IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 花王株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-冷却具 図1
  • 特開-冷却具 図2
  • 特開-冷却具 図3
  • 特開-冷却具 図4
  • 特開-冷却具 図5
  • 特開-冷却具 図6
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024171067
(43)【公開日】2024-12-11
(54)【発明の名称】冷却具
(51)【国際特許分類】
   A61F 7/10 20060101AFI20241204BHJP
   A61F 9/04 20060101ALI20241204BHJP
【FI】
A61F7/10 300C
A61F9/04 340
【審査請求】有
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023087939
(22)【出願日】2023-05-29
(71)【出願人】
【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001612
【氏名又は名称】弁理士法人きさらぎ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】三代 亜沙美
(72)【発明者】
【氏名】岡本 拓也
【テーマコード(参考)】
4C099
【Fターム(参考)】
4C099AA02
4C099CA06
4C099EA05
4C099EA08
4C099GA02
4C099HA09
4C099JA03
4C099LA01
4C099LA04
4C099NA10
(57)【要約】
【課題】着用者の目及び/又は目の周辺への冷却性を向上させることが可能な冷却具に関する。
【解決手段】着用者の顔の少なくとも目及び/又は目の周辺を覆う本体部と、本体部に設けられる冷却体とを備える冷却具であって、冷却体は、水を保有する又は保有し得る保水層を有し、冷却体は、着用時において、少なくとも一部が着用者の目及び/又は目の周辺と直接的又は間接的に接触するよう本体部に配置されており、冷却具は、着用時において、着用者の目及び/又は目の周辺と保水層との間に配置される介在シートと、通気性を有する非介在シートとを有し、保水層は、介在シートと非介在シートとの間に配置されており、冷却体は、保水層と非介在シートとの間に配置される湿度調整材を有し、湿度調整材は、保水層側の面から水分を吸収し、該吸収した水分を非介在シート側の面から揮散させるように構成されている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
着用者の顔の少なくとも目及び/又は目の周辺を覆う本体部と、前記本体部に設けられる冷却体とを備える冷却具であって、
前記冷却体は、水を保有する又は保有し得る保水層を有し、
前記冷却体は、着用時において、少なくとも一部が着用者の目及び/又は目の周辺と直接的又は間接的に接触するよう前記本体部に配置されており、
前記冷却具は、
着用時において、着用者の目及び/又は目の周辺と前記保水層との間に配置される介在シートと、
通気性を有する非介在シートと
を有し、
前記保水層は、前記介在シートと前記非介在シートとの間に配置されており、
前記冷却体は、前記保水層と前記非介在シートとの間に配置される湿度調整材を有し、
前記湿度調整材は、前記保水層側の面から水分を吸収し、該吸収した水分を前記非介在シート側の面から揮散させるように構成されている
冷却具。
【請求項2】
前記湿度調整材は、少なくとも前記保水層と対向する領域の透気度が、300秒/100mL以下である
請求項1に記載の冷却具。
【請求項3】
前記湿度調整材の水揮散率が50%以上である
請求項1又は2に記載の冷却具。
【請求項4】
前記冷却体は、
着用時において、着用者の肌側に向く第一シートと、
前記保水層及び前記湿度調整材を介して前記第一シートと対向するよう配置された第二シートと
を有し、
前記第一シートは、前記介在シートとして機能するように構成されており、
前記第二シートは、前記非介在シートとして機能するように構成されている
請求項1~3のいずれか1項に記載の冷却具。
【請求項5】
前記第二シートは、少なくとも前記湿度調整材と対向する領域の透気度が、300秒/100mL以下である
請求項4に記載の冷却具。
【請求項6】
前記第一シートは、難透湿性又は非透湿性を有している
請求項4又は5に記載の冷却具。
【請求項7】
前記本体部は、
着用時において、着用者の肌側に向く内面シートと、
前記冷却体を介して前記内面シートと対向するよう配置された外面シートと
を有し、
前記内面シートは、前記介在シートとして機能するように構成されており、
前記外面シートは、前記非介在シートとして機能するように構成されている
請求項1~6のいずれか1項に記載の冷却具。
【請求項8】
前記本体部は、
該本体部を幅方向に二分する縦中心線と、
前記縦中心線を境とした幅方向の一方側を構成する第1パネル部と、
前記縦中心線を境とした幅方向の他方側を構成する第2パネル部と
を有しており、
前記冷却体は、前記第1パネル部と前記第2パネル部とにそれぞれ設けられる
請求項1~7のいずれか1項に記載の冷却具。
【請求項9】
前記保水層は、水の初期含有量が1cmあたり0.04mL以上0.40mL以下である
請求項1~8のいずれか1項に記載の冷却具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷却具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、着用者の顔の少なくとも目を冷却可能な冷却具が知られている。例えば、特許文献1には、着用者の目及び目の周辺に当接される当接面側シートと、当接面側シートと対面する表面側シートとからなる袋状のアイマスク本体の内部に吸水性ポリマーが収納されたアイマスクが記載されている。
【0003】
特許文献1に記載のアイマスクでは、表面側シートが通気性素材で構成されているため、吸水性ポリマーに吸収された水が蒸発すると、表面側シートを介して外部に水蒸気が放出されると共に、アイマスク本体から放熱される。そのため、着用者の目及び目の周辺を冷却することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002-028176号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1に記載のアイマスクは、吸水性ポリマーに吸収された水の蒸発を利用して着用者の目及び目の周辺を冷却するものであるところ、吸水性ポリマーは高い水分保持能力を有している反面、水を揮散させる能力には優れていないため、長時間に亘って着用者の目及び目の周辺を冷却することはできるものの、その冷却効果は低いという課題があることを本発明者らは見出した。
【0006】
本発明は、着用者の目及び/又は目の周辺への冷却性を向上させることが可能な冷却具に関する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る冷却具は、着用者の顔の少なくとも目及び/又は目の周辺を覆う本体部と、前記本体部に設けられる冷却体とを備える冷却具であって、前記冷却体は、水を保有する又は保有し得る保水層を有し、前記冷却体は、着用時において、少なくとも一部が着用者の目及び/又は目の周辺と直接的又は間接的に接触するよう前記本体部に配置されており、前記冷却具は、着用時において、着用者の目及び/又は目の周辺と前記保水層との間に配置される介在シートと、通気性を有する非介在シートとを有し、前記保水層は、前記介在シートと前記非介在シートとの間に配置されており、前記冷却体は、前記保水層と前記非介在シートとの間に配置される湿度調整材を有し、前記湿度調整材は、前記保水層側の面から水分を吸収し、該吸収した水分を前記非介在シート側の面から揮散させるように構成されている。
【発明の効果】
【0008】
本発明の冷却具によれば、着用者の目及び/又は目の周辺への冷却性を向上させることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本実施形態に係る冷却具を示す図である。
図2】本実施形態に係る冷却具の概略断面図である。
図3】本実施形態に係る冷却体を示す図である。
図4図3のII-II´線に沿った概略断面図である。
図5図5(a)は、耳掛け部の引張時の状態を示す図であり、図5(b)は、耳掛け部の装着時の状態を示す図である。
図6】本実施形態に係る冷却具が包装体に封入された状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を実施するための好適な実施形態について、図面を用いて説明する。なお、以下の実施形態は、各請求項に係る発明を限定するものではなく、また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。また、本実施形態においては、各構成要素の縮尺や寸法が誇張されて示されている場合や、一部の構成要素が省略されている場合がある。
【0011】
[冷却具の全体構成]
図1及び図2に示すように、本実施形態に係る冷却具1は、着用者の顔の少なくとも目及び/又は目の周辺を覆う本体部10と、本体部10に設けられる冷却体20と、本体部10の幅方向の両端部に設けられる耳掛け部30とを備えている。なお、図1は、着用者の非目元側の面(外面)が上を向くよう本体部10を展開させた状態における平面図である。
【0012】
