(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024171074
(43)【公開日】2024-12-11
(54)【発明の名称】微細藻類の回収方法
(51)【国際特許分類】
C02F 1/56 20230101AFI20241204BHJP
B01D 21/01 20060101ALI20241204BHJP
C12N 1/12 20060101ALN20241204BHJP
【FI】
C02F1/56 K
B01D21/01 106
B01D21/01 107A
C12N1/12 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023087951
(22)【出願日】2023-05-29
(71)【出願人】
【識別番号】000193508
【氏名又は名称】水道機工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】阿部 貴幸
【テーマコード(参考)】
4B065
4D015
【Fターム(参考)】
4B065AA83X
4B065BD21
4B065BD38
4B065BD50
4B065CA60
4D015BA02
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4D015DB31
4D015DB32
4D015DB33
4D015DC07
4D015DC08
4D015EA03
4D015EA07
4D015EA12
4D015EA32
(57)【要約】
【課題】微細藻類を、短時間、低コストで容易に濃縮分離することができる微細藻類の回収方法の提供。
【解決手段】微細藻類を含む液体から微細藻類を回収する方法であって、前記微細藻類を含む液体に天然物由来カチオン性凝集剤を添加し、撹拌する工程(A)と、前記工程(A)の後に、前記微細藻類を含む液体に天然物由来アニオン性凝集剤を添加し、撹拌する工程(B)と、前記微細藻類を回収する回収工程とを含む微細藻類の回収方法である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
微細藻類を含む液体から微細藻類を回収する方法であって、
前記微細藻類を含む液体に天然物由来カチオン性凝集剤を添加し、撹拌する工程(A)と、
前記工程(A)の後に、前記微細藻類を含む液体に天然物由来アニオン性凝集剤を添加し、撹拌する工程(B)と、
前記微細藻類を回収する回収工程とを含むことを特徴とする微細藻類の回収方法。
【請求項2】
前記工程(A)と、前記工程(B)との間に前記微細藻類を含む液体のpHを調整する工程を含まない請求項1に記載の微細藻類の回収方法。
【請求項3】
前記工程(A)の前に、前記微細藻類を含む液体に天然物由来アニオン性凝集剤を添加し、撹拌する工程(C)を行う請求項1から2のいずれかに記載の微細藻類の回収方法。
【請求項4】
前記工程(A)における撹拌が、第1の撹拌と、第2の撹拌とを行うものであり、前記第1の撹拌の撹拌速度が、前記第2の撹拌の撹拌速度よりも速い請求項3に記載の微細藻類の回収方法。
【請求項5】
前記天然物由来カチオン性凝集剤が、キトサン、オリゴグルコサミン、ポリリジン、カチオン化セルロース、及びカチオン化グァーガムからなる群から選択される1種類以上である請求項1から2のいずれかに記載の微細藻類の回収方法。
【請求項6】
前記天然物由来アニオン性凝集剤が、ガラクトマンナンと、前記ガラクトマンナン以外の多糖類とを含む粒子である請求項1から2のいずれかに記載の微細藻類の回収方法。
【請求項7】
前記ガラクトマンナンが、フェヌグリークガム、グァーガム、タラガム、及びローカストビーンガムからなる群から選択される1種類以上である請求項6に記載の微細藻類の回収方法。
【請求項8】
前記ガラクトマンナン以外の多糖類が、キサンタンガム及びカラギーナンの少なくともいずれかである請求項6に記載の微細藻類の回収方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、微細藻類の回収方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ボトリオコッカス、オーランチオキトリウム、ユーグレナ、ナンノクロロプシス等の微細藻類は、石油の代替燃料源として大きな期待が集まっている。一般的に、微細藻類はフィルターによる培地からの分離収穫ができないため、遠心分離装置を使い大きな電力コストをかけて濃縮している。そのため、濃縮コストの削減が大きな課題の1つとなっている。
【0003】
微細藻類の濃縮方法としては、遠心分離・膜フィルターが実用化されている他、泡分離・凝集剤などいろいろな方法が提案されており、また、複合的な処理も提案されている(例えば、非特許文献1参照)。
【0004】
液体中に分散している藻類を効率よく凝集分離させる方法として、藻類が分散しているpH2.0~4.0の液体にアルカリ性無機凝集剤を添加し、次いでカチオン性高分子凝集剤を添加することを含む方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
