(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024171043
(43)【公開日】2024-12-11
(54)【発明の名称】射出成形機
(51)【国際特許分類】
B29C 45/84 20060101AFI20241204BHJP
B29C 45/76 20060101ALI20241204BHJP
【FI】
B29C45/84
B29C45/76
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023087901
(22)【出願日】2023-05-29
(71)【出願人】
【識別番号】000002107
【氏名又は名称】住友重機械工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】金海 浩太
(72)【発明者】
【氏名】堀田 大吾
【テーマコード(参考)】
4F206
【Fターム(参考)】
4F206AM07
4F206JA07
4F206JL07
4F206JM02
4F206JN31
4F206JP15
4F206JQ83
4F206JT12
4F206JT31
(57)【要約】
【課題】型締モータの停止のタイミングを精度よく制御できる射出成形機を提供する。
【解決手段】射出成形機10は、型締装置100を移動させて金型装置800の型締を行う型締モータ160と、型締モータ160に電力を供給するドライバ部721と、を備える。また、射出成形機10は、型締モータ160とドライバ部721との間を接続する配線722に設けられ、ドライバ部721の電力の供給および供給停止を切り替え可能であり、かつ型締モータ160のブレーキの非発動およびブレーキの発動を切り替え可能な切替器730と、切替器730を制御するデジタル回路711と、を有する。デジタル回路711は、型締モータ160の停止のトリガ信号を取得することに基づき、切替器730を制御して供給停止およびブレーキの発動を行う。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
型締装置を移動させて金型装置の型締を行う型締モータと、
前記型締モータに電力を供給するドライバ部と、
前記型締モータと前記ドライバ部との間を接続する配線に設けられ、前記ドライバ部から前記型締モータへの電力の供給および供給停止を切り替え可能であり、かつ前記型締モータのブレーキの非発動および前記ブレーキの発動を切り替え可能な切替器と、
前記切替器に接続され、当該切替器を制御するデジタル回路と、を有し、
前記デジタル回路は、前記型締モータの停止のトリガ信号を取得することに基づき、前記切替器を制御して前記供給停止および前記ブレーキの発動を行う、
射出成形機。
【請求項2】
前記切替器は、前記デジタル回路からの切替信号の受信に基づき、前記型締モータの端子間を短絡することで前記ブレーキの発動を行う、
請求項1に記載の射出成形機。
【請求項3】
前記切替器は、A接点により前記配線を開閉するA接点部と、B接点により前記型締モータの端子間を開閉するB接点部と、を含み、
前記切替信号の受信に基づき前記A接点部の開放を行い、同じ前記切替信号の受信に基づき前記B接点の閉塞を行う、
請求項2に記載の射出成形機。
【請求項4】
前記デジタル回路は、前記トリガ信号の取得した時点から設定された待機期間だけ待機した後に、前記切替器の前記供給停止および前記ブレーキの発動を制御する、
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の射出成形機。
【請求項5】
前記待機期間は、前記型締装置により前記金型装置を押圧している状態から脱圧が完了する時間以上に設定される、
請求項4に記載の射出成形機。
【請求項6】
前記デジタル回路は、前記型締装置を制御している制御装置から脱圧の完了の信号を受信することに基づき、前記切替器の前記供給停止および前記ブレーキの発動を制御する、
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の射出成形機。
【請求項7】
前記デジタル回路は、前記トリガ信号を処理して前記切替器を制御するPLCを含む、
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の射出成形機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、射出成形機に関する。
【背景技術】
【0002】
射出成形機の射出成形中において、型締装置等を覆っているケースの安全ドアをユーザが開放する可能性がある。ユーザの安全のために、射出成形機は、射出成形中に安全ドアが開放された場合に、型締モータ等の駆動を自動的に停止する制御を行う。
【0003】
例えば、特許文献1には、安全ドアと、安全ドアの開閉状態を検出する検出部と、検出部の検出結果に基づき駆動部を停止する制御部と、を備える射出成形機が開示されている。この射出成形機の制御部は、安全ドアの開放に伴ってスイッチが切り替わることで、型締機構のモータ駆動部を動作させているリレースイッチのコイルの励磁を解除して駆動部を停止している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1に開示の射出成形機は、安全ドアのスイッチからモータ駆動部の動力を遮断するためのリレースイッチまで回路を、アナログ回路によって接続している。この場合、アナログ回路の部品のばらつき(コンデンサ容量や抵抗のばらつき等)、または環境要因(温度、電圧値等)によって、モータ駆動部の停止タイミングのばらつきが大きくなってしまう。
【0006】
本開示は、型締モータの停止のタイミングを精度よく制御できる射出成形機を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一態様によれば、型締装置を移動させて金型装置の型締を行う型締モータと、前記型締モータに電力を供給するドライバ部と、前記型締モータと前記ドライバ部との間を接続する配線に設けられ、前記ドライバ部から前記型締モータへの電力の供給および供給停止を切り替え可能であり、かつ前記型締モータのブレーキの非発動および前記ブレーキの発動を切り替え可能な切替器と、前記切替器に接続され、当該切替器を制御するデジタル回路と、を有し、前記デジタル回路は、前記型締モータの停止のトリガ信号を取得することに基づき、前記切替器を制御して前記供給停止および前記ブレーキの発動を行う、射出成形機が提供される。
【発明の効果】
【0008】
一態様によれば、型締モータの停止のタイミングを精度よく制御できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】一実施形態に係る射出成形機の型開完了時の状態を示す図である。
【
図2】一実施形態に係る射出成形機の型締時の状態を示す図である。
【
図3】型締モータの電力供給回路および制御ボードの主な構成を示す図である。
【
図4】制御装置および安全PLCの機能ブロックを示すブロック図である。
【
図5】安全PLCが型締モータを停止する際の動作手順を示すタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して本開示を実施するための形態について説明する。各図面において、同一構成部分には同一符号を付し、重複した説明を省略する場合がある。
【0011】
(射出成形機)
図1は、一実施形態に係る射出成形機の型開完了時の状態を示す図である。
図2は、一実施形態に係る射出成形機の型締時の状態を示す図である。本明細書において、X軸方向、Y軸方向およびZ軸方向は互いに垂直な方向である。X軸方向およびY軸方向は水平方向を表し、Z軸方向は鉛直方向を表す。型締装置100が横型である場合、X軸方向は型開閉方向であり、Y軸方向は射出成形機10の幅方向である。Y軸負方向側を操作側と呼び、Y軸正方向側を反操作側と呼ぶ。
【0012】
図1~
