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  • 特開-空調システム 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024171035
(43)【公開日】2024-12-11
(54)【発明の名称】空調システム
(51)【国際特許分類】
   F24F 11/74 20180101AFI20241204BHJP
   F24F 11/80 20180101ALI20241204BHJP
   F24F 110/10 20180101ALN20241204BHJP
【FI】
F24F11/74
F24F11/80
F24F110:10
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023087885
(22)【出願日】2023-05-29
(71)【出願人】
【識別番号】504163612
【氏名又は名称】株式会社LIXIL
(71)【出願人】
【識別番号】000219233
【氏名又は名称】東プレ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100165157
【弁理士】
【氏名又は名称】芝 哲央
(74)【代理人】
【識別番号】100126000
【弁理士】
【氏名又は名称】岩池 満
(74)【代理人】
【識別番号】100160794
【弁理士】
【氏名又は名称】星野 寛明
(72)【発明者】
【氏名】権守 真人
(72)【発明者】
【氏名】吉田 吏志
(72)【発明者】
【氏名】山本 徹
(72)【発明者】
【氏名】吉田 祐次
(72)【発明者】
【氏名】小野 直人
【テーマコード(参考)】
3L260
【Fターム(参考)】
3L260AA01
3L260AB07
3L260AB17
3L260BA44
3L260CA13
3L260DA13
3L260EA13
3L260FA03
3L260FB42
3L260FB43
3L260FB44
3L260FB45
3L260FC02
3L260FC03
3L260FC04
3L260FC06
(57)【要約】
【課題】消費電力を低減できる空調システムを提供すること。
【解決手段】空調システム1は、住宅10内の空気を暖めて住宅10内に供給する暖房機能又は住宅内の空気を冷やして住宅10内に供給する冷房機能を有する空調装置2を有し、住宅10全体の温度を調整する全館空調を備え、空調装置2は、暖房機能により暖めた空気又は冷房機能により冷やした空気を住宅10内に供給するファン21と、住宅10内に空調負荷が発生しているときの住宅10内における第1の空調負荷よりも小さい第2の空調負荷の場合にファン21の動作を低下させる制御を実行する制御部9と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
住宅内の空気を暖めて前記住宅内に供給する暖房機能又は前記住宅内の空気を冷やして前記住宅内に供給する冷房機能を有する空調装置を有し、住宅全体の温度を調整する全館空調を備える空調システムであって、
前記空調装置は、前記暖房機能により暖めた空気又は前記冷房機能により冷やした空気を前記住宅内に供給するファンと、前記住宅内に空調負荷が発生しているときの前記住宅内における第1の空調負荷よりも小さい第2の空調負荷の場合に前記ファンの動作を低下させる制御を実行する制御部と、を備える、空調システム。
【請求項2】
前記制御部は、前記暖房機能を機能させる場合において、夜間就寝時の室内設定温度を、日中の室内設定温度から、日中の室内設定温度よりも低い室内設定温度に変更して、前記暖房機能を機能させるように制御し、前記冷房機能を機能させる場合において、夜間就寝時の室内設定温度を、日中の室内設定温度から、日中の室内設定温度よりも高い室内設定温度に変更して、前記冷房機能を機能させるように制御する、請求項1に記載の空調システム。
【請求項3】
前記制御部は、前記第2の空調負荷がゼロの場合に前記ファンの動作を低下させる制御を実行する、請求項1又は2に記載の空調システム。
【請求項4】
前記住宅内の断熱区画における最下部の近傍、若しくは、居住空間又は非居住空間の最下部に配置される仕上げ部の近傍に配置される第1吸気口と、
前記住宅内の断熱区画における最上部の近傍、若しくは、居住空間又は非居住空間の最上部に配置される仕上げ部の近傍に配置される第2吸気口と、を備え、
前記空調装置は、前記暖房機能を機能させる場合に、前記第1吸気口を介して導入された前記住宅内の空気を前記暖房機能により暖めて、又は、前記冷房機能を機能させる場合に、前記第2吸気口を介して導入された前記住宅内の空気を前記冷房機能により冷やして前記住宅内に供給する、請求項1又は2に記載の空調システム。
【請求項5】
住宅外の空気を前記住宅内に導入すると共に、前記住宅内の空気を住宅外に排出する換気装置を更に備え、
前記換気装置は、前記住宅外の空気を前記空調装置に導入し、
前記空調装置は、前記換気装置により導入された前記住宅外の空気を前記暖房機能により暖めて又は前記冷房機能により冷やして前記住宅内に供給する、請求項1又は2に記載の空調システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、空調システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、暖房機能及び冷房機能を有する空調装置を備える空調システムにおいて、空調装置を用いて、一戸建ての住宅の1階及び2階を暖房機能により暖房し、又は、冷房機能により冷房するものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11-325569号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
空調システムにおいて、省エネルギー及び電気代の節約の観点から、消費電力を低減できることが求められている。
【0005】
本開示は、消費電力を低減できる空調システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示は、住宅内の空気を暖めて前記住宅内に供給する暖房機能又は前記住宅内の空気を冷やして前記住宅内に供給する冷房機能を有する空調装置を有し、住宅全体の温度を調整する全館空調を備える空調システムであって、前記空調装置は、前記暖房機能により暖めた空気又は前記冷房機能により冷やした空気を前記住宅内に供給するファンと、前記住宅内に空調負荷が発生しているときの前記住宅内における第1の空調負荷よりも小さい第2の空調負荷の場合に前記ファンの動作を低下させる制御を実行する制御部と、を備える、空調システムに関する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】一実施形態に係る空調システムを備える住宅において暖房時の状態を示す図である。