また、本実施形態に係る冷却具1は、冷却具1の着用時において、着用者の目及び/又は目の周辺と冷却体20の後述する保水層22との間に配置される介在シート2と、通気性を有する非介在シート3とを有している。この保水層22は、介在シート2と非介在シート3との間に配置されている。
【0013】
本実施形態において、冷却具1は、防水性を有する包装体200に封入された状態で保存されている(図6参照)。なお、冷却具1全体が包装体200に封入されている必要は必ずしもない。例えば、冷却体20が本体部10と一体となっていない場合(後付け可能な場合)には、少なくとも冷却体20が包装体200に封入された状態で保存されていると良い。すなわち、本体部10と冷却体20とを個別に包装しても良いし、冷却体20のみを包装しても良い。また、冷却体20に水を添加して使用する場合には、冷却具1乃至冷却体20が防水性を有する包装体200に封入されていなくても良い。
【0014】
本明細書において、「幅方向」とは、本体部10を平面方向から見た状態(すなわち、図1の状態)における後述する第1パネル部10A及び第2パネル部10Bの並び方向に一致する方向をいう。「本体部10の幅方向両端部」とは、第1パネル部10Aの耳掛け部30側の端部と第2パネル部10Bの耳掛け部30側の端部とを意味する。
【0015】
[本体部の構成]
図2に示すように、本体部10は、冷却具1の着用時において、着用者の肌側(図2の上側)に向く内面シート11と、冷却体20を介して内面シート11と対向するよう配された外面シート12とを備えており、全体としてシート状に形成されている。
【0016】
本実施形態において、内面シート11は、介在シート2として機能するように構成されており、外面シート12は、非介在シート3として機能するように構成されている。
【0017】
内面シート11及び外面シート12は、同形同大に形成されており、内面シート11と外面シート12との間に冷却体20が配された状態において、互いに接合されている。なお、本実施形態では、内面シート11及び外面シート12が同形同大に形成されているものとして説明したが、これに限定されず、内面シート11と外面シート12とで形状が異なっていても良いし、大きさが異なっていても良い。
【0018】
ここで、内面シート11と外面シート12の接合方法について説明する。本実施形態においては、外面シート12には、接着剤(図示せず)が塗布されており、該接着剤を介して冷却体20及び内面シート11が接着されている。接着剤としては、ホットメルト型接着剤を用いることが好ましいが、これに限定されず、種々の公知の固定手段を用いることができる。例えば、ホットメルト型以外の接着剤、縫製、熱融着等が可能であるが、固定できれば限定されない。
【0019】
なお、外面シート12に接着剤を塗布する構成に代えて、又はこれに加えて、内面シート11に接着剤を塗布する構成を採用することも可能である。また、内面シート11と外面シート12とを局所的に非接着とすることにより、内面シート11と外面シート12との間に冷却体20を挿脱可能な開口及び収納空間を形成する構成としても良い。
【0020】
[本体部の通気性]
介在シート2として機能する内面シート11が通気性を有するか否かは、冷却体20の後述する第一シート23との関係で決定されることが好ましい。本実施形態では、第一シート23が難通気性又は非通気性を有しているため、内面シート11は、通気性、難通気性及び非通気性のいずれを有していても良い。
【0021】
非介在シート3として機能する外面シート12は、通気性を有している。外面シート12の透気度は、水の蒸発による気化放熱を促進させる観点から、30000秒/100mL以下であることが好ましく、3000秒/100mL以下であることがより好ましく、300秒/100mL以下であることが更に好ましく、200秒/100mL以下であることがより更に好ましく、100秒/100mL以下であることがより更に好ましく、5秒/100mL以下であることがより更に好ましく、0秒/100mLであることが最も好ましい。
【0022】
なお、外面シート12は、少なくとも冷却体20の後述する第二シート24を介して湿度調整材21と対向する領域が上記の透気度を有していれば良い。すなわち、他の領域については通気性を有しない構成としても良い。
【0023】
ここで、透気度とは、JIS P8117(2009年改正版)によって測定される値であり、一定の圧力のもとで100mLの空気が6.42cmの面積を通過する時間として定義される。したがって、透気度の数値が大きいことは空気の通過に時間がかかること、即ち通気性が低いことを意味している。逆に、透気度の数値が小さいことは通気性が高いことを意味している。このように、透気度の数値の大小と通気性の高低とは逆の関係を示す。透気度は、王研式透気度計で計測することができる。本明細書中においては、30000秒/100mL未満の透気度を「通気性」と定義し、30000秒/100mL以上80000秒/100mL未満の透気度を「難通気性」と定義し、80000秒/100mL以上の透気度を「非通気性」と定義する。
【0024】
[本体部の透湿性]
内面シート11が透湿性を有するか否かは、第一シート23との関係で決定されることが好ましい。本実施形態では、第一シート23が難透湿性又は非透湿性を有しているため、内面シート11は、透湿性、難透湿性及び非透湿性のいずれを有していても良い。
【0025】
外面シート12は、透湿性を有している。外面シート12の透湿度は、水の蒸発による気化放熱を促進させる観点から、2000g/m・24hr以上であることが好ましく、2500g/m・24hr以上であることがより好ましく、3000g/m・24hr以上であることが更に好ましい。
【0026】
なお、外面シート12は、少なくとも第二シート24を介して湿度調整材21と対向する領域が上記の透湿度を有していれば良い。すなわち、他の領域については透湿性を有しない構成としても良い。
【0027】
ここで、透湿性とは、水蒸気を通す性質のことをいう。また、透湿度とは、JIS L1099:2012のA-1法によって測定される値であり、1mあたりにおける24時間で透過する水分を数値(g)として定義される。したがって、透湿度の数値が大きいことは透湿性が高いことを意味し、逆に、透湿度の数値が小さいことは透湿性が低いことを意味している。本明細書中においては、100g/m・24h以上の透湿度を「透湿性」と定義し、100g/m・24hr未満30g/m・24hr以上の透湿度を「難透湿性」と定義し、30g/m・24hr未満の透湿度を「非透湿性」と定義する。
【0028】
なお、内面シート11や外面シート12等のシート部材において、シート部材が通気性を有している場合には、透湿性も有している。
【0029】
[本体部の防水性]
内面シート11が防水性を有するか否かは、第一シート23との関係で決定されることが好ましい。本実施形態では、第一シート23が防水性を有しているため、内面シート11は、防水性及び非防水性のいずれを有していても良い。
【0030】
外面シート12は、防水性及び非防水性のいずれを有していても良い。
【0031】
ここで、防水性とは、水の透過を防ぐ性質のことをいう。防水性は、耐水度によって評価することができ、この耐水度は、JIS L 1092 A法により測定することができる。この耐水度は、水の透過に耐えることができる1cmあたりの水柱の高さ(mm)として定義される。したがって、耐水度の数値が大きいことは防水性が高いことを意味し、逆に、耐水度の数値が小さいことは防水性が低いことを意味している。本明細書中においては、300mm以上の耐水度を「防水性」と定義し、300mm未満の耐水度を「非防水性」又は「透水性」と定義する。
【0032】
[本体部の坪量]
内面シート11の坪量は、シートの厚み及びシートの強度をバランスよく高める観点と、着用者の目及び/又は目の周辺へのフィット性を良好にする観点とから決定されることが好ましい。かかる観点から、内面シート11の坪量は、1g/m以上であることが好ましく、3g/m以上であることがより好ましく、5g/m以上であることが更に好ましく、10g/m以上であることがより更に好ましく、15g/m以上であることがより更に好ましく、20g/m以上であることがより更に好ましい。また、内面シート11の坪量は、着用者の目及び/又は目の周辺から冷却体20への伝熱効率を高め、冷却体20の後述する湿度調整材21及び保水層22が保有する水を蒸発させやすくする観点と、着用者に冷たさを感じやすくさせる観点とから決定されることが好ましい。かかる観点から、内面シート11の坪量は、80g/m以下であることが好ましく、60g/m以下であることがより好ましく、40g/m以下であることが更に好ましく、30g/m以下であることがより更に好ましい。
【0033】
外面シート12の坪量は、着用者の目及び/又は目の周辺へのフィット性を良好にする観点及び本体部10の形状を安定に保ち、冷却体20を安定に保持し、更に冷却体20が透けて外観が損なわれることを防止する観点等から決定される。かかる観点から、外面シート12の坪量は、10g/m以上であることが好ましく、15g/m以上であることがより好ましく、20g/m以上であることが更に好ましく、25g/m以上であることがより更に好ましい。また、外面シート12の坪量は、心地よいつけ心地を持たせる観点から、200g/m以下であることが好ましく、160g/m以下であることがより好ましく、120g/m以下であることが更に好ましく、80g/m以下であることがより更に好ましい。
【0034】
[本体部の材料]
