(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024171063
(43)【公開日】2024-12-11
(54)【発明の名称】聴覚フィードバックシステム
(51)【国際特許分類】
A63B 71/06 20060101AFI20241204BHJP
A61B 5/11 20060101ALI20241204BHJP
【FI】
A63B71/06 T
A61B5/11 200
A61B5/11 210
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023087932
(22)【出願日】2023-05-29
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 一般社団法人 日本機械学会 ロボティクス・メカトロニクス部門、ロボティクス・メカトロニクス講演会2022予稿集、3軸柔軟力覚センサを用いたインソール型センサシステム”、2A2-H05(1)~(2)、令和4年6月1日 ロボティクス・メカトロニクス講演会2022、令和4年6月3日、“3軸柔軟力覚センサを用いたインソール型センサシステム” 一般社団法人 日本機械学会 ロボティクス・メカトロニクス部門、ロボティクス・メカトロニクス講演会2022予稿集、“インソールセンサを用いた足底3軸力の計測と運動スキル改善のための聴覚フィードバックシステムの開発”2A2-H06(1)~(2)、令和4年6月1日 ロボティクス・メカトロニクス講演会2022、令和4年6月3日、“インソールセンサを用いた足底3軸力の計測と運動スキル改善のための聴覚フィードバックシステムの開発”
(71)【出願人】
【識別番号】301022471
【氏名又は名称】国立研究開発法人情報通信研究機構
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】内藤 栄一
(72)【発明者】
【氏名】細田 耕
(72)【発明者】
【氏名】川節 拓実
(72)【発明者】
【氏名】合田 考輝
(72)【発明者】
【氏名】高橋 隆
(72)【発明者】
【氏名】石黒 理紗
(72)【発明者】
【氏名】松本 旺二郎
【テーマコード(参考)】
4C038
【Fターム(参考)】
4C038VA04
4C038VB14
4C038VC20
(57)【要約】
【課題】運動動作/競技の妨げにならず、簡単な構成で動作状況をフィードバックする技術を提供する。
【解決手段】本発明の一側面に係る聴覚フィードバックシステムは、使用時にユーザの足底に配置され、足底におけるせん断力を測定するための1つ以上の足底センサ、使用時にユーザに装着されるイヤフォン、並びに1つ以上の足底センサ及びイヤフォンに接続される情報処理装置であって、1つ以上の足底センサから測定データを取得し、かつ取得された測定データにより示されるせん断力の向きに応じたリアルタイムな聴覚フィードバックをイヤフォンに出力するように構成される情報処理装置、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
使用時にユーザの足底に配置され、当該足底におけるせん断力を測定するための1つ以上の足底センサ、
使用時に前記ユーザに装着されるイヤフォン、並びに
前記1つ以上の足底センサ及び前記イヤフォンに接続される情報処理装置であって、前記1つ以上の足底センサから測定データを取得し、かつ取得された当該測定データにより示されるせん断力の向きに応じたリアルタイムな聴覚フィードバックを前記イヤフォンに出力するように構成される情報処理装置、
を備える、
聴覚フィードバックシステム。
【請求項2】
前記1つ以上の足底センサは、使用時に前記ユーザの右足及び左足それぞれにそれぞれ配置される一組の足底センサにより構成される、
請求項1に記載の聴覚フィードバックシステム。
【請求項3】
前記聴覚フィードバックは、音信号により構成される、
請求項1に記載の聴覚フィードバックシステム。
【請求項4】
前記聴覚フィードバックは、取得された前記測定データにより示されるせん断力の向きが模範条件から離れるほど低い音を出力し、取得された前記測定データにより示されるせん断力の向きが前記模範条件に近いほど高い音を出力することにより構成される、
請求項1に記載の聴覚フィードバックシステム。
【請求項5】
前記聴覚フィードバックは、取得された前記測定データにより示されるせん断力の向きが内側を向いているほど低い音を出力し、取得された前記測定データにより示されるせん断力の向きが外側を向いているほど高い音を出力することにより構成される、