図2に示すように、射出成形機10は、金型装置800を開閉する型締装置100と、金型装置800で成形された成形品を突き出すエジェクタ装置200と、金型装置800に成形材料を射出する射出装置300と、金型装置800に対し射出装置300を進退させる移動装置400と、射出成形機10の各構成要素を制御する制御装置700と、射出成形機10の各構成要素を支持するフレーム900とを有する。フレーム900は、型締装置100を支持する型締装置フレーム910と、射出装置300を支持する射出装置フレーム920とを含む。型締装置フレーム910および射出装置フレーム920は、それぞれ、レベリングアジャスタ930を介して床2に設置される。射出装置フレーム920の内部空間922に、制御装置700が配置される。以下、射出成形機10の各構成要素について説明する。
【0013】
(型締装置)
型締装置100の説明では、型閉時の可動プラテン120の移動方向(例えばX軸正方向)を前方とし、型開時の可動プラテン120の移動方向(例えばX軸負方向)を後方として説明する。
【0014】
型締装置100は、金型装置800の型閉、昇圧、型締、脱圧および型開を行う。金型装置800は、固定金型810と可動金型820とを含む。
【0015】
型締装置100は例えば横型であって、型開閉方向が水平方向である。型締装置100は、固定金型810が取付けられる固定プラテン110と、可動金型820が取付けられる可動プラテン120と、固定プラテン110に対し可動プラテン120を型開閉方向に移動させる移動機構102と、を有する。
【0016】
固定プラテン110は、型締装置フレーム910に対し固定される。固定プラテン110における可動プラテン120との対向面に固定金型810が取付けられる。
【0017】
可動プラテン120は、型締装置フレーム910に対し型開閉方向に移動自在に配置される。型締装置フレーム910上には、可動プラテン120を案内するガイド101が敷設される。可動プラテン120における固定プラテン110との対向面に可動金型820が取付けられる。
【0018】
移動機構102は、固定プラテン110に対し可動プラテン120を進退させることにより、金型装置800の型閉、昇圧、型締、脱圧、および型開を行う。移動機構102は、固定プラテン110と間隔をおいて配置されるトグルサポート130と、固定プラテン110とトグルサポート130を連結するタイバー140と、トグルサポート130に対して可動プラテン120を型開閉方向に移動させるトグル機構150と、トグル機構150を作動させる型締モータ160と、型締モータ160の回転運動を直線運動に変換する運動変換機構170と、固定プラテン110とトグルサポート130の間隔を調整する型厚調整機構180と、を有する。
【0019】
トグルサポート130は、固定プラテン110と間隔をおいて配設され、型締装置フレーム910上に型開閉方向に移動自在に載置される。なお、トグルサポート130は、型締装置フレーム910上に敷設されるガイドに沿って移動自在に配置されてもよい。トグルサポート130のガイドは、可動プラテン120のガイド101と共通のものでもよい。
【0020】
なお、本実施形態では、固定プラテン110が型締装置フレーム910に対し固定され、トグルサポート130が型締装置フレーム910に対し型開閉方向に移動自在に配置されるが、トグルサポート130が型締装置フレーム910に対し固定され、固定プラテン110が型締装置フレーム910に対し型開閉方向に移動自在に配置されてもよい。
【0021】
タイバー140は、固定プラテン110とトグルサポート130とを型開閉方向に間隔Lをおいて連結する。タイバー140は、複数本(例えば4本)用いられてよい。複数本のタイバー140は、型開閉方向に平行に配置され、型締力に応じて伸びる。少なくとも1本のタイバー140には、タイバー140の歪を検出するタイバー歪検出器141が設けられてよい。タイバー歪検出器141は、その検出結果を示す信号を制御装置700に送る。タイバー歪検出器141の検出結果は、型締力の検出などに用いられる。
【0022】
なお、本実施形態では、型締力を検出する型締力検出器として、タイバー歪検出器141が用いられるが、本発明はこれに限定されない。型締力検出器は、歪ゲージ式に限定されず、圧電式、容量式、油圧式、電磁式などでもよく、その取付け位置もタイバー140に限定されない。
【0023】
トグル機構150は、可動プラテン120とトグルサポート130との間に配置され、トグルサポート130に対し可動プラテン120を型開閉方向に移動させる。トグル機構150は、型開閉方向に移動するクロスヘッド151と、クロスヘッド151の移動によって屈伸する一対のリンク群と、を有する。一対のリンク群は、それぞれ、ピンなどで屈伸自在に連結される第1リンク152と第2リンク153とを有する。第1リンク152は可動プラテン120に対しピンなどで揺動自在に取付けられる。第2リンク153はトグルサポート130に対しピンなどで揺動自在に取付けられる。第2リンク153は、第3リンク154を介してクロスヘッド151に取付けられる。トグルサポート130に対しクロスヘッド151を進退させると、第1リンク152と第2リンク153とが屈伸し、トグルサポート130に対し可動プラテン120が進退する。
【0024】
なお、トグル機構150の構成は、
図1および
図2に示す構成に限定されない。例えば
図1および
図2では、各リンク群の節点の数が5つであるが、4つでもよく、第3リンク154の一端部が、第1リンク152と第2リンク153との節点に結合されてもよい。
【0025】
型締モータ160は、トグルサポート130に取付けられており、トグル機構150を作動させる。型締モータ160は、トグルサポート130に対しクロスヘッド151を進退させることにより、第1リンク152と第2リンク153とを屈伸させ、トグルサポート130に対し可動プラテン120を進退させる。型締モータ160は、運動変換機構170に直結されるが、ベルトやプーリなどを介して運動変換機構170に連結されてもよい。
【0026】
運動変換機構170は、型締モータ160の回転運動をクロスヘッド151の直線運動に変換する。運動変換機構170は、ねじ軸と、ねじ軸に螺合するねじナットとを含む。ねじ軸と、ねじナットとの間には、ボールまたはローラが介在してよい。
【0027】
型締装置100は、制御装置700による制御下で、型閉工程、昇圧工程、型締工程、脱圧工程、および型開工程などを行う。
【0028】
型閉工程では、型締モータ160を駆動してクロスヘッド151を設定移動速度で型閉完了位置まで前進させることにより、可動プラテン120を前進させ、可動金型820を固定金型810にタッチさせる。クロスヘッド151の位置や移動速度は、例えば型締モータエンコーダ161などを用いて検出する。型締モータエンコーダ161は、型締モータ160の回転を検出し、その検出結果を示す信号を制御装置700に送る。
【0029】
なお、クロスヘッド151の位置を検出するクロスヘッド位置検出器、およびクロスヘッド151の移動速度を検出するクロスヘッド移動速度検出器は、型締モータエンコーダ161に限定されず、一般的なものを使用できる。また、可動プラテン120の位置を検出する可動プラテン位置検出器、および可動プラテン120の移動速度を検出する可動プラテン移動速度検出器は、型締モータエンコーダ161に限定されず、一般的なものを使用できる。
【0030】
昇圧工程では、型締モータ160をさらに駆動してクロスヘッド151を型閉完了位置から型締位置までさらに前進させることで型締力を生じさせる。
【0031】
型締工程では、型締モータ160を駆動して、クロスヘッド151の位置を型締位置に維持する。型締工程では、昇圧工程で発生させた型締力が維持される。型締工程では、可動金型820と固定金型810との間にキャビティ空間801(
図2参照)が形成され、射出装置300がキャビティ空間801に液状の成形材料を充填する。充填された成形材料が固化されることで、成形品が得られる。
【0032】
キャビティ空間801の数は、1つでもよいし、複数でもよい。後者の場合、複数の成形品が同時に得られる。キャビティ空間801の一部にインサート材が配置され、キャビティ空間801の他の一部に成形材料が充填されてもよい。インサート材と成形材料とが一体化した成形品が得られる。
【0033】
