(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024171044
(43)【公開日】2024-12-11
(54)【発明の名称】浄化システム
(51)【国際特許分類】
B09C 1/10 20060101AFI20241204BHJP
C02F 3/00 20230101ALI20241204BHJP
【FI】
B09C1/10 ZAB
C02F3/00 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023087902
(22)【出願日】2023-05-29
(71)【出願人】
【識別番号】000206211
【氏名又は名称】大成建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 雅子
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 竜麻
(72)【発明者】
【氏名】高畑 陽
【テーマコード(参考)】
4D004
4D027
【Fターム(参考)】
4D004AA41
4D004AB06
4D004AC07
4D004CA18
4D004CC08
4D004CC15
4D004CC17
4D004DA03
4D004DA20
4D027CA00
(57)【要約】
【課題】本発明は、注入管内の好気性細菌によって分解される液状浄化材の量を抑制することができる浄化システムを提供することを課題とする。
【解決手段】本発明に係る浄化システムSは、汚染された環境に対して液状浄化材Tを供給する浄化システムSであって、液状浄化材Tを貯留する供給槽1と、前記供給槽1の液状浄化材Tを前記環境に注入する注入管4と、を備え、前記注入管4には、液状浄化材Tを前記環境に流出させる孔hが設けられており、前記注入管4の内部には、前記孔hから流出しない大きさの充填材Fが充填されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
汚染された環境に対して液状浄化材を供給する浄化システムであって、
液状浄化材を貯留する供給槽と、
前記供給槽の液状浄化材を前記環境に注入する注入管と、を備え、
前記注入管には、液状浄化材を前記環境に流出させる孔が設けられており、
前記注入管の内部には、前記孔から流出しない大きさの充填材が充填されていることを特徴とする浄化システム。
【請求項2】
前記充填材は、生分解性樹脂からなることを特徴とする請求項1に記載の浄化システム。
【請求項3】
前記充填材の比重は、1.0~1.2であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の浄化システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、浄化システムに関する。
【背景技術】
【0002】
有機塩素化合物や硝酸性窒素などの汚染物質によって汚染された環境を浄化する技術として、バイオレメディエーションが挙げられる。
このバイオレメディエーションは、液状の浄化材(液状浄化材)を浄化対象となる環境に供給することで微生物を活性化させ、この微生物によって当該環境に存在する汚染物質を分解除去する技術である。
そして、バイオレメディエーションは、比較的容易かつ低コストで実施できる浄化技術であるため、これまでにも様々な関連技術が報告されている。
【0003】
例えば、特許文献1では、バイオレメディエーションで使用する液状浄化材を気体透過性膜に通過させて溶存水素濃度を上昇させる浄化方法が報告されている。
また、特許文献2では、バイオレメディエーションで使用する物質であって、浄化期間を短縮できるビール酵母エキスが報告されている。
また、非特許文献1では、列状に配置された複数の注入管を介して、液状浄化材を浄化対象となる環境に供給することによって、汚染物質の拡散を防止できるバイオバリアを設ける技術が報告されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第5417070号公報
【特許文献2】特許第5841001号公報
