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特開2024-171120振動型リニアアクチュエータおよび切断装置
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024171120
(43)【公開日】2024-12-11
(54)【発明の名称】振動型リニアアクチュエータおよび切断装置
(51)【国際特許分類】
   B06B 1/04 20060101AFI20241204BHJP
   B26B 19/28 20060101ALI20241204BHJP
【FI】
B06B1/04 Z
B26B19/28 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023088017
(22)【出願日】2023-05-29
(71)【出願人】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100170575
【弁理士】
【氏名又は名称】森 太士
(74)【代理人】
【識別番号】100141449
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 隆芳
(74)【代理人】
【識別番号】100142446
【弁理士】
【氏名又は名称】細川 覚
(72)【発明者】
【氏名】平野 泰行
(72)【発明者】
【氏名】松本 直大
(72)【発明者】
【氏名】森口 雅嗣
(72)【発明者】
【氏名】小林 昇
【テーマコード(参考)】
3C056
5D107
【Fターム(参考)】
3C056HA03
3C056HA07
3C056HA08
3C056HA22
5D107AA13
5D107AA16
5D107BB01
5D107CC08
5D107FF07
5D107FF10
(57)【要約】
【課題】小型化を図りつつ、振動を抑制することが可能な振動型リニアアクチュエータおよび切断装置を得る。
【解決手段】振動型リニアアクチュエータ5は、互いに逆位相で往復動する出力可動体71および吸振可動体72を備えている。また、振動型リニアアクチュエータ5は、出力可動体71と吸振可動体72とを連結する連結部材73を備えている。ここで、吸振可動体72は、吸振可動体72の重心G2の位置が出力可動体71の重心G1の位置に近づくように調整する吸振側錘723を備えている。また、連結部材73は、出力可動体71を保持する出力可動体保持部731と、吸振可動体72を保持する吸振可動体保持部732と、出力可動体保持部731と吸振可動体保持部732とを連結する連結部733と、を備えている。そして、吸振側錘723には、吸振可動体保持部732に形成された被固定部73232に固定される固定部72342が形成されている。
【選択図】図18
【特許請求の範囲】
【請求項1】
周期的に変動する磁界により第1方向に往復動することが可能な出力可動体と、
前記出力可動体とは逆位相で前記第1方向に往復動するように構成され、前記出力可動体が前記第1方向に往復動する際に生じる振動を抑制する吸振可動体と、
前記出力可動体と前記吸振可動体とを連結する連結部材と、
を備え、
前記出力可動体は、前記第1方向と交差する第2方向に延在して接続対象物に連結され得る出力軸を有しており、
前記吸振可動体は、前記吸振可動体の重心の位置が前記出力可動体の重心の位置に近づくように調整する吸振側錘を備えており、
前記連結部材は、
前記出力可動体を保持する出力可動体保持部と、
前記吸振可動体を保持する吸振可動体保持部と、
前記出力可動体保持部と前記吸振可動体保持部とを連結する連結部と、
を備えており、
前記吸振側錘には、前記吸振可動体保持部に形成された被固定部に固定される固定部が形成されている、
振動型リニアアクチュエータ。
【請求項2】
前記吸振可動体保持部は、
前記出力可動体保持部に対して前記第1方向および前記第2方向と交差する第3方向の一側に位置する第1吸振可動体保持部と、
前記出力可動体保持部に対して前記第3方向の他側に位置する第2吸振可動体保持部と、
を備えており、
前記吸振側錘は、
前記第1吸振可動体保持部に固定される第1固定基部と、
前記第2吸振可動体保持部に固定される第2固定基部と、
前記第1固定基部と前記第2固定基部とを連結する連結基部と、
を備えている、
請求項1に記載の振動型リニアアクチュエータ。
【請求項3】
前記吸振側錘が、型成形品である、
請求項1または請求項2に記載の振動型リニアアクチュエータ。
【請求項4】
前記吸振側錘の比重が、2.0以上14.0以下である、
請求項1または請求項2に記載の振動型リニアアクチュエータ。
【請求項5】
前記吸振可動体の質量は、前記出力可動体の質量よりも大きい、
請求項1または請求項2に記載の振動型リニアアクチュエータ。
【請求項6】
請求項1または請求項2に記載の振動型リニアアクチュエータと、
前記接続対象物の一部を構成する可動刃と、
前記可動刃が摺接する固定刃と、
を備える、
切断装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、振動型リニアアクチュエータおよび切断装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、振動型リニアアクチュエータとして、下記の特許文献1に開示されているように、周期的に変動する磁界により往復動する出力可動体と、出力可動体と逆位相で往復動し、振動を抑制する吸振可動体と、を備えるものが知られている。
【0003】
この特許文献1では、吸振可動体に錘を設けることで、振動を抑制するための吸振可動体の重心の位置を、可動刃が取り付けられる出力可動体の重心の位置に近づけるようにしている。こうすることで、出力可動体が往復動する際に生じる振動をより確実に抑制することができるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第6793366号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このように、錘を用いて振動を抑制するタイプの振動型リニアアクチュエータにおいては、より小型化を図れるようにするのが好ましい。
【0006】
そこで、本開示は、小型化を図りつつ、振動を抑制することが可能な振動型リニアアクチュエータおよび切断装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一態様にかかる振動型リニアアクチュエータは、周期的に変動する磁界により第1方向に往復動することが可能な出力可動体と、前記出力可動体とは逆位相で前記第1方向に往復動するように構成され、前記出力可動体が前記第1方向に往復動する際に生じる振動を抑制する吸振可動体と、前記出力可動体と前記吸振可動体とを連結する連結部材と、を備え、前記出力可動体は、前記第1方向と交差する第2方向に延在して接続対象物に連結され得る出力軸を有しており、前記吸振可動体は、前記吸振可動体の重心の位置が前記出力可動体の重心の位置に近づくように調整する吸振側錘を備えており、前記連結部材は、前記出力可動体を保持する出力可動体保持部と、前記吸振可動体を保持する吸振可動体保持部と、前記出力可動体保持部と前記吸振可動体保持部とを連結する連結部と、を備えており、前記吸振側錘には、前記吸振可動体保持部に形成された被固定部に固定される固定部が形成されている。
【0008】
本開示の一態様にかかる切断装置は、上記振動型リニアアクチュエータと、前記接続対象物の一部を構成する可動刃と、前記可動刃が摺接する固定刃と、を備えている。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、小型化を図りつつ、振動を抑制することが可能な振動型リニアアクチュエータおよび切断装置を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施の形態にかかるバリカンの一例を示す斜視図である。
図2】実施の形態にかかるバリカンの一例を示す分解斜視図である。
図3】実施の形態にかかる振動型リニアアクチュエータの一例を一方向から見た斜視図である。
図4】実施の形態にかかる振動型リニアアクチュエータの一例を他の方向から見た斜視図である。
図5】実施の形態にかかる振動型リニアアクチュエータの一例を示す正面図である。
図6】実施の形態にかかる振動型リニアアクチュエータの一例を示す分解斜視図である。
図7】実施の形態にかかる振動型リニアアクチュエータの一例を、位置決め部材に固定された磁性ブロックと電磁コアブロックとに分解して示す正面図である。
図8】実施の形態にかかる振動型リニアアクチュエータの一例から位置決め部材を取り外した状態を示す斜視図である。
図9】実施の形態にかかる振動型リニアアクチュエータの一例から位置決め部材を取り外した状態を示す正面図である。
図10】実施の形態にかかる電磁コアブロックの一例を示す斜視図である。
図11】実施の形態にかかる電磁コアブロックの一例を示す分解斜視図である。
図12】実施の形態にかかる出力可動体および連結部材の一例を示す分解斜視図である。
図13】実施の形態にかかる出力可動体の一例を連結部材が備える出力可動体保持部の一例に保持した状態を示す斜視図である。
図14】実施の形態にかかる出力可動体の一例を連結部材が備える出力可動体保持部の一例に保持した状態を示す正面図である。
図15】実施の形態にかかる可動刃ブロックの一例が接続された出力可動体の一例を、連結部材が備える出力可動体保持部の一例に保持した状態を示す斜視図である。
図16】実施の形態にかかる可動刃ブロックの一例が接続された出力可動体の一例を、連結部材が備える出力可動体保持部の一例に保持した状態を示す正面図である。
図17】実施の形態にかかる吸振可動体および連結部材の一例を示す分解斜視図である。
図18】実施の形態にかかる吸振可動体の一例を連結部材が備える吸振可動体保持部の一例に保持した状態を示す斜視図である。
図19】実施の形態にかかる吸振可動体の一例を連結部材が備える吸振可動体保持部の一例に保持した状態を示す正面図である。
図20】実施の形態にかかる吸振側錘の一例を示す斜視図である。
図21】実施の形態にかかる吸振側錘の一例を示す平面図である。
図22】実施の形態にかかる吸振側錘の一例を示す正面図である。
図23】実施の形態にかかる吸振側錘の一例を示す側面図である。
図24】実施の形態にかかる振動型リニアアクチュエータの被固定部への固定構造の一例を模式的に示す図である。
図25図24の振動型リニアアクチュエータと被固定部との固定部分を拡大して示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照しながら実施の形態を詳細に説明する。但し、必要以上に詳細な説明は省略する場合がある。例えば、既によく知られた事項の詳細説明、または、実質的に同一の構成に対する重複説明を省略する場合がある。
【0012】
なお、添付図面および以下の説明は、当業者が本開示を十分に理解するために提供されるのであって、これらにより特許請求の範囲に記載の主題を限定することを意図していない。
【0013】
また、以下の実施の形態では、切断装置として、使用者等の毛髪(毛)を切断するバリカンを例示する。
【0014】
また、以下の実施の形態では、出力可動体および吸振可動体が往復動する方向をY方向(幅方向:第1方向)、出力軸が延在する方向をZ方向(上下方向:第2方向:出力軸の軸方向)、Y方向およびZ方向と交差(直交)する方向をX方向(前後方向:第3方向)として説明する。
【0015】
そして、出力軸の先端が上方を向くようにした状態で振動型リニアアクチュエータの上下方向を規定して説明する。
【0016】
また、以下の実施の形態では、リンク機構保持部材が位置する側を、便宜上、振動型リニアアクチュエータの前側(X方向の前方)と定義して説明する。
【0017】
(実施の形態)
本実施の形態にかかるバリカン1は、図1および図2に示すように、本体部2と、本体部2に着脱可能に取り付けられる刃ブロック3と、を備えている。本実施の形態では、本体部2は細長形状をしており、この本体部2には、手で把持することが可能なグリップ部(把持部)2aが形成されている。
【0018】
このバリカン1は、例えば、使用者等の毛髪等を所望の長さにカットすることで、使用者等の毛髪を処理したり整えたりするための装置であり、刃ブロック3は、金属製の固定刃3122と、固定刃3122に対してY方向(幅方向:第1方向)に往復摺動(摺接)する金属製の可動刃3222と、を備えている。
【0019】
そして、刃ブロック3を本体部2に装着し、本体部2内に収容されている振動型リニアアクチュエータ5を駆動源として可動刃3222を固定刃3122に対してY方向(幅方向:第1方向)に往復摺動させることで、固定刃3122と可動刃3222とで毛髪を挟み込んで切断するようにしている。
【0020】
また、本実施の形態では、本体部2は、バリカン1の外殻をなすハウジング4を備えている。このハウジング4は、例えば、合成樹脂等の材料を用いて形成することができ、ハウジング4には操作スイッチ411が外部に露出するようにした状態で内側に押し込み可能に取り付けられている。
【0021】
また、本実施の形態では、ハウジング4は、複数の分割体を継ぎ合わせることで形成されており、操作スイッチ411が形成された第1分割ハウジング41と、この第1分割ハウジング41に継ぎ合わされる第2分割ハウジング42と、を備えている。そして、第1分割ハウジング41および第2分割ハウジング42を含む複数の分割体を継ぎ合わせて形成したハウジング4の内部に空洞が形成されるようにし、この空洞内に、振動型リニアアクチュエータ5などの各種電気部品が収容されるようにしている。これら複数の分割体は、例えば、ねじを用いたり、分割体同士を嵌合させたりすることで継ぎ合わせることができる。本実施の形態では、第2分割ハウジング42に形成されたフック部421およびリブ422を用いて複数の分割体を継ぎ合わせるようにするものを例示している。
【0022】
なお、ハウジング4の内部に形成される空洞内には、振動型リニアアクチュエータ5を駆動させる充電池、外部に露出させた操作スイッチ411の押込み操作に応じて振動型リニアアクチュエータ5への電力供給を制御する回路基板(制御部)等を収容することができる。
【0023】
刃ブロック3は、毛髪を切断する機能を有しており、可動刃3222と固定刃3122とを互いに対向するように配置することで形成された刃部(バリカンの刃)を備えている。
【0024】
本実施の形態では、この刃ブロック3が、図2に示すように、固定刃3122を有する固定刃ブロック31と、可動刃3222を有し、固定刃ブロック31に対して相対的にY方向(幅方向:第1方向)に往復動することが可能な可動刃ブロック32と、を備えるようにしている。そして、可動刃ブロック32を固定刃ブロック31に対して相対的にY方向(幅方向:第1方向)に往復動させることで、可動刃3222を固定刃3122に対してY方向(幅方向:第1方向)に往復摺動させるようにしている。
【0025】
固定刃ブロック31は、図2に示すように、樹脂製の固定板311と、固定板311に固定される金属製の固定プレート312と、を備えており、この固定プレート312は、固定板311に固定される本体部3121と、本体部3121の先端に形成された固定刃3122と、を備えている。そして、固定プレート312の本体部3121が固定された状態の固定板311を本体部2に固定することで、固定刃ブロック31が本体部2に装着されるようにしている。このとき、固定刃ブロック31は、固定刃3122の少なくとも先端側が本体部2の先端から突出するようにした状態で、本体部2に固定されている。
【0026】
一方、図2図15および図16に示すように、可動刃ブロック32は、樹脂製の案内板321と、案内板321に固定される金属製の可動プレート322と、を備えており、この可動プレート322は、案内板321に固定される本体部3221と、本体部3221の先端に形成された可動刃3222と、を備えている。
【0027】
そして、刃ブロック3を本体部2に装着した状態で、案内板321が振動型リニアアクチュエータ5の後述する出力軸713に連結されるようにしている。本実施の形態では、図15および図16に示すように、案内板321に形成された係合凹部3211に、出力軸713の先端部7131を係合させることで、案内板321が出力軸713に連結されるようにしている。
【0028】
さらに、本実施の形態では、刃ブロック3を本体部2に装着した状態で、可動刃3222が固定刃3122に接触するようにしている。
【0029】
こうすることで、振動型リニアアクチュエータ5を駆動させて出力軸713をY方向(幅方向:第1方向)に往復動させた際に、案内板321および案内板321に固定された可動プレート322、すなわち、可動刃ブロック32が、出力軸713の動きに連動してY方向(幅方向:第1方向)に往復動するようにしている。そして、可動刃ブロック32をY方向(幅方向:第1方向)に往復動させることで、可動刃3222を固定刃3122に対してY方向(幅方向:第1方向)に往復摺動させ、可動刃3222と固定刃3122とで毛髪を切断できるようにしている。
【0030】
このように、本実施の形態では、可動刃ブロック32が、出力軸713が連結され得る接続対象物に相当している。
【0031】
また、本実施の形態では、刃ブロック3は、可動プレート322を固定プレート312側に押圧する金属製の押上ばね33を備えている。
【0032】
この押上ばね33は、可動プレート322を固定プレート312側に押圧することで、可動刃3222と固定刃3122とをより確実に摺接させるための部材であり、例えば、トーションバネにより形成することができる。本実施の形態では、押上ばね33が、コイル部331と、コイル部331の端部に連結されるとともに可動プレート322に固定されて、可動プレート322を固定プレート312側に押圧するアーム部332と、を備えるようにしている。
【0033】
次に、振動型リニアアクチュエータ5の具体的な構成について説明する。
【0034】
