(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024171123
(43)【公開日】2024-12-11
(54)【発明の名称】表示装置及び表示装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
H10K 71/16 20230101AFI20241204BHJP
H10K 50/10 20230101ALI20241204BHJP
H10K 50/844 20230101ALI20241204BHJP
H10K 50/858 20230101ALI20241204BHJP
H10K 59/122 20230101ALI20241204BHJP
H10K 71/12 20230101ALI20241204BHJP
H10K 71/20 20230101ALI20241204BHJP
G09F 9/30 20060101ALI20241204BHJP
G09F 9/00 20060101ALI20241204BHJP
【FI】
H10K71/16
H10K50/10
H10K50/844
H10K50/858
H10K59/122
H10K71/12
H10K71/20
G09F9/30 309
G09F9/30 365
G09F9/00 338
G09F9/30 349Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023088024
(22)【出願日】2023-05-29
(71)【出願人】
【識別番号】502356528
【氏名又は名称】株式会社ジャパンディスプレイ
(74)【代理人】
【識別番号】110001737
【氏名又は名称】弁理士法人スズエ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】平田 教行
(72)【発明者】
【氏名】水越 寛文
(72)【発明者】
【氏名】小亀 平章
【テーマコード(参考)】
3K107
5C094
5G435
【Fターム(参考)】
3K107AA01
3K107BB01
3K107BB08
3K107CC23
3K107CC45
3K107DD23
3K107DD27
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3K107DD96
3K107EE21
3K107EE48
3K107EE49
3K107EE50
3K107FF16
3K107FF17
3K107GG04
3K107GG06
3K107GG12
3K107GG28
5C094AA43
5C094AA44
5C094BA27
5C094CA19
5C094DA07
5C094DA13
5C094FA02
5C094FB01
5C094FB04
5C094FB05
5C094FB15
5C094HA05
5C094HA08
5C094JA20
5G435AA17
5G435BB05
5G435CC09
5G435HH14
5G435KK05
5G435LL04
5G435LL07
5G435LL08
5G435LL17
(57)【要約】
【課題】表示装置の製造コストを削減する。
【解決手段】一実施形態によれば、表示装置の製造方法は、基板の上方に下電極を形成し、前記下電極と重なる開口を有する無機絶縁層を形成し、前記無機絶縁層の上に位置する下部及び前記下部の上に位置し前記下部の側面から突出した上部を含む隔壁を形成した処理基板を用意し、前記開口において前記下電極の上に、発光層を含む有機層を形成し、前記有機層の上に上電極を形成し、前記上電極の上にキャップ層を形成し、前記キャップ層及び前記隔壁を覆う第1封止層を形成し、前記第1封止層を覆う樹脂層を形成し、前記有機層、前記上電極、及び、前記キャップ層を形成する工程は、真空環境下で前記隔壁をマスクとした蒸着工程であり、前記樹脂層を形成する工程は、大気雰囲気下で樹脂材料を塗布する工程を含む。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板の上方に下電極を形成し、前記下電極と重なる開口を有する無機絶縁層を形成し、前記無機絶縁層の上に位置する下部及び前記下部の上に位置し前記下部の側面から突出した上部を含む隔壁を形成した処理基板を用意し、
前記開口において前記下電極の上に、発光層を含む有機層を形成し、
前記有機層の上に上電極を形成し、
前記上電極の上にキャップ層を形成し、
前記キャップ層及び前記隔壁を覆う第1封止層を形成し、
前記第1封止層を覆う樹脂層を形成し、
前記有機層、前記上電極、及び、前記キャップ層を形成する工程は、真空環境下で前記隔壁をマスクとした蒸着工程であり、
前記樹脂層を形成する工程は、大気雰囲気下で樹脂材料を塗布する工程を含む、表示装置の製造方法。
【請求項2】
前記樹脂層を形成する工程は、前記樹脂材料を塗布する工程の後に、大気雰囲気よりも減圧した環境下で前記樹脂材料を乾燥する工程を含む、請求項1に記載の表示装置の製造方法。
【請求項3】
前記樹脂層を形成する工程は、前記樹脂材料を乾燥する工程の後に、大気雰囲気下で前記樹脂材料に紫外線を照射する工程を含む、請求項2に記載の表示装置の製造方法。
【請求項4】
前記樹脂層を形成する工程は、大気雰囲気下で前記樹脂材料に紫外線を照射する工程を含む、請求項1に記載の表示装置の製造方法。
【請求項5】
さらに、前記樹脂層を形成した後に、前記処理基板を加熱する、請求項3に記載の表示装置の製造方法。
【請求項6】
さらに、前記樹脂層を覆う第2封止層を形成し、
前記第2封止層の上にオーバーコート層を形成する、請求項4または5に記載の表示装置の製造方法。
【請求項7】
前記樹脂材料を塗布する工程は、温度が20℃乃至30℃の範囲であり、湿度が40%乃至70%の範囲であり、酸素濃度が20%以上の範囲に調整された大気雰囲気下で行う、請求項1に記載の表示装置の製造方法。
【請求項8】
前記樹脂層を形成する前に、前記第1封止層の上にパターニングしたレジストを形成し、
前記レジストから露出した前記第1封止層、前記キャップ層、前記上電極、及び、前記有機層を順次エッチングにより除去する、請求項1に記載の表示装置の製造方法。
【請求項9】
基板と、
前記基板の上方に配置された下電極と、
前記下電極に重なる開口を有する無機絶縁層と、
前記開口において前記下電極の上に配置され、発光層を含む有機層と、
前記有機層の上に配置された上電極と、
前記上電極の上に配置されたキャップ層と、
前記無機絶縁層の上に配置され前記上電極に接触し導電材料で形成された下部と、前記下部の上に配置され前記下部の側面から突出した上部と、を有し、前記有機層、前記上電極、及び、前記キャップ層を囲む隔壁と、
前記隔壁で囲まれた前記キャップ層の上に配置され、前記隔壁の前記側面に接触し、無機絶縁材料で形成された第1封止層と、を備え、
前記第1封止層は、前記隔壁の上方に延出し、前記隔壁の前記上部から離間している、表示装置。
【請求項10】
さらに、前記第1封止層を覆う樹脂層を備え、
前記樹脂層は、前記上部と前記第1封止層とで囲まれた隙間に充填されている、請求項9に記載の表示装置。
