(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024171047
(43)【公開日】2024-12-11
(54)【発明の名称】蛍光回転体及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
F21V 7/26 20180101AFI20241204BHJP
F21V 7/22 20180101ALI20241204BHJP
F21V 7/00 20060101ALI20241204BHJP
F21V 9/40 20180101ALI20241204BHJP
F21V 9/38 20180101ALI20241204BHJP
G03B 21/14 20060101ALI20241204BHJP
G03B 21/00 20060101ALI20241204BHJP
F21Y 115/30 20160101ALN20241204BHJP
【FI】
F21V7/26
F21V7/22
F21V7/00 100
F21V9/40 200
F21V9/38
G03B21/14 A
G03B21/00 F
F21Y115:30
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023087907
(22)【出願日】2023-05-29
(71)【出願人】
【識別番号】000002303
【氏名又は名称】スタンレー電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100100011
【弁理士】
【氏名又は名称】五十嵐 省三
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 英行
(72)【発明者】
【氏名】賀川 満
(72)【発明者】
【氏名】森山 弘基
【テーマコード(参考)】
2K203
【Fターム(参考)】
2K203FA07
2K203FA25
2K203FA32
2K203FA45
2K203FA62
2K203GA35
2K203GA40
2K203HA30
2K203HB25
2K203HB26
2K203HB29
2K203MA35
(57)【要約】
【課題】製造コストを低減した蛍光回転体及びその製造方法を提供する。
【解決手段】蛍光回転体U1においては、回転基板1の一面上の周方向に曲線状の黄色蛍光体層2-1、2-2及び緑色蛍光体層3-1、3-2を交互に設けると共に、黄色蛍光体層2-1、2-2と緑色蛍光体層3-1、3-2との間に仕切壁として白樹脂ダム4-1、4-2、4-3、4-4を設ける。白樹脂ダム4-1、4-2、4-3、4-4の存在により、黄色蛍光体層2-1、2-2からの黄色光Yが緑色蛍光体層3-1、3-2ににじみ出ることなく、白樹脂ダム4-1、4-2、4-3、4-4の存在により緑色蛍光層3-1、3-2からの緑色光Gが黄色蛍光体層2-1、2-2ににじみ出ることなく、従って、蛍光体層2-1、2-2、3-1、3-2間で混色を防止できる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
中心を回転中心とする円板状の回転基板と、
前記回転基板上の円周方向に沿って並んで設けられた少なくとも第1、第2の蛍光体層と、
前記回転基板上の前記第1、第2の蛍光体層間に設けられ、前記第1、第2の蛍光体層にそれぞれ隣接する仕切壁としての樹脂ダムと
を具備する蛍光回転体。
【請求項2】
円周方向に少なくとも第1、第2の開口部が設けられ、中心を回転中心とする円板状の回転基板と、
前記回転基板上の円周方向に沿って前記第1、第2の開口部間の前記回転基板上に設けられた少なくとも第1、第2の蛍光体層と、
前記回転基板上の前記第1、第2の蛍光体層間及び前記各第1、第2の蛍光体層と前記第1、第2の開口部との間にそれぞれ、前記第1、第2の蛍光体層に隣接する仕切壁としての樹脂ダムと
