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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024171085
(43)【公開日】2024-12-11
(54)【発明の名称】波動歯車装置
(51)【国際特許分類】
   F16H 1/32 20060101AFI20241204BHJP
【FI】
F16H1/32 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023087966
(22)【出願日】2023-05-29
(71)【出願人】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】株式会社アイシン
(74)【代理人】
【識別番号】100104433
【弁理士】
【氏名又は名称】宮園 博一
(72)【発明者】
【氏名】安井 彰広
【テーマコード(参考)】
3J027
【Fターム(参考)】
3J027FA11
3J027FA37
3J027FB01
3J027GB03
3J027GC06
3J027GC22
3J027GE14
3J027GE21
(57)【要約】
【課題】フレクスプラインとサーキュラスプラインとの間の動力の伝達が不安定になるのを抑制しながら、波動発生器の回転に伴って発生する振動のn次成分を低減することが可能な波動歯車装置を提供する。
【解決手段】この波動歯車装置100では、波動発生器30の複数の支持部33のうちの少なくとも1つは、周方向における360度を複数の支持部33の個数で割った角度位置から所定の微小角度α分だけずれた角度位置において、径方向に延びる。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の内歯が設けられた環状のサーキュラスプラインと、
前記内歯に噛み合うとともに、前記複数の内歯とは異なる数の複数の外歯が設けられた環状のフレクスプラインと、
モータと、前記フレクスプラインを非円形形状に変形させるように前記フレクスプラインの内周面に前記サーキュラスプラインの径方向の内側から接触する複数の接触部と、前記モータの回転軸と前記複数の接触部の各々とを接続するように前記径方向に延びるとともに前記複数の接触部の各々を支持する複数の支持部と、を含み、前記フレクスプラインの前記外歯が前記サーキュラスプラインの前記内歯に噛み合う位置を前記サーキュラスプラインの周方向に移動させる波動発生器と、を備え、
前記波動発生器の前記複数の支持部のうちの少なくとも1つは、前記周方向における360度を前記複数の支持部の個数で割った角度位置から所定の微小角度分だけずれた角度位置において、前記径方向に延びる、波動歯車装置。
【請求項2】
前記波動発生器の前記複数の支持部は、第1支持部および第2支持部の2つを含み、
前記第1支持部は、前記周方向における第1角度位置において、前記径方向に延び、
前記第2支持部は、前記周方向における前記第1角度位置とは180度ずれた対向角度位置から前記微小角度分だけずれた第2角度位置において、前記径方向に延びる、請求項1に記載の波動歯車装置。
【請求項3】
前記微小角度は、10度以下である、請求項2に記載の波動歯車装置。
【請求項4】
前記微小角度は、前記フレクスプラインの前記外歯の(0.5×m(mは奇数))ピッチに対応する角度である、請求項3に記載の波動歯車装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、波動歯車装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、フレクスプラインの外歯がサーキュラスプラインの内歯に噛み合う位置をフレクスプラインの周方向に移動させる波動歯車装置が知られている(たとえば、特許文献1参照)。
【0003】
上記特許文献1には、可撓性歯車(フレクスプライン)を非円形に撓めて剛性歯車(サーキュラスプライン)に対する噛み合い部分を剛性歯車の円周方向に移動させる波動発生器を備える波動歯車装置が開示されている。上記特許文献1に記載されている波動歯車装置では、波動発生器は、剛性歯車の周方向において等角度間隔で複数箇所の噛み合い部分が形成されるように、可撓性歯車を撓める。そして、複数箇所の噛み合い部分のうちの少なくとも2箇所の噛み合い部分は、剛性歯車の径方向において、波動発生器を回転させるモータの回転軸から可撓性歯車と接触する部分までの長さを互いに異ならせることにより、可撓性歯車と剛性歯車との噛み合い状態が互いに異なる。