【請求項11】
さらに、前記樹脂層を覆い、無機絶縁材料で形成された第2封止層と、
前記第2封止層の上に配置されたオーバーコート層と、を備えている、請求項10に記載の表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、表示装置及び表示装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、表示素子として有機発光ダイオード(OLED)を適用した表示装置が実用化されている。この表示素子は、薄膜トランジスタを含む画素回路と、画素回路に接続された下電極と、下電極を覆う有機層と、有機層を覆う上電極と、を備えている。有機層は、発光層の他に、正孔輸送層や電子輸送層などの機能層を含んでいる。
表示装置の製造コストを削減することが要求されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000-195677号公報
【特許文献2】特開2004-207217号公報
【特許文献3】特開2008-135325号公報
【特許文献4】特開2009-32673号公報
【特許文献5】特開2010-118191号公報
【特許文献6】国際公開第2018/179308号
【特許文献7】米国特許出願公開第2022/0077251号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、製造コストを削減することが可能な表示装置及び表示装置の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
一実施形態によれば、表示装置の製造方法は、
基板の上方に下電極を形成し、前記下電極と重なる開口を有する無機絶縁層を形成し、前記無機絶縁層の上に位置する下部及び前記下部の上に位置し前記下部の側面から突出した上部を含む隔壁を形成した処理基板を用意し、前記開口において前記下電極の上に、発光層を含む有機層を形成し、前記有機層の上に上電極を形成し、前記上電極の上にキャップ層を形成し、前記キャップ層及び前記隔壁を覆う第1封止層を形成し、前記第1封止層を覆う樹脂層を形成し、前記有機層、前記上電極、及び、前記キャップ層を形成する工程は、真空環境下で前記隔壁をマスクとした蒸着工程であり、前記樹脂層を形成する工程は、大気雰囲気下で樹脂材料を塗布する工程を含む。
【0006】
一実施形態によれば、表示装置は、
基板と、前記基板の上方に配置された下電極と、前記下電極に重なる開口を有する無機絶縁層と、前記開口において前記下電極の上に配置され、発光層を含む有機層と、前記有機層の上に配置された上電極と、前記上電極の上に配置されたキャップ層と、前記無機絶縁層の上に配置され前記上電極に接触し導電材料で形成された下部と、前記下部の上に配置され前記下部の側面から突出した上部と、を有し、前記有機層、前記上電極、及び、前記キャップ層を囲む隔壁と、前記隔壁で囲まれた前記キャップ層の上に配置され、前記隔壁の前記側面に接触し、無機絶縁材料で形成された第1封止層と、を備え、前記第1封止層は、前記隔壁の上方に延出し、前記隔壁の前記上部から離間している。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】
図1は、表示装置DSPの構成例を示す図である。
【
図2】
図2は、副画素SP1、SP2、SP3のレイアウトの一例を示す図である。
【
図3】
図3は、
図2中のA-B線に沿う表示装置DSPの概略的な断面図である。
【
図4】
図4は、表示素子20の一構成例を示す図である。
【
図5】
図5は、製造装置の概要を説明するための図である。
【
図7】
図7は、表示装置DSPの製造方法を説明するためのフローチャートである。
【
図8】
図8は、表示装置DSPの製造方法を説明するための図である。
【
図9】
図9は、表示装置DSPの製造方法を説明するための図である。
【
図10】
図10は、表示装置DSPの製造方法を説明するための図である。
【
図11】
図11は、表示装置DSPの製造方法を説明するための図である。
【
図12】
図12は、表示装置DSPの製造方法を説明するための図である。
【
図13】
図13は、表示装置DSPの製造方法を説明するための図である。
【
図14】
図14は、表示装置DSPの製造方法を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
一実施形態について図面を参照しながら説明する。
開示はあくまで一例に過ぎず、当業者において、発明の主旨を保っての適宜変更について容易に想到し得るものについては、当然に本発明の範囲に含有されるものである。また、図面は、説明をより明確にするため、実際の態様に比べて、各部の幅、厚さ、形状等について模式的に表される場合があるが、あくまで一例であって、本発明の解釈を限定するものではない。また、本明細書と各図において、既出の図に関して前述したものと同一または類似した機能を発揮する構成要素には同一の参照符号を付し、重複する詳細な説明を適宜省略することがある。
【0009】
なお、図面には、必要に応じて理解を容易にするために、互いに直交するX軸、Y軸およびZ軸を記載する。X軸に沿った方向を第1方向Xと称し、Y軸に沿った方向を第2方向Yと称し、Z軸に沿った方向を第3方向Zと称する。第3方向Zと平行に各種要素を見ることを平面視という。
【0010】
本実施形態に係る表示装置は、表示素子として有機発光ダイオード(OLED)を備える有機エレクトロルミネッセンス表示装置であり、テレビ、パーソナルコンピュータ、車載機器、タブレット端末、スマートフォン、携帯電話端末等に搭載され得る。
【0011】
図1は、表示装置DSPの構成例を示す図である。
表示装置DSPは、絶縁性の基板10の上に、画像を表示する表示領域DAと、表示領域DAよりも外側の周辺領域SAと、を有する表示パネルPNLを備えている。基板10は、ガラスであってもよいし、可撓性を有する樹脂フィルムであってもよい。
【0012】
本実施形態においては、平面視における基板10の形状が長方形である。ただし、基板10の平面視における形状は長方形に限らず、正方形、円形あるいは楕円形などの他の形状であってもよい。
【0013】
表示領域DAは、第1方向X及び第2方向Yにマトリクス状に配列された複数の画素PXを備えている。画素PXは、複数の副画素SPを含む。一例では、画素PXは、第1色の副画素SP1、第2色の副画素SP2、及び、第3色の副画素SP3を含む。第1色、第2色、及び、第3色は、互いに異なる色である。なお、画素PXは、副画素SP1、SP2、SP3とともに、あるいは副画素SP1、SP2、SP3のいずれかに代えて、白色などの他の色の副画素SPを含んでもよい。
【0014】
副画素SPは、画素回路1と、画素回路1によって駆動される表示素子20と、を備えている。画素回路1は、画素スイッチ2と、駆動トランジスタ3と、キャパシタ4と、を備えている。画素スイッチ2及び駆動トランジスタ3は、例えば薄膜トランジスタにより構成されたスイッチング素子である。
