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特開2024-171082スペクトラム監視装置、スペクトラム監視方法およびプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024171082
(43)【公開日】2024-12-11
(54)【発明の名称】スペクトラム監視装置、スペクトラム監視方法およびプログラム
(51)【国際特許分類】
   H04B 17/345 20150101AFI20241204BHJP
   H04B 17/391 20150101ALI20241204BHJP
   H04W 16/18 20090101ALI20241204BHJP
   H04W 16/14 20090101ALI20241204BHJP
   H04W 24/08 20090101ALI20241204BHJP
   G01R 29/08 20060101ALI20241204BHJP
【FI】
H04B17/345
H04B17/391
H04W16/18
H04W16/14
H04W24/08
G01R29/08 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023087962
(22)【出願日】2023-05-29
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.PYTHON
(71)【出願人】
【識別番号】000004237
【氏名又は名称】日本電気株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000232221
【氏名又は名称】日本電気航空宇宙システム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100181135
【弁理士】
【氏名又は名称】橋本 隆史
(72)【発明者】
【氏名】大辻 太一
(72)【発明者】
【氏名】荒 純一
【テーマコード(参考)】
5K067
【Fターム(参考)】
5K067AA03
5K067EE12
5K067FF23
5K067HH22
5K067LL11
(57)【要約】
【課題】無線通信において電波異常(電波干渉)を監視する際に雑音による変動の影響を受けずに電波干渉の発生時刻及び発生個所を特定する。
【解決手段】スペクトラム監視装置は、無線送信された電波を受信して受信信号を生成し、受信信号からスペクトラム情報を計算して受信スペクトラム画像を生成し、受信スペクトラム画像を学習により再構成して再構成スペクトラム画像を生成し、受信スペクトラム画像と再構成スペクトラム画像の差分に基づいて干渉信号の有無を判定し、干渉信号の存在が判定されたとき、干渉信号が存在する周波数帯域を可視化する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
無線送信された電波を受信して受信信号を生成する受信部と、
前記受信信号からスペクトラム情報を計算して受信スペクトラム画像を生成するスペクトラム画像生成部と、
前記受信スペクトラム画像を学習により再構成して再構成スペクトラム画像を生成するスペクトラム再構成部と、
前記受信スペクトラム画像と前記再構成スペクトラム画像の差分に基づいて干渉信号の有無を判定する判定部と、
前記判定部により前記干渉信号の存在が判定されたとき、前記干渉信号が存在する周波数帯域を可視化する可視化部と、
を具備するスペクトラム監視装置。
【請求項2】
前記判定部は、前記受信スペクトラム画像と前記再構成スペクトラム画像のピクセル毎の第1の差分値の和が第1の閾値より大きい場合に異常と判定し、前記受信スペクトラム画像と前記再構成スペクトラム画像のレベル方向の第2の差分値を周波数帯域毎に算出し、前記第2の差分値が第2の閾値より大きい前記周波数帯域を雑音変動ではないと判定し、前記可視化部は前記判定部により異常と判定され、かつ、雑音変動ではないと判定された前記周波数帯域を可視化する、請求項1に記載のスペクトラム監視装置。
【請求項3】
前記学習用の学習モデルの生成時に正常と判定される第1のスペクトラムデータに係る第1の度数分布と異常と判定される第2のスペクトラムデータに係る第2の度数分布が重複するときの前記第1の差分値から前記第1の閾値を算出し、前記雑音変動のみによる第3のスペクトラムデータに係る第3の度数分布と前記干渉信号を含む第4のスペクトラムデータに係る第4の度数分布が重複するときの前記第2の差分値から前記第2の閾値を算出する、請求項2に記載のスペクトラム監視装置。
【請求項4】
無線送信された電波を受信して受信信号を生成し、
前記受信信号からスペクトラム情報を計算して受信スペクトラム画像を生成し、
前記受信スペクトラム画像を学習により再構成して再構成スペクトラム画像を生成し、
前記受信スペクトラム画像と前記再構成スペクトラム画像の差分に基づいて干渉信号の有無を判定し、
前記干渉信号の存在が判定されたとき、前記干渉信号が存在する周波数帯域を可視化する、スペクトラム監視方法。
【請求項5】
スペクトラム監視装置のコンピュータに実装されるプログラムであって、
無線送信された電波を受信して受信信号を生成させ、