微細藻類を有効に利用することができる藻類含有組成物製造システムとして、微細藻類を培養液により培養させる培養手段と、キトサンを溶解液により溶解させる溶解手段と、前記培養手段で培養された微細藻類を含んだ培養液と前記溶解手段で溶解されたキトサンを含んだ溶解液とを、所定の速度勾配で攪拌させた後、前記所定の速度勾配未満の速度勾配で攪拌させることにより、微細藻類とキトサンとのフロックを形成させる攪拌手段と、前記攪拌手段により形成されたフロックを回収する回収手段と、前記回収手段により回収されなかった溶液を培養液として前記培養手段に返送する返送手段と、前記回収手段により回収されたフロックを構成する微細藻類から油脂を抽出するとともに、油脂を抽出された後の微細藻類の抽出残渣と、キトサンと、を含んだ藻類含有組成物を回収する油脂抽出手段と、を備える藻類含有組成物製造システムが提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2011-212624号公報
【特許文献2】特開2014-14284号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】山村寛、膜を用いた微細藻類の濃縮・回収技術、膜(MEMBRANE)、Vol. 41、No. 4、142-149、2016
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
遠心分離は、濃縮時間が短く大量処理に向いているので、多くの使用例がある。しかし、潰れなどにより微細藻類の品質劣化やロスが生じている。
膜分離は、膜穴のサイズ微細化や構造の改良、クロスフロー方式と振動法の組み合わせなどで、剪断力を抑制した濾過が可能になっている。いずれも高濃度での濃縮では微細藻類を傷めたり、脱水効率が低下するなどの問題点を抱えている。
微細藻類の抽出残渣は、タンパク質、色素、ビタミン類など、人や動植物に対して有用な成分を含んでいる。特許文献1の技術では、無機凝集剤や石油由来の高分子凝集剤を使用するため、抽出残渣の有効利用を考慮した技術ではない。
特許文献2の技術では、キトサンを凝集剤として使用しているが、形成されるフロックサイズは小さく凝集沈殿に時間が掛かる。また、キトサンはpH5以下の酸性領域でカチオン性を示し凝集効果を発揮するため、pH6~8程度の中性領域ではキトサン単独での凝集は困難である。例えば、海水を利用して培養されるナンノクロロプシスの培養液は、pH6.2の中性であり、キトサンを添加しても微細藻類の凝集反応は見られず、キトサン単独での濃縮は困難である。
したがって、微細藻類を、短時間、低コストで容易に濃縮分離することができる技術の開発が強く求められているのが現状である。
【0009】
本発明は、従来における前記諸問題を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。即ち、本発明は、微細藻類を、短時間、低コストで容易に濃縮分離することができる微細藻類の回収方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、鋭意検討を行った結果、微細藻類を含む液体に天然物由来カチオン性凝集剤を添加し、撹拌する工程(A)と、前記工程(A)の後に、前記微細藻類を含む液体に天然物由来アニオン性凝集剤を添加し、撹拌する工程(B)とを行うことで、微細藻類を、短時間、低コストで容易に濃縮分離することができることを知見した。
【0011】
前記課題を解決するための手段としては、以下の通りである。即ち、
<1> 微細藻類を含む液体から微細藻類を回収する方法であって、
前記微細藻類を含む液体に天然物由来カチオン性凝集剤を添加し、撹拌する工程(A)と、
前記工程(A)の後に、前記微細藻類を含む液体に天然物由来アニオン性凝集剤を添加し、撹拌する工程(B)と、
前記微細藻類を回収する回収工程とを含むことを特徴とする微細藻類の回収方法である。
<2> 前記工程(A)と、前記工程(B)との間に前記微細藻類を含む液体のpHを調整する工程を含まない前記<1>に記載の微細藻類の回収方法である。
<3> 前記工程(A)の前に、前記微細藻類を含む液体に天然物由来アニオン性凝集剤を添加し、撹拌する工程(C)を行う前記<1>から<2>のいずれかに記載の微細藻類の回収方法である。
<4> 前記工程(A)における撹拌が、第1の撹拌と、第2の撹拌とを行うものであり、前記第1の撹拌の撹拌速度が、前記第2の撹拌の撹拌速度よりも速い前記<1>から<3>のいずれかに記載の微細藻類の回収方法である。
<5> 前記天然物由来カチオン性凝集剤が、キトサン、オリゴグルコサミン、ポリリジン、カチオン化セルロース、及びカチオン化グァーガムからなる群から選択される1種類以上である前記<1>から<4>のいずれかに記載の微細藻類の回収方法である。
<6> 前記天然物由来アニオン性凝集剤が、ガラクトマンナンと、前記ガラクトマンナン以外の多糖類とを含む粒子である前記<1>から<5>のいずれかに記載の微細藻類の回収方法である。
<7> 前記ガラクトマンナンが、フェヌグリークガム、グァーガム、タラガム、及びローカストビーンガムからなる群から選択される1種類以上である前記<6>に記載の微細藻類の回収方法である。
<8> 前記ガラクトマンナン以外の多糖類が、キサンタンガム及びカラギーナンの少なくともいずれかである前記<6>に記載の微細藻類の回収方法である。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、従来における前記諸問題を解決し、前記目的を達成することができ、微細藻類を、短時間、低コストで容易に濃縮分離することができる微細藻類の回収方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
(微細藻類の回収方法)
本発明の微細藻類の回収方法は、微細藻類を含む液体から微細藻類を回収する方法であって、工程(A)と、工程(B)と、回収工程とを少なくとも含み、必要に応じてさらにその他の工程を含む。
