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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024017107
(43)【公開日】2024-02-08
(54)【発明の名称】消化槽及び消化槽の保温方法
(51)【国際特許分類】
   C02F 11/04 20060101AFI20240201BHJP
   B09B 3/65 20220101ALI20240201BHJP
【FI】
C02F11/04 Z ZAB
B09B3/65
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022119533
(22)【出願日】2022-07-27
(71)【出願人】
【識別番号】000192590
【氏名又は名称】株式会社神鋼環境ソリューション
(74)【代理人】
【識別番号】110002734
【氏名又は名称】弁理士法人藤本パートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】井上 智行
(72)【発明者】
【氏名】福ケ迫 久仁衛
(72)【発明者】
【氏名】田中 克
(72)【発明者】
【氏名】山中 遼平
【テーマコード(参考)】
4D004
4D059
【Fターム(参考)】
4D004AA02
4D004CA18
4D004CB04
4D004CB43
4D059AA03
4D059BA11
4D059BA48
4D059BA56
4D059BJ03
4D059BJ06
(57)【要約】
【課題】本発明は、消化槽本体における堆積物の固着を抑制することができる消化槽及び消化槽の保温方法を提供することを課題とする。
【解決手段】内部に投入された有機性廃棄物を処理する消化槽本体を備え、前記消化槽本体の底部の少なくとも一部を内側から覆う保温部材を有する、消化槽。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に投入された有機性廃棄物を処理する消化槽本体を備え、
前記消化槽本体の底部の少なくとも一部を内側から覆う保温部材を有する、消化槽。
【請求項2】
前記消化槽本体の内部には、消化汚泥を排出するための引抜口が設けられており、
前記保温部材の上面が、前記引抜口に向かって高さが低くなるように下方傾斜している、請求項1に記載の消化槽。
【請求項3】
前記消化槽本体は、前記底部から立ち上がる側壁部を有し、
前記保温部材の外周縁が、前記側壁部に接するように配されている、請求項1又は2に記載の消化槽。
【請求項4】
前記保温部材が、前記側壁部に向かうにつれて高さ方向の厚みが大きくなるように構成されている、請求項3に記載の消化槽。
【請求項5】
消化槽の保温方法であって、
前記消化槽は、内部に投入された有機性廃棄物を処理する消化槽本体を備え、
前記消化槽本体の底部の少なくとも一部を内側から保温部材で覆う、消化槽の保温方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、消化槽及び消化槽の保温方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、消化槽は、下水汚泥などの有機性廃棄物を処理するために用いられている。通常、消化槽は、コンクリートで形成された基礎部と、該基礎部に設置され嫌気性細菌によって有機性廃棄物を処理する消化槽本体とを備えている。消化槽本体の内部の温度(内温)は、例えば35~60℃であり、より具体的には中温消化で35~40℃、高温消化で50~60℃である。これによって、嫌気性細菌により汚泥中の有機物が分解され、メタンと二酸化炭素とからなるバイオガスが発生する。バイオガスはメタンを含むため、燃料として活用することができる。
【0003】
また、消化槽本体の内温を安定した状態で維持するために、消化槽本体の保温性を高めることが試みられている。例えば、特許文献1に記載の消化槽は、消化槽本体の下に打設されたコンクリート基礎内に断熱構造体が設けられている。該断熱構造体は、複数の短管と、各短管の間に配された前記保温部材とを有する。また、短管は、鋼材から作製されている。かかる断熱構造体では、短管によって保温部材が汚泥の荷重でつぶれないようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第5806747号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、消化槽では、消化槽本体の底部に汚泥由来の堆積物が生じることがある。そして、かかる堆積物は、消化槽本体の底部などに固着し、固着に起因して消化槽の有効容積が低下し、バイオガスの発生量を低下させる原因となり得る。
【0006】