前記受信信号からスペクトラム情報を計算して受信スペクトラム画像を生成させ、
前記受信スペクトラム画像を学習により再構成して再構成スペクトラム画像を生成させ、
前記受信スペクトラム画像と前記再構成スペクトラム画像の差分に基づいて干渉信号の有無を判定させ、
前記干渉信号の存在が判定されたとき、前記干渉信号が存在する周波数帯域を可視化させる、プログラム。
【請求項6】
無線送信された電波に係る受信信号から生成した受信スペクトラム画像と前記受信スペクトラム画像を学習により再構成して生成した再構成スペクトラム画像の差分に基づいて周波数帯域の異常領域を判定する異常判定部と、
前記周波数帯域の前記異常領域を可視化する可視化部と、
を具備するスペクトラム監視装置。
【請求項7】
無線送信された電波の受信信号から生成した受信スペクトラム画像と前記受信スペクトラム画像を学習により再構成して生成した再構成スペクトラム画像の差分に基づいて周波数帯域の異常領域を判定し、
前記周波数帯域の前記異常領域を可視化する、スペクトラム監視方法。
【請求項8】
スペクトラム監視装置のコンピュータに実装されるプログラムであって、無線送信された電波の受信信号から生成した受信スペクトラム画像と前記受信スペクトラム画像を学習により再構成して生成した再構成スペクトラム画像の差分に基づいて周波数帯域の異常領域を判定させ、
前記周波数帯域の前記異常領域を可視化させる、プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線通信の電波干渉を監視するスペクトラム監視装置、スペクトラム監視方法およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
警察無線、消防無線、航空無線、鉄道無線などの重要無線通信には高度のセキュリティが必要であり、無線通信に対して妨害が発生した場合、人命に関わる事態に発展する可能性があるため、無線通信に対する電波干渉や通信障害を検知(監視)することが必要とされる。個人や自営業者が使用する無線通信技術として、Wi-Fiなどの無線LAN(Local Area Network)に加えて第4世代移動通信システム(4G)、第5世代移動通信システム(5G)、セルラー通信を応用したプライベートLTE(Long Term Evolution)やローカル5Gなどの通信システムが注目されている。プライベートLTEやローカル5Gでは、エリア毎或いは事業者毎にシステムを構築することが想定される。そのため、異なる事業者が敷設したシステムの隣接エリア間で電波干渉が発生する可能性がある。自システムに対する干渉を検知することにより、無線通信性能の劣化防止や劣化原因の解析を高効率的に行うことが期待される。
【0003】
無線通信において電波干渉や通信障害を検知する手法として種々の技術が開発されているが、電波の受信状態を検知する手法としてスペクトラム(周波数分布)を監視することが行われている。特許文献1は、無線通信において受信データに含まれる電波異常を精度良く検出する電波異常検知システムを開示しており、受信データの第1期間毎の第1特徴量と第1期間よりも長い第2期間毎の第2特徴量を用いて受信データに含まれる電波異常を検知するものである。特許文献2は、無線送信を行う送信装置を照合する送信装置照合装置を開示しており、送信装置から無線送信された信号を受信してスペクトログラム(周波数スペクトルの計算結果を示す3次元グラフ)を生成し、受信信号を信号領域に応じたパラメータで変換して特徴量を抽出して予め記憶された特徴量との類似度に基づいて送信装置を照合するものである。特許文献3は、電波の発射状況の異常を判定する異常判定装置を開示しており、無線電波を受信して所定の周波数帯における特徴量を抽出して記憶し、当該特徴量が予め設定された正常範囲内に入っているか判定した結果に基づいて無線電波の異常を検知するための閾値を設定した異常判定マスクを生成するものである。
【0004】
一方、データ分析のための機械学習(Machine Learning)や深層学習(Deep Learning)が開発されており、種々の画像における異常検知や無線通信における電波異常の検知に用いられる。深層学習において、自己符号化器(Autoencoder)は、入力データを次元圧縮して重要な特徴量だけ残した後、再度、元の次元に復元処理をするアルゴリズムであり、敵対的生成ネットワーク(GAN: Generative Adversarial Networks)はジェネレータ(Generator)とディスクリミネータ(Discriminator)という2つのネットワークを用いて、入力データから新たに疑似データを生成するものであり、音声や画像の生成に応用されている。非特許文献1は、GANを用いてデジタルテレビジョン受信周波数帯域における無線スペクトラム異常を検出する技術を開示している。非特許文献2は、GANを用いた異常検知技術を開示しており、空港の手荷物検査に用いられるX線画像の解析に応用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2022-182844号公報
【特許文献2】特開2021-180388号公報
【特許文献3】国際公開第2021/176805号