【0015】
画素スイッチ2のゲート電極は、走査線GLに接続されている。画素スイッチ2のソース電極及びドレイン電極の一方は信号線SLに接続され、他方は駆動トランジスタ3のゲート電極及びキャパシタ4に接続されている。駆動トランジスタ3において、ソース電極及びドレイン電極の一方は電源線PL及びキャパシタ4に接続され、他方は表示素子20のアノードに接続されている。
【0016】
なお、画素回路1の構成は図示した例に限らない。例えば、画素回路1は、より多くの薄膜トランジスタ及びキャパシタを備えてもよい。
【0017】
表示素子20は、発光素子としての有機発光ダイオード(OLED)であり、有機EL素子と称する場合がある。
【0018】
周辺領域SAには、詳述しないが、ICチップやフレキシブルプリント回路基板を接続するための端子が設けられている。
【0019】
図2は、副画素SP1、SP2、SP3のレイアウトの一例を示す図である。
図2の例においては、副画素SP2及び副画素SP3が第2方向Yに並んでいる。副画素SP1及び副画素SP2が第1方向Xに並び、副画素SP1及び副画素SP3が第1方向Xに並んでいる。
【0020】
副画素SP1、SP2、SP3がこのようなレイアウトである場合、表示領域DAには、副画素SP2及び副画素SP3が第2方向Yに交互に配置された列と、複数の副画素SP1が第2方向Yに配置された列とが形成される。これらの列は、第1方向Xに交互に並ぶ。
【0021】
なお、副画素SP1、SP2、SP3のレイアウトは
図2の例に限られない。他の一例として、各画素PXにおける副画素SP1、SP2、SP3が第1方向Xに順に並んでいてもよい。
【0022】
表示領域DAには、無機絶縁層5及び隔壁6が配置されている。無機絶縁層5は、副画素SP1、SP2、SP3においてそれぞれ開口AP1、AP2、AP3を有している。これらの開口AP1、AP2、AP3を有する無機絶縁層5は、リブと称する場合がある。
隔壁6は、平面視において無機絶縁層5と重なっている。隔壁6は、開口AP1、AP2、AP3を囲む格子状に形成されている。隔壁6は、無機絶縁層5と同様に副画素SP1、SP2、SP3において開口を有するということもできる。
【0023】
副画素SP1、SP2、SP3は、表示素子20として、それぞれ表示素子201、202、203を備えている。
【0024】
副画素SP1の表示素子201は、開口AP1とそれぞれ重なる下電極LE1、上電極UE1、及び、有機層OR1を備えている。下電極LE1の周縁部は、無機絶縁層5で覆われている。下電極LE1、有機層OR1、及び、上電極UE1を備える表示素子201は、平面視において隔壁6で囲まれている。有機層OR1及び上電極UE1のそれぞれの周縁部は、平面視において無機絶縁層5に重なっている。有機層OR1は、例えば青波長域の光を放つ発光層を含む。
【0025】
副画素SP2の表示素子202は、開口AP2とそれぞれ重なる下電極LE2、上電極UE2、及び、有機層OR2を備えている。下電極LE2の周縁部は、無機絶縁層5で覆われている。下電極LE2、有機層OR2、及び、上電極UE2を備える表示素子202は、平面視において隔壁6で囲まれている。有機層OR2及び上電極UE2のそれぞれの周縁部は、平面視において無機絶縁層5に重なっている。有機層OR2は、例えば緑波長域の光を放つ発光層を含む。
【0026】
副画素SP3の表示素子203は、開口AP3とそれぞれ重なる下電極LE3、上電極UE3、及び、有機層OR3を備えている。下電極LE3の周縁部は、無機絶縁層5で覆われている。下電極LE3、有機層OR3、及び、上電極UE3を備える表示素子203は、平面視において隔壁6で囲まれている。有機層OR3及び上電極UE3のそれぞれの周縁部は、平面視において無機絶縁層5に重なっている。有機層OR3は、例えば赤波長域の光を放つ発光層を含む。
【0027】
図2の例においては、下電極LE1、LE2、LE3の外形は点線で示し、有機層OR1、OR2、OR3、及び、上電極UE1、UE2、UE3の外形は一点鎖線で示している。なお、図示した下電極、有機層、上電極のそれぞれの外形は、正確な形状を反映したものとは限らない。
【0028】
下電極LE1、LE2、LE3は、例えば、表示素子のアノードに相当する。上電極UE1、UE2、UE3は、表示素子のカソード、あるいは、共通電極に相当する。
【0029】
下電極LE1は、コンタクトホールCH1を通じて副画素SP1の画素回路1(
図1参照)に接続されている。下電極LE2は、コンタクトホールCH2を通じて副画素SP2の画素回路1に接続されている。下電極LE3は、コンタクトホールCH3を通じて副画素SP3の画素回路1に接続されている。
【0030】
図2の例においては、開口AP1の面積、開口AP2の面積、及び、開口AP3の面積は、互いに異なる。開口AP1の面積が開口AP2の面積よりも大きく、開口AP2の面積が開口AP3の面積よりも大きい。換言すると、開口AP1から露出した下電極LE1の面積は開口AP2から露出した下電極LE2の面積よりも大きく、開口AP2から露出した下電極LE2の面積は開口AP3から露出した下電極LE3の面積よりも大きい。
【0031】
図3は、
図2中のA-B線に沿う表示装置DSPの概略的な断面図である。
【0032】
回路層11は、基板10の上に配置されている。回路層11は、
図1に示した画素回路1などの各種回路と、走査線GL、信号線SL、電源線PLなどの各種配線と、を含む。回路層11は、絶縁層12により覆われている。絶縁層12は、回路層11により生じる凹凸を平坦化する有機絶縁層である。
【0033】
下電極LE1、LE2、LE3は、絶縁層12の上に配置され、互いに離間している。無機絶縁層5は、絶縁層12及び下電極LE1、LE2、LE3の上に配置されている。無機絶縁層5の開口AP1は下電極LE1に重なり、開口AP2は下電極LE2に重なり、開口AP3は下電極LE3に重なっている。下電極LE1、LE2、LE3の周縁部は、無機絶縁層5で覆われている。下電極LE1、LE2、LE3のうち、互いに隣接する下電極の間では、絶縁層12が無機絶縁層5により覆われている。下電極LE1、LE2、LE3は、絶縁層12に設けられたコンタクトホールを通じて副画素SP1、SP2、SP3のそれぞれの画素回路1に接続されている。なお、絶縁層12のコンタクトホールは、
図3では省略するが、
図2のCH1、CH2、CH3に相当する。
【0034】
隔壁6は、無機絶縁層5の上に配置された導電性を有する下部(茎)61と、下部61の上に配置された上部(笠)62と、を含む。図の右側に示した隔壁6の下部61は、開口AP1と開口AP2との間に位置している。図の左側に示した隔壁6の下部61は、開口AP2と開口AP3との間に位置している。上部62は、下部61よりも大きい幅を有している。上部62の両端部は、下部61の側面よりも突出している。このような隔壁6の形状は、オーバーハング状と呼ばれる。
【0035】
有機層OR1は、開口AP1を通じて下電極LE1に接触し、開口AP1から露出した下電極LE1を覆うとともに、その周縁部が無機絶縁層5の上に位置している。上電極UE1は、有機層OR1を覆い、下部61に接触している。
