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特開2024-171075電動弁制御装置及び電動弁制御システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024171075
(43)【公開日】2024-12-11
(54)【発明の名称】電動弁制御装置及び電動弁制御システム
(51)【国際特許分類】
   F16K 31/04 20060101AFI20241204BHJP
   F16K 37/00 20060101ALI20241204BHJP
【FI】
F16K31/04 A
F16K37/00 D
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023087952
(22)【出願日】2023-05-29
(71)【出願人】
【識別番号】000143949
【氏名又は名称】株式会社鷺宮製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100134832
【弁理士】
【氏名又は名称】瀧野 文雄
(74)【代理人】
【識別番号】100165308
【弁理士】
【氏名又は名称】津田 俊明
(74)【代理人】
【識別番号】100115048
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 康弘
(72)【発明者】
【氏名】河村 政則
(72)【発明者】
【氏名】萩坂 悠樹
【テーマコード(参考)】
3H062
3H065
【Fターム(参考)】
3H062AA02
3H062CC02
3H062DD01
3H062FF01
3H062FF13
3H065AA01
3H065BA01
3H065BB11
(57)【要約】
【課題】システムの小型化や省スペース化が図れるとともに、従来のシステムとの互換性も保たれることを目的とする。
【解決手段】パルスコンバータ10は、電子膨張弁30の弁開度を示すアナログ信号が入力されるアナログ入力11と、開度指示を複数の機器から通信により受信可能な通信ポート25と、アナログ入力11に入力されたアナログ信号又は通信ポート25が受信した開度指示を駆動パルスに変換するマイクロコンピュータ18と、駆動パルスに基づいて、電子膨張弁30を駆動させるための駆動回路24と、を備えている。そして、マイクロコンピュータ18は、通信ポート25から入力された開度指示をアナログ入力11から入力されたアナログ信号よりも優先して駆動パルスに変換する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電動弁の弁開度を示すアナログ信号が入力される入力部と、
前記電動弁の弁開度を示す弁開度情報を複数の機器から所定の通信プロトコルにより受信可能な通信部と、
前記アナログ信号又は前記弁開度情報を駆動パルスに変換する制御部と、
前記駆動パルスに基づいて、前記電動弁を駆動させる駆動回路と、を備え、
前記制御部は、前記通信部から入力された前記弁開度情報を前記入力部から入力された前記アナログ信号よりも優先して前記駆動パルスに変換する、
ことを特徴とする電動弁制御装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記弁開度情報の入力後所定時間の期間は前記弁開度情報の受信を待機し、前記アナログ信号を受け付けないことを特徴とする請求項1に記載の電動弁制御装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記所定時間経過後に前記アナログ信号を受け付けることを特徴とする請求項2に記載の電動弁制御装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記所定時間の期間内であっても前記通信部が受信した切替情報により前記アナログ信号の入力を受付可能に切り替えることを特徴とする請求項2に記載の電動弁制御装置。
【請求項5】
前記通信部は、前記制御部による制御状態を外部に送信可能であることを特徴とする請求項1に記載の電動弁制御装置。
【請求項6】
請求項1から5のうちいずれか一項に記載の電動弁制御装置と、
前記電動弁制御装置に前記弁開度を出力する制御装置と、を備える電動弁制御システムであって、