これにより、波動発生器の回転に伴って発生する振動のn次(nは、複数箇所の噛み合い部分の数)成分が低減されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開2018/198348号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1に記載されている従来の波動歯車装置では、複数箇所の噛み合い部分のうちの少なくとも2箇所の噛み合い部分は、剛性歯車(サーキュラスプライン)の径方向において、波動発生器を回転させるモータの回転軸から可撓性歯車(フレクスプライン)と接触する部分までの長さを互いに異ならせているので、複数箇所の噛み合い部分のうちの少なくとも1箇所は、波動発生器を回転させるモータの回転軸から可撓性歯車と接触する部分までの径方向における長さが比較的短くなる。この場合、可撓性歯車と剛性歯車との噛み合いが比較的浅い噛み合い部分が生じるので、可撓性歯車と剛性歯車との間の動力の伝達が不安定になりやすい。このため、可撓性歯車(フレクスプライン)と剛性歯車(サーキュラスプライン)との間の動力の伝達が不安定になるのを抑制しながら、波動発生器の回転に伴って発生する振動のn次成分を低減することが可能な波動歯車装置が望まれている。
【0006】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、この発明の1つの目的は、フレクスプラインとサーキュラスプラインとの間の動力の伝達が不安定になるのを抑制しながら、波動発生器の回転に伴って発生する振動のn次成分を低減することが可能な波動歯車装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、この発明の一の局面における波動歯車装置は、複数の内歯が設けられた環状のサーキュラスプラインと、内歯に噛み合うとともに、複数の内歯とは異なる数の複数の外歯が設けられた環状のフレクスプラインと、モータと、フレクスプラインを非円形形状に変形させるようにフレクスプラインの内周面にサーキュラスプラインの径方向の内側から接触する複数の接触部と、モータの回転軸と複数の接触部の各々とを接続するように径方向に延びるとともに複数の接触部の各々を支持する複数の支持部と、を含み、フレクスプラインの外歯がサーキュラスプラインの内歯に噛み合う位置をサーキュラスプラインの周方向に移動させる波動発生器と、を備え、波動発生器の複数の支持部のうちの少なくとも1つは、周方向における360度を複数の支持部の個数で割った角度位置から所定の微小角度分だけずれた角度位置において、径方向に延びる。
【0008】
この発明の一の局面における波動歯車装置では、上記のように、波動発生器の複数の支持部のうちの少なくとも1つは、周方向における360度を複数の支持部の個数で割った角度位置(分割角度位置)から所定の微小角度分だけずれた角度位置(ずれ角度位置)において、径方向に延びる。これにより、複数の支持部の各々が支持する複数の接触部のうちの少なくとも1つを、ずれ角度位置において、フレクスプラインの内周面へ接触させることができる。これにより、フレクスプラインの内周面へ接触する接触部を分割角度位置からずれ角度位置に微小角度分だけずらした分、周方向におけるフレクスプラインの外歯とサーキュラスプラインの内歯との噛み合いが最も深くなる部分(噛み合い中心)を、分割角度位置からずれ角度位置側にずらすことができる。これにより、複数の支持部の径方向の長さを互いに異ならせなくても、フレクスプラインの内周面へ接触する接触部がずれ角度位置側にずれている分割角度位置における、フレクスプラインの外歯とサーキュラスプラインの内歯との噛み合い状態と、フレクスプラインの内周面へ接触する接触部が分割角度位置にある場合の分割角度位置における、フレクスプラインの外歯とサーキュラスプラインの内歯との噛み合い状態とを、互いに異ならせることができる。すなわち、複数の支持部の径方向の長さを互いに異ならせなくても、複数の分割角度位置における少なくとも2つの分割角度位置において、フレクスプラインの外歯とサーキュラスプラインの内歯との噛み合い状態を互いに異ならせることができる。その結果、フレクスプラインとサーキュラスプラインとの間の動力の伝達が不安定になるのを抑制しながら、波動発生器の回転に伴って発生する振動のn次(nは、複数箇所の噛み合い部分の数)成分を低減することができる。また、分割角度位置からずれ角度位置にずらす角度が微小角度であるので、フレクスプラインの内周面へ接触する接触部が分割角度位置から過度にずれることがない。これにより、フレクスプラインの内周面へ接触する接触部が分割角度位置から過度にずれることに起因してフレクスプラインの外歯とサーキュラスプラインの内歯とが本来噛み合ってはいけない部分においてフレクスプラインの外歯とサーキュラスプラインの内歯とが接触してフレクスプラインを非円形形状に変形させる動作に支障が生じてしまうのを抑制しながら、フレクスプラインの内周面へ接触する接触部の角度位置を分割角度位置からずれ角度位置にずらすことができる。
