IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日東電工株式会社の特許一覧

特開2024-171108樹脂フィルムおよび加工フィルムの製造方法
<>
  • 特開-樹脂フィルムおよび加工フィルムの製造方法 図1
  • 特開-樹脂フィルムおよび加工フィルムの製造方法 図2
  • 特開-樹脂フィルムおよび加工フィルムの製造方法 図3
  • 特開-樹脂フィルムおよび加工フィルムの製造方法 図4
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024171108
(43)【公開日】2024-12-11
(54)【発明の名称】樹脂フィルムおよび加工フィルムの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08J 5/18 20060101AFI20241204BHJP
   G02B 5/30 20060101ALI20241204BHJP
   C08L 69/00 20060101ALI20241204BHJP
【FI】
C08J5/18 CER
C08J5/18 CEZ
G02B5/30
C08L69/00
【審査請求】有
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023087995
(22)【出願日】2023-05-29
(71)【出願人】
【識別番号】000003964
【氏名又は名称】日東電工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003845
【氏名又は名称】弁理士法人籾井特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中原 歩夢
(72)【発明者】
【氏名】荻野 真悠子
【テーマコード(参考)】
2H149
4F071
4J002
【Fターム(参考)】
2H149AA01
2H149AB11
2H149AB15
2H149BA02
2H149BA12
2H149CA02
2H149EA12
2H149EA22
2H149FA02X
2H149FA03W
2H149FA05X
2H149FA08X
2H149FA12X
2H149FA13X
2H149FA61
2H149FD34
2H149FD46
4F071AA50X
4F071AF23Y
4F071AF31
4F071AF53
4F071AH19
4F071BA01
4F071BB06
4F071BC01
4F071BC12
4J002CG011
4J002GP00
(57)【要約】
【課題】外形加工時に、厚み方向に延びるクラックが生じることを抑制し得る樹脂フィルムを提供すること。
【解決手段】本発明の実施形態による樹脂フィルムのシャルピー引張衝撃強さは、400kJ/m以上である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シャルピー引張衝撃強さが400kJ/m以上である、樹脂フィルム。
【請求項2】
ポリカーボネート系樹脂から構成されている、請求項1に記載の樹脂フィルム。
【請求項3】
請求項1または2に記載の樹脂フィルムを外形加工する、加工フィルムの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂フィルムおよび加工フィルムの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
樹脂フィルムは、各種産業製品に幅広く利用されており、一般に、用途に応じた形状に加工されて適用される。例えば、アクリル系樹脂フィルムを、所望の形状に外形加工することが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
しかし、特許文献1に記載のアクリル系樹脂フィルムを外形加工すると、アクリル系樹脂フィルムの端面において、厚み方向に延びるクラックが生じる場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008-213401号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は上記従来の課題を解決するためになされたものであり、その主たる目的は、外形加工時に、厚み方向に延びるクラックが生じることを抑制し得る樹脂フィルムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
[1]本発明の1つの実施形態よる樹脂フィルムのシャルピー引張衝撃強さは、400kJ/m以上である。
[2]上記[1]に記載の樹脂フィルムは、ポリカーボネート系樹脂から構成されていてもよい。
[3]本発明の別の局面による加工フィルムの製造方法では、上記[1]または[2]に記載の樹脂フィルムを外形加工する。
【発明の効果】
【0006】
本発明の実施形態によれば、外形加工時に、厚み方向に延びるクラックが生じることを抑制できる樹脂フィルムを実現し得る。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1図1は、本発明の1つの実施形態による樹脂フィルムの概略断面図である。
図2図2は、図1の樹脂フィルムを備える偏光板の1つの実施形態の概略断面図である。
