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特開2024-171081土壌評価システム、土壌評価方法、及びセンサ装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024171081
(43)【公開日】2024-12-11
(54)【発明の名称】土壌評価システム、土壌評価方法、及びセンサ装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 22/04 20060101AFI20241204BHJP
   G01N 22/00 20060101ALI20241204BHJP
【FI】
G01N22/04 C
G01N22/00 V
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023087959
(22)【出願日】2023-05-29
(71)【出願人】
【識別番号】000005108
【氏名又は名称】株式会社日立製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000198
【氏名又は名称】弁理士法人湘洋特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】池田 一樹
(57)【要約】
【課題】簡便に土壌の水分量を監視できるようにする。
【解決手段】土壌評価システムは、土壌に埋設され、前記土壌に向けて電磁波を放射するセンサと、地上に設置され、前記センサのインピーダンスから算出された前記土壌中の水分量を示す信号を送信する送信回路と、前記信号を受信するステップと、受信した前記信号が示す前記水分量をデータベースに格納するステップとを実行するコンピュータと、を有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
土壌に埋設され、前記土壌に向けて電磁波を放射するセンサと、
地上に設置され、前記センサのインピーダンスから算出された前記土壌中の水分量を示す信号を送信する送信回路と、
前記信号を受信するステップと、受信した前記信号が示す前記水分量をデータベースに格納するステップとを実行するコンピュータと、
を有する土壌評価システム。
【請求項2】
請求項1に記載の土壌評価システムであって、
前記コンピュータは、
前記土壌の土質を示す土質情報を取得するステップと、
前記土質情報が示す前記土質と前記水分量とに基づいて、前記土壌の危険度を推定するステップとを更に実行し、
前記水分量を前記データベースに格納するステップにおいて、前記危険度を前記水分量に関連付けて前記データベースに格納する、
土壌評価システム。
【請求項3】
請求項2に記載の土壌評価システムであって、
前記コンピュータは、前記水分量を前記データベースに格納するステップにおいて、前記危険度、前記土質、前記水分量、前記水分量を測定した時刻、前記センサの設置位置、及び前記電磁波の周波数の各々を関連付けて前記データベースに格納する、
土壌評価システム。
【請求項4】
請求項1に記載の土壌評価システムであって、
前記センサは、
第1の導電膜と、
前記第1の導電膜に相対するように設けられ、かつ前記土壌に形成された穴の壁面に向けて前記電磁波を放射する第2の導電膜とを有し、
前記インピーダンスは、前記第1の導電膜と前記第2の導電膜との間のインピーダンスである、
土壌評価システム。
【請求項5】
請求項4に記載の土壌評価システムであって、
前記電磁波を透過する材料で形成され、かつ前記穴に通されるケーシングを更に有し、
前記ケーシングの内側に前記センサが設けられる、
土壌評価システム。
【請求項6】
請求項5に記載の土壌評価システムであって、
前記第2の導電膜と前記ケーシングとの間隔の最大値は、前記電磁波の波長の0.2倍以上0.3倍以下である、
土壌評価システム。
【請求項7】
請求項4に記載の土壌評価システムであって、
前記センサが複数設けられ、少なくとも二つの前記センサの前記第1の導電膜同士が相対する、
土壌評価システム。
【請求項8】
土壌に埋設されたセンサが、前記土壌に向けて電磁波を放射するステップと、
地上に設置されたセンサ回路が、前記センサのインピーダンスから算出された前記土壌中の水分量を示す信号を送信するステップと、
コンピュータが、前記信号を受信するステップと、
前記コンピュータが、前記信号が示す前記水分量をデータベースに格納するステップと
を含む土壌評価方法。
【請求項9】
請求項8に記載の土壌評価方法であって、
前記コンピュータは、
前記土壌の土質を示す土質情報を取得するステップと、
前記土質情報が示す前記土質と前記水分量とに基づいて、前記土壌の危険度を推定するステップとを更に実行し、