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】根岸昌範、高畑陽「汚染地下水拡散防止技術の変遷と現状」大成建設技術センター報第54号(2021)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1、2や非特許文献1に報告されているバイオレメディエーションでは、注入管を介して液状浄化材を汚染された環境に供給する。
本発明者らは、バイオレメディエーションの注入管内で発生する事象を鋭意検討した結果、以下の問題の発生を確認した。
注入管は上部が開口しているため、注入管内に滞留する地下水が空気を取り込み、地下水の酸素濃度が上昇する。その結果、注入管内の地下水に溶け込んだ酸素を利用できる好気性細菌が活性化し、好気性細菌が注入管に供給した液状浄化材を分解(消費)してしまう。そのため、汚染された環境に対して適切な量の液状浄化材を供給するためには、注入管内において好気性細菌が分解してしまう液状浄化材の量を加味し、液状浄化材の供給量を多く設定する必要があった。
【0007】
このような観点から、本発明は、注入管内の好気性細菌によって分解される液状浄化材の量を抑制することができる浄化システムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題は、以下の手段により解決することができる。
本発明に係る浄化システムは、汚染された環境に対して液状浄化材を供給する浄化システムであって、液状浄化材を貯留する供給槽と、前記供給槽の液状浄化材を前記環境に注入する注入管と、を備え、前記注入管には、液状浄化材を前記環境に流出させる孔が設けられており、前記注入管の内部には、前記孔から流出しない大きさの充填材が充填されている。
本発明によれば、注入管の内部に充填材が充填されていることから、注入管内の空隙の容積が減少する。すなわち、本発明によれば、注入管内に滞留する地下水が少なくなるとともに地下水の酸素濃度の上昇も抑制される。その結果、好気性細菌の活性化が抑えられ、注入管内の好気性細菌によって分解される液状浄化材の量が抑制されることとなる。
加えて、本発明によれば、注入管内の充填材が管外に流出することはなく、また、液体は充填材の隙間を自由に流動できるため、注入管から液状浄化材が流出するのを充填材が妨げることもない。
本発明に係る浄化システムは、前記充填材が生分解性樹脂からなる。
本発明によれば、充填材が崩壊することなく長期的に安定した形状を維持できるとともに、注入管内に滞留する地下水の酸素濃度を低下させることもできる。
本発明に係る浄化システムは、前記充填材の比重が1.0~1.2である。
本発明によれば、注入管内の充填材をエアリフトなどで容易に取り出すことができるため、注入管の清掃が容易に実施できる。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る浄化システムによれば、注入管内の好気性細菌によって分解される液状浄化材の量を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本実施形態に係る浄化システムの全体の模式図である。
【
図2A】充填材を充填した状態の注入管の模式図である。
【
図2B】
図2Aの点線円箇所Eの拡大模式図であって、充填材と注入管の孔との関係を明らかにするために、注入管の孔を表した図である。
【
図3】充填材を回収する作業を説明するための模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明に係る浄化システムを実施するための形態について、図面を参照して説明する。
[浄化システム]
図1は、本実施形態に係る浄化システムの全体の模式図である。
図1に示すように、本実施形態に係る浄化システムSは、供給槽1と、供給管2と、ポンプ3と、注入管4と、を備える。
以下、本実施形態に係る浄化システムSの各構成について詳細に説明する。
【0012】
(供給槽)
供給槽1は、液状浄化材Tを貯留する槽である。
そして、供給槽1は、上部に蓋1aを備えており、この蓋1aを開けて液状浄化材Tを内部に供給したり補充したりすることができる。また、供給槽1の下部の側壁には、供給管2の上流端部が接続されている。
なお、供給槽1のサイズや形状は特に限定されず、必要となる液状浄化材Tの量などに応じて適宜設定すればよい。
【0013】
(供給管)
