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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024171111
(43)【公開日】2024-12-11
(54)【発明の名称】光測距装置
(51)【国際特許分類】
   G01S 7/481 20060101AFI20241204BHJP
   G01S 17/42 20060101ALI20241204BHJP
【FI】
G01S7/481 A
G01S17/42
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023088002
(22)【出願日】2023-05-29
(71)【出願人】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】恩田 一寿
(72)【発明者】
【氏名】川添 浩平
(72)【発明者】
【氏名】神原 信幸
【テーマコード(参考)】
5J084
【Fターム(参考)】
5J084AA05
5J084AB13
5J084AC03
5J084AD02
5J084BA03
5J084BA50
5J084BB02
5J084BB04
5J084BB26
5J084CA03
5J084CA07
(57)【要約】
【課題】屈折率が高い環境下であっても、高いSN比とすることができる光測距装置を提供する。
【解決手段】目標に測距光を照射して測距を行う光測距装置において、平行光となる測距光を照射する発光部と、測距光を走査する走査部と、走査部により走査された測距光を透過する透過カバーと、透過カバーを透過した測距光が目標に照射されることで、目標で反射された測距光を受光する受光部と、を備え、走査部は、走査回転軸を中心に回転すると共に、発光部から照射された測距光を反射する発光側反射面と、受光部へ測距光を反射する受光側反射面とを有する多面体の回転ミラーを有し、透過カバーは、外部環境側に凸となる所定の曲率半径となる曲面形状となっており、走査回転軸と透過カバーの曲率中心とを結ぶ軸上において、透過カバーから走査回転軸の距離は、透過カバーから曲率中心までの長さとなる曲率半径よりも長くなっている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部環境下に設置されると共に、前記内部環境下よりも屈折率が高い外部環境下にある目標に測距光を照射して測距を行う光測距装置において、
平行光となる前記測距光を照射する発光部と、
前記発光部から照射された前記測距光を走査する走査部と、
前記内部環境と前記外部環境とを区画すると共に、前記走査部により走査された前記測距光を透過する透過カバーと、
前記透過カバーを透過した前記測距光が前記目標に照射されることで、前記目標で反射された前記測距光を受光する受光部と、を備え、
前記走査部は、
走査回転軸を中心に回転すると共に、前記発光部から照射された前記測距光を反射する発光側反射面と、前記受光部へ前記測距光を反射する受光側反射面とを有する多面体の回転ミラーを有し、
前記透過カバーは、前記外部環境側に凸となる所定の曲率半径となる曲面形状となっており、
前記走査回転軸と前記透過カバーの曲率中心とを結ぶ軸上において、
前記透過カバーから前記走査回転軸の距離は、前記透過カバーから前記曲率中心までの長さとなる曲率半径よりも長くなっている光測距装置。
【請求項2】
前記受光部は、
前記測距光を集光する集光レンズと、
前記測距光を受光する受光素子と、
前記集光レンズと前記受光素子との間に設けられ、前記受光素子に投影される前記測距光の受光範囲を調整する視野絞りと、を有する請求項1に記載の光測距装置。
【請求項3】
前記走査部と前記透過カバーとの間に位置する射出瞳及び入射瞳の開口を調整する開口絞りを、さらに備える請求項1に記載の光測距装置。
【請求項4】
前記走査部と前記受光部との間に設けられ、前記測距光の波長となる光を透過させるバンドパスフィルタを、さらに備える請求項1に記載の光測距装置。
【請求項5】
前記発光部から前記走査部へ至る発光光路、及び前記走査部から前記受光部へ至る受光光路の少なくとも一方に設けられ、外光を遮蔽する遮光カバーを、さらに備える請求項1に記載の光測距装置。
【請求項6】
前記透過カバーは、複数の層からなっており、前記内部環境側の層から前記外部環境側の層にかけて屈折率が大きくなる請求項1に記載の光測距装置。
【請求項7】
前記透過カバーは、カバー本体と、前記カバー本体の前記内部環境側に設けられる反射防止膜と、を有する請求項6に記載の光測距装置。
【請求項8】
前記走査部は、前記測距光の初期の照射位置を中心として、前記測距光を外側から内側に向かってらせん状に走査する請求項1に記載の光測距装置。