【0036】
有機層OR2は、開口AP2を通じて下電極LE2に接触し、開口AP2から露出した下電極LE2を覆うとともに、その周縁部が無機絶縁層5の上に位置している。上電極UE2は、有機層OR2を覆い、下部61に接触している。
【0037】
有機層OR3は、開口AP3を通じて下電極LE3に接触し、開口AP3から露出した下電極LE3を覆うとともに、その周縁部が無機絶縁層5の上に位置している。上電極UE3は、有機層OR3を覆い、下部61に接触している。
【0038】
図3の例においては、副画素SP1はキャップ層CP1及び封止層SE1を有し、副画素SP2はキャップ層CP2及び封止層SE2を有し、副画素SP3はキャップ層CP3及び封止層SE3を有している。キャップ層CP1、CP2、CP3は、それぞれ有機層OR1、OR2、OR3から放たれた光の取り出し効率を向上させる光学調整層としての役割を有している。
【0039】
キャップ層CP1は、上電極UE1の上に配置されている。
キャップ層CP2は、上電極UE2の上に配置されている。
キャップ層CP3は、上電極UE3の上に配置されている。
【0040】
封止層SE1は、キャップ層CP1の上に配置され、隔壁6に接触し、副画素SP1の各部材を連続的に覆っている。
封止層SE2は、キャップ層CP2の上に配置され、隔壁6に接触し、副画素SP2の各部材を連続的に覆っている。
封止層SE3は、キャップ層CP3の上に配置され、隔壁6に接触し、副画素SP3の各部材を連続的に覆っている。
【0041】
封止層SE1、SE2、SE3は、いずれも隔壁6の上方に延出し、隔壁6の上部62から離間している。つまり、封止層SE1、SE2、SE3と上部62との間に隙間GPが形成されている。封止層SE1、SE2、SE3の端部は、上部62から離間している。つまり、隙間GPは、封止層SE1、SE2、SE3のそれぞれの端部の下方で開放されている。
【0042】
なお、有機層OR1、上電極UE1、及び、キャップ層CP1のそれぞれの一部が、副画素SP1の周囲の隔壁6の上に位置していてもよい。但し、これらの部分は、有機層OR1、上電極UE1、及び、キャップ層CP1のうち開口AP1に位置する部分(表示素子201を構成する部分)から離間している。
同様に、有機層OR2、上電極UE2、及び、キャップ層CP2のそれぞれの一部が、副画素SP2の周囲の隔壁6の上に位置していてもよいが、これらの部分は、有機層OR2、上電極UE2、及び、キャップ層CP2のうち開口AP2に位置する部分(表示素子202を構成する部分)から離間している。
同様に、有機層OR3、上電極UE3、及び、キャップ層CP3のそれぞれの一部が、副画素SP3の周囲の隔壁6の上に位置していてもよいが、これらの部分は、有機層OR3、上電極UE3、及び、キャップ層CP3のうち開口AP3に位置する部分(表示素子203を構成する部分)から離間している。
【0043】
封止層SE1、SE2、SE3の端部は、隔壁6の上に位置している。
図3の例においては、副画素SP1、SP2間の隔壁6の上に位置する封止層SE1、SE2の端部同士が離間し、副画素SP2、SP3間の隔壁6の上に位置する封止層SE2、SE3の端部同士が離間している。
【0044】
封止層SE1、SE2、SE3は、樹脂層13によって覆われている。樹脂層13は、隔壁6の上部62と封止層SE1とで囲まれた隙間GP、上部62と封止層SE2とで囲まれた隙間GP、上部62と封止層SE3とで囲まれた隙間GPにそれぞれ充填されている。なお、隙間GPが完全に樹脂層13で満たされずに、隙間GPの一部に空隙が存在する場合があり得る。
樹脂層13は、封止層14によって覆われている。
封止層14は、オーバーコート層15の上に配置されている。
【0045】
無機絶縁層5、封止層SE1、SE2、SE3、及び、封止層14は、例えば、シリコン窒化物(SiNx)、シリコン酸化物(SiOx)、シリコン酸窒化物(SiON)、または、酸化アルミニウム(Al2O3)などの無機絶縁材料で形成されている。
樹脂層13及びオーバーコート層15は、同様の樹脂材料で形成されている。
【0046】
隔壁6の下部61は、導電材料で形成され、上電極UE1、UE2、UE3と電気的に接続されている。隔壁6の上部62は、例えば導電材料によって形成されているが、絶縁材料で形成されもよい。下部61は、上部62とは異なる材料で形成されている。
【0047】
下電極LE1、LE2、LE3は、例えば、インジウム錫酸化物(ITO)などの酸化物導電材料で形成された透明電極と、銀などの金属材料で形成された金属電極とを含む多層体である。
【0048】
有機層OR1は、発光層EM1を含む。有機層OR2は、発光層EM2を含む。有機層OR3は、発光層EM3を含む。発光層EM1、発光層EM2、及び、発光層EM3は、互いに異なる材料で形成されている。一例では、発光層EM1は、青波長域の光を放つ材料によって形成され、発光層EM2は、緑波長域の光を放つ材料によって形成され、発光層EM3は、赤波長域の光を放つ材料によって形成されている。
また、有機層OR1、OR2、OR3の各々は、正孔注入層、正孔輸送層、電子ブロック層、正孔ブロック層、電子輸送層、電子注入層などの複数の機能層を含む。
【0049】
上電極UE1、UE2、UE3は、例えば、マグネシウム及び銀の合金(MgAg)などの金属材料で形成されている。
【0050】
キャップ層CP1、CP2、CP3は、複数の薄膜の多層体である。複数の薄膜は、いずれも透明であり、しかも、互いに異なる屈折率を有している。
【0051】
上記の構成例において、例えば、封止層SE1は第1封止層に相当し、封止層14は第2封止層に相当する。
【0052】
次に、表示素子20の構成例について説明する。
【0053】
図4は、表示素子20の一構成例を示す図である。
図4に示す表示素子20は、上記の表示素子201、202、203のいずれにも相当し得るものである。
なお、ここでは、下電極LEがアノードに相当し、上電極UEがカソードに相当する場合を例に説明する。
【0054】
表示素子20は、下電極LE(LE1、LE2、LE3)と上電極UE(UE1、UE2、UE3)との間に有機層OR(OR1、OR2、OR3)を備えている。
【0055】
有機層ORにおいて、正孔注入層HIL、正孔輸送層HTL、電子ブロック層EBL、発光層EML、正孔ブロック層HBL、電子輸送層ETL、及び、電子注入層EILは、この順に積層されている。
なお、有機層ORは、上記した機能層の他に、必要に応じてキャリア発生層などの他の機能層を含んでいてもよいし、上記した機能層の少なくとも1つが省略されてもよい。
【0056】
発光層EMLは、
図3に示した発光層EM1、EM2、EM3のいずれかに相当する。
【0057】
キャップ層CP(CP1、CP2、CP3)は、第1透明層TL1と、第2透明層TL2と、を含む。第1透明層TL1は、上電極UEの上に配置されている。第1透明層TL1は、上電極UEよりも高い屈折率を有する高屈折率層である。第2透明層TL2は、第1透明層TL1の上に配置されている。第2透明層TL2は、第1透明層TL1よりも小さい屈折率を有する低屈折率層である。封止層SE(SE1、SE2、SE3)は、第2透明層TL2の上に配置されている。なお、キャップ層CPは、省略されてもよい。