を具備する蛍光回転体。
【請求項3】
前記樹脂ダムは前記回転基板の中心に向かった径方向に沿って形成されている請求項1又は2に記載の蛍光回転体。
【請求項4】
前記樹脂ダムの前記回転基板の径方向長さは前記第1、第2の蛍光体層の径方向の幅より大きい請求項1又は2に記載の蛍光回転体。
【請求項5】
前記樹脂ダムの径方向の幅は0.10~0.25mmである請求項1又は2に記載の蛍光回転体。
【請求項6】
回転基板上の円周方向に沿って複数の樹脂ダムを形成する樹脂ダム形成工程と、
前記樹脂ダム間に蛍光体層を形成する蛍光体形成工程と
を具備する蛍光回転体の製造方法。
【請求項7】
回転基板上の円周方向に沿って第1、第2の開口部を形成する開口形成工程と、
前記回転基板上の円周方向に沿って前記第1、第2の開口部間に仕切壁としての複数の樹脂ダムを形成する樹脂ダム形成工程と、
前記樹脂ダム間に蛍光体層を形成する蛍光体層形成工程と
を具備する蛍光回転体の製造方法。
【請求項8】
前記樹脂ダム形成工程は熱硬化性樹脂を2段以上に塗布して熱硬化させる工程である請求項6又は7に記載の蛍光回転体の製造方法。
【請求項9】
前記蛍光体層形成工程は蛍光体含有熱硬化性樹脂をディスペンサを用いて塗布して熱硬化させる工程である請求項6又は7に記載の蛍光回転体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は蛍光回転体及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、プロジェクタ等における照明装置は、発光素子と波長変換部材としての蛍光体層とを組合わせて構成されている。
【0003】
たとえば、透過方式の蛍光体がある。すなわち、発光素子と蛍光体層とは直接接合されており、発光素子からの光は蛍光体層を透過して出射する。
【0004】
しかしながら、上述の透過方式の蛍光体においては、蛍光体層で発生した熱は、蛍光体層に接触している発光素子に放散することを意図しているが、実際には発光素子も発熱しているので、熱放散効率はよくない。この結果、蛍光体層は加熱されて蛍光強度が低下するという温度消光に到る。温度消光により蛍光強度が低下すると、蛍光に変換されなかったエネルギーが熱となり、蛍光体層の発熱量が増加して蛍光体層の温度が上昇してさらに温度消光が進むという現象を起こす。従って、高輝度化に限界があった。
【0005】
これに対して、温度消光現象が起きにくい反射方式の蛍光回転体がある。
【0006】
図10は第1の従来の蛍光回転体を示す図であって、(A)は上面図、(B)は(A)のB-B線断面図である。
図10においては、蛍光体層が回転基板に埋め込まれている。
【0007】
図10において、発光素子(図示せず)が発光する所定波長の光たとえば青色光Bは離間して回転する反射方式の蛍光回転体100によって反射されて出射する。蛍光回転体100は、回転軸X回りに回転可能な光反射性の金属よりなる回転基板101、及び回転基板101の凹部101aに埋め込まれた蛍光体層102、103よりなる。蛍光体層102、103は発光素子の発光波長より長い波長の蛍光たとえば黄色光Y、緑色光Gを発光する少なくとも1種類の蛍光体を含んでいる。この場合、蛍光体層102は黄色蛍光体層であり、蛍光体層103は緑色蛍光体層である。
【0008】
図10の蛍光回転体100においては、蛍光回転体100の蛍光体層1021、103の厚さが透過方式の蛍光体層の半分でも反射によって光路長が同一となるので、蛍光体層102、103を薄くでき、しかも回転するので、熱放散の面で有利である。従って、温度消光が起きにくく、高輝度化の点で優れている。
【0009】
また、