前記水分量を前記データベースに格納するステップにおいて、前記危険度を前記水分量に関連付けて前記データベースに格納する、
土壌評価方法。
【請求項10】
請求項9に記載の土壌評価方法であって、
前記コンピュータは、前記水分量を前記データベースに格納するステップにおいて、前記危険度、前記土質、前記水分量、前記水分量を測定した時刻、前記センサの位置、及び前記電磁波の周波数の各々を関連付けて前記データベースに格納する、
土壌評価方法。
【請求項11】
土壌に埋設され、前記土壌に向けて電磁波を放射するセンサと、
地上に設置され、前記センサのインピーダンスから算出された前記土壌中の水分量を示す信号を送信する送信回路と、
を有するセンサ装置。
【請求項12】
請求項11に記載のセンサ装置であって、
前記センサは、
第1の導電膜と、
前記第1の導電膜に相対するように設けられ、かつ前記土壌に形成された穴の壁面に向けて前記電磁波を放射する第2の導電膜とを有し、
前記インピーダンスは、前記第1の導電膜と前記第2の導電膜との間のインピーダンスである、
センサ装置。
【請求項13】
請求項12に記載のセンサ装置であって、
前記電磁波を透過する材料で形成され、かつ前記穴に通されるケーシングを更に有し、
前記ケーシングの内側に前記センサが設けられる、
センサ装置。
【請求項14】
請求項13に記載のセンサ装置であって、
前記第2の導電膜と前記ケーシングとの間隔の最大値は、前記電磁波の波長の0.2倍以上0.3倍以下である、
センサ装置。
【請求項15】
請求項12に記載のセンサ装置であって、
前記センサが複数設けられ、少なくとも二つの前記センサの前記第1の導電膜同士が相対する、
センサ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、土壌評価システム、土壌評価方法、及びセンサ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
降雨等によって土壌水分量が増えて土壌が崩壊すると、住宅地や鉄道等の社会インフラが打撃を受けて社会生活に大きな影響が生じる。これを防ぐために土壌が崩壊する予兆を衛星画像で監視する方法もあるが、この方法では監視対象のエリアを衛星が通過したときしか予兆を監視できず、リアルタイムに危険を把握することができない。
【0003】
一方、土壌中に土壌水分計を埋設し、土壌水分計が観測した土壌水分量に基づいて土壌が崩壊するのを予測するシステムが提案されている(例えば特許文献1)。このシステムによれば、数分~数時間ごとに土壌水分を監視できるため、危険が差し迫っているかを逐次把握することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2019-105130号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記のシステムを実現するには、人が入れる程度の大きさの縦穴をボーリング工事で掘削し、その縦穴の中に人が入って土壌水分計を地中に埋設する必要がある。そのため、ボーリング工事の施工費用が嵩むうえに、縦穴を多数掘削したり、狭小地や傾斜面に縦穴を掘削して土壌水分計を埋設したりするのが難しい。
【0006】
本発明は、このような状況に鑑みてなされたものであり、簡便に土壌の水分量を監視できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明一態様に係る土壌評価システムは、土壌に埋設され、前記土壌に向けて電磁波を放射するセンサと、地上に設置され、前記センサのインピーダンスから算出された前記土壌中の水分量を示す信号を送信する送信回路と、前記信号を受信するステップと、受信した前記信号が示す前記水分量をデータベースに格納するステップとを実行するコンピュータと、を有する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、簡便に土壌の水分量を監視できる。
【0009】
上記した以外の課題、構成及び効果は、以下の実施形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、本実施形態に係る土壌評価システムの一例を示す概略図である。
図2図2は、本実施形態に係る水分センサの一例とその周囲の斜視図である。
図3図3は、本実施形態に係る水分センサの一例とその周囲の断面図である。
図4図4は、本実施形態に係る土壌評価システムの機能構成の一例を示す図である。
図5図5は、本実施形態に係る土質情報のデータ構造の一例を示す模式図である。
図6図6は、本実施形態に係る土質別危険度情報のデータ構造の一例を示す模式図である。
図7図7は、本実施形態に係る土壌危険度データベースのデータ構造の一例を示す模式図である。
図8図8は、本実施形態に係るサーバが行う処理の一例を示すフローチャートである。