【0058】
なお、有機層ORの構成については、図示したように有機層ORが1層の発光層EMLを備える構成に限らず、有機層ORが複数の発光層を備える構成であってもよい。
【0059】
次に、表示装置DSPを製造するための装置について、概略的に説明する。
【0060】
【0061】
基板ストッカー200は、大気雰囲気下で複数の処理基板を収容している。ここでの処理基板とは、表示装置用マザー基板であり、大型の基板の上に複数のパネル部を備えている。パネル部の各々は、処理基板を割断することで取り出される。取り出されたパネル部の各々は、
図1に示した表示パネルPNLに相当し、表示領域DAと、周辺領域SAと、を備えている。
【0062】
インライン型の蒸着装置100は、前処理部101と、加熱部102と、蒸着部103と、を備えている。蒸着装置100については、後に詳述するが、高真空環境下で処理基板の上に蒸着層を形成するように構成されている。
【0063】
CVD(Chemical-Vapor Deposition)装置210は、真空環境下で処理基板の上に無機絶縁材料を堆積して封止層SE1、SE2、SE3、及び、封止層14を形成するように構成されている。なお、CVD装置210の真空度は、蒸着装置100の真空度より低い場合がある。
【0064】
レジスト形成装置220は、大気雰囲気下で封止層SE1、SE2、SE3の上に所定の形状を有するレジストを形成するように構成されている。
【0065】
ウエットエッチング装置230は、大気雰囲気下でレジストをマスクとして蒸着層の一部を除去するように構成されている。
【0066】
ドライエッチング装置240は、真空環境下でレジストをマスクとして蒸着層の一部、封止層SE1、SE2、SE3の一部、及び、封止層14の一部を除去するように構成されている。なお、ドライエッチング装置240の真空度は、蒸着装置100の真空度より低い場合がある。
【0067】
樹脂形成装置250は、樹脂層13及びオーバーコート層15を形成するように構成されている。樹脂形成装置250は、塗布装置251と、乾燥装置252と、硬化装置253と、を備えている。塗布装置251は、大気環境下で樹脂材料を塗布するように構成されている。乾燥装置252は、大気雰囲気よりも減圧された低真空環境下で樹脂材料を乾燥するように構成されている。なお、乾燥装置252は、省略されてもよい。硬化装置253は、樹脂材料の硬化処理を行うように構成されている。一例として、樹脂材料が紫外線硬化型樹脂材料である場合には、硬化装置253は、樹脂材料に紫外線を照射するように構成されている。
【0068】
蒸着装置100、CVD装置210、レジスト形成装置220、ウエットエッチング装置230、ドライエッチング装置240、及び、樹脂形成装置250は、それぞれ詳述しない搬送機構を介して基板ストッカー200に接続されている。
【0069】
図6Aは、
図5に示した蒸着装置100の一構成例を示す図である。
【0070】
蒸着装置100は、例えば、
図4に示した有機層OR、上電極UE、及び、キャップ層CPを連続的に形成する工程で適用される。蒸着装置100に搬入される処理基板SUBは、基板10の上に、回路層11と、絶縁層12と、下電極LE1、LE2、LE3と、無機絶縁層5と、隔壁6と、を有している。
【0071】
蒸着装置100は、前処理部101と、加熱部102と、蒸着部103と、を備えている。蒸着装置100は、詳述しないが搬送機構を介して基板ストッカー200に接続されている。また、蒸着装置100は、搬送機構の一部として、姿勢変換部104を備えている。
【0072】
前処理部101は、搬入された処理基板SUBに対して、プラズマ処理などの各種の前処理を行う機構を備えている。加熱部102は、処理基板SUBに対して加熱処理を行う機構を備えている。
【0073】
姿勢変換部104は、処理基板SUBの姿勢を変換する機構、静電チャックにより処理基板SUBを専用のキャリアに固定する機構、静電チャックによる固定を解除してキャリアから処理基板SUBを取り外す機構などを備えている。一例では、前処理部101及び加熱部102に搬入される処理基板SUBの姿勢は水平姿勢である。前処理部101及び加熱部102から搬出された処理基板SUBの姿勢は、姿勢変換部104において水平姿勢から垂直姿勢に変換される。蒸着部103に搬入される処理基板SUBの姿勢は垂直姿勢である。蒸着部103から搬出された処理基板SUBの姿勢は、姿勢変換部104において垂直姿勢から水平姿勢に変換される。
【0074】
蒸着部103は、複数の蒸着チャンバーEV11乃至EV20と、ローテーションチャンバーR11と、を備えている。前処理部101、加熱部102、姿勢変換部104、複数の蒸着チャンバーEV11乃至EV20、及び、ローテーションチャンバーR11は、互いに接続され、高真空に維持されている。
【0075】
蒸着チャンバーEV11乃至EV15は、一列に並んでいる。蒸着チャンバーEV11は、姿勢変換部104に接続されている。蒸着チャンバーEV15は、ローテーションチャンバーR11に接続されている。搬送路T11は、蒸着チャンバーEV11乃至EV15に亘って設けられている。
【0076】
蒸着チャンバーEV16乃至EV20は、一列に並んでいる。蒸着チャンバーEV16は、ローテーションチャンバーR11に接続されている。蒸着チャンバーEV20は、姿勢変換部104に接続されている。搬送路T12は、蒸着チャンバーEV16乃至EV20に亘って設けられている。
【0077】
蒸着チャンバーEV11は、蒸着源S11を備えている。蒸着源S11は、搬送路T11に向けて、正孔注入層HILを形成するための材料を放射するように構成されている。
蒸着チャンバーEV12は、蒸着源S12を備えている。蒸着源S12は、搬送路T11に向けて、正孔輸送層HTLを形成するための材料を放射するように構成されている。
蒸着チャンバーEV13は、蒸着源S13を備えている。蒸着源S13は、搬送路T11に向けて、電子ブロック層EBLを形成するための材料を放射するように構成されている。
蒸着チャンバーEV14は、蒸着源S14を備えている。蒸着源S14は、搬送路T11に向けて、発光層EMLを形成するための材料を放射するように構成されている。
蒸着チャンバーEV15は、蒸着源S15を備えている。蒸着源S15は、搬送路T11に向けて、正孔ブロック層HBLを形成するための材料を放射するように構成されている。
【0078】
蒸着チャンバーEV16は、蒸着源S16を備えている。蒸着源S16は、搬送路T12に向けて、電子輸送層ETLを形成するための材料を放射するように構成されている。
蒸着チャンバーEV17は、蒸着源S17を備えている。蒸着源S17は、搬送路T12に向けて、電子注入層EILを形成するための材料を放射するように構成されている。