脱圧工程では、型締モータ160を駆動してクロスヘッド151を型締位置から型開開始位置まで後退させることにより、可動プラテン120を後退させ、型締力を減少させる。型開開始位置と、型閉完了位置とは、同じ位置であってよい。
【0034】
型開工程では、型締モータ160を駆動してクロスヘッド151を設定移動速度で型開開始位置から型開完了位置まで後退させることにより、可動プラテン120を後退させ、可動金型820を固定金型810から離間させる。その後、エジェクタ装置200が可動金型820から成形品を突き出す。
【0035】
型閉工程、昇圧工程および型締工程における設定条件は、一連の設定条件として、まとめて設定される。例えば、型閉工程および昇圧工程におけるクロスヘッド151の移動速度や位置(型閉開始位置、移動速度切換位置、型閉完了位置、および型締位置を含む)、型締力は、一連の設定条件として、まとめて設定される。型閉開始位置、移動速度切換位置、型閉完了位置、および型締位置は、後側から前方に向けてこの順で並び、移動速度が設定される区間の始点や終点を表す。区間毎に、移動速度が設定される。移動速度切換位置は、1つでもよいし、複数でもよい。移動速度切換位置は、設定されなくてもよい。型締位置と型締力とは、いずれか一方のみが設定されてもよい。
【0036】
脱圧工程および型開工程における設定条件も同様に設定される。例えば、脱圧工程および型開工程におけるクロスヘッド151の移動速度や位置(型開開始位置、移動速度切換位置、および型開完了位置)は、一連の設定条件として、まとめて設定される。型開開始位置、移動速度切換位置、および型開完了位置は、前側から後方に向けて、この順で並び、移動速度が設定される区間の始点や終点を表す。区間毎に、移動速度が設定される。移動速度切換位置は、1つでもよいし、複数でもよい。移動速度切換位置は、設定されなくてもよい。型開開始位置と型閉完了位置とは同じ位置であってよい。また、型開完了位置と型閉開始位置とは同じ位置であってよい。
【0037】
なお、クロスヘッド151の移動速度や位置などの代わりに、可動プラテン120の移動速度や位置などが設定されてもよい。また、クロスヘッドの位置(例えば型締位置)や可動プラテンの位置の代わりに、型締力が設定されてもよい。
【0038】
ところで、トグル機構150は、型締モータ160の駆動力を増幅して可動プラテン120に伝える。その増幅倍率は、トグル倍率とも呼ばれる。トグル倍率は、第1リンク152と第2リンク153とのなす角θ(以下、「リンク角度θ」とも呼ぶ)に応じて変化する。リンク角度θは、クロスヘッド151の位置から求められる。リンク角度θが180°のとき、トグル倍率が最大になる。
【0039】
金型装置800の交換や金型装置800の温度変化などにより金型装置800の厚さが変化した場合、型締時に所定の型締力が得られるように、型厚調整が行われる。型厚調整では、例えば可動金型820が固定金型810にタッチする型タッチの時点でトグル機構150のリンク角度θが所定の角度になるように、固定プラテン110とトグルサポート130との間隔Lを調整する。
【0040】
型締装置100は、型厚調整機構180を有する。型厚調整機構180は、固定プラテン110とトグルサポート130との間隔Lを調整することで、型厚調整を行う。なお、型厚調整のタイミングは、例えば成形サイクル終了から次の成形サイクル開始までの間に行われる。型厚調整機構180は、例えば、タイバー140の後端部に形成されるねじ軸181と、トグルサポート130に回転自在に且つ進退不能に保持されるねじナット182と、ねじ軸181に螺合するねじナット182を回転させる型厚調整モータ183とを有する。
【0041】
ねじ軸181およびねじナット182は、タイバー140ごとに設けられる。型厚調整モータ183の回転駆動力は、回転駆動力伝達部185を介して複数のねじナット182に伝達されてよい。複数のねじナット182を同期して回転できる。なお、回転駆動力伝達部185の伝達経路を変更することで、複数のねじナット182を個別に回転することも可能である。
【0042】
回転駆動力伝達部185は、例えば歯車などで構成される。この場合、各ねじナット182の外周に従動歯車が形成され、型厚調整モータ183の出力軸には駆動歯車が取付けられ、複数の従動歯車および駆動歯車と噛み合う中間歯車がトグルサポート130の中央部に回転自在に保持される。なお、回転駆動力伝達部185は、歯車の代わりに、ベルトやプーリなどで構成されてもよい。
【0043】
型厚調整機構180の動作は、制御装置700によって制御される。制御装置700は、型厚調整モータ183を駆動して、ねじナット182を回転させる。その結果、トグルサポート130のタイバー140に対する位置が調整され、固定プラテン110とトグルサポート130との間隔Lが調整される。なお、複数の型厚調整機構が組み合わせて用いられてもよい。
【0044】
間隔Lは、型厚調整モータエンコーダ184を用いて検出する。型厚調整モータエンコーダ184は、型厚調整モータ183の回転量や回転方向を検出し、その検出結果を示す信号を制御装置700に送る。型厚調整モータエンコーダ184の検出結果は、トグルサポート130の位置や間隔Lの監視や制御に用いられる。なお、トグルサポート130の位置を検出するトグルサポート位置検出器、および間隔Lを検出する間隔検出器は、型厚調整モータエンコーダ184に限定されず、一般的なものを使用できる。
【0045】
型締装置100は、金型装置800の温度を調節する金型温調機を有してもよい。金型装置800は、その内部に、温調媒体の流路を有する。金型温調機は、金型装置800の流路に供給する温調媒体の温度を調節することで、金型装置800の温度を調節する。
【0046】
なお、本実施形態の型締装置100は、型開閉方向が水平方向である横型であるが、型開閉方向が上下方向である竪型でもよい。
【0047】
なお、本実施形態の型締装置100は、駆動部として、型締モータ160を有するが、型締モータ160の代わりに、油圧シリンダを有してもよい。また、型締装置100は、型開閉用にリニアモータを有し、型締用に電磁石を有してもよい。
【0048】
(エジェクタ装置)
エジェクタ装置200の説明では、型締装置100の説明と同様に、型閉時の可動プラテン120の移動方向(例えばX軸正方向)を前方とし、型開時の可動プラテン120の移動方向(例えばX軸負方向)を後方として説明する。
【0049】
エジェクタ装置200は、可動プラテン120に取付けられ、可動プラテン120と共に進退する。エジェクタ装置200は、金型装置800から成形品を突き出すエジェクタロッド210と、エジェクタロッド210を可動プラテン120の移動方向(X軸方向)に移動させる駆動機構220とを有する。
【0050】
エジェクタロッド210は、可動プラテン120の貫通穴に進退自在に配置される。エジェクタロッド210の前端部は、可動金型820のエジェクタプレート826と接触する。エジェクタロッド210の前端部は、エジェクタプレート826と連結されていても、連結されていなくてもよい。
【0051】
駆動機構220は、例えば、エジェクタモータ240と、エジェクタモータ240の回転運動をエジェクタロッド210の直線運動に変換する運動変換機構とを有する。運動変換機構は、ねじ軸と、ねじ軸に螺合するねじナットとを含む。ねじ軸と、ねじナットとの間には、ボールまたはローラが介在してよい。
【0052】
エジェクタ装置200は、制御装置700による制御下で、突き出し工程を行う。突き出し工程では、エジェクタロッド210を設定移動速度で待機位置から突き出し位置まで前進させることにより、エジェクタプレート826を前進させ、成形品を突き出す。その後、エジェクタモータ240を駆動してエジェクタロッド210を設定移動速度で後退させ、エジェクタプレート826を元の待機位置まで後退させる。
【0053】
エジェクタロッド210の位置や移動速度は、例えばエジェクタモータエンコーダを用いて検出する。エジェクタモータエンコーダは、エジェクタモータ240の回転を検出し、その検出結果を示す信号を制御装置700に送る。なお、エジェクタロッド210の位置を検出するエジェクタロッド位置検出器、およびエジェクタロッド210の移動速度を検出するエジェクタロッド移動速度検出器は、エジェクタモータエンコーダに限定されず、一般的なものを使用できる。