【請求項9】
前記発光部及び前記受光部を制御する制御部を、さらに備え、
前記発光部から照射される前記測距光は、パルス波であり、
前記制御部は、
前記測距光を照射するためのトリガ信号を生成するトリガ生成部と、
前記トリガ信号に基づいて前記測距光を生成するためのパルス信号を生成するパルス信号生成部と、
前記トリガ信号に基づいて前記測距光の強度を変調するための強度変調信号を生成する強度変調信号生成部と、
前記強度変調信号及び前記パルス信号に基づいて前記発光部から照射される前記測距光を強度変調する変調部と、
前記受光部で受光した前記測距光の波形を取得する波形取得部と、
前記強度変調信号生成部で生成された前記強度変調信号に基づいて、前記発光部から照射される前記測距光と、前記受光部で受光した前記測距光との同期検波を行うロックイン検波部と、
同期検波後の受光した前記測距光に基づいて、目標までの距離を取得する測距部と、を有する請求項1に記載の光測距装置。
【請求項10】
内部環境下に設置されると共に、前記内部環境下よりも屈折率が高い外部環境下にある目標に測距光を照射して測距を行う光測距装置において、
平行光となる前記測距光を照射する発光部と、
前記発光部から照射された前記測距光を走査する走査部と、
前記内部環境と前記外部環境とを区画すると共に、前記走査部により走査された前記測距光を透過する透過カバーと、
前記透過カバーを透過した前記測距光が前記目標に照射されることで、前記目標で反射された前記測距光を受光する受光部と、
前記発光部及び前記受光部を制御する制御部と、を備え、
前記発光部から照射される前記測距光は、パルス波であり、
前記制御部は、
前記測距光を照射するためのトリガ信号を生成するトリガ生成部と、
前記トリガ信号に基づいて前記測距光を生成するためのパルス信号を生成するパルス信号生成部と、
前記トリガ信号に基づいて前記測距光の強度を変調するための強度変調信号を生成する強度変調信号生成部と、
前記強度変調信号及び前記パルス信号に基づいて前記発光部から照射される前記測距光を強度変調する変調部と、
前記受光部で受光した前記測距光の波形を取得する波形取得部と、
前記強度変調信号生成部で生成された前記強度変調信号に基づいて、前記発光部から照射される前記測距光と、前記受光部で受光した前記測距光との同期検波を行うロックイン検波部と、
同期検波後の受光した前記測距光に基づいて、目標までの距離を取得する測距部と、を有する光測距装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、光測距装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、光測距装置として、測距手段を有するレーザレーダ装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。レーザレーダ装置は、海中へ向けてレーザを出力すると共に、海中のマリンスノーにより散乱された散乱光を集光して受光している(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2014/178376号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に示すレーザレーダ装置では、出力されるレーザの発光光路と、散乱光を受光する受光光路とが同一光路となっている。レーザレーダ装置は、スキャナの回転角を制御することにより、レーザを走査している。散乱が発生し易い水中環境下において、スキャナによりレーザを広角に走査する場合、受光角が増大することにより散乱光に起因するノイズ強度が上昇してしまう。また、受光角が増大すると、スキャナにおいて受光する散乱光の投影面積が減少するため、受光信号の信号強度が低下してしまう。さらに、発光光路と受光光路とが同一光路となっていることから、スキャナの受光エリアにレーザの照射エリアを設定するため、受光エリアが減少する分、受光信号の信号強度が低下してしまう。以上によって、受光によって得られる受光信号のSN比が低下してしまう。
【0005】
