(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024171056
(43)【公開日】2024-12-11
(54)【発明の名称】汎用コンバイン
(51)【国際特許分類】
A01F 12/24 20060101AFI20241204BHJP
【FI】
A01F12/24
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023087921
(22)【出願日】2023-05-29
(71)【出願人】
【識別番号】000000125
【氏名又は名称】井関農機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003834
【氏名又は名称】弁理士法人新大阪国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】上加 郁朗
(72)【発明者】
【氏名】二神 伸
(72)【発明者】
【氏名】渡部 寛樹
(72)【発明者】
【氏名】高橋 佑典
【テーマコード(参考)】
2B094
【Fターム(参考)】
2B094AA03
2B094AA11
2B094HA02
2B094HC02
2B094HD05
(57)【要約】
【課題】本発明は、米麦を収穫する汎用コンバインで子実コーンの収穫も行えるようにすることを技術課題とする。
【解決手段】機体フレーム1の前部に設ける刈取前処理装置3で穀稈を刈り取ってフィーダハウス3Dを通して脱穀装置4に搬入し、脱穀装置4の扱室10内には扱胴11を軸支し、その下部に受網12と選別室20を設け、該選別室20で分離した穀粒をグレンタンク7に搬送して収穫する汎用コンバインにおいて、受網12に扱胴11の回転方向に沿わせて外周に接近する複数の仕切板65を取り外し可能に設けたことを特徴とする汎用コンバインとする。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
機体フレーム(1)の前部に設ける刈取前処理装置(3)で穀稈を刈り取ってフィーダハウス(3D)を通して脱穀装置(4)に搬入し、脱穀装置(4)の扱室(10)内には扱胴(11)を軸支し、その下部に受網(12)と選別室(20)を設け、該選別室(20)で分離した穀粒をグレンタンク(7)に搬送して収穫する汎用コンバインにおいて、受網(12)に扱胴(11)の回転方向に沿わせて外周に接近する複数の仕切板(65)を取り外し可能に設けたことを特徴とする汎用コンバイン。
【請求項2】
受網(12)を左右前側受網(13A、13B)と左右後側受網(14A,14B)に分割し、それぞれに仕切板(65)を設けると共に、左右前側受網(13A、13B)に設ける仕切板(65)は下部の選別室(20)で移送棚(22)からグレンシーブ(23)に移る位置の上方に位置させたことを特徴とする請求項1に記載の汎用コンバイン。
【請求項3】
受網(12)に複数の仕切板(65)を前後に並列し、最後部の仕切板(65)は、下部の選別室(20)のグレンシーブ(23)終端位置の上方に位置させたことを特徴とする請求項1に記載の汎用コンバイン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、米麦やトウモロコシの穀粒(子実コーン)等の穀物を収穫する汎用コンバインに関する。
【背景技術】
【0002】
米麦や大豆などを収穫する汎用コンバインとして、特許第6187523号公報に記載の汎用コンバインがあるが、子実コーンの収穫を行うコンバインは、トウモロコシの穀稈を高刈して脱穀装置に搬入してトウモロコシから子実コーンを分離して収穫する子実コーン専用コンバインがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、米麦を収穫する汎用コンバインで子実コーンの収穫も行えるようにすることを技術課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記本発明の課題は、次の技術手段により解決される。
【0006】
請求項1の発明は、機体フレーム1の前部に設ける刈取前処理装置3で穀稈を刈り取ってフィーダハウス3Dを通して脱穀装置4に搬入し、脱穀装置4の扱室10内には扱胴11を軸支し、その下部に受網12と選別室20を設け、該選別室20で分離した穀粒をグレンタンク7に搬送して収穫する汎用コンバインにおいて、受網12に扱胴11の回転方向に沿わせて外周に接近する複数の仕切板5を取り外し可能に設けたことを特徴とする汎用コンバインとする。
【0007】