【0054】
(射出装置)
射出装置300の説明では、型締装置100の説明やエジェクタ装置200の説明とは異なり、充填時のスクリュ330の移動方向(例えばX軸負方向)を前方とし、計量時のスクリュ330の移動方向(例えばX軸正方向)を後方として説明する。
【0055】
射出装置300はスライドベース301に設置され、スライドベース301は射出装置フレーム920に対し進退自在に配置される。射出装置300は、金型装置800に対し進退自在に配置される。射出装置300は、金型装置800にタッチし、金型装置800内のキャビティ空間801に成形材料を充填する。射出装置300は、例えば、成形材料を加熱するシリンダ310と、シリンダ310の前端部に設けられるノズル320と、シリンダ310内に進退自在に且つ回転自在に配置されるスクリュ330と、スクリュ330を回転させる計量モータ340と、スクリュ330を進退させる射出モータ350と、射出モータ350とスクリュ330の間で伝達される荷重を検出する荷重検出器360と、を有する。
【0056】
シリンダ310は、供給口311から内部に供給された成形材料を加熱する。成形材料は、例えば樹脂などを含む。成形材料は、例えばペレット状に形成され、固体の状態で供給口311に供給される。供給口311はシリンダ310の後部に形成される。シリンダ310の後部の外周には、水冷シリンダなどの冷却器312が設けられる。冷却器312よりも前方において、シリンダ310の外周には、バンドヒータなどの第1加熱器313と第1温度検出器314とが設けられる。
【0057】
シリンダ310は、シリンダ310の軸方向(例えばX軸方向)に複数のゾーンに区分される。複数のゾーンのそれぞれに第1加熱器313と第1温度検出器314とが設けられる。複数のゾーンのそれぞれに設定温度が設定され、第1温度検出器314の検出温度が設定温度になるように、制御装置700が第1加熱器313を制御する。
【0058】
ノズル320は、シリンダ310の前端部に設けられ、金型装置800に対し押し付けられる。ノズル320の外周には、第2加熱器323と第2温度検出器324とが設けられる。ノズル320の検出温度が設定温度になるように、制御装置700が第2加熱器323を制御する。
【0059】
スクリュ330は、シリンダ310内に回転自在に且つ進退自在に配置される。スクリュ330を回転させると、スクリュ330の螺旋状の溝に沿って成形材料が前方に送られる。成形材料は、前方に送られながら、シリンダ310からの熱によって徐々に溶融される。液状の成形材料がスクリュ330の前方に送られシリンダ310の前部に蓄積されるにつれ、スクリュ330が後退させられる。その後、スクリュ330を前進させると、スクリュ330前方に蓄積された液状の成形材料がノズル320から射出され、金型装置800内に充填される。
【0060】
スクリュ330の前部には、スクリュ330を前方に押すときにスクリュ330の前方から後方に向かう成形材料の逆流を防止する逆流防止弁として、逆流防止リング331が進退自在に取付けられる。
【0061】
逆流防止リング331は、スクリュ330を前進させるときに、スクリュ330前方の成形材料の圧力によって後方に押され、成形材料の流路を塞ぐ閉塞位置(
図2参照)までスクリュ330に対し相対的に後退する。これにより、スクリュ330前方に蓄積された成形材料が後方に逆流するのを防止する。
【0062】
一方、逆流防止リング331は、スクリュ330を回転させるときに、スクリュ330の螺旋状の溝に沿って前方に送られる成形材料の圧力によって前方に押され、成形材料の流路を開放する開放位置(
図1参照)までスクリュ330に対し相対的に前進する。これにより、スクリュ330の前方に成形材料が送られる。
【0063】
逆流防止リング331は、スクリュ330と共に回転する共回りタイプと、スクリュ330と共に回転しない非共回りタイプのいずれでもよい。
【0064】
なお、射出装置300は、スクリュ330に対し逆流防止リング331を開放位置と閉塞位置との間で進退させる駆動源を有していてもよい。
【0065】
計量モータ340は、スクリュ330を回転させる。スクリュ330を回転させる駆動源は、計量モータ340には限定されず、例えば油圧ポンプなどでもよい。
【0066】
射出モータ350は、スクリュ330を進退させる。射出モータ350とスクリュ330との間には、射出モータ350の回転運動をスクリュ330の直線運動に変換する運動変換機構などが設けられる。運動変換機構は、例えばねじ軸と、ねじ軸に螺合するねじナットとを有する。ねじ軸とねじナットの間には、ボールやローラなどが設けられてよい。スクリュ330を進退させる駆動源は、射出モータ350には限定されず、例えば油圧シリンダなどでもよい。
【0067】
荷重検出器360は、射出モータ350とスクリュ330との間で伝達される荷重を検出する。検出した荷重は、制御装置700で圧力に換算される。荷重検出器360は、射出モータ350とスクリュ330との間の荷重の伝達経路に設けられ、荷重検出器360に作用する荷重を検出する。
【0068】
荷重検出器360は、検出した荷重の信号を制御装置700に送る。荷重検出器360によって検出される荷重は、スクリュ330と成形材料との間で作用する圧力に換算され、スクリュ330が成形材料から受ける圧力、スクリュ330に対する背圧、スクリュ330から成形材料に作用する圧力などの制御や監視に用いられる。
【0069】
なお、成形材料の圧力を検出する圧力検出器は、荷重検出器360に限定されず、一般的なものを使用できる。例えば、ノズル圧センサ、または型内圧センサが用いられてもよい。ノズル圧センサは、ノズル320に設置される。型内圧センサは、金型装置800の内部に設置される。
【0070】
射出装置300は、制御装置700による制御下で、計量工程、充填工程および保圧工程などを行う。充填工程と保圧工程とをまとめて射出工程と呼んでもよい。
【0071】
計量工程では、計量モータ340を駆動してスクリュ330を設定回転速度で回転させ、スクリュ330の螺旋状の溝に沿って成形材料を前方に送る。これに伴い、成形材料が徐々に溶融される。液状の成形材料がスクリュ330の前方に送られシリンダ310の前部に蓄積されるにつれ、スクリュ330が後退させられる。スクリュ330の回転速度は、例えば計量モータエンコーダ341を用いて検出する。計量モータエンコーダ341は、計量モータ340の回転を検出し、その検出結果を示す信号を制御装置700に送る。なお、スクリュ330の回転速度を検出するスクリュ回転速度検出器は、計量モータエンコーダ341に限定されず、一般的なものを使用できる。
【0072】
計量工程では、スクリュ330の急激な後退を制限すべく、射出モータ350を駆動してスクリュ330に対して設定背圧を加えてよい。スクリュ330に対する背圧は、例えば荷重検出器360を用いて検出する。スクリュ330が計量完了位置まで後退し、スクリュ330の前方に所定量の成形材料が蓄積されると、計量工程が完了する。
【0073】
計量工程におけるスクリュ330の位置および回転速度は、一連の設定条件として、まとめて設定される。例えば、計量開始位置、回転速度切換位置および計量完了位置が設定される。これらの位置は、前側から後方に向けてこの順で並び、回転速度が設定される区間の始点や終点を表す。区間毎に、回転速度が設定される。回転速度切換位置は、1つでもよいし、複数でもよい。回転速度切換位置は、設定されなくてもよい。また、区間毎に背圧が設定される。
【0074】
充填工程では、射出モータ350を駆動してスクリュ330を設定移動速度で前進させ、スクリュ330の前方に蓄積された液状の成形材料を金型装置800内のキャビティ空間801に充填させる。スクリュ330の位置や移動速度は、例えば射出モータエンコーダ351を用いて検出する。射出モータエンコーダ351は、射出モータ350の回転を検出し、その検出結果を示す信号を制御装置700に送る。スクリュ330の位置が設定位置に達すると、充填工程から保圧工程への切換(所謂、V/P切換)が行われる。V/P切換が行われる位置をV/P切換位置とも呼ぶ。スクリュ330の設定移動速度は、スクリュ330の位置や時間などに応じて変更されてもよい。