【0009】
上記一の局面による波動歯車装置において、好ましくは、波動発生器の複数の支持部は、第1支持部および第2支持部の2つを含み、第1支持部は、周方向における第1角度位置において、径方向に延び、第2支持部は、周方向における第1角度位置とは180度ずれた対向角度位置から微小角度分だけずれた第2角度位置において、径方向に延びる。
【0010】
このように構成すれば、フレクスプラインを楕円形状に変形させるようにフレクスプラインの内周面に2つの接触部が接触するとともに2つの接触部の各々を2つの支持部が支持する構成において、フレクスプラインとサーキュラスプラインとの間の動力の伝達が不安定になるのを抑制しながら、波動発生器の回転に伴って発生する振動のn次成分を低減することができる。
【0011】
上記第2支持部が周方向における第1角度位置とは180度ずれた対向角度位置から微小角度分だけずれた第2角度位置において径方向に延びる構成において、好ましくは、微小角度は、10度以下である。
【0012】
このように構成すれば、微小角度が過度に大きくならないので、フレクスプラインを楕円形状に変形させるようにフレクスプラインの内周面に2つの接触部が接触するとともに2つの接触部の各々を2つの支持部が支持する構成において、フレクスプラインの内周面へ接触する接触部が分割角度位置から過度にずれることがない構成を容易に実現することができる。
【0013】
上記微小角度が10度以下である構成において、好ましくは、微小角度は、フレクスプラインの外歯の(0.5×m(mは奇数))ピッチに対応する角度である。
【0014】
このように構成すれば、接触部がフレクスプラインの内周面を径方向の外側に向かって押圧する角度位置が、周方向にフレクスプラインの外歯の(0.5×m(mは奇数))ピッチ分ずれるので、微小角度が、たとえば、フレクスプラインの外歯の1ピッチ、2ピッチ等の1.0×p(pは整数)ピッチである場合等と比較して、噛み合い中心を分割角度位置からずれ角度位置側にずらした場合の、フレクスプラインの外歯とサーキュラスプラインの内歯との噛み合いの深さの差異の変化を比較的大きくすることができる。これにより、複数の分割角度位置における少なくとも2つの分割角度位置において、フレクスプラインの外歯とサーキュラスプラインの内歯との噛み合い状態を効果的に互いに異ならせることができる。
【0015】
なお、本出願では、上記一の局面による波動歯車装置において、以下のような構成も考えられる。
【0016】
(付記項1)
すなわち、上記微小角度がフレクスプラインの外歯の(0.5×m(mは奇数))ピッチに対応する角度である構成において、好ましくは、微小角度は、フレクスプラインの外歯の0.5ピッチまたは1.5ピッチに対応する角度である。
【0017】
このように構成すれば、微小角度がフレクスプラインの外歯の(0.5×m(mは奇数))ピッチに対応する角度のうちの比較的小さな角度となるので、微小角度がフレクスプラインの外歯の(0.5×m(mは奇数))ピッチに対応する角度かつ10度以下となる構成を容易に実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の一実施形態による波動歯車装置を示した断面図である。
図2】本発明の一実施形態による波動歯車装置を示した平面図である。
図3図2の部分IIIの拡大図である。
図4図2の部分IVの拡大図である。
図5】本発明の比較例による波動歯車装置を示した平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0020】
図1図4を参照して、本発明の一実施形態による波動歯車装置100の構成について説明する。波動歯車装置100は、たとえば、車両のドアを開閉するための装置(パワースライドドア)、車両のステアリング装置、車両のサンルーフを開閉する装置、等に設けられる。
【0021】
以下の説明では、波動歯車装置100が備えるサーキュラスプライン10(図1参照)の軸方向、径方向および周方向を、それぞれ、Z方向、R方向およびC方向とする。また、軸方向(Z方向)の一方側および他方側を、それぞれ、Z1側およびZ2側とする。また、径方向(R方向)の内側および外側を、それぞれ、R1側およびR2側とする。また、周方向(C方向)の一方側および他方側を、それぞれ、C1側およびC2側とする。
【0022】
(波動歯車装置の全体構成)
図1に示すように、波動歯車装置100は、サーキュラスプライン10と、フレクスプライン20と、波動発生器30と、を備える。
【0023】
図2に示すように、サーキュラスプライン10は、環状に形成されている。サーキュラスプライン10のR1側の面には、複数の内歯11が、C方向に並ぶように全周にわたって設けられている。