図10の蛍光回転体100においては、蛍光体層102、103間が側壁101bによって分離されている。側壁101aは回転基板101の一部で構成される。つまり、側壁101bは2つの凹部101aによって囲まれている。この側壁101bにより各蛍光体層102、103からの出射光の発散を抑制でき、従って、蛍光体層102、103からの光が他の蛍光体層102、103ににじみ出ることがなく、混色防止が要求されるたとえばプロジェクタの場合には、混色を防止できる。
【0010】
図11は第2の従来の蛍光回転体を示す図であって、(A)は上面図、(B)は正面図である(参照:特許文献1)。
図11においては、蛍光体層が回転基板上に設けられている。
【0011】
図11において、発光素子(図示せず)が発光する所定波長の光たとえば青色光Bは離間して回転する反射方式の蛍光回転体200によって反射されて出射する。蛍光回転体200は、回転軸X回りに回転可能な光反射性の金属よりなる回転基板201、及び回転基板201上に接着層202a、203aを介して設けられた蛍光体層202、203よりなる。蛍光体層202、203は発光素子の発光波長より長い波長の蛍光たとえば黄色光Y、緑色光Gを発光する少なくとも1種類の蛍光体を含んでいる。この場合、蛍光体層202は黄色蛍光体層であり、蛍光体層203は緑色蛍光体層である。
【0012】
図11の蛍光回転体200においても、蛍光回転体200の蛍光体層202、203の厚さが透過方式の蛍光体層の半分でも光路長が同一となるので、蛍光体層202、203を薄くでき、しかも回転するので、熱放散の面で有利である。従って、温度消光が起きにくく、高輝度化の点で優れている。
【0013】
また、
図11の蛍光回転体200においては、蛍光体層202、203はスクリーン印刷によって形成される(参照:特許文献1の段落0020)。たとえば、蛍光体層202、203をスクリーン印刷で仮板上に塗布して硬化させ、その上に接着層202a、203aを形成し、蛍光体層202、203を仮板から剥がして上下反転させ、蛍光体層202、203を回転基板201上に貼り付けて接着層202a、203aを硬化させる。この場合、
図11の(B)の矢印Pで示すごとく、スクリーン印刷のために蛍光体層202、203は厚みが均一で高い位置精度で接続される。従って、蛍光体層202、203間が切り立った始端面、終端面によって完全に分離されている。この始端面、終端面の界面により各蛍光体層202、203からの出射光の発散を抑制でき、従って、蛍光体層203、202からの光が他の蛍光体層202、203ににじみ出ることがなく、混色防止が要求されるたとえばプロジェクタの場合には、混色を防止できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
しかしながら、
図10に示す第1の従来の蛍光回転体100においては、蛍光体層102、103を埋め込むためにかつ側壁101bを形成するために回転基板101に凹部101aの加工が必要となるので、製造コストが上昇するという課題がある。
【0016】
また、
図11に示す第2の従来の蛍光回転体200においては、スクリーン印刷及びこれに伴う複雑な工程による製造コストの上昇を招くという課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上述の課題を解決するために、本発明に係る蛍光回転体は、中心を回転中心とする円板状の回転基板と、回転基板上の円周方向に沿って並んで設けられた少なくとも第1、第2の蛍光体層と、回転基板上の第1、第2の蛍光体層間に設けられ、第1、第2の蛍光体層にそれぞれ隣接する仕切壁としての樹脂ダムとを具備するものである。
【0018】