請求項1に記載の聴覚フィードバックシステム。
【請求項6】
前記イヤフォンは、骨伝導式のイヤフォンにより構成される、
請求項1から5のいずれか1項に記載の聴覚フィードバックシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、聴覚フィードバックシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
スポーツスキルの向上を効果的に行う手法の一つとして、熟練者の動きを模倣することが挙げられる。従来、理想的な動きをどの程度実行できているかを定量的に評価し、その情報を適切にフィードバックするため、動作解析の手法が研究されてきた。例えば、特許文献1では、熟練者と対象者との間で生体情報から導出される運動状態を比較し、筋電位、音響又は画像でフィードバックするシステムが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1で提案されるシステムによれば、熟練者と対象者との間で生体情報から導出される運動状態を比較し、筋電位、音響又は画像でフィードバックすることで、熟練者の動作を対象者に模倣させることができる。しかしながら、本件発明者らは、特許文献1で提案されるような運動状態を導出するために生体情報を使用するシステムには次のような問題点があることを見出した。
【0005】
すなわち、生体情報を使用するシステムは、実験室のような精緻にデータを測定可能な環境であれば実現可能である。一方で、生体情報を取得する構成は、簡単な構成では実現することが困難である。そのため、競技場で実際に競技(特に、動作の激しい競技)を行っている際に当該システムを実現することは困難である。運動の上達を考慮した場合には、システムは、実際の運動の場面(実地)で実現可能であることが望ましい。
【0006】
本発明は、一側面では、このような事情を鑑みてなされたものであり、その目的は、運動動作/競技の妨げにならず、簡単な構成で動作状況をフィードバックする技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上述した課題を解決するために、以下の構成を採用する。なお、以下の構成は適宜組み合わせ可能である。
【0008】
本発明の一側面に係る聴覚フィードバックシステムは、使用時にユーザの足底に配置され、当該足底におけるせん断力を測定するための1つ以上の足底センサ、使用時に前記ユーザに装着されるイヤフォン、並びに前記1つ以上の足底センサ及び前記イヤフォンに接続される情報処理装置であって、前記1つ以上の足底センサから測定データを取得し、かつ取得された当該測定データにより示されるせん断力の向きに応じたリアルタイムな聴覚フィードバックを前記イヤフォンに出力するように構成される情報処理装置、を備える。
【0009】
当該構成において、足底センサには公知の安価なセンサを利用可能であり、イヤフォンにも公知の安価なイヤフォンを利用可能である。また、情報処理装置の処理は、せん断力の向きに応じた音を出力するに過ぎず、それほどマシンパワーを求められるものではない。そのため、情報処理装置にも安価な公知のコンピュータを利用可能である。かつ、これ
らの構成には、運動動作/競技の妨げにならない小型のものを採用することができる。足底センサ及びイヤフォンが動作の妨げにならないことは当然であり、マシンパワーが不要なため、情報処理装置にもそのような小型のものを使用可能である。したがって、当該構成によれば、運動動作/競技の妨げにならず、簡単な構成で動作状況をフィードバックするシステムを提供することができる。
【0010】
上記一側面に係る聴覚フィードバックシステムにおいて、前記1つ以上の足底センサは、使用時に前記ユーザの右足及び左足それぞれにそれぞれ配置される一組の足底センサにより構成されてよい。当該構成によれば、一組の足底センサにより両足のバランスを監視することができ、これにより、動作状況を適切にフィードバックすることができる。
【0011】
上記一側面に係る聴覚フィードバックシステムにおいて、前記聴覚フィードバックは、音信号により構成されてよい。音信号は、例えば、和音を含む単音等の単純な音信号であってよい。当該構成によれば、運動動作/競技の場面で、動作思考の妨げになり難く、聞き取りやすい明瞭な聴覚フィードバックが可能である。
【0012】
上記一側面に係る聴覚フィードバックシステムにおいて、前記聴覚フィードバックは、取得された前記測定データにより示されるせん断力の向きが模範条件から離れるほど低い音を出力し、取得された前記測定データにより示されるせん断力の向きが前記模範条件に近いほど高い音を出力することにより構成されてよい。一例では、模範条件は、熟練者又は健常者の動作中におけるせん断力の向き・パターンであってよい。当該構成によれば、聞き取りやすい明瞭な聴覚フィードバックが可能である。特に、上達していることを高音で理解しやすくすることができる。