請求項2の発明は、受網12を左右前側受網13A、13Bと左右後側受網14A,14Bに分割し、それぞれに仕切板65を設けると共に、左右前側受網13A、13Bに設ける仕切板65は下部の選別室20で移送棚22からグレンシーブ23に移る位置の上方に位置させたことを特徴とする請求項1に記載の汎用コンバインとする。
【0008】
請求項3の発明は、受網12に複数の仕切板65を前後に並列し、最後部の仕切板65は、下部の選別室20のグレンシーブ23終端位置の上方に位置させたことを特徴とする請求項1に記載の汎用コンバインとする。
【発明の効果】
【0009】
請求項1の発明で、刈取前処理装置3で刈取られた穀稈が脱穀装置4の扱室10内へ送り込まれて扱胴11で穀粒が扱がれて受網12を通して選別室20で選別されてグレンタンク7に取り込まれて収穫されるが、トウモロコシの収穫の場合は受網12の内面に仕切板65を取り付けることでトウモロコシが仕切板65に強く当たって子実コーンが分離されて選別室20に送られグレンタンク7に溜められる。米や麦の収穫の際は仕切板65を受網12から取り外すことで米麦の穀粒を損傷することなく選別室20に送られグレンタンク7に溜めるので、米や麦の収穫用汎用コンバインが受網12に仕切板65を取り付けることで子実コーン収穫用の汎用コンバインに改造できる。
【0010】
請求項2の発明で、扱室10内の受網12が左右前側受網13A、13Bと左右後側受網14A,14Bに四分割しているので、扱室10から受網12を取り出して仕切板65の着脱が容易であり、扱室10内でトウモロコシが最初に当たる仕切板65で子実コーンが分離され始めるが、その子実コーンが左右前側受網13A、13Bを通してグレンシーブ23上に落下して選別が開始される。
【0011】
請求項3の発明で、扱室10内でトウモロコシが仕切板65に当たって残りの子実コーンが落下するのがグレンシーブ23上になって、子実コーンが排桿と共に排出されるのを防ぐ。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の実施形態にかかるコンバインの正面図である。
【
図4】同上コンバインの脱穀装置の前後方向の縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1~3に示すように、汎用コンバインは、機体フレーム1の下側に土壌面を走行する左右一対のクローラからなる走行装置2が設けられ、機体フレーム1の前側に圃場の穀稈を収穫する刈取前処理装置3が設けられ、刈取前処理装置3の後方左側に収穫された穀稈を脱穀・選別処理する脱穀装置4が設けられ、刈取前処理装置3の後方右側に操縦者が搭乗する操縦部5が設けられている。操縦部5を囲むキャビン59の上面にソーラーパネル60’を設け、日光で発電する電力をバッテリーに充電する。
【0014】
操縦部5の下側にエンジンを内装するエンジンルーム6が設けられ、操縦部5の後側に脱穀・選別処理された穀粒を貯留するグレンタンク7が設けられ、グレンタンク7の後側に穀粒を外部に排出する排出オーガ8が設けられている。
【0015】
刈取前処理装置3は、圃場の穀稈を起立させながら後側に掻込み搬送する掻込み搬送装置3Aと、掻込み搬送装置3Aの後側下部に搬送された穀稈の株元を切断する刈刃装置3Bと、掻込み搬送装置3Aの後側に搬送された穀稈を左側に寄せ集めるオーガ装置3Cと、寄せ集められた穀稈を脱穀装置4に搬送するフィーダハウス3Dから構成されている。
【0016】
図4に示すように、脱穀装置4は、穀稈を脱穀する扱室10と、脱穀された穀粒を選別する選別室20から形成されている。
【0017】
扱室10の前後壁には、フィーダハウス3Dから搬送されてくる穀稈を脱穀する扱胴11が架設され、扱胴11の下側には、扱胴11の外周下部に沿って半円弧形状に形成された受網12が設けられている。また、扱胴11の上部は、開閉可能な扱胴カバー62で覆われており、扱胴カバー62の内周部には、穀稈を扱室10の後部に案内する送塵板(図示省略)が設けられている。
【0018】
選別室20の上部には、扱室10から漏下してくる穀粒を選別処理する揺動選別装置21が設けられている。
【0019】
受網12は、扱胴11の下側前部に設けられる前側受網13と、扱胴11の下側後部に設けられる後側受網14から形成されている。また、前側受網13は、左右方向に2分割された左前側受網13Aと、右前側受網13Bから形成され、後側受網14は、左右方向に2分割された左後側受網14Aと、右後側受網14Bから形成されている。
【0020】
左前側受網13Aと右前側受網13Bの前部は、扱室10の左右壁の前部に架設された前側支持部材15Aに固定され、左前側受網13Aと右前側受網13Bの後部は、扱室10の左右壁に中間部に架設された前側中間支持部材15Bに固定されている。
【0021】