また、本発明に係る蛍光回転体の製造方法は、回転基板上の円周方向に沿って複数の樹脂ダムを形成する樹脂ダム形成工程と、樹脂ダム間に蛍光体層を形成する蛍光体形成工程とを具備するものである。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、安価なディスペンス方式で製造できるので、製造コストを低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明に係る蛍光回転体の第1の実施の形態を示す図であって、(A)は上面図、(B)は(A)のB-B線断面図である。
【
図2】
図1の蛍光回転体の製造方法を説明するための図である。
【
図3】
図2の白樹脂塗布工程の1段目工程を説明するための図である。
【
図4】
図2の白樹脂塗布工程の2段目工程を説明するための図である。
【
図5】実際に得られた
図1の白樹脂ダムの顕微鏡写真であって、(A)は上面写真、(B)は断面写真である。
【
図6】本発明に係る蛍光回転体の第2の実施の形態を示す図であって、(A)は上面図、(B)は(A)のB-B線断面図である。
【
図7】実際に得られた
図6の白樹脂ダムの顕微鏡上面写真である。
【
図8】
図1の蛍光回転体が適用された照明装置を示す図である。
【
図9】
図6の蛍光回転体が適用されたプロジェクタを示す図である。
【
図10】第1の従来の蛍光回転体を示す図であって、(A)は上面図、(B)は(A)のB-B線断面図である。
【
図11】第2の従来の蛍光回転体を示す図であって、(A)は上面図、(B)は正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
図1は本発明に係る蛍光回転体の第1の実施の形態を示す図であって、(A)は上面図、(B)は(A)のB-B線断面図である。
図1においても、蛍光体層は回転基板上に設けられている。
【0022】
図1の蛍光回転体U1においては、アルミニウム又はアルミニウム合金よりなる回転中心Oを回転中心として回転する円板状の回転基板1の一面上の周方向に厚さT=0.13~0.15mmの回転中心Oを基準として開度90°±1.5°の曲線状の黄色蛍光体層2-1、2-2及び緑色蛍光体層3-1、3-2を交互に設けると共に、黄色蛍光体層2-1、2-2と緑色蛍光体層3-1、3-2との間に仕切壁として高さH=0.14~0.16mm、円周方向の幅W=0.10~0.25mmの白樹脂ダム4-1、4-2、4-3、4-4を設ける。白樹脂ダム4-1、4-2、4-3、4-4は対角位置に配置され、回転基板1の回転均衡を維持し、回転基板1上に径方向に沿って形成される。
【0023】
発光素子(図示せず)たとえば青色レーザダイオードからの青色光Bを受けて黄色蛍光体層2-1、2-2及び緑色蛍光体層3-1、3-2は、それぞれ、黄色光Y及び緑蛍光Gを出射する。このとき、白樹脂ダム4-1、4-2、4-3、4-4の存在により、黄色蛍光体層2-1、2-2からの黄色光Yが緑色蛍光体層3-1、3-2ににじみ出ることなく、同様に、白樹脂ダム4-1、4-2、4-3、4-4の存在により緑色蛍光層3-1、3-2からの緑色光Gが黄色蛍光体層2-1、2-2ににじみ出ることなく、従って、蛍光体層2-1、2-2、3-1、3-2間で混色を防止できる。このためには、白樹脂ダム4-1、4-2、4-3、4-4と蛍光体層2-1、2-2、3-1、3-2との接触部分において、次の条件
H > T
が必要である。つまり、白樹脂ダム4-1、4-2、4-3、4-4の高さは蛍光体層2-1、2-2、3-1、3-2の高さより大きい。但し、蛍光体層2-1、2-2、3-1、3-2の平均的な高さは白樹脂ダム4-1、4-2、4-3、4-4より高い。
【0024】
蛍光回転体の回転に伴って青色光Bが白樹脂ダム4-1、4-2、4-3、4-4からの反射光が混色するのを完全に防止するために、青色光Bを消灯させる。この消灯時間が長いと目視で暗さを感じて表示品位が低下する。このため、白樹脂ダム4-1、4-2、4-3、4-4の幅Wを0.10~0.25mmと制限する。
