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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024171026
(43)【公開日】2024-12-11
(54)【発明の名称】アクリル系エラストマー共重合体
(51)【国際特許分類】
   C08F 20/18 20060101AFI20241204BHJP
   C08F 12/32 20060101ALI20241204BHJP
   C08F 10/02 20060101ALI20241204BHJP
   C08F 20/06 20060101ALI20241204BHJP
   C08F 20/32 20060101ALI20241204BHJP
   C08F 12/18 20060101ALI20241204BHJP
   C08F 18/20 20060101ALI20241204BHJP
【FI】
C08F20/18
C08F12/32
C08F10/02
C08F20/06
C08F20/32
C08F12/18
C08F18/20
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023087864
(22)【出願日】2023-05-29
(71)【出願人】
【識別番号】502145313
【氏名又は名称】ユニマテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114351
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 和子
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 智
【テーマコード(参考)】
4J100
【Fターム(参考)】
4J100AA02R
4J100AB07Q
4J100AB08S
4J100AG08S
4J100AJ02S
4J100AJ09S
4J100AL02P
4J100AL03P
4J100AL04P
4J100AL05P
4J100AL08P
4J100AL10S
4J100AL36S
4J100BA02P
4J100BB01S
4J100BC48P
4J100BC65Q
4J100BC83Q
4J100CA03
4J100DA22
4J100DA47
4J100FA03
4J100FA21
4J100GC16
4J100GC17
4J100GC25
4J100HA53
4J100HC43
4J100HC46
4J100HE17
4J100HG31
4J100JA28
(57)【要約】
【課題】 熱酸化劣化に対して安定化されたアクリル系エラストマー共重合体を提供する。
【解決手段】 一般式
(ここで、R1は炭素数1~10の一価の脂肪族炭化水素基であり、R2は水素原子またはメチル基である)で表されるフェノチアジン誘導体化合物0.01~3重量%、エチレン単量体0.5~10重量%、アルキル(メタ)アクリレート単量体および/またはアルコキシアルキル(メタ)アクリレート単量体82~98.99重量%および架橋部位単量体0.5~5重量%を含有して構成されるアクリル系エラストマー共重合体。
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式
(ここで、R1は炭素数1~10の一価の脂肪族炭化水素基であり、R2は水素原子またはメチル基である)で表されるフェノチアジン誘導体化合物0.01~3重量%、エチレン単量体0.5~10重量%、アルキル(メタ)アクリレート単量体および/またはアルコキシアルキル(メタ)アクリレート単量体82~98.99重量%および架橋部位単量体0.5~5重量%を含有して構成されるアクリル系エラストマー共重合体。
【請求項2】
架橋部位単量体がα,β-不飽和カルボン酸単量体である請求項1記載のアクリル系エラストマー共重合体
【請求項3】
架橋部位単量体が活性塩素含有不飽和単量体である請求項1記載のアクリル系エラストマー共重合体
【請求項4】
架橋部位単量体がエポキシ基含有不飽和単量体である請求項1記載のアクリル系エラストマー共重合体
【請求項5】
請求項1記載のアクリル系エラストマー共重合体に架橋剤を配合してなる架橋性アクリル系エラストマー共重合体組成物。
【請求項6】
請求項5記載の架橋性アクリル系エラストマー共重合体組成物の架橋成型物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はアクリル系エラストマー共重合体に関する。さらに詳しくは、熱酸化劣化に対して安定化されたアクリル系エラストマー共重合体に関する。
【背景技術】
【0002】
アクリル系エラストマー共重合体は、耐熱性、耐油性および耐寒性の性能バランスに優れ、価格も妥当であることから、ガソリンエンジンやディーゼルエンジン等の自動車エンジンに代表される内燃機関周辺のゴム部材等に用いられる。
【0003】