図2】一実施形態に係る空調システムを備える住宅において冷房時の状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本開示の空調システム1の一実施形態について、図面を参照しながら説明する。図1及び図2に示すように、本実施形態の空調システム1は、例えば、2階建ての住宅10において使用される。住宅10は、高気密構造で、かつ、高断熱構造で構成される。空調システム1は、高気密構造及び高断熱構造の住宅10で使用されることで、省電力で使用されることが可能である。なお、本実施形態においては、空調システム1を2階建ての住宅10に使用する場合を例に説明したが、これに限定されない。空調システムを、例えば、3階建て以上の住宅に使用してもよい。
【0009】
住宅10は、図1及び図2に示すように、例えば、屋根13及び外壁14を有する2階建て構造で構成される。住宅10は、屋根13の下側及び外壁14の内側に基礎断熱の断熱材が配置され、住宅10の全体において基礎断熱とする構成である。住宅10の断熱区画18は、屋根側断熱ライン181と、外壁側断熱ライン182と、基礎断熱ライン183と、を備える。屋根側断熱ライン181は、屋根13の下側に屋根13の傾斜方向に沿って傾斜して配置される断熱材により構成される。外壁側断熱ライン182は、外壁14の内側に配置され屋根13から地面101まで上下方向に延びる断熱材により構成される。住宅10の下方の地面101は、基礎断熱ライン183を構成する。住宅10は、断熱区画18の内側において断熱される。
【0010】
本実施形態においては、住宅10では、空調システム1により、全館空調が行われている。空調システム1における全館空調は、住宅10全体の温度を調整する制御を実行する空調である。
【0011】
住宅10は、例えば、1階において、1階水回り空間111と、1階廊下空間112と、1階リビング空間113と、床下空間114と、を有し、2階において、2階収納空間121と、2階第1居住空間122と、2階廊下空間123と、2階第2居住空間124、屋根裏空間125と、を有する。
【0012】
1階においては、1階水回り空間111、1階廊下空間112、1階リビング空間113は、左右方向の一方側から他方側(図1及び図2における左側から右側)に向けてこの順に配置される。各空間111,112,113は、床、壁及び天井に囲まれることにより形成される。1階において、床下空間114は、各空間111,112,113の床16の下方に設けられている。床下空間114は、住宅10における外壁側断熱ライン182及び基礎断熱ライン183の内側に位置し、断熱されている。
【0013】
1階において、1階水回り空間111の水回り空間他方側壁面111aと1階廊下空間112の一方側壁面112aとの間には、1階側配管スペース131が設けられている。また、1階と2階との間であって1階の各空間111,112,113の天井と2階の各空間121,122,123,124の床17との間には、1階上部側配管スペース132が設けられている。
【0014】
1階水回り空間111及び1階廊下空間112は、下部において連通路115により連通されている。1階水回り空間111の空気が1階水回り空間用ファン排気口41(後述)を介して住宅10外に排出されているため、連通路115には、1階廊下空間112の下方側の空気が、1階水回り空間111に向けて流れる。
【0015】
1階廊下空間112及び1階リビング空間113は、下部において連通路116により連通されている。1階廊下空間112の空気が1階廊下用排気ファン排気口42(後述)を介して住宅10外に排出されているため、連通路116には、1階リビング空間113の下方側の空気が、1階廊下空間112に向けて流れる。
【0016】
2階においては、2階収納空間121、2階第1居住空間122、2階廊下空間123、2階第2居住空間124は、左右方向の一方側から他方側(図1及び図2における左側から右側)に向けてこの順に配置される。各空間121,122,123,124は、床、壁及び天井に囲まれることにより形成される。2階において、屋根裏空間125は、屋根天井15と屋根13との間に配置される。屋根天井15は、2階収納空間121、2階第1居住空間122、2階廊下空間123、2階第2居住空間124の天井の上方に設けられる2階上部側配管スペース134の天井を構成する。屋根裏空間125は、住宅10における屋根13側の屋根側断熱ライン181の下側に位置し、断熱されている。なお、屋根裏空間125を、小屋裏や天井裏という場合もある。また、屋根裏空間125を人が居住する居住スペースとして構成してもよい。
【0017】
2階において、2階収納空間121の他方側収納空間他方側壁面121aと2階第1居住空間122の一方側壁面122aとの間には、2階側配管スペース133が設けられている。また、2階の各空間121,122,123,124の天井と屋根天井15との間には、2階上部側配管スペース134が設けられている。
【0018】
2階収納空間121及び2階第1居住空間122は、下部において連通路126により連通されている。2階収納空間121の空気が2階収納空間用排気ファン排気口51(後述)を介して住宅10外に排出されているため、連通路126には、2階第1居住空間122の下方側の空気が、2階収納空間121に向けて流れる。2階第1居住空間122及び2階廊下空間123は、下部において連通路127により連通されている。2階廊下空間123の空気が2階廊下用排気ファン排気口53(後述)を介して住宅10外に排出されているため、連通路127には、2階第1居住空間122の下方側の空気が、2階廊下空間123に向けて流れる。2階廊下空間123及び2階第2居住空間124は、下部において連通路128により連通されている。2階廊下空間123の空気が2階廊下用排気ファン排気口53(後述)を介して住宅10外に排出されているため、連通路128には、2階第2居住空間124の下方側の空気が、2階廊下空間123に向けて流れる。
【0019】
また、本実施形態においては、住宅10の1階の床16は、1階の居住空間又は非居住空間の最下部に配置される仕上げ面(仕上げ部)を構成する。住宅10の2階の床17は、2階の居住空間又は非居住空間の最下部に配置される仕上げ面(仕上げ部)を構成する。住宅10の2階の屋根天井15は、2階の非居住空間の最上部の仕上げ面(仕上げ部)を構成する。また、各階の各空間111,112,113,121,122,123,124の天井は、各空間の最上部の仕上げ面(仕上げ部)を構成する。
【0020】
空調システム1は、空調ユニット4を備える。また、空調システム1は、1階水回り空間用ファン排気口41と、1階廊下用排気ファン排気口42と、1階第1リビング空間用給気ファン給気口43と、1階第2リビング空間用給気ファン給気口44と、1階第1リビング空間用排気ファン排気口45と、1階側循環ファン吸気口46(第1吸気口)と、2階収納空間用排気ファン排気口51と、2階第1居住空間用給気ファン給気口52と、2階廊下用排気ファン排気口53と、2階第2居住空間用給気ファン給気口54と、2階側循環ファン吸気口55(第2吸気口)と、第1給気用チャンバ71と、第2給気用チャンバ72と、Y字管73と、第1排気用チャンバ74と、第2排気用チャンバ75と、給気ダクトL1と、排気ダクトL2と、循環吸気ダクトL3と、を有する。給気ダクトL1、排気ダクトL2及び循環吸気ダクトL3は、空気が流通する流通路を構成する配管であり、例えば、ダクトで構成される。
【0021】
空調ユニット4は、1階側配管スペース131に配置される。空調ユニット4は、空調機能を有する空調装置2と、換気機能を有する換気装置3と、空調装置2に導入する導入空気を切り替える切替部8と、制御部9と、を有する。