【0025】
次に、
図1の蛍光回転体U1の製造方法を
図2を参照して説明する。
【0026】
始めに、
図2の(A)に示す白樹脂ダム塗布工程において、回転基板1上の4ヶ所に熱硬化性のシリコーン系樹脂よりなる白樹脂ダム4-1、4-2、4-3、4-4をディスペンサを用いて塗布する(ポッティングともいう)。白樹脂ダム塗布工程について後述する。尚、(A)-1は上面図、(A)-2は正面図である。
【0027】
次に、
図2の(B)に示す白樹脂ダム熱硬化工程において、白樹脂ダム4-1、4-2、4-3、4-4が成形された回転基板1を熱硬化炉に入れて白樹脂ダム4-1、4-2、4-3、4-4を熱硬化させる。
【0028】
次に、
図2の(C)に示す黄色蛍光体層塗布工程において、黄色蛍光体を含む熱硬化性のシリコーン系樹脂よりなる黄色蛍光体層2-1、2-2をディスペンサを用いて塗布する。この場合、ディスペンサノズルNの位置を固定して回転基板1を回転軸中心に回転させる。たとえば、白樹脂ダム4-2又は4-4をディスペンサノズルNに接触させた状態で白樹脂ダム4-1又は4-3がディスペンサノズルNに接触するまで回転基板1を回転させる。尚、(C)-1は上面図、(C)-2は正面図である。
【0029】
次に、
図2の(D)に示す緑色蛍光体層塗布工程において、緑色蛍光体を含む熱硬化性のシリコーン系樹脂よりなる緑色蛍光体層3-1、3-2をディスペンサを用いて塗布する。この場合、ディスペンサノズルNの位置を固定して回転基板1を回転軸中心に回転させる。たとえば、白樹脂ダム4-3又は4-1をディスペンサノズルNに接触させた状態で白樹脂ダム4-2又は4-4がディスペンサノズルNに接触するまで回転基板1を回転させる。尚、(D)-1は上面図、(D)-2は正面図である。
【0030】
最後に、
図2の(E)に示す蛍光体層熱硬化工程において、黄色蛍光体層2-1、2-2及び緑色蛍光体層3-1、3-2が成形された回転基板1を熱硬化炉に入れて黄色蛍光体層2-1、2-2及び緑色蛍光体層3-1、3-2を熱硬化させる。
【0031】
次に、
図2の白樹脂ダム塗布工程の詳細を
図3、
図4を参照して説明する。上述のごとく、白樹脂ダム4-1、4-2、4-3、4-4の高さHは白樹脂ダム4-1、4-2、4-3、4-4と接触する蛍光樹脂層2-1、2-2、2-3、2-4の部分の厚さT=0.13~0.15mmより大きくかつ白樹脂ダム4-1、4-2、4-3、4-4の円周方向の幅Wは0.25mm以下が要求される。このため、
図3の1段目白樹脂塗布工程及び
図4の2段目白樹脂塗布工程よりなる二段塗布方法を採用する。尚、
図3、
図4におけるディスペンサノズルNについて、直径は0.15mm、塗布圧力は350kPa、塗布速度は0.17mm/sであり、共通である。
【0032】
図3を参照すると、1段目白樹脂塗布工程は白樹脂ダム4-1の開始点P1でディスペンサノズルNを降下させてクリアランスCL1=0.15mmで塗布を開始し、終了点P2で塗布を停止してディスペンサノズルNを上昇させて2段目白樹脂塗布工程のためにクリアランスCL2=0.2mmとし、開始点P1に戻る。この結果、1段目白樹脂について、高さH1=0.1mm、幅W1=0.17mmを得た。
【0033】
次に、
図4を参照すると、2段目白樹脂塗布工程は白樹脂ダム4-1の開始点P1でディスペンサノズルNのクリアランスCL2=0.2mmで塗布を開始し、終了点P2で塗布を停止してディスペンサノズルNを上昇させる。この結果、1段目白樹脂及び2段目白樹脂の合計について、高さH2=0.15mm、幅W2=0.2mmを得た。尚、2段目白樹脂塗布工程は開始点をP2とし、終止点をP1としてもよい。
【0034】
