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特開2024-171113電子装置の温度調整方法および電子装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024171113
(43)【公開日】2024-12-11
(54)【発明の名称】電子装置の温度調整方法および電子装置
(51)【国際特許分類】
   C12M 1/00 20060101AFI20241204BHJP
   C12M 1/34 20060101ALI20241204BHJP
【FI】
C12M1/00 A
C12M1/34 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023088005
(22)【出願日】2023-05-29
(71)【出願人】
【識別番号】502356528
【氏名又は名称】株式会社ジャパンディスプレイ
(74)【代理人】
【識別番号】110002066
【氏名又は名称】弁理士法人筒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】磯野 大樹
(72)【発明者】
【氏名】山田 一幸
(72)【発明者】
【氏名】浅田 圭介
(72)【発明者】
【氏名】武政 健一
【テーマコード(参考)】
4B029
【Fターム(参考)】
4B029AA07
4B029AA23
4B029BB20
4B029CC01
4B029FA15
(57)【要約】
【課題】電子装置の温度調整をより適切に行うための技術を提供する。
【解決手段】パネル基板10に設定された複数の測定領域MAでパネル基板10の温度を検出し、複数の測定領域MAで検出されたパネル基板10の温度に応じて、パネル基板10に設定された複数の調整領域AAの温度を個別に調整する。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の素子が搭載されたパネル基板を備える電子装置の温度調整方法であって、
前記パネル基板に設定された複数の測定領域で当該パネル基板の温度を検出する第1工程と、
前記複数の測定領域で検出された前記パネル基板の温度に応じて、前記パネル基板に設定された複数の調整領域の温度を個別に調整する第2工程と、を有する、
電子装置の温度調整方法。
【請求項2】
請求項1に記載の電子装置の温度調整方法において、
前記パネル基板の前記複数の調整領域のそれぞれには、前記複数の測定領域のうちの少なくとも一つが設けられており、
前記第1工程では、前記パネル基板の前記複数の調整領域のそれぞれに設けられる前記複数の測定領域で前記パネル基板の温度を検出する、
電子装置の温度調整方法。
【請求項3】
請求項1または2に記載の電子装置の温度調整方法において、
前記電子装置は、前記パネル基板に接合される冷却部材を有し、前記パネル基板を冷却する冷却装置を備え、
前記冷却部材は、前記パネル基板の前記複数の調整領域に対応して設けられ冷却媒体が流通する複数の媒体流路を有し、
前記第2工程では、前記パネル基板の前記複数の測定領域での温度に応じて、前記複数の媒体流路に流通する前記冷却媒体の流通状態を個別に調整する、
電子装置の温度調整方法。
【請求項4】
請求項3に記載の電子装置の温度調整方法において、
前記第2工程では、前記冷却媒体の流通状態として、前記複数の媒体流路に流通する前記冷却媒体の流量を個別に調整する、
電子装置の温度調整方法。
【請求項5】
請求項4に記載の電子装置の温度調整方法において、
前記第2工程では、前記冷却媒体の流通状態として、前記複数の媒体流路に流通する前記冷却媒体の冷却温度をさらに調整する、
電子装置の温度調整方法。
【請求項6】
複数の素子が搭載されたパネル基板を備える電子装置であって、
前記パネル基板に設定された複数の測定領域に設けられ、前記前記パネル基板の温度を検出する複数の温度検出器と、
前記パネル基板に設定された複数の調整領域に対応して設けられる複数の温度調整ユニットを有し前記パネル基板の温度調整を行う温度調整装置と、
前記温度調整装置の動作を制御する制御装置と、を備え、
前記制御装置は、前記複数の温度検出器によって検出される前記複数の測定領域での前記パネル基板の温度に応じて、前記複数の温度調整ユニットの動作を個別に制御する、
電子装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電子装置の温度調整方法および電子装置に関する。
【背景技術】
【0002】
パネル基板上に搭載される素子を有する電子装置には、例えば、素子の発熱対策として、素子の放熱あるいは冷却といった温度調整を行っているものがある。特許文献1には、電子装置としての有機EL表示装置において、複数の透明有機EL素子が搭載される透明有機ELパネルを放熱させるために、金属細線を含む放熱シートが透明有機ELパネルに積層される構成が開示されている。特許文献2には、電子装置としてのパーソナルコンピュータが、ポンプにより液媒体を循環させ、この液媒体により素子としてのCPUを冷却する冷却システムを備える構成が開示されている。
【0003】
また、特許文献3には、電子装置としての表示装置が、基板の第1面に無機発光素子(マイクロLED)を備えると共に基板の第2面に放熱部を備え、これら無機発光素子のカソード電極と放熱部とを伝熱部により接続することで、無機発光素子の放熱を促進する構成が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2016-119362号公報
【特許文献2】特開2003-124671号公報
【特許文献3】特開2020-12972号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本開示の目的は、電子装置の温度調整をより適切に行うための技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様である電子装置の温度調整方法は、複数の素子が搭載されたパネル基板を備える電子装置の温度調整方法であって、前記パネル基板に設定された複数の測定領域で当該パネル基板の温度を検出する第1工程と、前記複数の測定領域で検出された前記パネル基板の温度に応じて、前記パネル基板に設定された複数の調整領域の温度を個別に調整する第2工程と、を有する。
【0007】