そこで、本開示は、屈折率が高い環境下であっても、高いSN比とすることができる光測距装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の光測距装置は、内部環境下に設置されると共に、前記内部環境下よりも屈折率が高い外部環境下にある目標に測距光を照射して測距を行う光測距装置において、平行光となる前記測距光を照射する発光部と、前記発光部から照射された前記測距光を走査する走査部と、前記内部環境と前記外部環境とを区画すると共に、前記走査部により走査された前記測距光を透過する透過カバーと、前記透過カバーを透過した前記測距光が前記目標に照射されることで、前記目標で反射された前記測距光を受光する受光部と、を備え、前記走査部は、走査回転軸を中心に回転すると共に、前記発光部から照射された前記測距光を反射する発光側反射面と、前記受光部へ前記測距光を反射する受光側反射面とを有する多面体の回転ミラーを有し、前記透過カバーは、前記外部環境側に凸となる所定の曲率半径となる曲面形状となっており、前記走査回転軸と前記透過カバーの曲率中心とを結ぶ軸上において、前記透過カバーから前記走査回転軸の距離は、前記透過カバーから前記曲率中心までの長さとなる曲率半径よりも長くなっている。
【0007】
本開示の光測距装置は、内部環境下に設置されると共に、前記内部環境下よりも屈折率が高い外部環境下にある目標に測距光を照射して測距を行う光測距装置において、平行光となる前記測距光を照射する発光部と、前記発光部から照射された前記測距光を走査する走査部と、前記内部環境と前記外部環境とを区画すると共に、前記走査部により走査された前記測距光を透過する透過カバーと、前記透過カバーを透過した前記測距光が前記目標に照射されることで、前記目標で反射された前記測距光を受光する受光部と、前記発光部及び前記受光部を制御する制御部と、を備え、前記発光部から照射される前記測距光は、パルス波であり、前記制御部は、前記測距光を照射するためのトリガ信号を生成するトリガ生成部と、前記トリガ信号に基づいて前記測距光を生成するためのパルス信号を生成するパルス信号生成部と、前記トリガ信号に基づいて前記測距光の強度を変調するための強度変調信号を生成する強度変調信号生成部と、前記強度変調信号及び前記パルス信号に基づいて前記発光部から照射される前記測距光を強度変調する変調部と、前記受光部で受光した前記測距光の波形を取得する波形取得部と、前記強度変調信号生成部で生成された前記強度変調信号に基づいて、前記発光部から照射される前記測距光と、前記受光部で受光した前記測距光との同期検波を行うロックイン検波部と、同期検波後の受光した前記測距光に基づいて、目標までの距離を取得する測距部と、を有する。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、屈折率が高い環境下であっても、高いSN比とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、第一実施形態に係る光測距装置の概略構成図である。
図2図2は、走査部と透過カバーとの位置関係を示す図である。
図3図3は、第二実施形態に係る光測距装置の概略構成図である。
図4図4は、第三実施形態に係る光測距装置の概略構成図である。
図5図5は、第四実施形態に係る光測距装置の概略構成図である。
図6図6は、第五実施形態に係る光測距装置の概略構成図である。
図7図7は、第六実施形態に係る光測距装置により走査された測距光の走査軌跡を示す図である。
図8図8は、第六実施形態に係る光測距装置により走査された測距光の受信間隔を示すグラフである。
図9図9は、第七実施形態に係る光測距装置の概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、本開示に係る実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施形態によりこの開示が限定されるものではない。また、下記実施形態における構成要素には、当業者が置換可能かつ容易なもの、あるいは実質的に同一のものが含まれる。さらに、以下に記載した構成要素は適宜組み合わせることが可能であり、また、実施形態が複数ある場合には、各実施形態を組み合わせることも可能である。
【0011】
[第一実施形態]
第一実施形態に係る光測距装置10は、測距光となるレーザを目標に照射して、目標までの距離を測定する装置である。先ず、図1を参照して、光測距装置10について説明する。
【0012】
(光測距装置)
図1は、第一実施形態に係る光測距装置の概略構成図である。光測距装置10は、透過カバー21を有する筐体11と、発光部13と、走査部15と、受光部17と、制御部19と、を備えている。光測距装置10は、主に、海中等の水中下における外部環境において用いられる。
【0013】
筐体11は、装置の内部と外部とを区画する外殻となっており、密封性を有する構造となっている。筐体11によって区画される内部環境は、空気下における空間となる一方で、外部環境は、海中等の水中下における空間となっている。このため、外部環境は、内部環境に比して、屈折率が高いものとなっており、例えば、内部環境の屈折率は、約1.0であるのに対して、外部環境の屈折率は、約1.3となっている。
【0014】
