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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024171129
(43)【公開日】2024-12-11
(54)【発明の名称】建具
(51)【国際特許分類】
   E06B 7/14 20060101AFI20241204BHJP
   E06B 1/32 20060101ALI20241204BHJP
   E06B 3/26 20060101ALI20241204BHJP
【FI】
E06B7/14
E06B1/32
E06B3/26
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023088035
(22)【出願日】2023-05-29
(71)【出願人】
【識別番号】390005267
【氏名又は名称】YKK AP株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】油谷 祥太
(72)【発明者】
【氏名】谷口 雅洋
(72)【発明者】
【氏名】柚木 一弥
【テーマコード(参考)】
2E011
2E014
2E036
【Fターム(参考)】
2E011CA01
2E011CA06
2E011CB01
2E011CC05
2E014AA03
2E014BA02
2E014BA08
2E014BB01
2E014BB03
2E014BB04
2E014BC02
2E014BD06
2E036RA09
2E036RC03
2E036TA00
(57)【要約】
【課題】排水性を損なうことなく断熱性を向上させること。
【解決手段】金属枠部32と、金属枠部32の内周側となる部分に設けられた樹脂枠部33とを有した下枠12を備える枠体10に障子20が開閉可能に配設され、障子20を構成する下框22は、金属框部43と、金属框部43の内周側となる部分に設けられた樹脂框部44とを有した建具であって、金属枠部32には、枠体10に対して障子20が閉じ位置に配置された場合に金属框部43との間をシールするシール部材2が設けられ、枠体10に対して障子20が閉じ位置に配置された場合に、下枠12、下框22及びシール部材2によって囲まれる部分に上方に開口した溝部50が構成される。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属下枠部と樹脂下枠部とを有した下枠を備える枠体に可動障子が開閉可能に配設され、前記可動障子を構成する下框は、金属下框部と樹脂下框部とを有した建具であって、
前記金属下枠部及び前記金属下框部の少なくとも一方には、前記枠体に対して前記可動障子が閉じ位置に配置された場合に互いの間をシールするタイト材が設けられ、
前記枠体に対して前記可動障子が閉じ位置に配置された場合に、前記下枠、前記下框及び前記タイト材によって囲まれる部分に上方に開口した溝部が構成されることを特徴とする建具。
【請求項2】
前記樹脂下枠部及び前記樹脂下框部は、前記可動障子が前記閉じ位置に配置された場合に前記タイト材よりも上方となる位置において互いに対向する部分を有し、前記溝部は、前記樹脂下枠部及び前記樹脂下框部を含む部分に設けられていることを特徴とする請求項1に記載の建具。
【請求項3】
前記可動障子は、前記枠体に対して面外方向に向けて開放可能となるように支持されていることを特徴とする請求項1に記載の建具。
【請求項4】
前記樹脂下框部においてもっとも室内側に位置する部分は、前記金属下框部においてもっとも室内側に位置する部分と同一の平面上に配置されていることを特徴とする請求項1に記載の建具。
【請求項5】
前記下枠と前記下框との間には、前記金属下枠部と前記金属下框部との間にのみ前記タイト材が設けられ、前記樹脂下枠部と前記樹脂下框部との間には隙間が確保されていることを特徴とする請求項1に記載の建具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建具に関する。
【背景技術】
【0002】