上記事情に鑑み、本発明は、消化槽本体における堆積物の固着を抑制することができる消化槽及び消化槽の保温方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る消化槽は、
内部に投入された有機性廃棄物を処理する消化槽本体を備え、
前記消化槽本体の底部の少なくとも一部を内側から覆う保温部材を有する。
【0008】
斯かる構成によれば、消化槽本体の底部の少なくとも一部を内側から保温部材が覆うため、消化槽本体における有機性廃棄物や処理した汚泥の接触面と底部との間に保温部材が配されることとなる。そして、かかる接触面では、保温部材によって温度の低下が抑制されるため、堆積物の固着が抑制される。
【0009】
また、本発明に係る消化槽は、
前記消化槽本体の内部には、消化汚泥を排出するための引抜口が設けられており、
前記保温部材の上面が、前記引抜口に向かって高さが低くなるように下方傾斜していてもよい。
【0010】
斯かる構成によれば、保温部材の上面が引抜口に向かって高さが低くなるように下方傾斜しているため、堆積物が引抜口に向かって移動し易くなり、該堆積物を引抜口から容易に排出することができる。また、堆積物が上記のように移動(流動)し易くなるため、前記接触面における堆積物の固着がさらに抑制される。
【0011】
また、本発明に係る消化槽は、
前記底部から立ち上がる側壁部を有し、
前記保温部材の外周縁が、前記側壁部に接するように配されていてもよい。
【0012】
斯かる構成によれば、前記接触面の外周領域における保温性が高められたものとなる。そして、堆積物は前記接触面の外周領域において生じ易いため、上記構成によれば、前記接触面の外周領域における堆積物の固着が抑制される。
【0013】
また、本発明に係る消化槽は、
前記保温部材が、前記側壁部に向かうにつれて高さ方向の厚みが大きくなるように構成されていてもよい。
【0014】
斯かる構成によれば、保温部材の厚みが底部の外周領域において大きくなるように構成されており、すなわち、前記接触面の外周領域における保温性がさらに高められたものとなる。よって、上記構成によれば、前記接触面の外周領域における堆積物の固着が抑制される。
【0015】
本発明に係る消化槽の保温方法では、前記消化槽本体の底部の少なくとも一部を内側から保温部材で覆う。
【0016】
斯かる構成によれば、該接触面における堆積物の固着が抑制される消化槽を構築することができる。また、上記構成の保温方法は、既に設置済みの消化槽にも適用可能であり、消化槽を新築することや槽形状を改造することなく、消化槽の保温性を改善させつつ消化槽における堆積物の固着を抑制できる。
【発明の効果】
【0017】
以上の通り、本発明によれば、消化槽本体における堆積物の固着を抑制することができる消化槽及び消化槽の保温方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】一実施形態に係る消化槽の概略図である。
図2】第1配管部と保温部材との配置の変形例を示す図である。
図3】第1配管部と保温部材との配置の別の変形例を示す図である。
図4】第1配管部と保温部材との配置のさらに別の変形例を示す図である。
図5】他の実施形態に係る消化槽の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1に示すように、本実施形態に係る消化槽1xは、コンクリートで形成された基礎部10と、基礎部10に設置され下水汚泥などの有機性廃棄物を処理する消化槽本体20と、消化汚泥を消化槽本体20から排出する排出部たる引抜装置30と、消化槽本体20の底部21を内側から覆う保温部材40と、消化槽本体20内の汚泥を撹拌する撹拌部50と、消化槽本体20の汚泥を加温する加温部60とを備えている。
【0020】
本実施形態の消化槽1xは、地山に形成された凹部Gに設けられている。凹部Gは、基礎部10を下方から支持するように形成された平面部G1と、基礎部10を囲繞するように形成された周壁部G2とを備えている。なお、凹部は、周壁部G2を備えていなくてもよい。
【0021】
本実施形態の基礎部10は、凹部Gへのコンクリートの打設によって形成されている。基礎部10は、鉄筋コンクリートで形成されており、すなわち、コンクリートと、該コンクリートに埋設された複数の鉄筋とを有する。凹部Gの下方には、基礎部10を下方から支持する複数の杭Pが埋め込まれている。杭Pは、コンクリートと、該コンクリートに埋設された長さ方向に延びる複数の鉄筋とで構成されている。各杭Pの先端部は、平面部G1から上方に突出し且つ基礎部10に埋設されている。すなわち、杭Pの先端部は、基礎部10のコンクリートと一体化されている。
【0022】