アクリル系エラストマー共重合体製造工程では、原料モノマーの重合後、重合乳化液または重合溶液にフェノール系酸化防止剤等が添加され、凝析・乾燥・貯蔵における熱履歴による共重合体の酸化劣化を防止することが行われる。重合乳化液または重合溶液に酸化防止剤を添加するに際しては、溶剤または界面活性剤を用いて分散液または乳化液として加えることもできる。
【0004】
また、自動車エンジン周辺は温度等の使用環境が過酷であるため、使用されるゴム部材には新たに酸化防止剤が添加され、酸素やオゾンによる酸化劣化を防止しその長寿命化が図られている。具体的には、架橋物の製造工程においてアクリル系エラストマー共重合体の架橋性組成物にアミン系酸化防止剤等が添加される。アミン系酸化防止剤の添加に際しては、その種類によって、人体との接触を避ける等の労働安全衛生上の対策が必要となる場合がある。またその混和工程においてはその分散不良が懸念される場合もある。
【0005】
さらに、架橋物の使用時においては酸化防止剤の表面移行、高温による揮散、水、油脂、有機溶剤等による抽出などにより架橋物中の酸化防止剤が時間の経過とともに失われ、本来の酸化防止機能が低下してしまう。その結果、熱酸化劣化による機械的物性等の諸物性が低下するといった問題を引き起こす場合がある。さらに、酸化防止剤が水等により外部環境に揮散することは、環境保全の点から好ましくない。
【0006】
例えば、アクリル系エラストマー共重合体の場合では、アミン系酸化防止剤として4,4′-ビス(α,α-ジメチルベンジル)ジフェニルアミンが用いられているが、上記の問題および多様な環境下における製品の長寿命化等の課題を十分に満足させることはできない。
【0007】
その対応策として長年にわたって、アミン系酸化防止剤の高分子量化および高融点化の検討がなされているが、そこではゴムに対する分散性およびゴム内部での移行性が低下するなどの問題がある。
【0008】
また、エラストマー性重合体の変性反応により、ジフェニルアミノ構造を重合体に導入する方法がいくつか開示されている(特許文献1~2、非特許文献1)。しかしながら、これらの方法は、もととなる共重合体を製造した後にジフェニルアミノ基を導入する変性工程がさらに必要となり、製造コストの面から実用的ではない。
【0009】
また、重合性不飽和基を有するジフェニルアミン誘導体化合物を重合性不飽和単量体と共重合することで、ジフェニルアミノ基を高分子鎖に導入する方法がいくつか開示されている。例えば非特許文献2には、N-(4-アニリノフェニル)メタクリルアミドをブタジエンおよびアクリロニトリルと共重合する方法が、また特許文献3には、N-(4-アニリノフェニル)メタクリルアミドをアルキルアクリレート単量体と共重合する方法などが提案されている。しかしながら、N-(4-アニリノフェニル)メタクリルアミドのジフェニルアミノ基は、ラジカル重合反応を抑制する作用があるため有効な方法とは言い難い。
【0010】
さらに、4,4′-ビス(α,α-ジメチルベンジル)ジフェニルアミン等のアミン系酸化防止剤の代わりに、フェノチアジン誘導体化合物を用いる新たな手法も提案されている(特許文献4~5)。
【0011】
ここで、重合性不飽和基としてビニル基を有するフェノチアジン誘導体化合物の合成、重合および重合物の酸化防止剤への応用については、例えば非特許文献3~4において公知である。
【0012】
また、重合性不飽和基としてビニル基を有しかつ10位の窒素上の水素原子がメチル基で置換されたフェノチアジン誘導体化合物の合成、重合および酸化還元特性については、非特許文献5~6において公知である。
【0013】
しかるに非特許文献3~6何れにおいても、ビニル基を有しかつ10位の窒素上の水素原子がアルキル基で置換されたフェノチアジン誘導体化合物をエチレン単量体およびアクリレート単量体と共重合することによって、アクリル系エラストマー共重合体が熱酸化劣化に対して安定化される効能については何ら記載されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特開平4-264106号公報
【特許文献2】特開平5-230132号公報
【特許文献3】特開2009-209268号公報
【特許文献4】特開2015-227402号公報
【特許文献5】WO2011/093443 A1
【非特許文献】
【0015】
【非特許文献1】Rubber Chem.Technol., 45巻、204頁(1972)
【非特許文献2】Rubber Chem.Technol., 52巻、883頁(1979)
【非特許文献3】J.Poly.Sci.,2巻、3603頁(1964)
【非特許文献4】Russian Journal of Applied Chemistry,76巻、1327頁(2003)
【非特許文献5】Macromolecules,20巻、978頁(1987)
【非特許文献6】Energy Environ.Sci,10巻、2384頁(2017)
【非特許文献7】Organic Letters、23巻、4564頁(2021)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