また、筐体11は、レーザが射出される側の部位に透過カバー21が設けられている。透過カバー21は、レーザを透過可能な材料を用いて構成され、外部環境側に凸となる所定の曲率半径となる曲面形状となっている。
【0015】
発光部13は、平行光となる測距光を照射する。発光部13は、測距光としてのレーザを発光する発光素子25と、発光素子25から出射されたレーザをコリメーションする発光レンズ26と、を有している。発光部13は、発光素子25から発光した測距光となるレーザを発光レンズ26へ向けて照射し、発光レンズ26によりレーザをコリメーションして、平行光となるレーザを走査部15へ向かって出射する。なお、発光部13は、発光レンズ26を含むものとなっているが、平行光となるレーザを照射可能であれば、光学部材を含む光学系について特に限定されない。
【0016】
走査部15は、発光部13から照射された測距光を走査する。また、走査部15は、目標から反射された測距光を受光部17へ向けて出射している。走査部15は、発光側ミラー29と、多面体の回転ミラー30と、受光側ミラー31と、を有している。
【0017】
発光側ミラー29は、発光部13の出射側に設けられ、発光部13から照射された測距光を反射して、回転ミラー30に投射する。発光側ミラー29は、回転ミラー30の走査回転軸の軸方向に直交する方向に、測距光を走査可能となっている。
【0018】
回転ミラー30は、発光側ミラー29の出射側に設けられ、発光側ミラー29から照射された測距光を反射して、外部環境下の目標へ向かって測距光を投射する。回転ミラー30は、発光側反射面30aと受光側反射面30bとを有する多面体の形状となっており、例えば、正六面体となっている。回転ミラー30は、走査回転軸を中心に回転することで、走査回転軸の周方向に沿って、測距光を走査可能となっている。また、回転ミラー30は、走査回転軸を傾斜させることで、走査回転軸の周方向に直交する方向に、測距光を走査可能となっている。このため、回転ミラー30は、走査回転軸の周方向と周方向に直交する方向において、測距光を2次元的に走査可能となっている。発光側反射面30aと受光側反射面30bとは、周方向に隣接する面となっており、発光側反射面30aと受光側反射面30bとが為す角度は直角となっている。発光側反射面30aは、発光側ミラー29と対向しており、受光側反射面30bは、受光側ミラー31と対向している。発光側反射面30aは、発光側ミラー29から照射された測距光を反射する。受光側反射面30bは、目標から反射された測距光を受光側ミラー31へ向かって反射する。
【0019】
受光側ミラー31は、回転ミラー30と受光部17との間に設けられ、目標から反射した測距光を受光部17へ向けて反射する。受光側ミラー31は、回転ミラー30の走査回転軸の軸方向に直交する方向に、測距光を走査可能となっている。
【0020】
受光部17は、目標で反射された測距光を受光する。受光部17は、測距光としてのレーザを集光する受光レンズ(集光レンズ)35と、受光レンズ35により集光した測距光を受光する受光素子36と、受光素子36に投影される測距光の受光範囲を調整する視野絞り37とを有している。受光部17は、受光レンズ35により測距光を集光し、集光した測距光を受光素子36で受光する。なお、受光部17は、受光レンズ35を含むものとなっているが、測距光を受光可能であれば、光学部材を含む光学系について特に限定されない。
【0021】
制御部19は、発光部13、走査部15及び受光部17を含む各部を制御している。制御部19は、発光部13から出射した測距光の出射のタイミングと、受光部17で受光した測距光の受光のタイミングとに基づいて、目標までの距離を測定している。
【0022】
次に、図2を参照して、透過カバー21と回転ミラー30との位置関係について説明する。図2は、回転ミラー30の走査回転軸をI1とし、走査回転軸I1に直交する直交面内における図となっている。図2において、P1は、透過カバー21の曲率中心となっている。図2は、その横軸が走査回転軸I1を原点とし、走査回転軸I1と曲率中心P1とを結んだときの距離となっており、矢印方向が正方向となっている。図2に示すように、横軸上における透過カバー21から走査回転軸I1までの距離は、s’(-)となっており、透過カバー21から曲率中心P1までの長さ(曲率半径)は、r(-)となっている。そして、透過カバー21から走査回転軸I1までの距離s’は、透過カバー21から曲率中心P1までの曲率半径rよりも長くなっている。
【0023】
