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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024171124
(43)【公開日】2024-12-11
(54)【発明の名称】望遠鏡および宇宙機システム
(51)【国際特許分類】
   G02B 23/04 20060101AFI20241204BHJP
   G02B 23/06 20060101ALI20241204BHJP
   G02B 7/02 20210101ALI20241204BHJP
   G02B 7/04 20210101ALI20241204BHJP
   G02B 7/08 20210101ALI20241204BHJP
   G03B 15/00 20210101ALI20241204BHJP
   G03B 19/06 20210101ALI20241204BHJP
【FI】
G02B23/04
G02B23/06
G02B7/02 Z
G02B7/04 B
G02B7/04 E
G02B7/04 Z
G02B7/08 B
G02B7/08 C
G03B15/00 P
G03B19/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023088025
(22)【出願日】2023-05-29
(71)【出願人】
【識別番号】000104652
【氏名又は名称】キヤノン電子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003281
【氏名又は名称】弁理士法人大塚国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】神津 聡
(72)【発明者】
【氏名】豆白 優太
(72)【発明者】
【氏名】桑木 俊介
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 功拓
【テーマコード(参考)】
2H039
2H044
2H054
【Fターム(参考)】
2H039AA02
2H039AB03
2H039AB14
2H039AC04
2H044AJ06
2H044AJ07
2H044BE04
2H044BE07
2H044BE13
2H044BF03
2H044BF07
2H044DB04
2H044DC02
2H044DD03
2H054BB07
(57)【要約】
【課題】像円径を有効に使用でき、且つ主鏡の形状変化によるピントずれを良好に補正することができる望遠鏡を提供する。
【解決手段】望遠鏡の光軸上に配置され、望遠鏡に入射する光束を複数の光束に分割する複数のミラー平面を有する光束分割手段と、光束分割手段により分割された複数の光束にそれぞれ対応して、複数の光検出器を望遠鏡に装着するための装着手段と、を備える。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
望遠鏡であって、
前記望遠鏡の光軸上に配置され、前記望遠鏡に入射する光束を複数の光束に分割する複数のミラー平面を有する光束分割手段と、
前記光束分割手段により分割された複数の光束にそれぞれ対応して、複数の光検出器を前記望遠鏡に装着するための装着手段と、
を備えることを特徴とする望遠鏡。
【請求項2】
前記光束分割手段は、前記複数のミラー平面を有する1つの光学素子であることを特徴とする請求項1に記載の望遠鏡。
【請求項3】
前記ミラー平面は、前記光軸に対して45°傾いていることを特徴とする請求項1に記載の望遠鏡。
【請求項4】
前記光束分割手段は、前記望遠鏡の光軸に対応する位置に、貫通穴を有することを特徴とする請求項1に記載の望遠鏡。
【請求項5】
前記光束分割手段を前記光軸に沿って移動させることにより前記複数の光検出器に対して同時にフォーカシングを行うフォーカシング手段をさらに備えることを特徴とする請求項4に記載の望遠鏡。
【請求項6】
前記貫通穴を通る光束の結像面に配置された第2の光検出器をさらに備えることを特徴とする請求項5に記載の望遠鏡。
【請求項7】
前記第2の光検出器は、前記フォーカシング手段により、前記光束分割手段と同じ方向に同じ量だけ移動されることを特徴とする請求項6に記載の望遠鏡。
【請求項8】
前記フォーカシング手段は、中空型のモータを備えることを特徴とする請求項5に記載の望遠鏡。
【請求項9】
前記フォーカシング手段は、超音波モータまたはステッピングモータを備えることを特徴とする請求項5に記載の望遠鏡。
【請求項10】
前記複数の光検出器の少なくともいずれかが有する位相差によりピントずれを検出する手段を用いて、前記光束分割手段のフォーカシングのための移動量を算出することを特徴とする請求項5に記載の望遠鏡。