本発明の目的は、上述の課題に鑑みてなされたものであり、熱酸化劣化に対して安定化されたアクリル系エラストマー共重合体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明の目的は、一般式
(ここで、R1は炭素数1~10の一価の脂肪族炭化水素基であり、R2は水素原子またはメチル基である)で表されるフェノチアジン誘導体化合物0.01~3重量%、エチレン単量体0.5~10重量%、アルキル(メタ)アクリレート単量体および/またはアルコキシアルキル(メタ)アクリレート単量体82~98.99重量%および架橋部位単量体0.5~5重量%を含有して構成されるアクリル系エラストマー共重合体によって達成される。
【発明の効果】
【0018】
本発明のアクリル系エラストマー共重合体により、共重合体製造工程における熱履歴による熱劣化または熱酸化劣化を防止することが可能となる。
【0019】
具体的には、例えば本発明のアクリル系エラストマー共重合体を乳化重合により製造する場合、それ自体がもつ酸化劣化防止作用により重合乳化液貯蔵時における共重合体の変質を防止することができる。
【0020】
さらに、共重合体凝析工程後の熱風乾燥工程または押し出し乾燥工程においては、アクリル系エラストマー共重合体自体が有する酸化劣化防止作用によりその変質を防止するとともに、乾燥した共重合体を空気中で長期間貯蔵することを可能とする。このように本発明のアクリル系エラストマー共重合体は、製造工程および貯蔵段階における熱履歴に起因する熱劣化あるいは熱酸化劣化から安定化されているため、酸化防止剤添加工程を省くことが出来るなどその生産性および貯蔵安定性の向上に有効である。
【0021】
また、アクリル系エラストマー共重合体を用いた架橋性組成物の製造工程においては、アミン系酸化防止剤を新たに計量・添加・混和する工程を省くことができ、生産工程を簡略化できる。同時に、アミン系酸化防止剤の分散不良に起因する不具合の可能性を解消することができる。
【0022】
そして本発明のアクリル系エラストマー共重合体を架橋してなるゴム部材は、酸化防止剤の表面移行に伴う外観不良の問題が解決されるとともに、熱による酸化防止成分の揮散、または水、油脂や有機溶剤等の液状媒質による酸化防止成分の抽出が抑制されるため、結果的に多様な劣化環境下におけるアクリル系ゴム部材の長寿命化を可能とするといったすぐれた効果を奏する。
【0023】
そのうえ、酸化防止成分が高分子鎖に直接化学結合しているため、従来の酸化防止剤と比べて酸化防止成分の使用量を大幅に低減することができるといった利点を有している。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明は、アクリル系エラストマー共重合体に係るものであり、一般式
(ここで、R1は炭素数1~10の一価の脂肪族炭化水素基であり、R2は水素原子またはメチル基である)で表されるフェノチアジン誘導体化合物、エチレン単量体、アルキル(メタ)アクリレート単量体および/またはアルコキシアルキル(メタ)アクリレート単量体および架橋部位単量体を含有して構成される。
【0025】
一般式〔I〕で表されるフェノチアジン誘導体化合物において、R1の具体的としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、n-ブチル基、n-ペンチル基、n-ヘキシル基、n-ヘプチル基、n-オクチル基、2-エチルヘキシル基、n-ノニル基、イソプロピル基、2-ブチル基、2-ペンチル基、3-ペンチル基、2-ヘキシル基、3-ヘキシル基、2-ヘプチル基、3-ヘプチル基、4-ヘプチル基、2-オクチル基、3-オクチル基、4-オクチル基、第3ブチル基、1,1-ジメチル-1-プロピル基、1,1-ジメチル-1-ブチル基、1,1-ジメチル-1-ペンチル基、1,1-ジメチル-1-ヘキシル基、3-メチル-3-ペンチル基、3-エチル-3-ペンチル基、3-メチル-3-ヘキシル基、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘブチル基、1-メチル-1-シクロペンチル基、1-メチル-1-シクロヘキシル基、1-アダマンチル基等が挙げられる。
【0026】
フェノチアジン誘導体化合物〔I〕の具体例として、2-エテニル-10-メチル-10H-フェノチアジン、2-(1-メチルエテニル)-10-メチル-10H-フェノチアジン、3-エテニル-10-メチル-10H-フェノチアジン、3-(1-メチルエテニル)-10-メチル-10H-フェノチアジン等が挙げられる。
【0027】
フェノチアジン誘導体化合物〔I〕の製造方法に特に制限は無く、ジフェニルアミンまたは10H-フェノチアジンを出発原料として製造することができる。例えば非特許文献6~7にはそれぞれ、3-エテニル-10-メチル-10H-フェノチアジン、2-(1-メチルエテニル)-10-メチル-10H-フェノチアジンを製造する方法が記載されている。
【0028】