供給管2は、供給槽1から浄化対象となる環境(本実施形態では帯水層12)に設置された注入管4内に至る管である。
そして、供給管2は、上流端部が供給槽1に接続され、下流端部が帯水層12(浄化対象となる環境)の深度に配置される。帯水層12は、例えば、土壌10における不飽和層11と不透水層13との間に存在している。液状浄化材Tは、供給管2の下流端部から注入管4を介して帯水層12に供給される。
なお、供給管2は、下流側で分岐し、複数の下流端部から複数箇所に供給できるような構成になっていてもよい。
(ポンプ)
ポンプ3は、供給管2内の液状浄化材Tを供給槽1から帯水層12へと送液する機器である。
なお、ポンプ3は必要に応じて複数設置してもよいが、液状浄化材Tを自然流下で送液する場合などは、ポンプ3は設置しなくともよい。
【0014】
(注入管)
注入管について、
図1、
図2A、
図2Bを用いて説明する。
図2Aは、充填材を充填した状態の注入管の模式図である。また、
図2Bは、
図2Aの点線円箇所Eの拡大模式図であって、充填材と注入管の孔との関係を明らかにするために、注入管の孔を表した図である。
注入管4は、供給管2から供給される液状浄化材Tを帯水層12に注入するための管であり、井戸管とも呼ばれる。そして、注入管4は、少なくとも帯水層12の深度(地下水Wが存在する深度)に位置する下側部分4aに、液状浄化材Tを帯水層12に流出させる孔hが多数設けられている。つまり、注入管4の下側部分4aは、いわゆるストレーナーの構造となっている。そして、注入管4の下側部分4aに設けられる孔hの形状については
図2Bに示す長角孔に限定されず、例えば、丸孔、角孔、長丸孔等でもよい。
なお、非特許文献1に記載されているバイオバリアを設ける場合などは、注入管4を複数設置してもよい。
【0015】
(充填材)
注入管4に充填する充填材について、
図2A、
図2Bを用いて説明する。
充填材Fは、注入管4の下側部分4aに充填されることによって、注入管4の内部の空隙の容積を減少させる。その結果、注入管4内に滞留する地下水Wが少なくなるとともに、地下水Wの酸素濃度の上昇が抑制され、好気性細菌の活性化も抑えられる。そのため、注入管4の内部において好気性細菌によって分解される液状浄化材Tの量を抑制することができる。
充填材Fは、注入管4の下側部分4aに設けられる孔hから流出しない大きさである。そのため、充填材Fが注入管4の内部から帯水層12に拡散してしまうのを防止することができる。
なお、注入管4に充填する充填材Fの量は、少量であろうと注入管4の空隙の容積を減少できる。しかしながら、注入管4の内部に滞留する地下水Wを確実に減少させるために、少なくとも注入管4の下側部分4a(地下水Wが滞留する部分)が満たされるように充填材Fを充填するのが好ましい。
【0016】
(充填材:回収作業と比重)
非特許文献1に記載されているバイオバリアに本実施形態に係る浄化システムを適用する場合、注入管4は数年から数十年という長期間の使用が想定される。そのため、使用時間の経過とともに、粘土やシルトなどの細かな土粒子が注入管4内に堆積する、注入管4の下側部分4aに設けられる孔h(ストレーナー)が目詰まりする、といった事態が発生してしまう。よって、注入管4は、定期的に洗浄することが好ましい。
図3は、注入管4に充填した充填材Fを回収する作業を説明するための模式図である。
注入管4を洗浄するためには、注入管4から充填材Fを回収する必要がある。その際、まずは、注入管4の上側端部に三方管6を接続する。そして、流入管5を三方管6の上方から、注入管4の底部に差し込む。その後、流入管5を介して水や空気などを注入管4の底部に流し入れることによって、充填材Fが注入管4内を上昇(いわゆるエアリフト)し、最終的に、充填材Fが三方管6の枝管6aから排出されて容器Cに回収される。
この回収処理において、充填材Fの比重が大き過ぎると、充填材Fが注入管4内を適切に上昇することができない。一方、充填材Fの比重が小さ過ぎると、地下水Wで満たされている注入管4内において充填材Fが沈み難くなり、充填材Fを注入管4の下側部分4aに適切に充填することができない。
よって、充填材Fの比重は、1.0以上が好ましく、また、1.5以下が好ましく、1.2以下がより好ましい。
【0017】
充填材Fは、均質であって安定性の高い材料(長期的に水中で崩壊等が生じない材料)が好ましく、例えば、生分解性樹脂(生分解性プラスチック)、珪砂、ガラス片(ガラスビーズ)、砂利などが挙げられる。