図3図3は、図1の樹脂フィルムを備える偏光板の別の実施形態の概略断面図である。
図4図4は、図1の樹脂フィルムから製造される加工フィルムの概略平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の代表的な実施形態について説明するが、本発明はこれらの実施形態には限定されない。また、図面は説明をより明確にするため、実施の形態に比べ、各部の幅、厚さ、形状等について模式的に表される場合があるが、あくまで一例であって、本発明の解釈を限定するものではない。
【0009】
(用語および記号の定義)
本明細書における用語および記号の定義は下記の通りである。
(1)屈折率(nx、ny、nz)
「nx」は面内の屈折率が最大になる方向(すなわち、遅相軸方向)の屈折率であり、「ny」は面内で遅相軸と直交する方向(すなわち、進相軸方向)の屈折率であり、「nz」は厚み方向の屈折率である。
(2)面内位相差(Re)
「Re(λ)」は、23℃における波長λnmの光で測定した面内位相差である。例えば、「Re(550)」は、23℃における波長550nmの光で測定した面内位相差である。Re(λ)は、層(フィルム)の厚みをd(nm)としたとき、式:Re(λ)=(nx-ny)×dによって求められる。
(3)厚み方向の位相差(Rth)
「Rth(λ)」は、23℃における波長λnmの光で測定した厚み方向の位相差である。例えば、「Rth(550)」は、23℃における波長550nmの光で測定した厚み方向の位相差である。Rth(λ)は、層(フィルム)の厚みをd(nm)としたとき、式:Rth(λ)=(nx-nz)×dによって求められる。
【0010】
A.樹脂フィルムの全体構成
図1は、本発明の1つの実施形態による樹脂フィルムの概略断面図である。
図1に示すように、樹脂フィルム1のシャルピー引張衝撃強さは、400kJ/m以上である。樹脂フィルムのシャルピー引張衝撃強さが400kJ/m以上であると、樹脂フィルムを後述する外形加工に供しても、外形加工後の樹脂フィルム(加工フィルム)の端面に、厚み方向(縦方向)に延びるクラックが生じることを抑制し得る。
【0011】
樹脂フィルム1のシャルピー引張衝撃強さは、例えば700kJ/m以下、好ましくは600kJ/m以下、より好ましくは500kJ/m以下である。なお、シャルピー引張衝撃強さは、例えば、JIS K 7160に準拠して測定される。樹脂フィルムのシャルピー引張衝撃強さがこのような範囲であれば、外形加工後の樹脂フィルム(加工フィルム)の端面において、厚み方向と直交する方向(面方向、横方向)に延びるクラックをより安定して抑制し得る。また、樹脂フィルムのシャルピー引張衝撃強さがこのような上限以下であれば、樹脂フィルムを円滑に加工し得る。
【0012】
樹脂フィルム1のせん断破壊強度(試料を切削・破壊する際に必要な力)は、例えば1.0N以上、好ましくは2.5N以上、より好ましくは3.0N以上、さらに好ましくは3.5N以上である。一方、樹脂フィルム1のせん断破壊強度は、例えば7.0N以下、好ましくは6.0N以下、より好ましくは5.0N以下である。なお、せん断破壊強度は、例えば、表面-界面切削法(SAICAS法)に準拠して測定される。樹脂フィルムのせん断破壊強度がこのような範囲であれば、外形加工後の樹脂フィルム(加工フィルム)の端面において、厚み方向と直交する方向(面方向、横方向)に延びるクラックが生じることを抑制し得る。
【0013】
樹脂フィルム1の厚みは、例えば10μm以上、好ましくは30μm以上、より好ましくは40μm以上である。一方、樹脂フィルム1の厚みは、例えば130μm以下、好ましくは100μm以下、より好ましくは80μm以下である。樹脂フィルムの厚みがこのような範囲であれば、外形加工においてクラックの発生を安定して抑制し得る。
【0014】
以下、樹脂フィルムの詳細について説明する。
【0015】
B.樹脂フィルム
樹脂フィルム1は、任意の適切な樹脂材料を主成分として含んでいる。当該樹脂材料の具体例としては、ポリノルボルネン系などのシクロオレフィン(COP)系;ポリエチレンテレフタレート(PET)系などのポリエステル系;トリアセチルセルロース(TAC)などのセルロース系樹脂;ポリカーボネート(PC)系;(メタ)アクリル系;ポリビニルアルコール系;ポリアミド系;ポリイミド系;ポリエーテルスルホン系;ポリスルホン系;ポリスチレン系;ポリオレフィン系;アセテート系などの透明樹脂が挙げられる。また、(メタ)アクリル系、ウレタン系、(メタ)アクリルウレタン系、エポキシ系、シリコーン系などの熱硬化型樹脂または紫外線硬化型樹脂なども挙げられる。なお、「(メタ)アクリル系樹脂」とは、アクリル系樹脂および/またはメタクリル系樹脂をいう。この他にも、例えば、シロキサン系ポリマー等のガラス質系ポリマーも挙げられる。また、特開2001-343529号公報(WO01/37007)に記載のポリマーフィルムも使用できる。このフィルムの材料としては、例えば、側鎖に置換または非置換のイミド基を有する熱可塑性樹脂と、側鎖に置換または非置換のフェニル基ならびにニトリル基を有する熱可塑性樹脂を含有する樹脂組成物が使用でき、例えば、イソブテンとN-メチルマレイミドからなる交互共重合体と、アクリロニトリル・スチレン共重合体とを有する樹脂組成物が挙げられる。当該ポリマーフィルムは、例えば、上記樹脂組成物の押出成形物であり得る。樹脂フィルムの材料は、単独でまたは組み合わせて使用し得る。