フェノチアジン誘導体化合物〔I〕において、10位の水素原子が脂肪族炭化水素基に置き換わることによって、フェノチアジン特有のラジカル重合禁止作用が抑制され、結果的に種々の重合性不飽和単量体とのラジカル共重合が可能となりかつ高分子量の共重合体を製造することができる。
【0029】
同時に、アルキルリチウム化合物等の塩基性化合物に対して活性な10位の水素原子が脂肪族炭化水素基で置き換わることによって、水素引き抜き反応が実質的に回避されるので、種々の重合性不飽和単量体とのアニオン共重合も可能となる。
【0030】
一般式〔I〕で表されるフェノチアジン誘導体化合物とエチレン単量体、アルキル(メタ)アクリルおよび/またはアルコキシアルキル(メタ)アクリレート単量体および架橋部位単量体との共重合に際し、〔I〕は、単量体混合物100重量部中約0.01~3重量部、好ましくは約0.05~1重量部用いられる。これより少ない割合で用いられると、十分な酸化防止効果が見込まれず、一方これより多い割合で用いられたとしても、酸化防止効果の向上は見込まれず、不経済である。
【0031】
本発明のアクリル系エラストマー共重合体を構成するエチレン単量体は、単量体混合物100重量部中約0.5~10重量部、好ましくは1~5重量部である。0.5重量部より少ない場合には、熱老化試験において共重合体の分子量が低下し軟化劣化の原因となる。また、10重量部より多い場合には、熱老化試験においてエチレン単量体に由来する高分子鎖の架橋反応が優勢となり、架橋物の伸びの低下を引き起こす傾向にある。
【0032】
本発明のアクリル系エラストマー共重合体を構成するアルキル(メタ)アクリレート単量体および/またはアルコキシアルキル(メタ)アクリレート単量体としては、炭素数1~20のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレート、炭素数7~20のアラルキル基を有するアラルキル(メタ)アクリレートおよび炭素数2~20のアルコキシアルキル基を有するアルコキシアルキル(メタ)アクリレートから選ばれる少なくとも1種類の(メタ)アクリレートが用いられる。
【0033】
アルキル(メタ)アクリレートとしては、例えばメチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、n-ヘキシル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n-オクチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、n-デシル(メタ)アクリレート、n-ドデシル(メタ)アクリレート、n-オクタデシル(メタ)アクリレート等が用いられる。
【0034】
アラルキル(メタ)アクリレートとしては、例えばベンジル(メタ)アクリレート等が用いられる。
【0035】
また、アルコキシアルキル(メタ)アクリレートとしては、例えばメトキシメチル(メタ)アクリレート、メトキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシエチル(メタ)アクリレート、n-ブトキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシプロピル(メタ)アクリレート、メトキシエトキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシエトキシエチル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノメチルエーテル(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノエチルエーテル(メタ)アクリレート等が用いられる。
【0036】
本発明のアクリル系エラストマー共重合体を構成するアルキル(メタ)アクリレート単量体および/またはアルコキシアルキル(メタ)アクリレート単量体は、単量体混合物100重量部中、約82~98.99重量部、好ましくは91~98重量部である。
【0037】
本発明のアクリルエラストマー共重合体を構成する架橋部位単量体としては、α,β-不飽和カルボン酸単量体、活性塩素含有不飽和単量体またはエポキシ基含有不飽和単量体が用いられる。
【0038】
α,β-不飽和カルボン酸単量体としては、一塩基性α,β-不飽和カルボン酸、二塩基性α,β-不飽和カルボン酸または二塩基性α,β-不飽和カルボン酸モノアルキルエステルが挙げられる。
【0039】
一塩基性α,β-不飽和カルボン酸としては、アクリル酸、メタクリル酸等が挙げられる。
【0040】
二塩基性α,β-不飽和カルボン酸としては、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸等が挙げられる。
【0041】