このように、2段塗布方法により白樹脂ダム4-1、4-2、4-3、4-4の高さH(=H2)は0.15mmとなり、白樹脂ダム4-1、4-2、4-3、4-4と接触する蛍光体層2-1、2-2、3-1、3-2の部分の厚さT=0.13~0.15mmより大きくなり、つまり、白樹脂ダム4-1、4-2、4-3、4-4と蛍光体層2-1、2-2、3-1、3-2との接触部分において、白樹脂ダム4-1、4-2、4-3、4-4の高さは蛍光体層2-1、2-2、3-1、3-2の高さより大きくなり、また、白樹脂ダム4-1、4-2、4-3、4-4の幅W(=W2)は0.17mmとなり、要求幅W≦0.25mmを満足する。すなわち、2段塗布方法によれば、樹脂ダムのチキソ性が高いと、2段目の樹脂が1段目の樹脂を覆う状態となり、従って、2段目の樹脂の1段目の樹脂の底面への影響が少なくなる。この結果、1段目の樹脂の押し潰れが僅かとなり、白樹脂ダム4-1、4-2、4-3、4-4の幅W(=W2)は小さくなる。
【0035】
図5は実際に得られた
図1の白樹脂ダム4-1の顕微鏡写真であって、(A)は上面写真、(B)は断面写真である。
図5の(A)に示すように、白樹脂ダム4-1の回転基板径方向の幅は黄色蛍光体層2-1及び緑色蛍光体層3-1の回転基板径方向幅より大きくなっており、これにより、黄色蛍光体層2-1と緑色蛍光体層3-1との混色防止がさらに図れる。
【0036】
尚、白樹脂ダム4-1、4-2、4-3、4-4の高さは3段以上の塗布方法によってさらに大きくすることもできる。
【0037】
図6は本発明に係る蛍光回転体の第2の実施の形態を示す図であって、(A)は上面図、(B)は(A)のB-B線断面図である。
図6においても、蛍光体層は回転基板上に設けられている。
【0038】
図6の蛍光回転体U2においては、
図1の回転基板1に開度29°±1.5°の扇形の開口部1a、1bを設ける。開口部1a、1bは円板状の回転基板1の板厚方向に貫通した貫通穴である。これに伴い、蛍光体層2-1、2-2、3-1、3-2を小さくする。たとえば、黄色蛍光体層2-1、2-2の回転中心Oを基準とする開度を90°±1.5°から86°±1.5°に小さくし、緑色蛍光体層3-1、3-2の回転中心Oを基準とする開度を90°±1.5°から65°±1.5°に小さくする。さらに、
図1の白樹脂ダム4-2の代りに白樹脂ダム5-1、5-2を設けると共に、
図1の白樹脂ダム4-4の代りに白樹脂ダム5-3、5-4を設ける。白樹脂ダム5-1、5-2、5-3、5-4は対角位置に配置され、回転基板1の回転均衡を維持する。
【0039】
図6の蛍光回転体U2の製造方法は、黄色蛍光体層2-1、2-2、緑色蛍光体層3-1、3-2、白樹脂ダム4-1、4-3、5-1、5-2、5-3、5-4の形成前に回転基板1に開口部1a、1bを形成する点を除いて、
図1の蛍光回転体U1の製造方法と同一である。
【0040】
図6の蛍光回転体U2においては、発光源として青色発光素子を用いた場合、青色光Bは蛍光回転体U2の開口部1a、1bを通過するのに対し、黄色蛍光体層2-1、2-2から黄色光Yが反射され、緑色蛍光体層3-1、3-2から緑色光Gが反射される。
【0041】
図7は実際に得られた
図6の白樹脂ダム5-4の顕微鏡上面写真である。
図7に示すように、白樹脂ダム5-4の径方向幅は黄色蛍光体層2-1、2-2の径方向の幅及び緑色蛍光体層3-1、3-2の径方向の幅より大きくなっており、これにより、黄色蛍光体層及び緑色蛍光体層の開口部1a、1bへの流れ込みを防止できる。
【0042】
本発明に係る蛍光回転体U1、U2は照明装置、プロジェクタに適用できる。特に、
図1の蛍光回転体U1は
図8の照明装置に適用され、また、
図6の蛍光回転体U2は
図9のプロジェクタに適用される。
【0043】