前記電動弁制御装置を複数備え、前記制御装置を少なくとも1以上備え、
前記電動弁制御装置の通信部は、デイジーチェーン接続またはバス接続により他の前記電動弁制御装置の通信部または前記制御装置と接続されている、
ことを特徴とする電動弁制御システム。
【請求項7】
複数の前記電動弁制御装置のうち一の前記電動弁制御装置の入力部は、前記制御装置と接続されていることを特徴とする請求項6に記載の電動弁制御システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子膨張弁等の電動弁の弁開度を制御する電動弁制御装置及びその電動弁制御装置を備える電動弁制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、冷凍機や半導体製造装置用チラーなどには電子膨張弁などの電動弁が用いられている。この種の電動弁はステッピングモータを用いることで精密な開閉制御を行うことができる。
【0003】
そして、このような電動弁は、温度調節器等の制御装置から出力されるアナログ信号をパルス駆動装置(パルス出力ユニット、パルスコンバータともいう)でパルス信号に変換し駆動制御される(例えば特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011-220451号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載された構成の場合、1つの電動弁に対して1つのパルス駆動装置と制御装置が必要なる。そのため、例えば温度調節箇所が複数になる等により電動弁が複数必要となると、パルス駆動装置や制御装置が複数必要となり、配線処理が複雑になるとともにシステムが大型化してしまう。
【0006】
そこで、本発明は、システムの小型化や省スペース化が図れるとともに、従来のシステムとの互換性も保たれることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するためになされた発明は、電動弁の弁開度を示すアナログ信号が入力される入力部と、前記電動弁の弁開度を示す弁開度情報を複数の機器から所定の通信プロトコルにより受信可能な通信部と、前記アナログ信号又は前記弁開度情報を駆動パルスに変換する制御部と、前記駆動パルスに基づいて、前記電動弁を駆動させる駆動回路と、を備え、前記制御部は、前記通信部から入力された前記弁開度情報を前記入力部から入力された前記アナログ信号よりも優先して前記駆動パルスに変換する、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、通信部を備えたことにより、1対1接続とする必要がないため、配線を削減し、システムの小型化や省スペース化が図れる。また、アナログ信号が入力される入力部を残しているので、従来のシステムとも互換性が保つことができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の一実施形態にかかる電動弁制御装置を備える電動弁制御システムの概略構成図である。
図2図1に示された電動弁制御装置の概略構成図である。
図3】1-2相励磁方式により駆動する電動弁に出力される出力パターンを表と出力波形で対応させた図である。
図4図2に示されたパルスコンバータの通信動作のフローチャートである。
図5図2に示されたパルスコンバータの動作例を示したタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の一実施形態に係る電動弁制御装置を説明する。図1は、本実施形態にかかる電動弁制御装置を備える電動弁制御システムの概略構成図である。図2は、図1に示された電動弁制御装置の概略構成図である。
【0011】
図1に示した電動弁制御システム1は、パルスコンバータ10と、制御装置(CNT)20と、電子膨張弁30と、を備えている。また、図1の例では、パルスコンバータ10は符号10a~10c、CNT20は符号20a~20c、電子膨張弁30は符号30a~30c、のそれぞれ3つずつ備えているが、各機器の台数は3に限らない。パルスコンバータ10は、本実施形態にかかる電動弁制御装置として機能する。
【0012】