【0016】
このような樹脂材料のなかでは、好ましくは、PC系樹脂が挙げられる。
【0017】
PC系樹脂は、下記構造式(1)で表される結合構造を有するジヒドロキシ化合物に由来する構成単位を少なくとも含み、分子内に少なくとも一つの結合構造-CH-O-を有するジヒドロキシ化合物を少なくとも含むジヒドロキシ化合物と、炭酸ジエステルとを、重合触媒の存在下反応させることにより製造される。言い換えれば、PC系樹脂は、ジヒドロキシ化合物由来の構造単位と、炭酸ジエステル由来のカーボネート基と、を含んでいる。
【化1】
【0018】
ここで、構造式(1)で表される結合構造を有するジヒドロキシ化合物としては、2個のアルコール性水酸基をもち、分子内に連結基-CH-O-を有する構造を含み、重合触媒の存在下、炭酸ジエステルと反応してポリカーボネートを生成し得る化合物であれば如何なる構造の化合物であっても使用することが可能であり、複数種併用しても構わない。
【0019】
また、PC系樹脂に用いるジヒドロキシ化合物として、上記構造式(1)で表される結合構造を有さないジヒドロキシ化合物を併用しても構わない。以下、構造式(1)で表される結合構造を有するジヒドロキシ化合物をジヒドロキシ化合物(A)、構造式(1)で表される結合構造を有さないジヒドロキシ化合物をジヒドロキシ化合物(B)と略記する場合がある。
【0020】
(ジヒドロキシ化合物(A))
ジヒドロキシ化合物(A)における「連結基-CH-O-」とは、水素原子以外の原子と互いに結合して分子を構成する構造を意味する。この連結基において、少なくとも酸素原子が結合し得る原子または炭素原子と酸素原子とが同時に結合し得る原子としては、炭素原子が好ましい。ジヒドロキシ化合物(A)中の「連結基-CH-O-」の数は、好ましくは1以上、より好ましくは2~4である。
【0021】
ジヒドロキシ化合物(A)として、具体的には、9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)-3-メチルフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)-3-イソプロピルフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)-3-イソブチルフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)-3-tert-ブチルフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)-3-シクロヘキシルフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)-3-フェニルフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)-3,5-ジメチルフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)-3-tert-ブチル-6-メチルフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-(3-ヒドロキシ-2,2-ジメチルプロポキシ)フェニル)フルオレンで例示されるような、側鎖に芳香族基を有し、主鎖に芳香族基に結合したエーテル基を有する化合物;ビス[4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル]メタン、ビス[4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル]ジフェニルメタン、1,1-ビス[4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル]エタン、1,1-ビス[4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル]-1-フェニルエタン、2,2-ビス[4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル]プロパン、2,2-ビス[4-(2-ヒドロキシエトキシ)-3-メチルフェニル]プロパン、2,2-ビス[3,5-ジメチル-4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル]プロパン、1,1-ビス[4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル]-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、1,1-ビス[4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル]シクロヘキサン、1,4-ビス[4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル]シクロヘキサン、1,3-ビス[4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル]シクロヘキサン、2,2-ビス[4-(2-ヒドロキシエトキシ)-3-フェニルフェニル]プロパン、2,2-ビス[(2-ヒドロキシエトキシ)-3-イソプロピルフェニル]プロパン、2,2-ビス[3-tert-ブチル-4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル]プロパン、2,2-ビス[4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル]ブタン、2,2-ビス[4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル]-4-メチルペンタン、2,2-ビス[4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル]オクタン、1,1-ビス[4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル]デカン、2,2-ビス[3-ブロモ-4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル]プロパン、2,2-ビス[3-シクロヘキシル-4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル]プロパンで例示されるような、ビス(ヒドロキシアルコキシアリール)アルカン類;1,1-ビス[4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル]シクロヘキサン、1,1-ビス[3-シクロヘキシル-4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル]シクロヘキサン、1,1-ビス[4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル]シクロペンタンで例示されるような、ビス(ヒドロキシアルコキシアリール)シクロアルカン類;4,4’-ビス(2-ヒドロキシエトキシ)ジフェニルエ-テル、4,4’-ビス(2-ヒドロキシエトキシ)-3,3’-ジメチルジフェニルエ-テルで例示されるような、ジヒドロキシアルコキシジアリールエーテル類;4,4’-ビス(2-ヒドロキエトキシフェニル)スルフィド、4,4’-ビス[4-(2-ジヒドロキシエトキシ)-3-メチルフェニル]スルフィドで例示されるような、ビスヒドロキシアルコキシアリールスルフィド類;4,4’-ビス(2-ヒドロキエトキシフェニル)スルホキシド、4,4’-ビス[4-(2-ジヒドロキシエトキシ)-3-メチルフェニル]スルホキシドで例示されるような、ビスヒドロキシアルコキシアリールスルホキシド類;4,4’-ビス(2-ヒドロキエトキシフェニル)スルホン、4,4’-ビス[4-(2-ジヒドロキシエトキシ)-3-メチルフェニル]スルホンで例示されるような、ビスヒドロキシアルコキシアリールスルホン類;1,4-ビスヒドロキシエトキシベンゼンで例示されるような、ビスヒドロキシアルコキシベンゼン類;1,3-ビス[2-[4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル]プロピル]ベンゼン;1,4-ビス[2-[4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル]プロピル]ベンゼン;4,4’-ビス(2-ヒドロキシエトキシ)ビフェニル;1,3-ビス[4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル]-5,7-ジメチルアダマンタン;下記式(2)で表されるジヒドロキシ化合物で例示されるような、無水糖アルコール;および、下記一般式(3)で表されるスピログリコールで例示されるような、環状エーテル構造を有する化合物が挙げられる。ジヒドロキシ化合物(A)は、単独でまたは組み合わせて使用し得る。
【0022】
【化2】
【0023】
【化3】
【0024】
これらジヒドロキシ化合物(A)のなかでは、好ましくは、上記式(2)で表されるジヒドロキシ化合物が挙げられる。上記式(2)で表されるジヒドロキシ化合物としては、立体異性体の関係にある、イソソルビド、イソマンニド、イソイデットが挙げられ、これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
なお、ジヒドロキシ化合物(A)のうち、資源として豊富に存在し、容易に入手可能な種々のデンプンから製造されるソルビトールを脱水縮合して得られるイソソルビドが、入手および製造のし易さ、光学特性、成形性の面から最も好ましい。
【0025】
PC系樹脂が含む全ジヒドロキシ化合物由来の構造単位に対して、ジヒドロキシ化合物(A)由来の構造単位の割合は、例えば10モル%以上、好ましくは40モル%以上、より好ましくは60モル%以上である。一方、ジヒドロキシ化合物(A)由来の構造単位の割合は、例えば100モル%以下、好ましくは90モル%以下、より好ましくは80モル%以下、さらに好ましくは70モル%以下である。ジヒドロキシ化合物(A)の割合が上記の範囲であると、樹脂フィルムのシャルピー引張衝撃強さを安定して上記範囲に調整し得る。
【0026】
(ジヒドロキシ化合物(B))
PC系樹脂の構造単位となるジヒドロキシ化合物として、ジヒドロキシ化合物(A)とともに、ジヒドロキシ化合物(B)を用いることができる。ジヒドロキシ化合物(A)および(B)を併用すると、樹脂フィルムのシャルピー引張衝撃強さをより安定して上記範囲に調整し得る。