本実施形態の消化槽本体20は、鋼板製である。消化槽本体20は、円筒状に形成されており、基礎部10に接地された底部21と、底部21から立ち上がる側壁部22と、底部21に対向し且つ側壁部22の上端を閉塞する上壁部23とを有する。消化槽本体20の内部には、底部21と側壁部22と上壁部23とで画定される円柱状の内部空間が形成されている。なお、消化槽本体は、円筒状の他、例えば角筒状に形成されていてもよい。また、消化槽本体は、コンクリートで形成されていてもよい。また、底部21の外表面と基礎部10との間に、底部21の腐食を防止するためのアスファルトサンドが敷設されていてもよい。
【0023】
本実施形態の引抜装置30は、消化汚泥を消化槽本体20から槽外に排出するように機能する。本実施形態の引抜装置30は、消化槽本体20から消化汚泥を排出させるための引抜ポンプ31と、引抜ポンプ31に接続された第1配管部32とで構成されている。第1配管部32は、消化槽本体20の内部から消化槽本体20の外部に延びており、内部側の端部に消化汚泥を吸い込むための引抜口321を有する。本実施形態の第1配管部32は、引抜口321が消化槽本体20における底部21の中央部に対向するように設けられている。より具体的には、引抜口321は、その開口面が底面211に平行するように設けられている。
【0024】
保温部材40は、消化槽本体20の前記内部空間に配されている。本実施形態の保温部材40は、底面211にわたって配されており、消化槽本体20の底部21を内側から覆う保温層40Lを形成している。また、保温部材40は、消化槽本体20に投入された汚泥が接触する接触面をなしている。すなわち、保温層40Lは、汚泥の接触面をなす上面41を有する。これによって、本実施形態の消化槽本体20は、保温層40Lの上面41と、側壁部22と、上壁部23とで画定される汚泥収容空間Vを有するものとなる。
【0025】
本実施形態では、保温部材40は、その外周縁が側壁部22に接するように配されている。ここで、底面211において、側壁部22との接続端縁を含む領域であって側壁部22に近い側の領域を外側領域とし、前記外側領域よりも内側の領域を内側領域としたときに、保温部材40は、少なくとも前記外側領域を覆うように配されていることが好ましい。前記外側領域は、底面211の総面積の25%以上であることが好ましく、50%以上であることがより好ましい。
【0026】
ここで、図1は、消化槽本体20の断面を示し、より具体的には、底面211の中央を通る垂直面を切断面とする断面を示している。図1における断面図に示されているように、保温層40Lは、引抜口321から側壁部22に向かうにつれて厚み(上下方向の厚み)が大きくなるように形成されている。また、保温層40Lは、底面211の側壁部22との接続端縁を覆う部分において最も厚みが大きく、且つ、底面211の中央を覆う部分において最も厚みが小さくなるように形成されている。
【0027】
これによって、保温層40Lは、側壁部22から引抜口321に向かって高さが低くなるように下方傾斜する上面41を有するものとなっている。上面41は、最も下方に位置する中央を含む中央領域41aと、最も上方に位置する外周縁を含む外周領域41bとを有する。上面41は、前記外周縁における傾斜角度が最も大きくなるように形成されている。また、上面41は、前記外周縁から前記中央に向かうにつれて傾斜角度が小さくなるように形成されている。上面41の前記外周縁における傾斜角度は、5~45°であることが好ましく、15~30°であることがより好ましい。本実施形態の上面41は、曲面状である。また、前記断面において、上面41は、接線の水平面に対する傾斜角度が前記外周縁から前記中央に向かうにつれて小さくなるように形成されている。
【0028】
また、本実施形態の保温部材40は、第1配管部32を部分的に覆うように設けられている。これによって、第1配管部32の一部が保温層40Lを通るように配されている。具体的には、本実施形態の保温部材40は、第1配管部32の消化槽本体20内における基端部を少なくとも覆うように設けられている。これによって、外部環境の温度による影響を受け易い前記基端部における堆積物の固着が解消する。なお、前記保温部材は、前記第1配管部よりも下方に設けられていてもよい。
【0029】
保温部材40を構成する材料としては、消化槽本体20を構成する材料(本実施形態では鋼板)よりも熱伝導率が小さければよく、基礎部10におけるコンクリートよりも熱伝導率が小さいことが好ましい。具体的には、保温部材40を構成する材料の熱伝導率は、1.2W/m・Kよりも小さいことが好ましく、0.5W/m・Kよりも小さいことがより好ましい。保温部材40の材料としては、熱伝導率が0.02~0.03W/m・Kのポリスチレンフォーム又はポリウレタンフォームが好ましい。この他、保温部材40の材料は、ガラスウール、パーライト、パーライトモルタル、骨材(砂利)などであってもよい。
【0030】
保温部材40は、単一の材料で構成されていてもよい。また、保温部材40は、複数の材料の組み合わせで構成されていてもよい。例えば、保温部材40は、骨材と、パーライト又はパーライトモルタルとの組み合わせで構成されていることが好ましい。
【0031】