パルスコンバータ10a~10cと、CNT20a~20cと、は通信線CLで接続されている。本実施形態では、CNT20a、20b、20c、パルスコンバータ10c、10b、10aの順に数珠繋ぎするデイジーチェーン接続としている。デイジーチェーン接続には例えばRS485やRS422などの通信規格を利用することができる。また、バス接続やリング接続を用いてもよい。これらの接続形態は、パルスコンバータ10とCNT20とが1対1に対応する接続形態ではないので通信にかかる配線を少なくすることができる。
【0013】
また、パルスコンバータ10とCNT20とはアナログ信号線ALで接続してもよい。図1では、パルスコンバータ10aとCNT20aとはアナログ信号線AL1で接続可能であり、パルスコンバータ10bとCNT20bとはアナログ信号線AL2で接続可能であり、パルスコンバータ10cとCNT20cとはアナログ信号線AL3で接続可能である。
【0014】
パルスコンバータ10は、図2に示したように、アナログ入力11と、I/V変換回路12と、演算増幅回路14と、マイクロコンピュータ18と、電源回路22と、駆動回路24と、通信ポート25と、通信回路26と、を備えている。
【0015】
I/V変換回路12は、アナログ入力11から入力された電動弁の開度に関する信号(弁開度信号)電流を、電圧に変換して演算増幅回路14に出力する。この弁開度信号電流は、CNT20から、例えば4~20mAの電流として出力される。アナログ入力11は、アナログ信号線ALが接続され、CNT20から出力される弁開度信号電流、つまりアナログ信号が入力される。即ち、アナログ入力11は、電子膨張弁30(電動弁)の弁開度を示すアナログ信号が入力される入力部として機能する。
【0016】
演算増幅回路14は、I/V変換回路12から出力された弁開度信号電圧を、マイクロコンピュータ18に適した電圧値に変換し、マイクロコンピュータ18に出力する。
【0017】
マイクロコンピュータ18は、A/D変換回路34、CPU(Central Processing Unit)36、I/O回路38、ROM(Read Only Memory)40、RAM(Random Access memory)42を備えている。
【0018】
A/D変換回路34は、マイクロコンピュータ18に入力された弁開度信号電圧をアナログ信号からデジタル信号に変換する。
【0019】
CPU36は、A/D変換回路34でデジタル信号に変換された弁開度信号または、後述する通信回路26から入力された開度指示を、電子膨張弁30を駆動させるための駆動パルスに変換する。そして、CPU36は、変換した駆動パルスによりI/O回路38、駆動回路24を介して電子膨張弁30の弁開度の制御を行っている。また、CPU36は、後述するように通信回路26から入力された開度指示をA/D変換回路34でデジタル信号に変換された弁開度信号よりも優先して扱う。
【0020】
即ち、CPU36は、弁開度信号(アナログ信号)又は開度指示(弁開度情報)を駆動パルスに変換する制御部として機能する。そして、CPU36は、通信ポート25から入力された開度指示(弁開度情報)をアナログ入力11(入力部)から入力された弁開度信号(アナログ信号)よりも優先して駆動パルスに変換する。
【0021】
I/O回路38は、CPU36で生成された駆動パルスを駆動回路24に出力する。ROM40には、例えば、弁開度信号や開度指示を駆動パルスに変換するためのプログラムや、上述した通信制御のプログラム等が記憶されている。RAM42は、ROM40に事前に書き込まれたプログラムをCPU36で実行するために必要となる一時記憶として用いられている。
【0022】
電源回路22は、外部電源(図示せず)から、マイクロコンピュータ18等の内部回路を動作させるために必要な電圧を作りだし、マイクロコンピュータ18等に電源電圧を出力している。
【0023】
駆動回路24は、マイクロコンピュータ18から出力された駆動パルスに基づいて、電子膨張弁30を駆動させ、弁開度の制御を行っている。
【0024】
駆動回路24から出力される駆動パルスは、電子膨張弁30の種類に応じて適宜変更することができるが、例えば、電子膨張弁30が1-2相励磁方式のステッピングモータを用いていた場合、図3に示すような励磁パターンに従って駆動パルスの出力がなされる。なお、本実施形態では、駆動パルス数としては、電子膨張弁30のステッピングモータの1ステップ回転分を1パルスとする。例えば、図3における励磁パターン1~8が駆動回路24から出力された場合には8パルスとなる。