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】L. Zhang, C.X. Huang, H. Tang, J.J. Yang, and M. Huang,“DTV radio spectrum anomaly detection based on an improved GAN”, 2020 XXXIIIrd General Assembly and Scientific Symposium of the International Union of Radio Science, 2020, pp. 1-4
【非特許文献2】S. Akcay, A.A-Abarghouei, T.P. Breckon, “GANomarly: Semi-Supervised Anomaly Detection via Adversarial Training”, ACCV2018, Dec. 2018
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
無線通信システムに対する電波干渉を検知するとき、電波の受信レベルが所定の閾値を超えた場合に当該電波を異常と判定する手法が取られる。受信レベルの異常が検知された場合、電波干渉の発生時刻をログに記録するだけでなく、無線通信の監視目的によっては電波干渉に対する対策を実施するため、電波干渉(電波異常)が発生した周波数ビンを可視化することが望ましい。
【0008】
特許文献1では、電波干渉の発生時刻を特定することはできるものの、当該発生時刻において電波異常が発生した周波数ビンを特定しておらず、電波干渉発生個所を詳細に特定(可視化)することはできない。特許文献2は、送信装置(無線端末)から無線送信された電波を用いて送信源を照合する際に受信信号から生成したスペクトログラムに基づいて特定の信号領域を検出するものであり、標準化されている通信方式、標準化されていない通信方式、非意図的に電波を発信する装置を識別するものであるが、電波干渉の発生時刻や電波異常が発生した周波数ビンを特定するものではない。特許文献3は、重要無線通信に対する妨害に対処すべく所定周波数帯の特徴量に関する閾値を設定した異常判定マスクを生成して周波数スペクトラムにおける受信レベルの低下を検知しているが、特定の周波数帯における電波異常を検知できるものの、電波干渉の発生時刻に関連付けて電波異常が発生した周波数ビンを特定するものではない。
【0009】
非特許文献1は、GANモデルを用いて元のスペクトラム画像から再構成スペクトラム画像を生成しており、再構成されていないスペクトラムの個所を可視化することで詳細な電波干渉個所を特定することはできるものの、単なる雑音による周波数変動成分も可視化されてしまうため、電波干渉信号の発生個所を区別するのが困難である。このため、雑音による周波数変動の影響を受けずに電波干渉信号の発生個所を特定可能なスペクトラム監視方法が求められている。非特許文献2は、GANを用いた異常判定モデルを導入して高次元画像空間と干渉遅延空間の生成を学習しており、自己符号化器を用いた異常検知手法を提示している。特に、正常データで学習した自己符号化器は異常データを正しく復元できないため、入力データ(入力画像)と復元データ(再構成画像)の誤差(再構成誤差)が大きくなるという特徴を用いて、再構成誤差が所定の閾値以上であれば入力データは異常であると判定している。非特許文献2は、入力画像と再構成画像の誤差に応じて異常判定を行うのみであり、無線通信におけるスペクトラム画像による電波異常の検出を行うことはできない。
【0010】
本発明は、上述の課題を解決するスペクトラム監視装置、スペクトラム監視方法およびプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の第一の態様は、無線送信された電波を受信して受信信号を生成する受信部と、 受信信号からスペクトラム情報を計算して受信スペクトラム画像を生成するスペクトラム画像生成部と、受信スペクトラム画像を学習により再構成して再構成スペクトラム画像を生成するスペクトラム再構成部と、受信スペクトラム画像と再構成スペクトラム画像の差分に基づいて干渉信号の有無を判定する判定部と、判定部により干渉信号の存在が判定されたとき、干渉信号が存在する周波数帯域を可視化する可視化部と、を具備するスペクトラム監視装置である。
【0012】
本発明の第二の態様は、無線送信された電波を受信して受信信号を生成し、受信信号からスペクトラム情報を計算して受信スペクトラム画像を生成し、受信スペクトラム画像を学習により再構成して再構成スペクトラム画像を生成し、受信スペクトラム画像と再構成スペクトラム画像の差分に基づいて干渉信号の有無を判定し、干渉信号の存在が判定されたとき、干渉信号が存在する周波数帯域を可視化する、スペクトラム監視方法である。
【0013】