【0024】
サーキュラスプライン10は、波動歯車装置100の出力軸(図示しない)に固定されている。すなわち、サーキュラスプライン10が回転するのに伴って、車両のドアの開閉、車両のステアリング、車両のサンルーフの開閉、等が行われるように、波動歯車装置100の出力軸が回転する。
【0025】
フレクスプライン20は、環状に形成されている。フレクスプライン20のR2側の部分には、複数の外歯21が、C方向に並ぶように全周にわたって設けられている。サーキュラスプライン10の複数の外歯21は、サーキュラスプライン10の複数の内歯11に噛み合うように構成されている。
【0026】
フレクスプライン20の外歯21の数は、サーキュラスプライン10の内歯11の数より少ない。すなわち、フレクスプライン20の外歯21の数は、サーキュラスプライン10の内歯11の数とは異なっている。フレクスプライン20の外歯21の数は、サーキュラスプライン10の内歯11の数よりも2w(wは整数)個少ない。
【0027】
図1に示すように、波動発生器30は、モータ31と、複数の接触部32と、複数の支持部33と、を含む。
【0028】
モータ31は、波動歯車装置100の動力源であるモータ本体31aと、モータ本体31aにより回転駆動される回転軸31bと、を有する。モータ31は、回転軸線90を回転中心として回転する、回転軸線90は、Z方向に沿って延びている。
【0029】
図2に示すように、複数の接触部32は、モータ31の回転軸線90に対して、R2側に配置されている。複数の接触部32の各々は、ローラ(転がり軸受)である。複数の接触部32は、フレクスプライン20を非円形形状に変形させるようにフレクスプライン20の内周面22にR1側(サーキュラスプライン10の径方向の内側)から接触している。
【0030】
複数の支持部33の各々は、モータ31の回転軸31bと複数の接触部32の各々とを接続するようにR方向(径方向)に延びる。複数の支持部33の各々は、Z方向から見て、R方向およびC方向がそれぞれ長手方向および短手方向となるように、R方向に沿って延びる。複数の支持部33の各々は、複数の接触部32の各々を支持している。
【0031】
フレクスプライン20の外歯21がサーキュラスプライン10の内歯11に噛み合う位置をC方向(サーキュラスプライン10の周方向)に移動させるように構成されている。具体的には、モータ本体31aの回転駆動により、モータ31の回転軸31bが回転する。そして、モータ31の回転軸31bの回転に伴って、複数の支持部33の各々によってモータ31の回転軸31bと接続された複数の接触部32の各々の位置がC方向に移動する。これに伴って、フレクスプライン20の外歯21がサーキュラスプライン10の内歯11に噛み合う位置がC方向に移動する。
【0032】
波動発生器30では、接触部32および支持部33は、それぞれ、2つずつ設けられている。具体的には、波動発生器30の複数の接触部32は、第1接触部32aおよび第2接触部32bの2つを含む。また、波動発生器30の複数の支持部33は、第1支持部33aおよび第2支持部33bの2つを含む。第1支持部33aは、モータ31の回転軸31bと第1接触部32aとを接続するようにR方向に延びる。第2支持部33bは、モータ31の回転軸31bと第2接触部32bとを接続するようにR方向に延びる。
【0033】
(複数の接触部および複数の支持部の詳細な構成)
図2に示すように、波動発生器30の複数の支持部33のうちの少なくとも1つは、C方向(周方向)における360度を複数の支持部33の個数で割った角度位置から所定の微小角度α分だけずれた角度位置において、R方向(径方向)に延びる。すなわち、2つの支持部33(第1支持部33aおよび第2支持部33b)のうちの1つは、C方向において360度を2つに分割した角度位置から所定の微小角度α分だけずれた角度位置において、R方向に延びる。具体的には、第1支持部33aは、C方向(周方向)における第1角度位置P1において、R方向(径方向)に延びる。そして、第2支持部33bは、C方向における第1角度位置P1とは180度ずれた対向角度位置PXから微小角度α分だけずれた第2角度位置P2において、R方向に延びる。なお、2つの支持部33(第1支持部33aおよび第2支持部33b)のR方向の長さは略等しい。
【0034】
これにより、図3および図4に示すように、第1接触部32aがフレクスプライン20の内周面22へ接触する位置が、C方向における第1角度位置P1になるのに対して、第2接触部32bがフレクスプライン20の内周面22へ接触する位置が、C方向における第2角度位置P2になる。この場合、フレクスプライン20の外歯21とサーキュラスプライン10の内歯11との噛み合い状態を、第1角度位置P1と、C方向において第1角度位置P1とは180度ずれた対向角度位置PXとの間で異ならせることができる。これにより、波動発生器30の回転に伴って発生する振動の2次成分を低減することができる。