図9図9は、その他の実施形態に係る土壌評価システムの一例を示す概略図である。
図10図10は、本実施形態に係るサーバのハードウェア構成の一例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明に係る一実施形態を図面に基づいて説明する。なお、実施形態を説明するための全図において、同一の部材には原則として同一の符号を付し、その繰り返しの説明は適宜省略する。また、以下の実施形態において、その構成要素(要素ステップ等も含む)は、特に明示した場合及び原理的に明らかに必須であると考えられる場合等を除き、必ずしも必須のものではないことは言うまでもない。また、「Aからなる」、「Aよりなる」、「Aを有する」、「Aを含む」と言うときは、特にその要素のみである旨明示した場合等を除き、それ以外の要素を排除するものでないことは言うまでもない。同様に、以下の実施形態において、構成要素等の形状、位置関係等に言及するときは、特に明示した場合及び原理的に明らかにそうでないと考えられる場合等を除き、実質的にその形状等に近似または類似するもの等を含む。
【0012】
<本実施形態>
図1は、本実施形態に係る土壌評価システムの一例を示す概略図である。土壌評価システム1は、土壌5に含まれる水分量(土壌水分量)に基づいて土壌5の危険度を評価するシステムである。
【0013】
一例として、土壌評価システム1は、サーバ10とセンサ装置30とを備える。
【0014】
センサ装置30は、複数の水分センサ2a~2cとセンサ回路20とを有する。水分センサ2a~2cは、土壌5の土壌水分量を測定するためのセンサであって、土壌5に鉛直下向きに掘削された縦穴5bに配置される。この例では、縦穴5bの異なる高さ位置に間隔をおいて各水分センサ2a~2cを設置する。
【0015】
センサ回路20は、送信回路の一例であって、各水分センサ2a~2cの出力に基づいて各水分センサ2a~2cの深さ位置における土壌5の水分量を算出し、その水分量を含む水分測定信号をアンテナ23から無線送信する回路である。この例では、ケース等にセンサ回路20を収容し、そのケースと共にセンサ回路20を地面5a上の地上に設置する。これにより、縦穴5bにセンサ回路20を埋設する場合と比較して、作業者がセンサ回路20をメンテナンスするのが容易となる。
【0016】
サーバ10は、センサ回路20が無線送信した水分測定信号をアンテナ18で受信して、その水分測定信号に含まれる土壌水分量をデータベースに格納する処理等を行うコンピュータである。
【0017】
図2は、本実施形態に係る水分センサ2aの一例とその周囲の斜視図である。図2に示すように、縦穴5bには管状のケーシング7が通されており、ケーシング7の内側に水分センサ2aが設けられる。ケーシング7の下端面は、土壌5中の水分がケーシング7内に浸入するのを防ぐために閉じた形状とするのが好ましい。同様の理由により、ケーシング7の上端面は、同軸ケーブル8等を通す部分を除いて閉じるのが好ましい。また、ケーシング7の断面形状は円形に限らず、任意の形状としてよい。
【0018】
水分センサ2aは、同軸ケーブル8に電気的に接続される。例えば、同軸ケーブル8は、モールド成型等によって成形された樹脂部材(不図示)に嵌め込まれた状態でケーシング7に挿入して固定される。また、ブラケット等の固定部材で同軸ケーブル8をケーシング7に固定してもよい。同軸ケーブル8にはセンサ回路20から高周波電圧が供給されており、これにより水分センサ2aは縦穴5bの壁面に向けて電磁波を放射するアンテナとして機能する。水分センサ2aは、電磁波の放射面が露出するように樹脂封止されており、ブラケット等によりケーシング7に固定される。
【0019】
図3は、本実施形態に係る水分センサ2aの一例とその周囲の断面図である。なお、水分センサ2b、2cの構造も水分センサ2aの構造と同一である。図3に示すように、水分センサ2aは、第1の導電膜2x、絶縁膜2y、及び第2の導電膜2zをこの順に積層した構造を有する。第1の導電膜2xは、例えば銅箔であって、絶縁膜2yの一方の主面の略全面に形成される。また、第2の導電膜2zは、第1の導電膜2xよりも小さい面積にパターニングされた銅箔であって、絶縁膜2yの他方の主面に形成される。絶縁膜2yは、例えばエポキシ樹脂等の樹脂やセラミックからなる膜である。
【0020】
同軸ケーブル8のシールド線(不図示)は第1の導電膜2xに接続されており、これにより第1の導電膜2xは接地電位に維持される。また、同軸ケーブル8の芯線(不図示)は、第1の導電膜2xと絶縁膜2yに設けられたスルーホール(不図示)を介して第2の導電膜2zに接続されており、これにより第2の導電膜2zには高周波電圧が印可される。
【0021】