本発明の第三の態様は、スペクトラム監視装置のコンピュータに実装されるプログラムであって、無線送信された電波を受信して受信信号を生成させ、受信信号からスペクトラム情報を計算して受信スペクトラム画像を生成させ、受信スペクトラム画像を学習により再構成して再構成スペクトラム画像を生成させ、受信スペクトラム画像と再構成スペクトラム画像の差分に基づいて干渉信号の有無を判定させ、干渉信号の存在が判定されたとき、干渉信号が存在する周波数帯域を可視化させる、プログラムである。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、無線通信において電波干渉(電波異常)を監視する際に雑音による変動の影響を受けずに電波干渉の発生時刻及び発生個所を特定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】第一実施形態に係るスペクトラム監視装置のブロック図である。
図2】第一実施形態に係るスペクトラム監視装置の処理手順を示すフローチャートである。
図3】第一実施形態に係るスペクトラム監視装置の異常判定処理を示すフローチャートである。
図4】受信スペクトラム画像と再構成スペクトル画像のピクセル毎の第1の差分値の度数分布を示すグラフである。
図5】受信スペクトラム画像と再構成スペクトラム画像のレベル方向の第2の差分値の度数分布を示すグラフである。
図6】第二実施形態に係るスペクトラム監視装置のブロック図である。
図7】第二実施形態に係るスペクトラム監視装置の処理手順を示すフローチャートである。
図8】第二実施形態に係るスペクトラム監視装置のモデル学習の詳細を示すフローチャートである。
図9】第三実施形態に係るスペクトラム監視システムの構成を示すブロック図である。
図10】第三実施形態に係るスペクトラム監視システムの処理手順を示すシーケンス図である。
図11】スペクトラム監視装置の最小構成を示すブロック図である。
図12】スペクトラム監視装置の処理手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
無線通信における電波干渉(電波異常)を監視するスペクトラム監視装置、スペクトラム監視方法およびプログラムについて、実施形態とともに添付図面を参照して詳細に説明する。
【0017】
[第一実施形態]
図1は、第一実施形態に係るスペクトラム監視装置1のブロック図である。スペクトラム監視装置1は、通信機能や表示機能を具備するパーソナルコンピュータ(PC)などの情報処理装置により構成されており、プロセッサがメモリに格納されたソフトウェア(スペクトラム監視プログラムなど)を実行することにより所望の機能を実装する。プロセッサとしては、装置全体を制御するCPU(Central Processing Unit)の他に機械学習や深層学習などによる画像分析を行うGPU(Graphics Processing Unit)、GPGPU(General-Purpose GPU)、TPU(Tensor Processing Unit)などが適用される。ソフトウェアとしては、C言語や組込用プログラミング言語の他に機械学習や深層学習のためのPythonやCuPyなどが適用される。スペクトラム監視装置1は、受信部11と、スペクトラム画像生成部12と、スペクトラム再構成部13と、判定部14と、可視化部15と、を具備する。受信部11は、外部から無線通信された電波をアンテナ経由で受信して、受信信号をスペクトラム画像生成部12へ送る。スペクトラム画像生成部12は、受信部11からの受信信号に対して離散フーリエ変換(DFT: Discrete Fourier Transform)を行って計測データの周波数成分を求めてスペクトラム情報を算出し、スペクトラム情報からスペクトラム画像を生成する。スペクトラム画像は、電波の周波数と振幅の関係を可視化したものである。受信電波に係るスペクトラム画像を受信スペクトラム画像と称する。スペクトラム再構成部13は、受信スペクトラム画像を再構成して再構成スペクトラム画像を生成する。スペクトラム画像の再構成手法として、例えば、敵対的生成ネットワーク(GAN)や畳込みニューラルネットワーク(CNN: Convolutional Neural Networks)などによる深層学習による再構成(Deep Learning Reconstruction)を用いてもよい。なお、スペクトラム画像の生成手法や再構成手法については種々のアルゴリズムが開発されている。
【0018】
判定部14は、受信スペクトラム画像と再構成スペクトラム画像のピクセル毎の差分値(第1の差分値)の和を算出し、第1の差分値の和が第1の閾値より大きいときに異常と判定する。また、判定部14は、受信スペクトラム画像と再構成スペクトラム画像のレベル方向の差(第2の差分値)を周波数ビン毎に算出し、第2の差分値が第2の閾値より小さい周波数ビンには雑音による変動と判定する。第1の閾値はピクセル差分に係るものであり、第2の閾値は雑音変動に係るものであり、設計値や計測値などとして予め設定される。可視化部15は、判定部14により異常と判定され、かつ、雑音による変動と判定されていない受信スペクトラム画像の周波数ビンに対して第1の差分値の存在するピクセルを着色する。すなわち、スペクトラム画像間のピクセル差分が比較的大きく、かつ、レベル差分が比較的小さな雑音変動と判定されない周波数ビンにおいてピクセル差分が存在する領域を着色して表示する。これにより、スペクトラム監視装置1のユーザ(無線通信に係るスペクトラム監視を行うオペレータなど)は、スペクトラム画像において着色された周波数ビンの領域を見ることにより電波異常の発生個所を確認することができる。
【0019】