蒸着チャンバーEV18は、蒸着源S18を備えている。蒸着源S18は、搬送路T12に向けて、上電極UEを形成するための材料を放射するように構成されている。
蒸着チャンバーEV19は、蒸着源S19を備えている。蒸着源S19は、搬送路T12に向けて、第1透明層TL1を形成するための材料を放射するように構成されている。
蒸着チャンバーEV20は、蒸着源S20を備えている。蒸着源S20は、搬送路T12に向けて、第2透明層TL2を形成するための材料を放射するように構成されている。
【0079】
ローテーションチャンバーR11は、搬送路T11から搬出された処理基板SUBを搬送路T12に搬出するように構成されている。ローテーションチャンバーR11は、回転機構RM11を備えている。回転機構RM11は、搬送路T11を介して搬入された処理基板SUBを保持し、回転軸A11を中心として回転可能に構成されている。
【0080】
なお、蒸着装置100の構成については、図示した例に限定されるものではない。
【0081】
図6Bは、
図5に示した蒸着装置100の他の構成例を示す図である。
【0082】
図6Bに示す構成例は、
図6Aに示した構成例と比較して、発光層EM1、EM2、EM3をそれぞれ形成するための蒸着チャンバーが設けられた点で相違している。
【0083】
蒸着装置100の蒸着部103において、蒸着チャンバーEV11、EV12、EV13、EV141、EV142、EV143は、一列に並んでいる。蒸着チャンバーEV11は、姿勢変換部104に接続されている。蒸着チャンバーEV143は、ローテーションチャンバーR11に接続されている。
蒸着チャンバーEV15乃至EV20は、一列に並んでいる。蒸着チャンバーEV15は、ローテーションチャンバーR11に接続されている。蒸着チャンバーEV20は、姿勢変換部104に接続されている。
【0084】
蒸着チャンバーEV11の蒸着源S11は、正孔注入層HILを形成するための材料を放射するように構成されている。
蒸着チャンバーEV12の蒸着源S12は、正孔輸送層HTLを形成するための材料を放射するように構成されている。
蒸着チャンバーEV13の蒸着源S13は、電子ブロック層EBLを形成するための材料を放射するように構成されている。
【0085】
蒸着チャンバーEV141の蒸着源S141は、発光層EM1を形成するための材料を放射するように構成されている。
蒸着チャンバーEV142の蒸着源S142は、発光層EM2を形成するための材料を放射するように構成されている。
蒸着チャンバーEV143の蒸着源S143は、発光層EM3を形成するための材料を放射するように構成されている。
蒸着源S141、S142、S143の各々から放射される材料は、互いに異なる色を放つ発光材料である。
【0086】
蒸着チャンバーEV15の蒸着源S15は、正孔ブロック層HBLを形成するための材料を放射するように構成されている。
【0087】
蒸着チャンバーEV16の蒸着源S16は、電子輸送層ETLを形成するための材料を放射するように構成されている。
蒸着チャンバーEV17の蒸着源S17は、電子注入層EILを形成するための材料を放射するように構成されている。
【0088】
蒸着チャンバーEV18の蒸着源S18は、上電極UEを形成するための材料を放射するように構成されている。
蒸着チャンバーEV19の蒸着源S19は、第1透明層TL1を形成するための材料を放射するように構成されている。
蒸着チャンバーEV20の蒸着源S20は、第2透明層TL2を形成するための材料を放射するように構成されている。
【0089】
このような蒸着装置100において、表示素子201を形成する場合には、処理基板SUBが垂直姿勢で搬送されながら、蒸着チャンバーEV11、EV12、EV13、EV141において各材料が順次蒸着される。その後、蒸着チャンバーEV142、EV143においては、処理基板SUBは、材料が蒸着されることなく搬送される。その後、蒸着チャンバーEV15~EV20おいて各材料が順次蒸着される。
【0090】
表示素子202を形成する場合には、処理基板SUBが垂直姿勢で搬送されながら、蒸着チャンバーEV11、EV12、EV13において各材料が順次蒸着される。その後、蒸着チャンバーEV141においては、処理基板SUBは、材料が蒸着されることなく搬送される。その後、蒸着チャンバーEV142においては、材料が蒸着される。その後、蒸着チャンバーEV143においては、処理基板SUBは、材料が蒸着されることなく搬送される。その後、蒸着チャンバーEV15~EV20において各材料が順次蒸着される。
【0091】
表示素子203を形成する場合には、処理基板SUBが垂直姿勢で搬送されながら、蒸着チャンバーEV11、EV12、EV13において各材料が順次蒸着される。その後、蒸着チャンバーEV141、EV142においては、処理基板SUBは、材料が蒸着されることなく搬送される。その後、蒸着チャンバーEV143、EV15~EV20において各材料が順次蒸着される。
【0092】
図6A及び
図6Bに示した各構成例では、蒸着部103は、ローテーションチャンバーR11を備え、処理基板SUBを折り返し搬送するように構成されているが、これに限らない。
【0093】
蒸着装置103は、ローテーションチャンバーR11が省略され、処理基板SUBを一方向に搬送するように構成されてもよい。この場合、例えば、
図6Aに示す構成例では、蒸着チャンバーEV11、EV12、EV13、EV14、EV15、EV16、EV17、EV18、EV19、EV20は、この順に一方向に沿って並んでいる。また、
図6Bに示す構成例では、蒸着チャンバーEV11、EV12、EV13、EV141、EV142、EV143、EV15、EV16、EV17、EV18、EV19、EV20は、この順に一方向に沿って並んでいる。
【0094】
次に、
図7に示すフローチャート、及び、
図8乃至
図14に示す各断面図を参照して、表示装置DSPの製造方法について説明する。なお、
図8乃至
図14においては、絶縁層12よりも下方の図示を省略している。
【0095】
まず、処理基板SUBを用意する(ST1)。処理基板SUBを用意する工程は、絶縁層12の上に、副画素SP1の下電極LE1、副画素SP2の下電極LE2、副画素SP3の下電極LE3を形成する工程と、下電極LE1、LE2、LE3の各々と重なる開口AP1、AP2、AP3を有する無機絶縁層5を形成する工程と、無機絶縁層5の上に位置する下部61及び下部61の上に位置し下部61の側面から突出した上部62を有する隔壁6を形成する工程と、を含む。なお、開口AP1、AP2、AP3を有する無機絶縁層5を形成した後に、隔壁6を形成してもよいし、隔壁6を形成した後に、開口AP1、AP2、AP3を形成してもよい。
図8は、用意した処理基板SUBの断面を示している。
【0096】
続いて、表示素子201を形成する。
【0097】
まず、蒸着装置100に処理基板SUBを搬入し、前処理部101において処理基板SUBに対して所定の前処理を行う(ST11)。その後、必要に応じて、加熱部102において処理基板SUBに対して加熱処理を行い、姿勢変換部104において処理基板SUBを垂直姿勢に変換し、処理基板SUBを蒸着部103に搬入する。