【0014】
<工程(A)>
前記工程(A)は、微細藻類を含む液体に天然物由来カチオン性凝集剤を添加し、撹拌する工程である。
【0015】
-微細藻類を含む液体-
本発明において、「微細藻類」とは、淡水中又は海水中に生息する微細な藻類のことをいう。
前記微細藻類の具体例としては、シアノバクテリア、緑藻及びトレボキシア、プラシノ藻(緑色藻類)、原始紅藻類、珪藻、円石藻、渦べん毛藻、真眼点藻、黄金色藻、ユーグレナなどが挙げられる。
より具体的には、ボトリオコッカス(Botryococcus)属に属する藻類、オーランチキトリウム(Aurantiochytrium)属に属する藻類、ナンノクロロプシス(Nannochloropsis)属に属する藻類、シュードコリシスチス(Pseudochoricystis)属に属する藻類、コリシスチス(Choricystis)属に属する藻類、クラミドモナス(Chlamydomonas)属に属する藻類、シアニディオシゾン(Cyanidioschyzon)属に属する藻類、シアニジウム(Cyanidium)属に属する藻類などが挙げられる。
これらは、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0016】
前記微細藻類を含む液体における微細藻類の濃度としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、0.1~1,000mg/Lなどが挙げられる。前記微細藻類の濃度は、MLSS(下水処理等に用いられる活性汚泥法のばっ気槽内混合液中の浮遊物質)の濃度を指標として用いることができる。前記微細藻類の濃度は、例えば、ガラス繊維ろ紙法(JIS-K-0102)により測定することができる。
【0017】
前記微細藻類を含む液体の濁度としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、0.1~1,000度(混合ポリスチレン濁度)などが挙げられる。
前記微細藻類を含む液体の濁度は、日本電色工業(株)製のWA7700により測定することができる。
【0018】
前記微細藻類を含む液体における微細藻類としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、培養された微細藻類、微細藻類が産生した成分を抽出された後の抽出残渣の微細藻類などが挙げられる。
【0019】
前記微細藻類を含む液体としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記微細藻類を培養した培養液、前記微細藻類が産生した成分を抽出された後の抽出残渣を含む液体などが挙げられる。
【0020】
前記微細藻類を含む液体のpHとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0021】
-天然物由来カチオン性凝集剤-
前記天然物由来カチオン性凝集剤としては、天然物由来のものであれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、天然物由来ポリマーであることが好ましい。
【0022】
前記天然物由来ポリマーとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、キトサン、オリゴグルコサミン(「キトサンオリゴ糖」と称することもある。)、ポリリジン、カチオン化セルロース、カチオン化グァーガム、カチオン化澱粉などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記天然物由来カチオン性凝集剤は、キトサン、オリゴグルコサミン、ポリリジン、カチオン化セルロース、及びカチオン化グァーガムからなる群から選択される1種類以上であることが好ましい。
【0023】
前記天然物由来カチオン性凝集剤は、市販品を用いてもよいし、公知の方法により調製したものを用いてもよい。
【0024】
前記工程(A)に用いる前記天然物由来カチオン性凝集剤の量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記微細藻類を含む液体1,000質量部に対して、0.005~0.5質量部とすることができる。
【0025】
-撹拌-
前記工程(A)における撹拌の方法、条件としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。例えば、急速撹拌により撹拌する方法、急速撹拌を行った後に緩速撹拌により撹拌する方法などが挙げられる。
【0026】
前記急速撹拌によると、前記微細藻類を含む液体に含まれる微細藻類と、前記天然物由来カチオン性凝集剤とを均一に混合させることができる。
前記急速撹拌の撹拌速度(回転数)としては、前記微細藻類を含む液体に含まれる微細藻類と、前記天然物由来カチオン性凝集剤とを均一に混合させることができれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、100~250rpmとすることができる。
前記急速撹拌の時間としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記微細藻類を含む液体に含まれる微細藻類と、前記天然物由来カチオン性凝集剤とが均一になるまで撹拌することが好ましい。
【0027】
前記緩速撹拌によると、前記微細藻類を含む液体に含まれる微細藻類と、前記天然物由来カチオン性凝集剤との接触を促し、前記微細藻類と、前記天然物由来カチオン性凝集剤との凝集物を形成させることができる。