本実施形態の消化槽1xは、汚泥中の保温部材40の浮遊や位置ずれを防止するための固定部材を備えている。該固定部材としては、保温部材40から底部21又は側壁部22に埋設されるアンカーボルトなどの金具、保温部材40を底部21又は側壁部22に接着する接着剤が挙げられる。
【0032】
本実施形態の撹拌部50は、汚泥内の嫌気性微生物及び有機性廃棄物が均一になるように混合し、汚泥における熱の伝導を促すように機能する。撹拌部50は、上下方向に沿って延びる回転軸を有する軸部51と、軸部51を前記回転軸周りに回転させる駆動部52と、軸部51に固定され軸部51の回転に伴って回転する羽部53とを有する。
【0033】
本実施形態の撹拌部50では、軸部51は、底部21の中央部上方に配されている。羽部53は、上下方向に間隔を空けて配された第1羽部53a及び第2羽部53bで構成されている。すなわち、羽部53は、第1羽部53a及び第2羽部53bが2段配置されることによって構成されている。羽部53は、回転した場合、その回転面において汚泥を上方から下方に移動させるように構成されている。すなわち、撹拌部50は、汚泥収容空間Vの径方向中央部において保温層40Lの上面41に向かう汚泥の流れを生じさせることが可能である。そして、上面41に到達した汚泥は、上面41の延在方向に沿って流れて側壁部22に到達し、さらに、側壁部22に沿って上方へ流れることとなる。これによって、汚泥収容空間V内の汚泥が循環する。なお、羽部は、2段配置に限られず、例えば、1段のみであってもよく、複数段であってもよい。
【0034】
本実施形態の加温部60は、消化槽本体20内の汚泥の温度を消化に適した温度、例えば35~60℃であり、より具体的には中温消化で35~40℃、高温消化で50~60℃に維持するために設けられている。本実施形態の加温部60は、消化槽本体20の外部に設けられた熱交換部61を有し、消化槽本体20から一部の汚泥を取り出して熱交換部61で加温し且つ加温した一部の汚泥を消化槽本体20に戻すように構成されている。より具体的には、加温部60は、消化槽本体20から一部の汚泥を排出させ且つ熱交換部61へ移送するための第2配管部62と、加温処理した一部の汚泥を熱交換部61から消化槽本体20に移送するための第3配管部63とを有する。また、加温部60は、第2配管部62から第3配管部63にわたって汚泥を移動させるための循環ポンプ64を有する。
【0035】
本実施形態の消化槽1xによれば、消化槽本体20の底部21を内側から覆うように保温層40Lが配され、且つ、保温層40Lが汚泥の接触面たる上面41をなしていることによって、該接触面における温度の低下が抑制されるため、該接触面への堆積物の固着が抑制される。
【0036】
また、保温層40Lの上面41が側壁部22から引抜口321に向かって高さが低くなるように下方傾斜しているため、堆積物が引抜口321に向かって移動し易くなり、該堆積物を引抜口321から容易に排出することができる。また、堆積物が上面41を下方に向かって移動し易くなるため、上面41における堆積物の固着が抑制される。
【0037】
また、保温層40Lは、底面211の外周縁を覆う部分において最も厚みが大きく、すなわち、保温層40Lにおいては、外周領域41bにおいて最も保温性が高められている。これによって、上記のように汚泥が循環する消化槽本体20において、汚泥の滞留が生じ易い上面41と側壁部22との接続部分(角部)における堆積物の固着が抑制される。
【0038】
また、底面211を覆うように保温層40Lが形成されているため、消化槽本体20から基礎部10への放熱が抑制される。すなわち、基礎部10は、少なくとも消化槽本体20からの熱によっては温度変化を受けにくくなり、比較的温度が安定した状態で維持され得る。これによって、基礎部10における熱応力の発生が軽減され、基礎部10における鉄筋量(配筋量)を減らすことが可能となり、施工の手間やコスト、部材の削減につながる。
【0039】
次に、本発明の一実施形態に係る消化槽の保温方法について説明する。本実施形態では、既設の消化槽本体を保温する保温方法について例示する。
【0040】
本実施形態の消化槽の保温方法では、前記消化槽本体の前記底部を内側から保温部材で覆う保温工程を備える。
【0041】
前記保温工程では、前記底部における底面に保温部材による保温層を形成する。
【0042】
本実施形態の消化槽の保温方法によれば、新規で建設する消化槽本体だけでなく、既設の消化槽本体に対して上記のような機能(保温部材40を備える消化槽1xと同様の機能)を付与することができる。
【0043】
なお、本発明に係る消化槽及び消化槽の保温方法は、上記実施形態に限定されるものではない。また、本発明に係る消化槽及び消化槽の保温方法は、上記の作用効果によって限定されるものではない。本発明に係る消化槽及び消化槽の保温方法は、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の変更が可能である。