【0098】
そして、蒸着部103において、隔壁6をマスクとした蒸着を行い、処理基板SUBの上に第1蒸着層を形成する(ST12)。すなわち、蒸着チャンバーEV11において下電極LE1の上に正孔注入層HILを形成し、蒸着チャンバーEV12において正孔注入層HILの上に正孔輸送層HTLを形成し、蒸着チャンバーEV13において正孔輸送層HTLの上に電子ブロック層EBLを形成し、蒸着チャンバーEV14において電子ブロック層EBLの上に発光層EMLを形成し、蒸着チャンバーEV15において発光層EMLの上に正孔ブロック層HBLを形成し、蒸着チャンバーEV16において正孔ブロック層HBLの上に電子輸送層ETLを形成し、蒸着チャンバーEV17において電子輸送層ETLの上に電子注入層EILを形成する。これにより、下電極LE1の上に、発光層EM1を含む有機層OR1が形成される。そして、蒸着チャンバーEV18において電子注入層EILの上に上電極UEを形成する。これにより、有機層OR1の上の上電極UE1が形成される。そして、蒸着チャンバーEV19において上電極UEの上に第1透明層TL1を形成し、蒸着チャンバーEV20において第1透明層TL1の上に第2透明層TL2を形成する。これにより、上電極UE1の上のキャップ層CP1が形成される。
有機層OR1、上電極UE1、及び、キャップ層CP1は、第1蒸着層に相当し、蒸着装置100において、真空環境下で連続して形成される。
【0099】
そして、第1蒸着層の上に封止層SE1を形成する(ST13)。すなわち、蒸着部103から処理基板SUBを搬出し、姿勢変換部104において処理基板SUBを水平姿勢に変換し、処理基板SUBをCVD装置210に搬入する。CVD装置210においては、処理基板SUBの上に無機絶縁材料を堆積する。これにより、キャップ層CP1及び隔壁6を連続的に覆う封止層SE1が形成される。
【0100】
図9は、有機層OR1、上電極UE1、キャップ層CP1、及び、封止層SE1が形成された処理基板SUBの断面を示している。
【0101】
有機層OR1、上電極UE1、キャップ層CP1、及び、封止層SE1は、少なくとも表示領域DAの全体に形成され、副画素SP1だけでなく副画素SP2、SP3にも配置されている。有機層OR1、上電極UE1、及び、キャップ層CP1は、オーバーハング状の隔壁6によって分断される。
【0102】
有機層OR1、上電極UE1、及び、キャップ層CP1がそれぞれ蒸着によって形成される際に、蒸着源から放たれた材料は、上部62によって遮られる。このため、上部62の上には、有機層OR1、上電極UE1、及び、キャップ層CP1のそれぞれの一部が積層される。上部62の上に位置する有機層OR1、上電極UE1、及び、キャップ層CP1の各々は、下電極LE1の直上に位置する有機層OR1、上電極UE1、及び、キャップ層CP1から離間している。
封止層SE1は、隔壁6の直上のキャップ層CP1を覆うとともに、下電極LE1の直上のキャップ層CP1を覆い、かつ、隔壁6に接している。
【0103】
続いて、封止層SE1の上に、所定の形状にパターニングされたレジストRSを形成する(ST14)。レジストRSは、レジスト形成装置220で形成される。
図10は、レジストRSが形成された処理基板SUBの断面を示している。
レジストRSは、副画素SP1とその周囲の隔壁6の一部に重なっている。
【0104】
続いて、レジストRSをマスクとしたパターニングを行う(ST15)。パターニングは、ウエットエッチング装置230及びドライエッチング装置240で行われる。レジストRSをマスクとして各種エッチングを行うことにより、レジストRSから露出した封止層SE1、キャップ層CP1、上電極UE1、及び、有機層OR1を順次除去する。
図11は、パターニングを行った処理基板SUBの断面を示している。
このようなパターニングにより、副画素SP2の下電極LE2及び副画素SP3の下電極LE3が露出する。また、図示した例では、隔壁6の上に積層した有機層OR1、上電極UE1、及び、キャップ層CP1は、パターニングの際に除去されている。このため、封止層SE1と隔壁6との間に隙間GPが形成されている。
【0105】
続いて、レジストRSを剥離する(ST16)。これにより、副画素SP1に表示素子201が形成される。
【0106】
続いて、表示素子202を形成する。表示素子202を形成する手順は、表示素子201を形成する手順と同様である。すなわち、表示素子201を形成した処理基板SUBの前処理を行う(ST21)。そして、下電極LE2の上に第2蒸着層を形成する(ST22)。第2蒸着層は、発光層EM2を含む有機層OR2、上電極UE2、及び、キャップ層CP2を有している。そして、封止層SE2を形成する(ST23)。そして、封止層SE2の上にレジストを形成する(ST24)。そして、このレジストをマスクとしたパターニングを行う(ST25)。これにより、レジストから露出した封止層SE2、キャップ層CP2、上電極UE2、及び、有機層OR2が順次除去される。そして、レジストを剥離する(ST26)。
図12は、パターニングを行った処理基板SUBの断面を示している。
このようなパターニングにより、副画素SP2に表示素子202が形成され、副画素SP3の下電極LE3が露出する。また、図示した例では、隔壁6の上に積層した有機層OR2、上電極UE2、及び、キャップ層CP2がパターニングの際に除去されるため、封止層SE2と隔壁6との間に隙間GPが形成されている。
【0107】
続いて、表示素子203を形成する。表示素子203を形成する手順は、表示素子201を形成する手順と同様である。すなわち、表示素子201及び表示素子202を形成した処理基板SUBの前処理を行う(ST31)。そして、下電極LE3の上に第3蒸着層を形成する(ST32)。第3蒸着層は、発光層EM3を含む有機層OR3、上電極UE3、及び、キャップ層CP3を有している。そして、封止層SE3を形成する(ST33)。そして、封止層SE3の上にレジストを形成する(ST34)。そして、このレジストをマスクとしたパターニングを行う(ST35)。これにより、レジストから露出した封止層SE3、キャップ層CP3、上電極UE3、及び、有機層OR3が順次除去される。そして、レジストを剥離する(ST36)。
図13は、パターニングを行った処理基板SUBの断面を示している。
このようなパターニングにより、副画素SP3に表示素子203が形成される。また、図示した例では、隔壁6の上に積層した有機層OR3、上電極UE3、及び、キャップ層CP3がパターニングの際に除去されるため、封止層SE3と隔壁6との間に隙間GPが形成されている。
【0108】
なお、以上の製造工程においては、最初に表示素子201が形成され、次に表示素子202が形成され、最後に表示素子203が形成される場合を想定したが、表示素子201、202、203の形成順はこの例に限られない。
【0109】
続いて、樹脂形成装置250において樹脂層13を形成する。
【0110】