振動型リニアアクチュエータ5は、図3図9に示すように、Y方向(幅方向:第1方向)に往復動することが可能な磁性ブロック(可動子)7と、Y方向(幅方向:第1方向)に往復動するように磁性ブロック7を駆動させることが可能な電磁コアブロック(固定子)6と、を備えている。
【0035】
また、本実施の形態では、振動型リニアアクチュエータ5は、電磁コアブロック6と磁性ブロック7との位置決めを行うことが可能な位置決め部材(フレーム部材)8を備えている。そして、電磁コアブロック6が、磁性ブロック7を固定した状態の位置決め部材8を上方から保持することで、電磁コアブロック6と磁性ブロック7との位置決めがなされるようにしている。こうすることで、電磁コアブロック6の上方に磁性ブロック7が、電磁コアブロック6との間に所定の隙間が形成された状態で配置されるようにし、磁性ブロック7が備える可動体(出力可動体71および吸振可動体72)をY方向(幅方向:第1方向)に往復動させることができるようにしている。
【0036】
また、本実施の形態では、電磁コアブロック6は、周期的に変動する磁界を発生することが可能な電磁石部(固定子本体)61と、電磁石部61に形成されて、位置決め部材が保持される保持部62と、を備えている。
【0037】
この電磁石部61は、電磁石部61を駆動させた際に生じる磁束の主磁路が形成されるコア611と、コア611に保持されるコイルボビン612と、コイルボビン612に巻回されるコイル613と、を備えている。
【0038】
コア611は、例えば、磁力を保持する力が小さく、透磁性が大きい軟磁性材料(軟質磁性体)を用いて形成することができる。本実施の形態では、コア611は、多くの磁力線を通すことができる電磁鋼板により形成されている。
【0039】
このコア611は、図11に示すように、厚さ方向をZ方向(上下方向:第2方向:出力軸の軸方向)に略一致させた状態で下方に配置される略矩形板状の基部6111を備えている。また、コア611は、厚さ方向をY方向(幅方向:第1方向)に略一致させた状態で、基部6111のY方向(幅方向:第1方向)の中央部から上方に突出するように連設された略矩形板状の中央柱部6112を備えている。さらに、コア611は、厚さ方向をY方向(幅方向:第1方向)に略一致させた状態で、基部6111のY方向(幅方向:第1方向)の両端から上方に突出するようにそれぞれ連設された一対の略矩形板状の外側柱部6113を備えている。そして、基部6111、中央柱部6112および一対の外側柱部6113が電磁鋼板により一体に成形されている。
【0040】
コイルボビン612は、例えば、合成樹脂等の電気絶縁性を有する材料を用いて形成することができ、導電性材料で形成されたコイル613が外面に巻回される略矩形状の角筒部6121と、角筒部6121のZ方向(上下方向:第2方向:出力軸の軸方向)の両端にそれぞれ連設されて、XY平面上で角筒部6121の外方に延在する一対のフランジ部6122と、を備えている。このような形状をしたコイルボビン612の中央部には、Z方向(上下方向:第2方向:出力軸の軸方向)に貫通する略四角柱状の貫通孔61211が形成されている。そして、角筒部6121の外面にコイル613を巻回した状態で、コア611の中央柱部6112が貫通孔61211に挿入されるようにすることで、コイル613が巻回されたコイルボビン612がコア611に保持されるようにしている。こうすることで、電磁石部61が形成されるようにしている。
【0041】
このような電磁石部61を形成した状態で、コイル613に交流電流を供給すると、コア611の各柱部(中央柱部6112および一対の外側柱部6113)を通る磁束(磁気回路)が発生し、各柱部(中央柱部6112および一対の外側柱部6113)の先端面6112a,6113aには、N極とS極とが周期的に入れ替わる磁極面が形成されることになる。
【0042】
なお、本実施の形態では、図4および図11に示すように、下方に形成されたフランジ部6122におけるX方向(前後方向:第3方向)の後側に、延設部6123が形成されており、この延設部6123には、引き出されたコイル613を保持するコイル保持溝61231が形成されている。
【0043】
また、本実施の形態では、上述したように、電磁コアブロック6は、電磁石部61に形成されて、位置決め部材8が保持される保持部62を備えている。本実施の形態では、保持部62は、一対の外側柱部6113にX方向(前後方向:第3方向)に貫通するように形成されたそれぞれの貫通孔6113bに固定棒621を、両側の端部6211が外側柱部6113から突出するように挿入することで形成されている。そして、外側柱部6113から突出する固定棒621の端部6211に、位置決め部材8の後述する位置決め片82に形成された切り欠き821を係止させることで、位置決め部材8が電磁石部61に保持されるようにしている。
【0044】
なお、本実施の形態では、電磁鋼板等の磁性材料で形成された固定棒621を用いている。このように、磁性材料で形成された固定棒621を用いるようにすれば、固定棒621を磁気回路の一部として使うことができるため、外側柱部の厚さを厚くしなくても磁気損失が生じないようにすることができるようになる。その結果、電磁コアブロック6の小型化を図ることができるようになる。
【0045】
一方、磁性ブロック7は、互いに独立してY方向(幅方向:第1方向)に往復動することが可能な2つの可動体と、2つの可動体をY方向(幅方向:第1方向)に往復動することができるようにした状態で連結する連結部材73と、を備えている。
【0046】
本実施の形態では、2つの可動体が、互いに逆位相でY方向(幅方向:第1方向)に往復動するようにしている。そして、2つの可動体を互いに逆位相でY方向(幅方向:第1方向)に往復動させるようにすることで、各可動体に生じる振動エネルギーを打ち消し合うようにし、以て、Y方向(幅方向:第1方向)に往復動する際に生じる可動体の振動が抑制されるようにしている。
【0047】
さらに、本実施の形態では、2つの可動体のうちの一方の可動体のみに接続対象物に連結され得る出力軸が設けられるようにしている。
【0048】
このように、本実施の形態では、振動型リニアアクチュエータ5が、2つの可動体を有し、いずれか一方の可動体のみが、接続対象物に連結され得る出力軸を有するようにしている。このような構成をした振動型リニアアクチュエータ5は、バリカン(切断装置)1のように、1つの接続対象物(可動刃3222を有する可動刃ブロック32)を往復動させる装置で用いるのに適したものとなっている。
【0049】
したがって、本実施の形態では、2つの可動体のうち、Z方向(上下方向:第2方向)に延在して可動刃ブロック(接続対象物)32に連結され得る出力軸713を有する可動体が、Y方向(幅方向:第1方向)に往復動することが可能な出力可動体71となっている。また、他方の可動体が、出力可動体71とは逆位相でY方向(幅方向:第1方向)に往復動するように構成され、出力可動体71がY方向(幅方向:第1方向)に往復動する際に生じる振動を抑制する吸振可動体72となっている。
【0050】
そして、電磁石部61を駆動させた際に生じ、周期的に変動する磁界によって、出力可動体71と吸振可動体72とが、互いに逆位相でY方向(幅方向:第1方向)に往復動するようにしている。
【0051】
本実施の形態では、出力可動体71は、図12図14に示すように、出力側永久磁石711と、出力側永久磁石711の上方(電磁石部61が位置する側とは反対側)に配置され、磁気回路を構成することが可能な出力側バックヨーク712と、を備えている。
【0052】
本実施の形態では、出力側永久磁石711は、略矩形板状をしている。この出力側永久磁石711としては、例えば、ネオジム磁石等を用いることができる。
【0053】
出力側バックヨーク712は、出力側永久磁石711よりも一回り大きな略矩形板状をしており、例えば、電磁鋼板や純鉄などの軟磁性体を用いて形成することができる。
【0054】
そして、この出力側バックヨーク712の下面に、出力側永久磁石711が接着等により固定されている。
【0055】
また、本実施の形態では、上述したように、出力可動体71がZ方向(上下方向:第2方向)に延在して可動刃ブロック(接続対象物)32に連結され得る出力軸713を有しており、この出力軸713が出力軸保持部714によって保持されるようにしている。このように、本実施の形態では、出力可動体71は、出力軸713と、出力軸713を保持する出力軸保持部714と、を備えている。
【0056】
さらに、本実施の形態では、出力可動体71は、出力側錘715を備えており、この出力側錘715によって出力可動体71の重心G1の位置および質量を調整している。出力側錘715は、例えば、金属材料等、樹脂よりも比重の重い材料を用いて形成することができる。
【0057】
そして、この出力可動体71は、リベット716によって、連結部材73が備える出力可動体保持部731に固定されている。
【0058】
具体的には、出力側バックヨーク712には、固定孔7122が形成されている。そして、この固定孔7122を出力可動体保持部731に形成された固定孔7313に連通させた状態で、出力側バックヨーク712が出力可動体保持部731の下方に配置されるようにしている。