内面シート11及び外面シート12の材料は、着用者の目及び/又は目の周辺を覆う冷却具の技術分野において従来から用いられているものを用いることができる。例えば、不織布、織布、紙などの繊維シート、樹脂発泡シート、金属シート又はこれらの組み合わせ等が用いられる。なかでも、加工のしやすさや経済性の観点から不織布を用いることが好ましい。不織布の繊維素材としては、例えば、PET(ポリエチレンテレフタレート)等のポリエステル;PE(ポリエチレン)、PP(ポリプロピレン)、エチレンプロピレン共重合体等のポリオレフィン;レーヨン;コットン等から選択される1種又は2種以上の繊維で構成されるものが好ましい。また、不織布としては、前記の1種又は2種以上の素材の繊維を用いて、エアスルー法、スパンボンド法、ニードルパンチ法、メルトブローン法、カード法、熱融着法、水流交絡法、溶剤接着法等により製造されたものを用いることができ、単層でも多層構造でもよい。なお、不織布は、目的に応じ化学処理を行ってもよい。
【0035】
また、内面シート11及び外面シート12は、それぞれ、単層及び多層を問わない一枚のシート材のみからなる単層の構造であってもよく、二種以上のシート材を重ね合わせた多層の構造であってもよい。さらに、内面シート11と外面シート12とで構成材料が異なる構成としても良い。具体的には、着用した際に外側に配される外面シート12は、冷却具に保形性を与える上で適した構成材料を選択してもよく、また、外面の風合いや外観を良くするために適した構成材料を選択してもよい。一方、着用した際に内側に配される内面シート11は、肌あたりの良好さを目的とした構成材料を選択してもよい。また、内面シート11及び外面シート12は、任意の色に着色されていても良く、印刷等により任意の模様(柄)が施されていても良い。このような構成によれば、風合いや趣向性が向上し、使用者の好みの冷却具とすることが可能となる。
【0036】
[本体部の形状等]
図1及び図2に示すように、本体部10は、本体部10を幅方向に二分する縦中心線100と、縦中心線100を境とした幅方向の一方側を構成する第1パネル部10Aと、縦中心線100を境とした幅方向の他方側を構成する第2パネル部10Bとを有している。
【0037】
縦中心線100は、着用者の非目元側の面(外面)が上を向くよう本体部10を展開させた状態(図1の状態)における本体部10の幅方向の中央部において、該幅方向と直交する方向に延びる線である。
【0038】
第1パネル部10Aは、冷却具1の着用時において、着用者の一方の目(例えば右目)を覆うように構成されている。第2パネル部10Bは、冷却具1の着用時において、着用者の他方の目(例えば左目)を覆うように構成されている。第1パネル部10A及び第2パネル部10Bは、それぞれ略正方形状に形成されており、本体部10の幅方向両端部の周縁は、外側に突出する円弧状に形成されている。なお、第1パネル部10A及び第2パネル部10Bは、正方形状に形成されていても良いし、矩形状に形成されていても良いし、他の形状を有していても良い。
【0039】
また、第1パネル部10A及び第2パネル部10Bは、縦中心線100を境として左右対称の形状を有しており、かつ、縦中心線100において一体的に連続している。換言すれば、本体部10は、同形同大の第1パネル部10A及び第2パネル部10Bを左右対称に配したシート状部材からなる。なお、第1パネル部10A及び第2パネル部10Bが当初から一体として形成された構成に代えて、例えば、別体として形成された第1パネル部10A及び第2パネル部10Bを機械的に接続させる構成であっても良い。
【0040】
第1パネル部10A及び第2パネル部10Bは、縦中心線100の後述する上縁部13近傍及び後述する下縁部14近傍がそれぞれ接続されておらず、縦中心線100においてのみ接続されている。これにより、本体部10は、縦中心線100を中心として第1パネル部10A及び第2パネル部10Bを展開させた際に、第1パネル部10A及び第2パネル部10Bが平面方向に並列する平面形状となるよう構成されている。すなわち、本体部10は、図2に示すように、第1パネル部10Aと第2パネル部10Bとのなす角が180度となるよう、縦中心線100を中心として第1パネル部10A及び第2パネル部10Bを展開させることが可能に構成されている。なお、ここでいう「接続」には、第1パネル部10A及び第2パネル部10Bが一体として形成されることにより当初から接続されている構成と、別体として形成された第1パネル部10A及び第2パネル部10Bを機械的に接続させる構成との双方が含まれる。
【0041】
図1に示すように、本体部10は、冷却具1の着用時において、着用者の額側に位置する上縁部13と、冷却具1の着用時において、着用者の鼻側に位置する下縁部14と、上縁部13から下縁部14側に向けて形成された上側スリット15と、下縁部14から上縁部13側に向けて形成された下側スリット16とを有している。上側スリット15及び下側スリット16は、本体部10を幅方向に二分する縦中心線100上に形成されている。
【0042】
上側スリット15は、上縁部13から下縁部14側に向けて先細りとなるよう形成された略三角状の切り欠きである。また、上側スリット15は、冷却具1の着用時において、着用者の眉間又はその近傍に位置するよう構成されている。
【0043】
下側スリット16は、下縁部14から上縁部13側に向けて先細りとなるよう形成された略逆三角状の切り欠きである。また、下側スリット16の先端は、上縁部13側に向けて湾曲する円弧状に形成されている。この下側スリット16は、冷却具1の着用時において、着用者の鼻梁又はその近傍に位置するよう構成されている。
【0044】
本体部10が上側スリット15及び下側スリット16を有していることにより、上側スリット15及び下側スリット16によって本体部10の動きの自由度が増すため、着用者の目及び/又は目の周辺に対する冷却体20のフィット性を向上させることができる。そのため、着用者の目及び/又は目の周辺が保有する熱を冷却体20に移行させやすく、着用者の目及び/又は目の周辺への冷却性を向上させることができると共に、冷却体20の湿度調整材21及び保水層22が保有する水の蒸発に伴う気化放熱を効果的に発生させることができるという利点がある。
【0045】
本体部10の上縁部13、下縁部14、上側スリット15及び下側スリット16の形状は、着用者の目及び/又は目の周辺にフィットしやすくなるよう適宜調整されるものであり、それぞれ、直線、円弧状、局所的に凸部や曲線部を有する形状等の種々の任意の形状を採用することが可能である。例えば、上述した実施形態では、上側スリット15及び下側スリット16が切り欠きであるものとして説明したが、これに限定されず、上側スリット15及び下側スリット16が切開線であっても良い。
【0046】
以上の構成を備える本体部10は、冷却具1の使用前においては、第1パネル部10A及び第2パネル部10Bが縦中心線100に沿って二つ折りにされて平面状に折り畳まれているため(図6参照)、コンパクト化することが可能である。一方、本体部10は、冷却具1の使用時においては、縦中心線100とは反対側の縁部から開かれ、本体部10が折り畳まれていた内側の面が着用者側の面となるようにして着用される(図5参照)。
【0047】
また、本体部10は、冷却具1の着用時において、着用者の顔の目及び目の周辺を覆うように構成されている。本明細書において、「目の周辺」とは、例えば、額、眉毛、頬、こめかみ及び鼻等である。なお、本実施形態では、本体部10が着用者の顔の目及び目の周辺を覆うように構成されているものとして説明したが、これに限定されず、少なくとも着用者の顔の目の周辺を覆うように構成されていれば良い。すなわち、本体部10は、冷却具1の着用時において、着用者の目と対向する領域が開口していても良い。また、本体部10は、着用者の顔の全部を覆うように構成されていても良い。
【0048】
なお、本実施形態では、本体部10が内面シート11及び外面シート12を有しているものとして説明したが、これに限定されず、内面シート11及び外面シート12のいずれか一方のみを有する構成としても良く、内面シート11及び外面シート12のいずれも有さない構成としても良い。また、内面シート11と冷却体20との間に他のシートを有していても良いし、外面シート12と冷却体20との間に他のシートを有していても良い。この場合において、内面シート11と冷却体20との間に存在する他のシートは介在シート2として機能し、外面シート12と冷却体20との間に存在する他のシートは非介在シート3として機能する。
【0049】
[冷却体の構成]
図1図4に示すように、冷却体20は、介在シート2と非介在シート3との間に配置される保水層22と、保水層22と非介在シート3との間に配置される湿度調整材21とを有している。
【0050】
また、冷却体20は、冷却具1の着用時において、着用者の肌側に向く第一シート23と、保水層22及び湿度調整材21を介して第一シート23と対向するよう配置された第二シート24とを有している。すなわち、本実施形態において、第一シート23は、介在シート2として機能するように構成されており、第二シート24は、非介在シート3として機能するように構成されている。
【0051】
[湿度調整材の構成]
湿度調整材21は、正方形形状を有しており、シート状に形成されている。なお、湿度調整材21の形状は、これに限定されず、例えば、矩形形状、円形形状又は多角形形状等を有していても良い。
【0052】
この湿度調整材21は、保水層22側の面から水分を吸収し、該吸収した水分を非介在シート3(外面シート12及び第二シート24)側の面から揮散させるように構成されている。すなわち、湿度調整材21は、保水層22から水分を吸収し、非介在シート3側へ水蒸気を放出するように構成されている。
【0053】
[湿度調整材の保水率]
湿度調整材21の保水率は、保水層22から多量の水分を吸収する観点から、80%以上であることが好ましく、90%以上であることがより好ましく、100%以上であることが更に好ましい、また、湿度調整材21の保水率は、500%以下であることが好ましく、400%以下であることがより好ましく、300%以下であることが更に好ましい。
【0054】