【0027】
ジヒドロキシ化合物(B)は、代表的には、ジヒドロキシ化合物(A)以外のジヒドロキシ化合物である。ジヒドロキシ化合物(B)として、例えば、脂環式ジヒドロキシ化合物、脂肪族ジヒドロキシ化合物、オキシアルキレングリコール類、芳香族ジヒドロキシ化合物、環状エーテル構造を有するジオール類が挙げられる。ジヒドロキシ化合物(B)は、単独でまたは組み合わせて使用し得る。
ジヒドロキシ化合物(B)のなかでは、好ましくは、脂環式ジヒドロキシ化合物が挙げられる。
【0028】
脂環式ジヒドロキシ化合物としては、特に限定されないが、好ましくは、通常5員環構造または6員環構造を含む化合物が挙げられる。また、6員環構造は、共有結合によって椅子形もしくは舟形に固定されていてもよい。脂環式ジヒドロキシ化合物が5員環または6員環構造であることにより、得られるPC系樹脂の耐熱性の向上を図り得る。脂環式ジヒドロキシ化合物に含まれる炭素原子数は、例えば70以下、好ましくは50以下、より好ましくは30以下である。
【0029】
5員環構造または6員環構造を含む脂環式ジヒドロキシ化合物として、具体的には、下記一般式(I)または(II)で表される脂環式ジヒドロキシ化合物が挙げられる。
HOCH-R-CHOH (I)
HO-R-OH (II)
(式(I)、(II)中、RおよびRのそれぞれは、炭素数4~20のシクロアルキレン基を示す。)
【0030】
上記一般式(I)で表される脂環式ジヒドロキシ化合物であるシクロヘキサンジメタノールは、一般式(I)において、Rが下記一般式(Ia)(式中、Rは炭素数1~12のアルキル基または水素原子を示す。)で表される種々の異性体を包含する。このようなものとしては、具体的には、1,2-シクロヘキサンジメタノール、1,3-シクロヘキサンジメタノール、1,4-シクロヘキサンジメタノールが挙げられる。
【0031】
【化4】
【0032】
上記一般式(I)で表される脂環式ジヒドロキシ化合物であるトリシクロデカンジメタノール、または、ペンタシクロペンタデカンジメタノールは、一般式(I)において、Rが下記一般式(Ib)(式中、nは0または1を示す。)で表される種々の異性体を包含する。
【0033】
【化5】
【0034】
上記一般式(I)で表される脂環式ジヒドロキシ化合物であるデカリンジメタノール、または、トリシクロテトラデカンジメタノールは、一般式(I)において、Rが下記一般式(Ic)(式中、mは0または1を示す。)で表される種々の異性体を包含する。このようなものとしては、具体的には、2,6-デカリンジメタノール、1,5-デカリンジメタノール、2,3-デカリンジメタノールが挙げられる。
【0035】
【化6】
【0036】
上記一般式(I)で表される脂環式ジヒドロキシ化合物であるノルボルナンジメタノールは、一般式(I)において、Rが下記一般式(Id)で表される種々の異性体を包含する。このようなものとしては、具体的には、2,3-ノルボルナンジメタノール、2,5-ノルボルナンジメタノールが挙げられる。
【0037】
【化7】
【0038】
一般式(I)で表される脂環式ジヒドロキシ化合物であるアダマンタンジメタノールは、一般式(I)において、Rが下記一般式(Ie)で表される種々の異性体を包含する。このようなものとしては、具体的には、1,3-アダマンタンジメタノールが挙げられる。
【0039】
【化8】
【0040】
上記一般式(II)で表される脂環式ジヒドロキシ化合物であるシクロヘキサンジオールは、一般式(II)において、Rが下記一般式(IIa)(式中、Rは炭素数1~12のアルキル基または水素原子を示す。)で表される種々の異性体を包含する。このようなものとしては、具体的には、1,2-シクロヘキサンジオール、1,3-シクロヘキサンジオール、1,4-シクロヘキサンジオール、2-メチル-1,4-シクロヘキサンジオールが挙げられる。
【0041】
【化9】
【0042】
上記一般式(II)で表される脂環式ジヒドロキシ化合物であるトリシクロデカンジオール、または、ペンタシクロペンタデカンジオールは、一般式(II)において、Rが下記一般式(IIb)(式中、nは0または1を示す。)で表される種々の異性体を包含する。
【0043】
【化10】
【0044】
上記一般式(II)で表される脂環式ジヒドロキシ化合物であるデカリンジオール、または、トリシクロテトラデカンジオールは、一般式(II)において、Rが下記一般式(IIc)(式中、mは0または1を示す。)で表される種々の異性体を包含する。このようなものとしては、具体的には、2,6-デカリンジオール、1,5-デカリンジオール、2,3-デカリンジオールが挙げられる。
【0045】
【化11】
【0046】
上記一般式(II)で表される脂環式ジヒドロキシ化合物であるノルボルナンジオールは、一般式(II)において、Rが下記一般式(IId)で表される種々の異性体を包含する。このようなものとしては、具体的には、2,3-ノルボルナンジオール、2,5-ノルボルナンジオールが挙げられる。
【0047】
【化12】
【0048】
上記一般式(II)で表される脂環式ジヒドロキシ化合物であるアダマンタンジオールは、一般式(II)において、Rが下記一般式(IIe)で表される種々の異性体を包含する。このようなものとして、具体的には、1,3-アダマンタンジオールが挙げられる。