【0022】
空調装置2は、住宅10内の空気を暖めて住宅10内に供給する暖房機能と、住宅10内の空気を冷やして住宅10内に供給する冷房機能と、を有する。空調装置2は、温度調整部(図示せず)と、空調ファン21(ファン)と、を有する。温度調整部は、空調装置2に導入された空気を暖めて又は冷やすことで、空気の温度を調整する。温度調整部は、温度調整用のコイルなどにより構成される。空調ファン21は、温度調整部(図示せず)の暖房機能により暖めた空気又は温度調整部(図示せず)の冷房機能により冷やした空気を、住宅10内に供給する。
【0023】
空調装置2は、1階側循環ファン吸気口46又は2階側循環ファン吸気口55を介して導入された住宅10内の空気と、換気装置3(後述)により導入された住宅10外の空気とを、空調ファン21により、暖房機能により暖めて又は冷房機能により冷やして住宅10内に供給する。空調装置2は、給気ダクトL1を介して、1階第1リビング空間用給気ファン給気口43、1階第2リビング空間用給気ファン給気口44、2階第1居住空間用給気ファン給気口52及び2階第2居住空間用給気ファン給気口54により、各空間113、122、124に、暖房機能により暖めた空気又は冷房機能により冷やした空気を供給する。
【0024】
1階第1リビング空間用給気ファン給気口43は、1階において、1階リビング空間113の一方側の壁面113aの上部側に配置される。1階第2リビング空間用給気ファン給気口44は、1階において、1階リビング空間113の室内天井113bの左右方向の中央付近に配置される。2階第1居住空間用給気ファン給気口52は、2階において、2階第1居住空間122の他方側壁面122bの上部側に配置される。2階第2居住空間用給気ファン給気口54は、2階において、2階第2居住空間124の一方側壁面124aの上部側に配置される。
【0025】
給気ダクトL1は、住宅10外の空気を空調ユニット4の換気装置3(後述)に導入し、換気装置3に導入された空気を空調ユニット4の空調装置2に導入し、空調装置2の暖房機能により暖められた空気又は冷房機能により冷やされた空気を、1階リビング空間113、2階第1居住空間122、及び2階第2居住空間124に供給するための配管である。給気ダクトL1は、換気装置導入ダクトL11と、空調装置導入ダクトL12と、1階側導入ダクトL13と、第1給気ダクトL14と、第2給気ダクトL15と、2階側導入ダクトL16と、第3給気ダクトL17と、第4給気ダクトL18と、を有する。
【0026】
換気装置導入ダクトL11は、住宅10外からの空気を空調ユニット4の換気装置3に導入する配管である。空調装置導入ダクトL12は、換気装置3から空調装置2までの配管である。1階側導入ダクトL13は、空調ユニット4の空調装置2から第1給気用チャンバ71までの配管である。
【0027】
第1給気ダクトL14は、第1給気用チャンバ71において分岐され、第1給気用チャンバ71から1階第1リビング空間用給気ファン給気口43までの配管である。第2給気ダクトL15は、第1給気用チャンバ71において分岐され、第1給気用チャンバ71から1階第2リビング空間用給気ファン給気口44までの配管である。2階側導入ダクトL16は、空調ユニット4の空調装置2から第2給気用チャンバ72までの配管である。第3給気ダクトL17は、第2給気用チャンバ72において分岐され、第2給気用チャンバ72から2階第1居住空間用給気ファン給気口52までの配管である。第4給気ダクトL18は、第2給気用チャンバ72において分岐され、第2給気用チャンバ72から2階第2居住空間用給気ファン給気口54までの配管である。
【0028】
空調装置2には、例えば冬季に、暖房機能を機能させる場合に、1階側循環ファン吸気口46を介して住宅10内の断熱区画18における最下部の近傍の冷たい空気が導入される。1階側循環ファン吸気口46は、循環吸気ダクトL3(後述)により空調装置2に接続される。本実施形態においては、1階側循環ファン吸気口46は、住宅10内の断熱区画18における最下部の近傍に配置される。
【0029】
ここで、本実施形態においては、断熱区画18における最下部の近傍は、断熱区画18の最下部から1m高い位置までの範囲内であることが好ましく、断熱区画18の最下部から50cm高い位置までの範囲内であることがより好ましい。住宅10内の断熱区画18における最下部の近傍は、従来、冬季において、空調装置2により暖房機能を動作させても、住宅10内において、空気が暖まりにくく、空調装置2の効きが悪いとされる場所である。例えば、一般的に、冬季に暖房機能を動作させた場合に、居住空間又は非居住空間の足元等の温度が、暖房の設定温度に対して3℃以上低い場合に、空調の効きが悪いとされる。本実施形態においては、断熱区画18における最下部の近傍は、暖房機能を動作させた場合に、暖房の設定温度に対して3℃以上低いとされる場所である。
【0030】
本実施形態においては、1階側循環ファン吸気口46は、1階側配管スペース131の下方において、例えば床下空間114に配置される。本実施形態では、床下空間114は、住宅10の最下階の最下部であって、断熱区画18の最下部でもある。
【0031】
また、空調装置2には、例えば夏季に、冷房機能を機能させる場合に、2階側循環ファン吸気口55を介して住宅10内の断熱区画18における最上部の近傍の暖かい空気が導入される。2階側循環ファン吸気口55は、循環吸気ダクトL3(後述)により空調装置2に接続される。本実施形態においては、2階側循環ファン吸気口55は、住宅10内の断熱区画18における最上部の近傍に配置される。
【0032】
ここで、本実施形態においては、断熱区画18における最上部の近傍は、断熱区画18の最上部から1m低い位置までの範囲内であることが好ましく、断熱区画18の最上部から50cm低い位置までの範囲内であることがより好ましい。住宅10内の断熱区画18における最上部の近傍は、従来、夏季において、空調装置2により冷房機能を動作させても、住宅10内において、空気が冷えにくく、空調装置2の効きが悪いとされる場所である。例えば、一般的に、夏季に冷房機能を動作させた場合に、居住空間又は非居住空間の天井付近等の温度が、冷房の設定温度に対して3℃以上高い場合に、空調の効きが悪いとされる。本実施形態においては、断熱区画18における最上部の近傍は、冷房機能を動作させた場合に、冷房の設定温度に対して3℃以上高いとされる場所である。
【0033】
本実施形態においては、2階側循環ファン吸気口55は、例えば屋根裏空間125に配置される。本実施形態では、屋根裏空間125は、住宅10の最上階の最上部であって、断熱区画18の最上部でもある。
【0034】
切替部8の切り替え機能は、空調ユニット4に内蔵され、空調ユニット4の内部において、循環吸気ダクトL3の途中に設けられる。切替部8は、空調ユニット4に導入される住宅10内の空気を、1階側循環ファン吸気口46を介して導入される冷たい空気、又は、2階側循環ファン吸気口55を介して導入される暖かい空気のいずれか一方に切り替え可能である。
【0035】
切替部8は、循環吸気ダクトL3の途中において、1階側循環ファン吸気口46に吸引された空気が空調装置2に導入される1階側空気吸引状態と、2階側循環ファン吸気口55に吸引された空気が空調装置2に導入される2階側空気吸引状態と、に選択的に切り替え可能に構成される。