また、本開示の一態様である電子装置は、複数の素子が搭載されたパネル基板を備える電子装置であって、前記パネル基板に設定された複数の測定領域に設けられ、前記前記パネル基板の温度を検出する複数の温度検出器と、前記パネル基板に設定された複数の調整領域に対応して設けられる複数の温度調整ユニットを有し前記パネル基板の温度調整を行う温度調整装置と、前記温度調整装置の動作を制御する制御装置と、を備え、前記制御装置は、前記複数の温度検出器によって検出される前記複数の測定領域での前記パネル基板の温度に応じて、前記複数の温度調整ユニットの動作を個別に制御する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】電子装置であるマイクロLED表示装置が備える表示パネルの構成例を示す平面図である。
図2図1に示す画素周辺の回路の構成例を示す回路図である。
図3図1に示す表示パネルの複数の画素のそれぞれに配置されるLED素子の周辺構造の一例を示す透過拡大平面図である。
図4図3のA-A線に沿った拡大断面図である。
図5】一実施の態様に係る表示装置の全体構成を模式的に示す図である。
図6】一実施の形態に係る表示装置が備える温度調整装置の構成を模式的に示す図である。
図7図6のB-B線に沿った冷却部材の断面図である。
図8】一実施の形態に係る表示装置が備える表示パネルの構成を模式的に示す拡大図である。
図9】温度センサーの配置の変形例を示す図である。
図10】温度センサーの配置の変形例を示す図である。
図11】一実施の形態に係る表示装置の温度調整方法の一例を説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に、本発明の実施の形態について、図面を参照しつつ説明する。なお、開示はあくまで一例にすぎない。当業者において、発明の主旨を保っての適宜変更であって容易に想到し得るものについては、当然に本発明の範囲に含有されるものである。また、図面は、説明をより明確にするため、実際の態様に比べ、各部の幅、厚さ、形状等について模式的に表される場合があるが、あくまで一例であって、本発明の解釈を限定するものではない。また、本明細書と各図において、既出の図に関して前述したものと同様の要素には、同一または関連する符号を付して、詳細な説明を適宜省略することがある。
【0010】
以下では、複数の素子が搭載された電子装置の例として、複数の自発光素子であるマイクロ発光ダイオード(以下、マイクロLED(Light Emitting Diode)と称する)が搭載されたマイクロLED表示装置を取り上げて説明する。なお、以下の説明では、マイクロLED表示装置を、単に、表示装置と称する場合がある。また、電子装置には、表示装置の他、例えば、表示装置が組み込まれた電子機器等も含まれるものとする。
【0011】
<表示パネルの基本的な構成例>
まずは、マイクロLED表示装置が備える表示パネルの基本的な構成例について説明する。図1は、表示パネルの構成例を示す平面図である。図1では、表示領域DAと周辺領域PFAとの境界、制御回路5、駆動回路6、および複数の画素PIXのそれぞれを二点鎖線で示している。図2は、図1に示す画素周辺の回路の構成例を示す回路図である。
【0012】
図1に示すように、マイクロLED表示装置DSPが備える表示パネルPNLは、表示領域DAと、表示領域DAの周囲を枠状に囲む周辺領域PFAと、表示領域DA内に行列状に配列された複数の画素PIXと、を有している。また、表示パネルPNLは、平面形状が矩形であるパネル基板10と、パネル基板10上に形成された制御回路5と、パネル基板10上に形成された駆動回路6と、を有している。パネル基板10はガラスまたは樹脂からなる。
【0013】
制御回路5は、表示パネルPNLの表示機能の駆動を制御する制御回路である。例えば、制御回路5は、パネル基板10上に実装されたドライバIC(Integrated Circuit)である。図1に示す例では、制御回路5は、パネル基板10が備える4辺のうち、一つの短辺に沿って、すなわち図中に示すX方向に沿って配置されている。なお、以下の説明では、パネル基板10の短辺方向をX方向、パネル基板10の長辺方向をY方向、パネル基板10の厚さ方向をZ方向と称する場合がある。
【0014】
また、本例では、制御回路5は、複数の画素PIXに接続される配線(映像信号配線)VL(図2参照)を駆動する信号線駆動回路を含んでいる。ただし、制御回路5の位置および構成は、図1に示す例には限定されず、種々の変形例がある。例えば、図1において、制御回路5として示す位置に、フレキシブル基板などの配線基板が接続され、上記のドライバICが、この配線基板上に搭載されている場合がある。また例えば、配線VLを駆動する信号線駆動回路は、制御回路5とは別に形成されている場合がある。
【0015】
駆動回路6は、複数の画素PIXが備える走査信号線GL(図2参照)を駆動する回路を含む。また、駆動回路6は、複数の画素PIXのそれぞれに搭載されたLED素子に基準電位を供給する回路を含む。駆動回路6は、制御回路5からの制御信号に基づいて、複数の走査信号線GLを駆動する。図1に示す例では、駆動回路6は、パネル基板10が備える4辺のうち、二つの長辺のそれぞれに沿って配置されている。ただし、駆動回路6の位置および構成例は、図1に示す例には限定されず、種々の変形例がある。例えば、図1において、制御回路5として示す位置に、フレキシブル基板などの配線基板が接続され、駆動回路6が配線基板上に搭載されている場合がある。
【0016】
次に、図2を用いて画素PIXの回路構成例について説明する。なお、図2では、4個の画素PIXを図示しているが、図1に示す複数の画素PIXのそれぞれが、図2に示す画素PIXと同様の回路を備えている。以下では、画素PIXが備えるスイッチング素子SW、およびLED素子20を含む回路について、画素回路と呼称する場合がある。画素回路は、制御回路5(図1参照)から供給される映像信号Vsgに応じてLED素子20の発光状態を制御する電圧信号方式の回路である。
【0017】
図2に示すように、画素PIXのそれぞれは、自己発光素子であるLED素子20を備えている。LED素子20はアノード電極21EAおよびカソード電極21EKを有している。LED素子20のカソード電極21EKは、基準電位(固定電位)PVSが供給される配線VSLに接続されている。LED素子20のアノード電極21EAは、配線31を介してスイッチング素子SWのドレイン電極EDと電気的に接続されている。
【0018】