次に、スペクトラム監視装置1の動作例について図2乃至図3のフローチャートを参照して説明する。図2はスペクトラム監視装置1の全体的な処理手順(ステップS11~S15)を示し、図3は異常判定処理(ステップS141~S144)を示す。図2において、スペクトラム監視装置1の受信部11は、アンテナを介して受信した電波から受信信号を取得する(S11)。スペクトラム画像生成部12は、受信信号からスペクトラム情報を算出して受信スペクトラム画像を生成する(S12)。スペクトラム再構成部13は、受信スペクトラム画像を再構成して再構成スペクトラム画像を生成する(S13)。判定部14は、受信スペクトラム画像と再構成スペクトラム画像の差分に応じて異常判定処理を実行する(S14)。可視化部15は、異常発生個所(異常判定された周波数ビンの領域)に着色を行って可視化する(S15)。
【0020】
図3は、ステップS14の異常判定処理の詳細を示しており、スペクトラム監視装置1の判定部14にて実行される。異常判定処理では、受信スペクトラム画像と再構成スペクトラム画像のピクセル毎の差分(第1の差分値)の和を算出し(S141)、第1の差分値の和が第1の閾値より大きいか判定する(S142)。第1の差分値の和が第1の閾値より小さければ異常判定されない。第1の差分値の和が第1の閾値より大きければ、受信スペクトラム画像と再構成スペクトラム画像のレベル方向の差(第2の差分値)を周波数ビン毎に算出し(S143)、第2の差分値が第2の閾値より大きいか判定する(S144)。第2の差分値が第2の閾値より小さければ、仮に、異常発生が検知されても雑音変動によるものと判定されるため、可視化を行わない。第2の差分値が第2の閾値より大きければ、雑音変動ではない異常の発生が検知されるため、異常発生に係る周波数ビンの領域を着色する。つまり、スペクトラム画像から検知される第1の差分値が第1の閾値より大きく、かつ、第2の差分値が第2の閾値より大きい場合に、異常判定が行われて、ステップS14からステップS15へ進んで異常発生個所の可視化が行われる。
【0021】
次に、判定部14による異常判定処理について、図4乃至図5を参照して数式1、2とともに説明する。図3のステップS141にて、受信スペクトラム画像と再構成スペクトラム画像のピクセル毎の差分値(第1の差分値)の和を算出するが、第i番目の受信スペクトラム画像をs、第i番目の再構成スペクトラム画像を^sとすると、第1の差分値は数式(1)で表わされる。
【0022】
【数1】
【0023】
数式1において、符号rは第i番目の受信スペクトラム画像と再構成スペクトラム画像に対応する第1の差分値の和を示し、符号(m、n)はM×N個のピクセルで構成されるスペクトラム画像の座標を示す(M、Nは自然数)。
【0024】
図3のステップS142は、スペクトラム画像間のピクセル毎の第1の差分値(r)が第1の閾値(Th)より大きいか判定することにより、干渉信号の有無などに起因する受信電波の異常の発生を判定する。具体的には、r≧Thの場合に異常が発生していると判定し、r<Thの場合に受信電波が正常であると判定する。
【0025】
図4は、第1の閾値Thの設定方法の一例を説明するものであり、第1の差分値の度数分布を示すグラフである。図4のグラフの横軸は第1の差分値rを示し、縦軸は第1の差分値rの度数を示す。機械学習(深層学習)用に2つのデータセットを用意しており、正常データの度数分布を示す実線で示される波形と、異常データの度数分布を示す点線で示す波形が度数分布に現れる。異常データは正常データに比べて第1の差分値rが高くなる。つまり、受信スペクトラムデータが正常な場合の第1の差分値の度数分布D1と、受信スペクトラムデータが異常な場合の第1の差分値の度数分布D2がグラフ上に作成されている。正常データに係る度数分布D1と異常データに係る度数分布D2が交差(重複)するときの第1の差分値rを読み取って第1の閾値Thとして設定する。第1の閾値Thの設定方法は図4のグラフに限定されるものではないが、正常データと異常データを区別し得るような値を特定して第1の閾値Thに設定することが求められる。
【0026】
図3のステップS143は、受信スペクトラム画像と再構成スペクトラム画像のレベル方向の差分値(第2の差分値)を周波数ビン毎に算出するが、第i番目の受信スペクトラムのデータ列をX、第i番目の再構成スペクトラムのデータ列を^Xとしたとき、第2の差分値は数式(2)で表わされる。
【0027】
【数2】
【0028】
数式2において、符号dは第i番目の受信スペクトラムのデータ列および第i番目の再構成スペクトラムのデータ列に対応する第2の差分値を示し、符号lは周波数ビン番号を示す。Lポイント(Lは自然数)の離散フーリエ変換により受信信号から受信スペクトラムデータが生成された場合、周波数ビン番号はl=0、1、…、L-1で表わされる。
【0029】
図3のステップS144は、スペクトラム画像間のレベル方向の第2の差分値(d)が第2の閾値(Th)より大きいか判定することにより、周波数ビン毎に受信電波の異常が雑音に起因するものであるか判定する。具体的には、d(l)<Thの場合に雑音変動であると判定し、d(l)≧Thの場合に雑音変動ではなく干渉信号などに起因する受信電波の異常であると判定する。
【0030】