【0036】
循環吸気ダクトL3は、断熱区画18の最下部の近傍の冷たい空気又は断熱区画18の最上部の近傍の暖かい空気を空調ユニット4の空調装置2に循環させる配管である。循環吸気ダクトL3は、1階側循環吸気ダクトL31と、2階側循環吸気ダクトL32と、共通循環吸気ダクトL33と、を有する。
【0037】
循環吸気ダクトL3は、切替部8により1階側空気吸引状態に切り替えられた場合に、断熱区画18の最下部の近傍の冷たい空気を、1階側循環吸気ダクトL31及び共通循環吸気ダクトL33を介して、空調ユニット4の空調装置2に循環させる。また、循環吸気ダクトL3は、切替部8により2階側空気吸引状態に切り替えられた場合に、断熱区画18の最上部の近傍の暖かい空気を、2階側循環吸気ダクトL32及び共通循環吸気ダクトL33を介して、空調ユニット4の空調装置2に循環させる。
【0038】
1階側循環吸気ダクトL31は、1階側循環ファン吸気口46から切替部8までの配管であり、1階側循環ファン吸気口46から吸気された空気を切替部8まで流通させる。2階側循環吸気ダクトL32は、2階側循環ファン吸気口55から切替部8までの配管であり、2階側循環ファン吸気口55から吸気された空気を切替部8まで流通させる。共通循環吸気ダクトL33は、一端が切替部8に接続され、他端が空調装置2に接続され、切替部8により切り替えられた1階側循環吸気ダクトL31又は2階側循環吸気ダクトL32を流通された空気を空調装置2まで流通させる配管である。
【0039】
例えば、冬季において、空調装置2により暖房機能を機能させている場合に、切替部8を1階側空気吸引状態に切り替えることで、空調装置2には、床下空間114の冷たい空気が導入される。また、例えば、夏季において、空調装置2により冷房機能を機能させている場合に、切替部8を2階側空気吸引状態に切り替えることで、空調装置2には、屋根裏空間125の暖かい空気が導入される。
【0040】
切替部8は、例えば、手動操作により1階側空気吸引状態と2階側空気吸引状態とに切り替えるように構成してもよいし、空調装置2の冷房又は暖房に連動して1階側空気吸引状態又は2階側空気吸引状態を自動で切り替えるように構成してもよい。
【0041】
換気装置3は、空調装置2に住宅10外の空気を導入することで空調装置2を介して住宅10外の空気を住宅10内に導入すると共に、住宅10内の空気を住宅10外に排出することで、住宅10内を換気する。また、換気装置3は、熱交換機能を有し、給気空気と排気空気との間で熱交換を行いながら、給気動作及び排気動作を行うことで、24時間の換気を行っている。
【0042】
換気装置3は、排気ダクトL2を介して、1階において、1階水回り空間用ファン排気口41、1階廊下用排気ファン排気口42、1階第1リビング空間用排気ファン排気口45により吸引された所定の各空間111,112,113の空気を住宅10外に排出し、2階において、2階収納空間用排気ファン排気口51、2階廊下用排気ファン排気口53により吸引された所定の各空間121,123の空気を住宅10外に排出する。換気装置3は、住宅10外の空気を空調装置2に導入することにより、空調装置2を介して、1階において、各給気口43,44を介して住宅10外からの空気を所定の空間113に供給する共に、2階において、各給気口52,54を介して住宅10外からの空気を所定の空間122,124に供給する。
【0043】
1階水回り空間用ファン排気口41は、1階において、1階水回り空間111の室内天井111bに配置される。1階廊下用排気ファン排気口42は、1階において、1階廊下空間112の室内天井112bに配置される。1階第1リビング空間用排気ファン排気口45は、1階において、1階リビング空間113の室内天井113bの他方側に配置される。
【0044】
2階収納空間用排気ファン排気口51は、2階において、2階収納空間121の室内天井121bに配置される。2階廊下用排気ファン排気口53は、2階において、2階廊下空間123の室内天井123aに配置される。
【0045】
排気ダクトL2は、1階側水回り空間111内の空気、1階廊下空間112内の空気、1階リビング空間113内の空気、2階収納空間121内の空気、及び2階廊下空間123の空気を、住宅10外に排出するための配管である。排気ダクトL2は、1階水回り側排気ダクトL21と、1階廊下側排気ダクトL22と、1階リビング側排気ダクトL23と、1階側排気合流ダクトL24と、2階収納空間側排気ダクトL25と、2階廊下側排気ダクトL26と、2階側排気合流ダクトL27と、全排気合流ダクトL28と、排気排出ダクトL29と、を有する。
【0046】
1階水回り側排気ダクトL21は、1階水回り空間用ファン排気口41から第1排気用チャンバ74までの配管である。1階廊下側排気ダクトL22は、1階廊下用排気ファン排気口42から第1排気用チャンバ74までの配管である。1階リビング側排気ダクトL23は、1階第1リビング空間用排気ファン排気口45から第1排気用チャンバ74までの配管である。1階側排気合流ダクトL24は、第1排気用チャンバ74からY字管73までの配管である。
【0047】
2階収納空間側排気ダクトL25は、2階収納空間用排気ファン排気口51から第2排気用チャンバ75までの配管である。2階廊下側排気ダクトL26は、2階廊下用排気ファン排気口53から第2排気用チャンバ75までの配管である。2階側排気合流ダクトL27は、第2排気用チャンバ75からY字管73までの配管である。全排気合流ダクトL28は、Y字管73から空調ユニット4の換気装置3までの配管である。排気排出ダクトL29は、空調ユニット4の換気装置3から排出された空気を住宅10の外部に排出する配管である。
【0048】
換気装置3は、住宅10内の換気を24時間行っており、空調装置2を運転させた場合においても停止させた場合においても換気を行っている。空調装置2を停止させた場合には、空調装置2の冷房及び暖房は行われないが、空調装置2の内部を通過した空気が住宅10内に導入されることで、換気装置3による換気は行われる。換気装置3は、例えば、住宅10の居住空間において、(いわゆる24時間換気システム等)により、換気回数0.5回/h以上の換気を行っている。
【0049】
本実施形態においては、空調装置2の空調装置2に導入される空気量について、一例として、換気装置3により導入された空気量は、例えば150~160m/h(リューベ)程度であり、住宅10の内部から吸引されて導入される空気量(1階側循環ファン吸気口46又は2階側循環ファン吸気口55により吸引される空気量)は、例えば350m/h(リューベ)程度である。これにより、空調装置2は、換気装置3により導入された住宅10外の空気を冷房機能により冷やして又は及び暖房機能により暖めて、500m/h(リューベ)程度の空気量の空気を住宅10内に供給する。ここで、例えば350m/h(リューベ)程度の住宅10の内部から吸引されて空調装置2に導入される空気は、住宅10内を循環されて、空調装置2の冷房機能により冷やされて又は及び暖房機能により暖められて、再度、所定の各空間113、122、124に供給される。
【0050】