【0049】
【化13】
【0050】
上記した脂環式ジヒドロキシ化合物の具体例のなかでは、好ましくは、シクロヘキサンジメタノール類、トリシクロデカンジメタノール類、アダマンタンジオール類、ペンタシクロペンタデカンジメタノール類が挙げられ、入手のしやすさ、取り扱いのしやすさという観点から、より好ましくは、1,4-シクロヘキサンジメタノール、1,3-シクロヘキサンジメタノール、1,2-シクロヘキサンジメタノール、トリシクロデカンジメタノールが挙げられ、さらに好ましくは、トリシクロデカンジメタノールが挙げられる。
【0051】
PC系樹脂が含む全ジヒドロキシ化合物由来の構造単位に対して、ジヒドロキシ化合物(B)由来の構造単位の割合は、例えば0モル%以上、好ましくは10モル%以上、より好ましくは20モル%以上、さらに好ましくは30モル%以上である。一方、ジヒドロキシ化合物(B)由来の構造単位の割合は、例えば90モル%以下、好ましくは60モル%以下、より好ましくは40モル%以下である。
【0052】
これらPC系樹脂の詳細は、例えば、特開2012-31370号公報(特許第5448264号)に記載されている。当該特許文献の記載は、本明細書に参考として援用される。
【0053】
1つの実施形態において、PC系樹脂は、上記式(2)で表されるジヒドロキシ化合物(A)由来の構造単位と、上記一般式(I)で表される脂環式ジヒドロキシ化合物(B)由来の構造単位と、それらを連結するカーボネート基と、を含んでいる。これら構造単位を含むPC系樹脂を樹脂フィルムに適用すると、樹脂フィルムのシャルピー引張衝撃強さをより一層安定して上記範囲に調整し得る。
このようなPC系樹脂において、上記式(2)で表されるジヒドロキシ化合物(A)由来の構造単位と、上記一般式(I)で表される脂環式ジヒドロキシ化合物(B)由来の構造単位とのモル比(A:B)は、例えば5:5~9:1であり、好ましくは6:4~8:2である。
このようなPC系樹脂において、上記式(2)で表されるジヒドロキシ化合物(A)と上記一般式(I)で表される脂環式ジヒドロキシ化合物(B)との組み合わせは、好ましくは、イソソルビドとトリシクロデカンジメタノールとの組み合わせである。
【0054】
樹脂フィルム1は、上記した樹脂材料に加えて、任意の適切な添加剤を含んでいてもよい。添加剤として、例えば、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、造核剤、充填剤、顔料、界面活性剤、帯電防止剤が挙げられる。樹脂フィルム1の表面には、任意の適切な表面処理層が設けられていてもよい。表面処理層として、例えば、ハードコート層、易接着層、易滑層、ブロッキング防止層、帯電防止層、反射防止層、オリゴマー防止層が挙げられる。
【0055】
樹脂フィルム1は、代表的には、光学的に等方性を有する。本明細書において、「光学的に等方性」とは、面内位相差Re(550)および厚み方向の位相差Rth(550)が下記の範囲であることを意味する。
樹脂フィルム1の面内位相差Re(550)は、例えば10nm以下、好ましくは5nm以下、より好ましくは3nm以下である。一方、樹脂フィルム1の面内位相差Re(550)の下限は、代表的には0nmである。
樹脂フィルム1の厚み方向の位相差Rth(550)は、例えば-10nm~+10nmであり、好ましくは-5nm~+5nmである。
【0056】
樹脂フィルム1の全光線透過率は、例えば80%以上、好ましくは85%以上、より好ましくは90%以上、さらに好ましくは95%以上である。
樹脂フィルム1のヘイズ値は、例えば2.0%以下、好ましくは1.5%以下、より好ましくは1.0%以下、さらに好ましくは0.7%以下、とりわけ好ましくは0.5%以下、特に好ましくは0.3%以下である。樹脂フィルム1のヘイズ値の下限は、代表的には0.05%である。
樹脂フィルムの全光線透過率および/またはヘイズ値がこのような範囲であれば、樹脂フィルムを光学的な用途に好適に採用し得る。
【0057】
C.樹脂フィルムの用途
上記A項およびB項に記載の樹脂フィルムは、各種産業製品に適用し得る。産業製品として、例えば、偏光板などの光学部材、加飾フィルム、製品保護フィルムが挙げられる。
上記した樹脂フィルムは、特に、偏光板および加飾フィルムに好適に適用される。
【0058】
C-1.加飾フィルム
図示しないが、1つの実施形態において、樹脂フィルム1は、加飾フィルムに適用される。より詳しくは、樹脂フィルム1は、加飾フィルムの基材として採用され得る。加飾フィルムは、基材としての樹脂フィルム1と、樹脂フィルム1の一方側の表面に設けられる粘着剤層と、粘着剤層における基材と反対側の表面に設けられる印刷層と、を備えている。
このような加飾フィルムは、印刷層が被着体と接触するように、被着体の表面に貼り付けられる。次いで、加飾フィルムは、必要に応じて加熱された後、被着体の表面からはく離される。すると、印刷層が、被着体の表面に転写されて、被着体に所望の意匠を付与し得る。
【0059】
C-2.偏光板
また、図2および図3に示すように、樹脂フィルム1は、偏光板100に適用されてもよい。より詳しくは、樹脂フィルム1は、偏光子2の保護層として採用され得る。偏光板100は、偏光子2と、保護層としての樹脂フィルム1と、を備えている。樹脂フィルム1は、偏光子2の少なくとも一方側に配置されている。樹脂フィルム1は、代表的には、任意の適切な接着層(接着剤層または粘着剤層)を介して、偏光子2に貼り付けられている。図3に示すように、保護層としての樹脂フィルム1は、偏光子2の両側に設けられていてもよい。