なお、図2に示すM1は、射出瞳M1a及び入射瞳M1bの瞳面であり、透過カバー21から瞳面M1までの距離は、s(-)となっている。透過カバー21から瞳面M1までの距離sは、透過カバー21から曲率中心P1までの曲率半径rよりも長く、透過カバー21から走査回転軸I1までの距離s’よりも短いものとなっている。透過カバー21から走査回転軸I1までの距離s’を、透過カバー21から曲率中心P1までの曲率半径rよりも長くすることで、凹レンズのような光学的な負のパワーを作用させる。
【0024】
上記の光測距装置10において、制御部19は、発光部13から測距光を出射させる。出射された測距光は、走査部15の発光側ミラー29に入射し、発光側ミラー29によって回転ミラー30の発光側反射面30aへ向けて反射される。回転ミラー30の発光側反射面30aに入射した測距光は、発光側反射面30aで反射され、透過カバー21を介して筐体11の外部にある目標へ向かって出射する。目標で反射された測距光は、透過カバー21を介して筐体11の内部に入射する。筐体11の内部に入射した測距光は、回転ミラー30の受光側反射面30bに入射し、受光側反射面30bで反射され、受光側ミラー31に入射する。受光側ミラー31で反射された測距光は、受光部17に入射する。制御部19は、受光部17に入射した測距光に基づいて、目標までの距離を測定する。
【0025】
また、光測距装置10の制御部19は、走査部15の回転ミラー30を回転させて、測距光を走査する。このとき、光測距装置10は、距離s’が曲率半径rよりも長いことから、測距光を走査するための走査角を小さくできる。
【0026】
[第二実施形態]
次に、図3を参照して、第二実施形態について説明する。図3は、第二実施形態に係る光測距装置の概略構成図である。なお、第二実施形態では、重複した記載を避けるべく、第一実施形態と異なる部分について説明し、第一実施形態と同様の構成である部分については、同じ符号を付して説明する。
【0027】
第二実施形態の光測距装置50は、第一実施形態の光測距装置10に、射出瞳及び入射瞳の開口を調整する開口絞り51をさらに備えたものとなっている。開口絞り51は、筐体11の内側に取り付けられ、瞳面M1に位置して設けられている。開口絞り51は、射出瞳及び入射瞳の開口を調整することで、外部環境(水中)で生じた散乱光によるノイズを抑制する。
【0028】
[第三実施形態]
次に、図4を参照して、第三実施形態について説明する。図4は、第三実施形態に係る光測距装置の概略構成図である。なお、第三実施形態では、重複した記載を避けるべく、第一実施形態及び第二実施形態と異なる部分について説明し、第一実施形態及び第二実施形態と同様の構成である部分については、同じ符号を付して説明する。
【0029】
第三実施形態の光測距装置60は、第一実施形態の光測距装置10に、バンドパスフィルタ61をさらに備えたものとなっている。バンドパスフィルタ61は、走査部15と受光部17との間の測距光が通る光路上に設けられ、測距光の波長となる光を透過させる一方で、測距光以外の波長となる光を除去している。このため、バンドパスフィルタ61は、測距光以外の光によるノイズを抑制する。
【0030】
[第四実施形態]
次に、図5を参照して、第四実施形態について説明する。図5は、第四実施形態に係る光測距装置の概略構成図である。なお、第四実施形態では、重複した記載を避けるべく、第一実施形態から第三実施形態と異なる部分について説明し、第一実施形態から第三実施形態と同様の構成である部分については、同じ符号を付して説明する。
【0031】
第四実施形態の光測距装置70は、第一実施形態の光測距装置10に、外光を遮蔽する遮光カバー71をさらに備えたものとなっている。遮光カバー71は、発光部13から走査部15へ至る測距光の光路(発光光路)及び走査部15から受光部17へ至る測距光の光路(受光光路)のそれぞれの光路に沿って設けられている。遮光カバー71は、例えば、筒状に形成されている。遮光カバー71は、発光部13から散乱されて射出するノイズ光、もしくは、外光によるノイズ光を抑制する。なお、第四実施形態では、発光光路及び受光光路のそれぞれに遮光カバー71を設けたが、一方だけに設けてもよい。
【0032】
[第五実施形態]
次に、図6を参照して、第五実施形態について説明する。図6は、第五実施形態に係る光測距装置の概略構成図である。なお、第五実施形態では、重複した記載を避けるべく、第一実施形態から第四実施形態と異なる部分について説明し、第一実施形態から第四実施形態と同様の構成である部分については、同じ符号を付して説明する。
【0033】
第五実施形態の光測距装置80は、第一実施形態の光測距装置10の透過カバー21に代えて、複数の層からなる透過カバー81となっている。透過カバー81は、外側の層となるカバー本体81aと、カバー本体81aの内部環境側に設けられる内側の層となる反射防止膜81bと、を有している。透過カバー81は、内部環境側の層から外部環境側の層にかけて屈折率が大きくなっており、具体的に、カバー本体81aに対して反射防止膜81bのほうが、屈折率が小さくなっている。反射防止膜81bは、例えば、AR(Anti-Reflection)コートである。