ここで、保水率とは、部材がどれだけ水を保水できるかを割合で表したものである。保水率の値が大きいことは、部材の吸水能力が高いことを示し、保水率の値が小さいことは、部材の吸水能力が低いことを示す。
【0055】
保水率は、例えば、JIS L 1913:2010の「6.9.2 保水率」の項目に従い、以下の式により求めることができる。
m=(m-m)/m×100
ここで、mは、湿度調整材21の保水率(%)であり、mは、試験片の標準状態での質量(mg)であり、mは、試験片を湿潤し、水をしたたり落とした後の質量(mg)である。なお、JIS L 1913:2010の「6.9.2 保水率」に記載の寸法(100mm×100mm)で試験片を採取できない場合は、当該寸法に可能な限り近い寸法で試験片を採取する。
【0056】
[湿度調整材の水揮散率]
湿度調整材21は、以下の手順(1)~(5)により測定される水揮散率が、非介在シート3(外面シート12及び第二シート24)側への水蒸気の放出を促進させる観点から、50%以上であることが好ましく、60%以上であることがより好ましく、80%以上であることが更に好ましい。
(1) 試料から50mm×50mmの試験片を採取し、重量を測定する。なお、当該寸法で試験片を採取できない場合は、当該寸法に可能な限り近い寸法で試験片を採取する。
(2) 適切な大きさの容器に水を入れて試験片を15分間浸漬した後、ピンセットで試験片を水中から取り出し、1分間水切りを行い、重量を測定する。なお、試験片が沈まない場合は、試験片に重りを載せる。
(3) 試験片の「浸漬前重量」及び「浸漬後重量」を用いて、以下の式により保水量を求める。
保水量=「浸漬後重量」-「浸漬前重量」
(4) 試験片を水分計(ケット水分計 FD-240、(株)ケット科学研究所製)に設置し、40℃で20分間加熱し、揮散した水分量(水揮散量)を算出する。
(5) 「保水量」及び「水揮散量」を用いて、以下の式により水揮散率を求める。
水揮散率=「水揮散量」/「保水量」×100
【0057】
ここで、水揮散率とは、部材がどれだけ水を揮散させるかを割合で表したものである。水揮散率の値が大きいことは、部材の水を揮散させる能力が高いことを示し、水揮散率の値が小さいことは、部材の水を揮散させる能力が低いことを示す。
【0058】
なお、水中で分解してしまうような試料については、例えば、以下のように測定することができる。すなわち、メッシュ(149μm)のナイロン製織物袋(80mm×80mm)と試料の重量を量る。次に、上記メッシュ袋内に試料を入れ、適切なビーカー内に立てて入れ、水をメッシュ袋に直接当たらないように加え、15分間浸漬し、充分膨潤させる。その後、1分水切りを行い、重量を量る。そして、同様に水分計を用いて水揮散率を算出する。
【0059】
以上の保水率及び水揮散率を有する湿度調整材21は、保水率[%]×水揮散率[%]/100の値が、保水層22側の面から多量の水分を吸収し、非介在シート3側の面から多量の水分を放出する観点から、50以上500以下であることが好ましく、80以上400以下であることがより好ましく、100以上300以下であることが更に好ましい。
【0060】
[湿度調整材の通気性]
湿度調整材21は、通気性を有している。湿度調整材21の透気度は、保水層22から放出される水蒸気を通過させて、冷却体20から熱を放散させる観点から、300秒/100mL以下であることが好ましく、100秒/100mL以下であることがより好ましく、80秒/100mL以下であることが更に好ましく、50秒/100mL以下であることがより更に好ましい。
【0061】
なお、湿度調整材21は、少なくとも保水層22と対向する領域が上記の透気度を有していれば良い。すなわち、他の領域については通気性を有しない構成としても良い。
【0062】
湿度調整材21が通気性を有していることにより、保水層22から放出される水蒸気を通過させることができるため、非介在シート3(外面シート12及び第二シート24)側への水蒸気の放出をより一層促進させることができるという利点がある。その結果、冷却体20が保有する熱の放散を促進することができ、冷却具1の冷却性を向上させることができる。
【0063】
[湿度調整材の透湿性]
湿度調整材21は、透湿性を有している。湿度調整材21の透湿度は、保水層22から放出される水蒸気を通過させて、冷却体20から熱を放散させる観点から、3000g/m・24hr以上であることが好ましく、3500g/m・24hr以上であることがより好ましく、4000g/m・24hr以上であることが更に好ましい。
【0064】
なお、湿度調整材21は、少なくとも保水層22と対向する領域が上記の透湿度を有していれば良い。すなわち、他の領域については透湿性を有しない構成としても良い。
【0065】
湿度調整材21が透湿性を有していることにより、保水層22から吸収した水分を揮散させることに加えて、保水層22から放出される水蒸気を通過させることができるため、非介在シート3(外面シート12及び第二シート24)側への水蒸気の放出をより一層促進させることができるという利点がある。その結果、冷却体20が保有する熱の放散を促進することができ、冷却具1の冷却性を向上させることができる。
【0066】
[湿度調整材の剛性]
湿度調整材21は、剛性を有している。湿度調整材21が剛性を有していることにより、保水層22を安定して保持することができると共に、冷却体20の形状を保持することができるという利点がある。その結果、本体部10に冷却体20を設置する際の生産性を向上させることができる。上記の観点から、湿度調整材21の剛軟度は、30mm以上150mm以下であることが好ましく、40mm以上120mm以下であることがより好ましく、50mm以上100mm以下であることが更に好ましい。
【0067】
ここで、剛軟度とは、JIS L 1096:2010のA法(45°カンチレバー法)に準拠しつつ、下記(3)及び(4)の方法に一部変更を加えた、以下の方法によって測定及び算出される値である。
(1) 20mm×約150mmの試験片を5枚採取し、一端が45°の斜面をもつ表面の滑らかな水平台の上に試験片の短辺をスケール基線に合わせて置く。
(2) 適切な方法によって試験片を斜面の方向に緩やかに滑らせて、試験片の一端の中央点が斜面と接したときに、試験片の他端の位置をスケールによって読む。
(3) 剛軟度は、試験片が移動した長さ(mm)で示され、5枚の試験片のたて方向の表のみを測る。
(4) たて方向の値の平均値を算出し、整数位に丸める。
剛軟度の値が小さいことは、測定に供されるシートが軟らかいこと(剛性が低いこと)を意味し、剛軟度の値が大きいことは、測定に供されるシートが硬いこと(剛性が高いこと)を意味している。
【0068】
[湿度調整材の材料]
湿度調整材21の材料としては、例えば、クレープ紙及びクラフト紙等が挙げられる。中でも、保水層22から多量の水分を吸収する観点と、保水層22から吸収した水分の揮散速度を向上させる観点とから、クレープ紙を用いることが好ましい。
【0069】
[保水層の構成]
保水層22は、湿度調整材21上に積層されている。本実施形態において、保水層22は、湿度調整材21上に設けられた保水材と、該保水材に保持された水とを有している。なお、本明細書において、保水材とは、保水能(吸水作用又は除水作用)を有するものであり、水の保持が可能なものであればその種類に特に制限はない。保水材の一例としては、例えば、炭素成分、繊維材料及び吸水性の粉体等から選ばれる1種又は2種以上が挙げられる。
【0070】
炭素成分は、保水能を有するものであり、例えば、活性炭、アセチレンブラック、及び黒鉛から選ばれる1種又は2種以上を用いることができる。また、繊維材料としては、親水性繊維、中でもセルロース繊維を用いることがより好ましい。セルロース繊維としては、化学繊維(合成繊維)や天然繊維を用いることができる。さらに、前記以外の吸水性の粉体としては、バーミキュライト、おがくず、シリカゲル、ケイ酸カルシウム、ゼオライト、パルプ粉末、及び吸水性ポリマーから選ばれる1種又は2種以上が挙げられる。
【0071】
吸水性ポリマーとしては、自重の20倍以上の液体を吸収、保持できる架橋構造を有する親水性のポリマーが挙げられる。吸水性ポリマーの形状は、球状、塊状、ブドウ房状、及び繊維状のいずれでもよい。吸水性ポリマーの質量平均粒径は、1μm以上であることが好ましく、10μm以上であることがより好ましく、100μm以上であることがさらに好ましい。また、吸水性ポリマーの質量平均粒径は、1000μm以下であることが好ましく、700μm以下であることがより好ましく、500μm以下であることがさらにより好ましい。吸水性ポリマーの粒径はレーザー回折法により測定される。
【0072】
吸水性ポリマーの具体例としては、例えば、デンプン、架橋カルボキシルメチル化セルロース、アクリル酸又はアクリル酸アルカリ金属塩の重合体又は共重合体等、ポリアクリル酸及びその塩並びにポリアクリル酸塩グラフト重合体からなる群から選択される1種又は2種以上が挙げられる。これらのなかでも、担持される水の量を特定の範囲に維持しやすいことから、アクリル酸又はアクリル酸アルカリ金属塩の重合体又は共重合体等、ポリアクリル酸及びその塩並びにポリアクリル酸塩グラフト重合体が好ましい。
【0073】
吸水性ポリマーを使用した場合の保水層22の態様としては、例えば、(a)吸水性ポリマーが2枚の透湿性シート間に挟持されて形成された単一層を有する態様、(b)吸水性ポリマーが湿度調整材21に直接積層されており、単一層状に配された態様、あるいは(c)吸水性ポリマーが隣接して層状に配された第1吸水性ポリマー層と、第1吸水性ポリマー層に隣接し、吸水性樹脂の粉末が2枚の透湿性シート間に挟持されて形成された第2吸水性ポリマー層とが配された積層構造をとる態様等が挙げられる。
【0074】
保水材に保持される水は、電解質水溶液(例えば、アルカリ金属、アルカリ土類金属等の水溶液)由来のものであっても良く、また、例えばエタノール、メチルパラベン、エチルパラベン、プロピルパラベン、ブチルパラベン、フェノキシエタノール、1,3-ブチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール等の防腐剤、静菌剤、殺菌剤や酸化防止剤が添加されていても良い。
【0075】
上記のとおり、本実施形態に係る保水層22は、水を保有するように構成されている。具体的には、保水層22は、冷却体20が包装体200に封入された状態において、水を保有するように構成されている。なお、保水層22の構成は、これに限定されるものではない。例えば、保水層22が水を保有し得るように構成されていても良い。すなわち、冷却体20が包装体200に封入された状態では保水層22が水を保有しておらず、冷却具1の使用時に保水層22に水を含侵させることにより、保水層22が水を保有する構成としても良い。
【0076】
保水層22に保有される水の初期含有量は、冷却具1の着用初期の冷却効果を高める観点と、湿度調整材21による高い冷却効果を十分に発揮させる観点とから、保水層22の最大吸水量の1質量%以上であることが好ましく、2質量%以上であることがより好ましく、3質量%以上であることが更に好ましく、4質量%以上であることがより更に好ましい。また、水の初期含有量は、冷却体20の重さを抑え、顔に対する冷却具1のずれ落ちを防止する観点から、保水層22の最大吸水量の20質量%以下であることが好ましく、15質量%以下であることがより好ましく、10質量%以下であることが更に好ましく、7質量%以下であることがより更に好ましい。
【0077】
[保水層の最大吸水量の測定方法]
保水層22の最大吸水量は、例えば、次の方法により測定することができる。すなわち、まず、250メッシュ(61μm)のナイロン製織物袋(100mm×150mm)と試料を秤量し、メッシュ袋の風袋重量と試料の重量を量る。次に、上記メッシュ袋内に試料を入れ、300mLビーカー内に立てて入れ、イオン交換水をメッシュ袋に直接当たらないように300mL加え、30分間浸せきし、充分膨潤させる。その後、10分間吊り下げて水切りを行い、化学天秤で小数点以下2桁まで秤量する。そして、以上により求めた「メッシュ袋総重量」、「メッシュ袋の風袋重量」及び「試料の重量」を用いて、以下の式により最大吸水量を求める。
「最大吸水量」=「メッシュ袋総重量」-「メッシュ袋の風袋重量」-「試料の重量」
【0078】
保水層22に保有される水の初期含有量(すなわち、酸素遮断袋等の包材を開封させた直後の水含有量)は、上述の観点から、1cmあたり0.04mL以上であることが好ましく、1cmあたり0.08mL以上であることがより好ましく、1cmあたり0.10mL以上であることがさらに好ましく、また、1cmあたり0.40mL以下であることが好ましく、1cmあたり0.30mL以下であることがより好ましく、1cmあたり0.25mL以下であることがさらに好ましい。
【0079】
[水の初期含有量の定義]
なお、冷却体20の保水層22における水の初期含有量は、以下の手順で定義する。
すなわち、まず、包材を開封し、冷却具1を包材から取り出し、冷却具1の水を含有している部位、すなわち、冷却体20を取り出した後、水分計(ケット水分計 FD-240、(株)ケット科学研究所製)に冷却体20を設置する。そして、包材開封開始から30秒後に冷却体20の水分計の測定を開始する。
上記方法において、水分計にて70℃、10時間加熱乾燥した際の、乾燥前重量から乾燥後重量の差分を水の初期含有量として定義する。
【0080】
[第一シート及び第二シートの構成]
第一シート23及び第二シート24は、正方形形状を有しており、シート状に形成されている。なお、第一シート23及び第二シート24の形状は、これに限定されず、例えば、矩形形状、円形形状又は多角形形状等を有していても良い。
【0081】
また、第一シート23及び第二シート24は、同形同大に形成されており、第一シート23と第二シート24との間に湿度調整材21及び保水層22が配された状態において、第一シート23及び第二シート24の周縁部が互いに接合されている。なお、本実施形態では、第一シート23及び第二シート24が同形同大に形成されているものとして説明したが、これに限定されず、例えば、第一シート23と第二シート24とで形状が異なっていても良いし、大きさが異なっていても良い。また、第一シート23及び第二シート24の接合方法は、内面シート11及び外面シート12の接合方法と同じであっても良いし、異なっていても良い。
【0082】
第一シート23及び第二シート24の材料は、内面シート11及び外面シート12と同じであっても良いし、異なっていても良い。
【0083】
[第一シート及び第二シートの通気性]
介在シート2として機能する第一シート23は、通気性、難通気性及び非通気性のいずれを有していても良い。しかしながら、第一シート23は、保水層22の蒸気放出方向を非介在シート3(外面シート12及び第二シート24)側に規定する観点及び着用者の肌が蒸れることや濡れることを防止する観点から、難通気性又は非通気性を有していることが好ましい。本実施形態において、第一シート23は、難通気性又は非通気性を有している。
【0084】
第一シート23が難通気性又は非通気性を有していることにより、内面シート11の設計の自由度が向上するという利点がある。すなわち、第一シート23が難通気性又は非通気性を有している場合、内面シート11の通気性については考慮する必要がないため、内面シート11に他の機能を付与することができる。他の機能としては、例えば、冷却具1の着け心地を向上させる機能や冷却具1の冷却性を向上させる機能等である。
【0085】
非介在シート3として機能する第二シート24は、通気性を有している。第二シート24の透気度は、水の蒸発による気化放熱を促進させる観点から、300秒/100mL以下であることが好ましく、200秒/100mL以下であることがより好ましく、100秒/100mL以下であることが更に好ましい。
【0086】
なお、第二シート24は、少なくとも湿度調整材21と対向する領域が上記の透気度を有していれば良い。すなわち、他の領域については通気性を有しない構成としても良い。
【0087】
[第一シート及び第二シートの透湿性]
第一シート23は、透湿性、難透湿性及び非透湿性のいずれを有していても良い。しかしながら、第一シート23は、保水層22の蒸気放出方向を非介在シート3(外面シート12及び第二シート24)側に規定する観点及び着用者の肌が蒸れることや濡れることを防止する観点から難透湿性又は非透湿性を有していることが好ましい。本実施形態において、第一シート23は、難透湿性又は非透湿性を有している。
【0088】
第一シート23が難透湿性又は非透湿性を有していることにより、内面シート11の設計の自由度が向上するという利点がある。すなわち、第一シート23が難透湿性又は非透湿性を有している場合、内面シート11の透湿性については考慮する必要がないため、内面シート11に他の機能を付与することができる。他の機能としては、例えば、冷却具1の着け心地を向上させる機能や冷却具1の冷却性を向上させる機能等である。
【0089】
第二シート24は、透湿性を有している。第二シート24の透湿度は、水の蒸発による気化放熱を促進させる観点から、2000g/m・24hr以上であることが好ましく、2500g/m・24hr以上であることがより好ましく、3000g/m・24hr以上であることが更に好ましい。
【0090】
なお、第二シート24は、少なくとも湿度調整材21と対向する領域が上記の透湿度を有していれば良い。すなわち、他の領域については透湿性を有しない構成としても良い。
【0091】
[第一シート及び第二シートの防水性]
第一シート23は、防水性及び非防水性のいずれを有していても良い。本実施形態において、第一シート23は、防水性を有している。第一シート23が防水性を有している場合、内面シート11の防水性については考慮する必要がないため、内面シート11に他の機能を付与することができる。他の機能としては、例えば、冷却具1の着け心地を向上させる機能や冷却具1の冷却性を向上させる機能等である。
【0092】
第一シート23の耐水度は、着用者の肌が濡れることを防止する観点から、300mm以上であることが好ましく、500mm以上であることがより好ましく、1000mm以上であることが更に好ましい。
【0093】
なお、第一シート23は、少なくとも着用者の目と保水層22との間の領域が上記の耐水度を有していれば良い。すなわち、他の領域については防水性を有しない構成としても良い。
【0094】
第二シート24は、防水性及び非防水性のいずれを有していても良い。
【0095】
本実施形態では、冷却体20が第一シート23及び第二シート24を有しているものとして説明したが、これに限定されず、第一シート23及び第二シート24のいずれか一方のみを有する構成としても良い。また、第一シート23及び第二シート24を有しておらず、湿度調整材21及び保水層22を内面シート11又は外面シート12に固定させる構成としても良いし、湿度調整材21及び保水層22を内面シート11と外面シート12との間に封入させる構成としても良い。
【0096】
[冷却体の香料成分]
冷却体20は、例えば「合成香料化学と商品知識」(印藤元一著 化学工業日報社)に記載の香料成分を、本発明の効果を妨げない範囲で配合又は任意の箇所に付加することもできる。具体的には、ミルセン、ファルネセン、ピネン、リモネン、カンフェン、フェランドレン、ターピネン、ターピノレン、p-サイメン、セドレン、カリオフィレン等のテルペン系炭化水素;ヘキシルシンナミックアルデヒド、2-メチル-3-(4-tert-ブチルフェニル)-プロパナール、4-(4-ヒドロキシ-4-メチルペンチル)-3-シクロヘキセン-1-カルボキシアルデヒド、バニリン等のアルデヒド類;ベンジルアルコール、フェニルエチルアルコール、パンプルフルール(2-メチル-4-フェニルペンタノール)、ジメチルベンジルカルビノール、フェニルヘキサノール(3-メチル-5-フェニルペンタノール)等の芳香族アルコール類;アネトール、オイゲノール等のフェノール類;γ-ノナラクトン、γ-ウンデカラクトン等のラクトン類が挙げられる。