【0013】
上記一側面に係る聴覚フィードバックシステムにおいて、前記聴覚フィードバックは、取得された前記測定データにより示されるせん断力の向きが内側を向いているほど低い音を出力し、取得された前記測定データにより示されるせん断力の向きが外側を向いているほど高い音を出力することにより構成されてよい。スキーの習得過程の一例では、初心者は、まずはプルークボーゲンを習い、プルークボーゲンを習得した後にパラレルターンを習う。プルークボーゲンでは、せん断力の向きが足の内側に向き、パラレルターンでは、せん断力の向きが足の外側に向く。当該構成によれば、プルークボーゲンからパラレルターンを習得するのに適した聴覚フィードバックを行うことができる。
【0014】
上記一側面に係る聴覚フィードバックシステムにおいて、前記イヤフォンは、骨伝導式のイヤフォンにより構成されてよい。当該構成によれば、動作中の環境音を妨げずに聴覚フィードバックを行うことができる。
【0015】
上記各形態に係る聴覚フィードバックシステムの別の態様として、本発明の一側面は、以上の各構成の全部又は一部を実現する情報処理装置であってもよいし、情報処理方法であってもよいし、プログラムを記憶した、コンピュータ等の機械が読み取り可能な記憶媒体であってもよい。ここで、読み取り可能な記憶媒体とは、プログラム等の情報を、電気的、磁気的、光学的、機械的、又は、化学的作用によって蓄積する媒体である。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、運動動作/競技の妨げにならず、簡単な構成で動作状況をフィードバックする技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】
図1は、本発明が適用される場面の一例を模式的に示す。
【
図2】
図2は、情報処理装置のハードウェア構成の一例を模式的に示す。
【
図3】
図3は、情報処理装置のソフトウェア構成の一例を模式的に示す。
【
図4】
図4は、情報処理装置による聴覚フィードバックに関する処理手順の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の一側面に係る実施の形態(以下、「本実施形態」とも表記する)を、図面に基づいて説明する。ただし、以下で説明する本実施形態は、あらゆる点において本発明の例示に過ぎない。本発明の範囲を逸脱することなく種々の改良及び変形を行うことができることは言うまでもない。つまり、本発明の実施にあたって、実施形態に応じた具体的構成が適宜採用されてもよい。なお、本実施形態において登場するデータを自然言語により説明しているが、より具体的には、コンピュータが認識可能な疑似言語、コマンド、パラメータ、マシン語等で指定される。
【0019】
§1 適用例
図1は、本発明を適用した場面の一例を模式的に示す。本実施形態に係る聴覚フィードバックシステムSは、使用時にユーザの足底に配置され、当該足底におけるせん断力を測定するための1つ以上の足底センサ1、使用時にユーザに装着されるイヤフォン2、及び情報処理装置3を備える。情報処理装置3は、使用時に、1つ以上の足底センサ1及びイヤフォン2に接続される。情報処理装置3は、1つ以上の足底センサ1から測定データ5を取得し、かつ取得された測定データ5により示されるせん断力の向きに応じてリアルタイムな聴覚フィードバックをイヤフォン2に出力するように構成される1台以上のコンピュータである。
【0020】
本実施形態では、足底センサ1には公知の安価なセンサを利用可能であり、イヤフォン2にも公知の安価なイヤフォンを利用可能である。また、情報処理装置3の処理は、せん断力の向きに応じた音を出力するに過ぎず、それほどマシンパワーを求められるものではない。そのため、情報処理装置3にも安価な公知のコンピュータを利用可能である。加えて、これらの構成には、運動動作又は競技の妨げにならない小型のものを採用可能である。足底センサ1及びイヤフォン2が動作の妨げにならないことは当然であり、マシンパワーが不要なため、情報処理装置3を構成するコンピュータにもそのような小型のものを使用可能である。したがって、本実施形態によれば、運動動作又は競技の妨げにならず、簡単な構成で動作状況をフィードバック可能なシステムを提供することができる。
【0021】
(足底センサ)
足底センサ1の数は、実施の形態に応じて適宜決定されてよい。一例では、