制御部9は、空調ユニット4の各動作を制御する。例えば、制御部9は、空調装置2の空調機能(暖房機能又は冷房機能)を機能させるように空調ユニット4を制御し、換気装置3の換気機能を機能させるように空調ユニット4を制御する。また、制御部9は、空調装置2及び換気装置3を機能させる場合に、各空気量を制御する。
【0051】
制御部9は、空調機能(暖房機能又は冷房機能)を機能させて住宅10内に空気を供給する場合に、空調装置2の空調ファン21を制御する。制御部9は、空調負荷が、住宅10内に空調負荷が発生しているときの住宅10内における空調負荷(第1の空調負荷)よりも小さいゼロ(第2の空調負荷)の場合に、空調ファン21の動作を低下させる制御を実行する。本実施形態においては、空調負荷は、例えば、空調装置2に吸い込まれる空気の室内温度が、目標とする室内設定温度に達している場合に、ゼロと判定される。
【0052】
空調負荷には、例えば、暖房負荷、冷房負荷がある。例えば、暖房負荷とは、室内の暖房時に、主に室内から外に逃げる熱量に対して、室内の温度を保とうとして補われる熱負荷を意味する。また、冷房負荷とは、室内の冷房時に、主に外から室内に入ってくる熱量に対して、室内の温度を保とうとして補われる熱負荷を意味する。つまり、空調負荷とは、室内から失われる熱量に対して、その熱量を補う負荷を意味する。
【0053】
空調負荷がゼロの場合(例えば、空調装置2に吸い込まれる空気の室内温度が、目標とする室内設定温度に達している場合)には熱量を補う負荷を必要としないため、空調ファン21の動作を低下させて空気をそこまで強く送り出さなくても、住宅10内の室内温度を保つことができる。そのため、制御部9は、空調負荷がゼロの場合に、空調ファン21の回転速度を、例えば「標準」から「弱」に自動的に切り替える変更を行う。これにより、空調ファン21の動作を低下させることで、消費電力を低減でき、空調ファン21の動作させるための電気代を低減できる。なお、本実施形態においては、制御部9は、空調負荷がゼロの場合に、空調ファン21の回転速度を、例えば「標準」から「弱」に切り替える変更を行ったが、これに限定されず、例えば、空調ファン21の回転速度を、動作状態から停止状態に切り替える変更を行ってもよい。本実施形態でいう「空調負荷がゼロ」とは、必ずしも熱量の数値が完全なゼロとなる場合を意味するものではなく、数値がゼロ以上の場合であっても空調負荷がゼロと判定されることがある。
【0054】
また、制御部9は、冬季に暖房機能を機能させる場合において、夜間就寝時の室内設定温度を、日中の室内設定温度から、日中の室内設定温度よりも低い室内設定温度に変更して、暖房機能を機能させるように制御する。制御部9は、夏季に冷房機能を機能させる場合において、夜間就寝時の室内設定温度を、日中の室内設定温度から、日中の室内設定温度よりも高い室内設定温度に変更して、冷房機能を機能させるように制御する。
【0055】
具体的には、例えば、冬季において、暖房機能を機能させる場合において、日中の室内設定温度を例えば24℃に設定して空調装置2を運転している場合に、夜間就寝時(例えば23:00~6:00)の設定温度を、例えば18℃に変更して運転する。また、例えば、夏季において、冷房機能を機能させる場合において、日中の室内設定温度を例えば22℃に設定して空調装置2を運転している場合に、夜間就寝時(例えば23:00~6:00)の設定温度を、例えば26℃に変更して運転する。
【0056】
夜間就寝時において、人の活動が活発ではない夜間において温度設定を緩めて消費電力を低減させたいという観点から、夜間就寝時の室内設定温度を、冬季において日中の室内設定温度よりも低い設定温度に変更して、又は、夏季において日中の室内設定温度よりも高い設定温度に変更して、空調装置2を運転する。これにより、消費電力を低減でき、空調装置2の電気代を低減できる。
【0057】
また、制御部9は、例えばPID制御により、目標温度に緩やかに到達するように空調装置2の温度制御を行う。具体的には、制御部9は、目標温度(設定温度)から外れた際に、目標温度に緩やかに達するように空調装置2の運転出力が緩やかに変化されるように制御する。また、制御部9は、目標温度と現在の温度との差を確認する時間を長くとることで、空調装置2の運転出力を緩やかに制御する。これにより、空調装置2の運転出力を緩やかに変化させることができる。よって、電力の変化を緩やかに変化させることができるため、消費電力を低減でき、電気代を低減できる。
【0058】
また、制御部9は、1階側循環吸気口35を介して吸引された空気が空調ユニット4に導入される1階側空気吸引状態と、循環吸気ダクトL3、2階側ダクト配置空間内部吸気口56、2階側ダクト配置空間123及び2階ロフト側循環吸気口125bを介して吸引された空気が空調ユニット4に導入される2階側空気吸引状態と、に選択的に切り替えるように、切替部8を制御する。
【0059】
次に、本実施形態の空調システム1の全館空調の基本的な動作について説明する。本実施形態の空調システム1を冬季に使用する場合及び夏季に使用する場合について説明する。本実施形態の空調システム1においては、住宅10全体の温度を調整する全館空調が24時間行われている。また、換気装置3は、空調装置2を運転させた場合においても停止させた場合においても、住宅10内の換気を24時間行っている。
【0060】
まず、空調システム1を冬季に使用する場合について説明する。空調システム1を冬季に使用する場合には、空調ユニット4の換気装置3の換気機能及び熱交換機能を機能させながら、空調ユニット4の空調装置2の暖房機能を機能させると共に、図1に示すように、空調ユニット4に内蔵された切替部8を1階側空気吸引状態に切り替える。
【0061】
空調装置2には、換気装置3から住宅10外の空気が導入され、空調ユニット4に内蔵された切替部8を1階側空気吸引状態に切り替えることで、1階側循環ファン吸気口46を介して床下空間114の空気が導入される。空調装置2は、換気装置3により導入された空気と、1階側循環ファン吸気口46を介して導入された空気とを、暖房機能により暖房して、空調ファン21により、所定の各空間113,122,124に供給する。
【0062】
具体的には、冬季においては、断熱区画18の最下部の近傍の床下空間114の空気の温度が暖まりにくいため、切替部8を1階側空気吸引状態に切り替えることで、1階側循環ファン吸気口46により床下空間114の冷たい空気を吸引して、空調装置2に導入させる。本実施形態においては、断熱区画18における最下部の近傍は、断熱区画18の最下部から1m高い位置までの範囲内であることが好ましく、断熱区画18の最下部から50cm高い位置までの範囲内であることがより好ましい。住宅10内の断熱区画18における最下部の近傍は、従来、冬季において、空調装置2により暖房機能を動作させても、住宅10内において、空気が暖まりにくく、空調装置2の効きが悪いとされる場所である。
【0063】
そして、空調装置2は、換気装置3から導入された空気と、切替部8を1階側空気吸引状態に切り替えることで1階側循環ファン吸気口46を介して導入された空気と、を暖房機能により暖房して、空調装置2により暖められた空気を、空調ファン21を動作させることで、1階において、各給気口43,44を介して所定の空間113に給気を行い、2階において、各給気口52,54を介して所定の空間122,124に給気を行う。
【0064】
