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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024171051
(43)【公開日】2024-12-11
(54)【発明の名称】ヘッドアップディスプレイ装置
(51)【国際特許分類】
   B60K 35/23 20240101AFI20241204BHJP
   H04N 5/64 20060101ALI20241204BHJP
【FI】
B60K35/00 A
H04N5/64 521Z
H04N5/64 501D
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023087911
(22)【出願日】2023-05-29
(71)【出願人】
【識別番号】000231512
【氏名又は名称】日本精機株式会社
(72)【発明者】
【氏名】小嶋 誠哉
【テーマコード(参考)】
3D344
【Fターム(参考)】
3D344AA01
3D344AB01
3D344AC25
3D344AC30
(57)【要約】
【課題】筒状部材をより確実にビス止めすることができるヘッドアップディスプレイ装置を提供する。
【解決手段】ヘッドアップディスプレイ装置は、照明光ILを発する光源と、照明光ILを受けて表示光を発する表示部と、照明光ILが通過するレンズホルダ20と、を備える。レンズホルダ20は、ビス80の軸部が通過するビス通過孔25hを有し、ビス80によりビス穴部60iに固定されるビス止め部25Aを備える。ビス止め部25Aは、ビス通過孔25hの全周のうち半周部HC1を形成するU字溝部26と、ビス通過孔25hの全周のうち半周部HC1と異なる半周部HC2を形成するU字溝部27と、を備える。U字溝部26及び27は、照明光ILの光進行方向に重ならないようにずれた位置に設けられている。
【選択図】図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
照明光を発する光源と、
前記照明光を受けて表示光を発する表示部と、
前記照明光又は前記表示光が通過する筒状部材と、を備え、
前記筒状部材は、ビスの軸部が通過するビス通過孔を有し、前記ビスにより被固定部に固定されるビス止め部を備え、
前記ビス止め部は、
前記ビス通過孔の全周のうち第1部分を形成する第1溝部と、
前記ビス通過孔の全周のうち前記第1部分と異なる第2部分を形成する第2溝部と、を備え、
前記第1溝部及び前記第2溝部は、前記照明光又は前記表示光の光進行方向に重ならないようにずれた位置に設けられている、
ヘッドアップディスプレイ装置。
【請求項2】
前記第1溝部は、前記光進行方向に向けて開口するU字状又はV字状をなし、
前記第2溝部は、前記光進行方向に対向する方向に向けて開口するU字状又はV字状をなし、
前記ビス通過孔は、前記ビスの中心軸方向から見て、前記第1溝部と前記第2溝部が重なる位置に形成されている、
請求項1に記載のヘッドアップディスプレイ装置。
【請求項3】
前記筒状部材は、前記光進行方向に重ならないようにずれた位置に配置される複数の前記ビス止め部を備える、
請求項1又は2に記載のヘッドアップディスプレイ装置。
【請求項4】
前記ヘッドアップディスプレイ装置は、
複数の前記光源が実装される光源基板と、
前記光源基板からの熱が伝わるヒートシンクと、を備え、
前記筒状部材は、前記光源基板を直接的又は間接的に前記ヒートシンクに向けて押す押さえ部を備え、
前記ビス及び前記ビス止め部は、前記ビスによる締結力のうち少なくとも一部が前記押さえ部を介して前記光源基板を前記ヒートシンクに押す力として作用する向きに設けられる、
請求項1又は2に記載のヘッドアップディスプレイ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ヘッドアップディスプレイ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載のヘッドアップディスプレイ装置は、光源が実装される光源用基板と、光源からの光を集光するレンズと、光源用基板及びレンズを周囲から覆う筐体と、を備える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2021/235284号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1の構成において、筐体は、射出成型により形成され、光源からの光の進行方向に金型の抜き方向が設定されることが一般的である。このため、筐体においてビスが通過する孔を金型の抜き方向以外の方向に形成する場合には、金型の抜き方向に開口したU字状の孔として形成する必要がある。この場合、ビスの締結力によりU字状の孔が開く等、U字状の孔が変形するおそれがあり、筐体を確実にビス止めすることが困難であった。