断熱性を考慮した建具では、枠体を構成する枠材や障子を構成する框材として、それぞれ金属によって成形された部分と樹脂によって成形された部分とを有するものが適用されている(例えば、特許文献1参照)。この建具では、下枠の金属部分にタイト材が設けられているとともに、下枠の樹脂部分にタイト材が設けられており、枠体に対して障子が閉じ位置に配置されると、これらのタイト材がそれぞれを下框の室内に臨む見付け面に当接された状態となる。従って、障子が閉じ位置に配置された場合に、下枠と下框との間の水密性及び気密性が確保されることになり、外部の水や空気が室内に進入する事態を防止することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2017-180041号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1に記載された建具では、下框の樹脂部分に結露水等の水が付着すると、樹脂部分に設けたタイト材によって下枠側に案内されることになり、外部へ排出することが困難となる場合がある。
【0005】
本発明は、上記実情に鑑みて、排水性を損なうことなく断熱性を向上させることのできる建具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明に係る建具は、金属下枠部と樹脂下枠部とを有した下枠を備える枠体に可動障子が開閉可能に配設され、前記可動障子を構成する下框は、金属下框部と樹脂下框部とを有した建具であって、前記金属下枠部及び前記金属下框部の少なくとも一方には、前記枠体に対して前記可動障子が閉じ位置に配置された場合に互いの間をシールするタイト材が設けられ、前記枠体に対して前記可動障子が閉じ位置に配置された場合に、前記下枠、前記下框及び前記タイト材によって囲まれる部分に上方に開口した溝部が構成されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、枠体を構成する下枠及び障子を構成する下框として、それぞれ金属によって成形された部分と樹脂によって成形された部分とを有するものを適用しているため、断熱性の点で有利となる。しかも、障子が閉じ位置に配置されている状態では、金属下枠部と金属下框部との間に介在するタイト材によって水密性及び気密性が確保されることになり、室外の水や空気が室内側に進入する事態を防止することができる。さらに、下框の樹脂下框部に付着した結露水等の水は、障子が閉じ位置に配置されている場合、下枠、下框及びタイト材によって囲まれる溝部に収容された状態となる。その後、障子が開放されると、タイト材の上面に滞留した水が室外側に排出される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の実施の形態である建具を室内側から見た姿図である。
図2図1に示した建具の縦断面図である。
図3図1に示した建具の横断面図である。
図4図1に示した建具の要部を拡大して示す縦断面図である。
図5】本発明の変形例1である建具の要部縦断面図である。
図6】本発明の変形例2である建具の要部縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照しながら本発明に係る建具の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、以下においては便宜上、見込み方向及び見付け方向という用語を用いる場合がある。見込み方向とは、図中の矢印Aで示すように、建具の奥行きに沿った方向である。見込み方向に沿った面については見込み面と称する場合がある。見付け方向とは、下枠等のように水平方向に沿って延在するものの場合、見込み方向に直交した上下に沿う方向である。縦枠等のように上下方向に沿って延在するものの場合には、見込み方向に直交した水平に沿う方向を見付け方向という。見付け方向に沿った面については、見付け面と称する場合がある。
【0010】
図1図3は、本発明の実施の形態である建具を示したものである。ここで例示する建具は、枠体10と障子(可動障子)20とを備え、枠体10に対して障子20を室外側に向けて面外方向に押し開くように構成した縦すべり出し窓と称されるものである。枠体10は、上枠11、下枠12、左右の縦枠13,14を四周組することによって構成したものである。上枠11、下枠12、縦枠13,14は、それぞれアルミニウム合金等の金属によって成形した金属枠部と、樹脂によって成形した樹脂枠部とを備えて構成したものである。障子20は、上框21、下框22、左右の縦框23,24を四周組することによって構成した框体の内部に複層ガラス等のパネル25を支持させたものである。上框21、下框22、縦框23,24についても、それぞれアルミニウム合金等の金属によって成形した金属框部と、樹脂によって樹脂框部とを備えて構成してある。四周の金属框部には、それぞれアルミニウム合金等の金属によって成形した押縁40が装着してある。上述した樹脂框部は、押縁40の室内に臨む見付け面に取り付けてある。図には明示していないが、実施の形態の建具では、上枠11の金属枠部30と上框21の金属框部41との間及び下枠12の金属枠部(金属下枠部)32と下框22の金属框部(金属下框部)43との間にそれぞれフリクションステーと称されるリンク機構1が設けてあり、リンク機構1によって障子20が枠体10に対して開閉可能に支持してある。以下、枠体10及び障子20の構成について詳述し、併せて本願発明の特徴部分について説明する。