【0034】
なお、透過カバー81は、上記の構成に特に限定されず、複数の層からなるものであればよく、例えば、内側の層と外側の層とにカバー部材を設け、2層のカバー部材の間に反射防止膜81bを設けた構成であってもよい。
【0035】
[第六実施形態]
次に、図7及び図8を参照して、第六実施形態について説明する。図7は、第六実施形態に係る光測距装置により走査された測距光の走査軌跡を示す図である。図8は、第六実施形態に係る光測距装置により走査された測距光の受信間隔を示すグラフである。なお、第六実施形態では、重複した記載を避けるべく、第一実施形態から第五実施形態と異なる部分について説明し、第一実施形態から第五実施形態と同様の構成である部分については、同じ符号を付して説明する。
【0036】
第六実施形態の光測距装置10は、第一実施形態と同様の構成であり、走査部15が、測距光の初期の照射位置を中心として、外側から内側に向かってらせん状に走査することで、図7に示す走査軌跡Lとなる。具体的に、制御部19は、走査部15を制御して、測距光のらせん状走査の回転角速度を一定に保ちつつ、発光部13から測距光を一定の周期で発光させて、測距光をらせん状に走査する。図7のように走査することで、光測距装置10は、受光部17を介して図8に示すような受光信号を取得する。図8は、その横軸が時間となっており、その縦軸が信号強度となっている。図8に示すように、受光信号は、初期の照射位置に近づくにつれて、測距光の受信間隔が短くなる。つまり、光測距装置10は、初期の照射位置に近づくにつれて、測距点の密度が密となり、SN比が高くなる。
【0037】
[第七実施形態]
次に、図9を参照して、第七実施形態について説明する。図9は、第七実施形態に係る光測距装置の概略構成図である。なお、第七実施形態では、重複した記載を避けるべく、第一実施形態から第六実施形態と異なる部分について説明し、第一実施形態から第六実施形態と同様の構成である部分については、同じ符号を付して説明する。
【0038】
第七実施形態の光測距装置90は、制御部19において、強度変調に基づくロックイン検波を実行可能となっている。第七実施形態の光測距装置90における制御部19は、トリガ生成部92と、パルス信号生成部93と、強度変調信号生成部94と、変調部95と、フォトンカウンタ96と、ゲーティング・ビニング処理部(波形取得部)97と、積算処理部98と、ロックイン検波部99と、測距結果取得部(測距部)100と、遅延回路101と、を有している。
【0039】
トリガ生成部92は、測距光を照射するためのトリガ信号を生成する。パルス信号生成部93は、トリガ信号に基づいて測距光を生成するためのパルス信号を生成する。なお、発光部13から照射される測距光は、パルス波レーザとなっており、発光部13は、パルス信号に基づいて発光素子25から測距光を出射する。強度変調信号生成部94は、トリガ信号に基づいて測距光の強度を変調するための強度変調信号を生成する。変調部95は、パルス繰返数変調95aと、強度変調器95bとを含んでいる。変調部95は、強度変調器95bが、強度変調信号に基づいてパルス信号生成部93において生成されたパルス信号を、パルス繰返数変調95aにおいてパルス信号の繰り返し数を変化させることで、測距光の強度変調を実行する。なお、変調部95は、パルス波の振幅を変化させることで測距光の強度変調を行ってもよい。
【0040】
フォトンカウンタ96は、受光素子36から受光した測距光の光子数を計数する。ゲーティング・ビニング処理部(波形取得部)97は、計数した光子数から、時間ごとの光子数となるように処理して、光子数を時間波形に変換する。また、ゲーティング・ビニング処理部97は、遅延回路101において遅延したトリガ信号を取得し、取得したトリガ信号と変換した時間波形とから、目標までの距離に関するゲーティング情報を取得する。積算処理部98は、変換した時間波形を積算処理する。ロックイン検波部99は、積算処理された時間波形と、強度変調信号生成部94において生成された強度変調信号とを取得する。ロックイン検波部99は、強度変調信号に基づいて、発光部13から照射される測距光と、受光部17で受光した測距光との同期検波を行う。具体的に、ロックイン検波部99は、強度変調信号を参照信号として用いて、積算処理された時間波形を比較し、測定対象となる受信信号を抽出する。測距結果取得部(測距部)100は、抽出した受信信号に基づいて、信号値が所定のしきい値を超えた場合、目標有と判定し、目標までの距離を取得する。