図1に示されるとおり、1つ以上の足底センサ1は、使用時にユーザの右足及び左足それぞれにそれぞれ配置される一組の足底センサにより構成されてよい。右足及び左足それぞれには、1つ以上の足底センサが配置されてよい。一組の足底センサにより、使用時にユーザの両足のバランスを監視することができる。そのため、本形態によれば、動作状況をより適切にフィードバックすることができる。
【0022】
また、足底センサ1の構成は、実施の形態に応じて適宜選択されてよい。一例では、足底センサ1には、例えば、国際公開第2019/049888号で提案される触覚センサ
等の公知のセンサが使用されてよい。足底センサ1は、有線又は無線で情報処理装置3に接続されてよい。足底センサ1及び情報処理装置3の間における接続形式は任意に選択されてよい。足底のせん断力の向きを測定可能であれば、足底センサ1の装着箇所は、実施の形態に応じて適宜選択されてよい。一例では、足底センサ1は、インソールに配備されてよい。聴覚フィードバックシステムSをスキーの場面で使用する場合、インソールは、インナーブール内部に配置されてよい。
【0023】
(イヤフォン)
イヤフォン2の種類は、実施の形態に応じて適宜選択されてよい。イヤフォン2は、例えば、左右独立式、左右一体式、カナル式、インナーイヤー式、骨伝導式、耳掛け式、首掛け式、ヘッドフォン式等から任意に選択されてよい。イヤフォン2には、任意の公知のイヤフォンが使用されてよい。イヤフォン2は、有線又は無線で情報処理装置3に接続されてよい。イヤフォン2及び情報処理装置3の間における接続形式は任意に選択されてよい。聴覚フィードバックを聴取可能であれば、イヤフォン2の装着箇所は、実施の形態に応じて適宜選択されてよい。
【0024】
一例では、イヤフォン2は、骨伝導式のイヤフォンにより構成されてよい。骨伝導式のイヤフォンであれば、使用時に環境音の聴取を妨げずに、聴覚フィードバックを行うことができる。そのため、自然な運動動作又は競技の中で、動作状況をフィードバックすることができる。他の一例では、イヤフォン2は、構造的又はソフトウェア的に環境音(外部の音)を取り込む機構を有してよい。構造的に環境音を取り込む機構とは、例えば、ソニー株式会社のWF-L900等のように、使用時にユーザの耳を完全には塞がずに環境音を聴取
可能に構成されていることである。ソフトウェア的に環境音を取り込む機構とは、マイクにより取り込んだ音をイヤフォンに出力するように構成されていることである。本形態でも、使用時に環境音の聴取を妨げずに、聴覚フィードバックを行うことができる。そのため、自然な運動動作又は競技の中で、動作状況をフィードバックすることができる。
【0025】
(聴覚フィードバック)
聴覚フィードバックの形式は実施の形態に応じて適宜決定されてよい。一例では、聴覚フィードバックは、音声(言語)によるフィードバックを含んでよい。ただし、音声によるフィードバックの場合、言語内容を解釈することを要し、動作思考の妨げになる可能性がある。また、一部を聞き漏らすことで、フィードバック内容を把握できなる可能性がある。そこで、他の一例では、聴覚フィードバックは、音信号により構成されてよい。音信号は、例えば、和音を含む単音等の単純な信号で構成されるのが好ましい。本形態によれば、運動動作及び競技の場面で、動作思考の妨げになり難く、聞き取りやすい明瞭な聴覚フィードバックが可能である。
【0026】
また、聴覚フィードバックは、せん断力の向きが模範条件に適合する程度に応じて決定されてよい。一例では、聴覚フィードバックは、取得された測定データ5により示されるせん断力の向きが模範条件から離れるほど低い音を出力し、取得された測定データ5により示されるせん断力の向きが模範条件に近いほど高い音を出力することにより構成されてよい。本形態によれば、聞き取りやすい明瞭な聴覚フィードバックが可能である。特に、上達していることを高音で理解しやすくすることができる。ただし、模範条件に近いか否かの評価と出力される音との関係は、このような例に限られなくてよい。他の一例では、聴覚フィードバックは、取得された測定データ5により示されるせん断力の向きが模範条件から離れるほど高い音を出力し、取得された測定データ5により示されるせん断力の向きが模範条件に近いほど低い音を出力することにより構成されてよい。
【0027】