【0097】
[冷却体の冷涼成分]
冷却体20は、より一層の冷涼感を付与する観点から、冷涼成分を発明の効果を妨げない範囲で配合又は任意の箇所に付加することもできる。身体に存在する温度感受性TRPチャネルのうち、冷受容体であるTRPM8に作用するアゴニストを含有するものが良い。例えば、L-メントール、DL-メントール等のメントール、メンタンジオール、シネオール、メンチルグリセリルエーテル、メントングリセリンアセタール、ブチルシクロヘキサノン、イソプレゴール、トリメチルイソプロピルブタンアミド、メントキシプロパンジオール、カンフル等が挙げられ、TRPM8アゴニストを含有するハッカ油、ペパーミント油、スペアミント油、ユーカリ油等の植物や精油等を使用してもよい。これらは1種単独で用いてもよく、2種以上組み合わせて用いてもよい。なかでも、使用時の心地よさ及び実効感、安全性の観点から、メントール、乳酸メンチル、コハク酸メンチル、グルタル酸メンチル、トリメチルイソプロピルブタンアミド、メントキシプロパンジオール、及びカンフルから選ばれる1種又は2種以上が好ましく、メントールがより好ましい。
【0098】
[冷却体の配置]
冷却体20は、冷却具1の着用時において、少なくとも一部が着用者の目及び/又は目の周辺と直接的又は間接的に接触するよう本体部10に配置されている。具体的には、冷却体20は、冷却具1の着用時において、少なくとも一部が着用者の目及び目の周辺と内面シート11を介して接触するよう本体部10に配置されている。
【0099】
なお、本実施形態では、冷却体20の少なくとも一部が着用者の目及び目の周辺と内面シート11を介して接触するものとして説明したが、これに限定されず、冷却体20の少なくとも一部が着用者の目の周辺と直接的又は間接的に接触すれば良い。すなわち、冷却体20は、冷却具1の着用時において、着用者の目と対向する領域が開口していても良い。さらに、冷却体20は、少なくとも一部が着用者の顔の全域と直接的又は間接的に接触しても良い。
【0100】
図1に示すように、本実施形態に係る冷却体20は、縦中心線100を境として左右対称となるよう、第1パネル部10Aと第2パネル部10Bとにそれぞれ設けられている。図示の例においては、第1パネル部10A及び第2パネル部10Bに1つずつ、計2つの冷却体20が設置されている。
【0101】
本実施形態では、冷却体20が第1パネル部10A及び第2パネル部10Bに1つずつ設けられているものとして説明したが、これに限定されず、例えば、第1パネル部10A及び第2パネル部10Bに2つずつ設けられていても良いし、本体部10全体で1つの冷却体20が設けられていても良い。また、冷却体20が複数設けられる場合において、複数の冷却体20の冷却特性は同じであっても良いし、異なっても良いが、同じであることがより好ましい。
【0102】
[耳掛け部の構成]
耳掛け部30は、本体部10の幅方向の両端部に設けられており、該本体部10により着用者の顔の少なくとも目及び/又は目の周辺が覆われるように該本体部10を着用者の顔に保持させることが可能に構成されている(図5参照)。具体的には、耳掛け部30は、本体部10により着用者の顔の少なくとも目及び目の周辺が覆われるように該本体部10を着用者の顔に保持させることが可能に構成されている。
【0103】
なお、耳掛け部30は、本体部10により着用者の顔の少なくとも目の周辺が覆われるように該本体部10を着用者の顔に保持させることが可能に構成されていれば良い。また、耳掛け部30は、本体部10により着用者の顔の全部が覆われるように該本体部10を着用者の顔に保持させることが可能に構成されていても良い。
【0104】
図2及び図6に示すように、耳掛け部30は、冷却具1の使用前においては、本体部10の内側に折り込んで収納されている。また、図1及び図5に示すように、耳掛け部30は、冷却具1の使用時においては、本体部10の幅方向外側に展開されている。
【0105】
図1に示すように、耳掛け部30は、本体部10の幅方向に対して、着用時における本体部10の下方側に傾斜して設けられている。また、耳掛け部30は、それぞれ、着用時における本体部10の上下方向に対して傾斜した接合部50によって本体部10に接合されている。
【0106】
本実施形態に係る接合部50の構成としては、例えば、以下の(1)及び(2)の構成が挙げられる。
(1) 本体部10と耳掛け部30とが接着剤(例えば、ホットメルト型接着剤)等の他の部材により相互に接続されている場合には、当該接着剤等の他の部材が接合部50として機能する。
(2) 本体部10と耳掛け部30とが熱融着により相互に接続されている場合等、本体部10と耳掛け部30とが他の部材を介することなく相互に接合されている場合には、本体部10における耳掛け部30が接合される接合領域と耳掛け部30における本体部10が接合される接合領域とが、それぞれ接合部50として機能する。
【0107】
図1に示すように、各耳掛け部30は、耳掛け部本体31と、着用者の耳が挿通可能な耳掛け孔32とを有している。耳掛け部本体31は、上辺31aと、下辺31bと、本体部10に接合されていない耳掛け部30の開放側の開放縁31cと、本体部10に接合されている接合縁31dとを有している。
【0108】
本実施形態において、耳掛け部本体31は、平面形状を有しており、かつ略四角形状を有している。具体的には、上辺31a及び下辺31bが接合縁31d側から開放縁31cに向けて先細りとなっており、開放縁31cと連結する部分において湾曲している。また、接合縁31dが第1パネル部10A又は第2パネル部10Bの周縁に沿った形状を有している。
【0109】
耳掛け孔32は、耳掛け部本体31の接合縁31d近傍から耳掛け部本体31の開放縁31c近傍に亘って形成された円弧状の切開線である。この耳掛け孔32は、着用者の耳を挿通可能に構成されている。なお、耳掛け孔32の形状は何ら限定されるものではなく、直線状の切開線であっても良いし、着用者の耳を挿通可能な開口であっても良い。
【0110】
耳掛け部30は、本体部10と同様な材料であってもよく、異なる材料であってもよいが、本体部10のフィット感を良好にする観点から、伸縮性を有する材料であることが好ましく、本体部10の幅方向に伸長しやすいものがよい。本実施形態においては、耳掛け部30は不織布からなることが好ましく、伸縮性を有する不織布であることがより好ましい。なお、耳掛け部30は、伸縮性を更に高める観点から、不織布にエラストマーフィルムを積層させた多層構造であっても良い。また、耳掛け部30は、本体部10との結合性の観点から、構成繊維として熱可塑性樹脂を含むことが好ましい。更に、加工のし易さの観点から、ポリプロピレンを含むことがより好ましい。なお、耳掛け部30は、ポリプロピレン以外の熱可塑性樹脂を更に含んでも良く、例えば、ウレタン、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレートからなる群から選ばれる一種以上を更に含むことが好ましく、ウレタンからなる合成繊維を用いることがより好ましい。このような構成となっていることによって、耳掛け部30の柔軟性及びフィット性を効率良く発現させることができるとともに、冷却具1の使用時に十分な強度を発現できる。
【0111】
なお、耳掛け部30は、本体部10を着用者の顔に保持させることが可能な構成であれば、上述した平面状の耳掛けに限定されず、冷却具を固定するために通常用いることが可能なものを任意に用いることが可能である。例えば、ゴム紐状の耳掛けや、第1パネル部10A及び第2パネル部10Bの幅方向両端部に亘って架け渡された1又は複数のバンド等の種々の構成を採用可能である。また、耳掛け部30は、本体部10の幅方向両端部に接合される別部材の構成に限定されず、本体部10と一体的に形成された構成であっても良い。
【0112】
[冷却具の90分間平均温度及び90分間平均相対湿度]
以上の構成を有する冷却具1によれば、長時間に亘って高い冷却効果を得ることができると共に、着用者の目及び/又は目の周辺における湿度を長時間に亘って維持することができる。
【0113】
具体的には、第一シート23が難透湿性又は非透湿性を有する構成とし、第二シート24及び外面シート12が通気性を有する構成とした場合の冷却具1では、冷却体20の着用者の目及び/又は目の周辺と直接的又は間接的に接触する部位における90分間平均温度を30℃以下に抑えることが可能となる。また、冷却体20が着用者の目及び/又は目の周辺と直接的又は間接的に接触していない領域における90分間平均相対湿度を40%以上85%以下に維持することが可能となる。
【0114】
より具体的には、冷却具1の90分間平均温度は、30℃以下であることがより好ましく、28℃以下であることが更に好ましい。また、冷却具1の90分間平均相対湿度は、50%以上85%以下であることがより好ましく、60%以上80%以下であることが更に好ましい。
【0115】
ここで、90分間平均温度及び90分間平均相対湿度は、以下の方法により測定することが可能である。すなわち、有限会社デジタルヒューマンテクノロジー社製の女性版平均人頭データ(出願時における最新データ)に基づいて造形された女性版人頭モデル(幅151.24mm、奥行き206.82mm、高さ233.01mm)の上眼瞼に湿温度センサーを配置し、サージカルテープで動かないように固定する。そして、30℃40%RH環境下において、該女性版人頭モデルに冷却具1を装着し、10秒毎の温湿度変化を測定する。なお、温湿度センサーとしては、温湿度センサーSHT71(センシリオン社製)を用いることができる。