【0025】
通信回路26は、通信ポート25を介して開度指示等の指示の受信などの通信を行う。開度指示とは、電子膨張弁30の弁開度情報の指示情報であり、制御装置20から送信される。通信回路26は、上述したRS485やRS422などの通信規格に基づく通信プロトコルでCNT20等と通信を行う。通信ポート25は、通信線CLが接続される。即ち、通信ポート25は、電子膨張弁30(電動弁)の開度指示(弁開度情報)をCNT20a、20b、20c(複数の機器)から所定の通信プロトコルにより受信可能な通信部として機能する。
【0026】
CNT20は、パルスコンバータ10を制御する制御装置である。CNT20は、例えば冷凍機や半導体製造装置用チラーなどの所定の部位で測定された温度に基づいて制御信号を出力する温度調節器として構成することができる。また、CNT20は例えばPLC(Programmable Logic Controller)で構成することができる。
【0027】
電子膨張弁30は、本実施形態における電動弁の一形態である。電子膨張弁30は、冷凍機や半導体製造装置用チラーなどに設置されている。電子膨張弁30は、上述したように、ステッピングモータを有しており、パルスコンバータ10によって開閉制御される。
【0028】
次に、上述した構成のパルスコンバータ10における通信動作について図4のフローチャートを参照して説明する。図4に示したフローチャートはマイクロコンピュータ18で動作する。
【0029】
まず、マイクロコンピュータ18は、通信により開度指示を受信したか判定する(ステップS1)。通信により開度指示を受信したことは、通信線CLから通信ポート25、通信回路26を介して開度指示が入力されたか否かで判定することができる。この開度指示は、上述したように、電子膨張弁30の弁開度情報を示す通信データである。
【0030】
ステップS1において通信により開度指示を受信した場合(ステップS1:YES)、マイクロコンピュータ18は、経過時間をリセットし、通信開度優先フラグを有効にセットする(ステップS2)。経過時間とは、開度指示を受信してから経過した時間を示している。ステップS2では、ステップS1で開度指示を受信したため経過時間がリセットされる。本実施形態では、直ちにアナログに制御が移行しないよう、経過時間としては、例えば1~3分の時間に設定されている。
【0031】
通信開度優先フラグとは、通信ポート25から受信した開度指示がアナログ入力11から入力されたアナログ信号よりも優先されることを示すフラグであり、開度指示を受信した場合に有効にセットされる。通信開度優先フラグが有効にセットされると開度指示が優先され、有効期間中にアナログ入力11から入力されるアナログ信号は無効とされる。即ち、通信開度優先フラグの有効期間中はアナログ信号を受け付けない。
【0032】
一方、ステップS1において通信により開度指示を受信しない場合(ステップS1:NO)、マイクロコンピュータ18は経過時間を進めて後述するステップS4に進む(ステップS3)。
【0033】
次に、マイクロコンピュータ18は、経過時間について所定時間が経過したか、または、通信開度優先フラグを無効にリセットする旨の指令を受信したか判定する(ステップS4)。通信開度優先フラグを無効にリセットする旨の指令は、通信線CLから通信ポート25、通信回路26を介して入力される指令の一種である。この指令を受信すると通信開度優先フラグがリセットされ、アナログ入力11から入力されるアナログ信号が有効となる。即ち、通信開度優先フラグを無効にリセットする旨の指令は、アナログ信号の入力を受付可能に切り替える切替情報として機能する。
【0034】
ステップS4において、経過時間について所定時間が経過したか、または、通信開度優先フラグを無効にセットする旨の指令を受信した場合は(ステップS4:YES)、マイクロコンピュータ18は、通信開度優先フラグを無効にリセットする(ステップS5)。一方、ステップS4の何れの条件も成立しない場合は(ステップS4:NO)、ステップS5を実行せずに後述するステップS6に進む。
【0035】