二塩基性α,β-不飽和カルボン酸モノアルキルエステルとしては、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸のモノアルキルエステル等が挙げられる。具体例として、マレイン酸モノメチル、マレイン酸モノエチル、マレイン酸モノn-プロピル、マレイン酸モノイソプロピル、マレイン酸モノn-ブチル、マレイン酸モノイソブチル、マレイン酸モノn-ヘキシル、マレイン酸モノシクロヘキシル、フマル酸モノメチル、フマル酸モノエチル、フマル酸モノn-プロピル、フマル酸モノイソプロピル、フマル酸モノn-ブチル、フマル酸モノイソブチル、フマル酸モノn-ヘキシル、フマル酸モノシクロヘキシル等が挙げられる。
【0042】
活性塩素含有不飽和単量体としては、4-クロロメチルスチレン、クロロ酢酸ビニル等が挙げられる。
【0043】
エポキシ基含有不飽和単量体としては、グリシジルアクリレート、グリシジルメタアクリレート等が挙げられる。
【0044】
本発明のアクリルエラストマー共重合体中の架橋部位単量体は、0.5~5重量%、好ましくは1~3重量%の割合で共重合される。
【0045】
また、これら本発明のアクリルエラストマー共重合体の主要成分以外に、必要に応じて他の重合性不飽和単量体を用いることができる。
【0046】
他の重合性不飽和単量体としては、例えばスチレン、α-メチルスチレン、3-メチルスチレン、4-メチルスチレン、1-ビニルナフタレン、2-ビニルナフタレン、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、アクリル酸アミド、酢酸ビニル、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、プロピレン、ピペリレン、ブタジエン、イソプレン、クロロプレン、シクロペンタジエン、塩化ビニル、塩化ビニリデン等が挙げられる。
【0047】
アクリルエラストマー共重合体は、一般的なアクリルゴムの共重合方法によって製造される。共重合反応は、乳化重合法、けん濁重合法、溶液重合法、塊状重合法など任意の方法で行ない得る。
【0048】
例えば乳化重合法が用いられる場合、約-10~100℃、好ましくは約5~80℃の反応温度で反応が行われる。
【0049】
重合に使用する乳化剤に制約はないが、中でもPVAを乳化剤としたものは特 に好ましい。PVAの種類は、部分ケン化PVA、完全ケン化PVAあるいは変性PVAの内で如何なるものでも良い。
【0050】
反応の重合開始剤としては、ベンゾイルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、第3ブチルヒドロパーオキサイド、クミルヒドロパーオキサイド、p-メチレンヒドロパーオキサイド等の有機パーオキサイドまたは有機ヒドロパーオキサイド、アゾビスイソブチロニトリル、アゾビスイソブチルアミジン等のジアゾ化合物、過硫酸アンモニウムによって代表されるアンモニウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩等の過酸化物塩などが単独であるいはレドックス系として用いられる。
【0051】
重合反応は、単量体混合物の転化率が90%以上に達する迄継続される。
【0052】
水性乳化液からアクリル系エラストマー共重合体を凝固させる方法としては、塩-酸凝固法、塩化カルシウム、硫酸マグネシウム、硫酸ナトリウム、硫酸アンモニウム、カリミョウバン等の水溶性無機電解質化合物を用いる方法、ホウ酸、四ホウ酸カリウム、四ホウ酸水素アンモニウム四ホウ酸ナトリウム(ホウ砂)等のホウ素化合物を用いる方法、熱による凝固法、凍結凝固法などが例示される。特に、PVAを乳化系として使用する場合にはホウ砂が最も効果的な凝固剤であり好ましい。
【0053】
得られた水性乳化液から凝固された共重合体は十分に水洗、乾燥される。このアクリル系エラストマー系共重合体は、約5~100、好ましくは約20~80のムーニー粘度ML1+4(100℃)を有する。
【0054】
本発明のアクリル系エラストマー共重合体は、用いられた架橋部位単量体の種類に応じた架橋剤とともに、架橋性アクリル系エラストマー共重合体組成物を形成することができる。
【0055】
ここで、例えば架橋部位単量体がα,β-不飽和カルボン酸単量体の場合には、多価アミン化合物が架橋剤として用いられる。
【0056】
多価アミン架橋剤としては、ヘキサメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミンカルバメート、N,N′-ジシンナミリデン-1,6-ヘキサンジアミン、4,4′-ビス(アミノシクロヘキシル)メタン、エチレンジアミン、エチレンジアミンカルバメート、シクロヘキサンジアミン、ヘキサメチレンジアミンベンゾエート、ジアミノ変性シロキサン、4,4′-メチレンビスシクロヘキシルアミン、ビス(4-アミノ-3-メチルジシクロヘキシル)メタン、4,4′-メチレンビスシクロヘキシルアミン-シンナムアルデヒド付加物、N,N′-ジシンナミリデン-1,6-ヘキサンジアミン、4,4′-(α,α-ジメチルベンジル)ジフェニルアミン、4,4′-メチレンジアニリン、m-フェニレンジアミン、4,4′-ジアミノジフェニルエーテル、p-フェニレンジアミン、p,p′-エチレンジアニリン、4,4′-(p-フェニレンジイソプロピリデン)ジアニリン、4,4′-(m-フェニレンジイソプロピリデン)ジアニリン、3,4′-ジアミノジフェニルエーテル、4,4′-ジアミノジフェニルスルホン、2,2-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス[4-(3-アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、4,4′-ビス(4-アミノフェノキシ)ビフニル、ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]エーテル、2,2-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、1,4-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、m-キシリレンジアミン、p-キシリレンジアミン等が挙げられる。
【0057】
多価アミン化合物による架橋に際しては、架橋促進剤としてグアニジン化合物、ジアザビシクロアルケン化合物またはその有機酸塩等が用いられる。
【0058】
グアニジン化合物としては、テトラメチルグアニジン、テトラエチルグアニジン、1,3-ジフェニルグアニジン、1,3-ジ-o-トリルグアニジン等が挙げられる。好ましくは1,3-ジフェニルグアニジン、1,3-ジ-o-トリルグアニジンまたはそれらの組み合わせである。
【0059】
ジアザビシクロアルケン化合物としては、1,8-ジアザビシクロ〔5.4.0〕-7-ウンデセンが好ましい。
【0060】
ジアザビシクロアルケン化合物の有機酸塩としては、1,8-ジアザビシクロ〔5.4.0〕-7-ウンデセンの有機酸塩が好ましい。
【0061】
1,8-ジアザビシクロ〔5.4.0〕-7-ウンデセンの有機酸塩に用いられる有機酸としては、有機一塩基酸または有機二塩基酸が挙げられる。
【0062】
有機一塩基酸としては、n-ヘキサン酸、n-ヘプタン酸、n-オクタン酸、2-エチルヘキサン酸、n-カプリン酸、n-ラウリン酸、p-トルエンスルホン酸、フェノール等が挙げられる。有機二塩基酸としては、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸、テレフタル酸、オルトフタル酸、フタル酸等が挙げられ、炭素数6~18のモノカルボン酸またはジカルボン酸が好ましい。
【0063】
架橋部位単量体が活性塩素含有不飽和単量体の場合には、トリアジンチオール化合物や脂肪酸アルカリ金属塩が架橋剤として用いられる。
【0064】
トリアジンチオール化合物としては、トリアジンチオール(2,4,6-トリメルカプト-s-トリアジン)およびその誘導体が挙げられる。誘導体としては、トリアジンチオールのチオール基の一部をアミノ基または脂肪族炭化水素基で置換した化合物等が挙げられる。好ましくは、2,4,6-トリメルカプト-s-トリアジンである。
【0065】
架橋剤がトリアジンチオール化合物の場合、架橋促進剤として、好ましくはジチオカルバミン酸金属塩またはチウラムスルフィド等を用いることができる。ジチオカルバミン酸金属塩としては、ジメチルジチオカルバミン酸亜鉛、ジエチルジチオカルバミン酸亜鉛、ジ-n-ブチルジチオカルバミン酸亜鉛、ジ-n-ヘキシルジチオカルバミン酸亜鉛、ジ-n-オクチルジチオカルバミン酸亜鉛、ジ-n-デシルジチオカルバミン酸亜鉛、ジ-n-ドデシルジチオカルバミン酸亜鉛、メチルベンジルジチオカルバミン酸亜鉛、ジベンジルジチオカルバミン酸亜鉛、メチルシクロヘキシルジチオカルバミン酸亜鉛、ジシクロヘキシルジチオカルバミン酸亜鉛等が挙げられる。チウラムスルフィドの具体例としては、テトラメチルチウラムモノスルフィド、テトラメチルチウラムジスルフィド、テトラエチルチウラムジスルフィド、テトラブチルチウラムジスルフィド、ジペンタメチレンチウラムテトラスルフィド等が挙げられる。
【0066】
脂肪酸アルカリ金属塩としては、炭素数10~22の脂肪酸のアルカリ金属塩が挙げられる。特にステアリ酸ナトリウムおよびステアリン酸カリウムが好ましい。
【0067】
また、架橋剤として脂肪酸アルカリ金属塩を用いる場合には、硫黄を併用することで架橋反応を効果的に促進させることができるので、脂肪酸アルカリ金属塩と硫黄を併用した架橋方法がより一般的である。
【0068】
架橋部位不飽和単量体がエポキシ基含有不飽和単量体の場合には、架橋剤として芳香族カルボン酸アンモニウム塩、または架橋部位単量体がα,β-不飽和カルボン酸単量体の場合に用いられる多価アミン化合物が用いられる。芳香族カルボン酸アンモニウム塩としては、安息香酸アンモニウムが挙げられる。
【0069】
架橋部位単量体がエポキシ基含有不飽和単量体である場合に用いられる架橋促進剤としては、架橋部位単量体がα,β-不飽和カルボン酸単量体の場合に用いられる架橋促進剤、イミダゾール化合物、四級アンモニウム塩、三級アミン化合物、脂肪族カルボン酸のアルカリ金属塩等を用いることができる。
【0070】