【請求項11】
前記第2の光検出器は、波面センサであることを特徴とする請求項6に記載の望遠鏡。
【請求項12】
前記装着手段は、バヨネット式のマウントを有することを特徴とする請求項1に記載の望遠鏡。
【請求項13】
前記複数のミラー平面が、前記光軸の回りに非対称に配置されていることを特徴とする請求項1に記載の望遠鏡。
【請求項14】
前記光束分割手段の前記光軸に垂直な面にはミラー平面を構成しないことを特徴とする請求項1に記載の望遠鏡。
【請求項15】
請求項1乃至14のいずれか一項に記載の望遠鏡と、
前記望遠鏡で撮影する方向を制御する制御手段と、
を備えることを特徴とする宇宙機システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人工衛星に搭載される望遠鏡に関する。
【背景技術】
【0002】
人工衛星などの宇宙機システムに宇宙望遠鏡を搭載し、この宇宙望遠鏡によって宇宙から地上を観測することが従来より行われている。特に宇宙望遠鏡を搭載する人工衛星は光学衛星と呼ばれている。
【0003】
従来の大型の人工衛星に対して、近年は、超小型(質量10~100kg)、小型(質量100~500kg)の人工衛星の開発が全世界で進められている。輸送ロケットの打ち上げ頻度も上がっており、人工衛星も年間100基以上が打ち上げられている。
【0004】
このように、光学衛星の超小型化、小型化が進められてきていることから、それに搭載される宇宙望遠鏡にも、光学性能が高性能であることはもちろん、軽量、安価、コンパクトといったといった光学性能以外の特性も求められている。
【0005】
宇宙望遠鏡は、光学系と検出器(カメラ)から構成される。現在発表されている超小型あるいは小型の光学衛星に搭載される宇宙望遠鏡は、光学系の口径が80~300mm程度のものが多い。しかし、より高解像に地上を撮像するには、光学系の口径を300mm~700mm程度といったように、より大きくする必要があることが知られている。
【0006】
通常、光学系の口径が100mmを超える望遠鏡では、反射型望遠鏡と言われる鏡を複数枚使った光学系が用いられる。その理由は、屈折レンズを用いた構成では、重量が大きくなり、鏡筒が長くなるのに対して、反射型望遠鏡であれば、軽量かつコンパクトにできるからである。複数枚の鏡からなる反射型望遠鏡は第1の鏡が最大径となり主鏡と呼ばれ、光学系の口径を決めている。主鏡の直径が大きくなっていっても、要求される鏡面の精度は同じである場合が多いため、口径300mm~700mm程度のように大径の主鏡を製作することは、技術的な難度が高い。しかも、この技術的難度を克服して大径の主鏡を精度良く作成できたとしても、主鏡は温度変化により鏡面の形状が変化し、大径であるほどその変化も大きい。主鏡の鏡面形状が変化すると結像位置がずれることになり、ピントずれの原因となる。
【0007】
一方、光学系の口径を大きくすると、光学系の結像面の径を示す像円径も大きくできる。例えば、口径300mm~700mmの宇宙望遠鏡では、50mm~100mm程度の像円径を得ることが可能である。撮像するための検出器には、この像円径の位置にエリアセンサやラインセンサなどの撮像素子が配置される。そのため、像円径が大きくできる場合は、望遠鏡により得られる視野を有効に利用するために、撮像素子の面積も大きくすることが望ましい。
【0008】
しかし、撮像素子は、画素サイズ、光学フィルタの構成、コストなどを考慮した上で、定型サイズのものから選択される場合が多い。そのため、望遠鏡の像円径に対応して、撮像素子の面積を自由に設定することは困難である。例えば、像円径が大きく(つまり像面の面積が大きく)、撮像素子の面積が小さい場合は、光学系により結像される視野を取りこぼすこととなる。この場合、撮像素子を複数並べて像円径を有効に使うことが考えられるが、撮像素子の実装基板が干渉することから、一つの結像平面に複数の撮像素子を隙間なく並べることは困難である。
【0009】
この対策として、例えば、特許文献1には、望遠鏡の光路に鏡を配置し分割することで、2つの撮像素子をそれぞれ異なる空間に配置する構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】国際公開第2014/093769号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、特許文献1に記載の構成の場合、各光学素子が固定的に設置されているため、前述したように、主鏡の温度変化等に起因する形状変化があった場合には、ピントがずれてしまうという問題がある。
【0012】