【0075】
充填工程におけるスクリュ330の位置および移動速度は、一連の設定条件として、まとめて設定される。例えば、充填開始位置(「射出開始位置」とも呼ぶ。)、移動速度切換位置およびV/P切換位置が設定される。これらの位置は、後側から前方に向けてこの順で並び、移動速度が設定される区間の始点や終点を表す。区間毎に、移動速度が設定される。移動速度切換位置は、1つでもよいし、複数でもよい。移動速度切換位置は、設定されなくてもよい。
【0076】
スクリュ330の移動速度が設定される区間毎に、スクリュ330の圧力の上限値が設定される。スクリュ330の圧力は、荷重検出器360によって検出される。スクリュ330の圧力が設定圧力以下である場合、スクリュ330は設定移動速度で前進される。一方、スクリュ330の圧力が設定圧力を超える場合、金型保護を目的として、スクリュ330の圧力が設定圧力以下となるように、スクリュ330は設定移動速度よりも遅い移動速度で前進される。
【0077】
なお、充填工程においてスクリュ330の位置がV/P切換位置に達した後、V/P切換位置にスクリュ330を一時停止させ、その後にV/P切換が行われてもよい。V/P切換の直前において、スクリュ330の停止の代わりに、スクリュ330の微速前進または微速後退が行われてもよい。また、スクリュ330の位置を検出するスクリュ位置検出器、およびスクリュ330の移動速度を検出するスクリュ移動速度検出器は、射出モータエンコーダ351に限定されず、一般的なものを使用できる。
【0078】
保圧工程では、射出モータ350を駆動してスクリュ330を前方に押し、スクリュ330の前端部における成形材料の圧力(以下、「保持圧力」とも呼ぶ。)を設定圧に保ち、シリンダ310内に残る成形材料を金型装置800に向けて押す。金型装置800内での冷却収縮による不足分の成形材料を補充できる。保持圧力は、例えば荷重検出器360を用いて検出する。保持圧力の設定値は、保圧工程の開始からの経過時間などに応じて変更されてもよい。保圧工程における保持圧力および保持圧力を保持する保持時間は、それぞれ複数設定されてよく、一連の設定条件として、まとめて設定されてよい。
【0079】
保圧工程では金型装置800内のキャビティ空間801の成形材料が徐々に冷却され、保圧工程完了時にはキャビティ空間801の入口が固化した成形材料で塞がれる。この状態はゲートシールと呼ばれ、キャビティ空間801からの成形材料の逆流が防止される。保圧工程後、冷却工程が開始される。冷却工程では、キャビティ空間801内の成形材料の固化が行われる。成形サイクル時間の短縮を目的として、冷却工程中に計量工程が行われてよい。
【0080】
なお、本実施形態の射出装置300は、インライン・スクリュ方式であるが、プリプラ方式などでもよい。プリプラ方式の射出装置は、可塑化シリンダ内で溶融された成形材料を射出シリンダに供給し、射出シリンダから金型装置内に成形材料を射出する。可塑化シリンダ内には、スクリュが回転自在に且つ進退不能に配置され、またはスクリュが回転自在に且つ進退自在に配置される。一方、射出シリンダ内には、プランジャが進退自在に配置される。
【0081】
また、本実施形態の射出装置300は、シリンダ310の軸方向が水平方向である横型であるが、シリンダ310の軸方向が上下方向である竪型であってもよい。竪型の射出装置300と組み合わされる型締装置は、竪型でも横型でもよい。同様に、横型の射出装置300と組み合わされる型締装置は、横型でも竪型でもよい。
【0082】
(移動装置)
移動装置400の説明では、射出装置300の説明と同様に、充填時のスクリュ330の移動方向(例えばX軸負方向)を前方とし、計量時のスクリュ330の移動方向(例えばX軸正方向)を後方として説明する。
【0083】
移動装置400は、金型装置800に対し射出装置300を進退させる。また、移動装置400は、金型装置800に対しノズル320を押し付け、ノズルタッチ圧力を生じさせる。移動装置400は、液圧ポンプ410、駆動源としてのモータ420、液圧アクチュエータとしての液圧シリンダ430などを含む。
【0084】
液圧ポンプ410は、第1ポート411と、第2ポート412とを有する。液圧ポンプ410は、両方向回転可能なポンプであり、モータ420の回転方向を切換えることにより、第1ポート411および第2ポート412のいずれか一方から作動液(例えば油)を吸入し他方から吐出して液圧を発生させる。なお、液圧ポンプ410はタンクから作動液を吸引して第1ポート411および第2ポート412のいずれか一方から作動液を吐出することもできる。
【0085】
モータ420は、液圧ポンプ410を作動させる。モータ420は、制御装置700からの制御信号に応じた回転方向および回転トルクで液圧ポンプ410を駆動する。モータ420は、電動モータであってよく、電動サーボモータであってよい。
【0086】
液圧シリンダ430は、シリンダ本体431、ピストン432、およびピストンロッド433を有する。シリンダ本体431は、射出装置300に対して固定される。ピストン432は、シリンダ本体431の内部を、第1室としての前室435と、第2室としての後室436とに区画する。ピストンロッド433は、固定プラテン110に対して固定される。
【0087】
液圧シリンダ430の前室435は、第1流路401を介して、液圧ポンプ410の第1ポート411と接続される。第1ポート411から吐出された作動液が第1流路401を介して前室435に供給されることで、射出装置300が前方に押される。射出装置300が前進され、ノズル320が固定金型810に押し付けられる。前室435は、液圧ポンプ410から供給される作動液の圧力によってノズル320のノズルタッチ圧力を生じさせる圧力室として機能する。
【0088】
一方、液圧シリンダ430の後室436は、第2流路402を介して液圧ポンプ410の第2ポート412と接続される。第2ポート412から吐出された作動液が第2流路402を介して液圧シリンダ430の後室436に供給されることで、射出装置300が後方に押される。射出装置300が後退され、ノズル320が固定金型810から離間される。
【0089】
なお、本実施形態では移動装置400は液圧シリンダ430を含むが、本発明はこれに限定されない。例えば、液圧シリンダ430の代わりに、電動モータと、その電動モータの回転運動を射出装置300の直線運動に変換する運動変換機構とが用いられてもよい。
【0090】
(制御装置)
制御装置700は、例えばコンピュータで構成され、
図1~
図2に示すようにCPU(Central Processing Unit)701と、メモリなどの記憶媒体702と、入力インターフェース703と、出力インターフェース704とを有する。制御装置700は、記憶媒体702に記憶されたプログラムをCPU701に実行させることにより、各種の制御を行う。また、制御装置700は、入力インターフェース703で外部からの信号を受信し、出力インターフェース704で外部に信号を送信する。
【0091】
制御装置700は、計量工程、型閉工程、昇圧工程、型締工程、充填工程、保圧工程、冷却工程、脱圧工程、型開工程、および突き出し工程などを繰り返し行うことにより、成形品を繰り返し製造する。成形品を得るための一連の動作、例えば計量工程の開始から次の計量工程の開始までの動作を「ショット」または「成形サイクル」とも呼ぶ。また、1回のショットに要する時間を「成形サイクル時間」とも呼ぶ。
【0092】
一回の成形サイクルは、例えば、計量工程、型閉工程、昇圧工程、型締工程、充填工程、保圧工程、冷却工程、脱圧工程、型開工程、および突き出し工程をこの順で有する。ここでの順番は、各工程の開始の順番である。充填工程、保圧工程、および冷却工程は、型締工程の間に行われる。型締工程の開始は充填工程の開始と一致してもよい。脱圧工程の完了は型開工程の開始と一致する。
【0093】