【0005】
本開示は、上記実状を鑑みてなされたものであり、筒状部材をより確実にビス止めすることができるヘッドアップディスプレイ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本開示に係るヘッドアップディスプレイ装置は、
照明光を発する光源と、
前記照明光を受けて表示光を発する表示部と、
前記照明光又は前記表示光が通過する筒状部材と、を備え、
前記筒状部材は、ビスの軸部が通過するビス通過孔を有し、前記ビスにより被固定部に固定されるビス止め部を備え、
前記ビス止め部は、
前記ビス通過孔の全周のうち第1部分を形成する第1溝部と、
前記ビス通過孔の全周のうち前記第1部分と異なる第2部分を形成する第2溝部と、を備え、
前記第1溝部及び前記第2溝部は、前記照明光又は前記表示光の光進行方向に重ならないようにずれた位置に設けられている。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、筒状部材をより確実にビス止めすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本開示の一実施形態に係るヘッドアップディスプレイ装置が搭載された車両の模式図である。
図2】本開示の一実施形態に係るヘッドアップディスプレイ装置の概略図である。
図3】本開示の一実施形態に係るヘッドアップディスプレイ装置の部分的な斜視図である。
図4】本開示の一実施形態に係る表示部カバーが取り外された状態のヘッドアップディスプレイ装置の部分的な斜視図である。
図5】本開示の一実施形態に係るレンズホルダの斜視図である。
図6】本開示の一実施形態に係るレンズホルダの斜視図である。
図7図4のVII-VII線の断面図である。
図8図7の一部を拡大した図である。
図9図4のIX-IX線の断面図である。
図10】(A)は本開示の一実施形態に係るビス及びビス止め部の概略断面図であり、(B)は比較例に係るビス及びビス止め部の概略断面図であり、(C)は比較例に係るビス及びビス止め部の概略平面図である。
図11】本開示の変形例に係るビス止め部の概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本開示に係るヘッドアップディスプレイ装置の一実施形態について、図面を参照して説明する。
図1に示すように、ヘッドアップディスプレイ装置100は、車両200のダッシュボード内に設置される。ヘッドアップディスプレイ装置100は、車両200の被投射部材の一例であるフロントガラス201に向けて像を表す表示光Lを出射する。表示光Lはフロントガラス201で反射して視認者1(主に車両200の運転者)に到達する。これにより、虚像Vが視認者1により視認可能に表示される。
【0010】
図2に示すように、ヘッドアップディスプレイ装置100は、照明部40と、表示部10と、凹面鏡30と、筐体60と、制御基板70と、を備える。以下の説明では、車幅方向をX方向と規定し、車両高さ方向をY方向と規定し、車両前後方向をZ方向と規定する。
【0011】
照明部40は、表示部10に照明光ILを照射するライトボックスである。照明光ILは、本例では、Z軸方向に沿って進む。
照明部40の具体的な構成については後述する。
【0012】
表示部10は、照明部40からの照明光ILを受けて像を表す表示光Lを出射する。表示部10は、表示パネル14と、光学素子17と、ホットミラー19と、表示パネル14及び光学素子17を収容する表示部ケース15と、を備える。表示部ケース15は、表示パネルホルダ12と、表示パネルカバー11と、を備える。
【0013】
表示パネル14は、制御基板70により制御されるTFT(Thin Film Transistor)型の液晶表示パネルである。表示パネル14は、照明部40からの照明光ILを受けて表示光Lを出射する。
光学素子17は、表示パネル14からの表示光Lを調整するプリズム、拡散板等からなる。
【0014】
表示パネルホルダ12は、表示パネル14と光学素子17を外周から囲む略矩形筒状をなす。表示パネルホルダ12内には表示パネル14と光学素子17が収容されている。
表示パネルカバー11は、表示パネルホルダ12を照明部40側から覆うように表示パネルホルダ12に装着可能に形成されている。表示パネルカバー11は、照明光ILが通過する枠筒状をなす。
【0015】
凹面鏡30は、表示部10からの表示光Lをフロントガラス201に向けて拡大させつつ反射させる。
【0016】
筐体60は、非透光性の樹脂又は金属で形成されるとともに、中空の略直方体をなす。筐体60内には、ヘッドアップディスプレイ装置100の各構成が収納されている。詳しくは、筐体60は、上ケース60aと、下ケース60bと、ブラインドカバー62と、表示部カバー60dと、基板カバー60eと、ヒートシンク60gと、を備える。
【0017】
下ケース60bは、上方向に向けて開口する箱状をなす。下ケース60bには、凹面鏡30が収容される光路空間60sと、表示部10及び照明部40が収容される収容空間60fと形成されている。光路空間60sと収容空間60fの間に位置する下ケース60bの側壁には、表示部10からの表示光Lが通過する貫通孔60hが形成されている。
また、ヒートシンク60gは、下ケース60bと一体形成されており、後述する光源基板41の裏面に位置し、光源基板41の熱を外部へ放出するフィン構造をなす。
なお、ヒートシンク60gは、下ケース60bと別体でカバーとして形成されてもよい。
【0018】
下ケース60bの収容空間60f内には、複数のビス穴部60i(図7参照)が設けられている。ビス穴部60iは、Y方向に延びる円柱状をなし、ビス穴部60iの下端面(図7では上端面)にはビス穴が形成されている。ビス穴部60iのビス穴には、ビス80の軸部が螺合可能である。
【0019】
上ケース60aは、下ケース60bの光路空間60sを上側から塞ぐ蓋として機能する。上ケース60aには、フロントガラス201に対向する位置に開口部61が形成されている。上ケース60aは、開口部61を塞ぐ湾曲板状の窓部50を備える。窓部50は、表示光Lが透過するアクリル等の透光性の樹脂からなる。
【0020】
ブラインドカバー62は、下ケース60bの貫通孔60hと表示部10の間に設けられ、表示部10が出射する表示光Lを貫通孔60hへ導く筒状をなす。ブラインドカバー62は、表示パネルホルダ12の光出射側に装着されている。ブラインドカバー62と表示パネルホルダ12の間には、ホットミラー19が設けられている。
【0021】
図3図4に示すように、表示部カバー60dは、下ケース60bの収容空間60fを覆うように下ケース60bに装着されている。
基板カバー60eは、下ケース60bの外底面に設置された制御基板70を覆うように下ケース60bの外底面に装着される。
【0022】
制御基板70は、CPU(Central Processing Unit)等の各種電子部品が実装されたプリント回路基板からなり、表示部10及び照明部40を制御する。
【0023】
図2に示すように、照明部40は、複数の光源41aと、複数の光源41aが実装される光源基板41と、光源41aからの照明光を調整する複数のレンズ42a,42b,42cと、複数のレンズ42a,42b,42cを収容するレンズホルダ20と、を備える。
【0024】
光源基板41及びレンズ42a,42b,42cは、Z方向に並ぶように互いに対面して配置されている。
光源基板41は、ヒートシンク60gへの放熱が可能となるようにヒートシンク60gに、直接的に、又はサーマルシート(図示略)を介して間接的に接する位置に設けられている。光源基板41のレンズ42aに対向する実装面には、複数の光源41aが実装されている。光源41aは、LED(Light Emitting Diode)であり、照明光ILを発する。図9に示すように、光源基板41は、ビス80の中心軸Jの方向に対して傾斜する向きに設けられている。
【0025】
図2に示すように、レンズ42aは、コンデンサレンズであり、照明光ILを略平行化する。レンズ42b,42cは、レンチキュラレンズであり、表示光Lをアイボックスに配光するように、照明光ILをX方向及びY方向に拡散する。