本実施形態においては、1階側循環ファン吸気口46は、床下空間114に配置されている。断熱区画18の最下部の近傍の床下空間114に配置される1階側循環ファン吸気口46は、冬季において空調装置2により暖房機能を機能させた場合に、温度が上がりにくく暖房が利きにくい断熱区画18の最下部近傍の床下空間114の空気を吸引する。そして、1階側循環ファン吸気口46により吸引された冷たい空気を空調装置2に戻して、再び空調装置2の暖房機能により暖房して、各空間113,122,124に供給する。このように、住宅10内の冷たい空気を空調装置2に導入して空気を循環させながら、空調装置2の暖房機能を機能させることができる。
【0065】
次に、空調システム1を夏季に使用する場合について説明する。空調システム1を夏季に使用する場合には、空調ユニット4の換気装置3の換気機能及び熱交換機能を機能させながら、空調ユニット4の空調装置2の冷房機能を機能させると共に、図2に示すように、空調ユニット4に内蔵された切替部8を2階側空気吸引状態に切り替える。
【0066】
空調装置2には、換気装置3から住宅10外の空気が導入され、空調ユニット4に内蔵された切替部8を2階側空気吸引状態に切り替えることで、2階側循環ファン吸気口55を介して屋根裏空間125の空気が導入される。空調装置2は、換気装置3により導入された空気と、2階側循環ファン吸気口55を介して導入された空気とを、冷房機能により冷房して、空調ファン21により、所定の各空間113,122,124に供給する。
【0067】
具体的には、夏季においては、断熱区画18の最上部近傍の屋根裏空間125の空気の温度が冷えにくいため、切替部8を2階側空気吸引状態に切り替えることで、2階側循環ファン吸気口55により屋根裏空間125の暖かい空気を吸引して、空調装置2に導入させる。本実施形態においては、断熱区画18における最上部の近傍は、断熱区画18の最上部から1m低い位置までの範囲内であることが好ましく、断熱区画18の最上部から50cm低い位置までの範囲内であることがより好ましい。住宅10内の断熱区画18における最上部の近傍は、従来、夏季において、空調装置2により冷房機能を動作させても、住宅10内において、空気が冷えにくく、空調装置2の効きが悪いとされる場所である。
【0068】
そして、空調装置2は、換気装置3から導入された空気と、切替部8を2階側空気吸引状態に切り替えることで2階側循環ファン吸気口55を介して導入された空気と、を冷房機能により冷房して、空調装置2により冷やされた空気を、空調ファン21を動作させることで、1階において、各給気口43,44を介して所定の空間113に給気を行い、2階において、各給気口52,54を介して所定の空間122,124に給気を行う。
【0069】
本実施形態においては、2階側循環ファン吸気口55は、屋根裏空間125に配置されている。屋根裏空間125に配置される2階側循環ファン吸気口55は、夏季において空調装置2により冷房機能を機能させた場合に、温度が下がりにくく冷房が利きにくい断熱区画18の最上部近傍の屋根裏空間125の空気を吸引する。そして、2階側循環ファン吸気口55により吸引された暖かい空気を空調装置2に戻して、再び空調装置2の冷房機能により冷房して、各空間113,122,124に供給する。このように、住宅10内の暖かい空気を空調装置2に導入して空気を循環させながら、空調装置2の冷房機能を機能させることができる。
【0070】
以上の空調システム1においては、冬季において暖房する際に、空調装置2には、断熱区画18の最下部近傍の床下空間114の冷たい空気が導入され、空調装置2は、導入された空気を暖めて、空調ファン21により暖められた空気を送り出して、住宅10の各空間113,122,124に給気することができる。また、夏季において冷房する際に、空調装置2には、断熱区画18の最上部近傍の屋根裏空間125の暖かい空気が導入され、空調装置2は、導入された空気を冷やして、空調ファン21により冷やされた空気を送り出して、住宅10の各空間113,122,124に給気することができる。
【0071】
そのため、断熱区画18の最下部近傍の冷たい空気又は断熱区画18の最上部近傍の暖かい空気を導入して空気を循環させながら、空調装置2の暖房機能又は冷房機能を機能させることで、空気の流れを生じさせながら、住宅10内の空気の温度差を小さくすることができる。よって、以上の空調システム1は、簡易な構成で、住宅10内の全体の気温を均一な温度に調整可能できる。特に、気密性が高く、断熱性能が高い住宅10においては、空調システム1を省電力で動作させることができる。また、換気装置3により住宅10内の換気を行いながら、住宅10内の全体の気温を均一な温度に調整することができる。
【0072】
次に、空調システム1の全館空調における具体的な空調制御について説明する。
【0073】
まず、冬季における空調制御について説明する。冬季における日中においては、室内設定温度を例えば24℃に設定して、空調装置2を運転している。ここで、空調装置2は、目標温度に緩やかに到達するように、PID制御により運転されている。空調装置2の通常運転時においては、空調ファン21は、例えば、「標準」での回転速度で動作させている。
【0074】
また、空調装置2の制御部9は、空調負荷がゼロの場合に、空調ファン21の動作を低下させる制御を実行する。本実施形態においては、室内設定温度を例えば24℃に設定しているため、室内温度が、例えば室内温度22℃から室内設定温度24℃に達した場合に、空調負荷が、室内温度22℃の場合の住宅10内の空調負荷(第1の空調負荷)よりも小さいゼロ(第2の空調負荷)になったとして、制御部9は、空調ファン21の回転速度を、「標準」から「弱」に切り替える変更を行って、空調ファン21の回転速度を「弱」で運転するように制御する。
【0075】
そして、空調ファン21の回転速度を「弱」で運転した場合において、住宅10から熱量が外に逃げて室内温度が室内設定温度24℃よりも低い温度に低下した場合に、室内の温度を保とうとするための暖房負荷(空調負荷)が発生する。そのため、室内温度が室内設定温度24℃よりも低い温度に低下した場合に、制御部9は、空調ファン21の回転速度を、「弱」から「標準」に切り替える変更を行って、空調ファン21の回転速度を「標準」で運転するように制御する。
【0076】
このように、制御部9は、空調ファン21の回転速度の切り替える制御を、空調負荷に応じて制御する。これらの制御を繰り返し実行することで、空調負荷がゼロの場合に、空調ファン21の動作を低下させることで、消費電力を低減でき、空調ファン21の動作させるための電気代を低減できる。
【0077】
また、冬季の夜間就寝時(例えば23:00~6:00)の制御において、制御部9は、夜間就寝時の室内設定温度を、例えば、日中の室内設定温度24℃から、日中の室内設定温度24℃よりも低い室内設定温度である18℃に変更して、暖房機能を機能させるように制御する。夜間就寝時においては、人の活動が活発ではない夜間において温度設定を緩めて消費電力を低減させたいという観点から、夜間就寝時の室内設定温度を、冬季において日中の室内設定温度(例えば24℃)よりも低い設定温度(例えば18℃)に変更して、空調装置2を運転する。これにより、夜間就寝時において、空調装置2の消費電力を低減でき、電気代を低減できる。