次に、マイクロコンピュータ18は、通信開度優先フラグが有効か判定する(ステップS6)。通信開度優先フラグが有効である場合(ステップS6:YES)、マイクロコンピュータ18は、通信回路26が受信した開度指示に含まれる開度(通信指示開度)で動作する(ステップS7)。つまり、通信回路26が受信した開度に基づく数のパルスを生成し、駆動回路24に出力する。
【0036】
一方、通信開度優先フラグが無効である場合(ステップS6:NO)、マイクロコンピュータ18は、アナログ入力11から入力されるアナログ信号で動作する(ステップS8)。つまり、アナログ信号をA/D変換回路34で変換したデジタル値に基づく数のパルスを生成し、駆動回路24に出力する。
【0037】
次に、上述したパルスコンバータ10の動作例を図5を参照して説明する。図5はパルスコンバータ10の動作の一例を示したタイミングチャートである。図5においては、電子膨張弁30の開度(膨張弁開度)、アナログ入力11から入力されるアナログ信号、通信ポート25から入力される開度指示(通信指示)、通信開度優先フラグ(High:通信優先、Low:アナログ入力優先)がそれぞれ示されている。
【0038】
まず、初期状態として膨張弁開度は0%、通信開度優先フラグはLowレベル(アナログ優先)となっているとする。そして、時刻Aにおいて、アナログ入力11にて、開度100%に変更する指示が入力される。このとき通信開度優先フラグはアナログ入力優先となっているため、パルスコンバータ10は、アナログ入力11から入力されたアナログ信号を有効なものとして扱い、開度100%の指示に基づく数のパルスを出力し、膨張弁開度は100%へ変化する。
【0039】
次に、時刻Bにおいて、アナログ入力11にて、開度50%に変更する指示が入力されると、通信開度優先フラグはアナログ入力優先となっているため、パルスコンバータ10は、アナログ入力11から入力されたアナログ信号を有効なものとして扱う。したがって、パルスコンバータ10は、開度50%の指示に基づく数のパルスを出力し、膨張弁開度は50%へ変化する。
【0040】
次に、時刻Cにおいて、通信指示にて、開度100%に変更する指示が入力される。すると、通信開度優先フラグがHigh(通信優先)に変化する。通信により開度指示を受信すると、図4のフローチャートで説明したように、ステップS1:YES、ステップS2、ステップS4:NO、ステップS6:YES、ステップS7と実行され、パルスコンバータ10は、当該通信で指示された開度を有効なものとして扱う。したがって、パルスコンバータ10は、開度100%に指示に基づく数のパルスを出力し、膨張弁開度は100%へ変化する。
【0041】
次に、時刻Dにおいて、通信指示にて、開度75%に変更する指示が入力されると、通信開度優先フラグは通信優先となっているため、パルスコンバータ10は、受信した通信指示を有効なものとして扱う。したがって、パルスコンバータ10は、開度75%の指示に基づく数のパルスを出力し、膨張弁開度は75%へ変化する。なお、時刻Cから後述する時刻Eの間は通信開度優先フラグが通信優先であるため、アナログ入力11から入力されたアナログ信号は受け付けない(無視される)。
【0042】
次に、時刻Eにおいて、時刻Dから所定時間が経過したとすると、通信開度優先フラグがLow(アナログ入力優先)に変化する。したがって、図4のフローチャートが、ステップS1:NO、ステップS3、ステップS4:YES、ステップS5、ステップS6:NO、ステップS8と実行される。そのため、パルスコンバータ10は、時刻E時点のアナログ入力11から入力されたアナログ信号を受け付けて有効なものとして扱い、時刻E時点のアナログ入力11が示す開度25%の指示に基づく数のパルスを出力し、膨張弁開度は25%へ変化する。
【0043】
即ち、マイクロコンピュータ18(制御部)は、開度指示(弁開度情報)の入力後所定時間の期間は開度指示等(前記情報)の受信を待機し、アナログ入力11(アナログ信号)を受け付けない。また、マイクロコンピュータ18(制御部)は、所定時間経過後にアナログ入力11(アナログ信号)を受け付ける。
【0044】
次に、時刻Fにおいて、アナログ入力11にて、開度50%に変更する指示が入力されると、通信開度優先フラグはアナログ入力優先となっているため、パルスコンバータ10は、アナログ入力11から入力されたアナログ信号を有効なものとして扱う。したがって、パルスコンバータ10は、開度50%の指示に基づく数のパルスを出力し、膨張弁開度は50%へ変化する。