イミダゾール化合物としては、2-メチルイミダゾール、2-フェニルイミダゾール等が挙げられる。四級アンモニウム塩としては、テトラn-ブチルアンモニウムブロマイド、オクタデシルトリn-ブチルアンモニウムブロマイド等が挙げられる。三級アミン化合物としては、ジメチルステアリルアミンが挙げられる。脂肪族カルボン酸のアルカリ金属塩としてはステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸カリウム等が挙げられる。
【0071】
架橋は、約120~250℃で約1~60分間行われる一次架橋および必要に応じて約120~200℃で約1~20時間行われるオーブン架橋(二次架橋)により実施される。
【実施例0072】
次に、実施例により本発明を具体的に説明する。なお、本発明は効果を含めてこの実施例に限定されるものではない。
【0073】
参考例
化合物(I′)の製造

化合物(I′)は、下記の方法により製造した。
【0074】
〔第1工程〕〔PTZ〕→(b-1):
攪拌装置、温度計、滴下ロート、窒素ガス導入管および排出管を備えた容量5Lの五口フラスコに、十分に脱水したN,N-ジメチルホルムアミド2.0Lを投入し、窒素雰囲気下で系内の温度を10℃以下に冷却した。水素化ナトリウム(純度60%)103.4g(2.59モル)を加えて10分間攪拌した後、系内温度を10℃以下に保ちながら、フェノチアジン〔PTZ〕401.0g(2.01モル)を数回に分けて加えて30分間反応させた。系内温度を10℃以下に保ちながら、ヨードメタン312.3g(2.20モル)を滴下し、さらに1時間反応を行った。反応終了後、反応混合物を10%塩化ナトリウム水溶液4Lに加えた。析出した無色の固体を濾別し、ついで蒸留水4Lで洗浄した。得られた固体を約50℃の温酢酸エチル2.5Lに溶解させた後、下層(水層)を分離した。上層(有機層)を無水硫酸マグネシウムで乾燥し、次いで不溶物を濾別した。濾液から揮発性成分を減圧下で留去し、粗生成物を451.4g(粗収率105%)得た。これをイソオクタン0.7Lで洗浄(脱脂)することで、10-メチル-10H-フェノチアジン(b-1)を、僅かに緑がかった結晶性の固体として421.2g得た(収率98.2%)。
1H NMR(400MHz、Acetone-d6、δ ppm):
3.39 (s、3H、N-CH 3)
6.91-6.98 (m、4H、Ar)
7.14 (dd、J=7.6Hz、J=1.6Hz、2H、Ar)
7.21 (td、J=7.6Hz、J=1.6Hz、2H、Ar)
【0075】
〔第2工程〕(b-1)→(b-2):
攪拌装置、滴下ロート、温度計、ガス導入口-ガス排出口および還流冷却管を備えた容量3Lの五口フラスコに、十分に脱水したN,N-ジメチルホルムアミド0.7Lを投入した。窒素雰囲気下で、系内の内温を10℃以下に保ちながら、ホスホリルクロリド509g(3.32モル)を滴下して加え、さらに30分間反応を行った。次に、上記第1工程で得られた10-メチル-10H-フェノチアジン(b-1)291.2g(1.37モル)を加え、60℃で17時間反応を行った。反応終了後、氷水浴で冷却した50%酢酸ナトリウム水溶液2.3kgに内容物を注ぎ、さらに水酸化ナトリウム194gを加えpH6以上とした。得られた溶液を氷水浴で冷却しながら2時間静置した。沈殿した固体を濾別した後、蒸留水3Lで洗浄し、無機電解質類を溶解させた。残った茶褐色の固体を約50℃の温酢酸エチル1.5Lに溶解させ、下層(水槽)を分離した後、有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥した。不溶物を濾別した後、濾液から揮発性成分を減圧下で留去し、赤褐色の油状物質として粗生成物329.0g(粗収率99.9%)を得た。粗生成物を酢酸エチル約1Lに溶解し、シリカゲル(固定相:ワコーゲルC300、長さ約10cm、φ10cm)カラムを通して低Rf成分を除去した。溶出液から揮発性成分を減圧下で留去し、黄色の固体として目的とする粗生成物を321.6g(収率97.6%)得た。さらに酢酸エチル320mlを用いて再結晶することにより、黄色結晶として10-メチル-10H-フェノチアジン-3-カルボアルデヒド(b-2)を308.2g(収率93.6%)得た。
1H NMR(400MHz、Acetone d6、δ ppm):
3.49 (s、3H、N-CH 3)
7.00-7.06 (m、2H、Ar)
7.10 (d、J=8.4Hz、1H 、Ar)
7.15-7.19(m、1H、Ar)
7.22-7.28(m、1H、Ar)
7.61(d、J=1.6Hz、1H、Ar)
7.75(dd、J=8.4Hz、J=1.6Hz、1H、Ar)
9.85(s、1H、-CHO)
【0076】
〔第3工程〕(b-2)→(I′):