図5は、第2の閾値Thの設定方法の一例を説明するものであり、第2の差分値の度数分布を示すグラフである。図5のグラフの横軸は第2の差分値dを示し、縦軸は第2の差分値dの度数を示す。機械学習(深層学習)用に2つのデータセットを用意しており、雑音変動のみを含むデータの度数分布を示す実線で示される波形と、干渉信号を含むデータの度数分布を示す点線で示される波形が度数分布に現れる。雑音変動のみのデータは干渉信号を含むデータに比べて第2の差分値dが低くなる。つまり、雑音変動のみの受信スペクトラムデータの第2の差分値の度数分布D3と、干渉信号を含む受信スペクトラムデータの第2の差分値の度数分布D4がグラフ上に作成されている。雑音変動に係る度数分布D3と干渉信号に係る度数分布D4が交差(重複)するときの第2の差分値dを読み取って第2の閾値Thとして設定する。第2の閾値Thの設定方法は図5のグラフに限定されるものではないが、雑音変動に係るデータと干渉信号に係るデータを区別し得るような値を特定して第2の閾値Thに設定することが求められる。
【0031】
[第二実施形態]
次に、第二実施形態について図6乃至図8を参照して説明する。図6は、第二実施形態に係るスペクトラム監視装置2のブロック図である。図6に示すスペクトラム監視装置2は、図1に示すスペクトラム監視装置1の構成に加えて、スペクトラム再構成部13で使用する学習モデルを生成するために保管部21と学習部22を追加している。スペクトラム監視装置2は、スペクトラム監視装置1と同様の機能を実現する受信部11と、スペクトラム画像生成部12と、スペクトラム再構成部13と、判定部14と、可視化部15を具備している。このため、保管部21と学習部22について詳細に説明する。
【0032】
保管部21は、スペクトラム画像生成部12で生成された受信スペクトラム画像を保管する。学習部22は、受信スペクトラム画像のデータを学習して学習済みモデルを生成し、スペクトラム再構成部13へ出力する。
【0033】
次に、スペクトラム監視装置2の動作例について図7乃至図8を参照して説明する。図7はスペクトラム監視装置2の処理手順を示すフローチャート(ステップS21、S22)であり、図8図7のステップS22におけるモデル学習の詳細を示すフローチャート(S211~S216)である。図7に示すように、スペクトラム監視装置2はモデル学習(S21)と学習済みモデルを用いた推論(異常検知処理)(S22)を行う。
【0034】
図8は、スペクトラム監視装置2のモデル学習(S21)の詳細を示している。スペクトラム監視装置2において、受信部11は無線通信の電波から受信信号を取得し(S211)、スペクトラム画像生成部12は受信信号から受信スペクトラム画像を生成し(S212)、保管部21は受信スペクトラム画像を保存する(S213)。その後、学習部22は保管部21から受信スペクトラム画像を学習データとして読み出し(S214)、学習データを用いて学習を行い(S215)、学習済みモデルを生成してスペクトラム再構成部13へ出力する(S216)。
【0035】
第二実施形態に係るスペクトラム監視装置2における学習済みモデルを用いた推論(異常検知処理)は、第一実施形態に係るスペクトラム監視装置1の異常判定処理(図2のステップS11~S15)と同様であるが、スペクトラム再構成部13が学習部22で生成された学習済みモデルを用いて受信スペクトラム画像を再構成する点で相違している。また、学習部22にて学習済みモデルを生成するための機械学習アルゴリズムとして、画像分析から得られた特徴量の次元削減に用いられる主成分分析(Principal Component Analysis)を用いてもよく、入力データを圧縮して重要な特徴量だけを残した後、元の次元に復元するような処理を行うアルゴリズムを用いてもよい。或いは、敵対的生成ネットワーク(GAN)に基づく異常検知手法として知られるGANomaly(非特許文献2)のような自己符号化器(Autoencoder)の構造を備えるアルゴリズムを用いてもよい。
【0036】
[第三実施形態]
第二実施形態に係るスペクトラム監視装置2では、第一実施形態に係るスペクトラム監視装置1の構成とともに保管部21と学習部22を具備しているが、複数サイトにスペクトラム監視装置を配置する場合、各サイトに学習部を備えるのはサイトスペースやコストの観点で妥当ではない。そのため、各サイトに配置したスペクトラム監視装置から受信スペクトラム画像を収集し、各サイトに対応する学習モデルを個別に生成して複数サイトの夫々に適応する学習モデルを配布するようにしてもよい。
【0037】
第三実施形態では、図6に示すスペクトラム監視装置2におけるスペクトラム再構成部13で使用する学習モデルを生成する機能を実現する保管部21と学習部22とをモデル学習装置として分離した。これは、モデル学習装置を一カ所に設置し、複数のスペクトラム監視装置を無線通信のスペクトラム監視が必要とされる複数サイトに設置するような場合に有効な構成である。つまり、モデル学習装置と複数サイトに設置されるスペクトラム監視装置はネットワーク接続されており、操作者が操作卓(Operator Console)を使用してモデル学習装置やスペクトラム監視装置を遠隔で制御する。
【0038】