【0045】
次に、時刻Gにおいて、通信指示にて、開度0%に変更する指示が入力される。すると、通信開度優先フラグがHighに変化する。したがって、時刻Cと同様にフローチャートが実行され、パルスコンバータ10は、受信した通信指示を有効なものとして扱い、開度0%に指示に基づく数にパルスを出力し、膨張弁開度は0%へ変化する。
【0046】
次に、時刻Hにおいて、通信からの優先解除指示(通信開度優先無効)を受信すると、通信開度優先フラグがLowに変化する。つまり、優先解除指示が切替情報として機能し、アナログ信号の入力を受付可能に切り替えられる。
【0047】
したがって、時刻Eと同様にフローチャートが実行され、パルスコンバータ10は、時刻H時点のアナログ入力11が示す開度を有効なものとして扱う。そのため、パルスコンバータ10は、時刻H時点のアナログ入力の開度50%の指示に基づく数のパルスを出力し、膨張弁開度は50%へ変化する。即ち、マイクロコンピュータ18(制御部)は、所定時間の期間内であっても通信回路26(通信部)が受信した優先解除指示(切替情報)によりアナログ入力11(アナログ信号)の入力を受付可能に切り替えている。
【0048】
本実施形態によれば、パルスコンバータ10は、電子膨張弁30の弁開度を示すアナログ信号が入力されるアナログ入力11と、開度指示を複数の機器から通信により受信可能な通信ポート25と、アナログ入力11に入力されたアナログ信号又は通信ポート25が受信した開度指示を駆動パルスに変換するマイクロコンピュータ18と、駆動パルスに基づいて、電子膨張弁30を駆動させるための駆動回路24と、を備えている。そして、マイクロコンピュータ18は、通信ポート25から入力された開度指示をアナログ入力11から入力されたアナログ信号よりも優先して駆動パルスに変換する。
【0049】
パルスコンバータ10を上記のように構成することにより、1対1接続とする必要がないため、多数の配線を、通信接続にして専用の通信線CLに集約することができる。したがって、システムの小型化、省スペース化を図ることができる。また、アナログ信号が入力されるアナログ入力11を残しているので、従来のシステムとも互換性が保つことができる。
【0050】
また、マイクロコンピュータ18は、開度指示を受信後所定時間の期間は後続の開度指示の受信を待機し、アナログ入力11から入力されるアナログ信号を受け付けないようにしている。このようにすることにより、通信による送受信が行われなくても一定期間は無条件に通信を優先的に扱うことができる。一定期間通信での受信を待機する時間を設けることにより、アナログ入力11と通信ポート25との頻繁な切り替りによるマイクロコンピュータ18および、外部の制御装置の通信の処理能力の負荷を軽減することができる。
【0051】
また、マイクロコンピュータ18は、所定時間経過後にアナログ入力11から入力されるアナログ信号を受け付けることができる。このようにすることにより、手動で切り替えを行わずに自動的にアナログ入力を有効にすることが容易になる。したがって、例えば一時的に通信による制御を割り込ませた際に、アナログ入力11への戻し忘れを防止できる。
【0052】
また、マイクロコンピュータ18は、所定時間の期間内であっても通信回路26が受信した優先解除指示(通信開度優先無効)によりアナログ入力11から入力されるアナログ信号を受付可能に切り替えられるようにしている。このようにすることにより、任意のタイミングでアナログ入力を有効にすることができる。したがって、何時でもアナログ入力により制御を可能とすることができる。
【0053】
また、電動弁制御システム1は、パルスコンバータ10と、パルスコンバータ10に弁開度を出力するCNT20と、を備えている。そして、パルスコンバータ10は複数備え、CNT20は少なくとも1以上備えている。そして、パルスコンバータ10の通信ポート25は、他のパルスコンバータ10の通信ポート25またはCNT20とデイジーチェーン接続されている。
【0054】
電動弁制御システム1が上記のように構成されることにより、パルスコンバータ10とCNT20とが数珠繋ぎで接続されるため、通信にかかる配線を最低限に抑えることができる。
【0055】