画素PIXのそれぞれは、スイッチング素子SWを備えている。スイッチング素子SWは、制御信号Gsに応答して画素回路と配線VLとの接続状態(オンまたはオフの状態)を制御するトランジスタである。スイッチング素子SWは、例えば、薄膜トランジスタである。スイッチング素子SWがオン状態の時、画素回路には、配線VLから映像信号Vsgが入力される。
【0019】
駆動回路6は、図示しないシフトレジスタ回路、出力バッファ回路等を含んでいる。駆動回路6は、制御回路5(図1参照)から伝送される水平走査スタートパルスに基づいてパルスを出力し、制御信号Gsを出力する。
【0020】
複数の走査信号線GLのそれぞれは、X方向に延びている。走査信号線GLは、スイッチング素子SWのゲート電極EGに接続されている。走査信号線GLに制御信号Gsが供給されると、スイッチング素子SWがオン状態となり、LED素子20に映像信号Vsgが供給される。
【0021】
<LED素子の周辺構造>
次に、図1に示す複数の画素PIXのそれぞれに配置されるLED素子20の周辺構造について説明する。図3は、図1に示す表示装置の複数の画素のそれぞれに配置されるLED素子の周辺構造の一例を示す透過拡大平面図である。図3では、図4に示す無機絶縁層14を省略している。図3では、半導体層、電極、および走査信号線の輪郭を点線で示している。図4は、図3のA-A線に沿った拡大断面図である。
【0022】
図3に示すように、表示パネルPNLは、複数の画素PIX(図3に示す例では画素PIX1,PIX2,PIX3)を有している。複数の画素PIXのそれぞれは、スイッチング素子SWと、LED素子(発光素子)20と、配線31と、配線32と、を有している。なお、画素PIX1,PIX2,PIX3のそれぞれには、例えば、赤、緑、および青のうち、いずれか一色の可視光を出射するLED素子20が搭載され、LED素子20を駆動するスイッチング素子SWが形成されている。
【0023】
画素PIX1,PIX2,PIX3のLED素子20から上記各色の可視光が出射される場合、画素PIX1,PIX2,PIX3のLED素子20から出射される可視光の出力およびタイミングを制御することにより、表示パネルPNLにおいてカラー表示が可能となる。なお、このように互いに異なる色の可視光を出射する複数の画素を組み合わせる場合、各色用の画素を副画素と呼び、複数の副画素を含んだものを画素と呼ぶ場合がある。
【0024】
配線31は、スイッチング素子SWのドレイン電極EDおよびLED素子20のアノード電極21EAのそれぞれに電気的に接続されている。配線32は、スイッチング素子SWのソース電極ESに接続されている。図3に示す例では、配線32は屈曲した構造を備え、一方の端部がスイッチング素子SWのソース電極ESに接続され、他方の端部は、配線VLに接続されている。走査信号線GLは、スイッチング素子SWのゲート電極EGとして利用される。
【0025】
表示パネルPNLは、配線VLと、配線VSLと、をさらに有している。配線VLは、Y方向に沿って複数の画素PIX(図2参照)に亘って延び、かつ、配線32と電気的に接続される。配線VSLは、Y方向に交差(図3では直交)するX方向に沿って複数の画素PIXに亘って延び、かつ、LED素子20のカソード電極21EKに電気的に接続される。配線VLと配線VSLとは、図3に示す配線交差部LXPにおいて、絶縁層41を介して交差している。配線VLと配線VSLとの間に絶縁層41が介在しているので、配線VLと配線VSLとは電気的に離間されている。
【0026】
図4に示すように、表示パネルPNLは、LED素子20と、基板構造体SUBと、を有する。基板構造体SUBは、ガラスまたは樹脂からなるパネル基板10と、パネル基板10上に積層された複数の絶縁層と、を含んで構成される。基板構造体SUBが有する複数の絶縁層は、パネル基板10上に積層される無機絶縁層11、無機絶縁層12、無機絶縁層13、および無機絶縁層14を含む。パネル基板10は、面10fおよび面10fの反対側の面10bを有している。無機絶縁層11,12,13,14のそれぞれは、パネル基板10の面10f上に積層されている。
【0027】
スイッチング素子SWは、パネル基板10上に形成された無機絶縁層12と、無機絶縁層12上に形成された半導体層50と、半導体層50のドレイン領域に接続されたドレイン電極EDと、半導体層50のソース領域に接続されたソース電極ESと、半導体層50を覆う無機絶縁層13と、を含んでいる。配線31および配線32のそれぞれは、例えば、チタンまたはチタン合金からなる導体層と、アルミニウムまたはアルミニウム合金からなる導体層と、の積層膜である。チタン層の間にアルミニウム層が挟まれた積層膜は、TAT積層膜と呼ばれる。
【0028】
図4に示す例は、ゲート電極EGが半導体層50とパネル基板10との間にある、ボトムゲート方式の例である。ボトムゲート方式の場合、無機絶縁層12のうち、ゲート電極EGと半導体層50との間にある部分がゲート絶縁層として機能する。また、無機絶縁層12は、半導体層50を形成するための下地層としても機能する。なお、ゲート電極EGの位置は、図4に示す例には限定されず、例えば、トップゲート方式であってもよい。
【0029】
無機絶縁層11,12,13,14のそれぞれを構成する材料は、特に限定されないが、例えば、酸化ケイ素(SiO)や窒化ケイ素(SiN)などが挙げられる。また、半導体層50は、例えば、ケイ素からなるシリコン膜にP型またはN型の導電型の不純物がドープされた半導体膜である。
【0030】
ソース電極ESおよびドレイン電極EDのそれぞれは、半導体層50のソース領域およびドレイン領域のいずれか一方との電気的なコンタクトをとるためのコンタクトプラグである。コンタクトプラグの材料としては、例えば、タングステンなどが挙げられる。なお、図4に対する変形例として、無機絶縁層13に半導体層50のソース領域およびドレイン領域を露出させるコンタクトホールが形成され、コンタクトホール内に配線31の一部分および配線32の一部分がそれぞれ埋め込まれている場合がある。この場合、配線31および配線32のうち、コンタクトホール内に埋め込まれた部分が半導体層50に接触し、配線31および配線32と半導体層50との接触界面を、ドレイン電極EDおよびソース電極ESと、みなすことができる。
【0031】
<一実施の形態の表示装置の構成例>