【0044】
例えば、上記実施形態では、上面41が曲面状に形成されているが、本発明はこれに限定されず、前記上面は、直線状に形成されていてもよい。
【0045】
また、上記実施形態では、引抜口321が底部21の中央部に対向するように配されているが、本発明はこれに限定されず、例えば、図2図4に示す変形例であってもよい。なお、各変形例において、図1の消化槽1xと同じ構成については同一の参照符号を付してその説明を省略する。
【0046】
図2の変形例では、引抜口321は、底部21の外周部に対向するように配されている。この場合、保温層40Lは、底面211における引抜口321から最も離れた位置で最も厚みが大きく形成され、且つ、底面211における引抜口321の対向位置において最も厚みが小さくなるように形成されていることが好ましい。また、保温層40Lの上面41は、引抜口321に向かって高さが低くなるように下方傾斜するように形成されていることが好ましい。
【0047】
図3の変形例では、図2と同様、引抜口321が底部21の外周部に対向するように配されている。この場合、保温層40Lは、底面211の中央部において最も厚みが大きくなるように形成され、且つ、底面211における引抜口321の対向位置において最も厚みが小さくなるように形成されていてもよい。また、保温層40Lの上面41は、引抜口321に向かって(底面211の中央部から外周部に向かって)高さが低くなるように下方傾斜していることが好ましい。
【0048】
図4の変形例では、消化槽本体20において、引抜装置30における第1配管部32が、消化槽1xと比較して底面211に近接するように配置されている。具体的には、図4の消化槽本体20では、第1配管部32は、その下端と底面211との間隔が50cm程度となるように配置されている。また、第1配管部32は、引抜口321の開口面が下方または水平を向くように配置され、且つ、消化槽本体20の内部側の端部が先端に向かうにつれて拡径している。この場合には、保温部材40は、第1配管部32の消化槽本体20の内部に位置する部分において、その基端部から50%以上の長さを覆うように設けられていることが好ましい。これによって、第1配管部32における汚泥循環の障害となり得る部分を少なくすることができる。
【0049】
また、本発明の消化槽は、図5に示す消化槽1yであってもよい。なお、消化槽1yにおいて、図1の消化槽1xと同じ構成については同一の参照符号を付してその説明を省略する。
【0050】
図5の消化槽1yでは、平坦に形成された底面211を有する消化槽本体20と、底面211を部分的に覆う保温部材40とを備えている。底面211は、保温部材40で覆われた被覆面211aと、保温部材40で覆われていない露出面211bとを有する。露出面211bは、汚泥の接触面となる。
【0051】
保温部材40は、底面211の少なくとも前記外側領域において保温層40Lを形成するように配されている。保温層40Lは、その内周部が撹拌部50の羽部53よりも径方向外方に配されるように形成されている。保温層40Lの上面41は、側壁部22から引抜口321に向かって高さが低くなるように下方傾斜している。上面41は、汚泥の接触面となる。
【0052】
上記構成によって、消化槽1yは、汚泥の前記接触面の外周領域における保温性が高められて堆積物の固着が十分に抑制され、より詳しくは、保温層40Lの上面41と側壁部22との接続部分における堆積物の固着が抑制される。
【0053】
また、汚泥の前記接触面が羽部53の下方においては平坦状であるため、回転での羽部53による撹拌によって、汚泥が前記接触面における中央部から外周部に向かって移動し易くなる。かかる観点から、前記保温層の前記上面は、前記内側領域において水平面に沿って形成された平坦領域(汚泥の接触面)と、前記外側領域において前記側壁部に向かうにつれて上方傾斜した傾斜領域とで構成されていてもよい。また、前記保温層は、底面211における羽部53の下方(羽部53の対向位置)を被覆し且つ高さ方向の厚みが一定の平坦状に形成された平坦部と、該平坦部から前記側壁部に向かって延び且つ前記側壁部に向かって高さ方向の厚みが大きくなるように形成された傾斜部とを有していてもよい。
【符号の説明】
【0054】
1x、1y:消化槽、10:基礎部、G:凹部、G1:平面部、G2:周壁部、P:杭、20:消化槽本体、21:底部、211:底面、211a:被覆面、211b:露出面、22:側壁部、23:上壁部、V:汚泥収容空間、30:引抜装置、31:引抜ポンプ、32:第1配管部、321:引抜口、40:保温部材、40L:保温層、41:上面、41a:中央領域、41b:外周領域、50:撹拌部、51:軸部、52:駆動部、53:羽部、53a:第1羽部、53b:第2羽部、60:加温部、61:熱交換部、62:第2配管部、63:第3配管部、64:循環ポンプ
図1
図2
図3
図4
図5