【0060】
C-2-1.偏光子
偏光子2としては、任意の適切な偏光子が採用され得る。例えば、偏光子を形成する樹脂フィルムは、単層の樹脂フィルムから構成されてもよく、二層以上の積層体を用いて調製されてもよい。
【0061】
単層の樹脂フィルムから構成される偏光子の具体例としては、ポリビニルアルコール(PVA)系フィルム、部分ホルマール化PVA系フィルム、エチレン・酢酸ビニル共重合体系部分ケン化フィルムなどの親水性高分子フィルムに、ヨウ素や二色性染料などの二色性物質による染色処理および延伸処理が施されたもの、PVAの脱水処理物やポリ塩化ビニルの脱塩酸処理物などポリエン系配向フィルムが挙げられる。好ましくは、光学特性に優れることから、PVA系フィルムをヨウ素で染色し一軸延伸して得られた偏光子が用いられる。
【0062】
積層体を用いて得られる偏光子の具体例としては、樹脂基材と当該樹脂基材に積層されたPVA系樹脂層(PVA系樹脂フィルム)との積層体、あるいは、樹脂基材と当該樹脂基材に塗布形成されたPVA系樹脂層との積層体を用いて得られる偏光子が挙げられる。樹脂基材と当該樹脂基材に塗布形成されたPVA系樹脂層との積層体を用いて得られる偏光子は、例えば、PVA系樹脂溶液を樹脂基材に塗布し、乾燥させて樹脂基材上にPVA系樹脂層を形成して、樹脂基材とPVA系樹脂層との積層体を得ること;当該積層体を延伸および染色してPVA系樹脂層を偏光子とすること;により作製され得る。本発明の1つの実施形態においては、好ましくは、樹脂基材の片側に、ハロゲン化物とポリビニルアルコール系樹脂とを含むポリビニルアルコール系樹脂層を形成する。延伸は、代表的には積層体をホウ酸水溶液中に浸漬させて延伸することを含む。さらに、延伸は、必要に応じて、ホウ酸水溶液中での延伸の前に積層体を高温(例えば、95℃以上)で空中延伸することをさらに含み得る。加えて、本発明の1つの実施形態においては、好ましくは、積層体は、長手方向に搬送しながら加熱することにより幅方向に2%以上収縮させる乾燥収縮処理に供される。代表的には、本実施形態の製造方法は、積層体に、空中補助延伸処理と染色処理と水中延伸処理と乾燥収縮処理とをこの順に施すことを含む。補助延伸を導入することにより、熱可塑性樹脂上にPVAを塗布する場合でも、PVAの結晶性を高めることが可能となり、高い光学特性を達成することが可能となる。また、同時にPVAの配向性を事前に高めることで、後の染色工程や延伸工程で水に浸漬された時に、PVAの配向性の低下や溶解などの問題を防止することができ、高い光学特性を達成することが可能になる。さらに、PVA系樹脂層を液体に浸漬した場合において、PVA系樹脂層がハロゲン化物を含まない場合に比べて、ポリビニルアルコール分子の配向の乱れ、および配向性の低下が抑制され得る。これにより、染色処理および水中延伸処理など、積層体を液体に浸漬して行う処理工程を経て得られる偏光子の光学特性を向上し得る。さらに、乾燥収縮処理により積層体を幅方向に収縮させることにより、光学特性を向上させることができる。得られた樹脂基材/偏光子の積層体はそのまま用いてもよく(すなわち、樹脂基材を偏光子の保護層としてもよく)、樹脂基材/偏光子の積層体から樹脂基材を剥離し、当該剥離面に目的に応じた任意の適切な保護層を積層して用いてもよい。このような偏光子の製造方法の詳細は、例えば特開2012-73580号公報、特許第6470455号に記載されている。これらの公報は、その全体の記載が本明細書に参考として援用される。
【0063】
上記ヨウ素による染色は、例えば、PVA系フィルムをヨウ素水溶液に浸漬することにより行われる。上記一軸延伸の延伸倍率は、好ましくは3~7倍である。延伸は、染色処理後に行ってもよいし、染色しながら行ってもよい。また、延伸してから染色してもよい。必要に応じて、PVA系フィルムに、膨潤処理、架橋処理、洗浄処理、乾燥処理などが施される。例えば、染色の前にPVA系フィルムを水に浸漬して水洗することで、PVA系フィルム表面の汚れやブロッキング防止剤を洗浄することができるだけでなく、PVA系フィルムを膨潤させて染色ムラなどを防止することができる。
【0064】
偏光子2の厚みは、例えば1μm~80μmであり、好ましくは1μm~15μmであり、より好ましくは1μm~12μmであり、さらに好ましくは3μm~12μmである。偏光子の厚みがこのような範囲であれば、加熱時のカールを良好に抑制し得、かつ、良好な加熱時の外観耐久性が得られ得る。
【0065】
偏光子2は、代表的には、波長380nm~780nmのいずれかの波長で吸収二色性を示す。偏光子2の単体透過率は、例えば41.5%~46.0%であり、好ましくは43.0%~46.0%であり、より好ましくは44.5%~46.0%である。偏光子2の偏光度は、好ましくは97.0%以上であり、より好ましくは99.0%以上であり、さらに好ましくは99.9%以上である。
【0066】
D.外形加工
1つの実施形態において、上記A項およびB項に記載の樹脂フィルム、または、上記C項に記載した樹脂フィルムを含む製品は、所望の形状となるように外形加工される。これによって、所望の外形形状を有する加工フィルム3(または加工フィルム3を含む製品)が製造される。