【0116】
[冷却具の使用方法]
次に、本実施形態に係る冷却具1の使用方法について、説明する。本実施形態においては、冷却体20が本体部10と一体となっているため、冷却具1全体が防水性の包装体200に封入された状態で保管されている(図6参照)。この保管状態において、本体部10は、縦中心線100を中心として折り畳まれている。また、冷却体20の保水層22は、冷却具1が包装体200に封入された状態において水を保有している。
【0117】
冷却具1を使用する場合、まず、着用者は、包装体200を開封し、冷却具1を包装体200から取り出す。また、包装体200から冷却具1を取り出した後、着用者は、二つ折りになっている本体部10を幅方向両端部側から開き、本体部10の内側から一対の耳掛け部30を取り出す。そして、図5(a)に示すように、本体部10を着用者の目及び目の周辺に当てた状態において耳掛け部30を指で引張り、耳掛け孔32に耳を挿通させる。このようにして一対の耳掛け部30を着用者の左右の耳に引っ掛けることにより、図5(b)に示すように、本体部10によって着用者の目及び目の周辺が覆われた状態が維持されるよう、該本体部10を着用者の顔に保持させることができる。
【0118】
なお、本実施形態に係る冷却具1では、冷却具1が包装体200に封入された状態において、保水層22が水を保有しているため、冷却具1を包装体200から取り出した後に水に浸ける等して、保水層22に水を保有させる必要がない。そのため、包装体200を開封させるだけで、冷却具1を使用することができるという利点がある。また、冷却具1が包装体200に1個のみ封入されている場合には、衛生的であるという利点もある。
【0119】
そして、このように本体部10により着用者の目及び目の周辺が覆われた状態において、冷却体20の少なくとも一部が着用者の目及び目の周辺と内面シート11を介して接触することにより、着用者の目及び目の周辺から冷却体20に熱が伝導され、着用者の目及び目の周辺が冷却される。
【0120】
また、本実施形態に係る冷却具1では、湿度調整材21が保水層22から水分を吸収しているため、冷却体20が着用者の目及び目の周辺の熱で温められると、保水層22から湿度調整材21に移行された水分が蒸発し、水蒸気が非介在シート3(第二シート24及び外面シート12)を通過して冷却具1の外部に放出される。なお、冷却体20が着用者の目及び目の周辺の熱で温められると、保水層22が保有する水も蒸発するため、保水層22から放出された水蒸気についても、湿度調整材21及び非介在シート3を通過して冷却具1の外部に放出されることとなる。そのため、着用者の目及び目の周辺から冷却体20に伝導された熱が冷却体20から放熱されることとなる。
【0121】
さらに、冷却体20から外気に熱が伝導されるため、着用者の目及び目の周辺から冷却体20に伝導された熱が冷却体20から放熱されることとなる。冷却体20から熱が放熱されると、再度、着用者の目及び目の周辺から冷却体20に熱が伝導されるため、着用者の目及び目の周辺を更に冷却することができる。このような冷却メカニズムにより、本実施形態に係る冷却具1は、長時間に亘って着用者に冷却感を与えることができる。
【0122】
特に本実施形態に係る冷却具1では、上記のとおり、湿度調整材21が保水層22側の面から水分を吸収し、該吸収した水分を非介在シート3側の面から揮散させるため、湿度調整材21がない場合と比較して、非介在シート3を通過する水蒸気量が多くなる。すなわち、冷却体20の放熱量を増大させることができるため、高い冷却効果を得ることができる。
【0123】
[本実施形態に係る冷却具の利点]
このように、本実施形態に係る冷却具1は、着用者の顔の少なくとも目及び/又は目の周辺を覆う本体部10と、本体部10に設けられる冷却体20とを備える冷却具1であって、冷却体20は、水を保有する又は保有し得る保水層22を有し、冷却体20は、着用時において、少なくとも一部が着用者の目及び/又は目の周辺と直接的又は間接的に接触するよう本体部10に配置されており、冷却具1は、着用時において、着用者の目及び/又は目の周辺と保水層22との間に配置される介在シート2と、通気性を有する非介在シート3とを有し、保水層22は、介在シート2と非介在シート3との間に配置されており、冷却体20は、保水層22と非介在シート3との間に配置される湿度調整材21を有し、湿度調整材21は、保水層22側の面から水分を吸収し、該吸収した水分を非介在シート3側の面から揮散させるように構成されている。
【0124】
このような構成を有する冷却具1によれば、湿度調整材21が保水層22から水分を吸収し、該吸収した水分を、通気性を有する非介在シート3側へ放出するため、湿度調整材21がない場合と比較して、非介在シート3を通過する水蒸気量が多くなる。その結果、冷却体20の放熱量を増大させることができるため、高い冷却効果を得ることができるという利点がある。換言すれば、着用者の目及び/又は目の周辺への冷却性を向上させることができる。
【0125】
また、本実施形態に係る冷却具1において、冷却体20は、着用時において、着用者の肌側に向く第一シート23と、保水層22及び湿度調整材21を介して第一シート23と対向するよう配置された第二シート24とを有し、第一シート23は、介在シート2として機能するように構成されており、第二シート24は、非介在シート3として機能するように構成されている。このような構成を有する冷却具1によれば、第二シート24が通気性を有する非介在シート3として機能し、保水層22及び湿度調整材21から放出される水蒸気を通過させることができるため、着用者の目及び/又は目の周辺から冷却体20に伝導された熱の放散を促進し、着用者の目及び/又は目の周辺への冷却性を向上させることができるという利点がある。
【0126】
さらに、本実施形態に係る冷却具1において、第一シート23は、難透湿性又は非透湿性を有している。このような構成を有する冷却具1によれば、保水層22の蒸気放出方向を非介在シート3側に規定することができると共に、着用者の肌が蒸れることや濡れることを防止することができるという利点がある。
【0127】
また、本実施形態に係る冷却具1において、本体部10は、着用時において、着用者の肌側に向く内面シート11と、冷却体20を介して内面シート11と対向するよう配置された外面シート12とを有し、内面シート11は、介在シート2として機能するように構成されており、外面シート12は、非介在シート3として機能するように構成されている。このような構成を有する冷却具1によれば、外面シート12が通気性を有する非介在シート3として機能し、湿度調整材21から放出される水蒸気を通過させることができるため、着用者の目及び/又は目の周辺から冷却体20に伝導された熱の放散を促進し、着用者の目及び/又は目の周辺への冷却性を向上させることができるという利点がある。
【0128】
さらに、本実施形態に係る冷却具1において、本体部10は、該本体部10を幅方向に二分する縦中心線100と、縦中心線100を境とした幅方向の一方側を構成する第1パネル部10Aと、縦中心線100を境とした幅方向の他方側を構成する第2パネル部10Bとを有しており、冷却体20は、第1パネル部10Aと第2パネル部10Bとにそれぞれ設けられる。このような構成を有する冷却具1によれば、着用者の目及び/又は目の周辺に対する冷却体20のフィット性を向上させることができる。そのため、着用者の目及び/又は目の周辺から冷却体20への熱伝導を促進し、湿度調整材21が吸収した水分の蒸発を促進することができるため、着用者の目及び/又は目の周辺への冷却性を向上させることができるという利点がある。
【0129】
[変形例]
本発明に係る冷却具は、上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術思想を逸脱しない範囲内において種々の改変を行なうことができる。
【0130】
例えば、上述した実施形態では、本体部10が上側スリット15及び下側スリット16を有しているものとして説明したが、これに限定されず、上側スリット15及び下側スリット16を有しない構成としても良い。
【0131】
また、上述した実施形態では、耳掛け部30が本体部10の幅方向に対して、着用時における本体部10の下方側に傾斜して設けられているものとして説明したが、これに限定されず、例えば、耳掛け部30が本体部10の幅方向に沿って設けられていても良い。
【0132】
上記のような変形例が本発明の範囲に含まれることは、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【0133】
上述した実施形態に関し、本発明はさらに以下の冷却具を開示する。
【0134】
<1>
着用者の顔の少なくとも目及び/又は目の周辺を覆う本体部と、前記本体部に設けられる冷却体とを備える冷却具であって、
前記冷却体は、水を保有する又は保有し得る保水層を有し、
前記冷却体は、着用時において、少なくとも一部が着用者の目及び/又は目の周辺と直接的又は間接的に接触するよう前記本体部に配置されており、
前記冷却具は、
着用時において、着用者の目及び/又は目の周辺と前記保水層との間に配置される介在シートと、
通気性を有する非介在シートと
を有し、
前記保水層は、前記介在シートと前記非介在シートとの間に配置されており、
前記冷却体は、前記保水層と前記非介在シートとの間に配置される湿度調整材を有し、
前記湿度調整材は、前記保水層側の面から水分を吸収し、該吸収した水分を前記非介在シート側の面から揮散させるように構成されている
冷却具。
【0135】
<2>
前記湿度調整材は、少なくとも前記保水層と対向する領域の透気度が、300秒/100mL以下である