図8においては、コンピュータ等によって構成される制御ユニット80は、蛍光回転体U1を回転駆動させるためのモータ81と、発光/受光回路によって構成され、蛍光回転体U1の白樹脂ダム4-1、4-2、4-3、4-4を検出するための検出器82と、青色光Bを出射するための青色レーザダイオード83とに接続されている。蛍光回転体U1は高速たとえば3000~5000rpmで回転する。制御ユニット80がモータ81を駆動すると共に青色レーザダイオード83をオンすると、青色レーザダイオード83からの青色光Bを受けた黄色蛍光体層2-1、2-2及び緑色蛍光体層3-1、3-2は黄色光Y及び緑色光Gを反射する。このとき、検出器82によって白樹脂ダム4-1、4-2、4-3、4-4が検出されると、制御ユニット80は青色レーザダイオード83をオフとする。
【0044】
図8の照明装置においては、黄色光Yと緑色光Gとが混色されず照明光となる。
【0045】
図9においては、コンピュータ等によって構成される制御ユニット90は、蛍光回転体U2を回転駆動させるためのモータ91と、発光/受光回路によって構成され、蛍光回転体U2の白樹脂ダム4-1、4-3、5-1、5-2、5-3、5-4を検出するための検出器92と、青色光Bを出射するための青色レーザダイオード93とに接続されている。蛍光回転体U2は高速たとえば3000~5000rpmで回転する。また、蛍光回転体U2の前段には、青色光Bを透過し、黄色光Y及び緑色光Gを反射するクロイックミラー94が設けられ、後段には、ミラー95、96が設けられている。さらに、クロイックミラー94から反射された黄色光Y及び緑色光Gを受けると共にミラー95、96からの反射された青色光Bを受けるためのクロイックミラー97を設ける。このクロイックミラー97も青色光Bを透過し、黄色光Y及び緑色光Gを反射する。従って、クロイックミラー97からの青色光B、黄色光Y及び緑色光Gが時分割的に光変調素子であるディジタルミラーデバイス(DMD)98に入射され、映像信号によって変調される。この結果、カラー映像光(B、Y、G)が投写レンズ99を介してスクリーン99aに映し出される。つまり、蛍光回転体U2は青色レーザダイオード93からの光を透過すると共に青色レーザダイオード93からの光を波長変換して反射させ、透過した透過光及び該波長変換して出射した反射光を時分割的に光変調して映像光とする。
【0046】
図9においても、制御ユニット90がモータ91を駆動すると共に青色レーザダイオード93をオンすると、青色光Bは蛍光回転体U2の開口部1a、1bを透過すると共に青色レーザダイオード93からの青色光Bを受けた黄色蛍光体層2-1、2-2及び緑色蛍光体層3-1、3-2は黄色光Y及び緑色光Gを反射する。このとき、検出器92によって白樹脂ダム4-1、4-3、5-1、5-2、5-3、5-4が検出されると、制御ユニット90は青色レーザダイオード93をオフとする。
【0047】
尚、上述の第1、第2の実施の形態においては、蛍光体層は2つの黄色蛍光体層、緑色蛍光体層で構成したが、3つ以上の蛍光体層を用いてもよい。また、白樹脂ダムは黒樹脂(カーボンブラック)含有シリコーン樹脂でもよい。さらに、蛍光体層は2色以外の3色にもなし得る。
【0048】
また、上述の第2の実施の形態においては、回転基板1に2つの開口部を設けているが、3つ以上の開口部を設けてもよい。
【0049】
さらに、本発明は上述の実施の形態の自明の範囲でいかなる変更にも適用できる。
【符号の説明】
【0050】
U1、U2:蛍光回転体
1:回転基板
1a、1b:開口部
2-1、2-2: 黄色蛍光体層
3-1、3-2:緑色蛍光体層
4-1、4-2、4-3、4-4;5-1、5-2、5-3、5-4:白樹脂ダム
N:ディスペンサノズル
T:蛍光体層の厚さ(高さ)
H:白樹脂ダムの高さ
W:白樹脂ダムの幅
100:蛍光回転体
101:回転基板
101a:凹部
101b: 側壁
102、103: 蛍光体層
X:回転軸
200:蛍光回転体
201:回転基板
202:黄色蛍光体層
202a:接着層
203:緑色蛍光体層
203a:接着層