【0059】
また、出力側バックヨーク712の上部には、軸受け凹部7121が下方に凹むように形成されており、この軸受け凹部7121に出力軸713の下端を挿入することで、出力側バックヨーク712の上部で出力軸713を保持するようにしている。
【0060】
さらに、出力側バックヨーク712には、X方向(前後方向:第3方向)の後方に開口するスリット7123が形成されており、このスリット7123に出力可動体保持部731に形成された図示省略した係合柱を挿入することで、出力側バックヨーク712が出力可動体保持部731に仮保持されるようにしている。
【0061】
また、出力側錘715にも固定孔7152が形成されており、この固定孔7152を出力可動体保持部731に形成された固定孔7313に連通させた状態で、出力側錘715が出力可動体保持部731の上方に配置されるようにしている。
【0062】
また、出力側錘715には、出力軸挿通孔7151がZ方向(上下方向:第2方向)に貫通するように形成されており、この出力軸挿通孔7151に出力軸713を挿入した状態で、出力可動体保持部731の上方に出力側錘715が配置されるようにしている。
【0063】
また、本実施の形態では、出力側錘715には、質量微調整部7154が厚さ方向(Z方向)に突出するように設けられており、この質量微調整部7154によって出力可動体71の重心G1の位置および質量の微調整が行われている。
【0064】
なお、本実施の形態では、出力可動体保持部731は、Y方向(幅方向:第1方向)の一側に位置する第1出力可動体保持部7311と、他側に位置する第2出力可動体保持部7312と、を備えており、Y方向(幅方向:第1方向)の中央部には、出力可動体保持部731が存在しない空間が形成されている。そのため、出力可動体保持部731には、出力軸713を挿通させるための孔が形成されていない。
【0065】
さらに、出力側錘715には、位置決め孔7153がZ方向(上下方向:第2方向)に貫通するように形成されており、この位置決め孔7153に、出力可動体保持部731に形成された位置決め突起7314を挿入することで、出力側錘715が出力可動体保持部731に仮保持されるようにしている。
【0066】
また、出力軸保持部714は、合成樹脂等の電気絶縁性を有する材料で形成されており、出力軸713が挿入保持される保持孔71411が形成された保持部本体7141と、保持部本体7141に連設されて、固定孔71421が形成された固定部7142と、を備えている。そして、この固定孔71421を出力側錘715に形成された固定孔7152に連通させた状態で、出力軸保持部714が出力側錘715の上方に配置されるようにしている。
【0067】
ここで、本実施の形態では、磁性ブロック7がリンク機構74を備えており、このリンク機構74により出力可動体71と吸振可動体72とを接続することで、出力可動体71と吸振可動体72との逆位相状態が常に保たれるようにしている。本実施の形態では、樹脂製のリンク本体741と、このリンク本体741の中央部にZ方向(上下方向:第2方向)に貫通するように形成された中央貫通孔7411に挿入される金属製の中心軸742と、リンク本体741の両端部にZ方向(上下方向:第2方向)に貫通するように形成された一対の外側貫通孔7412にそれぞれ挿入される金属製の揺動軸743と、を備えるリンク機構74が用いられている。
【0068】
そのため、出力可動体71には、リンク機構74の一端を保持する部位が形成されている。具体的には、出力軸保持部714が、保持部本体7141および固定部7142と一体に成形されたリンク機構保持部7143を備えており、このリンク機構保持部7143に形成された長孔71431に一方の揺動軸743を挿入することで、出力可動体71がリンク機構74に接続されるようにしている。なお、リンク機構保持部7143も、保持部本体7141および固定部7142と同様に、合成樹脂等の電気絶縁性を有する材料で形成されている。
【0069】
そして、上述した順に配置された各部材をリベット716によって固定することで、図13および図14に示すように、出力可動体71が出力可動体保持部731に保持されるようにしている。
【0070】
また、図15および図16に示すように、出力可動体71が備える出力軸713の先端部7131を、案内板321に形成された係合凹部3211に係合させることで、可動刃ブロック(接続対象物)32が出力軸713に連結されるようにしている。
【0071】
一方、吸振可動体72は、図17図19に示すように、吸振側永久磁石721と、吸振側永久磁石721の上方(電磁石部61が位置する側とは反対側)に配置され、磁気回路を構成することが可能な吸振側バックヨーク722と、を備えている。
【0072】
本実施の形態では、吸振側永久磁石721も略矩形板状をしている。そして、この吸振側永久磁石721としても、ネオジム磁石等を用いることができる。
【0073】
また、吸振側バックヨーク722も、吸振側永久磁石721よりも一回り大きな略矩形板状をしている。そして、この吸振側バックヨーク722も、電磁鋼板や純鉄などの軟磁性体を用いて形成することができる。吸振側永久磁石721も、吸振側バックヨーク722の下面に接着等により固定されている。
【0074】
ここで、本実施の形態では、吸振可動体保持部732が、出力可動体保持部731に対してX方向(前後方向:第3方向)の一側(前側)に位置する第1吸振可動体保持部7321と、出力可動体保持部731に対してX方向(前後方向:第3方向)の他側(後側)に位置する第2吸振可動体保持部7322と、を備えるようにしている。こうすることで、磁性ブロック7(可動子:出力可動体71および吸振可動体72)の中央部近傍に出力軸713が配置されるようにし、磁性ブロック7の全体形状をバランスのよい形状となるようにしている。
【0075】
そして、第1吸振可動体保持部7321および第2吸振可動体保持部7322のそれぞれに、吸振側永久磁石721が固定された吸振側バックヨーク722が保持されるようにしている。
【0076】
具体的には、吸振側バックヨーク722が、第1吸振側バックヨーク7221と第2吸振側バックヨーク7222とを備えるようにし、第1吸振側バックヨーク7221が第1吸振可動体保持部7321に保持され、第2吸振側バックヨーク7222が第2吸振可動体保持部7322に保持されるようにしている。また、吸振側永久磁石721が、第1吸振側永久磁石7211と第2吸振側永久磁石7212とを備えるようにし、第1吸振側永久磁石7211が第1吸振側バックヨーク7221の下面に接着等により固定され、第2吸振側永久磁石7212が第2吸振側バックヨーク7222の下面に接着等により固定されるようにしている。
【0077】
さらに、本実施の形態では、吸振可動体72は、吸振側錘723を備えており、この吸振側錘723によって吸振可動体72の重心G2の位置および質量を調整している。
【0078】
本実施の形態では、吸振側錘723が、第1吸振可動体保持部7321に固定される第1固定基部7231と、第2吸振可動体保持部7322に固定される第2固定基部7232と、第1固定基部7231と第2固定基部7232とを連結する連結基部7233と、を備えるようにしている。そして、この吸振側錘723を介して、第1吸振側永久磁石7211が固定された第1吸振側バックヨーク7221と、第2吸振側永久磁石7212が固定された第2吸振側バックヨーク7222とが連結されるようにしている。こうすることで、第1吸振側永久磁石7211が固定された第1吸振側バックヨーク7221、第2吸振側永久磁石7212が固定された第2吸振側バックヨーク7222および吸振側錘723を一体化させ、出力可動体保持部731のX方向(前後方向:第3方向)の両側に配置される部位を有する1つの吸振可動体72が形成されるようにしている。
【0079】
また、上述したように、磁性ブロック7がリンク機構74を備えており、吸振可動体72にも、リンク機構74の他端を保持する部位が形成されている。具体的には、吸振可動体72が、合成樹脂等の電気絶縁性を有する材料で形成されたリンク機構保持部材724を備えており、このリンク機構保持部材724に形成された長孔72421に他方の揺動軸743を挿入することで、吸振可動体72がリンク機構74に接続されるようにしている。
【0080】
そして、この吸振可動体72は、リベット725によって、連結部材73が備える吸振可動体保持部732に固定されている。
【0081】
具体的には、吸振側バックヨーク722は、本体部7223と、本体部7223のY方向(幅方向:第1方向)の両側に連設された一対の挿入壁7224と、を備えている。本実施の形態では、一対の挿入壁7224は、本体部7223よりもZ方向(上下方向:第2方向)の厚さが薄くなるように形成されており、吸振側バックヨーク722は、正面視(X方向に沿って見た状態)で、本体部7223が上方に突出した凸形状をしている。そして、本体部7223には、固定孔72231が形成されており、この固定孔72231を吸振可動体保持部732の本体部7323に形成された固定孔73231に連通させた状態で、吸振側バックヨーク722が吸振可動体保持部732の下方に配置されるようにしている。