したがって、本発明は上述した課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、像円径を有効に使用でき、且つ主鏡の形状変化によるピントずれを良好に補正することができる望遠鏡を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明に係わる望遠鏡は、前記望遠鏡の光軸上に配置され、前記望遠鏡に入射する光束を複数の光束に分割する複数のミラー平面を有する光束分割手段と、前記光束分割手段により分割された複数の光束にそれぞれ対応して、複数の光検出器を前記望遠鏡に装着するための装着手段と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、像円径を有効に使用でき、且つ主鏡の形状変化によるピントずれを良好に補正することができる望遠鏡を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の一実施形態の望遠鏡の構成を示す斜視図。
図2】望遠鏡の光学系の断面図。
図3】望遠鏡に検出器系を取り付けた状態を示す断面図。
図4】光学素子の形状を示す図。
図5】検出器系を光軸と垂直な方向から見た図。
図6】検出器系の構成を示す断面図。
図7】光学素子とフォーカシングアクチュエータを抜き出して示した断面図。
図8】フォーカシング駆動部の構成を示すブロック図。
図9】第1の検出器のフォーカシングについて説明する図。
図10】第1の検出器および第4の検出器のフォーカシングについて説明する図。
図11】実施形態の変形例を示す図。
図12】光束が分割される様子を示した図。
図13】望遠鏡が搭載される人工衛星を示した図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の一実施形態について、添付図面を参照して説明する。
【0017】
図1は、本発明の一実施形態の望遠鏡100の構成を示す斜視図である。また、図2は、望遠鏡100の光学系の断面図である。
【0018】
図1図2において、望遠鏡100は、反射型望遠鏡であり、光軸110に沿って互いに対向して配置された凹面鏡からなる主鏡101と、凸面鏡からなる副鏡102とを有する。主鏡101は、主鏡締結部109を介して光学ベンチ107に支持され、副鏡102は、複数の部材からなる副鏡支持部材106により、主鏡101に対して光軸110に沿って所定距離離間した状態で支持されている。なお、この主鏡101と副鏡102だけでは、結像面の全面において収差の十分に少ない良好な画像を得ることができないため、収差を補正するためのレンズ103が副鏡102で反射された光の光路上に配置されている。レンズ103は、3~7枚の屈折レンズを備え、鏡筒103aを介して光学ベンチ107に固定されている。
【0019】
これらの主鏡101、副鏡102、レンズ103は、光軸110を中心に配置されており、これらの光学系により、被写体像が結像面105に結像される。被写体からの光束は、図2における光入射方向として矢印で示すように、左側から望遠鏡100に入射する。つまり、望遠鏡100を地球を観測する宇宙望遠鏡として使用する場合、図2の左側に地球が存在することになる。
【0020】
図2の光入射方向から望遠鏡100に入射した光は、光路111を通過して、主鏡101により光路111aで示すように反射される。光路111aを通過した光は、さらに副鏡102で反射されて、光路111bに沿って進み、レンズ103を介して、光束112として結像面105に結像される。結像面105及びその位置と等価な位置(この等価な位置については後に説明する)に検出器(カメラ)を配置できるよう、光学ベンチ107には、カメラマウント104が配置されている。
【0021】
主鏡101や副鏡102の材料は、ゼロ熱膨張のガラスセラミックスや耐熱ガラスが用いられることが多い。ミラー面には使用する波長域に合わせてアルミや銀や金のコートが施される場合もある。レンズには耐放射線光学ガラスが用いられる場合がある。一般の光学ガラスでは宇宙放射線により400nm近傍の透過率が劣化する現象(ブラウニング現象)が生じる場合があり、この現象を抑制するために耐放射線光学ガラスが用いられる。また、望遠鏡100は、温度変化の影響を受けにくく、かつ、打上げ振動・衝撃に耐える必要がある。そのため、主鏡101や副鏡102の支持部材には、アルミニウム、SUS(ステンレス)、CFRP(炭素繊維強化プラスチック)、ゼロ膨張セラミックスなどの材料が用いられる。
【0022】
以上のように構成される望遠鏡100は、光学ベンチ107に設けられた機械締結部108を介して人工衛星に固定され、地球表面の撮影に用いられる。
【0023】
なお、既に背景技術の欄で説明したように、反射型望遠鏡は、屈折レンズのみで構成される屈折型望遠鏡に比べて、全長(副鏡から結像面までの距離)を短くできることや軽量にできることから、人工衛星に適している。そのため、口径300mm以上などの大きい口径が必要な望遠鏡の場合には、反射型の光学系が多く採用される。