この例では各導電膜2x、2zを相対するように設けたため、上記のように第1の導電膜2xを接地電位に維持しながら第2の導電膜2zに高周波電圧を印加することで、第2の導電膜2zから指向性を有する電磁波9を放射させることができる。その電磁波9の進行方向は、第1の導電膜2xから見て第2の導電膜2zの方向となるため、第2の導電膜2zに相対する縦穴5bの壁面に向けて電磁波9を照射することができる。
【0022】
その電磁波9がケーシング7を透過して土壌5に照射されるようにするために、電磁波9を透過する材料でケーシング7を形成するのが好ましい。例えば、電磁波9の透過を阻害する金属や水を含まない材料でケーシング7を形成するのが好ましい。そのような材料としては、例えば、塩化ビニー等がある。
【0023】
また、ケーシング7の内側に水分センサ2aを設けることで、縦穴5bの壁面に露出する土壌に水分センサ2aが触れて劣化するのを防止できる。
【0024】
更に、この例では、縦穴5bの同じ高さ位置に二つの水分センサ2aを配置し、これらの水分センサ2aの第1の導電膜2x同士が相対するようにする。これにより、各水分センサ2aから放射される電磁波9が互いに反対方向を向くため、同じ高さ位置における土壌5の異なる部分の土壌水分量を各水分センサ2aで測定することができる。更に、これらの二個の水分センサ2aを一組にし、同じ高さ位置に複数の組を配置してもよい。この場合、水分センサ2aから放射される電磁波9の向きを組みごとに変えることで、同じ高さ位置における土壌の水分量を満遍なく測定することができる。なお、水分センサ2aをまとめる単位は組単位に限らず、一個、三個、五個等の奇数個単位で水分センサ2aをまとめてもよい。
【0025】
なお、ケーシング7の外周側面には土壌中の水分等が付着することがあり、その水分によって土壌5の水分量の測定が阻害されることがある。これを防ぐために、第2の導電膜2zとケーシング7との間隔D1の最大値を電磁波9の波長λの1/4程度、例えば波長λの0.2倍以上0.3倍以下とするのが好ましい。第2の導電膜2zからλ/4離れた位置では電磁波9の節が形成され、その位置における水分センサ2aの感度が低下する。これにより、ケーシング7の外周側面に付着した水等によって土壌5の水分量の測定が阻害されるのを抑制することができる。
【0026】
なお、電磁波9の波長は、同軸ケーブル8の芯線に印加する高周波電圧の周波数をセンサ回路20が調節することで制御できる。また、その周波数が高いと土壌5への電磁波9の侵入深さが短くなり、逆に周波数が低いと侵入深さが長くなる。この性質を利用して、センサ回路20が高周波電圧の周波数を制御することにより、土壌5の水分の測定範囲を制御してもよい。
【0027】
また、水分センサ2aは、構造がシンプルで小型化が可能であるため、直径D2が100mm程度のケーシング7に収容することができる。そのため、縦穴5bの直径D3も100mm程度で済み、人が入れる程度に大きな縦穴5bを掘削する必要がない。その結果、縦穴5bの掘削費用を低減でき、簡便に土壌5の水分量を監視することができる。
【0028】
図4は、本実施形態に係る土壌評価システム1の機能構成の一例を示す図である。
【0029】
センサ装置30は、例えばバッテリ、太陽光発電、商用電源等で駆動する装置であって、水分量測定部21と通信部22とを有する。
【0030】
水分量測定部21は、電磁波9を放射しているときの各水分センサ2a~2cのインピーダンスを計測し、そのインピーダンスに基づいて土壌中の水分量を算出する。この例では、各水分センサ2a~2cがそれぞれ異なる高さ位置A~Cに設置されており、水分量測定部21はこれらの高さ位置A~Cにおける土壌5の水分量を算出する。
【0031】
各水分センサ2a~2cのインピーダンスは、各水分センサ2a~2cと同軸ケーブル8の接続点から見た第1の導電膜2xと第2の導電膜2zとの間のインピーダンスである。そのインピーダンスは、電磁波9に曝される土壌5の水分量に応じて変化する。水分量測定部21は、インピーダンスと水分量とを対応付けたテーブルや、インピーダンスから水分量を算出する数式に基づいて、土壌5の水分量を算出する。算出する水分量の単位は特に限定されず、単位体積の土壌5に含まれる水分の重量を水分量としてもよい。本実施形態では、土壌5に含まれる水の重量と当該土壌5の重量の比の百分率(含水率)を水分量として採用する。
【0032】
更に、水分量測定部21は、複数のセンサ装置30の各々を識別するセンサIDと、水分量を測定した測定時刻と、水分量と、電磁波9の周波数とが関連付けられた水分測定信号を1時間程度の所定の時間間隔で生成する。水分測定信号に含まれる水分量は、水分センサ2a~2cごとの値である。また、水分量測定部21は、各水分センサ2a~2cを識別する個別IDと水分量とを関連付けて水分測定信号に含める。
【0033】