珪砂は、コストの観点において優れるとともに、真比重が2.5~2.6程度であることから、注入管4内の地下水Wにおいて迅速に管底に沈降させることができる。しかしながら、回収作業の効率化の観点に基づくと、珪砂よりも、比重が1.0~1.2程度の生分解性樹脂の方が好ましい。
そして、生分解性樹脂は、安定性が高く、回収作業の効率化に優れ、さらには、地下水Wの酸素濃度を低下させるという効果(徐々に溶出される有機物が微生物に利用されて、水中の酸素を減少させる効果)も発揮することができる。
なお、生分解性樹脂としては、PHBH(ポリ-(3-ヒドロキシ酪酸-co-3-ヒドロキシヘキサン酸))、PHBV(ポリ-(3-ヒドロキシ酪酸-co-3-ヒドロキシヘキサン酸))、PCL(ポリカプトラクトン)、PLA(ポリ乳酸)、酢酸セルロース、澱粉樹脂、高級脂肪酸、これらの複合系樹脂などが挙げられるが、比重が前記範囲内に該当するとともに、酸素濃度の低下能を有するものであれば、特に限定されない。
【0018】
次に、浄化システムで使用する液状浄化材について説明する。
[液状浄化材]
液状浄化材は、バイオレメディエーションにおいて浄化対象となる環境に供給する液状の浄化材である。
なお、液状浄化材は、一般的なバイオレメディエーション用の浄化材であれば特に限定されず、例えば、アミノ酸、有機酸、糖類、ビタミン類、pH調整剤などを含有するものが挙げられる。また、液状浄化材は、本出願人が開発したビール酵母エキス(特許第5841001号)などの酵母エキスを含有してもよい。
【0019】
次に、浄化対象となる環境(汚染された環境)について説明する。
[浄化対象となる環境]
浄化対象となる環境とは、汚染物質(有機塩素化合物、硝酸性窒素など)を含む地盤や水環境であれば特に限定されない。地盤としては、帯水層のほか、地下水面より上の不飽和土層、表層土、粘性土層、汚泥、底泥などが挙げられ、水環境としては、工業廃水や家庭排水の処理槽、河川、ため池、湖などが挙げられる。
【0020】
浄化対象となる環境に含まれる汚染物質は特に限定されないが、有機塩素化合物や硝酸性窒素(亜硝酸性窒素も含む)が挙げられる。
なお、有機塩素化合物としては、テトラクロロエチレン(PCE)、トリクロロエチレン(TCE)、cis-1,2-ジクロロエチレン(cis-1,2-DCE)、trans-1,2-ジクロロエチレン(trans-1,2-DCE)、1,1-ジクロロエチレン(1,1-DCE)、クロロエチレン(VC)などのエチレン系の揮発性有機塩素化合物や、1,1,1―トリクロロエタン、1,1,2-トリクロロエタン、1,2-ジクロロエタンなどのエタン系の揮発性有機塩素化合物、四塩化炭素、及び、ジクロロメタンなどのメタン系の揮発性有機塩素化合物が挙げられる。
【0021】
浄化対象となる環境に存在する微生物は、汚染物質に応じて、有機塩素化合物の分解能を有する微生物や硝酸性窒素の分解能を有する微生物などが挙げられる。
なお、有機塩素化合物の分解能を有する微生物としては、デスルフォバクテリウム(Desulfobacterium)属、デスルフォモニル(Desulfomonile)属、デスルフィトバクテリウム(Desulfitobacterium)属、デスルフォビブリオ(Desulfovibrio)属、デスルフォバクター(Desulfobacter)属、デスルフォコッカス(Desulfococcus)属、デハロスピリルム(Dehalospirillum)属、デハロバクター(Dehalobacter)属、デハロバクテリウム(Dehalobacterium)属、デハロコッコイデス(Dehalococcoides)属、メタノサルシナ(Methanosarcina)属、メタノバクテリウム(Methanobacterium)属、メタノロブス(Methanolobus)属、メタノブレビバクター(Methanobrevibacter)属、アセトバクテリウム(Acetobacterium)属、クロストリジウム(Clostridium)属等の嫌気性微生物が挙げられる。