【0024】
図3は、望遠鏡100に検出器系200(複数のカメラ)を取り付けた状態を示す断面図である。
【0025】
望遠鏡100の光学系に対して、カメラマウント(装着手段)104を介して検出器系200が取り付けられている。詳細は後述するが、レンズ103を通過した光束112は、光軸110上(光軸上)に配置された光学素子(光束分割手段)201により、光軸110を中心とする円周を120°間隔で3分割した方向に分割される。この分割された3つの光束により、前述した結像面105と等価な3つの位置に被写体像が結像される。検出器系(光検出器系)200は、これら3つの被写体像を撮像するために、光軸110を取り巻くようにして、120°間隔で配置された第1の検出器(第1のカメラ)241、第2の検出器(第2のカメラ)242、第3の検出器(第3のカメラ)243を備える。また、光軸110上の光学素子201よりも後方(図中右側)には、光学素子201の中央に形成された貫通穴214を通過した光束による被写体像を撮像するための第4の検出器(第4のカメラ)244が配置されている。なお、第1乃至第4の検出器241~244には、それぞれCMOSセンサ等から成る撮像素子が配置されている。
【0026】
この検出器系200の内部構造及び機能について、以下詳細に説明する。
【0027】
図4は、光学素子201の形状を示す図である。
【0028】
図4において、光学素子201は、光軸110の回りに120°間隔で3分割された3つのミラー平面211,212,213を有する。それぞれのミラー平面211,212,213は、光軸に対して45°傾いて形成されており、光学素子201は、全体として三角錐状の形状を有する。この3つのミラー平面211,212,213により、レンズ103を通過した光束112が、光軸110の回りに120°間隔で3方向に分割される。この3分割された光束を第1乃至第3の検出器241~243で撮像することにより、望遠鏡100の視野を円周方向に3つに分割したそれぞれの画像を得ることができる。
【0029】
光学素子201の大きさは、図2の結像面近傍の光束112を十分に包含する大きさに設定する。光学素子201は、3つのミラー平面211,212,213の頂点を中心とする貫通穴214をさらに有しており、この貫通穴214を通過した光束が前述した第4の検出器244により撮像される。また、光学素子201の光軸方向の両端部には、光軸に垂直な平面215,216が形成されている。この光軸に垂直な平面215,216は、ミラー面とはせず、余計な反射を防ぐために、反射防止処理が施されていることが望ましい。なお、光学素子201は、石英、一般光学ガラス、アルミニウム等の金属の何れかで形成され、ミラー平面211,212,213には、使用する波長域に合わせてアルミ、銀、金などのコートが施される。本実施形態では、石英に銀コートを施すものとして説明する。
【0030】
なお、上記の説明では、光学素子201は、光束を光軸110の回りに120°間隔で3分割するように説明したが、3分割に限定されず、2分割や4分割以上でもよい。また、ミラー平面211,212,213は、光軸に対して45°傾いているものとして説明したが、45°以外の角度でもよい。
【0031】
図5は、検出器系200を光軸110と垂直な方向から見た図である。光学素子201には、前述したように、120°間隔でミラー平面211,212,213が形成されていることから、検出器系200には、第1乃至第3の検出器241~243を取り付けるためのカメラマウント231~233(233は不図示)が、光軸110の回りに120°間隔で、ミラー平面211,212,213と同じ位相で設けられている。本実施形態では、検出器として、いわゆるデジタル一眼カメラを用いている。そのため、カメラマウント231~233には、デジタル一眼カメラの交換レンズに配置されているマウントと同じものが取り付けられている。多くのデジタル一眼カメラでは、バヨネット式と呼ばれる締結方式が用いられており、本実施形態でも同様の構成が採用されている。
【0032】
図6は、検出器系200の構成を示す断面図である。この断面図は、光学素子201の1つのミラー平面211に垂直な面で検出器系200を切断した断面を示している。
【0033】
図6において、第1の検出器241がカメラマウント231に取り付けられ、光学素子201のミラー平面211で垂直に反射された光が第1の検出器241に入射する。また、光学素子201の貫通穴214を通過した光が光軸110上に設けられた第4の検出器244に入射する。
【0034】