この例では一つのセンサ装置30に含まれる各水分センサ2a~2cが同時に水分量を測定するが、一つのセンサ装置30に含まれる水分センサ2a~2cごとに測定時刻を異ならせてもよい。更に、この例では一つのセンサ装置30に含まれる各水分センサ2a~2cが同じ周波数の電磁波9を放射するが、一つのセンサ装置30に含まれる水分センサ2a~2cごとに電磁波9の周波数を異ならせてもよい。
【0034】
通信部22は、水分量測定部21が水分量測定信号を生成する度に、当該水分測定信号を所定のデータ形式にエンコードし、アンテナ23から水分測定信号を無線送信する。
【0035】
水分測定信号は、インターネットや携帯電話網等のネットワーク40を介してサーバ10のアンテナ18によって受信される。
【0036】
サーバ10は、演算部11、通信部12、記憶部13、入力部14、及び表示部19を備える。通信部12は、アンテナ18が受信した水分測定信号をデコードして演算部11に出力する。
【0037】
入力部14は、ユーザがサーバ10に種々の入力を行うキーボード等のデバイスである。
【0038】
表示部19は、サーバ10の管理時等にユーザに種々の情報を表示するディスプレイである。
【0039】
演算部11は、サーバ10の各部を制御する処理を行う。例えば、演算部11は、記憶部13の土質情報15や土質別危険度情報16を参照したり、水分測定信号に含まれる水分量を土壌危険度データベース17に格納したりする。
【0040】
記憶部13は、前述の土質情報15、土質別危険度情報16、及び土壌危険度データベース17を記憶する。
【0041】
図5は、本実施形態に係る土質情報15のデータ構造の一例を示す模式図である。図5に示すように、土質情報15は、センサID15a、設置位置15b、及び深さ位置15cの各々を関連付けた情報である。
【0042】
センサID15aは、センサ装置30を識別するIDであり、前述の水分測定信号に含まれるIDである。
【0043】
設置位置15bは、センサ装置30が設置されている緯度、経度、及び標高である。
【0044】
深さ位置15cは、センサ装置30が備える各水分センサ2a~2cの深さ位置と、その深さ位置における土壌5の土質とを関連付けた情報である。例えば、地面5aから測った各水分センサ2a~2cの深さが深さ位置である。また、土質は、縦穴5bから掘削された土壌5の解析結果であり、まさ土やローム等の土の種類が格納される。
【0045】
深さ位置15cの各々は、水分測定信号に含まれる個別IDに関連付けられている。そのため、個別IDに基づいて、個別IDが示す水分センサに関連付けられた深さ位置15cを特定することができる。
【0046】
作業者は、土壌5の土質の解析結果や、水分センサ2a~2cの設置状況等に基づき土質情報15を作成し、予め記憶部13に格納する。
【0047】
図6は、本実施形態に係る土質別危険度情報16のデータ構造の一例を示す模式図である。図6に示すように、土質別危険度情報16は、土壌中の含水率16aと土質ごとの危険度16bとを関連付けた情報である。
【0048】
含水率16aは、土壌5の水分量である。また、危険度16bは、土壌が崩壊する危険性を示す指標である。
【0049】
含水率16aが高くなると土壌5の吸着力が低下して土壌崩壊の危険性が高まる。この例では、土壌崩壊の危険性が低い順に「安全」、「警戒」、及び「危険」の3段階に危険度16bを分ける。また、同一の含水率16aであっても危険度は土質によって変わる。例えば、まさ土は、ロームよりも危険度が高くなる。作業者は、土質と含水率に応じた危険度16bを求め、危険度16bを含水率16aと関連付けて予め土質別危険度情報16に格納する。
【0050】
図7は、本実施形態に係る土壌危険度データベース17のデータ構造の一例を示す模式図である。土壌危険度データベース17は、水分センサ2a~2cごとに時刻17a、緯度17b、経度17c、センサ高度17d、土質17e、測定周波数17f、含水率17g、及び危険度17hを関連付けた情報であって、演算部11が生成する。
【0051】
時刻17aは、水分センサ2a~2cが水分量を測定した時刻である。例えば、演算部11は、水分測定信号に含まれる測定時刻を時刻17aに格納する。
【0052】
緯度17bと経度17cは、水分センサ2a~2cの緯度と経度である。同一のセンサ装置30に含まれる各水分センサ2a~2cの緯度と経度は同一の値となる。例えば、演算部11は、水分測定信号に含まれるセンサIDに関連付けられた設置位置15bを土質情報15から特定する。そして、演算部11は、センサIDが示すセンサ装置30に含まれる各水分センサ2a~2cの緯度17bと経度17cに、特定した設置位置15bにおける緯度と経度を格納する。
【0053】
センサ高度17dは、水分センサ2a~2cが設置されている標高である。例えば、演算部11は、センサIDに関連付けられた標高を土質情報15の設置位置15bから特定する。更に、演算部11は、水分測定信号に含まれる個別IDが示す水分センサ2a~2cのそれぞれの深さを土質情報15の深さ位置15cから特定する。そして、演算部11は、設置位置15bの標高から深さ位置15cの深さを減じた値を各水分センサ2a~2cのセンサ高度17dに格納する。