【0082】
また、吸振可動体保持部732には、吸振側バックヨーク722の挿入壁7224が挿入される挿入溝7326が形成されている。本実施の形態では、本体部7323のY方向(幅方向:第1方向)の両側に段差部7324が形成されており、この段差部7324の下端に、挿入壁7224を保持する保持壁7325がY方向(幅方向:第1方向)の内側に突出するように形成されている。そして、この段差部7324と保持壁7325とで画成される空間が挿入溝7326となっており、この挿入溝7326内に挿入壁7224を挿入することで、吸振側バックヨーク722が吸振可動体保持部732に仮保持されるようにしている。
【0083】
さらに、吸振側バックヨーク722の挿入壁7224には、X方向(前後方向:第3方向)の後方に開口するスリット72241が形成されており、このスリット72241に吸振可動体保持部732の挿入溝7326内に形成された係合柱73261を挿入することで、吸振側バックヨーク722が吸振可動体保持部732に仮保持されるようにしている。
【0084】
また、吸振側錘723にも固定孔72341が形成されており、この固定孔72341を吸振可動体保持部732に形成された固定孔73231に連通させた状態で、吸振側錘723が吸振可動体保持部732の上方に配置されるようにしている。
【0085】
さらに、リンク機構保持部材724は、吸振側錘723に固定される固定部7241と、リンク機構74の他方の揺動軸743が挿入される長孔72421が形成されたリンク機構保持部7242とを一体に成形することで形成されている。そして、固定部7241には、固定孔72411が形成されており、この固定孔72411を吸振側錘723に形成された固定孔72341に連通させた状態で、リンク機構保持部材724が吸振側錘723の上方に配置されるようにしている。なお、本実施の形態では、吸振側錘723の第1固定基部7231にリンク機構保持部材724が固定されるようにしている。
【0086】
このような順に配置された各部材をリベット725によって固定することで、図18および図19に示すように、吸振可動体72が吸振可動体保持部732に保持されるようにしている。
【0087】
そして、本実施の形態では、出力可動体71を保持した出力可動体保持部731と吸振可動体72を保持した吸振可動体保持部732とが連結部733により連結されている。
【0088】
このように、本実施の形態では、連結部材73が、出力可動体保持部731と吸振可動体保持部732とを連結する連結部733を備えるようにしている。
【0089】
連結部733は、Y方向(幅方向:第1方向)の両側におけるZ方向(上下方向:第2方向)の上方にそれぞれ配置される一対の基部7331と、各基部7331から下方に向けて延設された板バネ部7332と、板バネ部7332の下端と可動体保持部(出力可動体保持部731、第1吸振可動体保持部7321および第2吸振可動体保持部7322)とを接続する接続部7333と、を備えている。
【0090】
本実施形態では、板バネ部7332は、X方向(前後方向:第3方向)の中央に配置されて出力可動体保持部731に連結される出力側板バネ部73321と、X方向(前後方向:第3方向)の前側および後側に配置されて、第1吸振可動体保持部7321、第2吸振可動体保持部7322にそれぞれ連結される吸振側板バネ部73322と、を備えている。また、接続部7333は、X方向(前後方向:第3方向)の中央に配置されて出力側板バネ部73321の下端を出力可動体保持部731に接続させる出力側接続部73331と、X方向(前後方向:第3方向)の前側および後側に配置されて、吸振側板バネ部73322の下端を第1吸振可動体保持部7321、第2吸振可動体保持部7322にそれぞれ接続する吸振側接続部73332と、を備えている。
【0091】
さらに、本実施の形態では、連結部材73が、出力可動体71および吸振可動体72の振幅(共振周波数)を調整する連結バネ734を備えるようにし、出力可動体保持部731と吸振可動体保持部732とを、この連結バネ734によって連結させるようにしている。具体的には、Y方向(幅方向:第1方向)の一方側に配置される連結バネ734によって、出力可動体保持部731と第1吸振可動体保持部7321とを連結させるようにし、Y方向(幅方向:第1方向)の他方側に配置される連結バネ734によって、出力可動体保持部731と第2吸振可動体保持部7322とを連結させるようにしている。このとき、連結バネ734のバネ定数を所定の値となるようにすれば、出力可動体71および吸振可動体72の振幅(共振周波数)を所望の値とすることができるようになる。なお、本実施の形態では、連結部733よりも下方に位置するように連結バネ734を配置し、一対の連結バネ734の間に、電磁石部61が配置されるようにしている。
【0092】
そして、この連結部材73を位置決め部材8に固定することで、出力可動体71および吸振可動体72を位置決め部材8に対して、Y方向(幅方向:第1方向)に相対的に往復動させるようにしている。
【0093】
具体的には、連結部材73が、一対の基部7331からそれぞれY方向(幅方向:第1方向)の内側に突出するように連設された固定片735を備えるようにし、この固定片735を位置決め部材8の固定部81に固定することで、連結部材73が位置決め部材8に固定されるようにしている。
【0094】
本実施の形態では、位置決め部材8は、Y方向(幅方向:第1方向)の両側における上方に配置される一対の固定部81と、各固定部81のX方向(前後方向:第3方向)の両端から下方に向けて突出するように連設された位置決め片82と、Y方向(幅方向:第1方向)で隣り合う位置決め片82を連結する連結部83と、を備えている。そして、一対の固定部81の間には上方に開口する開口部84が形成されており、出力軸713のY方向(幅方向:第1方向)への往復動が位置決め部材8によって邪魔されないようにしている。
【0095】
本実施の形態では、固定部81には、ネジ孔811が形成されており、このネジ孔811を固定片735に形成されたネジ孔7351に連通させた状態で、固定部81が固定片735の下方に配置されるようにしている。このとき、固定片735に下方に突出するように形成された位置決め突起7352が、固定部81に形成された位置決め孔812に挿入されるようにしている。こうすることで、位置決め部材8が連結部材73に仮保持されるようにしている。
【0096】
このような順に配置された各部材をネジ9によって固定することで、図3図5に示すように、磁性ブロック7が位置決め部材8に保持されるようにしている。こうすることで、各可動体(出力可動体71および吸振可動体72)が、永久磁石(出力側永久磁石711および吸振側永久磁石721)が下方に位置した状態で位置決め部材8に吊り下げられるようにしている。
【0097】
なお、本実施の形態では、磁性ブロック7を位置決め部材8に保持した状態で、リンク機構74の中心軸742の上端が固定部81に形成された軸孔813に挿入されるようにしている。こうすることで、出力可動体71および吸振可動体72を往復動させた際に、リンク機構74が中心軸742を中心として回動するようにしている。
【0098】
また、本実施の形態では、連結部材73は、合成樹脂等の電気絶縁性を有する材料を用いて一体に形成されている。また、位置決め部材8は、剛性を有する一枚の金属板を素材の外形が所定形状になるように打ち抜き加工し、この打ち抜き加工された加工品に折り曲げ加工等の塑性加工を適宜施すことで形成されている。
【0099】
そして、磁性ブロック7を位置決め部材8に保持させた状態で、各位置決め片82の下端に下方に開口するように形成された切り欠き821を保持部62に係止させることで、振動型リニアアクチュエータ5が形成されるようにしている。
【0100】
こうすることで、各可動体(出力可動体71および吸振可動体72)の永久磁石(出力側永久磁石711および吸振側永久磁石721)と、コア611の先端面(中央柱部6112の先端面6112aおよび外側柱部6113の先端面6113a)とが、所定の磁気ギャップを介して対向するようにしている。
【0101】
このとき、出力側永久磁石711と吸振側永久磁石721とを互いに逆極性で配置させるようにし、電磁石部61を駆動させた際には、Y方向(幅方向:第1方向)に対して互いに逆方向の移動力が作用するようにしている。
【0102】
こうすることで、電磁石部61を駆動させた際には、周期的に変動する磁界によって、出力可動体71と吸振可動体72とが、互いに逆位相でY方向(幅方向:第1方向)に往復動するようにしている。
【0103】
このとき、吸振可動体72の重心G2の位置(XYZ座標上の位置)を出力可動体71の重心G1の位置(XYZ座標上の位置)に合わせるようにすれば、各可動体(出力可動体71および吸振可動体72)に生じる振動エネルギーをより効率よく打ち消し合うことができるようになる。
【0104】