【0011】
上枠11の金属枠部30は、上金属枠本体30a、上戸当り壁部30b、上樹脂枠嵌合部30cを一体に成形したものである。上金属枠本体30aは、断面が横長となる略長方形の中空状を成すものである。上金属枠本体30aには、室外側、かつ内周側となる縁部に上シール部材30dが装着してある。上戸当り壁部30bは、上金属枠本体30aの内周側、かつ室内側となる縁部から内周側に向けて見付け方向に延在したものである。上戸当り壁部30bの内周側縁部において室外に臨む部分には、シール部材2が装着してある。上戸当り壁部30bの内周側縁部において室内に臨む部分には、内周側に開口した上カバー溝部30eが設けてある。上樹脂枠嵌合部30cは、上金属枠本体30aの外周側、かつ室内側となる縁部から室内側に向けて見込み方向に延在した後、内周側に向けて屈曲したもので、内周側となる縁部に内周側に開口した上嵌合溝30fを有している。
【0012】
上枠11の樹脂枠部31は、上樹脂枠本体31a、上枠カバー部31b、上嵌合板部31c、上取付板部31dを一体に成形したものである。上樹脂枠本体31aは、断面が縦長となる略長方形の中空状を成すものである。上枠カバー部31bは、上樹脂枠本体31aの内周側、かつ室外側となる縁部から室外に向けて見込み方向に延在したものである。上枠カバー部31bには、上カバー突部31e及び溝構成ヒレ部31fが設けてある。上カバー突部31eは、上枠カバー部31bの外周側となる見込み面から外周側に向けて見付け方向に延在したものである。溝構成ヒレ部31fは、上枠カバー部31bの延在縁部から外周側に向けて見付け方向に延在したものである。上嵌合板部31cは、上樹脂枠本体31aの外周側、かつ室内側となる縁部から外周に向けて見付け方向に延在したものである。上取付板部31dは、上樹脂枠本体31aの室内に臨む見付け面の外周側となる部分から室内に向けて見込み方向に延在したものである。この樹脂枠部31は、上カバー突部31eを上カバー溝部30eに嵌合するとともに、上嵌合板部31cを上樹脂枠嵌合部30cの上嵌合溝30fに嵌合させることによって金属枠部30に装着してある。図からも明らかなように、樹脂枠部31を装着した金属枠部30では、上戸当り壁部30bの内周側となる見込み面及びこれよりも室内に位置する部分の見込み面と、上戸当り壁部30bの室内に臨む見付け面とが樹脂枠部31によって覆われた状態となっている。また、シール部材2よりも内周側となる部分には、溝構成ヒレ部31fが見付け方向に沿って配置された状態となる。
【0013】
下枠12の金属枠部32は、下金属枠本体32a、下戸当り壁部32b、下樹脂枠嵌合部32c、水切り板部32dを一体に成形したものである。下金属枠本体32aは、断面が横長となる略長方形の中空状を成すものである。下戸当り壁部32bは、下金属枠本体32aの内周側、かつ室内側となる縁部から室内に向けて延在した後に内周側に向けて見付け方向に延在したものである。下戸当り壁部32bの内周側縁部において室外に臨む部分には、シール部材(タイト材)2が装着してある。下戸当り壁部32bの内周側縁部において室内に臨む部分には、内周側に開口した下カバー溝部32eが設けてある。下樹脂枠嵌合部32cは、下戸当り壁部32bの室内に臨む見付け面の中間部分から室内に向けて延在した後、内周側に向けて屈曲したもので、内周側となる縁部に内周側に開口した下嵌合溝32fを有している。水切り板部32dは、下金属枠本体32aの外周側、かつ室外側となる縁部から室外に向けて見込み方向に延在した後、外周に向けて屈曲した部分を有したものである。
【0014】