【0041】
これにより、制御部19は、強度変調された発光される測距光と、同じ時間波形となる受光した測距光とを同期検波することによって、微弱な受光信号を高いSN比で取得する。
【0042】
なお、第七実施形態の光測距装置90は、透過カバー21と回転ミラー30の走査回転軸I1とが図2に示す関係となっていなくてもよい。
【0043】
以上のように、第一実施形態から第七実施形態に記載の光測距装置10、50、60、70、80、90は、例えば、以下のように把握される。
【0044】
第1の態様に係る光測距装置10、50、60、70、80、90は、内部環境下に設置されると共に、前記内部環境下よりも屈折率が高い外部環境下にある目標に測距光を照射して測距を行う光測距装置10、50、60、70、80、90において、平行光となる前記測距光を照射する発光部13と、前記発光部13から照射された前記測距光を走査する走査部15と、前記内部環境と前記外部環境とを区画すると共に、前記走査部15により走査された前記測距光を透過する透過カバー21と、前記透過カバー21を透過した前記測距光が前記目標に照射されることで、前記目標で反射された前記測距光を受光する受光部17と、を備え、前記走査部15は、走査回転軸I1を中心に回転すると共に、前記発光部13から照射された前記測距光を反射する発光側反射面30aと、前記受光部17へ前記測距光を反射する受光側反射面30bとを有する多面体の回転ミラー30を有し、前記透過カバー21は、前記外部環境側に凸となる所定の曲率半径となる曲面形状となっており、前記走査回転軸I1と前記透過カバー21の曲率中心P1とを結ぶ軸上において、前記透過カバー21から前記走査回転軸I1の距離s’は、前記透過カバー21から前記曲率中心P1までの長さとなる曲率半径rよりも長くなっている。
【0045】
この構成によれば、透過カバー21から走査回転軸I1までの距離s’を、透過カバー21から曲率中心P1までの曲率半径rよりも長くすることで、凹レンズのような光学的な負のパワーを作用させることができる。このため、測距光を走査するための回転ミラー30の走査角を小さくできることから、散乱光に起因するノイズ強度を低下させることができるため、屈折率が高い環境下であっても、受光信号のSN比を高いものとすることができる。
【0046】
第2の態様として、第1の態様に係る光測距装置10、50、60、70、80、90において、前記受光部17は、前記測距光を集光する集光レンズ(受光レンズ35)と、前記測距光を受光する受光素子36と、前記集光レンズと前記受光素子36との間に設けられ、前記受光素子36に投影される前記測距光の受光範囲を調整する視野絞り37と、を有する。
【0047】
この構成によれば、視野絞り37により受光素子36に投影される測距光の受光範囲を調整することで、ノイズとなる散乱光の受光を抑制することができるため、受光信号のSN比をより高いものとすることができる。
【0048】
第3の態様として、第1または第2の態様に係る光測距装置50において、前記走査部15と前記透過カバー21との間に位置する射出瞳及び入射瞳の開口を調整する開口絞り51を、さらに備える。
【0049】
この構成によれば、開口絞り51により射出瞳及び入射瞳の開口を調整することで、外部環境(水中)で生じた散乱光によるノイズを抑制することができるため、受光信号のSN比をより高いものとすることができる。
【0050】
第4の態様として、第1から第3のいずれか一つ態様に係る光測距装置60において、前記走査部15と前記受光部17との間に設けられ、前記測距光の波長となる光を透過させるバンドパスフィルタ61を、さらに備える。
【0051】
この構成によれば、バンドパスフィルタ61により測距光以外の光によるノイズを抑制することができるため、受光信号のSN比をより高いものとすることができる。
【0052】
第5の態様として、第1から第4のいずれか一つ態様に係る光測距装置70において、前記発光部13から前記走査部15へ至る発光光路、及び前記走査部15から前記受光部17へ至る受光光路の少なくとも一方に設けられ、外光を遮蔽する遮光カバー71を、さらに備える。
【0053】
この構成によれば、遮光カバー71により発光部13から散乱されて射出するノイズ光もしくは、外光によるノイズ光を抑制することができるため、受光信号のSN比をより高いものとすることができる。
【0054】
第6の態様として、第1から第5のいずれか一つ態様に係る光測距装置80において、前記透過カバー81は、複数の層からなっており、前記内部環境側の層から前記外部環境側の層にかけて屈折率が大きくなる。
【0055】
この構成によれば、透過カバー21における測距光の反射を抑制することができるため、測距光の目標への照射を好適に行うことができる。