そのため、吸振可動体72の重心G2の位置を、出力可動体71の重心G1の位置にできるだけ近づけるようにするのが好ましい。
【0105】
しかしながら、本実施の形態にかかる振動型リニアアクチュエータ5においては、出力可動体71および吸振可動体72のうち出力可動体71のみが出力軸713を有している。そのため、比較的上方に出力可動体71の重心G1が位置することになり、吸振側錘723を用いない場合には、出力可動体71の重心G1の位置と吸振可動体72の重心G2の位置との差が大きくなってしまう。
【0106】
そこで、本実施の形態では、吸振側錘723を用いることで、吸振可動体72の重心G2の位置を出力可動体71の重心G1の位置に近づけるようにしている。なお、このときに比較する出力可動体71の重心G1の位置は、可動刃ブロック(接続対象物)32を含めない状態での重心の位置であってもよいし、可動刃ブロック(接続対象物)32を含めた状態での重心の位置であってもよい。
【0107】
さらに、本実施の形態では、吸振可動体保持部732の周囲の空間をより有効に活用しながら吸振側錘723を配置できるようにすることで、小型化を図りつつ、出力可動体71がY方向(幅方向:第1方向)に往復動する際に生じる振動を抑制することもできるようにしている。
【0108】
具体的には、吸振可動体72の重心G2の位置が出力可動体71の重心G1の位置に近づくように調整する吸振側錘723を吸振可動体保持部732に直接固定させるようにしている。
【0109】
このように、吸振側錘723を吸振可動体保持部732に直接固定させるようにすることで、吸振可動体保持部732の周囲の空間をより有効に活用しながら吸振側錘723を配置できるようにしている。
【0110】
例えば、樹脂成形品を介して吸振側錘723を吸振可動体保持部732に固定させる場合には、吸振側錘723の配置スペースが樹脂成形品によって制限されたり、吸振側錘723の形状が樹脂成形品の形状によって制限されたりするため、吸振側錘723の形状自由度や配置自由度が低下してしまう。そのため、吸振可動体72の重心G2の位置を出力可動体71の重心G1の位置に合わせた際に吸振側錘723が占める空間が大きくなってしまう。
【0111】
これに対して、吸振側錘723を吸振可動体保持部732に直接固定させる場合には、吸振可動体保持部732に固定される樹脂成形品による形状の制限や配置スペースの制限がなくなるため、吸振側錘723の形状自由度および配置自由度を向上させることが可能になる。
【0112】
その結果、より効率的に吸振側錘723を吸振可動体保持部732の周囲の空間に配置させることができるようになって、吸振可動体72の重心G2の位置を出力可動体71の重心G1の位置に合わせた際に吸振側錘723が占める空間を、より小さな空間となるようにすることが可能になる。すなわち、吸振側錘723が占める空間が小さくなるようにしつつ、出力可動体71がY方向(幅方向:第1方向)に往復動する際に生じる振動をより確実に抑制することができるようになる。
【0113】
さらに、本実施の形態では、図20図23に示すように、吸振側錘723に、固定部としての固定孔72341および固定突起72342を設けている。そして、固定孔72341と吸振可動体保持部732に形成された被固定部としての固定孔73231とをリベット725によって固定している。こうすることで、吸振側錘723と吸振可動体保持部732とを、固定孔72341の周縁部を固定孔73231の周縁部に接触させた状態で固定するようにしている。
【0114】
また、固定突起72342を吸振可動体保持部732に形成された被固定部としての固定凹部73232に他の部材を介在させることなく挿入することで、吸振側錘723と吸振可動体保持部732とを固定するようにしている。
【0115】
このように、本実施の形態では、吸振側錘723に形成された固定部(固定孔72341、固定突起72342)を吸振可動体保持部732に形成された被固定部(固定孔73231、固定凹部73232)に固定することで、吸振側錘723を吸振可動体保持部732に固定させるようにしている。
【0116】
こうすることで、吸振側錘723をより強固に吸振可動体保持部732に固定することができるようにし、吸振側錘723の固定位置がずれてしまうことをより確実に抑制することができるようにしている。すなわち、吸振可動体72の重心G2の位置が、当初の位置よりも出力可動体71の重心G1の位置から遠くなってしまうことを抑制できるようにしている。こうすれば、吸振側錘723の固定位置がずれることに起因する振動の増加を抑制することが可能になって、出力可動体71がY方向(幅方向:第1方向)に往復動する際に生じる振動をより確実に抑制することができるようになる。
【0117】
また、本実施の形態では、吸振側錘723を、金型、砂型、石膏型等の型により成形された型成形品とすることで、吸振側錘723の形状自由度をより向上させることができるようにしている。
【0118】
このように、吸振側錘723を型により成形された型成形品とすれば、より複雑な形状の吸振側錘723をより容易に得ることができるようになる。例えば、図20図23に示すような形状、すなわち、突起部7235、段差部7236、凹溝7237、湾曲面7238aを有する湾曲部7238、傾斜面7239aを有する傾斜部7239を備える形状の吸振側錘723をより容易に得ることができるようになる。
【0119】
このように、より容易に吸振側錘723の形状を複雑な形状とすることができるようにすれば、限られた狭い空間にしか吸振側錘723を配置することができない場合であっても、吸振側錘723の形状を配置空間に適合した形状にすることが可能になるため、限られた空間を効率よく利用することができるようになる。
【0120】
なお、型により成形された型成形品としては、例えば、ダイカスト成形品、MIM(Metal Injection Molding)成形品、ロストワックス成形品、インサート成形品、樹脂成形品などがある。
【0121】
ただし、吸振側錘723を型成形品とする必要はなく、吸振側錘723は様々な工法で製造することができる。例えば、吸振側錘723をプレス加工品、切削品、鋳造品、焼結品とすることも可能である。
【0122】
また、本実施の形態では、吸振側錘723が占める空間をより小さな空間としつつ、吸振可動体72の重心G2の位置を出力可動体71の重心G1の位置に合わせることができるようにしている。
【0123】
具体的には、比重が、2.0以上14.0以下の吸振側錘723を用いて、吸振可動体72の重心G2の位置を出力可動体71の重心G1の位置に合わせるようにしている。
【0124】
本実施の形態では、比重が6.6の亜鉛合金を用いて成形したダイカスト品である吸振側錘723を用いて、吸振可動体72の重心G2の位置を出力可動体71の重心G1の位置に合わせるようにしている。
【0125】
このように、吸振側錘723の比重が2.0以上となるようにすれば、一般的な樹脂の比重である1.5よりも比重が大きな吸振側錘723とすることができるため、吸振可動体72の重心G2の位置を出力可動体71の重心G1の位置に合わせた際に吸振側錘723が占める空間を、樹脂成形品を用いた場合よりも小さな空間とすることが可能になる。また、吸振側錘723の比重が14.0以下となるようにすれば、例えば、亜鉛合金等の量産に適した材料を用いて吸振側錘723を形成することができるため、吸振側錘723の量産化が可能になって、より安価に製造することが可能になる。
【0126】
したがって、吸振側錘723の比重が2.0以上14.0以下となるようにすれば、吸振可動体72の重心G2の位置を出力可動体71の重心G1の位置に合わせる際に必要な容積の縮小化を図ることが可能な吸振側錘723を、より安価に得ることが可能になる。
【0127】
さらに、より少ない体積で吸振可動体72の重心G2の位置を出力可動体71の重心G1の位置に合わせられるようにするためには、吸振側錘723の比重が5.0以上となるようにするのが好ましい。
【0128】
なお、吸振側錘723形成する材料は、亜鉛合金に限られるものではなく、様々な材料を用いて吸振側錘723を形成することができる。例えば、真鍮、鉄、ステンレス、タングステン等の金属を用いて形成することも可能であるし、真鍮、鉄、ステンレス、タングステン等の金属に樹脂を混ぜたものを用いて形成することも可能である。また、比重が2.0以上となる樹脂を用いて形成することも可能である。
【0129】
また、本実施の形態では、吸振可動体72の質量が出力可動体71の質量よりも大きくなるようにしている。
【0130】
こうすることで、吸振可動体72の質量を、可動刃ブロック(接続対象物)32と出力可動体71の合計質量と同等以上の質量となるようにし、可動刃ブロック(接続対象物)32が接続された出力可動体71の方を吸振可動体72よりも往復動させやすくなるようにしている。
【0131】
そして、このような構成をした振動型リニアアクチュエータ5は、ハウジング4や回路基板などの他の部品43に固定された状態で用いられている。すなわち、振動型リニアアクチュエータ5は、ハウジング4や回路基板などの他の部品43に固定され得るものである。