上述のように、表示装置DSPが備える表示パネルPNLにおいては、パネル基板10(基板構造体SUB)上に複数のLED素子20が搭載されている。つまり、表示パネルPNLは、複数のLED素子20が搭載されたパネル基板10を備えている。これらのLED素子20は、発光時に発熱する。このため、LED素子20を発光させると、LED素子20が搭載されているパネル基板10の温度が上昇する。そして、このようなパネル基板10の温度上昇対策、あるいはLED素子20の発熱対策として、パネル基板10に接着固定されてパネル基板10を冷却する冷却部材を備えるようにしたものがある。
【0032】
この冷却部材には、例えば、一系統の媒体流路が設けられ、この媒体通路に冷却媒体を流通させることでパネル基板10の全体を冷却する。この場合、パネル基板10が比較的小型のものであれば、複数のLED素子20が搭載されたパネル基板10の全体を一様に冷却することができる。
【0033】
しかしながら、パネル基板10が比較的大型のものである場合、複数のLED素子20を含むパネル基板10の全体を一様に冷却することは難しく、パネル基板10の各部おいて温度差が生じることがある。その際、例えば、パネル基板10の全体を所望の温度まで冷却しようとすると、パネル基板10の一部で過冷却が生じてしまう虞がある。また、パネル基板10の過冷却が生じると、パネル基板10に結露が生じ、それに起因して点灯不良等の不具合が生じる虞がある。一方で、部分的な過冷却が生じないようにパネル基板10の全体を冷却しようとすると、パネル基板10の部分的な冷却不足が生じてしまう虞がある。
【0034】
そこで、一実施の形態に係る表示装置では、以下に説明するように、パネル基板の複数の領域において個別に温度調整を行っている。一例として、表示装置は、パネル基板に予め設定される複数の調整領域で、冷却部材の冷却状態を個別に調整するようにしている。
【0035】
以下、表示装置の温度調整方法の一例として、表示パネルの冷却方法、より具体的には、複数のLED素子が搭載されたパネル基板の冷却方法、について説明する。なお、以下の説明において、複数のLED素子が搭載されたパネル基板を、単にパネル基板と称する場合がある。
【0036】
図5は、一実施の形態に係る表示装置の全体構成を模式的に示す図である。図6は、一実施の形態に係る表示装置が備える温度調整装置の構成を模式的に示す図である。図7は、図6のB-B線に沿った冷却部材の断面図である。また、図8は、一実施の形態に係る表示装置が備える表示パネルの構成を模式的に示す拡大図である。
【0037】
図5および図6に示すように、一実施の形態に係る表示装置DSP1は、複数のLED素子20が搭載されたパネル基板10(基板構造体SUBとも言える)を含む表示パネルPNL1を備える。さらに、表示装置DSP1は、表示パネルPNL1を構成するパネル基板10の温度を調整するための温度調整装置の一例である冷却装置100と、パネル基板10の温度を検出する温度検出器である温度センサー200と、冷却装置100の動作を制御するコントローラである制御装置300と、を備えている。
【0038】
<温度調整装置>
温度調整装置の一例である冷却装置100は、表示パネルPLN1を構成するパネル基板10に接合される冷却部材110を備えている。冷却装置100は、この冷却部材110を介してパネル基板10、およびパネル基板10に搭載されている複数のLED素子20を冷却する。
【0039】
冷却部材110は、パネル基板10よりも大きい平面形状が矩形の板状の部材で構成され、図示は省略するが、パネル基板10よりも熱伝導率の高い材料からなる放熱シートを介してパネル基板10に接着固定されている。なお、冷却部材110は、パネル基板10を保持するフレームとして機能を兼ねるようにしてもよい。
【0040】
この冷却部材110の内部には、図7および図8に示すように、温調媒体の一例である冷却媒体が流通する複数の媒体流路111が、それぞれ独立して設けられている。図7では、冷却部材110の内部に設けられる媒体流路111を点線で示している。この冷却部材110は、一例として、冷却部材110は、板状の第1部材110aおよび第2部材110bで構成され、これら第1部材110aと第2部材110bとの接合面に媒体流路111が形成されている。勿論、冷却部材110は、上記構成の限定されるものではない。
【0041】
ここで、パネル基板10には、複数の調整領域AAが予め設定されている。図5に示す例では、パネル基板10には、6つの調整領域AA1~AA6が設定されている。上記複数の媒体流路111は、これら複数の調整領域AAに対応して設けられている。すなわち、冷却部材110には、それぞれ独立する6つの媒体流路111が設けられている。別の言い方をすれば、冷却装置100は、パネル基板10の各調整領域AAに対応する複数の冷却ユニット(温度調整ユニット)120を備え、各冷却ユニット120が、それぞれ独立する媒体流路111を備えている。
【0042】
そして、詳しくは後述するが、これら複数の媒体流路111に流通する冷却媒体の流通状態を適宜制御することで、パネル基板10の各調整領域AAの温度調整が個別に行われる。つまり、調整領域AAとは、温度調整装置(冷却装置)100によって個別に温度調整が行われる領域である。
【0043】
各調整領域AAに対応して設けられる媒体流路111のそれぞれは、所定の流路パターンで形成されている。一例として、各媒体流路111は、図6に示すように、直線的に延在する入口流路部111aおよび出口流路部111bと、これら入口流路部111aと出口流路部111bとは交差する方向に延在して両者を繋ぐ連結流路部111cと、で構成されている。勿論、各媒体流路111の流路パターンは、特に限定されるものではない。また、この例では、各調整領域AAに対応する媒体流路111のそれぞれが、同一の流路パターンで形成されているが、各媒体流路111はそれぞれ異なる流路パターンで形成されていてもよい。なお、媒体流路111に循環させる冷却媒体の種類は、特に限定されないが、例えば、冷却水、不凍液等が挙げられる。
【0044】
また、冷却部材110は、一例として、パネル基板10の複数の各調整領域AAに亘って連続する一部材で構成されているが、この構成に限定されるものではない。冷却部材110は、各調整領域AAに対応してそれぞれ分割されていてもよい。すなわち冷却部材110は、各調整領域AAに対応する媒体流路111を備える複数の部材で構成されていてもよい。
【0045】
そして、各媒体流路111を構成する入口流路部111aと出口流路部111bとは、流通配管130を介して接続されている。言い換えれば、冷却装置100は、流通配管130を介して各媒体流路111に冷却媒体が流通されるように構成されている。流通配管130の途中には、リザーバタンク150と、ポンプ160と、冷却器170と、が設けられている。