左後側受網14Aと右後側受網14Bの前部は、扱室10の左右壁の中間部に架設された後側中間支持部材15Cに固定され、左後側受網14Aと右後側受網14Bの後部は、扱室10の左右壁の後部に架設された後側支持部材15Dに固定されている。なお、左右前側受網13A、13Bと左右後側受網14A,14Bは、扱室10内から取り外して機体外に取り出すことが可能で、左右前側受網13A、13Bには第一仕切板65が揺動選別装置21の移送棚22の終端上方に位置して円弧状の第一仕切板65が内面にボルトとナットで取り外し可能に取り付けている。また、左右後側受網14A,14Bには、揺動選別装置21のグレンシーブ23の終端上方に位置して円弧状の第二仕切板65が内面にボルトとナットで取り外し可能に取り付けている。また、仕切板65は左右前側受網13A、13Bと左右前側受網13A、13Bに等間隔で各前、中、後の三か所に増やしても良い。
【0022】
選別室20の上部には、扱室10から漏下してくる穀粒を選別処理する揺動選別装置21が設けられている。揺動選別装置21の上部には、前側から順に板状体から形成された移送棚22と、前後方向に所定の間隔を隔てて並設された上下方向に傾斜し左右方向に延在する複数のシーブから形成されたグレンシーブ23と、左右方向に所定の間隔を隔てて並設された前後方向に延在する複数のシーブから形成されたストローラック24が設けられている。また、グレンシーブ23のシーブの傾斜角度(開度)は、収穫される穀稈の種類によって操縦部5に設けられたレバーを操作して変更することができる。これにより、収穫された穀稈の種類によらず選別効率を高い水準に維持することができる。
【0023】
揺動選別装置21の下側には、前側から順に、選別風を揺動選別装置21に送風する唐箕30’と、唐箕30’の送風口の上側に設けられた選別風の送風方向を変更する第1風割31’と、下側に設けられた選別風の送風方向を変更する第2風割32’と、グレンシーブ23から漏下してくる穀粒をグレンタンク7に搬送する1番螺旋33と、グレンシーブ23の後部から漏下してくる夾雑物や枝梗等が付着した穀粒(以下、「2番物」と言う。)を2番処理室に搬送したり、扱室10の前部に搬送する2番螺旋34が設けられている。また、唐箕30’の回転速度は、収穫される穀稈の種類や、移送棚22上を移送される穀稈の層厚に応じて変更される。これにより、収穫された穀稈の種類によらず選別効率を高い水準に維持することができる。
【0024】
図6,7に示すように、扱胴11は、扱室10の前後壁に回転自在に架設される回転軸30と、回転軸30の前部に支持された円錐台形状のインペラ31とロータ32から形成されている。
【0025】
インペラ31は、円形状の前板40と、前板40よりも径が大きい円形状の後板41と、前板40と後板41の外周部を連結する側板42から形成されている。
【0026】
側板42の外周面には、インペラ31の前部に搬送された穀稈をインペラ31の後部に搬送する上下一対の搬送螺旋43が立設されている。これにより、インペラ31に移送されてきた穀稈をインペラ31の前部から後部に効率よく搬送してロータ32に移送することができる。
【0027】
搬送螺旋43の前面には、円周方向に所定角度を隔てて側板42と搬送螺旋43の前面下部を連結する略三角形状の補強リブ44が設けられている。これにより、搬送螺旋43の剛性を高めて、穀稈から搬送螺旋43に加わる負荷による搬送螺旋43の変形を抑制することができる。
【0028】
ロータ32は、前後方向に二分割されてインペラ31の後側に設けられた前ロータ32Aと、前ロータ32Aの後側に設けられた後ロータ32Bから形成されている。なお、前後方向に二分割せず一体として形成することもできる。
【0029】
前ロータ32Aは、インペラ31の後板41と回転軸30の中間部に設けられた中間板35の間に設けられ、後ロータ32Bは、回転軸30の中間板35と回転軸30の後板36の間に設けられている。なお、中間板35は、回転軸30の前後方向の中間部に設けられた左右方向の縦断面が六角形状の中間支持部材34の外周面に立設している。
【0030】
前ロータ32Aは、前後方向に延在する6本のバーフレーム50と、前後方向に延在する3本の前後フレーム51と、前後フレーム51に前後方向に所定の間隔を隔てて支持された外側リング52から形成されており、この外側リング52には円周方向に複数の扱歯58が設けられている。
【0031】
同様に、後ロータ32Bは、前後方向に延在する6本のバーフレーム50と、前後方向に延在する3本の前後フレーム51と、前後フレーム51に前後方向に所定の間隔を隔てて支持された外側リング52から形成されている。
【符号の説明】
【0032】
4 脱穀装置
7 グレンタンク
10 扱室
11 扱胴
12 受網
13A 左前側受網
13B 右前側受網
14A 左後側受網
14B 右後側受網
20 選別室
22 移送棚
23 グレンシーブ