【0026】
レンズホルダ20は、光源基板41及びレンズ42a,42b,42cの周囲を囲む樹脂製の筒状部材である。レンズホルダ20は、一対の金型を用いた射出成形により形成されている。
図5図7に示すように、レンズホルダ20は、本体筒部21と、ビス止め部25A~25Dと、複数の基板保持フック22と、複数の押さえ部23と、を備える。
本体筒部21は、光源基板41及びレンズ42a,42b,42cの外周を囲む矩形筒状をなす。
【0027】
複数の基板保持フック22は、光源基板41の周囲を通過し、光源基板41の実装面の裏面に引っ掛かる。
複数の押さえ部23は、レンズ42aを光源基板41に向けて押さえ付ける。これにより、光源基板41はヒートシンク60gに向けて押さえ付けられる。複数の押さえ部23は、レンズ42aのX方向の両側に位置し、レンズ42aに向けて付勢する板バネである。
【0028】
ビス止め部25A~25Dは、収容空間60f内のビス穴部60iにビス止めされる略平板状の部位である。ビス止め部25A~25Dは、本体筒部21の外部に位置する。ビス止め部25A,25Bと25C,25Dは、X方向から本体筒部21を挟み込むように配置されている。
ビス止め部25A,25Cは、ビス止め部25B,25DとはY方向に異なる位置に設けられ、本例では、ビス止め部25B,25Dよりも下側に位置する。
【0029】
次に、ビス止め部25Aの具体的な構成について説明する。なお、ビス止め部25B~25Dは、ビス止め部25Aと同様の構成であるため、その説明については省略する。
図8に示すように、ビス止め部25Aは、U字溝部26が形成されるビス接触部26aと、U字溝部27が形成される固定対象接触部27aと、ビス通過孔25hと、を備える。ビス接触部26aと固定対象接触部27aは、それぞれ厚みを持った板状をなし、ビス80の中心軸Jの方向においてずれて位置する。ビス接触部26aは、ビス止め部25Aの外側(ビス穴部60iから遠い側)に位置し、固定対象接触部27aは、ビス止め部25Aの内側(ビス穴部60iに近い側)に位置する。
【0030】
図5の下部に拡大して示すように、U字溝部26は、照明光ILの光進行方向に向けて開口するU字状をなす。U字溝部26内にはビス通過孔25hが形成されている。ビス通過孔25hの半周部HC1は、U字溝部26の円弧部分により形成される。ビス80の頭部は、ビス接触部26aの外側面のうちU字溝部26の円弧部分の外周側に接触する。
【0031】
図6の下部に拡大して示すように、U字溝部27は、照明光ILの光進行方向に対向する対向方向Cdに向けて開口するU字状をなす。U字溝部27内にはビス通過孔25hが形成されている。ビス通過孔25hの半周部HC2は、U字溝部27の円弧部分により形成される。半周部HC1とHC2によりビス通過孔25hの全周が構成されるが、半周部HC1とHC2は、ビス80の中心軸Jの方向においてずれた位置にある。ビス穴部60iの端面は、固定対象接触部27aの内側面のうちU字溝部27の円弧部分の外周側に接触する。
【0032】
U字溝部26と27は、互いに逆方向に開口しつつ、ビス80の中心軸Jの方向から見てビス通過孔25hの領域で部分的に重なるように配置されている。
図8に示すように、ビス通過孔25h、ビス80の軸部、及びビス穴それぞれの中心軸Jは、照明光ILの光進行方向に対して90°未満(例えば、60°~80°)に設定されている。これにより、図9に示すように、ビス80の中心軸Jの方向に作用する締結力Pのうち、複数の押さえ部23を介して光源基板41をヒートシンク60gに向けて押す力としての分力F1が発生する。分力F1は、光源基板41の実装面に直交する方向に作用する力である。よって。光源基板41からヒートシンク60gへの放熱を確実に行うことができる。仮に、中心軸Jが90°以上となると、分力F1がゼロかマイナスとなるため、光源基板41をヒートシンク60gに向けて押す力が生じない。
【0033】
ビス接触部26a(U字溝部26)と固定対象接触部27a(U字溝部27)は、照明光ILの光進行方向に重ならないように照明光ILに直交する直交方向にずれて設けられる。本例では、ビス接触部26aのビス穴部60i側の面と固定対象接触部27aのビス80の頭部側の面とは、この直交方向において距離Dだけ離れている。なお、この両面は距離Dだけ離れていなくてもよい。