【0046】
一例としてリザーバタンク150は、ポンプ160より出口流路部111b側に配置され、冷却器170は、ポンプ160よりも入口流路部111a側に配置されている。ただし、これらリザーバタンク150、ポンプ160および冷却器170の配置は、特に限定されるものではない。リザーバタンク150、ポンプ160および冷却器170は、冷却部材110の各媒体流路111に冷却媒体を適切に供給できるように配置されていればよい。
【0047】
リザーバタンク150は、各媒体流路111に流通させる冷却水等の冷却媒体を貯留するためのタンクであり、第1流通配管131を介してポンプ160に接続されている。ポンプ160は、第2流通配管132を介して冷却器170と接続されている。ポンプ160は、リザーバタンク150に貯留されている冷却媒体を各媒体流路111および流通配管130内を循環させるためのものであり、その構成は特に限定されるものではない。
【0048】
冷却器170は、第2流通配管132を介してリザーバタンク150から流入する冷却媒体を冷却する。一例として、冷却器170は、ペルチェ素子を備え、このペルチェ素子により冷却媒体を冷却するように構成されている。勿論、冷却器170の構成は、冷却媒体を冷却できるものであれば、特に限定されない。
【0049】
また、冷却器170は、第3流通配管133を介して各媒体流路111の入口流路部111aに接続されている。より詳しくは、第3流通配管133は、その途中で複数(この例では6つ)の分岐配管133aに分岐されており、これら複数の分岐配管133aが、各媒体流路111の入口流路部111aにそれぞれ接続されている。これらの各分岐配管133aには、例えば、電磁弁等からなり、冷却媒体の流通量を調整するための流量調整弁180a~180fがそれぞれ設けられている。また、各媒体流路111の出口流路部111bは、第4流通配管134を介してリザーバタンク150に接続されている。
【0050】
なお、複数の流量調整弁180a~180fを総称して流量調整弁180という場合がある。また、上記第1流通配管131、第2流通配管132、第3流通配管133および第4流通配管134を総称して流通配管130という場合がある。
【0051】
このように、冷却装置100は、冷却媒体が流通配管130を介して冷却部材110の各媒体流路111に流通するように構成されている。例えば、冷却装置100では、ポンプ160を作動させることにより、冷却媒体がリザーバタンク150から第1流通配管131および第2流通配管132を介して冷却器170に流入して冷却器170によって冷却される。冷却器170によって冷却された冷却媒体は、第3流通配管133を介して、冷却部材110の各媒体流路111に供給される。その後、各媒体流路111を流通して各媒体流路111から流出する冷却媒体は、第4流通配管134を介してリザーバタンク150に戻される。その結果、冷却部材110が予め設定された設定温度に冷却され、それに伴い、冷却部材110に接着固定されたパネル基板10、およびパネル基板10に搭載されたLED素子20が適切な温度に冷却される。
【0052】
また、このようにパネル基板10を冷却する際、冷却装置100の動作は、パネル基板10に設けられた温度センサー200の検出結果に基づいて、制御装置300により制御される。
【0053】
<温度検出器>
図5に示すように、温度検出器である温度センサー200は、パネル基板10上に複数設けられている。より詳しくは、温度センサー200は、パネル基板10に予め設定された複数の測定領域MAに設けられ、複数の測定領域MAにおけるパネル基板10の温度を検出する。
【0054】
これらの測定領域MAは、パネル基板10の各調整領域AA内のそれぞれに少なくとも一カ所以上設定されていることが好ましい。そして、複数の温度センサー200は、パネル基板10の各調整領域AAのそれぞれに少なくとも一つ設けられていることが好ましい。特に、温度センサー200は、各調整領域AA内に、それぞれ複数個設けられていることが好ましい。
【0055】
ただし、測定領域MAは、必ずしも各調整領域AA内のそれぞれに設定されなくてもよい。測定領域MAは、例えば、各調整領域AAの周辺領域に設定されていてもよい。つまり、温度センサー200は、必ずしも各調整領域AA内のそれぞれに設けられていなくてもよく、例えば、各調整領域AAの周辺領域に設けられていてもよい。
【0056】
ここで、一実施の形態に係る表示装置DSP1の表示パネルPNL1は、図8に示すように、パネル基板10の表面にマトリクス状に配置された複数の画素PIXaを備え、これらの各画素PIXaは、複数の副画素PIXS(PIXS1,PIXS2,PIXS3)を含んで構成されている。一例として、各画素PIXaは、第1副画素PIXS1、第2副画素PIXS2、および第3副画素PIXS3を含んで構成されている。なお、これらの副画素PIXSは、図1の例における各画素PIXに相当する。
【0057】
例えば、第1副画素PIXS1は、赤色(R)の可視光を出射するLED素子20を備え、第2副画素PIXS2は、緑色(G)の可視光を出射するLED素子20を備え、第3副画素PIXS3は、青色(B)の可視光を出射するLED素子20を備える。各画素PIXaの構成はあくまで一例であり、これら3つの副画素PIXS1,PIXS2,PIXS3を備える構成に限定されるものではない。各画素PIXaが備える副画素PIXSの数、密度、配置等は、特に限定されるものではなく、また各画素PIXaで異なっていてもよい。
【0058】
そして、本実施の形態では、パネル基板10には、これら複数の画素PIXaを含む複数の調整領域AA(AA1~AA6)が設定されている。また、これらの各画素PIXaに対応して複数の測定領域MAが設定されている。つまり、各調整領域AA内には、複数の測定領域MAが設定されている。なお、パネル基板10に設定する調整領域AAの大きさや数は、特に限定されるものではなく、適宜決定されればよい。
【0059】
測定領域MAは、各画素PIXaの副画素PIXSに近接して、各画素PIXaが設けられる領域にそれぞれ設定されている。各測定領域MAは、各画素PIXaを構成する副画素PIXSの間に配置されている。つまり、各測定領域MAは、パネル基板10上に、副画素PIXSと共にマトリクス状に配置されている。そして、温度センサー200は、これらの各画素PIXaに対応する測定領域MAに設けられている。この例では、温度センサー200は、パネル基板10に設定された全ての測定領域MAに設けられている。つまり、各調整領域AA内には、各画素PIXaに対応する複数の温度センサー200がそれぞれ設けられている。