また、聴覚フィードバックの音量も、せん断力の向きが模範条件に適合する程度に応じて決定されてよい。一例では、聴覚フィードバックは、取得された測定データ5により示されるせん断力の向きが模範条件から離れるほど音量が小さくなり、取得された測定データ5により示されるせん断力の向きが模範条件に近いほど音量が大きくなるように構成されてよい。他の一例では、聴覚フィードバックは、取得された測定データ5により示されるせん断力の向きが模範条件から離れるほど音量が大きくなり、取得された測定データ5により示されるせん断力の向きが模範条件に近いほど音量が小さくなるように構成されてよい。本形態によれば、音量の大小により、模範条件に近いか否かをフィードバックすることができる。
【0028】
なお、せん断力は、足底に作用する床からの反力のうちの水平方向の力であってよい。せん断力の向きは、足底に作用する水平方向の力の向きであってよい。模範条件は、教示する対象となる運動動作又は競技に応じて適宜与えられてよい。一例では、模範条件は、熟練者又は健常者の動作中におけるせん断力の向き又はパターンであってよい。
【0029】
(運動動作/競技)
聴覚フィードバックの対象となる運動動作及び競技は、実施の形態に応じて適宜選択されてよい。聴覚フィードバックシステムSは、動作状況をフィードバックするあらゆる場面に使用されてよい。一例では、聴覚フィードバックシステムSは、スケート、スケートボード、スキー、スノーボード等のバランス感覚及び移動機能の少なくとも一方が要求される競技の力量の向上の場面で用いられてよい。他の一例では、聴覚フィードバックシステムSは、歩行のリハビリテーションの場面で用いられてよい。
【0030】
一例では、聴覚フィードバックシステムSは、スキーの競技力の向上を図る場面で使用されてよい。具体例として、聴覚フィードバックシステムSは、プルークボーゲンからパラレルターンを訓練する場面で使用されてよい。プルークボーゲンでは、せん断力の向きが足の内側に向き、パラレルターンでは、せん断力の向きが足の外側に向く。そこで、一例では、聴覚フィードバックは、取得された測定データ5により示されるせん断力の向きが内側を向いているほど低い音を出力し、取得された測定データ5により示されるせん断力の向きが外側を向いているほど高い音を出力することにより構成されてよい。これにより、プルークボーゲンからパラレルターンを習得するのに適した聴覚フィードバックを行うことができる。ただし、スキーの競技力向上の場面で使用する場合に、聴覚フィードバックは、このような例に限られなくてよい。他の一例では、聴覚フィードバックは、取得された測定データ5により示されるせん断力の向きが内側を向いているほど高い音を出力し、取得された測定データ5により示されるせん断力の向きが外側を向いているほど低い音を出力することにより構成されてよい。
【0031】
§2 構成例
(ハードウェア構成例)
図2は、本実施形態に係る情報処理装置3のハードウェア構成の一例を模式的に示す。本実施形態に係る情報処理装置3は、制御部31、記憶部32、外部インタフェース33、入力装置34、出力装置35、及びドライブ36が電気的に接続されたコンピュータである。
【0032】
制御部31は、ハードウェアプロセッサであるCPU(Central Processing Unit)、
RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)等を含み、プログラム及び各種データに基づいて任意の情報処理を実行するように構成される。制御部31(CPU)は、プロセッサ・リソースの一例である。
【0033】
記憶部32は、例えば、ハードディスクドライブ、ソリッドステートドライブ等により構成されてよい。記憶部32(及びRAM、ROM)は、メモリ・リソースの一例である。本実施形態では、記憶部32は、プログラム81等の各種情報を記憶する。プログラム81は、聴覚フィードバックに関する情報処理(後述の
図4)を情報処理装置3に実行させるためのプログラムである。プログラム81は、当該情報処理の一連の命令を含む。
【0034】
外部インタフェース33は、例えば、USB(Universal Serial Bus)ポート、専用ポート、無線通信ポート等であってよく、有線又は無線で外部装置と接続するように構成される。外部インタフェース33の種類及び数は、実施の形態に応じて適宜選択されてよい。外部インタフェース33は、通信インタフェースにより構成されてもよい。本実施形態
では、情報処理装置3は、外部インタフェース33を介して、有線又は無線で1つ以上の足底センサ1及びイヤフォン2に接続されてよい。
【0035】
入力装置34は、例えば、マウス、キーボード、操作子等の入力を行うための装置である。出力装置35は、例えば、ディスプレイ、スピーカ等の出力を行うための装置である。ユーザは、入力装置34及び出力装置35を利用することで、情報処理装置3を操作することができる。入力装置34及び出力装置35は、例えば、タッチパネルディスプレイ等により一体的に構成されてもよい。