照明光ILの光進行方向は、筒状のレンズホルダ20が延びる方向であり、レンズホルダ20を射出成形する際の一対の金型の抜き方向である。このように、金型の抜き方向にビス接触部26aと固定対象接触部27aをラッピングさせないことにより、スライド金型等を用いることなく、ビス止め部25Aを形成することができる。
【0034】
次に、図10(A)に示す本実施形態に係る構成の作用効果について、図10(B),(C)に示す比較例に係る構成の作用効果と比較しつつ説明する。
図10(B),(C)に示すように、比較例では、ビス止め部125は、照明光ILの光進行方向に向けて開口する1つのU字溝部126を備える。ビス接触部126aと固定対象接触部127aは、それぞれ、ビス止め部125の表裏両面に形成されている。ビス止め部125をビス穴部60iにビス止めするため、ビス80の軸部をU字溝部126内を通過させて、ビス穴部60iのビス穴に螺合させていく。これにより、ビス80の頭部がビス接触部126aに摺動回転し、この際、図10(C)の矢印で示すように、U字溝部126が開くように変形する。このため、ビス止め部125をビス穴部60iに強固にビス止めすることが困難である。また、ビス接触部126aと固定対象接触部127aが表裏で対向した位置にあるため、ビス80が傾くことにより、安定したビス止めが困難である。
【0035】
その点、本実施形態では、図10(A)に示すように、ビス接触部26aと固定対象接触部27aは、それぞれ別の板状部として形成され、中心軸Jの方向に位置ずれしている。本実施形態において、ビス止め部25Aをビス穴部60iにビス止めする際、ビス80の頭部がビス接触部26aに摺動回転しても、U字溝部26が開くことが固定対象接触部27aにより抑制される。よって、ビス止め部25Aをビス穴部60iに強固にビス止めすることができる。また、ビス80がビス止め部25Aを押す部分とビス止め部25Aがビス穴部60iを押す部分が中心軸J周りに異なる位置に設定される。このため、ビス80が傾きづらく、安定したビス止めが可能となる。
【0036】
(効果)
以上、説明した一実施形態によれば、以下の効果を奏する。
(1)ヘッドアップディスプレイ装置100は、照明光ILを発する光源41aと、照明光ILを受けて表示光Lを発する表示部10と、照明光ILが通過する筒状部材の一例であるレンズホルダ20と、を備える。レンズホルダ20は、ビス80の軸部が通過するビス通過孔25hを有し、ビス80により被固定部の一例であるビス穴部60iに固定されるビス止め部25Aを備える。ビス止め部25Aは、ビス通過孔25hの全周のうち第1部分(半周部HC1)を形成する第1溝部の一例であるU字溝部26と、ビス通過孔25hの全周のうち第1部分と異なる第2部分(半周部HC2)を形成する第2溝部の一例であるU字溝部27と、を備える。U字溝部26及び27は、照明光ILの光進行方向に重ならないようにずれた位置に設けられている。
この構成によれば、ビス通過孔25hは、照明光ILの光進行方向に重ならない位置に設けられるU字溝部26及び27により構成される。よって、ビス通過孔25hの中心軸Jの方向の全域が照明光ILの光進行方向(金型の抜き方向)に開口することがない。よって、ビス80の締結力によりビス通過孔25hの形状が変化することがなく、レンズホルダ20をより確実にビス止めすることができる。
【0037】
(2)U字溝部26は、照明光ILの光進行方向に向けて開口するU字状をなす。U字溝部27は、光進行方向に対向する対向方向Cdに向けて開口するU字状をなす。ビス通過孔25hは、ビス80の中心軸Jの方向から見て、U字溝部26と27が重なる位置に形成されている。
この構成によれば、ビス80の締結力によりビス通過孔25hの形状が変化することがなく、レンズホルダ20をより確実にビス止めすることができる。
【0038】
(3)レンズホルダ20は、照明光ILの光進行方向に重ならないようにずれた位置に配置される複数のビス止め部25A~25Dを備える。
この構成によれば、金型のスライダなしで、複数のビス止め部25A~25Dを持つレンズホルダ20を形成することができる。
【0039】