【0060】
ただし、温度センサー200は、全ての測定領域MAに設けられていなくてもよい。温度センサー200は、パネル基板10に設定される複数の測定領域MAのうちの一部に設けられていてよい。例えば、図9に示すように、温度センサー200は、パネル基板10にマトリクス状に設定された測定領域MAに、一つ置きに設けられていてもよい。なお、温度センサー200の間隔は、特に限定されないが、略一定であることが好ましい。ただし、各温度センサー200の間隔は、必ずしも一定でなくてもよい。また、温度センサー200は、画素PIXaとは別の領域に設けられていてもよい。例えば、図10に示すように、各温度センサー200は、複数の画素PIXaごとに、画素PIXa間に配置されていてもよい。
【0061】
これら複数の温度センサー200は、一例として、パネル基板10の表面に成膜により形成された、例えば、白金(Pt)等の金属からなる測温抵抗体、サーミスタ、あるいは熱電対等で構成される。図示は省略するが、パネル基板10上には、上述したLED素子20を実装するための配線31,32等と共に、各測定領域MAから周辺領域PFA(図1参照)に延びる回路配線が設けられる。各温度センサー200は、各測定領域MAにおいて、この回路配線に接続される。なお、回路配線と、上記配線31,32等とは、絶縁層により電気的に離間される。また回路配線は、例えば、フレキシブル基板(FPC:Flexible Printed Circuits)等からなる接続配線を介して制御装置300と接続される。各温度センサー200の検出結果は、回路配線および接続配線を介して制御装置300に送られる。
【0062】
また、温度センサー200は、パネル基板10に成膜により形成されたものに限定されない。温度センサー200は、例えば、各測定領域MA内で、パネル基板10に設けられた回路配線に搭載される温度センサー素子であってもよい。この場合、回路配線は、温度センサー素子が搭載される特定の測定領域MAのみに設けてもよいが、全ての測定領域MAに回路配線を設けておき、特定の測定領域MAに温度センサー素子を搭載してもよい。
【0063】
<制御装置>
制御装置300は、例えば、FPGA(FIELD Programmable Gate Array)等を備えて構成され、パネル基板10に設けられた複数の温度センサー200の検出結果に基づいて、冷却装置100の動作を制御する。より詳しくは、制御装置300は、複数の調整領域AAにおけるパネル基板10の温度を個別に調整すべく、パネル基板10の複数の測定領域MAでの温度に応じて、冷却装置100の動作を制御する。
【0064】
言い換えれば、制御装置300は、温度センサー200で検出される測定領域MAでのパネル基板10の温度に基づいて冷却装置100の動作を制御し、パネル基板10に設定された複数の調整領域AAの温度を個別に調整する。一例として、制御装置300は、温度センサー200の検出結果に基づいて、冷却部材110の各媒体流路111に流通する冷却媒体の流通状態を個別に調整する。別の言い方をすれば、制御装置300は、温度センサー200によって検出されるパネル基板10の温度に応じて、各調整領域AAの温度が予め設定された設定温度となるように、冷却装置100が備える冷却ユニット120の動作を個別に制御する。
【0065】
各冷却ユニット120は、上述のように、それぞれ独立する媒体流路111を含んで構成される。また、各冷却ユニット120は、それぞれ流量調整弁180を含んで構成される。この例では、各冷却ユニット120の構成は、これら媒体流路111および流量調整弁180を除いて共通している。具体的には、冷却装置100が備えるリザーバタンク150、ポンプ160および冷却器170は、各冷却ユニット120に共通している。勿論、これらリザーバタンク150、ポンプ160および冷却器170は、冷却ユニット120毎に個別に設けられていてもよい。
【0066】
そして、本実施の形態では、制御装置300は、複数の温度センサー200の検出結果に基づいて、各冷却ユニット120を構成する流量調整弁180の動作を個別に制御する。つまり、制御装置300は、冷却媒体の流通状態として、各媒体流路111に流通する冷却媒体の流量を調整する。より具体的には、制御装置300は、パネル基板10の複数の調整領域AAのうち、温度が高い調整領域の媒体流路111に冷却媒体が多く流れるように、各冷却ユニット120を構成する流量調整弁180の開度(開閉度合い)を個別に制御する。
【0067】
これにより、パネル基板10の各調整領域AAの温度を適切に調整することができる。例えば、パネル基板10の各調整領域AAにおける過冷却や冷却不足を抑制し、パネル基板10の全体温度を均一化することができる。
【0068】
なお、制御装置300は、冷却媒体の流通状態として、例えば、冷却媒体の冷却温度を調整するようにしてもよい。具体的には、制御装置300は、温度センサー200の検出結果に基づいて、冷却器170の動作を制御して、各媒体流路111に供給される冷却媒体の冷却温度を調整してもよい。各媒体流路111に供給される冷却媒体の流量に加えて、冷却媒体の冷却温度を調整することで、パネル基板10の各調整領域AAの温度をより適切に調整することができる。
【0069】
<温度調整方法の一例>
以下、表示装置の温度調整方法の一例、つまり制御装置300による冷却装置100の動作の制御の一例について説明する。図11は、表示装置の温度調整方法の一例を示すフローチャートである。
【0070】
以下では、基本的に、パネル基板10の一つの調整領域AA1を対象とした温度調整方法について説明するが、実際には複数の各調整領域AAについて同様の温度調整が個別に行われる。例えば、図5に示す構成では、複数の各調整領域AA1~AA6について同様の温度調整が個別に行われる。
【0071】
表示装置DSP1が作動すると、制御装置300による冷却装置100の動作の制御が開始される。まずは、パネル基板10に設定された複数の測定領域MAでパネル基板10の温度を検出する第1工程が実施される。
【0072】
例えば、図11に示すように、ステップS1で、パネル基板10の調整領域AA1内に設けられる複数の温度センサー200の検出結果の取得が開始される。つまり、調整領域AA1内の各測定領域MAにおける温度の取得が開始される。次に、複数の温度センサー200の検出結果に基づいて、調整領域AA1の温度Te1が算出される(ステップS2)。