また、硝酸性窒素の分解能を有する微生物としては、パラコックス・デニトリフィカンス(Paracoccus denitrificans)、アルカリゲネス・デニトリフィカンス(Alcaligenes denitrificans)、チオバシラス・デニトリフィカンス(Thiobacillus denitrificans)、シュードモナス・エールジノーサ(Pseudomonas aeruginosa)等が挙げられる。
これらの微生物は、浄化対象となる環境に予め存在すればよいが、当該環境に対して別途添加してもよい。よって、本発明におけるバイオレメディエーションは、主としてバイオスティミュレーションを意味するが、バイオオーグメンテーションの態様をも含む。
【実施例0022】
まず、注入管における液状浄化材の滞在時間を確認するため、以下の試験を実施した。
[事前試験:注入管における液状浄化材の滞在時間の確認]
(試験内容)
注入管として、管長7m(複数の孔が設けられている有孔部5m)、内径2.5cmの硬質ポリ塩化ビニル管(塩ビ管、VP25)を使用して、地下水位がGround Level(GL)-1mの地盤で試験を実施した。なお、注入管内において地下水で満たされた高さが600cmであったことから、注入管内の地下水量は約3Lであった。
この注入管に対して、有機物濃度が4%の液状浄化材を1日あたり500mLの供給量となるように連続的に供給した結果、バイオバリアが形成され、有害物質(トリクロロエチレンなど)の拡散防止効果が確認された。
【0023】
注入管内における液状浄化材の滞在時間は約6日(=3000mL/500mL)と算出されることから、液状浄化材が長期的に注入管内に留まることが確認できた。
また、液状浄化材の微生物による分解を考慮した移流分散解析(Journal of Hydrology Volume 91, Issues 1-2, 15 May 1987, Pages 49-58に記載の式を少し変更した解析式)に基づいて、地下水の下流側に残存する液状浄化材の有機物濃度を算出したところ、液状浄化材は、事前試験で供給した供給量の半分以下でよいとの結果が得られた。つまり、事前試験では、注入管内で多くの液状浄化材が分解されてしまったことが確認できた。
以上より、注入管を介して液状浄化材を一回で大量に注入する工法よりも、注入管内に液状浄化材を少量ずつ連続的に滴下するバイオバリア(今回の試験のような工法)の方が、注入管内での液状浄化材の滞在時間が長くなるため、液状浄化材の分解されるリスクが高いと考えられる。よって、本発明に係る浄化システムは、バイオバリアに適用する方が、本発明の効果(分解される液状浄化材の量の抑制)をより強く発揮させることができると推察される。
【0024】
次に、生分解性樹脂の酸素除去能を確認するため、以下の試験を実施した。
[実施例:生分解性樹脂の性能の確認]
(試験内容)
容量が60mLのガラスバイアル瓶に、表1に示す生分解性樹脂(2.5g)を1種と表2に示す模擬地下水(約50mL)とを投入し、ブチルゴム栓とアルミシールで密栓した。また、比較例として、同じガラスバイアル瓶に、表1に示す生分解性樹脂を投入せず、表2に示す模擬地下水約50mLを投入したものを準備した。
そして、20℃の恒温室で各ガラスバイアル瓶を10日間静置した。静置後、各ガラスバイアル瓶中の溶液の色を目視で確認した。
なお、模擬地下水に含まれるレサズリンナトリウムは、酸化還元感受性を有する試薬であって、当該試薬を含む溶液の呈色に基づいて生分解性樹脂の酸素除去能の有無を判断できる。
【0025】
【0026】
【0027】
(結果の検討)
生分解性樹脂を投入しなかった比較例の模擬地下水は、鮮やかなピンク色であった。
一方、サンプル1~4の生分解性樹脂を投入した模擬地下水は、いずれも無色であったことから、模擬地下水が嫌気状態となっていたことが確認できた。つまり、生分解性樹脂から、模擬地下水中の溶存酸素量を低下できる有機物(微生物に利用されることで水中の酸素を減少させる有機物)が溶出されていたことが確認できた。
この結果から、充填材として生分解性樹脂を使用することによって、注入管内に滞留する地下水の酸素濃度をより低下させることができ、好気性細菌の活性化を更に抑制できることが確認できた。
また、サンプル1~4の生分解性樹脂は、比重が1.0以上であったことから、ガラスバイアル瓶の下側に沈降させることができた。また、サンプル1~4の生分解性樹脂は、比重が大きくなかったことから(比重が1.2程度であったことから)、容易に浮上させることができることも確認した。