攪拌装置、温度計、ガス導入管およびガス排出管を備えた容量5Lの五口フラスコに、十分に脱水したテトラヒドロフラン2.3Lを投入し、反応容器内を窒素で置換しながら内温を10℃以下に冷却した。カリウム第3ブトキシド175.0g(1.56モル)、次いでメチルトリフェニルホスホニウムブロミド557.3g(1.56モル)を加えて、30分間反応を行った。これに化合物(b-2)313.7g(1.30モル)を加えて、-10~40℃で1時間反応させ、反応混合物を得た。得られた反応混合物を10%塩化ナトリウム水溶液1.7Lに加え反応を停止した。有機層を回収する一方、水層を酢酸エチルで抽出し、これを先の有機層と混合した。この混合物に0.35gのp-メトキシフェノールを添加し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した後不溶物を濾別し、濾液から減圧下で揮発性成分を留去することで、淡黄色固体を718.4g得た。
【0077】
これを乳鉢で粉砕し粉末状とした。粉末状の淡黄色固体を2.1Lのエタノールに溶解した後、少量の不溶物を濾別した後、濾液を5℃以下で一晩放置し〔I′〕を晶析させた。晶析した黄色結晶は286.3g(収率92.0%)であった。さらに晶析した黄色結晶286.3gに対して3.3Lのエタノールを用いて同様の操作を行い、淡黄色結晶として〔I′〕を259.2g(収率83.3%)得た。

融点 102℃
1H NMR(400MHz、CDCl3、δ ppm):
3.37 (s、3H、N-CH 3)
5.14 (d、J=10.8Hz、1H、CH 2=CH-PTZ
(フェノチアジン基に対してトランス))
5.61 (d、J=17.6Hz、1H、CH 2=CH-PTZ
(フェノチアジン基に対してシス))
6.59 (dd、J=10.8Hz、17.6Hz、1H、CH2=CH-PTZ)
6.75 (d、J=8.4Hz、1H、Ar)
6.81 (d、J=9.2Hz、1H、Ar)
6.92 (td、J=7.6Hz、1.2Hz、1H、Ar)
7.11-7.23 (m、4H、Ar)
【0078】
実施例1
アクリル系エラストマー共重合体Aの製造
内容積40リットルの耐圧反応容器に部分ケン化ポリビニル4重量%の水溶液17kg、酢酸ナトリウム22gを投入し、撹拌機でよく混合しながら槽内上部の空気を窒素で置換後、エチレン〔E〕を槽上部に圧入し、圧力を3.5MPaに調整した。攪拌を続行し、槽内を55℃に保持いた後、エチルアクリレート〔EA〕7.8kg、n-ブチルアクリレート〔BA〕3.4kg、マレイン酸モノn-ブチル〔MBF〕300g、第3-ドデシルメルカプタン1.8g、参考例で得られた化合物〔I′〕22gのモノマー混合液を圧入した。別途注入口より第3ブチルヒドロペルオキシド水溶液(0.25重量%、2リットル)を6時間かけて圧入し、最終重合率95%まで重合を行った。生成した重合液にホウ酸ナトリウム水溶液(3.5重量%、7リットル)を凝固剤として添加して共重合体を凝固させ、脱水、乾燥してアクリル系エラストマー共重合体A(重量分率組成E:EA:BA:MBF: 化合物〔I′〕が2.0:70.0:25.8:2.0:0.2)を得た。
【0079】
比較例1
化合物〔I′〕を用いない以外はアクリル系エラストマー共重合体Aと同様にして共重合体B(重量分率組成E:EA:BA:MBFは、2.0:70.0:26.0:2.0)を作製した。
【0080】
実施例2
アクリル系エラストマー共重合体A 100重量部
FEFカーボンブラック(東海カーボン製品シーストGSO) 50 〃
ステアリン酸(ミヨシ油脂製品TST) 1.0 〃
ヘキサメチレンジアミンカーバメート 0.6 〃
ステアリルアミン(花王製品ファーミン80) 1.0 〃
Vulcofac ACT55(Safic-Alcan社製品) 1.0 〃
以上の各成分の内、アクリル系エラストマー共重合体A、カーボンブラックおよびステアリン酸をバンバリーミキサで混和した後、混和物に残りの各成分を加えてオープンロールで混和し、アクリル系エラストマー共重合体組成物を得た。これを100トンプレス成形機により、180℃で8分間の一次架橋を行い、さらに175℃で4時間の二次架橋を行い厚さ約2mmのシート状架橋物を得た。
【0081】
アクリル系エラストマー共重合体組成物の架橋物性は、次のようにして測定された。

常態物性:JIS K6251、JIS K6253準拠
空気加熱老化試験:JIS K6257準拠(175℃、500時間)
【0082】
比較例2
実施例2において、アクリル系エラストマー共重合体Aの代りにアクリル系エラストマー共重合体Bが用いられ、さらに酸化防止剤4,4′-ビス(α,α)ジメチルベンジルジフェニルアミン(大内新興化学製品ノクラックCD)が2.0重量部用いられた。
【0083】
比較例3
実施例2において、アクリル系エラストマー共重合体Aの代りにアクリル系エラストマー共重合体Bが用いられた。
【0084】
以上の実施例2、比較例2~3で得られた結果は、次の表に示される。


測定結果 実施例2 比較例2 比較例3
常態物性
硬度 (Duro A) 60 59 60
破断時強度 (MPa) 12.0 11.5 12.0
破断時伸び (%) 200 210 200
熱老化試験(175℃、500時間)
硬度変化 (Duro A) +10 +7 +13
破断時強度変化率 (%) -30 -50 -40
破断時伸び変化率 (%) -10 +20 -50