【0073】
一例として、複数の温度センサー200の検出結果の平均値が調整領域AA1の温度Te1として算出する。なお、調整領域AA1の温度Te1の算出方法は、これに限定されるものではない。例えば、複数の温度センサー200の検出結果のうちの最大値が調整領域AA1の温度Te1として算出されてもよい。また、この例では、温度センサー200の検出結果の取得が開始されると、その後、所定間隔で温度センサー200の検出結果が取得されるものとする。また、取得された検出結果に基づいて調整領域AA1の温度Te1が算出され、順次更新されるものとする。
【0074】
次いで、複数の測定領域MAで検出されたパネル基板10の温度に応じて、パネル基板10に設定された複数の調整領域AAの温度を個別に調整する第2工程が実施される。
【0075】
一例として、まずは、調整領域AA1の温度Te1が予め設定された第1閾値Th1よりも高いか否かが判定される(ステップS3)。そして、調整領域AA1の温度Te1が第1閾値Th1よりも高くなると(ステップS3:Yes)、ステップS4に進む。ステップS4では、冷却装置100のポンプ160および冷却器170を作動させる。さらに、ステップS5で、調整領域AA1に対応する流量調整弁180aを予め設定された第1開度D1まで開弁させる。
【0076】
次に、調整領域AA1の温度Te1が予め設定された第2閾値Th2よりも高いか否かが判定される(ステップS6)。第2閾値Th2は、第1閾値Th1よりも大きい値に設定されている。そして、調整領域AAの温度Te1が第2閾値Th2よりも高くなると(ステップS6:Yes)、ステップS7に進む。
【0077】
ステップS7では、調整領域AA1に対応する媒体流路111の冷却媒体の流通状態が調整される。具体的には、調整領域AA1に対応する媒体流路111に流通する冷却媒体の流量を増加させる。一例として、流量調整弁180aの開度を予め設定された第2開度D2まで増大させる。第2開度D2は、第1開度D1よりも大きく流量調整弁180の最大開度以下に設定される。
【0078】
また、ステップS7で冷却媒体の流通状態が調整される際、流量調整弁180aの開度を増大させ、さらにポンプ160の出力を増大させるようにしてもよい。また、その際、例えば、調整領域AA1に対応する流量調整弁180aのみが開弁されている状態であれば、流量調整弁180aの開度を維持し、ポンプ160の出力を増大させるようにしてもよい。
【0079】
次いで、調整領域AA1の温度Te1が予め設定された第3閾値Th3以下であるか否かが判定される(ステップS8)。第3閾値Th3は、例えば、第1閾値Th1よりも小さい値に設定される。そして、調整領域AA1の温度Te1が第3閾値Th3以下になると(ステップS8:Yes)、ステップS9に進む。ステップS9では、調整領域AA1に対応する媒体流路111の冷却媒体の流通状態が調整される。一例として、調整領域AA1に対応する流量調整弁180aを閉弁させる。また、必要に応じて冷却器170およびポンプ160の動作を停止させる。
【0080】
その後、ステップS3に戻る。そして、調整領域AA1の温度Te1が、再び第1閾値Th1以上になると(ステップS3:Yes)、ステップS4に進み、冷却装置100が備える流量調整弁180a等の制御が再開される。
【0081】
以上説明したように、一実施の形態の表示装置DSP1では、表示パネルPNL1の温度調整を行う際、パネル基板10に設定された複数の測定領域MAで、パネル基板10の温度を検出する。そして、複数の測定領域MAで検出されたパネル基板10の温度に応じて、各調整領域AAの温度を個別に調整(例えば、冷却)する。
【0082】
言い換えれば、制御装置300は、パネル基板10に設けられた複数の温度センサー200の検出結果に基づいて冷却装置100を制御し、パネル基板10の複数の調整領域AAの温度を個別に調整するようにした。つまり、制御装置300が、冷却装置100が備える各冷却ユニット120を個別に調整するようにした。
【0083】
これにより、複数のLED素子20が搭載されたパネル基板10の温度をより適切に調整できるようになる。例えば、LED素子20の発熱によりパネル基板10の温度が比較的高い調整領域AAでは、冷却媒体の流量を増大させて積極的にパネル基板10を冷却することができる。一方で、パネル基板10の温度が比較的低い調整領域AAでは、冷却媒体の流量を減少させて、パネル基板10の冷却を抑えることができる。したがって、パネル基板10の各調整領域AAにおける過冷却や冷却不足を抑制し、パネル基板10の全体を適切に冷却することができる。
【0084】
また、温度センサー200が、パネル基板10上に設けられていることで、パネル基板10の各測定領域MAの温度をリアルタイムで検出することができる。このため、これら複数の温度センサー200の検出結果に基づいて冷却装置100を制御することで、パネル基板10の各調整領域AAの温度をより適切に調整できる。
【0085】
<変形例>
以上、本発明の一実施の形態について説明したが、本発明は、上記の実施の形態に限定されるものではない。本発明は、その要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能であることはいうまでもない。すなわち本発明は、上記の実施の形態の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
【0086】
例えば、上述の実施の形態では、表示装置DSP1の温度調整方法として、媒体流路111を流通する冷却媒体の流通状態を2段階で調整する例を説明したが、冷却媒体の流通状態は、例えば、3段階以上で調整するようにしてもよい。上述の例では、流量調整弁180の開度を2段階で制御する場合について説明したが、流量調整弁180の開度を3段階以上で制御するようにしてもよい。さらに、流量調整弁180は、例えば、オンオフを切り替える開閉弁であってもよい。この場合でも、例えば、流量調整弁180を開いている時間等を制御することで、パネル基板10の各調整領域AAの温度を個別に調整することができる。
【0087】
また、上述のように、冷却部材110に設けられる媒体流路111は、複数の調整領域AAのそれぞれに対応していることが好ましいが、必ずしも各調整領域AAのそれぞれに対応していなくてもよい。例えば、冷却部材110には、複数の媒体流路111は、それぞれ複数の調整領域AAに対応して設けられていてもよい。例えば、パネル基板10に6つの調整領域AAが設定されている場合、冷却部材110には、それぞれ2つの調整領域AAに対応する3つの媒体流路111が設けられていてもよい。