【0036】
ドライブ36は、記憶媒体91に記憶されたプログラム等の各種情報を読み込むための装置である。上記プログラム81は、記憶部32に代えて又は記憶部32と共に、記憶媒体91に格納されていてもよい。記憶媒体91は、コンピュータ等の機械が各種情報(記憶されたプログラム等)を読み取り可能なように、電気的、磁気的、光学的、機械的又は化学的作用により当該情報を蓄積するように構成される。情報処理装置3は、上記プログラム81を記憶媒体91から取得してよい。なお、記憶媒体91は、CD、DVD等のディスク型の記憶媒体であってもよいし、或いは半導体メモリ(例えば、フラッシュメモリ)等のディスク型以外の記憶媒体であってもよい。ドライブ36の種類は、記憶媒体91の種類に応じて適宜選択されてよい。
【0037】
なお、情報処理装置3の具体的なハードウェア構成に関して、実施の形態に応じて、適宜、構成要素の省略、置換及び追加が可能である。例えば、制御部31は、複数のハードウェアプロセッサを含んでもよい。ハードウェアプロセッサは、マイクロプロセッサ、FPGA(field-programmable gate array)、DSP(digital signal processor)等に
より構成されてよい。記憶部32は、制御部31のRAM及びROMにより構成されてもよい。外部インタフェース33、入力装置34、出力装置35及びドライブ36の少なくともいずれかは省略されてもよい。情報処理装置3は、提供されるサービス専用に設計されたコンピュータの他、汎用のコンピュータ、スマートフォンを含む携帯端末、タブレットPC(Personal Computer)、その他端末装置、マイクロコンピュータ等であってよい
。
【0038】
情報処理装置3は、聴覚フィードバックシステムSの使用時において、任意の場所に配置されてよい。一例では、情報処理装置3は、例えば、脚、腰、背中、腕等のユーザの身体に装着されてよい。情報処理装置3は、運動動作及び競技の妨げにならないように、軽量及び小型であることでユーザの進退に装着可能であることが好ましい(例えば、携帯端末、マイクロコンピュータ等)。
【0039】
(ソフトウェア構成例)
図3は、本実施形態に係る情報処理装置3のソフトウェア構成の一例を模式的に示す。情報処理装置3の制御部31は、記憶部32に記憶されたプログラム81をRAMに展開し、プログラム81に含まれる命令をCPUにより実行する。これにより、情報処理装置3は、取得部311及びフィードバック部312をソフトウェアモジュールとして備えるコンピュータとして動作する。すなわち、本実施形態では、情報処理装置3の各ソフトウェアモジュールは、制御部31(CPU)により実現される。
【0040】
取得部311は、1つ以上の足底センサ1から測定データ5を取得するように構成される。フィードバック部312は、取得された測定データ5により示されるせん断力の向きに応じてリアルタイムな聴覚フィードバックをイヤフォン2に出力するように構成される。
【0041】
なお、本実施形態では、情報処理装置3の各ソフトウェアモジュールがいずれも汎用の
CPUによって実現される例について説明している。しかしながら、上記ソフトウェアモジュールの一部又は全部は、1又は複数の専用のプロセッサにより実現されてもよい。上記各モジュールは、ハードウェアモジュールとして実現されてもよい。情報処理装置3のソフトウェア構成に関して、適宜、モジュールの省略、置換及び追加が行われてもよい。
【0042】
§3 動作例
図4は、本実施形態に係る情報処理装置3による聴覚フィードバックに関する処理手順の一例を示す。以下の処理手順は、コンピュータにより実行される聴覚フィードバック方法の一例である。ただし、以下の処理手順は、一例に過ぎず、各ステップは可能な限り変更されてよい。また、以下の処理手順について、実施の形態に応じて、適宜、ステップの省略、置換、及び追加が可能である。
【0043】
(ステップS101)
ステップS101では、制御部31は、取得部311として動作し、1つ以上の足底センサ1から測定データ5を取得する。本実施形態では、制御部31は、外部インタフェース33を介して、1つ以上の足底センサ1から測定データ5を取得してよい。測定データ5の取得条件(例えば、取得間隔等)は、実施の形態に応じて適宜決定されてよい。測定データ5を取得すると、制御部31は、次のステップS102に処理を進める。
【0044】
(ステップS102)