【0035】
図2に示すように、微小角度αは、10度以下である。具体的には、微小角度αは、フレクスプライン20の外歯21の1.5ピッチに対応する角度である。すなわち、微小角度αは、フレクスプライン20の外歯21の(0.5×m(mは奇数))ピッチに対応する角度である。
【0036】
(実施形態の効果)
本実施形態では、以下のような効果を得ることができる。
【0037】
本実施形態では、上記のように、波動発生器30の複数の支持部33のうちの少なくとも1つは、周方向における360度を複数の支持部33の個数で割った角度位置(分割角度位置)から所定の微小角度α分だけずれた角度位置(ずれ角度位置)において、径方向に延びる。これにより、複数の支持部33の各々が支持する複数の接触部32のうちの少なくとも1つを、ずれ角度位置において、フレクスプライン20の内周面22へ接触させることができる。これにより、フレクスプライン20の内周面22へ接触する接触部32を分割角度位置からずれ角度位置に微小角度α分だけずらした分、周方向におけるフレクスプライン20の外歯21とサーキュラスプライン10の内歯11との噛み合いが最も深くなる部分(噛み合い中心)を、分割角度位置からずれ角度位置側にずらすことができる。これにより、複数の支持部33の径方向の長さを互いに異ならせなくても、フレクスプライン20の内周面22へ接触する接触部32がずれ角度位置側にずれている分割角度位置における、フレクスプライン20の外歯21とサーキュラスプライン10の内歯11との噛み合い状態と、フレクスプライン20の内周面22へ接触する接触部32が分割角度位置にある場合の分割角度位置における、フレクスプライン20の外歯21とサーキュラスプライン10の内歯11との噛み合い状態とを、互いに異ならせることができる。すなわち、複数の支持部33の径方向の長さを互いに異ならせなくても、複数の分割角度位置における少なくとも2つの分割角度位置において、フレクスプライン20の外歯21とサーキュラスプライン10の内歯11との噛み合い状態を互いに異ならせることができる。その結果、フレクスプライン20とサーキュラスプライン10との間の動力の伝達が不安定になるのを抑制しながら、波動発生器30の回転に伴って発生する振動のn次(nは、複数箇所の噛み合い部分の数)成分を低減することができる。また、分割角度位置からずれ角度位置にずらす角度が微小角度αであるので、フレクスプライン20の内周面22へ接触する接触部32が分割角度位置から過度にずれることがない。これにより、フレクスプライン20の内周面22へ接触する接触部32が分割角度位置から過度にずれることに起因してフレクスプライン20の外歯21とサーキュラスプライン10の内歯11とが本来噛み合ってはいけない部分においてフレクスプライン20の外歯21とサーキュラスプライン10の内歯11とが接触してフレクスプライン20を非円形形状に変形させる動作に支障が生じてしまうのを抑制しながら、フレクスプライン20の内周面22へ接触する接触部32の角度位置を分割角度位置からずれ角度位置にずらすことができる。
【0038】
また、本実施形態では、上記のように、波動発生器30の複数の支持部33は、第1支持部33aおよび第2支持部33bの2つを含む。また、第1支持部33aは、周方向における第1角度位置P1において、径方向に延びる。そして、第2支持部33bは、周方向における第1角度位置P1とは180度ずれた対向角度位置PXから微小角度α分だけずれた第2角度位置P2において、径方向に延びる。これにより、フレクスプライン20を楕円形状に変形させるようにフレクスプライン20の内周面22に2つの接触部32が接触するとともに2つの接触部32の各々を2つの支持部33が支持する構成において、フレクスプライン20とサーキュラスプライン10との間の動力の伝達が不安定になるのを抑制しながら、波動発生器30の回転に伴って発生する振動のn次成分を低減することができる。
【0039】
