹部21は、通気孔5の開口部位であるリム部20とカップ本体2の側壁部23の境目(リム部20の下部20c)から側壁部23の略中央部位に亘って内方に窪んで設けられ、凹部21は、カップ本体2の上下方向に沿って細長形状に且つ側面視において略U字形状に窪んで形成されている。本実施形態によれば、凹部21がリム部20の下部20cから通気孔5が開口した分、内方に窪んで設けられ、通気孔5を通じた空気が受入部4から下方側、すなわち縦方向に空気が流通することを邪魔するものがない。よって、通気孔5を通じる空気をより一層、円滑かつ確実にカップ本体2の内外へ抜くことができる。また本実施形態に係る凹部21と通気孔5の構成によれば、カップ本体2の容積減少を抑制しつつ、空気が出入りしやすい通気孔5が設けられた月経用カップ1Aを構成することができる。また通気孔5の形成位置が、リム部20とカップ本体2の境目であるので、カップ本体2の容量に影響がなく、また通気孔5から経血が漏れることも抑制できる。
【0026】
また本実施形態に係る月経用カップ1Aは、ステム部3の内面30bは、複数の月経用カップ1A,1Aを同じ方向に重ね合わせた際に、重ね合わされるステム部3の外面30aと重なり合う形状に形成され、カップ本体2の内面23bは、重ね合わせた際に、重ね合わされるリム部20の下部20cがリム部20の上方端面20aに重なり合う形状に形成されている。具体的には、カップ本体2の側壁部23の外面23aは、リム部20の直下から側壁部23の上下方向の略中央部位まで、リム部20の上方端面20aに対して略垂直な仮想線L2(
図7(b)参照)に対して若干傾斜して形成されている。また側壁部23の外面23aは、
図6(a)に示すとおり、上下方向の略中央部位から連通部6までは、緩やかな湾曲形状の椀型に形成されている。側壁部23の外面23aの傾斜方向は、カップ本体2の下方側にむけて次第に縮径する方向に傾斜して形成されている。この場合、
図7(b)に示すとおり、傾斜角度θは、側壁部23の厚み寸法及びリム部20の高さ寸法に応じて、三角関数を用いて角度計算を行い算出された数値に基づいている。具体的には、傾斜角度θはsinθ=t/hで計算でき、このときのtは側壁部23の厚み寸法、hはリム部20の高さ寸法である。よって例えば、側壁部23の厚み寸法がt=0.4mm、リム部20の高さ寸法がh=5mmの場合、sinθ=0.4/5=0.08となり、傾斜角度θ=4.58°と算出できる。このようにリム部20の直下のカップ本体2の外面23aの傾斜角度を仮想線L2に対して約5°程度に設定し、ステム部3側へ向けて次第に縮径する形状とすれば、
図7(a)に示すようにカップ本体2同士を重ね合わせるとき、カップ本体2がよれたり、折れ曲がったりすることなくカップ本体2内で別のカップ本体2を重ね合わせることができる。また、リム部20の直下に別の月経用カップ1Aのリム部20を近接させた状態で重ねることができる。
【0027】
さらに本実施形態では、つまみ部30の側壁部30cの厚みt’(
図6(a)参照)と側壁部23の厚みt(
図7(b)参照)は同じであるので、ステム部3のつまみ部30の外面30aの傾斜角度θも、連通部6から下方端部31の中央位置31bまで、リム部20の上方端面20aに対して略垂直な仮想線L1(
図6(a)参照)に対して若干傾斜して形成されている。ステム部3の外面30aの傾斜方向は、ステム部3の下方端部31の先端部31a側にむけて次第に縮径する方向に傾斜している。これにより、
図7(a)に示すようにカップ本体2同士を重ね合わせれば、ステム部3同士も重ね合わせることができ、ステム部3内に重ね合わされるステム部3を納めることができる。また本実施形態の月経用カップ1Aによれば、月経用カップ1Aを複数個重ねて搬送できるので、嵩張らせることなく、重ね合わせることができる。よって、搬送するに嵩張らず、搬送コストを低減することができる。また嵩張ることなく、パッケージ化し易いので、例えば商品として月経用カップ1Aを販売する際に3~5個を重ねてセット販売する場合でも嵩張らない仕様にできる。
【0028】
次に月経用カップ1の製造方法を
図8を参照しながら説明する。
図8には、月経用カップ1を製造するための成形型100の一例を模式的に断面図で示している。成形型100は、第1型200と第2型300とを備え、第1型には、カップ本体2、リム部20、リブ22,ステム部3を模るキャビティ101と、溶融樹脂が流れ込む樹脂供給路102が設けられている。また不図示であるが、第1型200には凹部21を模る凸部、第2型300には通気孔5を形成する凸部も設けられている。なお、第1型200と第2型300とはいずれか一方が可動型、他方が固定型として構成される。
【0029】
従来、円筒形状のステム部の外面に複数のリブを備えたものやカップ本体に形成される通気孔がカップ本体の側面に横方向(左右方向)に設けられている場合、成形型は左右方向に型開きする構造とする必要があり、型構造が複雑化しコストアップの要因となる課題がある。本実施形態にかかる月経用カップ1は、通気孔5が縦方向に形成され、またステム部3とカップ本体2とが連通した構造で、ステム部3のつまみ部30は中空構造であるので、
図8に示すような上下方向に型開きする構造の成形型100を採用できる。よって、型構造を簡略化することができ、成形を容易にできる。
【0030】
上述した各実施形態における月経用カップ1,1Aの構成・形状は図例に限定されるものではない。通気孔5、凹部21、リブ22、ステム部3、リム部20等の構成やその形成されている数等も図例に限定されない。例えばリム部20の上方端面20aは図例のように平坦でなく、凸部や凹部が周方向に連続して、或いは適宜間隔を空けて形成されていてもよい。通気孔5の形成位置は、
図1等に示すようにリム部20の上方端面20aに限定されない。また凹部21の窪み寸法も図例に限定されず、図例のものよりも深く窪んでいてもよいし、図例のものよりも浅く広く窪んでいてもよい。さらに
図5等に示す通気孔5の開口度合いも、凹部21の窪んだ分だけ開口するのではなく、一部が開口した構成でもよい。またカップ本体2の形状も図例に限定されず、V字型でもよく、色付きのものであってもよい。
【符号の説明】
【0031】
1,1A 月経用カップ
2 カップ本体
20 リム部
21 凹部
22 リブ
23 側面
23a 外面
23b 内面
3 ステム部
30 つまみ部
31 下方端部
4 受入部
5 通気孔
6 連通部