ステップS102では、制御部31は、フィードバック部312として動作し、取得された測定データ5により示されるせん断力の向きに応じてリアルタイムな聴覚フィードバックをイヤフォン2に出力する。一例では、制御部31は、外部インタフェース33を介して、聴覚フィードバックをイヤフォン2に出力してよい。また、制御部31は、取得された測定データ5から任意の方法でせん断力の向きを評価し、せん断力の向きを評価した結果に応じてイヤフォン2に出力する聴覚フィードバックの内容を決定してよい。
【0045】
なお、リアルタイムな聴覚フィードバックは、測定データ5を取得し、せん断力の向きを評価し、かつ聴覚フィードバックの内容を決定してから即時的に聴覚フィードバックを出力することであってよい。測定データ5が得られてから聴覚フィードバックが出力するまでの間では、1つ以上の足底センサ1及び情報処理装置3の間のデータ送信の時間、情報処理装置3の演算処理の時間等に起因する情報処理のずれが許容されてよい。聴覚フィードバックを出力すると、制御部31は、本動作例に係る情報処理装置3の処理手順を終了する。
【0046】
(その他)
制御部31は、ステップS101及びステップS102の一連の情報処理を繰り返し実行してよい。繰り返すタイミングは、実施の形態に応じて適宜決定されてよい。一例では、制御部31は、所定期間(例えば、情報処理装置3が起動され、聴覚フィードバックの開始が実行されてから終了が選択されるまで)の間、ステップS101及びステップS102の一連の情報処理を繰り返し実行してよい。これにより、情報処理装置3は、動作状況に応じた聴覚フィードバックを継続的に遂行してよい。
【0047】
[特徴]
本実施形態では、上記のとおり、足底センサ1、イヤフォン2及び情報処理装置3には、運動動作又は競技の妨げにならない小型のものを採用可能である。これにより、運動動作又は競技の妨げにならないように、足底センサ1、イヤフォン2及び情報処理装置3を配備し(例えば、ユーザに装着し)、上記ステップS101及びステップS102による聴覚フィードバックを実施することができる。そのため、運動動作又は競技の妨げにならず、簡単な構成で動作状況をフィードバック可能なシステムを提供することができる。
【0048】
また、本実施形態の一例では、1つ以上の足底センサ1は、使用時にユーザの右足及び左足それぞれにそれぞれ配置される一組の足底センサにより構成されてよい。これにより、ステップS101で取得される測定データ5に基づいて、使用時にユーザの両足のバランスを監視することができる。そのため、ステップS102では、動作状況をより適切にフィードバックすることができる。
【0049】
また、本実施形態の一例では、イヤフォン2は、骨伝導式のイヤフォンにより構成されてよい。これにより、ステップS102において、環境音の聴取を妨げずに、聴覚フィードバックを行うことができる。そのため、自然な運動動作又は競技の中で、動作状況をフィードバックすることができる。
【0050】
また、本実施形態の一例では、聴覚フィードバックは、音信号により構成されてよい。これにより、ステップS102において、運動動作及び競技の場面で、動作思考の妨げになり難く、聞き取りやすい明瞭な聴覚フィードバックが可能である。
【0051】
また、本実施形態の一例では、聴覚フィードバックは、取得された測定データ5により示されるせん断力の向きが模範条件から離れるほど低い音を出力し、取得された測定データ5により示されるせん断力の向きが模範条件に近いほど高い音を出力することにより構成されてよい。これにより、ステップS102において、聞き取りやすい明瞭な聴覚フィードバックが可能である。
【0052】
また、本実施形態の一例では、聴覚フィードバックは、取得された測定データ5により示されるせん断力の向きが内側を向いているほど低い音を出力し、取得された測定データ5により示されるせん断力の向きが外側を向いているほど高い音を出力することにより構成されてよい。これにより、ステップS102において、プルークボーゲンからパラレルターンを習得するのに適した聴覚フィードバックを行うことができる。
【0053】
§4 変形例
以上、本開示の実施の形態を詳細に説明してきたが、前述までの説明はあらゆる点において本開示の例示に過ぎない。本開示の範囲を逸脱することなく種々の改良又は変形を行うことができることは言うまでもない。本開示において説明した処理及び手段は、技術的な矛盾が生じない限りにおいて、自由に組み合わせて実施することができる。
【符号の説明】
【0054】
S…聴覚フィードバックシステム、
1…足底センサ、2…イヤフォン、
3…情報処理装置、5…測定データ、
31…制御部、32…記憶部、33…外部インタフェース、
34…入力装置、35…出力装置、36…ドライブ、
81…プログラム、91…記憶媒体、
311…取得部、312…フィードバック部