また、本実施形態では、上記のように、微小角度αは、10度以下である。これにより、微小角度αが過度に大きくならないので、フレクスプライン20を楕円形状に変形させるようにフレクスプライン20の内周面22に2つの接触部32が接触するとともに2つの接触部32の各々を2つの支持部33が支持する構成において、フレクスプライン20の内周面22へ接触する接触部32が分割角度位置から過度にずれることがない構成を容易に実現することができる。なお、微小角度αが大きくなるにしたがって、周方向における第2角度位置P2の一方側の第1角度位置P1との間では、フレクスプライン20の外歯21とサーキュラスプライン10の内歯11との間の隙間が徐々に広くなるとともに、周方向における第2角度位置P2の他方側の第1角度位置P1との間では、フレクスプライン20の外歯21とサーキュラスプライン10の内歯11との間の隙間が徐々に狭くなる。たとえば、図5に示す比較例の波動歯車装置200のように、微小角度αが、フレクスプライン20の外歯21の2.5ピッチに対応する角度である場合、周方向における第2角度位置P2の他方側の第1角度位置P1との間では、フレクスプライン20の外歯21とサーキュラスプライン10の内歯11との間の隙間が接触してしまう。
【0040】
また、本実施形態では、上記のように、微小角度αは、フレクスプライン20の外歯21の(0.5×m(mは奇数))ピッチに対応する角度である。これにより、接触部32がフレクスプライン20の内周面22を径方向の外側に向かって押圧する角度位置が、周方向にフレクスプライン20の外歯21の(0.5×m(mは奇数))ピッチ分ずれるので、微小角度αが、たとえば、フレクスプライン20の外歯21の1ピッチ、2ピッチ等の1.0×p(pは整数)ピッチである場合等と比較して、噛み合い中心を分割角度位置からずれ角度位置側にずらした場合の、フレクスプライン20の外歯21とサーキュラスプライン10の内歯11との噛み合いの深さの差異の変化を比較的大きくすることができる。これにより、複数の分割角度位置における少なくとも2つの分割角度位置において、フレクスプライン20の外歯21とサーキュラスプライン10の内歯11との噛み合い状態を効果的に互いに異ならせることができる。
【0041】
また、本実施形態では、上記のように、微小角度αは、フレクスプライン20の外歯21の1.5ピッチに対応する角度である。これにより、微小角度αがフレクスプライン20の外歯21の(0.5×m(mは奇数))ピッチに対応する角度のうちの比較的小さな角度となるので、微小角度がフレクスプライン20の外歯21の(0.5×m(mは奇数))ピッチに対応する角度かつ10度以下となる構成を容易に実現することができる。
【0042】
[変形例]
なお、今回開示された実施形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更(変形例)が含まれる。
【0043】
たとえば、上記実施形態では、微小角度αが、フレクスプライン20の外歯21の1.5ピッチに対応する角度である例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、微小角度が、フレクスプラインの外歯の0.5ピッチに対応する角度であってもよい。
【0044】
また、上記実施形態では、微小角度αが、フレクスプライン20の外歯21の(0.5×m(mは奇数))ピッチに対応する角度である例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、微小角度が、フレクスプラインの外歯の(0.5×m(mは奇数))ピッチ以外のピッチ(たとえば、1ピッチ、2ピッチ等の1.0×p(pは整数)ピッチ、0.5×m(mは奇数)ピッチおよび1.0×p(pは整数)ピッチのいずれでもないピッチ)に対応する角度であってもよい。
【0045】
また、上記実施形態では、微小角度が、10度以下である例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、微小角度が、10度より大きくてもよい。
【0046】
また、上記実施形態では、波動発生器30の複数の支持部33が、第1支持部33aおよび第2支持部33bの2つを含み、第1支持部33aが、周方向における第1角度位置P1において、径方向に延び、第2支持部33bが、周方向における第1角度位置P1とは180度ずれた対向角度位置PXから微小角度α分だけずれた第2角度位置P2において、径方向に延びる例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、波動発生器の複数の支持部が、第1支持部から第v支持部(vは3以上の整数)までのvつを含み、第1支持部から第v支持部までのvつの支持部のうちの少なくとも1つが、周方向における360度をvで割った角度位置から微小角度分だけずれた角度位置において、径方向に延びてもよい。
【符号の説明】
【0047】
10…サーキュラスプライン、11…(サーキュラスプラインの)内歯、20…フレクスプライン、21…(フレクスプラインの)外歯、22…(フレクスプラインの)内周面、30…波動発生器、31…モータ、32…接触部、33…支持部、33a…第1支持部、33b…第2支持部、100…波動歯車装置、P1…第1角度位置、P2…第2角度位置、PX…対向角度位置、α…微小角度
図1
図2
図3
図4
図5