図9は、第三実施形態に係るスペクトラム監視システム3の構成を示すブロック図である。スペクトラム監視システム3は、複数サイトに設置される複数のスペクトラム監視装置100と、複数のスペクトラム監視装置100とネットワーク経由で通信接続するモデル学習装置200と、を具備する。スペクトラム監視システム3は、第二実施形態に係るスペクトラム監視装置2の構成を分割して通信接続したものであり、スペクトラム監視装置100は受信部11、スペクトラム画像生成部12、スペクトラム再構成部13、判定部14、可視化部15を備え、モデル学習装置200は保管部21と学習部22を備える。モデル学習装置200において、保管部21はスペクトラム画像生成部12で生成される受信スペクトラム画像を受信して保管し、学習部22は学習データを用いて学習して生成した学習モデルをスペクトラム再構成部13へ送信する。
【0039】
図10は、第三実施形態に係るスペクトラム監視システム3の処理手順を示すシーケンス図(ステップS301~S303)であり、操作者と、スペクトラム監視装置100と、モデル学習装置200との間のやり取りを示している。図10のシーケンス図は図7のフローチャートに対応して2つの領域から構成されており、領域Aはモデル学習(S21)に相当し領域Bは学習済みモデルを用いた推論(異常検知処理)(S22)に相当する。
【0040】
図10の領域Aにおいてモデル学習に相当する処理を実施するため、操作者は学習データ収集の指示をモデル学習装置200に行い、当該指示に応じてモデル学習装置200はデータ収集指示をスペクトラム監視装置100に送信する。スペクトラム監視装置100は、スペクトラム画像生成部12により生成された受信スペクトラム画像をモデル学習装置200に送信し、モデル学習装置200は受信スペクトラム画像を保管部21に保管する(S301)。モデル学習装置200の保管部21は、複数の受信スペクトラム画像を順次保管する。そして、スペクトラム監視装置100は操作者から指定された数量の受信スペクトラム画像の収集を完了すると、データ収集完了の報告をモデル学習装置200に送出する。その後、モデル学習装置200は学習データ終了完了の報告を操作者に通知する。操作者は、学習実行の指示をモデル学習装置200に送出し、モデル学習装置200の学習部22は学習データを用いて学習処理を実行して学習済みモデルを生成する(S302)。モデル学習装置200は、学習完了の報告を操作者に通知するとともに、学習済みモデルをスペクトラム監視装置200に転送する。
【0041】
図10の領域Bにおいて学習済みモデルを用いた推論(異常検知処理)に相当する処理を実施するため、操作者はスペクトラム監視の指示をスペクトラム監視装置100に送出し、スペクトラム監視装置100は異常検知処理を実行する(S303)。具体的には、スペクトラム再構成部13は学習済みモデルに対して受信スペクトラム画像を適用して再構成スペクトラム画像を生成し、判定部14は受信スペクトラム画像と再構成スペクトラム画像を用いて異常判定を行い、異常発生が検知されたときには可視化部15はスペクトラム画像における異常発生個所を着色して可視化する。スペクトラム監視装置100は異常発生個所の可視化結果を操作者に通知する。
【0042】
図10では、1サイト分のスペクトラム監視装置100とモデル学習装置200を示しているが、複数サイト分のスペクトラム監視装置100を設けた場合、モデル学習装置200は複数のスペクトラム監視装置100から複数サイト分の受信スペクトラム画像を収集して学習処理を実行し、複数のスペクトラム監視装置100に個別に適用される複数の学習済みモデルを生成してもよい。また、複数のモデル学習装置200を設けて複数のスペクトラム監視装置100について複数の学習済みモデルを生成してもよい。図9に示すようなスペクトラム監視システム3において図10に示すようなシーケンスを実施することにより、モデル学習装置200とスペクトラム監視装置100が遠隔に設置されている場合においても、上述のように学習データを用いた学習モデルの生成とスペクトラム画像を用いた異常検知を実施することができる。
【0043】
上述の実施形態において、スペクトラム監視装置はプロセッサ(CPU、GPUなど)がスペクトラム監視プログラムや異常判定プログラム(或いは、異常検知プログラム)などのコンピュータプログラムを実行して上述の機能を実装しているが、コンピュータプログラムを記憶媒体(ROM、RAMなどの半導体メモリ)に格納してもよく、或いは、他の装置からコンピュータプログラムを配信してもよい。また、コンピュータプログラムは、上述した機能の一部を実現するためのものであっても良く、或いは、上述した機能をコンピュータシステムに既に記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるもの、いわゆる差分ファイル(又は、差分プログラム)であっても良い。
【0044】
次に、本発明の特徴や効果について記述する。本発明は送信装置などの電波発生源からの電波を受信してなる受信データを監視するスペクトラム監視装置(或いは、スペクトラム監視方法を実装する情報処理装置)において、受信スペクトラム画像と再構成スペクトラム画像のピクセル毎の差分値(第1の差分値)の和が第1の閾値を超えるときに電波異常(又は電波障害)と判断することに加えて、受信スペクトラム画像と再構成スペクトラム画像のレベル方向(振幅方向)の差分値(第2の差分値)を周波数ビン毎に算出し、第2の差分値が第2の閾値より低い周波数ビンは雑音による変動でないと判定することにより、雑音変動の影響を低減した上で干渉信号の発生個所の可視化を可能としている。