前記緩速撹拌の撹拌速度(回転数)としては、例えば、G値(単位時間単位体積あたりの仕事量Pから前記微細藻類を含む液体の粘性係数μを除した値の平方根、日本水道協会水道施設設計指針2000、P188)が、前記急速撹拌よりも低エネルギーになるよう設定することができる。例えば、10~100rpmとすることができる。
前記緩速撹拌の時間としては、特に制限はなく、凝集物の大きさなどに応じて適宜選択することができる。
【0028】
前記工程(A)における撹拌は、第1の撹拌と、第2の撹拌とを行うものであり、前記第1の撹拌の撹拌速度が、前記第2の撹拌の撹拌速度よりも速いことが好ましい。即ち、第1の撹拌として急速撹拌を行い、その後第2の撹拌として緩速撹拌を行うことが好ましい。
【0029】
<工程(B)>
前記工程(B)は、前記工程(A)の後に、前記微細藻類を含む液体に天然物由来アニオン性凝集剤を添加し、撹拌する工程である。
【0030】
-天然物由来アニオン性凝集剤-
前記天然物由来アニオン性凝集剤としては、天然物由来のものであれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、ガラクトマンナンと、前記ガラクトマンナン以外の多糖類とを含む粒子(「顆粒」と称することもある。)であることが好ましい。前記ガラクトマンナンと、前記ガラクトマンナン以外の多糖類とを含む粒子は、水への溶解時に溶解水中に分散されやすく、ダマ(ままこ)が発生しづらい。また、前記ガラクトマンナンと、前記ガラクトマンナン以外の多糖類との組合せの相乗効果により多糖類単体よりも高粘度となり、天然物由来カチオン性凝集剤と併用することで、高い凝集能力を発揮することができる。
【0031】
前記ガラクトマンナンと、前記ガラクトマンナン以外の多糖類とを含む粒子は、ガラクトマンナンと、前記ガラクトマンナン以外の多糖類とを少なくとも含有し、更に必要に応じて、その他の成分を含有する。前記ガラクトマンナンと、前記ガラクトマンナン以外の多糖類とを含む粒子は、前記ガラクトマンナンと、前記ガラクトマンナン以外の多糖類とを含有する混合物の粒子である。
【0032】
[ガラクトマンナン]
前記ガラクトマンナンは、一般的に、天然物に由来する。
前記ガラクトマンナンは、マンノースからなる直線状主鎖〔β-(1-4)-D-マンノピラノース〕にガラクトース〔α-D-ガラクトピラノース〕がα-(1-6)-結合した多糖類である。
【0033】
前記ガラクトマンナンとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、フェヌグリークガム、グァーガム、タラガム、ローカストビーンガム、セスバニアガム、カシアガムなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記ガラクトマンナンは、フェヌグリークガム、グァーガム、タラガム、及びローカストビーンガムからなる群から選択される1種類以上であることが好ましい。
【0034】
前記フェヌグリークガムは、フェヌグリーク種子由来のガラクトマンナンである。
前記グァーガムは、グァー豆種子由来のガラクトマンナンである。
前記タラガムは、タラ種子由来のガラクトマンナンである。
前記ローカストビーンガムは、イナゴマメ種子由来のガラクトマンナンである。
前記セスバニアガムは、セスバニア種子由来のガラクトマンナンである。
前記カシアガムは、エビスグサの種子由来のガラクトマンナンである。
【0035】
前記ガラクトマンナンの分子量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0036】
前記ガラクトマンナンにおける構成成分としてのマンノースとガラクトースとのモル比率(マンノース:ガラクトース)としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、4.5:1~1:1が好ましく、4:1~2:1がより好ましい。
なお、下記に各種ガラクトマンナンにおけるモル比率の一例を示す。
・フェヌグリークガム
マンノース:ガラクトース=1:1(モル比率)
・グァーガム
マンノース:ガラクトース=2:1(モル比率)
・タラガム
マンノース:ガラクトース=3:1(モル比率)
・ローカストビーンガム
マンノース:ガラクトース=4:1(モル比率)
・カシアガム
マンノース:ガラクトース=5:1(モル比率)
【0037】
[ガラクトマンナン以外の多糖類]
前記ガラクトマンナン以外の多糖類は、一般的に、天然物に由来する。
前記ガラクトマンナン以外の多糖類としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、キサンタンガム、カラギーナン、カルボキシメチルセルロースなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記ガラクトマンナン以外の多糖類は、キサンタンガム及びカラギーナンの少なくともいずれかであることが好ましい。
【0038】
前記キサンタンガムは、グルコース2分子、マンノース2分子、グルクロン酸の繰り返し単位からなる。前記キサンタンガムには、カリウム塩、ナトリウム塩、カルシウム塩も含まれる。前記キサンタンガムは、一般的に、トウモロコシなどの澱粉を細菌Xanthomonas campestrisにより発酵させて作られる。
【0039】
前記カラギーナンは、直鎖含硫黄多糖類の一種で、D-ガラクトース(または、3,6-アンヒドロ-D-ガラクトース)と硫酸から構成される陰イオン性高分子化合物である。前記カラギーナンは、一般的に、紅藻類をアルカリ抽出することにより得られる。