なお、成形サイクル時間の短縮を目的として、同時に複数の工程を行ってもよい。例えば、計量工程は、前回の成形サイクルの冷却工程中に行われてもよく、型締工程の間に行われてよい。この場合、型閉工程が成形サイクルの最初に行われることとしてもよい。また、充填工程は、型閉工程中に開始されてもよい。また、突き出し工程は、型開工程中に開始されてもよい。ノズル320の流路を開閉する開閉弁が設けられる場合、型開工程は、計量工程中に開始されてもよい。計量工程中に型開工程が開始されても、開閉弁がノズル320の流路を閉じていれば、ノズル320から成形材料が漏れないためである。
【0094】
なお、一回の成形サイクルは、計量工程、型閉工程、昇圧工程、型締工程、充填工程、保圧工程、冷却工程、脱圧工程、型開工程、および突き出し工程以外の工程を有してもよい。
【0095】
例えば、保圧工程の完了後、計量工程の開始前に、スクリュ330を予め設定された計量開始位置まで後退させる計量前サックバック工程が行われてもよい。計量工程の開始前にスクリュ330の前方に蓄積された成形材料の圧力を削減でき、計量工程の開始時のスクリュ330の急激な後退を防止できる。
【0096】
また、計量工程の完了後、充填工程の開始前に、スクリュ330を予め設定された充填開始位置まで後退させる計量後サックバック工程が行われてもよい。充填工程の開始前にスクリュ330の前方に蓄積された成形材料の圧力を削減でき、充填工程の開始前のノズル320からの成形材料の漏出を防止できる。
【0097】
制御装置700は、ユーザによる入力操作を受け付ける操作装置750や画面を表示する表示装置760と接続されている。操作装置750および表示装置760は、例えばタッチパネル770で構成され、一体化されてよい。表示装置760としてのタッチパネル770は、制御装置700による制御下で、画面を表示する。タッチパネル770の画面には、例えば、射出成形機10の設定、現在の射出成形機10の状態等の情報が表示されてもよい。また、タッチパネル770の画面には、例えば、ユーザによる入力操作を受け付けるボタン、入力欄等の操作部が表示されてもよい。操作装置750としてのタッチパネル770は、ユーザによる画面上の入力操作を検出し、入力操作に応じた信号を制御装置700に出力する。これにより、例えば、ユーザは、画面に表示される情報を確認しながら、画面に設けられた操作部を操作して、射出成形機10の設定(設定値の入力を含む)等を行うことができる。また、ユーザが画面に設けられた操作部を操作することにより、操作部に対応する射出成形機10の動作を行わせることができる。なお、射出成形機10の動作は、例えば、型締装置100、エジェクタ装置200、射出装置300、移動装置400等の動作(停止も含む)であってもよい。また、射出成形機10の動作は、表示装置760としてのタッチパネル770に表示される画面の切り替え等であってもよい。
【0098】
(安全機能)
また
図1および
図2の2点鎖線で示すように、射出成形機10は、型締装置100、エジェクタ装置200および金型装置800を覆うケース940を有する。ケース940は、射出成形時に、射出成形機10のユーザが金型装置800等に接触することを防止する保護機能の役割を果たす。なお、ケース940は、射出装置300まで覆う構成、あるいは射出成形機10の全体を覆う構成であってもよい。
【0099】
例えば、ケース940は、長方形状(箱状)に形成され、フレーム900(型締装置フレーム910)の上面に固定される。ケース940のX軸正方向の側面には、射出装置300のシリンダ310およびノズル320が進退可能な図示しない口部が設けられている。
【0100】
そして、ケース940は、ユーザが開閉可能な安全ドア941を1以上有する。
図1および
図2では、安全ドア941をY軸正方向(紙面手前)側のケース940の側面に設置した例を図示している。ただし、安全ドア941の設置位置は、特に限定されず、Y軸負方向の側面やX軸負方向の側面でもよく、あるいはZ軸正方向の上面でもよい。安全ドア941は、片開き方式、スライド方式、両開き方式のいずれであってもよい。
【0101】
また、射出成形機10は、安全ドア941の開閉状態を検出する開閉検出器942を有する。開閉検出器942の種類は、特に限定されず、例えば、機械的なスイッチを採用したものや光学系のセンサを採用したもの等があげられる。開閉検出器942は、射出装置フレーム920の鉛直方向下側の内部空間922に設けられた制御ボード710に通信可能に接続され、安全ドア941の開閉状態の情報を送信する。
【0102】
制御ボード710は、射出成形機10のインターロックを制御して射出成形機10の安全性を確保するためのデジタル回路711を有している。また、内部空間922には、制御ボード710の他に、型締モータ160に電力を供給する電力供給回路720が設けられている。
【0103】
図3は、型締モータ160の電力供給回路720および制御ボード710の主な構成を示す図である。
図3に示すように、制御ボード710のデジタル回路711は、インターロックを制御するためのPLC(Programmable Logic Controller:以下、安全PLC712ともいう)を有する。安全PLC712は、射出成形機10の安全制御のためのプログラムが可能な専用コントローラであり、例えば、安全基準の認証を受けたICチップが適用される。なお、デジタル回路711は、安全PLC712の適用のみに限定されず、他のプロセッサ(CPU、GPU、ASIC、FPGA等)を適用してもよい。
【0104】
また、制御ボード710は、安全PLC712の他に、入出力インターフェース713、およびメモリ(不図示)等を有する。制御ボード710は、入出力インターフェース713を介して安全ドア941の開閉検出器942に接続されている。
【0105】
開閉検出器942が出力する信号には、安全ドア941の開閉状態の情報が含まれる。仮に、射出成形機10の射出成形中に安全ドア941が開放された場合、型締めを行っている型締装置100や金型装置800にユーザが接触する可能性が生じる。このため、安全PLC712は、インターロックの制御として、型締モータ160の電力供給を遮断して、型締装置100の移動を規制することで、安全性を確保する。
【0106】
すなわち、射出成形機10の射出成形中における安全ドア941の開放の情報は、射出成形機10を緊急的に停止するトリガ信号となる。なお、停止のトリガ信号は、安全ドア941の開放の情報に限定されず、種々の情報を含み得る。例えば、停止のトリガ信号の他の例としては、射出成形機10の適宜の構成を覆う安全カバーやパージカバーの開放の情報、射出成形機10の非常停止ボタンのオン等の情報があげられる。あるいは、停止のトリガ信号は、射出成形機10の異常の発生を診断する処理基板(例えば、制御装置700)等から出力される異常発生の情報であってもよい。換言すれば、安全ドア941の開閉検出器942、安全カバーやパージカバーの開閉検出器、非常停止ボタン、あるいは制御装置700は、トリガ信号を生成可能なトリガ生成部943(
図4参照)を構成する。制御ボード710は、入出力インターフェース713を介してトリガ生成部943の各構成に接続されている。
【0107】
一方、電力供給回路720は、例えば、射出装置フレーム920の内部空間922と、型締装置フレーム910よりも上方に設置されている型締モータ160との間を電気的に接続している。具体的には、電力供給回路720は、ドライバ部721と、ドライバ部721および型締モータ160の間を接続する複数の配線722と、複数の配線722の途中位置において型締モータ160への電力供給および供給停止を切り替える切替器730と、を含む。また、電力供給回路720は、複数の配線722の途中位置において型締モータ160に供給する電力(例えば、電流)を検出する給電検出部723を有する。
【0108】
型締モータ160は、例えば、三相交流電力の供給に基づき回転駆動するACサーボモータが適用されることが好ましい。これにより、型締モータ160は、回転角や回転速度を精度よく制御でき、型締装置100の高精度な位置決めが可能となる。なお、型締モータ160のモータの種類は、特に限定されるものではなく、他のサーボモータやステッピングモータ等でもよい。
【0109】