この状態において、光束112がミラー平面211で反射される点Aから第1の検出器241の撮像面241aまでの距離303と、点Aに対応する光軸110上の点Bから第4の検出器244の撮像面244a(結像面105)までの距離302が等しくなるように設定されている。第2の検出器242及び第3の検出器243の撮像面と、第4の検出器244の撮像面244aの位置関係も同様に設定されている。この構成により、第1乃至第4の検出器241~244の撮像面が、結像面105と等価な位置となり、それぞれの検出器に焦点の合った被写体像が結像される。
【0035】
以上の構成により、検出器系200では、レンズ103を通過した光束112が光学素子201により3方向に反射され、これらの光束と、光学素子201を貫通した1つの光束により、合計4つの被写体像が形成される。つまり、検出器系200は、4つの結像面を有することとなる。
【0036】
なお、詳細は後述するが、検出器系200には、第1乃至第4の検出器241~244の撮像面にピントを合わせるための、フォーカシングアクチュエータ251が配置されている。フォーカシングアクチュエータ251は、光学素子201及び第4の検出器244を光軸110に沿う方向に移動させて、ピント合わせを行う。その原理については後述する。
【0037】
本実施形態では、フォーカシングアクチュエータとして、リング型のピエゾアクチュエータ(超音波モータ)が用いられる。リング型のピエゾアクチュエータでは、無通電においてローター部とステータ部が摩擦で停止されるため、低消費電力であり、かつ、無重量状態において遊びが無い点で、宇宙空間で有効性がある。なお、リング型のピエゾアクチュエータは、デジタルカメラの交換レンズではフォーカシングレンズの駆動系として一般に用いられている。なお、ここでは、フォーカシングアクチュエータとして、リング型のピエゾアクチュエータを用いる場合について説明したが、これに限らず、中空型のモータや、ステッピングモータなどを用いることも可能である。
【0038】
図7は、光学素子201とフォーカシングアクチュエータ251を抜き出して示した断面図である。
【0039】
フォーカシングアクチュエータ251は、ピエゾ駆動部252、ローター(カム環)253、ステータ254、可動部255、ドライバ基板256、支持部材257を備える。ピエゾ駆動部252は中空型であり、光軸110の回りに回転する駆動部である。ピエゾ駆動部252に備えられている回転部に係合してローター253が回転する。ローター253はカム溝を有しているカム環となっている。可動部255は、3つのコロを120°位相で有しており、ローター253、ステータ254と係合している。ローター253の回転により、可動部255が光軸110に沿って移動し、可動部255に固定された光学素子201及び第4の検出器244も一体的に移動される。なお、第4の光検出器244は、波面センサで構成されている。また、ピエゾ駆動部252は、ドライバ基板256により駆動され、かつ、進み量や位置が検出される。本実施形態では、可動部255が光軸110に沿って移動する量は1mm程度である。カム環のカム溝の角度は小さく、トルクとして安定動作することができ、また、人工衛星の打上げ振動・衝撃に対しても安定的である。
【0040】
図8は、本実施形態におけるフォーカシング駆動部の構成を示すブロック図である。
【0041】
本実施形態では、第1の検出器241にはデジタル一眼カメラを用いている。このデジタル一眼カメラのCMOSセンサは位相差検知機能を有しており、かつ、カメラ本体は、位相差からピントずれ量を算出する機能を有している。デジタル一眼カメラは計算したピントずれ量をミッションコントローラ系の計算機からの要求に対して知らせることができ、そのピントずれ量から計算機は光学素子201の移動量をドライバ基板256に指示する。ドライバ基板256は、フォーカシングアクチュエータを駆動して、光学素子201を移動させる。これにより、第1乃至第4の検出器241~244に対するピント合わせが行われる。なお、計算機は、光学系に配置されている温度センサの情報に基づいて、ヒーターのスイッチングや温度調整をする機能も有している。
【0042】
図9は、第1の検出器241のフォーカシングについて説明する図である。
【0043】
図9(a)は、第1の検出器241のCMOSセンサの撮像面241aに対して、ピントが合っている状態を示している。図9(b)は、望遠鏡100の主鏡101、副鏡支持部材106、光学ベンチ107などの温度による膨張/収縮によりピントずれが発生した状態を示す図である。図9(c)は、ピントずれを光学素子201を移動させることで解消した状態を示す図である。
【0044】