(4)ヘッドアップディスプレイ装置100は、複数の光源41aが実装される光源基板41と、光源基板41からの熱が伝わるヒートシンク60gと、を備える。レンズホルダ20は、光源基板41をレンズ42aを介して間接的にヒートシンク60gに向けて押す押さえ部23を備える。ビス80は、ビス80による締結力Pのうち少なくとも一部が押さえ部23を介して光源基板41をヒートシンク60gに押す分力F1として作用する向きに設けられる。
この構成によれば、光源基板41とヒートシンク60gの間の熱的な接触状態を確保することができ、より確実に、光源基板41の熱をヒートシンク60gに逃がすことができる。
【0040】
なお、本開示は以上の実施形態及び図面によって限定されるものではない。本開示の要旨を変更しない範囲で、適宜、変更(構成要素の削除も含む)を加えることが可能である。以下に、変形の一例を説明する。
【0041】
(変形例)
上記実施形態においては、各ビス止め部25A~25Dは、2つのU字溝部26,27を備えていたが、中心軸Jの方向に並ぶ3つ以上のU字溝部を備えていてもよい。例えば、図11に示すように、ビス止め部225Aは、3つのU字溝部26b,27b,28bを備えていてもよい。ビス穴部60iの端面からU字溝部27b→28b→26bの順番で重ねられている。U字溝部26bと27bは同じ方向(本例では対向方向Cd)に開口し、U字溝部26b,27bと28bは、互いに反対方向を向くように開口している。
【0042】
上記実施形態においては、照明光ILの光進行方向に対する中心軸Jの角度は90°未満、例えば、0°~89°の範囲に設定されていたが、これに限らず、90°以上であってもよい。
【0043】
上記実施形態においては、U字溝部26は照明光ILの光進行方向に向いて開口し、U字溝部27は対向方向Cdに向いて開口していたが、反対に、U字溝部26は対向方向Cdに向いて開口し、U字溝部27は照明光ILの光進行方向に向いて開口してもよい。
【0044】
上記実施形態において、ヘッドアップディスプレイ装置100は、表示部10からの表示光Lを凹面鏡30に向けて反射する折り返しミラーを備えていてもよい。折り返しミラーは、平面鏡又は凹面鏡である。
【0045】
上記実施形態においては、ビス止め部25A~25Dは、レンズホルダ20を筐体60に固定するためのものであったが、筒状部材としてのブラインドカバー62、表示パネルホルダ12又は表示パネルカバー11を筐体60に固定するためのものであってもよい。
1つの筒状部材に対するビス止め部25A~25Dの数は、4つに限らず、1~3つ、又は5つ以上であってもよい。
U字溝部26,27は、V字溝部として形成されてもよい。
押さえ部23は、光源基板41をレンズ42aを介して間接的にヒートシンク60gに向けて押していたが、直接的に光源基板41をヒートシンク60gに向けて押してもよい。
ビス通過孔25hは、ビス80の軸部が螺合するようにねじが切られていてもよい。
【0046】
上記実施形態においては、ヘッドアップディスプレイ装置100は車両200に搭載されていたが、車両200以外の飛行機、船等の乗り物に搭載されていてもよい。また、被投射部材はフロントガラスに限らず、専用のコンバイナであってもよい。
【符号の説明】
【0047】
1 視認者
10 表示部
11 表示パネルカバー
12 表示パネルホルダ
14 表示パネル
15 表示部ケース
17 光学素子
19 ホットミラー
20 レンズホルダ
21 本体筒部
22 基板保持フック
25A~25D,125,225A ビス止め部
25h ビス通過孔
26,27,26b,27b,28b,126 U字溝部
26a,126a ビス接触部
27a,127a 固定対象接触部
30 凹面鏡
40 照明部
41 光源基板
41a 光源
42a,42b,42c レンズ
50 窓部
60 筐体
60a 上ケース
60b 下ケース
60d 表示部カバー
60e 基板カバー
60f 収容空間
60g ヒートシンク
60h 貫通孔
60i ビス穴部
60s 光路空間
61 開口部
62 ブラインドカバー
70 制御基板
80 ビス
100 ヘッドアップディスプレイ装置
200 車両
201 フロントガラス
F1 分力
J 中心軸
L 表示光
HC1,HC2 半周部
V 虚像
IL 照明光
Cd 対向方向
D 距離
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11