【0054】
土質17eは、各水分センサ2a~2cの深さ位置における土壌5の土質である。例えば、演算部11は、各水分センサ2a~2cの個別IDに関連付けられた深さ位置15cを土質情報15から特定し、深さ位置15cにおける土質を土質17eに格納する。
【0055】
測定周波数17fは、電磁波9の周波数である。例えば、演算部11は、水分測定信号に含まれるセンサIDを特定し、水分測定信号においてそのセンサIDに関連付けられた周波数を水分センサ2a~2cの周波数として土壌危険度データベース17に格納する。
【0056】
含水率17gは、各水分センサ2a~2cが測定した水分量である。例えば、演算部11は、水分測定信号に含まれる個別IDを特定し、水分測定信号においてその個別IDに関連付けられた水分量を水分センサ2a~2cの含水率17gとして土壌危険度データベース17に格納する。
【0057】
危険度17hは、土壌が崩壊する危険性を示す指標である。例えば、演算部11は、土質17eと含水率17gに関連付けられた危険度を土質別危険度情報16から特定し、特定した危険度を危険度17hに格納する。
【0058】
このように各項目17a~17gを危険度17hに関連付けて土壌危険度データベース17に格納することで、ユーザが土壌危険度データベース17を用いて種々の解析をすることができる。例えば、時刻17aにより危険度の時間的な推移を把握できる。また、緯度17bと経度17cにより、センサ2a~2cの設置位置ごとの危険度を把握することができる。更に、センサ高度17dにより、同じ設置位置における異なる深さ位置での危険度を把握することができる。また、土質17eと含水率17gにより、例えば危険度が増加した原因が土質と含水率のどちらにあるのかを判別できる。更に、測定周波数17fにより、含水率17gの測定結果を検証することができる。
【0059】
図8は、本実施形態に係るサーバ10が行う処理の一例を示すフローチャートである。
【0060】
まず、通信部12は、センサ装置30から水分測定信号を受信する(ステップS1)。前述のようにセンサ装置30は1時間程度の所定の時間間隔で水分測定信号を生成するため、通信部12もその時間間隔で水分測定信号を受信する。
【0061】
次に、演算部11は、水分測定信号に含まれる個別IDと水分量とに基づいて、水分センサ2a~2cが測定した水分量を特定する(ステップS2)。
【0062】
次いで、演算部11は、土質情報15を参照して、水分測定信号に含まれるセンサIDに関連付けられた設置位置15bと深さ位置15cとを特定する(ステップS3)。
【0063】
続いて、演算部11は、深さ位置15cにおける土質と、各水分センサ2a~2cが測定した水分量とに基づいて、土壌5の危険度を水分センサ2a~2cごとに推定する(ステップS4)。例えば、演算部11は、土質別危険度情報16を取得して、土質と含水率16aとに関連付けられた危険度を水分センサ2a~2cごとに特定する。
【0064】
ここまでのステップにより、演算部11は、土壌危険度データベース17の土質17e、含水率17g、及び危険度17hの各項目を得ることができる。
【0065】
次に、演算部11は、水分測定信号に基づいて、土壌危険度データベース17の残りの時刻17a、緯度17b、経度17c、センサ高度17d、及び測定周波数17fの各項目を特定する(ステップS5)。
【0066】
続いて、演算部11は、各項目17a~17hを互いに関連つけて土壌危険度データベース17に格納する(ステップS6)。これにより危険度17hが含水率(水分量)17gと関連付けられて土壌危険度データベース17に格納される。そのため、例えば演算部11がユーザに危険度17hを提示することで、土壌5が崩壊する危険性をユーザが把握することができる。この後は、センサ装置30ごとにステップS1~S6を繰り返す。
【0067】
以上説明した本実施形態によれば、図3に示したように、各膜2x~2zを積層した簡単な構造のセンサ2a~2cで電磁波9を放射できるため、センサ2a~2cを小型化することができる。そのため、縦穴5bの直径D3を小さくすることができ、土壌5の水分量を簡便に監視することができる。
【0068】
<その他の実施形態>
図9は、その他の実施形態に係る土壌評価システムの一例を示す概略図である。本実施形態では、河川や池沼等の水50の近くに縦穴5bを掘削した場合を想定する。
【0069】
この場合、水50の近傍の土壌5は湿った土壌5dとなり、その土壌5dの近くに縦穴5bが位置する。そのため、図9の破線矢印のように電磁波9が湿った土壌5dに到達すると、水分センサ2aが湿った土壌5dの水分量を測定してしまい、縦穴5bの近傍における土壌5の水分量を正確に測るのが難しい。特に、土壌5における電磁波9の侵入深さは電磁波9の周波数が低いほど長くなるため、低い周波数の電磁波9を用いた場合にこの問題が顕著となる。