【0132】
そのため、本実施の形態では、固定部63を電磁石部(固定子本体)61に連設し、この固定部63を他の部品43に形成された被固定部431に固定することができるようにしている。
【0133】
ここで、本実施の形態では、電磁コアブロック(固定子)6のY方向(幅方向)の小型化を図ることができる上、被固定部431が変形してしまうことを抑制することもできるようにしている。
【0134】
具体的には、固定部63が、電磁石部(固定子本体)61の下面(一面)6111aが下方を向くように電磁コアブロック(固定子)6を配置した状態における側面視で、下面(一面)6111aから下方に突出して互いに対向する一対の脚部631を備えるようにしている。
【0135】
なお、本実施の形態では、一対の脚部631は、コア611のY方向の両端に形成されており、外側面が外側柱部6113の側面と面一となるように形成されている。こうすることで、一対の脚部631の間にできるだけ広い空間が形成されるようにしている。
【0136】
さらに、固定部63が、脚部631にそれぞれ連設されて、電磁石部(固定子本体)61の下面(一面)6111aが下方を向くように電磁コアブロック(固定子)6を配置した状態における側面視で、脚部631が対向する方向(Y方向)の内側に向けて突出する一対の突起部632を備えるようにしている。
【0137】
このように、本実施の形態では、他の部品43に形成された被固定部431に固定することが可能な固定部63の形状を、内向きに突出するフック状となるようにしている。
【0138】
こうすることで、電磁コアブロック(固定子)6の脚部631が対向する方向(Y方向)への小型化を図りつつ、被固定部431が変形してしまうことを抑制することもできるようにしている。
【0139】
具体的には、固定部63が電磁石部(固定子本体)61よりも脚部631が対向する方向(Y方向)の外側にはみ出してしまわないようにすることができるため、電磁コアブロック(固定子)6を、脚部631が対向する方向(Y方向)に小型化させることができるようになっている。
【0140】
また、上述した固定部63を有する場合、振動型リニアアクチュエータ5を他の部品43に固定する際には、図24および図25に示すような状態で固定されることになる。すなわち、被固定部431の被固定部本体4311からY方向の外側に突出したフランジ部4312が、基部6111の下面と脚部631の内側面と突起部632の上面とで画成された挟持空間633に嵌め込まれた状態で、被固定部431のフランジ部4312が形成された部位を一対の脚部631により挟持することで、振動型リニアアクチュエータ5が他の部品43に固定されることになる。こうすることで、被固定部431が、一対の突起部632により抜け止めがなされた状態で、一対の脚部631により挟持されている構造、すなわち、図24および図25に示す振動型リニアアクチュエータの被固定部への固定構造10が得られるようにしている。
【0141】
こうすることで、一対の脚部631の間の幅までの範囲で、被固定部431(被固定部本体4311およびフランジ部4312が形成された部位)のY方向の厚さを設定することができるようにし、一対の脚部631の間の幅よりも大型化してしまうことなく、被固定部431の変形を抑制することが可能な程度に、被固定部431と固定部63との固定強度を高めることができるようにしている。
【0142】
なお、本実施の形態では、所望の強度以上となる被固定部431(被固定部本体4311およびフランジ部4312)の厚さが、一対の脚部631の間の幅よりも小さくなっている。したがって、本実施の形態で示す振動型リニアアクチュエータ5では、被固定部本体4311に凹部やコイル挿通孔43111が形成されている。
【0143】
このように、本実施の形態で示す構成とすれば、一対の脚部631に挟持される部位の形状を適宜設定することが可能になるため、所定の固定強度を確保しつつ、被固定部431の形状自由度を向上させることができるようになる。
【0144】
また、被固定部431の変形を抑制できるようにすれば、振動型リニアアクチュエータ5の振動により被固定部431に継続して力が加えられることに起因するクリープ現象の発生も抑制することができ、より長期的に被固定部431と固定部63との固定力を維持することができるようになる。こうすれば、固定力の低下によるがたつきの発生が抑制されて、振動型リニアアクチュエータ5の性能が低下してしまうことを抑制することもできるようになる。
【0145】
また、本実施の形態では、脚部631の突出方向(Z方向)および突起部632の突出方向(Y方向)と交差する方向(X方向)に細長い形状となるように固定部63を形成している。
【0146】
こうすることで、被固定部431と固定部63との固定強度をより向上させることができるようにし、振動型リニアアクチュエータ5の性能が低下してしまうことをより確実に抑制できるようにしている。
【0147】
また、本実施の形態では、脚部631が対向する方向がY方向(幅方向:第1方向)となるようにしている。
【0148】
こうすることで、磁性ブロック(可動子)7を往復動させた際に電磁コアブロック(固定子)6がY方向(幅方向:第1方向)に振られてしまうことをより確実に抑制できるようにし、磁性ブロック(可動子)7をより効率よくY方向(幅方向:第1方向)に往復動させることができるようにしている。
【0149】
さらに、本実施の形態では、電磁石部61の駆動により生じる磁束の主磁路から外れた位置、すなわち、電磁石部61の磁束発生効率に与える影響が少ない部位に、固定部63を形成するようにしている。こうすることで、振動型リニアアクチュエータ5の性能が固定部63の形成によって低下してしまうことを、より確実に抑制することができるようにしている。
【0150】
また、本実施の形態では、固定部63と電磁石部61のコア611とを一体成形により形成している。すなわち、固定部63とコア611とは、電磁鋼板により一体に成形された一体成形品となっている。
【0151】
こうすることで、より容易に固定部63を電磁石部61に設けることができるようにしつつ、固定部63の強度をより向上させることができるようにしている。
【0152】
なお、本実施の形態のように、固定部63の形状を内向きに突出するフック状となるようにすれば、固定部63のY方向の外側近傍に連結バネ734を配置したとしても、固定部63と連結バネ734とが干渉してしまうことを抑制することが可能になる。そのため、一対の連結バネ734の間に固定部63を位置させることができ、電磁コアブロック6のZ方向の小型化を図ることもできるようになる。
【0153】
[作用・効果]
以下では、上記実施の形態で示した振動型リニアアクチュエータおよび切断装置の特徴的構成およびそれにより得られる効果を説明する。
【0154】
(技術1)上記実施の形態で示した振動型リニアアクチュエータ5は、周期的に変動する磁界によりY方向(幅方向:第1方向)に往復動することが可能な出力可動体71を備えている。
【0155】
また、振動型リニアアクチュエータ5は、出力可動体71とは逆位相でY方向(幅方向:第1方向)に往復動するように構成され、出力可動体71がY方向(幅方向:第1方向)に往復動する際に生じる振動を抑制する吸振可動体72を備えている。
【0156】
さらに、振動型リニアアクチュエータ5は、出力可動体71と吸振可動体72とを連結する連結部材73を備えている。
【0157】
ここで、出力可動体71は、Y方向(幅方向:第1方向)と交差するZ方向(上下方向:第2方向)に延在して可動刃ブロック(接続対象物)32に連結され得る出力軸713を有している。
【0158】
また、吸振可動体72は、吸振可動体72の重心G2の位置が出力可動体71の重心G1の位置に近づくように調整する吸振側錘723を備えている。
【0159】
また、連結部材73は、出力可動体71を保持する出力可動体保持部731と、吸振可動体72を保持する吸振可動体保持部732と、出力可動体保持部731と吸振可動体保持部732とを連結する連結部733と、を備えている。
【0160】
そして、吸振側錘723には、吸振可動体保持部732に形成された被固定部(固定孔73231、固定凹部73232)に固定される固定部(固定孔72341、固定突起72342)が形成されている。
【0161】
このように、吸振側錘723に形成された固定部(固定孔72341、固定突起72342)を吸振可動体保持部732に形成された被固定部(固定孔73231、固定凹部73232)に固定することで、吸振側錘723を吸振可動体保持部732に固定させるようにすれば、吸振可動体保持部732の周囲の空間をより有効に活用しながら吸振側錘723を配置することが可能になるため、吸振側錘723の形状自由度および配置自由度を向上させることが可能になる。
【0162】