【0045】
従来の手法では、ある時刻に電波異常(電波干渉)が発生したことを検知できたとしても、どの周波数ビンに電波異常が発生したかを特定できない。仮に、電波異常が発生した周波数帯域を可視化できたとしても、雑音による電波変動分も可視化されてしまい具体的に電波異常の発生した周波数ビンを特定できない。本実施形態の構成および動作により、雑音変動の影響を低減した上で干渉信号の発生個所を可視化することができ、換言すれば、雑音変動も可視化されることによる雑音と干渉信号の発生個所の区別のしづらさを解消することができる。
【0046】
本発明は、上述の実施形態に限定されるものではなく、スペクトラム監視装置の構成や処理手順は第一実施形態乃至第三実施形態(図1乃至図3図6乃至図10)に限定されるものではなく、閾値の設定方法も第一実施形態(図4乃至図5)に限定されるものではない。図1において、アンテナを備えた受信部11をスペクトラム監視装置1に搭載する必要はなく、外部の受信装置から受信データを入力するようにしてもよく、スペクトラム画像生成部12、スペクトラム再構成部13、判定部14を一つに纏めてもよい。
【0047】
図11は、上述の実施形態の最小構成となるスペクトラム監視装置4のブロック図であり、異常判定部41と可視化部42を具備する。異常判定部41は、外部の電波発生源(無線送信装置など)からの電波に相当する受信データを受信して離散フーリエ変換(DFT: Discrete Fourier Transform)を行ってスペクトラム情報を算出し、スペクトラム情報からスペクトラム画像を生成するとともに、敵対的生成ネットワーク(GAN)や畳込みニューラルネットワーク(CNN: Convolutional Neural Networks)などの深層学習による再構成(Deep Learning Reconstruction)や学習モデルを用いた再構成により再構成スペクトラム画像を生成する。その後、異常判定部41は、受信スペクトラム画像と再構成スペクトラム画像のピクセル毎の差分値(第1の差分値)の和を算出し、第1の差分値の和が第1の閾値より大きいときに異常と判定する。また、異常判定部41は、受信スペクトラム画像と再構成スペクトラム画像のレベル方向の差(第2の差分値)を周波数ビン毎に算出し、第2の差分値が第2の閾値より小さい周波数ビンには雑音による変動と判定する。これにより、第1の差分値の合計が第1の閾値より大きく、第2の差分値が第2の閾値より大きい周波数ビンの領域を異常領域と判定する。可視化部42は、受信スペクトラム画像の周波数ビンの異常領域を着色して可視化する。着色方法として、周波数ビンの画像と区別し得る色彩(例えば、赤色)を付すようにしてもよく、或いは、異なる表示態様(破線、陰影など)を適用してもよい。
【0048】
図12は、スペクトラム監視装置4の処理手順を示すフローチャートである(ステップS401~S402)。スペクトラム監視装置4は、異常判定(S401)と可視化(S402)の2つの処理過程を実行する。まず、受信データから生成した受信スペクトラム画像と受信スペクトラム画像を再構成した再構成スペクトラム画像を用意し、受信スペクトラム画像と再構成スペクトラム画像の第1の差分値が第1の閾値より大きく、かつ、第2の差分値が第2の閾値より大きい周波数ビンの領域を異常領域と判定する。その後、受信スペクトラム画像において周波数ビンの異常領域を着色して可視化する。
【0049】
最後に、上述の実施形態は無線通信における電波異常(電波干渉)を検知すべくスペクトラムが図による電波監視を行っているが、種々の無線通信方法を適用することができる。例えば、通信パラメータをソフトウェアで変更可能なソフトウェア無線、複数の無線方式(Wi-Fi、LTEなど)に対応したコグニティブ無線、LTEと5Gサービス間でミリ秒単位の動的な周波数割り当てを実現する動的周波数共有(DSS: Dynamic Spectrum Sharing)を用いた無線通信などにも適用できる。本発明は、添付した特許請求の範囲に定義される技術的範囲内での種々の変形例や設計変更及び改造をも包含するものである。
【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明は、警察無線、消防無線、航空無線、鉄道無線などの重要無線通信における電波異常(電波干渉)を検知してスペクトラム画像にて可視化するものであるが、重要無線通信に限定されるものではなく、通信事業者の通信システム(LTE、5Gなど)、放送事業者の地上波通信設備、衛星通信設備などにも適用可能である。
【符号の説明】
【0051】
1、2、4、100 スペクトラム監視装置
3 スペクトラム監視システム
11 受信部
12 スペクトラム画像生成部
13 スペクトラム再構成部
14 判定部
15 可視化部
21 保管部
22 学習部
41 異常判定部
42 可視化部
200 モデル学習装置
図1
図2
図3
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図12