【0070】
そのため、本実施形態では、図9の実線矢印に示すように、センサ回路20が電磁波9の周波数を高めることにより電磁波9の侵入深さを短くする。例えば、電磁波9の侵入深さと周波数との関係を示すテーブルを作業者が予め作成し、センサ回路20がそのテーブルを参照することで、湿った土壌5dに到達しない程度の周波数の電磁波9を生成してもよい。これにより、電磁波9が湿った土壌5dに到達し難くなり、縦穴5bの近傍の水分量を水分センサ2aで精度良く測定することができる。
【0071】
<ハードウェア構成>
図10は、本実施形態に係るサーバのハードウェア構成の一例を示す模式図である。サーバ10は、データの生成、送信、受信及びこれら以外の各種処理を行うため、メモリリソースに格納された土壌評価プログラムを、プロセッサが読み込むことで、プロセッサが土壌評価プログラムに応じた処理を実行する。なお、サーバ10は、例えばパーソナルコンピュータ、タブレット端末、スマートフォン、ブレードサーバ、及びクラウドサーバ等のコンピュータでもよく、また少なくともこれらコンピュータを1つ以上含むシステムでもよい。すなわち、サーバ10は、例えばクラウドサーバと、表示用の計算機(例えば、タブレット端末またはスマートフォン)と、を含むシステムも包含する。また、プロセッサとメモリリソースを含む、何かしらの装置を制御又は管理するコントローラもサーバ10の一例である。
【0072】
具体的には、サーバ10は、図10に示すように、1以上のプロセッサ10aと、1以上のUI(User Interface)デバイス10bと、1以上のNI(Network Interface)デバイス10cと、1以上のメモリリソース10dとを有している。なお、サーバ10は、これら以外の構成物を含んでもよい。また、プロセッサ10a、UIデバイス10b、NIデバイス10c、及びメモリリソース10dはバス10eを介して相互に接続される。
【0073】
プロセッサ10aは、メモリリソース10dに格納されている各種プログラムを読み込んで、各プログラムに対応する処理を実行する演算装置である。なお、プロセッサ10aは、マイクロプロセッサ、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、FPGA(Field Programmable Gate Array)、量子プロセッサ、あるいはその他の演算できる半導体デバイスが例である。また、図4の演算部11は、プロセッサ10aによって実現される。
【0074】
メモリリソース10dは、土壌評価プログラム100を記憶する記憶装置であり、不揮発メモリ又は/及び揮発メモリが例である。揮発メモリの例は、RAM(Random Access Memory)やROM(Read Only Memory)である。不揮発メモリの例は、フラッシュメモリ、ハードディスクあるいはSSD(Solid State Drive)等の書き換え可能な記憶媒体であってもよく、USB(Universal Serial Bus)メモリ、メモリカードおよびハードディスクなどであっても良い。また、MRAM(Magnetoresistive RAM)、PRAM(Phase change RAM)、ReRAM(Resistive RAMといったRAMを不揮発メモリと見なしてもよい。なお、プロセッサ10aは、メモリリソース10dに格納されている土壌評価プログラム100を他のコンピュータに配信するサービスを行ってもよい。また、図4の記憶部13は、メモリリソース10dによって実現される。
【0075】
UIデバイス10bは、ユーザ(オペレーターでもよい)の指示をサーバ10に入力する入力デバイス、及びサーバ10で生成した情報等を出力する出力デバイスである。入力デバイスには、例えばキーボード、タッチパネル、マウスなどのポインティングデバイスやマイクロフォンのような音声入力デバイスなどがある。また、出力デバイスには、例えばディスプレイ、プリンタ、及び音声合成装置等がある。サーバ10とユーザとの間の情報の入出力は、UIデバイス10bを介して実行される。なお、UIデバイス10bは、入力デバイスのみでもよく、出力デバイスのみでもよい。図4の入力部14と表示部19は、UIデバイス10bによって実現される。
【0076】
NIデバイス10cは、外部装置との間で情報通信を行う通信装置である。NIデバイス10cは、ネットワーク40を介して複数のセンサ装置30の各々と情報通信を行う。サーバ10(又はプロセッサ10a)とセンサ装置30との情報通信は、NIデバイス10cを介して実行される。また、図4の通信部12は、NIデバイス10cによって実現される。