【0040】
前記ガラクトマンナン以外の多糖類の分子量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0041】
前記ガラクトマンナンと、前記ガラクトマンナン以外の多糖類とを含む粒子における、前記ガラクトマンナンと、前記ガラクトマンナン以外の多糖類との質量比率(ガラクトマンナン:ガラクトマンナン以外の多糖類)としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、0.1:99.9~99.9:0.1が好ましく、0.5:99.5~99.5:0.5がより好ましく、1:99~99:1がさらにより好ましく、10:90~90:10が特に好ましい。
【0042】
前記ガラクトマンナンと、前記ガラクトマンナン以外の多糖類とを含む粒子におけるその他の成分としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0043】
<嵩密度>
前記天然物由来アニオン性凝集剤の嵩密度としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、0.50g/cm3以上1.00g/cm3以下が好ましく、0.60g/cm3以上0.90g/cm3以下がより好ましい。
前記嵩密度が、0.50g/cm3未満であると、前記微細藻類を含む液体に前記天然物由来アニオン性凝集剤を添加した際に、前記天然物由来アニオン性凝集剤が浮きやすくなり、分散性が劣る結果、前記微細藻類を含む液体中に前記天然物由来アニオン性凝集剤の塊ができ、取り扱いにくくなることがある。
前記嵩密度が、1.00g/cm3を超えると、前記微細藻類を含む液体に前記天然物由来アニオン性凝集剤を添加した際に、前記天然物由来アニオン性凝集剤が沈み、分散性が劣る結果、前記微細藻類を含む液体中に前記天然物由来アニオン性凝集剤の塊ができ、取り扱いにくくなることがある。
ここでの「塊」とは、粉を水などに混ぜたとき、十分に分散しないで粉末のまま固まった部分を指す。日本語では、継粉(ままこ)又はダマともいう。
【0044】
前記嵩密度は、ゆるみ嵩密度である。
前記嵩密度は、粉体特性評価装置(ホソカワミクロン社製パウダーテスターPT-X)を用いて測定することができる。測定は、装置の説明書に準じて行う。
【0045】
<粒子径D50>
前記天然物由来アニオン性凝集剤の粒子径D50としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、250μm以上850μm以下が好ましく、300μm以上800μm以下がより好ましい。
前記粒子径D50が、250μm未満であると、前記微細藻類を含む液体に前記天然物由来アニオン性凝集剤を添加した際に、前記天然物由来アニオン性凝集剤が浮きやすくなり、分散性が劣る結果、前記微細藻類を含む液体中に前記天然物由来アニオン性凝集剤の塊ができ、取り扱いにくくなることがある。
前記粒子径D50が、850μmを超えると、前記天然物由来アニオン性凝集剤の流動性が悪くなりホッパー内でブリッジ又はラットホールが発生しやすくなる。また粒子径が大きくなると前記天然物由来アニオン性凝集剤を水に溶解する際に溶解に長い時間が必要になる。
前記粒子径D50は、メディアン径であり、頻度の累積が50%になる粒子径を指す。
【0046】
<粒子径D10>
前記天然物由来アニオン性凝集剤の粒子径D10としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、150μm以上が好ましく、200μm以上がより好ましい。
前記粒子径D10が、150μm未満であると、微粉が多くなり、前記微細藻類を含む液体に前記天然物由来アニオン性凝集剤を添加した際に、前記天然物由来アニオン性凝集剤が浮きやすくなり、分散性が劣る結果、前記微細藻類を含む液体中に前記天然物由来アニオン性凝集剤の塊ができ、取り扱いにくくなることがある。
前記粒子径D10は、頻度の累積が10%になる粒子径を指す。
【0047】
なお、通常、前記粒子径D10は、前記粒子径D50よりも小さい。前記粒子径D50と、前記粒子径D10との差(D50-D10)としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、50μm以上300μm以下が好ましく、100μm以上200μm以下がより好ましい。
【0048】
前記粒子径D50及び前記粒子径D10は、散乱式粒子径分布測定装置(HORIBA製レーザ回折/散乱式粒子径分布測定装置LA-950V2+乾式測定ユニット)を用いて測定することができる。測定は、装置の説明書に準じて行う。
【0049】
前記天然物由来アニオン性凝集剤は、市販品を用いてもよいし、公知の方法により調製したものを用いてもよい。
【0050】
前記ガラクトマンナンと、前記ガラクトマンナン以外の多糖類とを含む粒子は、例えば、混練物作製工程と、造粒工程と、乾燥工程と、解砕工程と、分級工程とを少なくとも含み、更に必要に応じて、その他の工程を含む方法により調製することができる。
【0051】
[混練物作製工程]
前記混練物作製工程としては、前記ガラクトマンナンと、前記ガラクトマンナン以外の多糖類と、水とを混練して混練物を得る工程であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0052】
前記混練物作製工程においては、前記ガラクトマンナンと、前記ガラクトマンナン以外の多糖類と、水とを一度に混合して得られる混合物を練って混練物を得てもよい。