電力供給回路720のドライバ部721は、型締モータ160の種類に応じて適宜の構成を有している。例えば、型締モータ160がACサーボモータである場合に、ドライバ部721には、U相用の配線722u、V相用の配線722v、W相用の配線722uが接続される。ドライバ部721は、これらの各配線722を介して三相交流電力を型締モータ160に出力する。
【0110】
ドライバ部721は、制御パルスを出力するコントローラ724に接続されると共に、射出成形機10の電源部725に接続されている。コントローラ724は、制御装置700に接続され、制御装置700の制御指令を受信して、この制御指令に基づいてドライバ部721に制御パルスを出力する。ドライバ部721は、図示しないコンバータ、インバータ等の電力変換部721a、および電流調整部721b等を有し、入力された制御パルスに基づき、電源部725から供給される電力を調整して型締モータ160に出力する。
【0111】
また、給電検出部723は、U相の配線722uおよびV相の配線722vにおいて型締モータ160に供給される実電流を検出し、その検出情報を電流調整部721bにフィードバックする。
【0112】
電力供給回路720の切替器730は、ドライバ部721から型締モータ160に電力を供給すると共に、電力の供給停止を行う。さらに、この切替器730は、型締モータ160のブレーキの非発動およびブレーキの発動を切り替える機能を有する。具体的には、3つの配線722のそれぞれをA接点で開閉するA接点部731と、このA接点部731に接続されるB接点部732と、A接点部731およびB接点部732を同時に切り替える切替用コイル733と、を有する。また、切替器730は、入出力インターフェース713を介して安全PLC712に接続され、安全PLC712による信号に基づきA接点部731およびB接点部732を切り替える。なお、切替器730と安全PLC712とをリレーなどを介して接続する等、各部品は直接接続しても良いが、直接接続するものに限るわけではない。また、本実施形態では、A接点部731およびB接点部732を同時に切り替えるようにしているが、回路の設計に合わせて時間差を持たせて切り替えるようにしてもよい。言い換えれば、A接点部731とB接点部732は、切替信号の受信に基づきA接点部731の開放を行い、同じ切替信号の受信に基づきB接点部732の閉塞を行う。A接点部731とB接点部732の切替のタイミングについては同時でもよく異なるタイミングでもよい。
【0113】
B接点部732は、A接点部731の2次側(型締モータ160側)において、U相の配線722u、V相の配線722v、W相の配線722wの各々をスター結線により連結し、結線につながる2箇所の配線をB接点で開閉するスイッチを有する。また、B接点部732は、スター結線の適宜の位置に抵抗器(不図示)を有する。ただし、本実施形態に係る射出成形機10は、型締モータ160の駆動停止後に、B接点部732を閉塞する構成としており、抵抗器の抵抗値(サイズ)を小さくできる。なお、射出成形機10は、抵抗器を備えない構成でもよい。
【0114】
一例として、A接点部731は、切替用コイル733の励磁状態で、U相の配線722u、V相の配線722v、W相の配線722wをそれぞれ閉塞(オン)しており、ドライバ部721から型締モータ160への電力供給を可能とする。その一方で、B接点部732は、切替用コイル733の励磁状態で開放(オフ)している。
【0115】
そして、切替器730は、安全PLC712の切替信号によって、切替用コイル733を非励磁状態とする。この場合、A接点部731は、U相の配線722u、V相の配線722v、W相の配線722wをそれぞれ開放(オフ)することで、ドライバ部721から型締モータ160へ向かう電力を供給停止する。一方、B接点部732は、切替用コイル733の非励磁状態で閉塞(オン)する。B接点部732は、閉塞状態において、抵抗器を介して型締モータ160の各配線722が接続される端子間を短絡する。これにより、型締モータ160は、回転エネルギが熱消費されて大きなブレーキトルクがかかるようになり、型締モータ160を迅速に停止させることができる。つまり、切替器730は、B接点部732の切り替えのみで、型締モータ160のブレーキの非発動およびブレーキの発動を切り替えるダイナミックブレーキの機能を有する。
【0116】
図4は、制御装置700および安全PLC712の機能ブロックを示すブロック図である。制御装置700は、記憶媒体702に記憶されたプログラムをCPU701が実行することにより、
図4に示すように、型締装置制御部740、トリガ取得部741、信号生成部742、異常診断部743等の機能ブロックを内部に形成する。
【0117】
型締装置制御部740は、上記した成形サイクルにおいて型締装置100の動作を制御する。例えば、型締装置制御部740は、型閉工程、昇圧工程、型締工程、脱圧工程、型開工程の各々において、型締モータ160の動作を制御する制御指令をコントローラ724に出力することで、ドライバ部721を介して型締モータ160を動作させる。これにより、型締装置制御部740は、金型装置800の可動金型820を各工程の目標位置に移動させることができる。
【0118】
トリガ取得部741は、トリガ生成部943(安全ドア941の開閉検出器942、安全カバーやパージカバーの開閉検出器、非常停止ボタン等)から停止のトリガ信号を取得して、記憶媒体702に記憶する。また、トリガ取得部741は、異常診断部743から停止のトリガ信号を取得してもよい。異常診断部743は、射出成形機10の各構成や各センサ等の信号を定常的に監視して、異常の有無を判定している。異常診断部743は、射出成形機10を停止すべき異常を判定した場合に、停止のトリガ信号をトリガ取得部741に出力する。
【0119】
そして、型締装置制御部740は、トリガ取得部741における停止のトリガ信号の受信に基づき、型締装置100の動作を緊急的に停止する。例えば、型締装置100が金型装置800の固定金型810と可動金型820とに型締力をかけている工程(昇圧工程、型締工程、および脱圧工程の脱圧完了まで)では、型締装置制御部740は、型締装置100を脱圧させる動作を行う。これにより、射出成形機10は、型締装置100の緊急停止において、型締力の反力で金型装置800が意図せずに開いて当該金型装置800を破損することを防止できる。
【0120】
また、制御装置700の信号生成部742は、異常診断部743による異常の判定をした場合に、制御ボード710の安全PLC712に対してその情報(停止のトリガ信号:
図4の点線参照)を出力する。
【0121】
一方、安全PLC712は、内部のメモリに記憶されたプログラムの実行下に、トリガ取得部715、動作状態取得部716、切替器状態取得部717、判定部718、切替信号生成部719を形成する。
【0122】
トリガ取得部715は、トリガ生成部943(安全ドア941の開閉検出器942、安全カバーやパージカバーの開閉検出器、非常停止ボタン、制御装置700等)から停止のトリガ信号を取得する。
【0123】
動作状態取得部716は、型締モータ160の信号を取得し、型締モータ160のオン信号またはオフ信号を監視する。なお、動作状態取得部716は、制御装置700等から射出成形機10の現在の動作状態(成形サイクルの工程、待機、停止等)を取得してもよい。
【0124】
切替器状態取得部717は、切替器730の切替用コイル733の状態を検出する状態検出器(不図示)から、切替用コイル733の位置や固着の有無等を取得する。
【0125】
判定部718は、トリガ取得部715のトリガ信号、動作状態取得部716の射出成形機10の動作状態、切替器状態取得部717の切替器の状態等に基づき、切替器730の動作を判定する。例えば、判定部718は、射出成形機10が成形サイクル中(射出成形中)であり、かつ停止のトリガ信号を受信した場合に、切替器730の切替用コイル733を励磁状態から非励磁状態に切り替えることを判定する。また例えば、判定部718は、型締モータ160がオフ状態であり、かつ停止のトリガを受信した場合に、切替器730の切り替えを行わないことを判定する。型締モータ160のオフ状態において、切替器730は既に非励磁状態であり、ユーザが安全ドア941を開放しても非励磁状態のままとなる。
【0126】