【0078】
夜間就寝時においても、日中の制御と同様に、空調装置2の制御部9は、空調負荷がゼロの場合に、空調ファン21の動作を低下させる制御を実行する。夜間就寝時においては、室内設定温度を例えば18℃に設定するため、制御部9は、室内温度が、例えば夜間の室内温度16℃から室内設定温度18℃に達した場合に、空調負荷が、室内温度16℃の場合の住宅10内の空調負荷(第1の空調負荷)よりも小さいゼロ(第2の空調負荷)になったとして、空調ファン21の回転速度を、「標準」から「弱」に切り替えて運転する制御を行い、住宅10から熱量が外に逃げて室内温度が室内設定温度18℃よりも低い温度に低下した場合に、空調ファン21の回転速度を、「弱」から「標準」に切り替えて運転する制御を行う。これにより、夜間就寝時においても、制御部9は、空調ファン21の回転速度の切り替える制御を、空調負荷に応じて制御する。これらの制御を繰り返し実行することで、空調負荷がゼロの場合に、空調ファン21の動作を低下させることで、消費電力を低減でき、空調ファン21の動作させるための電気代を低減できる。
【0079】
ここで、夜間就寝時の室内設定温度を、例えば、日中の室内設定温度24℃から、日中の室内設定温度24℃よりも低い室内設定温度である18℃に変更しているため、室内設定温度が18℃である場合には、室内設定温度が24℃の場合よりも、室外温度との温度差が小さく又は温度差が無い状態となる。そのため、夜間就寝時の室内設定温度が18℃である場合には、日中の室内設定温度24℃の場合よりも、室外温度との温度差が小さく又は温度差が無い状態となるため、室内の温度を保とうとするための暖房負荷(空調負荷)が発生する時間が短くなる。よって、冬季の夜間就寝時の室内設定温度(例えば18℃)を日中の室内設定温度(例えば24℃)よりも低くすることで、夜間就寝時において、空調負荷がゼロとなる時間が増えるため、空調ファン21の回転速度を「弱」で運転する時間を長くすることができる。
【0080】
以上のように、冬季の夜間就寝時(例えば23:00~6:00)において、室内設定温度を、日中の室内設定温度24℃から18℃に変更して暖房機能を機能させる制御と、空調負荷がゼロの場合に空調ファン21の動作を低下させる制御と、を組み合わせた制御を実行している。これにより、これらの制御の相乗効果により、夜間就寝時(例えば23:00~6:00)において、空調負荷がゼロとなる時間が増えるため、空調ファン21の回転速度を「弱」で運転する時間を長くすることができる。よって、空調ファン21の動作を低下させる時間を長くすることで、空調ファン21の動作させるための消費電力を低減でき、空調システム1全体としての消費電力を低減できる。
【0081】
次に、夏季における空調制御について説明する。夏季における日中においては、室内設定温度を例えば22℃に設定して、空調装置2を運転している。ここで、空調装置2は、目標温度に緩やかに到達するように、PID制御により運転されている。空調装置2の通常運転時においては、空調ファン21は、例えば、「標準」での回転速度で動作させている。
【0082】
また、空調装置2の制御部9は、空調負荷がゼロの場合に、空調ファン21の動作を低下させる制御を実行する。本実施形態においては、室内設定温度を例えば22℃に設定しているため、室内温度が、例えば室内温度24℃から室内設定温度22℃に達した場合に、空調負荷が、室内温度24℃の場合の住宅10内の空調負荷(第1の空調負荷)よりも小さいゼロ(第2の空調負荷)になったとして、制御部9は、空調ファン21の回転速度を、「標準」から「弱」に切り替える変更を行って、空調ファン21の回転速度を「弱」で運転するように制御する。
【0083】
そして、空調ファン21の回転速度を「弱」で運転した場合において、住宅10の外から熱量が入って室内温度が室内設定温度22℃よりも高い温度に上昇した場合に、室内の温度を保とうとするための冷房負荷(空調負荷)が発生する。そのため、室内温度が室内設定温度22℃よりも高い温度に上昇した場合に、制御部9は、空調ファン21の回転速度を、「弱」から「標準」に切り替える変更を行って、空調ファン21の回転速度を「標準」で運転するように制御する。
【0084】
このように、制御部9は、空調ファン21の回転速度の切り替える制御を、空調負荷に応じて制御する。これらの制御を繰り返し実行することで、空調負荷がゼロの場合に、空調ファン21の動作を低下させることで、消費電力を低減でき、空調ファン21の動作させるための電気代を低減できる。
【0085】
また、夏季の夜間就寝時(例えば23:00~6:00)の制御において、制御部9は、夜間就寝時の室内設定温度を、例えば、日中の室内設定温度22℃から、日中の室内設定温度22℃よりも高い室内設定温度である26℃に変更して、冷房機能を機能させるように制御する。夜間就寝時においては、人の活動が活発ではない夜間において温度設定を緩めて消費電力を低減させたいという観点から、夜間就寝時の室内設定温度を、夏季において日中の室内設定温度(例えば22℃)よりも高い設定温度(例えば26℃)に変更して、空調装置2を運転する。これにより、夜間就寝時において、空調装置2の消費電力を低減でき、電気代を低減できる。
【0086】
夜間就寝時においても、日中の制御と同様に、空調装置2の制御部9は、空調負荷がゼロの場合に、空調ファン21の動作を低下させる制御を実行する。夜間就寝時においては、室内設定温度を例えば26℃に設定するため、制御部9は、室内温度が、例えば夜間の室内温度24℃から室内設定温度26℃に達した場合に、空調負荷が、室内温度24℃の場合の住宅10内の空調負荷(第1の空調負荷)よりも小さいゼロ(第2の空調負荷)になったとして、空調ファン21の回転速度を、「標準」から「弱」に切り替えて運転する制御を行い、住宅10の外から熱量が入って室内温度が室内設定温度26℃よりも高い温度に上昇した場合に、空調ファン21の回転速度を、「弱」から「標準」に切り替えて運転する制御を行う。これにより、夜間就寝時においても、制御部9は、空調ファン21の回転速度の切り替える制御を、空調負荷に応じて制御する。これらの制御を繰り返し実行することで、空調負荷がゼロの場合に、空調ファン21の動作を低下させることで、消費電力を低減でき、空調ファン21の動作させるための電気代を低減できる。
【0087】
ここで、夜間就寝時の室内設定温度を、例えば、日中の室内設定温度22℃から、日中の室内設定温度22℃よりも高い室内設定温度である26℃に変更しているため、室内設定温度が26℃である場合には、室内設定温度が22℃の場合よりも、室外温度との温度差が小さく又は温度差が無い状態となる。そのため、夜間就寝時の室内設定温度が26℃である場合には、日中の室内設定温度22℃の場合よりも、室外温度との温度差が小さく又は温度差が無い状態となるため、室内の温度を保とうとするための冷房負荷(空調負荷)が発生する時間が短くなる。よって、夏季の夜間就寝時の室内設定温度(例えば26℃)を日中の室内設定温度(例えば22℃)よりも高くすることで、夜間就寝時において、空調負荷がゼロとなる時間が増えるため、空調ファン21の回転速度を「弱」で運転する時間を長くすることができる。
【0088】