なお、上述した実施形態では、通信ポート25や通信回路26は、主にパルスコンバータ10へ指示等の入力に用いていたが、パルスコンバータ10からの出力に用いることもできる。例えば、現在の弁開度の値や各種設定値等の制御状態を読みだして出力してもよい。この場合は、例えばパルスコンバータ10が読出指令等を受信し、その応答として制御状態を通信ポート25から読出指令を送信した相手方へ送信するようにすればよい。即ち、通信ポート25(通信部)は、マイクロコンピュータ18(制御部)による制御状態を外部に送信可能である。
【0056】
また、上述した実施形態では、CNT20としては温度調節器などであったが、例えば装置の立ち上げや不具合時の検証等のメンテナンス作業を行うために一時的に追加する端末装置等を通信線CLに挿入してもよい。本実施形態ではデイジーチェーン接続(あるいはバス接続)であるのでこのような端末装置の一時的な挿入が容易であり、また、1つの端末装置から複数のパルスコンバータ10を制御することも可能となる。したがって、外部機器からの集中制御が可能となり、電動弁が任意に制御可能となるなど、システムや制御の自由度が増す。
【0057】
また、例えば図1に記載したCNT20b、20cを削除した構成のように、アナログ入力11が接続されるパルスコンバータ10aと、通信ポート25のみで接続されるパルスコンバータ10b、10cと、を混在させることもできる。このようにすることで、重要な電子膨張弁30に対応するパルスコンバータ10はアナログ入力11と通信ポート25の双方で接続して冗長化し、他の電子膨張弁30は通信のみにするといったことができる。また、アナログ入力11と通信ポート25の双方で接続したパルスコンバータは、通信ポート25も接続することで、上記のようなメンテナンス作業を行い易くなる。
【0058】
また、通信ポート25のみが接続された場合は、所定時間経過してアナログ入力11が有効になっても意味がない。アナログ入力11が未接続の場合はアナログ信号として“0”なのか端子オープンなのか区別ができない。そのため、所定時間経過後に入力が“0”として誤動作してしまうおそれがある。また、入力のふらつきによる誤動作のおそれもある。そこで、アナログ入力11の使用または不使用を予めスイッチ等の切替手段で設定するようにしてもよい。
【0059】
具体例としては、パルスコンバータ10にディップスイッチを設けてアナログ入力11の使用または不使用を切り替え可能とする。そして、例えば工場出荷時ではアナログ入力11を使用に設定し、ユーザ等においてアナログ入力11を使用しない場合はディップスイッチを切り替えて不使用に設定する。
【0060】
ディップスイッチでアナログ入力11を不使用に設定した場合は、マイクロコンピュータ18は、所定時間経過してもアナログ入力11は有効にしない(無期限通信待機)。つまり、ディップスイッチで通信優先のモードに切り替わり、通信優先フラグは参照せず、常時通信による開度指示に従い動作する。例え通信優先フラグ無効の指示があったとしても、ディップスイッチの設定が優先される為、通信での開度指示での動作が継続される。
【0061】
即ち、アナログ入力11の使用または不使用を切り替える切替手段を備え、マイクロコンピュータ18は、アナログ入力11が不使用に切り替えられている場合は、弁開度情報のみに基づいて駆動パルスの変換を行ってもよい。このようにすると、アナログ入力11が接続されないことによる誤動作を防止することができる。
【0062】
また、通信の接続形態もデイジーチェーン接続やバス接続といった有線によるものに限らず、無線によるものであってもよい。無線であれば通信線CLが不要になるためより小型化等を図ることができる。
【0063】
また、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。即ち、当業者は、従来公知の知見に従い、本発明の骨子を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。かかる変形によってもなお本発明の電動弁制御装置及び電動弁制御システムの構成を具備する限り、勿論、本発明の範疇に含まれるものである。
【符号の説明】
【0064】
1 電動弁制御システム
10 パルスコンバータ(電動弁制御装置)
11 アナログ入力(入力部)
18 マイクロコンピュータ(制御部)
20 制御装置
24 駆動回路
25 通信ポート(通信部)
30 電子膨張弁(電動弁)
図1
図2
図3
図4
図5