また、前記混練物作製工程においては、前記ガラクトマンナンと、前記ガラクトマンナン以外の多糖類とを混合して混合物を得た後に、前記混合物に水を加え、その後、水を加えた前記混合物を練って混練物を得てもよい。
前記混練物作製工程としては、前記ガラクトマンナンと、前記ガラクトマンナン以外の多糖類とを混合して混合物を得た後に、前記混合物に水を加え、その後、水を加えた前記混合物を練って混練物を得ることが、所望の粒子径及び嵩密度の顆粒物を得やすい点から好ましい。
【0053】
前記混練物作製工程における、前記ガラクトマンナン及び前記ガラクトマンナン以外の多糖類の合計に対する水の使用量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、5質量%以上250質量%以下が好ましく、10質量%以上100質量%以下がより好ましく、10質量%以上60質量%以下が特に好ましい。前記使用量が特に好ましい範囲であると、粒子径及び嵩密度を調整しやすい点で有利である。
【0054】
[造粒工程]
前記造粒工程は、前記混練物を造粒して造粒物を得る工程であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
混練物を造粒する方法としては、押出造粒方式、攪拌造粒方式、シート化造粒方式などが挙げられる。
【0055】
ここで、押出造粒とは、前記混練物の湿塊を小孔から円柱状に押し出して造粒する方法である。
攪拌造粒とは、前記混練物を容器に入れ攪拌しながら液体の結合剤を添加して粒子を凝集させて造粒する方法である。
シート化造粒とは、乾式造粒の一種で、粉体を2つのローラ間で押し潰して原材料をシート状にした後に粉砕して造粒する方法である。
【0056】
例えば、前記混練物作製工程における水分量、及び前記造粒工程における造粒条件を適宜調整することで、製造される前記天然物由来アニオン性凝集剤を所望の嵩密度に調整することができる。
【0057】
[乾燥工程]
前記乾燥工程としては、前記造粒物を乾燥させて乾燥物を得る工程であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
前記乾燥物における水分量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、15質量%以下であることが好ましい。
【0058】
前記乾燥工程は、例えば、振動流動層乾燥機、熱風乾燥機などにより行うことができる。
【0059】
前記乾燥工程を行うことで、続く解砕工程において、解砕がしやすくなり、高生産性となる。
【0060】
[解砕工程]
前記解砕工程としては、前記乾燥物を解砕して解砕物を得る工程であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0061】
前記解砕工程では、例えば、粉砕機などにより行うことができる。
前記粉砕機としては、例えば、圧縮粉砕機、せん断粉砕機、衝撃粉砕機、ボール媒体粉砕機、気流粉砕機などが挙げられる。
【0062】
[分級工程]
前記分級工程としては、前記解砕物を分級する工程であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0063】
前記分級工程は、例えば、篩を用いた篩い分けや、重力分級機、遠心分級機(サイクロン式分級機)、慣性分級機などを用いて行うことができる。
【0064】
例えば、前記解砕工程の解砕条件、及び前記分級工程の分級条件を適宜調整することで、製造される前記天然物由来アニオン性凝集剤を所望の粒子径、及び粒度分布に調整することができる。
【0065】
前記工程(B)に用いる前記天然物由来アニオン性凝集剤の量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記微細藻類を含む液体1,000質量部に対して、0.001~0.1質量部とすることができる。
【0066】
-撹拌-
前記工程(B)における撹拌の方法、条件としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、急速撹拌を行った後に緩速撹拌により撹拌する方法が好ましい。
【0067】
前記急速撹拌によると、前記微細藻類と前記天然物由来カチオン性凝集剤との凝集物と、前記天然物由来アニオン性凝集剤とを均一に混合させることができる。
前記急速撹拌の撹拌速度(回転数)としては、前記微細藻類と前記天然物由来カチオン性凝集剤との凝集物と、前記天然物由来アニオン性凝集剤とを均一に混合させることができれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、100~250rpmとすることができる。
前記急速撹拌の時間としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記微細藻類と前記天然物由来カチオン性凝集剤との凝集物と、前記天然物由来アニオン性凝集剤とが均一になるまで撹拌することが好ましい。
【0068】
前記緩速撹拌によると、前記微細藻類と前記天然物由来カチオン性凝集剤との凝集物と、前記天然物由来アニオン性凝集剤との接触を促し、前記微細藻類と前記天然物由来カチオン性凝集剤との凝集物と、前記天然物由来アニオン性凝集剤との凝集物を形成させることができる。その結果、後述する回収工程において、微細藻類を分離させ易くすることができる。
前記緩速撹拌の撹拌速度(回転数)としては、例えば、G値(単位時間単位体積あたりの仕事量Pから前記微細藻類を含む液体の粘性係数μを除した値の平方根、日本水道協会水道施設設計指針2000、P188)が、前記急速撹拌よりも低エネルギーになるよう設定することができる。例えば、10~100rpmとすることができる。