【0056】
第7の態様として、第6の態様に係る光測距装置80において、前記透過カバー81は、カバー本体81aと、前記カバー本体81aの前記内部環境側に設けられる反射防止膜81bと、を有する。
【0057】
この構成によれば、カバー本体81aに反射防止膜81bを形成することで、簡易な構成で測距光の反射を抑制することができる。
【0058】
第8の態様として、第1から第7のいずれか一つ態様に係る光測距装置10において、前記走査部15は、前記測距光の初期の照射位置を中心として、前記測距光を外側から内側に向かってらせん状に走査する。
【0059】
この構成によれば、測距光の初期の照射位置に近づくにつれて、測距点の密度を密とすることができるため、目標に対する測距のSN比を高めることができる。
【0060】
第9の態様として、第1から第8のいずれか一つ態様に係る光測距装置90において、前記発光部13及び前記受光部17を制御する制御部19を、さらに備え、前記発光部13から照射される前記測距光は、パルス波であり、前記制御部19は、前記測距光を照射するためのトリガ信号を生成するトリガ生成部92と、前記トリガ信号に基づいて前記測距光を生成するためのパルス信号を生成するパルス信号生成部93と、前記トリガ信号に基づいて前記測距光の強度を変調するための強度変調信号を生成する強度変調信号生成部94と、前記強度変調信号及び前記パルス信号に基づいて前記発光部13から照射される前記測距光を強度変調する変調部95と、前記受光部17で受光した前記測距光の波形を取得する波形取得部(ゲーティング・ビニング処理部97)と、前記強度変調信号生成部94で生成された前記強度変調信号に基づいて、前記発光部13から照射される前記測距光と、前記受光部17で受光した前記測距光との同期検波を行うロックイン検波部99と、同期検波後の受光した前記測距光に基づいて、目標までの距離を取得する測距部100と、を有する。
【0061】
この構成によれば、強度変調された発光される測距光と、同じ時間波形となる受光した測距光とを同期検波することによって、微弱な受光信号を高いSN比で取得する。
【0062】
第10の態様に係る光測距装置90は、内部環境下に設置されると共に、前記内部環境下よりも屈折率が高い外部環境下にある目標に測距光を照射して測距を行う光測距装置90において、平行光となる前記測距光を照射する発光部13と、前記発光部13から照射された前記測距光を走査する走査部15と、前記内部環境と前記外部環境とを区画すると共に、前記走査部15により走査された前記測距光を透過する透過カバー21と、前記透過カバー21を透過した前記測距光が前記目標に照射されることで、前記目標で反射された前記測距光を受光する受光部17と、前記発光部13及び前記受光部17を制御する制御部19と、を備え、前記発光部13から照射される前記測距光は、パルス波であり、前記制御部19は、前記測距光を照射するためのトリガ信号を生成するトリガ生成部92と、前記トリガ信号に基づいて前記測距光を生成するためのパルス信号を生成するパルス信号生成部93と、前記トリガ信号に基づいて前記測距光の強度を変調するための強度変調信号を生成する強度変調信号生成部94と、前記強度変調信号及び前記パルス信号に基づいて前記発光部13から照射される前記測距光を強度変調する変調部95と、前記受光部17で受光した前記測距光の波形を取得する波形取得部(ゲーティング・ビニング処理部97)と、前記強度変調信号生成部94で生成された前記強度変調信号に基づいて、前記発光部13から照射される前記測距光と、前記受光部17で受光した前記測距光との同期検波を行うロックイン検波部99と、同期検波後の受光した前記測距光に基づいて、目標までの距離を取得する測距部100と、を有する。
【0063】
この構成によれば、強度変調された発光される測距光と、同じ時間波形となる受光した測距光とを同期検波することによって、微弱な受光信号を高いSN比で取得することができる。
【符号の説明】
【0064】
10、50、60、70、80、90 光測距装置
13 発光部
15 走査部
17 受光部
19 制御部
21、81 透過カバー
30 回転ミラー
37 視野絞り
51 開口絞り
61 バンドパスフィルタ
71 遮光カバー
81a カバー本体
81b 反射防止膜
92 トリガ生成部
93 パルス信号生成部
94 強度変調信号生成部
95 変調部
95a パルス繰返数変調
95b 強度変調器
96 フォトンカウンタ
97 ゲーティング・ビニング処理部(波形取得部)
98 積算処理部
99 ロックイン検波部
100 測距結果取得部(測距部)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9