以上のように、夏季の夜間就寝時(例えば23:00~6:00)において、室内設定温度を、日中の室内設定温度22℃から26℃に変更して冷房機能を機能させる制御と、空調負荷がゼロの場合に空調ファン21の動作を低下させる制御と、を組み合わせた制御を実行している。これにより、これらの制御の相乗効果により、夜間就寝時(例えば23:00~6:00)において、空調負荷がゼロとなる時間が増えるため、空調ファン21の回転速度を「弱」で運転する時間を長くすることができる。よって、空調ファン21の動作を低下させる時間を長くすることで、空調ファン21の動作させるための消費電力を低減でき、空調システム1全体としての消費電力を低減できる。
【0089】
以上説明した本実施形態の空調システムによれば、以下のような効果を奏する。本実施形態の空調システム1は、住宅10全体の温度を調整する全館空調を備え、空調装置2は、暖房機能により暖めた空気又は冷房機能により冷やした空気を住宅10内に供給するファン21と、空調負荷がゼロの場合に空調ファン21の動作を低下させる制御を実行する制御部9と、を備える。これにより、空調負荷が、住宅10内に空調負荷が発生しているときの住宅10内における空調負荷(第1の空調負荷)よりも小さいゼロ(第2の空調負荷)の場合に、空調ファン21の動作を低下させることで、消費電力を低減させることができ、電気代を低減できる。
【0090】
また、本実施形態においては、制御部9は、暖房機能を機能させる場合において、夜間就寝時の室内設定温度を、日中の室内設定温度から、日中の室内設定温度よりも低い室内設定温度に変更して、暖房機能を機能させるように制御し、冷房機能を機能させる場合において、夜間就寝時の室内設定温度を、日中の室内設定温度から、日中の室内設定温度よりも高い室内設定温度に変更して、冷房機能を機能させるように制御する。これにより、夜間就寝時の消費電力を低減させることができ、電気代を低減できる。これに加えて、夜間就寝時の室内設定温度を日中の室内設定温度から変更する制御と、空調負荷がゼロの場合に空調ファン21の動作を低下させる制御と、を組み合わせて実行することで、空調ファン21の動作を低下させる時間を長くできるため、夜間就寝時の消費電力を一層低減できる。
【0091】
また、本実施形態においては、住宅10外の空気を住宅10内に導入すると共に、住宅10内の空気を住宅10外に排出する換気装置3を備え、換気装置3は、住宅10外の空気を空調装置2に導入し、空調装置2は、換気装置3により導入された住宅10外の空気を暖房機能により暖めて又は冷房機能により冷やして住宅10内に供給する。これにより、空調装置2と換気装置3とを備える空調システム1とすることができ、住宅10内の換気を行いながら、住宅10内の全体の気温を均一な温度に調整できるシステムを実現できる。
【0092】
以上、本開示の空調システムの好ましい一実施形態について説明したが、本開示は、上述した実施形態に制限されるものではなく、適宜変更が可能である。
【0093】
例えば、前記実施形態においては、制御部9を、空調負荷がゼロの場合に、空調ファン21の動作を低下させる制御を実行するように構成したが、これに限定されない。制御部9を、空調負荷が完全なゼロの場合でなくても、住宅10内に空調負荷が発生しているときの住宅10内における第1の空調負荷よりも小さい第2の空調負荷の場合に、ファン21の動作を低下させる制御を実行するように構成してもよい。第2の空調負荷は、第1の空調負荷よりも小さければよい。第1の空調負荷は、例えば、住宅内において設定温度と室内温度とに差があって空調負荷が発生している場合の空調負荷であり、第2空調負荷はは、第1空調負荷よりも小さい空調負荷である。第2空調負荷は、第1空調負荷よりも小さければよく、例えば、前記実施形態のように、完全なゼロでもよく、前記実施形態とは異なるが、完全なゼロでなくてゼロに近い値で限りなく小さい値でもよい。
【0094】
また、前記実施形態においては、制御部9は、暖房機能を機能させる場合において、日中の室内設定温度を例えば24℃に設定して空調装置2を運転している場合に、夜間就寝時(例えば23:00~6:00)の設定温度を、例えば18℃に変更して運転するように制御した。制御部9は、冷房機能を機能させる場合において、日中の室内設定温度を例えば22℃に設定して空調装置2を運転している場合に、夜間就寝時(例えば23:00~6:00)の設定温度を、例えば26℃に変更して運転するように制御した。しかし、具体的な室内設定温度の値は、この値に限定されず、適宜設定できる。
【0095】
前記実施形態においては、夜間就寝時を、例えば23:00~6:00の時間帯としたが、これに限定されない。夜間就寝時の時間帯は適宜設定できる。
【0096】
前記実施形態においては、床下空間114に1階側循環ファン吸気口46(第1吸気口)を配置し、屋根裏空間125に2階側循環ファン吸気口55(第2吸気口)を配置したが、これに限定されない。住宅10内の断熱区画18における最下部の近傍、若しくは、居住空間又は非居住空間の最下部に配置される仕上げ面(仕上げ部)を構成する住宅10の1階の床16の近傍に1階側循環ファン吸気口(第1吸気口)を配置してもよいし、住宅10内の断熱区画18における最上部の近傍、若しくは、居住空間又は非居住空間の最上部に配置される仕上げ面(仕上げ部)を構成する住宅10の2階の屋根天井15の近傍に2階側循環ファン吸気口(第2吸気口)を配置してもよい。
【0097】
前記実施形態においては、2階建て住宅10において、暖房機能を機能させる場合において、最下階の最下部の近傍に、1階側循環ファン吸気口(第1吸気口)を配置し、最上階の最上部の近傍に、2階側循環ファン吸気口(第2吸気口)を配置したが、これに限定されない。例えば、平屋建ての住宅、3階建て以上の住宅、複数階建ての住宅における各階、マンションの一室において、暖房機能を機能させる場合に、平屋建て、複数階建ての最下階、複数階建ての住宅の各階又はマンションの一室の最下部の近傍に第1吸気口を配置し、冷房機能を機能させる場合に、平屋建て、複数階建ての最下階、複数階建ての住宅の各階又はマンションの一室の最下部の近傍に第2吸気口を配置してもよい。
【0098】
前記実施形態においては、空調装置2が暖房機能及び冷房機能の両方を備えていたが、これに限定されない。空調装置2は、暖房機能又は冷房機能のいずれか一方のみを備えていてもよい。
【0099】
前記実施形態においては、空調装置2及び換気装置3を、空調ユニット4の構成としたが、これに限定されず、空調装置2及び換気装置3を別々に設けてもより。
【0100】
前記実施形態においては、空調システム1に換気装置3を備えて構成したが、これに限定されず、換気装置3を備えずに構成してもよい。
【0101】
前記実施形態においては、換気装置3の換気方式を、給気及び排気の両方を換気ファン(機械ファン)で行う第1種換気方式としたが、これに限定されず、排気を換気ファン(機械ファン)で行い、かつ、給気を自然給気で行う第3種換気方式としてもよい。
【0102】
前記実施形態においては、空調装置2及び換気装置3を有する空調ユニット4を1階に配置したが、これに限定されない。空調ユニット4が配置される位置は限定されない。
【符号の説明】
【0103】
1 空調システム、2 空調装置、3 換気装置、9 制御部、10 住宅、21 空調ファン(ファン)、46 1階側循環ファン吸気口(第1吸気口)、55 2階側循環ファン吸気口(第2吸気口)
図1
図2