また、切替信号生成部719は、判定部718による切替器730の切り替えの判定に基づき、切替器730に切替信号を出力する。ただし、切替信号生成部719は、判定部718が判定した(または停止のトリガ信号を受信した)タイミングから予め設定されている待機期間だけ待機し、この待機期間の経過後に切替信号を出力する。待機期間は、上記した緊急停止において、型締装置100の脱圧を行ってこの脱圧が完了する時間以上(例えば、脱圧が完了する時間よりも僅かに長い時間)に設定される。これにより、安全PLC712は、型締装置100の脱圧が完了した後に切替信号を切替器730に出力して、切替用コイル733を励磁状態から非励磁状態に切り替える。切替器730は、型締モータ160に対する電力の供給停止、および型締モータ160のブレーキの発動を行うことで、型締装置100および金型装置800を動かなくすることができる。
【0127】
(安全ドア941の開放時の制御処理)
本実施形態に係る射出成形機10は、基本的には、以上のように構成され、以下その動作について、
図5を参照しながら説明する。
図5は、安全PLC712が型締モータ160を停止する際の動作手順を示すタイミングチャートである。
【0128】
制御装置700の型締装置制御部740は、成形サイクルの各工程に応じた制御信号をドライバ部721に出力し、型締モータ160の動作を制御する。この際、安全PLC712の動作状態取得部716は、型締モータ160がモータオン状態であるオン信号を取得している。
【0129】
そして、安全ドア941の開閉検出器942は、
図5に示す射出成形機10の射出成形中の時点t1において、安全ドア941の開放を検出する。これにより、開閉検出器942は、停止のトリガ信号として安全ドア941の開放の情報を、制御装置700および安全PLC712に出力する。
【0130】
制御装置700の型締装置制御部740は、トリガ取得部741により停止のトリガ信号を受信すると、現在の成形サイクルを終了して、型締装置100により金型装置800を押圧している状態から圧力を低下させる脱圧動作を開始する(
図5の時点t2参照)。この際、型締装置制御部740は、型締モータ160を動作させて、可動金型820を固定金型810から若干後退させる。これにより、時点t3において型締装置100の脱圧が完了する。なお、緊急停止の脱圧では金型装置800の型締力をゼロにすればよいため、固定金型810と可動金型820は接触していてもよく、離れていてもよい。
【0131】
型締装置制御部740は、脱圧を完了させる際に、型締モータ160の制御指令として電力供給を終了する指令をドライバ部721に出力する。この制御指令に基づき、ドライバ部721は、型締モータ160に対する電力供給を停止する。なお、成形サイクル中であって可動金型820が固定金型810に接触していない場合(型閉工程、型開工程等)は、脱圧を行わずに電力供給を終了する制御指令を型締モータ160に出力してよい。
【0132】
一方、安全PLC712も、成形サイクル中の時点t1においてトリガ取得部715により停止のトリガ信号を受信する。これにより、判定部718は、ドライバ部721と型締モータ160との間の各配線722の開放(電力の停止)を判定する。そして、切替信号生成部719は、判定部718の判定に基づき、設定された待機期間だけ切替信号の出力を待機する。
【0133】
その結果、切替信号生成部719は、時点t2から待機期間が経過した時点t4において切替信号を切替器730に出力する。時点t4は、時点t2から時点t3以上に経過したタイミングであり、型締装置100の脱圧が完了した時点である。
【0134】
切替器730は、切替信号の受信に基づき、A接点部731の各スイッチをオフ(開放)し、B接点部732の各スイッチをオン(接続)する。これにより、型締モータ160への電力の供給停止が実行され、また型締モータ160にブレーキを発動させることができる。切替器730がA接点部731をオフしてB接点部732をオンしたタイミングでは、制御装置700からドライバ部721に対して電力供給を停止する制御指令が送信されており、ドライバ部721からの電力の供給が低減されている(例えば、電力の供給がゼロとなっている)。ドライバ部721からの電力の供給の停止によって、型締モータ160は、その回転をスムーズに停止できる。すなわち、射出成形時において安全ドア941を開放した場合に、デジタル回路711がトリガを取得し、切替器730を制御するようにしたことで、射出成形機10は停止させるための制御を開始してから早期(タイムラグがなく)かつ精度よく型締モータ160を停止することが可能となる。
【0135】
さらに、上記したB接点部732のオンに伴う型締モータ160へのブレーキの発動により、型締モータ160の停止した後に位置を保持することができる。これにより、外力が加わることによる型締装置100や金型装置800の移動を規制することが可能となる。
【0136】
以上のように、本実施形態に係る射出成形機10は、デジタル回路711において停止のトリガ信号を取得し、このデジタル回路711により切替器730を制御して、型締モータ160への電力の供給停止と、ブレーキの発動とを行う。これにより、部品のばらつきや環境要因によって切替器730の動作タイミングがばらつくことを防止して、型締モータ160の停止のタイミングを精度よく制御できる。特に、本実施形態のように切替器730を用いてブレーキの非発動およびブレーキの発動を切り替える機能を有する場合には、ブレーキのタイミングを精度よく制御でき、型締装置100や金型装置800の移動を速やかに規制できる。その結果、型締装置100や金型装置800に対してユーザが安全に触れることが可能となる。さらに金型装置800の移動の規制により、当該金型装置800の破損を抑止することができる。
【0137】
また、射出成形機10は、切替器730の切り替えにより型締モータの端子間を短絡する構成とすることで、ブレーキの簡素化および低コスト化を促すことができる。またさらに、射出成形機10は、切替器730にA接点部731およびB接点部732を備えることで、型締モータ160の電力の供給から供給停止への移行と、ブレーキの非発動から発動への移行を、容易に協働させることができる。
【0138】
そして、デジタル回路711の安全PLC712は、トリガ信号の受信に伴い設定された待機期間だけ待機することで、切替器730の切り替えを適切なタイミングで行うことができる。例えば、待機期間を型締装置100の脱圧が完了する時間以上とすることで、脱圧の完了前に型締モータ160に対する電力の供給停止を行って型締装置100に圧力が残存する不都合を回避できる。
【0139】
なお、本開示の射出成形機10は、上記の構成に限定されず、種々の変形例をとり得る。例えば、切替器730により型締モータ160に発動されるブレーキは、ダイナミックブレーキに限定されず、例えば、型締モータ160の回転軸を機械的に制動可能なブレーキを動作させる構成でもよい。
【0140】
また例えば、本実施形態に係る安全PLC712は、停止のトリガ信号の受信に伴って、型締装置100の脱圧を完了させる待機期間だけ待機して、切替器730を切り替える構成とした。しかしながら、安全PLC712は、待機期間をカウントせずに、脱圧完了の信号を制御装置700から受信することに基づき、切替器730を切り替える構成としてもよい。これにより、射出成形機10は、脱圧の完了後に切替器730を切り替えることができ、また型締装置100が脱圧を行わない場合には直ちに切替器730を切り替えることも可能となる。
【0141】
今回開示された実施形態に係る射出成形機10は、すべての点において例示であって制限的なものではない。実施形態は、添付の請求の範囲およびその主旨を逸脱することなく、様々な形態で変形および改良が可能である。上記複数の実施形態に記載された事項は、矛盾しない範囲で他の構成も取り得ることができ、また、矛盾しない範囲で組み合わせることができる。
【符号の説明】
【0142】
10 射出成形機
100 型締装置
160 型締モータ
700 制御装置
711 デジタル回路
712 安全PLC
721 ドライバ部
722 配線
730 切替器
731 A接点部
732 B接点部
800 金型装置