【0088】
さらに、温度調整装置である冷却装置100として、冷却媒体により冷却部材を冷却する、いわゆる水冷式の装置を例示したが、冷却装置100は、水冷式の装置に限定されない。冷却装置100は、例えば、空冷式の装置であってもよい。さらに、上述の例では、温度調整装置として冷却装置について説明したが、温度調整装置は、必ずしも冷却装置に限定されるものではない。温度調整装置は、パネル基板10の温度を調整可能な装置であればよく、例えば、加熱機能を備えるものであってもよい。
【0089】
また、一実施の形態として、パネル基板10上に成膜等により形成された温度センサー200によって、パネル基板10の温度を検出する例を説明したが、パネル基板10の温度を検出する方法は、これに限定されない。パネル基板10の温度は、例えば、パネル基板10とは離れた位置に設けられた非接触の温度センサーによって検出するようにしてもよい。
【0090】
<付記>
(付記1)
複数の素子が搭載されたパネル基板を備える電子装置の温度調整方法であって、
前記パネル基板に設定された複数の測定領域で当該パネル基板の温度を検出する第1工程と、
前記複数の測定領域で検出された前記パネル基板の温度に応じて、前記パネル基板に設定された複数の調整領域の温度を個別に調整する第2工程と、を有する、
電子装置の温度調整方法。
【0091】
(付記2)
付記1に記載の電子装置の温度調整方法において、
前記パネル基板の前記複数の調整領域のそれぞれには、前記複数の測定領域のうちの少なくとも一つが設けられており、
前記第1工程では、前記パネル基板の前記複数の調整領域のそれぞれに設けられる前記複数の測定領域で前記パネル基板の温度を検出する、
電子装置の温度調整方法。
【0092】
(付記3)
付記1または2に記載の電子装置の温度調整方法において、
前記電子装置は、前記パネル基板に接合される冷却部材を有し、前記パネル基板を冷却する冷却装置を備え、
前記冷却部材は、前記パネル基板の前記複数の調整領域に対応して設けられ冷却媒体が流通する複数の媒体流路を有し、
前記第2工程では、前記パネル基板の前記複数の測定領域での温度に応じて、前記複数の媒体流路に流通する前記冷却媒体の流通状態を個別に調整する、
電子装置の温度調整方法。
【0093】
(付記4)
付記3に記載の電子装置の温度調整方法において、
前記第2工程では、前記冷却媒体の流通状態として、前記複数の媒体流路に流通する前記冷却媒体の流量を個別に調整する、
電子装置の温度調整方法。
【0094】
(付記5)
付記4に記載の電子装置の温度調整方法において、
前記第2工程では、前記冷却媒体の流通状態として、前記複数の媒体流路に流通する前記冷却媒体の冷却温度をさらに調整する、
電子装置の温度調整方法。
【0095】
(付記6)
複数の素子が搭載されたパネル基板を備える電子装置であって、
前記パネル基板に設定された複数の測定領域に設けられ、前記前記パネル基板の温度を検出する複数の温度検出器と、
前記パネル基板に設定された複数の調整領域に対応して設けられる複数の温度調整ユニットを有し、前記パネル基板の温度調整を行う温度調整装置と、
前記温度調整装置の動作を制御する制御装置と、を備え、
前記制御装置は、前記複数の温度検出器によって検出される前記複数の測定領域での前記パネル基板の温度に応じて、前記複数の温度調整ユニットの動作を個別に制御する、
電子装置。
【0096】
(付記7)
付記6に記載の電子装置において、
前記パネル基板の前記複数の調整領域のそれぞれには、前記複数の温度検出器のうちの少なくとも一つが設けられている、
電子装置。
【0097】
(付記8)
付記6または7に記載の電子装置において、
前記温度調整装置は、前記パネル基板に接合され、冷却媒体が流通する複数の媒体流路を有する冷却部材を備え、
前記複数の温度調整ユニットは、それぞれ独立する前記媒体流路を含んで構成され、
前記制御装置は、前記複数の温度検出器によって検出される前記複数の測定領域での前記パネル基板の温度に応じて、前記複数の媒体流路に流通する前記冷却媒体の流通状態を個別に調整する、
電子装置。
【0098】
(付記9)
付記8に記載の電子装置において、
前記制御装置は、前記冷却媒体の流通状態として、前記複数の媒体流路に流通する前記冷却媒体の流量を個別に調整する、
電子装置。
【0099】
(付記10)
付記9に記載の電子装置において、
前記制御装置は、前記冷却媒体の流通状態として、前記複数の媒体流路に流通する前記冷却媒体の冷却温度をさらに調整する、
電子装置。
【0100】
(付記11)
付記6から10の何れか一つに記載の電子装置において、
前記複数の温度検出器が、前記パネル基板の表面に成膜により形成されたサーミスタ、測温抵抗体、または熱電対である、
電子装置。
【0101】
(付記12)
付記6から10の何れか一つに記載の電子装置において、
前記複数の温度検出器が、前記パネル基板に形成された配線上に搭載される温度センサー素子である、
電子装置。
【産業上の利用可能性】
【0102】
本発明は、電子部品(素子)が搭載された基板を備える電子装置の温度調整方法、および電子装置に利用可能である。
【符号の説明】
【0103】
5 制御回路
6 駆動回路
10 パネル基板
10f,10b 面
11,12,13,14 無機絶縁層
14H 開口
20 LED素子(発光素子,素子)
21 電極
21EA アノード電極
21EK カソード電極
31,32,34,VL,VSL 配線
33 バンプ電極
41 絶縁層
50 半導体層
100 温度調整装置
110 冷却部材
111 媒体流路
120 温度調整ユニット
130 流通配管
150 リザーバタンク
160 ポンプ
170 冷却器
180 流量調整弁
200 温度センサー(温度検出器)
300 制御装置
DSP,DSP1 表示装置(電子装置)
ED ドレイン電極
EG ゲート電極
ES ソース電極
GL 走査信号線
Gs 制御信号
LXP 配線交差部
PFA 周辺領域
PIX,PIXa 画素
PIXS 副画素
PNL,PNL1 表示パネル
PVS 基準電位(固定電位)
SUB 基板構造体
SW スイッチング素子
Vsg 映像信号
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11