【0077】
本明細書に記載された効果はあくまで例示であって限定されるものではなく、他の効果があってもよい。
【0078】
本発明は、上記した実施形態に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した各実施形態は、本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、本発明が、必ずしも説明した全ての構成要素を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施形態の構成の一部を、他の実施形態の構成に置き換えることが可能であり、ある実施形態の構成に、他の実施形態の構成を加えることも可能である。また、各実施形態の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
【0079】
また、上記の各構成、機能、処理部、処理手段等は、それらの一部または全部を、例えば集積回路で設計する等によりハードウェアで実現してもよい。また、上記の各構成、機能等は、プロセッサがそれぞれの機能を実現するプログラムを解釈し、実行することによりソフトウェアで実現されてもよい。各機能を実現するプログラム、判定テーブル、ファイル等の情報は、メモリや、HDD、SSD等の記憶装置、または、IC(Integrated Circuit)カード、SD(Secure Digital)カード、DVD(Digital Versatile Disc)等の記録媒体に置くことができる。また、制御線や情報線は説明上必要と考えられるものを示しており、製品上必ずしも全ての制御線や情報線を示しているとは限らない。実際には殆ど全ての構成が相互に接続されていると考えてもよい。
【0080】
土壌評価システム1は、土壌評価プログラム100により実現される機能や処理の一部または全部をユーザ(オペレータ)が実施することで実現してもよい。
【0081】
なお、サーバ10がUIデバイス10bを持たず、代わりにサーバ10の外部のスマートフォンやタブレット端末等のプロセッサシステム(外部プロセッサシステムと呼ぶ)に、ユーザへの出力処理や、ユーザからの入力処理の一部を任せる場合がある。このような場合、サーバ10(又はプロセッサ10a、土壌評価プログラム100)は、以上に説明の通りの処理やプログラムの他の部分を実行するために、以下を行ってもよい。
【0082】
*以上に説明のUIデバイス10bを用いたユーザへの出力の代わりとして、NIデバイス10cを介して外部プロセッサシステムに、ユーザへの出力に必要なデータの送信をする。当該データの例としては、出力するデータそのもの、出力データを別プロセッサシステムで生成するためのデータが考えられるが、外部プロセッサシステムでユーザ出力を行う処理が記述されたプログラムやWebデータであってもよい。
【0083】
*以上に説明のUIデバイス10bを用いたユーザからの入力又は操作受信の代わりとして、NIデバイス10cを介して外部プロセッサシステムから、ユーザ入力又は操作を示すデータを受信する。別な視点では、ユーザへのデータ出力の意味は、サーバ10自身が行うことも含む以外に、サーバ10以外の別の存在に当該データ出力をさせる(使役)ことを含めてもよい。また、ユーザからの入力又は操作受信の意味は、サーバ10のUIデバイス10bでユーザへ直接出力や受信をする以外に、サーバ10が間接的に当該受信をすることを含めてもよい。
【符号の説明】
【0084】
1…土壌評価システム、2a~2c…水分センサ、2x…第1の導電膜、2y…絶縁膜、2z…第2の導電膜、5…土壌、5a…地面、5b…縦穴、5d…湿った土壌、7…ケーシング、8…同軸ケーブル、9…電磁波、10…サーバ、10a…プロセッサ、10b…UIデバイス、10c…NIデバイス、10d…メモリリソース、10e…バス、11…演算部、12…通信部、13…記憶部、14…入力部、15…土質情報、15a…センサID、15b…設置位置、15c…深さ位置、16…土質別危険度情報、16a…含水率、16b…危険度、17…土壌危険度データベース、17a…時刻、17b…緯度、17c…経度、17d…センサ高度、17e…土質、17f…測定周波数、17g…含水率、17h…危険度、18…アンテナ、19…表示部、20…センサ回路、21…水分量測定部、22…通信部、23…アンテナ、30…センサ装置、40…ネットワーク、50…水、100…土壌評価プログラム。
図1
図2
図3
図4
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図6
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図8
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図10