【0067】
外形加工には、任意の適切な方法を採用し得る。外形加工として、例えば、打ち抜き刃を用いた打抜加工、スピンドルを用いた切削加工、レーザー加工が挙げられる。これら外形加工のなかでは、好ましくは、レーザー加工が挙げられる。
外形加工における各種条件は、任意かつ適切に調整され得る。
【0068】
加工フィルム3(または加工フィルム3を含む製品)の外形形状は、特に制限されない。これらの形状として、例えば、矩形状、矩形以外の異形状が挙げられる。異形状として、例えば、四角形以外の多角形、円形、楕円形、異形加工部を有する形状が挙げられる。
【0069】
図4に示すように、1つの実施形態では、加工フィルム3(または加工フィルム3を含む製品)は、異形加工部31を有している。異形加工部31として、例えば、加工フィルム3の外縁から内側に凹む凹部、加工フィルム3を貫通する貫通穴が挙げられる。
図示例では、加工フィルム3は、異形加工部としての凹部31aを有している。凹部の形状は、特に制限されず、例えば、V字状、U字状が挙げられる。
【0070】
樹脂フィルム(または樹脂フィルムを含む製品)を異形状に外形加工する場合、樹脂フィルム(または樹脂フィルムを含む製品)を矩形状に外形加工する場合よりも、樹脂フィルムの端面に、厚み方向に延びるクラックが生じやすい。一方、1つの実施形態では、樹脂フィルムのシャルピー引張衝撃強さが400kJ/m以上であるので、樹脂フィルム(または樹脂フィルムを含む製品)を上記のように異形状に外形加工しても、加工フィルムの端面に、厚み方向に延びるクラックが生じることを安定して抑制し得る。
【実施例0071】
以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、本発明はこれら実施例によって限定されるものではない。なお、各特性の測定方法は以下の通りである。
【0072】
(1)樹脂フィルムのシャルピー引張衝撃強さの測定
実施例および比較例で得られる樹脂フィルムのシャルピー引張衝撃強さを、JIS K7160 A法に準じて測定した。その結果を表1に示す。
より詳しくは、樹脂フィルムを3形(長さ80mm、幅15mm)に切り出して、サンプルを調製した。その後、ハンマーでの打ち抜き時の衝撃によりサンプルが動かないように、サンプルの両端部を支持台に固定し、デジタル衝撃試験機 DG-UB(東洋精機製作所社製)により、公称振り子エネルギー2.0J、持ち上げ角度150度でフィルムの破断に要するエネルギー(すなわち衝撃吸収エネルギー)を、シャルピー引張衝撃強さとして測定した。この衝撃吸収エネルギーが大きいほど、フィルムが割れにくいことを示す。
【0073】
(2)樹脂フィルムにおける異形加工時におけるクラックの有無
実施例および比較例で得られた樹脂フィルムを、打ち抜き治具を使用して、外形加工して、異形加工部としての凹部を有する加工フィルムを得た。そして、加工フィルムの端面における厚み方向(縦方向)に延びるクラックの有無を確認した。その結果を表1に示す。
【0074】
[実施例1]
イソソルビド(ISB)81.98質量部に対して、トリシクロデカンジメタノール(TCDDM)47.19質量部、ジフェニルカーボネート(DPC)175.1質量部、および、触媒としての炭酸セシウム0.2質量%水溶液0.979質量部を反応容器に投入し、窒素雰囲気下にて、反応の第1段目の工程として、加熱槽温度を150℃に加熱し、必要に応じて攪拌しながら、原料を溶解させた(約15分)。次いで、圧力を常圧から13.3kPaにし、加熱槽温度を190℃まで1時間で上昇させながら、発生するフェノールを反応容器外へ抜き出した。反応容器全体を190℃で15分保持した後、第2段目の工程として、反応容器内の圧力を6.67kPaとし、加熱槽温度を230℃まで、15分で上昇させ、発生するフェノールを反応容器外へ抜き出した。攪拌機の攪拌トルクが上昇してくるので、8分で250℃まで昇温し、さらに発生するフェノールを取り除くため、反応容器内の圧力を0.200kPa以下に到達させた。所定の攪拌トルクに到達後、反応を終了し、生成した反応物を水中に押し出して、PC系樹脂のペレットを得た。得られたPC系樹脂を100℃で12時間真空乾燥をした後、単軸押出機(東芝機械社製、シリンダー設定温度:250℃)、Tダイ(幅1700mm、設定温度:250℃)、キャストロール(設定温度:60℃)および巻取機を備えたフィルム製膜装置を用いて、厚み40μmのPC系樹脂フィルムを作製した。PC系樹脂フィルムの面内位相差Re(550)は、3.0nmであった。
【0075】
[比較例1]
厚み40μmのアクリル系樹脂フィルム(カネカ社製、製品名「HTX-Z」)を準備した。
【0076】
【表1】
【0077】
[評価]
表1から明らかなように、樹脂フィルムのシャルピー引張衝撃強さが400kJ/m以上であると、外形加工において、樹脂フィルムの端面に縦方向に延びるクラックが発生することを抑制し得ることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0078】
本発明の樹脂フィルムは、各種産業製品に適用し得、特に、加飾フィルム、偏光板などの光学部材に好適に用いられ得る。
【符号の説明】
【0079】
1 樹脂フィルム
2 偏光子
3 加工フィルム
図1
図2
図3
図4