前記緩速撹拌の時間としては、特に制限はなく、凝集物の大きさなどに応じて適宜選択することができる。
【0069】
<回収工程>
前記回収工程は、前記微細藻類を回収する工程である。
前記回収の方法としては、特に制限はなく、公知の方法を適宜選択することができ、例えば、前記微細藻類を凝集沈殿させて回収する方法、前記微細藻類を浮上分離させて回収する方法、前記微細藻類を含む液体をフィルターろ過して回収する方法などが挙げられる。
【0070】
<その他の工程>
前記その他の工程としては、本発明の効果を損なわない限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0071】
-工程(C)-
本発明の方法は、前記その他の工程として、前記工程(A)の前に、前記微細藻類を含む液体に天然物由来アニオン性凝集剤を添加し、撹拌する工程(C)を含むことが好ましい。
【0072】
前記工程(C)における天然物由来アニオン性凝集剤は、上記した工程(B)における天然物由来アニオン性凝集剤と同様のものを用いることができる。前記天然物由来アニオン性凝集剤は、工程(B)と工程(C)とで同一のものを用いてもよいし、異なるものを用いてもよい。
【0073】
前記工程(C)に用いる前記天然物由来アニオン性凝集剤の量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記微細藻類を含む液体1,000質量部に対して、0.001~0.1質量部とすることができる。
【0074】
-撹拌-
前記工程(C)における撹拌の方法、条件としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、急速撹拌により撹拌する方法などが挙げられる。
【0075】
前記急速撹拌によると、前記微細藻類を含む液体に含まれる微細藻類と、前記天然物由来アニオン性凝集剤とを均一に混合させることができる。
前記急速撹拌の撹拌速度(回転数)としては、前記微細藻類を含む液体に含まれる微細藻類と、前記天然物由来アニオン性凝集剤とを均一に混合させることができれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、100~250rpmとすることができる。
前記急速撹拌の時間としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記微細藻類を含む液体に含まれる微細藻類と、前記天然物由来アニオン性凝集剤とが均一になるまで撹拌することが好ましい。
【0076】
本発明の微細藻類の回収方法は、前記工程(A)と、前記工程(B)との間に前記微細藻類を含む液体のpHを調整する工程を行わなくても、前記微細藻類を凝集させ、回収することができる。そのため、前記工程(A)と、前記工程(B)との間に前記微細藻類を含む液体のpHを調整する工程を含まないことが好ましい。
【0077】
本発明の微細藻類の回収方法は、従来の浄水設備などを用いて実施することができる。
【0078】
本発明の微細藻類の回収方法によれば、大きな電力コストを掛けずとも短時間で容易に微細藻類を濃縮分離できる。また、本発明の微細藻類の回収方法で用いる前記天然物由来カチオン性凝集剤及び前記天然物由来アニオン性凝集剤は、全て天然物由来のものから構成されており、本発明の方法では、原材料に鉄・アルミ等の金属や石油由来の物質を全く使用する必要がない。
【実施例0079】
以下、本発明の実施例等を説明するが、本発明は、これらの実施例等に何ら限定されるものではない。
【0080】
(実施例1)
微細藻類を含む液体として、ナンノクロロプシス培養液(原水)を用いた。前記ナンノクロロプシス培養液(原水)の濃度及び濁度は、以下のとおりであった。
・ 濃度 : 302mg/L
前記濃度は、ガラス繊維ろ紙法(JIS-K-0102)で測定した。なお、ここでは、微細藻類の濃度の指標として、MLSS(下水処理等に用いられる活性汚泥法のばっ気槽内混合液中の浮遊物質)の濃度を用いた。
・ 濁度 : 818度
前記濁度は、積分球式光電光度法、日本電色工業(株)製のWA7700で測定した。
【0081】
ナンノクロロプシスの回収は、以下のようにして行った。
ビーカーに、前記ナンノクロロプシス培養液(原水)を300mL取り、pHの調整を行わずに天然物由来カチオン性凝集剤(キトサン(コーヨーキトサンSK-10(商品名)、甲陽ケミカル社製))を50mg/L添加して150rpmで1分間急速撹拌した。
次いで、pHの調整を行わずに天然物由来アニオン性凝集剤を50mg/L添加して150rpmで1分間急速撹拌した後、40rpmで3分間緩速撹拌したところ、糸状の凝集物が生成し、ビーカーの底に沈殿した。
10分間静置後の培養液の上澄みの濃度は129mg/Lであり、ナンノクロロプシスの57%が沈殿した。
【0082】
実施例1における前記天然物由来アニオン性凝集剤は、下記のようにして調製した顆粒状のものを用いた。
ガラクトマンナン(グァーガム、商品名:グリンステッドグアー175、ダニスコ社製)80質量部と、前記ガラクトマンナン以外の多糖類(キサンタンガム、商品名:ケルザン、CPケルコ社製)20質量部と、水40質量部とを混練した後に、押出造粒機を用いて押出造粒(回転数:30rpm、スクリーン径φ0.8mm)を行い、更に乾燥機を用いた乾燥(120℃、30分)、解砕機を用いた解砕(1000rpm、スクリーン径φ5mm)及び分級機を用いた分級(篩目開き:850μm)を行って、顆粒状の天然物由来アニオン性凝集剤を得た。