その結果、より効率的に吸振側錘723を吸振可動体保持部732の周囲の空間に配置させることができるようになって、吸振可動体72の重心G2の位置を出力可動体71の重心G1の位置に合わせた際に吸振側錘723が占める空間を、より小さな空間となるようにすることが可能になる。すなわち、吸振側錘723が占める空間が小さくなるようにしつつ、出力可動体71がY方向(幅方向:第1方向)に往復動する際に生じる振動をより確実に抑制することができるようになる。
【0163】
このように、上記実施の形態で示した振動型リニアアクチュエータ5とすれば、小型化を図りつつ、出力可動体71がY方向(幅方向:第1方向)に往復動する際に生じる振動を抑制することもできるようになる。
【0164】
また、上記実施の形態で示した振動型リニアアクチュエータ5とすれば、吸振側錘723をより強固に吸振可動体保持部732に固定することができるようになるため、吸振側錘723の固定位置がずれてしまうことをより確実に抑制することが可能になる。すなわち、吸振可動体72の重心G2の位置が、当初の位置よりも出力可動体71の重心G1の位置から遠くなってしまうことを抑制することが可能になる。その結果、吸振側錘723の固定位置がずれることに起因する振動の増加を抑制することが可能になって、出力可動体71がY方向(幅方向:第1方向)に往復動する際に生じる振動をより確実に抑制することができるようになる。
【0165】
(技術2)また、上記(技術1)において、吸振可動体保持部732が、出力可動体保持部731に対してY方向(幅方向:第1方向)およびZ方向(上下方向:第2方向)と交差するX方向(前後方向:第3方向)の一側(前側)に位置する第1吸振可動体保持部7321と、出力可動体保持部731に対してX方向(前後方向:第3方向)の他側(後側)に位置する第2吸振可動体保持部7322と、を備えていてもよい。そして、吸振側錘723が、第1吸振可動体保持部7321に固定される第1固定基部7231と、第2吸振可動体保持部7322に固定される第2固定基部7232と、第1固定基部7231と第2固定基部7232とを連結する連結基部7233と、を備えていてもよい。
【0166】
このように、出力可動体保持部731のX方向(前後方向:第3方向)の両側に吸振側錘723が配置されるようにすれば、出力可動体保持部731のX方向(前後方向:第3方向)の両側の空間を有効に活用しつつ、吸振側錘723をバランスよく配置させることで、吸振可動体72の重心G2の位置を出力可動体71の重心G1の位置に合わせることができるようになる。すなわち、吸振側錘723の構成の簡素化を図りつつ、より容易に吸振可動体72の重心G2の位置を出力可動体71の重心G1の位置に合わせることができるようになる。
【0167】
なお、出力可動体71および吸振可動体72のうち出力可動体71のみが、可動刃ブロック(接続対象物)32に連結され得る出力軸713を有する場合に、(技術4)の構成とすれば、磁性ブロック7(可動子:出力可動体71および吸振可動体72)の中央部近傍に出力軸713が配置されることになるため、磁性ブロック7全体のバランスをよくすることが可能になる。
【0168】
(技術3)また、上記(技術1)または(技術2)において、吸振側錘723が型成形品であってもよい。
【0169】
このように、金型、砂型、石膏型等により成形された型成形品としての吸振側錘723を用いるようにすれば、吸振側錘723の形状をより複雑な形状とすることが可能になる。こうすれば、限られた狭い空間にしか吸振側錘723を配置することができない場合であっても、吸振側錘723の形状を配置空間に適合した形状にすることが可能になるため、限られた空間を効率よく利用することができるようになる。
【0170】
(技術4)また、上記(技術1)から(技術3)のうちのいずれかの技術において、吸振側錘723の比重が、2.0以上14.0以下であってもよい。
【0171】
このように、吸振側錘723の比重が2.0以上となるようにすれば、一般的な樹脂の比重である1.5よりも比重が大きな吸振側錘723とすることができるため、吸振可動体72の重心G2の位置を出力可動体71の重心G1の位置に合わせた際に吸振側錘723が占める空間を、樹脂成形品を用いた場合よりも小さな空間とすることが可能になる。また、吸振側錘723の比重が14.0以下となるようにすれば、例えば、亜鉛合金等の量産に適した材料を用いて吸振側錘723を形成することができるため、吸振側錘723の量産化が可能になって、より安価に製造することが可能になる。
【0172】
このように、吸振側錘723の比重が2.0以上14.0以下となるようにすれば、吸振可動体72の重心G2の位置を出力可動体71の重心G1の位置に合わせる際に必要な容積の縮小化を図ることが可能な吸振側錘723を、より安価に得ることが可能になる。
【0173】
(技術5)また、上記(技術1)から(技術4)のうちのいずれかの技術において、吸振可動体72の質量が出力可動体71の質量よりも大きくなるようにしてもよい。
【0174】
こうすれば、吸振可動体72の質量を、可動刃ブロック(接続対象物)32と出力可動体71の合計質量と同等以上の質量とすることが可能になる。
【0175】
ここで、出力可動体71および吸振可動体72は、連結部材73によって連結された状態で互いに逆位相で往復動するように構成されている。このような構成においては、質量の小さい可動体の方が質量の大きい可動体よりも往復動させやすくなる。
【0176】
したがって、吸振可動体72の質量を、可動刃ブロック(接続対象物)32と出力可動体71の合計質量と同等以上の質量となるようにすれば、可動刃ブロック(接続対象物)32が接続された出力可動体71の方を吸振可動体72よりも往復動させやすくすることが可能になる。
【0177】
(技術6)また、上記実施の形態で示したバリカン(切断装置)1は、上記(技術1)から(技術5)のうちのいずれかの技術に示した振動型リニアアクチュエータ5と、可動刃ブロック(接続対象物)32の一部を構成する可動刃3222と、可動刃3222が摺接する固定刃3122と、を備えている。
【0178】
このように、上記実施の形態で示した振動型リニアアクチュエータ5を用いたバリカン(切断装置)1とすれば、小型化を図りつつ、使用時に手に伝わる振動をより確実に抑制することができるようになる。
【0179】
[その他]
以上、本開示にかかる振動型リニアアクチュエータおよび切断装置の内容を説明したが、これらの記載に限定されるものではなく、種々の変形および改良が可能であることは、当業者には自明である。
【0180】
例えば、上記実施の形態で示した構成の変更、置き換え、付加、省略などを行った実施の形態に本開示を適用することができる。また、上記実施の形態で説明した各構成要素を組み合わせて、新たな実施の形態とすることも可能である。
【0181】
また、上記実施の形態では、切断装置として毛髪を切断するバリカンを例示したが、電気かみそりなどの体毛を処理する切断装置、草や木の枝を切断するバリカン等の切断装置に本開示を適用することも可能である。
【0182】
また、上記実施の形態では、他の部品43に形成された被固定部431に固定することが可能な固定部63の形状を、内向きに突出するフック状としたものを例示したが、固定部63の形状を、内向きに突出するフック状とすることも可能である。
【0183】
また、上記実施の形態では、固定部としての固定突起72342を吸振可動体保持部732に形成された被固定部としての固定凹部73232に他の部材を介在させることなく挿入したものを例示したが、樹脂部品等の他の部材を間に介在させた状態で固定突起72342を固定凹部73232に挿入する構成とすることも可能である。
【0184】
また、電磁コアブロックや磁性ブロック、その他細部のスペック(形状、大きさ、レイアウト等)も適宜に変更可能である。
【産業上の利用可能性】
【0185】
以上のように、本開示にかかる振動型リニアアクチュエータおよび切断装置は、小型化を図りつつ、振動を抑制することが可能であるため、毛髪に限らず、人や動物などの様々な体毛の処理、草や木の枝などの切断等の用途にも適用することが可能である。
【符号の説明】
【0186】
1 バリカン(切断装置)
3122 固定刃
32 可動刃ブロック(接続対象物)
3222 可動刃
5 振動型リニアアクチュエータ
71 出力可動体
713 出力軸
72 吸振可動体
723 吸振側錘
7231 第1固定基部
7232 第2固定基部
7233 連結基部
7234 固定部
72341 固定孔(固定部)
72342 固定突起(固定部)
73 連結部材
731 出力可動体保持部
732 吸振可動体保持部
7321 第1吸振可動体保持部
7322 第2吸振可動体保持部
73231 固定孔(被固定部)
73232 固定凹部(被固定部)
733 連結部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
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図9
図10
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図12
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図24
図25