図9(b)の状態では、第1の検出器241のCMOSセンサの撮像面241aに対して、ピントずれ量314の分だけ結像面が前側に移動している。それに対し、図9(c)では、光学素子201を光軸110に沿って主鏡101の方向にずらし量324だけ移動させている。この場合、光学素子201を光軸110に沿って移動させることで、光学素子201のミラー平面211が平行移動して光を反射させる位置が変化し、反射位置から撮像面241aまでの光路長を補正できるので、ピントずれを補正することができる。つまり、光学素子201を光軸方向に移動させることで、ピント合わせをすることができる。本実施形態では、第1の検出器241が有する位相差によるピントずれ量の検出機能と、ミッションコントローラ系の計算機の機能により、ピントずれを補正するための光学素子201の移動量を計算することができる。
【0045】
図10は、第1の検出器241および第4の検出器244のフォーカシングについて説明する図である。
【0046】
図10(a)は、第1の検出器241のCMOSセンサの撮像面241aに対して、ピントが合っている状態を示している。図10(b)は、望遠鏡100の主鏡101、副鏡支持部材106、光学ベンチ107などの温度による膨張/収縮によりピントずれが発生した状態を示す図である。図10(c)は、ピントずれを光学素子201及び第4の検出器244を移動させることで解消した状態を示す図である。
【0047】
図10(b)の状態では、第1の検出器241のCMOSセンサの撮像面241aに対して、ピントずれ量314の分だけ結像面が前側に移動している。この場合、第4の検出器244に対するピントも、ピントずれ量314だけずれている。
【0048】
それに対し、図10(c)では、光学素子201及び第4の検出器244を光軸110に沿って主鏡101の方向にずらし量324だけ移動させている。この場合、光学素子201を光軸110に沿って移動させることで、光学素子201のミラー平面211が平行移動して光を反射させる位置が変化し、反射位置から撮像面241aまでの光路長を補正できるので、ピントずれを補正することができる。また、第4の検出器244を光学素子201の移動量と同じだけ移動させているので、第4の検出器244に対するピントずれも同時に補正することができる。
【0049】
つまり、光学素子201及び第4の検出器244を光軸方向に移動させることで、ピント合わせをすることができる。本実施形態では、第1の検出器241が有する位相差によるピントずれ量の検出機能と、ミッションコントローラ系の計算機の機能により、ピントずれを補正するための光学素子201の移動量を計算することができる。
【0050】
なお、上記の説明では、第1の検出器241と第4の検出器244のピントずれの補正について説明したが、ピントずれの主要因は、主鏡101の温度による膨張/収縮であり、光軸110の回りに対称であるため、第2及び第3の検出器242,243のピントずれ量も、第1及び第4の検出器241,244のピントずれ量と一致する。そのため、光学素子201及び第4の検出器244を第1の検出器241のピントずれを補正する量だけ移動させることにより、第1乃至第4の検出器241~244の全てのピントずれ量を補正可能である。
【0051】
図11は、上記の実施形態の変形例を示す図である。
【0052】
上記の実施形態では、光学素子201のミラー平面を、光軸回りに対称に、且つ同位相に配置したが、図11(a)、(b)、(c)に示すように、光学素子201のミラー平面を、光軸回り方向に同位相では無くしたり(等角度で振り分けられていない)、稜線や頂点の位置を光路の中心から偏芯させたりして、光軸回りに非対称にしてもよい。また、使用する検出器の撮像素子のサイズに合わせて、分割する量を変更してもよい。図11(c)のような配置にすると、センササイズの大きな撮像素子を配置しやすい。
【0053】
図12は、光学素子201において、実際に光束が分割される様子を示した図である。
【0054】
図13は、本実施形態で示す望遠鏡100が搭載される人工衛星を示した図である。図8に示す人口衛星バスで姿勢センサと姿勢アクチュエータを用いて、ターゲットとする地上を撮影するように制御する。
【0055】
以上説明したように、上記の実施形態によれば、像円径を有効に使用でき、且つ主鏡の形状変化によるピントずれを良好に補正することができる望遠鏡を実現することができる。
【符号の説明】
【0056】
100 望遠鏡
101 主鏡
102 副鏡
103 レンズ
104 カメラマウント
105 結像面
106 副鏡支持部材
107 光学ベンチ
108 機械締結部
109 主鏡締結部
110 光軸
111 光路
112 光束
200 検出器系
201 光学素子
211,212,213 ミラー平面
214 貫通穴
231,232,233 カメラマウント
251 フォーカシングアクチュエータ
図1
図2
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図4
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図13