前記<1>に記載の冷却具。
<3>
前記湿度調整材は、少なくとも前記保水層と対向する領域の透湿度が、3000g/m・24hr以上である
前記<1>又は<2>に記載の冷却具。
<4>
前記湿度調整材の水揮散率が50%以上である
前記<1>~<3>のいずれか1項に記載の冷却具。
【0136】
<5>
前記湿度調整材の保水率が80%以上である
前記<1>~<4>のいずれか1項に記載の冷却具。
<6>
前記湿度調整材は、該湿度調整材の保水率[%]×該湿度調整材の水揮散率[%]/100の値が、50以上500以下である
前記<1>~<5>のいずれか1項に記載の冷却具。
<7>
前記湿度調整材の剛軟度が30mm以上150mm以下である
前記<1>~<6>のいずれか1項に記載の冷却具。
<8>
前記湿度調整材の材料がクレープ紙又はクラフト紙である
前記<1>~<7>のいずれか1項に記載の冷却具。
【0137】
<9>
前記冷却体は、
着用時において、着用者の肌側に向く第一シートと、
前記保水層及び前記湿度調整材を介して前記第一シートと対向するよう配置された第二シートと
を有し、
前記第一シートは、前記介在シートとして機能するように構成されており、
前記第二シートは、前記非介在シートとして機能するように構成されている
前記<1>~<8>のいずれか1項に記載の冷却具。
<10>
前記第二シートは、少なくとも前記湿度調整材と対向する領域の透気度が、300秒/100mL以下である
前記<9>に記載の冷却具。
<11>
前記第一シートは、難通気性又は非通気性を有している
前記<9>又は<10>に記載の冷却具。
【0138】
<12>
前記第二シートは、少なくとも前記湿度調整材と対向する領域の透湿度が、2000g/m・24hr以上である
前記<9>~<11>のいずれか1項に記載の冷却具。
<13>
前記第一シートは、難透湿性又は非透湿性を有している
前記<9>~<12>のいずれか1項に記載の冷却具。
<14>
前記第一シートは、防水性を有している
前記<9>~<13>のいずれか1項に記載の冷却具。
<15>
前記第一シートは、少なくとも着用者の目と前記保水層との間の領域の耐水度が、300mm以上である
前記<9>~<14>のいずれか1項に記載の冷却具。
【0139】
<16>
前記本体部は、
着用時において、着用者の肌側に向く内面シートと、
前記冷却体を介して前記内面シートと対向するよう配置された外面シートと
を有し、
前記内面シートは、前記介在シートとして機能するように構成されており、
前記外面シートは、前記非介在シートとして機能するように構成されている
前記<1>~<15>のいずれか1項に記載の冷却具。
<17>
前記外面シートは、少なくとも前記湿度調整材と対向する領域の透気度が、30000秒/100mL以下である
前記<16>に記載の冷却具。
<18>
前記外面シートは、少なくとも前記湿度調整材と対向する領域の透湿度が、2000g/m・24hr以上である
前記<16>又は<17>に記載の冷却具。
【0140】
<19>
前記内面シートの坪量が1g/m以上である
前記<16>~<18>のいずれか1項に記載の冷却具。
<20>
前記内面シートの坪量が80g/m以下である
前記<16>~<19>のいずれか1項に記載の冷却具。
<21>
前記外面シートの坪量が10g/m以上である
前記<16>~<20>のいずれか1項に記載の冷却具。
<22>
前記外面シートの坪量が200g/m以下である
前記<16>~<21>のいずれか1項に記載の冷却具。
【0141】
<23>
前記本体部は、
該本体部を幅方向に二分する縦中心線と、
前記縦中心線を境とした幅方向の一方側を構成する第1パネル部と、
前記縦中心線を境とした幅方向の他方側を構成する第2パネル部と
を有しており、
前記冷却体は、前記第1パネル部と前記第2パネル部とにそれぞれ設けられる
前記<1>~<22>のいずれか1項に記載の冷却具。
<24>
前記本体部は、前記縦中心線を中心として前記第1パネル部及び前記第2パネル部を展開させた際に、前記第1パネル部及び前記第2パネル部が平面方向に並列する平面形状となるよう構成されている
前記<23>に記載の冷却具。
<25>
前記本体部は、
着用時において、着用者の額側に位置する上縁部と、
着用時において、着用者の鼻側に位置する下縁部と、
前記上縁部から前記下縁部側に向けて形成された上側スリットと、
前記下縁部から前記上縁部側に向けて形成された下側スリットと
を有しており、
前記上側スリット及び前記下側スリットは、該本体部を幅方向に二分する縦中心線上に形成されている
前記<1>~<24>のいずれか1項に記載の冷却具。
【0142】
<26>
前記保水層は、前記湿度調整材上に設けられた保水材と、該保水材に保持された水とを有しており、
前記保水材は、炭素成分、繊維材料及び吸水性の粉体等から選ばれる1種又は2種以上である
前記<1>~<25>のいずれか1項に記載の冷却具。
<27>
前記保水層は、水の初期含有量が1cmあたり0.04mL以上0.40mL以下である
前記<1>~<26>のいずれか1項に記載の冷却具。
<28>
前記保水層は、水の初期含有量が該保水層の最大吸水量の1質量%以上である
前記<1>~<27>のいずれか1項に記載の冷却具。
<29>
前記冷却具は、防水性を有する包装体に封入された状態で保存されており、
前記保水層は、前記冷却具が前記包装体に封入された状態において水を保有している
前記<1>~<28>のいずれか1項に記載の冷却具。
【0143】
<30>
前記本体部の幅方向の両端部に設けられ、該本体部により着用者の顔の少なくとも目及び/又は目の周辺が覆われるように該本体部を着用者の顔に保持させることが可能な耳掛け部を更に備える
前記<1>~<29>のいずれか1項に記載の冷却具。
<31>
前記耳掛け部は、前記本体部の幅方向に対して、着用時における前記本体部の下方側に傾斜して設けられている
前記<30>に記載の冷却具。
<32>
前記冷却体の着用者の目及び/又は目の周辺と直接的又は間接的に接触する部位における90分間平均温度が30℃以下である
前記<1>~<31>のいずれか1項に記載の冷却具。
<33>
前記冷却体が着用者の目及び/又は目の周辺と直接的又は間接的に接触していない領域における90分間平均相対湿度が40%以上85%以下である
前記<1>~<32>のいずれか1項に記載の冷却具。
【符号の説明】
【0144】
1 :冷却具
2 :介在シート
3 :非介在シート
10 :本体部
10A :第1パネル部
10B :第2パネル部
11 :内面シート
12 :外面シート
13 :上縁部
14 :下縁部
15 :上側スリット
16 :下側スリット
20 :冷却体
21 :湿度調整材
22 :保水層
23 :第一シート
24 :第二シート
30 :耳掛け部
31 :耳掛け部本体
31a :上辺
31b :下辺
31c :開放縁
31d :接合縁
32 :耳掛け孔
50 :接合部
100 :縦中心線
200 :包装体
図1
図2
図3
図4
図5
図6
【手続補正書】
【提出日】2024-09-11
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
着用者の顔の少なくとも目及び/又は目の周辺を覆う本体部と、前記本体部に設けられる冷却体とを備える冷却具であって、
前記冷却体は、水を保有する又は保有し得る保水層を有し、
前記冷却体は、着用時において、少なくとも一部が着用者の目及び/又は目の周辺と直接的又は間接的に接触するよう前記本体部に配置されており、
前記冷却具は、
着用時において、着用者の目及び/又は目の周辺と前記保水層との間に配置される介在シートと、
通気性を有する非介在シートと
を有し、
前記保水層は、前記介在シートと前記非介在シートとの間に配置されており、
前記冷却体は、前記保水層と前記非介在シートとの間に配置される湿度調整材を有し、
前記湿度調整材は、前記保水層側の面から水分を吸収し、該吸収した水分を前記非介在シート側の面から揮散させるように構成されている
冷却具。
【請求項2】
前記湿度調整材は、少なくとも前記保水層と対向する領域の透気度が、300秒/100mL以下である
請求項1に記載の冷却具。
【請求項3】
前記湿度調整材の水揮散率が50%以上である
請求項1又は2に記載の冷却具。
【請求項4】
前記冷却体は、
着用時において、着用者の肌側に向く第一シートと、
前記保水層及び前記湿度調整材を介して前記第一シートと対向するよう配置された第二シートと
を有し、
前記第一シートは、前記介在シートとして機能するように構成されており、
前記第二シートは、前記非介在シートとして機能するように構成されている
請求項1又は2に記載の冷却具。
【請求項5】
前記第二シートは、少なくとも前記湿度調整材と対向する領域の透気度が、300秒/100mL以下である
請求項4に記載の冷却具。
【請求項6】
前記第一シートは、難透湿性又は非透湿性を有している
請求項4に記載の冷却具。
【請求項7】
前記本体部は、
着用時において、着用者の肌側に向く内面シートと、
前記冷却体を介して前記内面シートと対向するよう配置された外面シートと
を有し、
前記内面シートは、前記介在シートとして機能するように構成されており、
前記外面シートは、前記非介在シートとして機能するように構成されている
請求項1又は2に記載の冷却具。
【請求項8】
前記本体部は、
該本体部を幅方向に二分する縦中心線と、
前記縦中心線を境とした幅方向の一方側を構成する第1パネル部と、
前記縦中心線を境とした幅方向の他方側を構成する第2パネル部と
を有しており、
前記冷却体は、前記第1パネル部と前記第2パネル部とにそれぞれ設けられる
請求項1又は2に記載の冷却具。
【請求項9】
前記保水層は、水の初期含有量が1cmあたり0.04mL以上0.40mL以下である
請求項1又は2に記載の冷却具。