まず、塗布装置251に処理基板SUBを搬入する。塗布装置251では、大気雰囲気下で、封止層SE1、SE2、SE3の上に樹脂材料を塗布する(ST41)。
そして、乾燥装置252に処理基板SUBを搬入する。乾燥装置252では、大気雰囲気よりも減圧した環境に維持される。処理基板SUBが減圧した環境下に置かれることにより、樹脂材料からの水分の発散を促進し、樹脂材料を乾燥する(ST42)。また、同時に、隙間GPに樹脂材料が充填される。
そして、硬化装置253に処理基板SUBを搬入する。そして、大気雰囲気下で、樹脂材料に紫外線を照射する(ST43)。これにより、樹脂材料が硬化する。このような工程により、樹脂層13が形成される。なお、樹脂材料を塗布する工程の後に、乾燥する工程(ST42)を省略して、樹脂材料に紫外線を照射してもよい。
図14は、樹脂層13が形成された処理基板SUBの断面を示している。図示した例では、樹脂層13は、隙間GPに充填され、隙間GPに空隙が存在していない。
【0111】
そして、蒸着装置100の加熱部102に処理基板SUBを搬入する。加熱部102では、処理基板SUBを加熱する(ST44)。これにより、樹脂層13に含まれる水分が除去される。なお、加熱する工程(ST44)は省略してもよい。
【0112】
そして、CVD装置210に処理基板SUBを搬入する。CVD装置210では、無機絶縁材料を堆積し、樹脂層13を覆う封止層14を形成する(ST45)。
【0113】
そして、樹脂形成装置250に処理基板SUBを搬入する。樹脂形成装置250においては、樹脂層13を形成するのと同様にして、封止層SE14の上にオーバーコート層15を形成する(ST46)。
【0114】
そして、ドライエッチング装置240に処理基板SUBを搬入する。ドライエッチング装置240においては、オーバーコート層15をマスクとして、封止層14をパターニングする(ST47)。
【0115】
以上の工程を経て、表示装置DSPが完成する。
【0116】
本実施形態によれば、副画素SP1,SP2,SP3の境界にオーバーハング状の隔壁6が設けられている。このような隔壁6は、蒸着によって形成される有機層OR1、OR2、OR3、上電極UE1、UE2、UE3、及び、キャップ層CP1、CP2、CP3を囲んでいる。また、副画素SP1の表示素子201、副画素SP2の表示素子202、及び、副画素SP3の表示素子203は、隔壁6によってそれぞれ個別に分断されている。このように分断された表示素子201、202、203は、それぞれ封止層SE1,SE2,SE3で個別に封止されている。このため、いずれかの表示素子において水分浸入に起因した不具合が生じた場合であっても、浸入した水分の隣接する表示素子への拡散が抑制される。
【0117】
また、上記のように隣接する表示素子への水分の拡散が抑制される構造においては、隣接する表示素子において有機層が分断されていない構造(比較例)と比較して、許容される樹脂層13の含水量を増大することができる。
【0118】
すなわち、比較例では、封止層にクラック等が生じた場合に、クラックから浸入した水分が複数の表示素子に亘って拡散し、多くの表示素子がダメージを受ける。このため、封止層を覆う樹脂層に関しては、含水量を極めて低くすることが要求される。このため、水分濃度が極めて低い窒素雰囲気、あるいは、クリーンドライエアの雰囲気下で樹脂層を形成する必要がある。一例では、比較例において樹脂層を形成する雰囲気に許容される水分濃度は、100ppm以下である。したがって、比較例においては、窒素雰囲気あるいはクリーンドライエアを生成するための設備が必要となる。
【0119】
一方、本実施形態においては、封止層SE1、SE2、SE3を覆う樹脂層13には、多くの含水量が許容される。このため、樹脂層13を形成するために樹脂材料を塗布する工程は、大気雰囲気下で行うことができる。一例では、樹脂材料を塗布する工程は、温度が20℃乃至30℃の範囲であり、湿度が40%乃至70%の範囲であり、酸素濃度が20%以上の範囲に調整されたクリーンルームの大気雰囲気下で行うことができる。したがって、水分濃度が極めて低い雰囲気を生成するための設備が不要である。また、樹脂層13は、オーバーコート層15を形成する装置と共用化することができる。したがって、製造コストを削減することができる。加えて、製造装置の規模を小型することができ、設備の設置面積を削減することができる。
【0120】
また、樹脂材料を塗布した後に、樹脂材料を硬化させるまでの間に、樹脂材料を減圧乾燥する工程を追加することができる。一例では、減圧乾燥条件は、圧力が100~1000Paの範囲であり、時間が10~150秒の範囲である。これにより、樹脂材料を乾燥するのと同時に、隙間GPに樹脂材料が充填され、隙間GPにおける空隙(気泡)の形成を抑制することができる。なお、塗布する樹脂材料の粘度が小さく、樹脂材料を塗布した段階で樹脂材料が隙間GPに十分に充填可能な場合には、減圧乾燥工程を省略してもよい。
【0121】
大気雰囲気下で塗布される樹脂材料が多くの水分を含むことが懸念される場合、樹脂層を形成した後に、処理基板SUBを加熱する工程を追加することができる。一例では、加熱条件は、温度が90~120℃の範囲であり、圧力が1000Pa以下の範囲であり、時間が3~60分の範囲である。これにより、樹脂層13からの脱水を促進することができる。また、加熱工程は、蒸着装置100に設けられた既存の設備(加熱部102)を利用することができるため、新たに加熱装置を追加する必要がない。このため、製造コストの増加が抑制される。なお、樹脂材料の含水量が十分に低い場合には、加熱工程を省略してもよい。
【0122】
以上説明したように、本実施形態によれば、製造コストを削減することが可能な表示装置及び表示装置の製造方法を提供することができる。
【0123】
以上、本発明の実施形態として説明した表示装置及びその製造方法を基にして、当業者が適宜設計変更して実施し得る全ての表示装置及びその製造方法も、本発明の要旨を包含する限り本発明の範囲に属する。
【0124】
本発明の思想の範疇において、当業者であれば、各種の変形例に想到し得るものであり、それら変形例についても本発明の範囲に属するものと解される。例えば、上述の実施形態に対して、当業者が適宜、構成要素の追加、削除、もしくは設計変更を行ったもの、または、工程の追加、省略もしくは条件変更を行ったものも、本発明の要旨を備えている限り、本発明の範囲に含まれる。
【0125】
また、上述の実施形態において述べた態様によりもたらされる他の作用効果について、本明細書の記載から明らかなもの、または当業者において適宜想到し得るものについては、当然に本発明によりもたらされるものと解される。
【符号の説明】
【0126】
DSP…表示装置 10…基板
5…無機絶縁層 AP1、AP2、AP3…開口
6…隔壁 61…下部 62…上部
SP1、SP2、SP3…副画素
20、201、202、203…表示素子(有機EL素子)
LE、LE1、LE2、LE3…下電極
UE、UE1、UE2、UE3…上電極
OR、OR1、OR2、OR3…有機層
100…蒸着装置
250…樹脂形成装置 251…塗布装置 252…乾燥装置 253…硬化装置