押出造粒機としては、菊水製作所製のバスケット式湿式造粒機を用いた。
乾燥機としては、ゴダイエンジニアリング社製のコンベア型乾燥機を用いた。
解砕機としては、オリエント機械社製のオリエントミルを用いた。
分級機としては、ダルトン社製の振動式分級機を用いた。
【0083】
上記で調製した顆粒状の天然物由来アニオン性凝集剤の嵩密度、粒子径(D50)及び(D10)は、以下のとおりであった。
・ 嵩密度(ゆるみ嵩密度) : 0.70g/cm3
前記嵩密度は、100ccのステンレス製コップに測定試料を静かに入れ、粉体特性評価装置(ホソカワミクロン社製パウダーテスターPT-X)を用いて測定した。測定は、装置の説明書に準じて行った。
・ 粒子径(D50)及び(D10) : D50 585μm、D10 425μm
前記粒子径D50及び粒子径D10は、散乱式粒子径分布測定装置(HORIBA製レーザ回折/散乱式粒子径分布測定装置LA-950V2+乾式測定ユニット)を用いて測定した。測定は、装置の説明書に準じて行った。
【0084】
(実施例2)
微細藻類を含む液体として、実施例1と同じナンノクロロプシス培養液(原水)を用いた。
【0085】
ナンノクロロプシスの回収は、以下のようにして行った。
ビーカーに、前記ナンノクロロプシス培養液(原水)を300mL取り、pHの調整を行わずに天然物由来アニオン性凝集剤を30mg/L添加して150rpmで1分間急速撹拌した。
次いで、pHの調整を行わずに天然物由来カチオン性凝集剤(キトサン(コーヨーキトサンSK-10(商品名)、甲陽ケミカル社製))を30mg/L添加して150rpmで1分間急速撹拌した。
その後、pHの調整を行わずに天然物由来アニオン性凝集剤を50mg/L添加して150rpmで1分間急速撹拌し、次いで40rpmで3分間緩速撹拌したところ、マイクロフロックが生成した。
10分間静置後の培養液の上澄みの濃度は56.7mg/Lであり、ナンノクロロプシスの81%が沈殿した。また、16時間静置後では、培養液の上澄み濃度は13.3mg/Lでありナンノクロロプシスの99%が沈殿した。
16時間静置後に培養液300mLから約15mLの沈殿物を回収した。培養液の濃縮倍率は20倍であった。
なお、実施例2における天然物由来アニオン性凝集剤は、実施例1と同じものを使用した。
【0086】
(実施例3)
微細藻類を含む液体として、実施例1と同じナンノクロロプシス培養液(原水)を用いた。
【0087】
ナンノクロロプシスの回収は、以下のようにして行った。
ビーカーに、前記ナンノクロロプシス培養液(原水)を300mL取り、pHの調整を行わずに天然物由来アニオン性凝集剤を40mg/L添加して150rpmで1分間急速撹拌した。
次いで、pHの調整を行わずに天然物由来カチオン性凝集剤(キトサン(コーヨーキトサンSK-10(商品名)、甲陽ケミカル社製))を40mg/L添加して150rpmで1分間急速撹拌した後、40rpmで3分間緩速撹拌した。
その後、pHの調整を行わずに天然物由来アニオン性凝集剤を50mg/L添加して150rpmで1分間急速撹拌し、次いで40rpmで3分間緩速撹拌したところ、ひも状の巨大フロックが生成し、ビーカーの底に沈殿した。
10分間静置後の培養液の上澄みの濃度は16.1mg/Lであり、ナンノクロロプシスの95%が沈殿した。この沈殿物は、100メッシュ程度のフィルターで容易に回収が可能であった。
フィルター濾過で培養液300mLから約3mLの濾物を回収した。培養液の濃縮倍率は100倍であった。
なお、実施例3における天然物由来アニオン性凝集剤は、実施例1と同じものを使用した。
【0088】
(比較例1)
微細藻類を含む液体として、実施例1と同じナンノクロロプシス培養液(原水)を用いた。
【0089】
ナンノクロロプシスの回収は、以下のようにして行った。
ビーカーに、前記ナンノクロロプシス培養液(原水)を300mL取り、pHの調整を行わずに天然物由来カチオン性凝集剤(キトサン(コーヨーキトサンSK-10(商品名)、甲陽ケミカル社製))を30mg/L添加して150rpmで1分間急速撹拌したところ、微細藻類の凝集反応は見られず、キトサン単独での濃縮は困難であることが確認された。
【0090】
(比較例2)
微細藻類を含む液体として、実施例1と同じナンノクロロプシス培養液(原水)を用いた。
【0091】
ナンノクロロプシスの回収は、以下のようにして行った。
ビーカーに、前記ナンノクロロプシス培養液(原水)を300mL取り、pHの調整を行わずに天然物由来アニオン性凝集剤を30mg/L添加して150rpmで1分間急速撹拌したところ、微細藻類の凝集反応は見られず、天然物由来アニオン性凝集剤単独での濃縮は困難であることが確認された。
なお、比較例2における天然物由来アニオン性凝集剤は、実施例1と同じものを使用した。
【0092】
上記で示したように、本発明の方法によれば、微細藻類を、短時間、低コストで容易に濃縮分離し、回収できることが確認された。また、微細藻類を含む液体のpHが、キトサン単体では凝集が困難な中性域の場合でも、本発明の方法によれば、微細藻類の凝集分離が可能であることが確認された。
微細藻類はバイオジェット燃料の生産などに用いられているが、その抽出残渣には、タンパク質、色素、ビタミン類など、人や動植物に対して有用な成分が含まれている。本発明の方法によれば、無機凝集剤や石油由来の高分子凝集剤を使用せずに微細藻類を回収することができるので、バイオジェット燃料の生産などに用いられた微細藻類の抽出残渣の食料、飼料、肥料等への有効利用が可能である。