下枠12の樹脂枠部(樹脂下枠部)33は、下樹脂枠本体33a、下枠カバー部33b、下取付板部33c、下嵌合板部33dを一体に成形したものである。下樹脂枠本体33aは、見込み方向に沿ってほぼ水平に延在したもので、室外側に位置する縁部及び室内側に位置する縁部がそれぞれ内周側に向けて湾曲している。下枠カバー部33bは、下樹脂枠本体33aの室外側となる縁部から室外に向けて見込み方向に延在したものである。下枠カバー部33bには、下カバー突部33e及び溝構成ヒレ部33fが設けてある。下カバー突部33eは、下枠カバー部33bの外周側となる見込み面において下樹脂枠本体33aとの境界となる部分から外周側に向けて見付け方向に延在したものである。溝構成ヒレ部33fは、下枠カバー部33bの延在縁部から外周側に向けて見付け方向に延在したものである。下取付板部33cは、下樹脂枠本体33aの室内側となる縁部から室内に向けて見込み方向に延在したものである。下嵌合板部33dは、下取付板部33cの外周側となる見込み面において室外側となる部分から外周に向けて見付け方向に延在したものである。この樹脂枠部33は、下カバー突部33eを下カバー溝部32eに嵌合するとともに、下嵌合板部33dを下樹脂枠嵌合部32cの下嵌合溝32fに嵌合させることによって金属枠部32に装着してある。図からも明らかなように、樹脂枠部33を装着した金属枠部32では、下戸当り壁部32bの内周側となる見込み面及びこれよりも室内に位置する部分の見込み面が樹脂枠部33によって覆われた状態となっている。また、シール部材2よりも内周側となる部分には、溝構成ヒレ部33fが見付け方向に沿って配置された状態となる。
【0015】
戸先となる縦枠(以下、区別する場合に戸先枠13という)の金属枠部34は、縦金属枠本体34a、縦戸当り壁部34b、縦樹脂枠嵌合部34cを一体に成形したものである。縦金属枠本体34aは、断面が見込み方向に長手となる長方形の中空状を成すものである。縦戸当り壁部34bは、縦金属枠本体34aの内周側、かつ室内側となる縁部から内周側に向けて見付け方向に延在したものである。縦戸当り壁部34bの内周側縁部において室外に臨む部分には、シール部材2が装着してある。縦戸当り壁部34bの内周側縁部において室内に臨む部分には、内周側に開口した縦カバー溝部34dが設けてある。縦樹脂枠嵌合部34cは、縦金属枠本体34aの外周側、かつ室内側となる縁部から室内側に向けて見込み方向に延在した後、内周側に向けて屈曲したもので、内周側となる縁部に内周側に開口した縦嵌合溝34eを有している。
【0016】
戸先枠13の樹脂枠部35は、縦樹脂枠本体35a、縦枠カバー部35b、縦嵌合板部35c、縦取付板部35dを一体に成形したものである。縦樹脂枠本体35aは、断面が見付け方向に長手となる略長方形の中空状を成すものである。縦枠カバー部35bは、縦樹脂枠本体35aの内周側、かつ室外側となる縁部から室外に向けて見込み方向に延在したものである。縦枠カバー部35bには、縦カバー突部35e及び溝構成ヒレ部35fが設けてある。縦カバー突部35eは、外周側となる見込み面から外周側に向けて見付け方向に延在したものである。溝構成ヒレ部35fは、縦枠カバー部35bの延在縁部から外周側に向けて見付け方向に延在したものである。縦嵌合板部35cは、縦樹脂枠本体35aの外周側、かつ室内側となる縁部から外周に向けて見付け方向に延在したものである。縦取付板部35dは、縦樹脂枠本体35aの室内に臨む見付け面の外周側となる部分から室内に向けて見込み方向に延在したものである。この樹脂枠部35は、縦カバー突部35eを縦カバー溝部34dに嵌合するとともに、縦嵌合板部35cを縦樹脂枠嵌合部34cの縦嵌合溝34eに嵌合させることによって金属枠部34に装着してある。図からも明らかなように、樹脂枠部35を装着した金属枠部34では、縦戸当り壁部34bの内周側となる見込み面及び室内に臨む見付け面が樹脂枠部35によって覆われた状態となっている。また、シール部材2よりも内周側となる部分には、溝構成ヒレ部35fが見付け方向に沿って配置された状態となる。
【0017】
吊元となる縦枠(以下、区別する場合に吊元枠14という)の金属枠部36は、縦金属枠本体36a、縦戸当り壁部36b、縦樹脂枠嵌合部36c、縦カバー溝部36d、縦嵌合溝36eを一体に成形したものである。縦金属枠本体36a、縦戸当り壁部36b、縦樹脂枠嵌合部36c、縦カバー溝部36d、縦嵌合溝36eは、それぞれ戸先枠13の金属枠部34と対称となる形状を有するように構成してある。
【0018】
吊元枠14の樹脂枠部37は、縦樹脂枠本体37a、縦枠13,14カバー部37b、縦嵌合板部37c、縦取付板部37d、縦カバー突部37e、溝構成ヒレ部37fを一体に成形したものである。縦樹脂枠本体37a、縦枠13,14カバー部37b、縦嵌合板部37c、縦取付板部37d、縦カバー突部37e、溝構成ヒレ部37fは、戸先枠13の樹脂枠部35と対称となる形状を有するように構成してある。吊元枠14の樹脂枠部37についても、縦カバー突部37eを縦カバー溝部36dに嵌合するとともに、縦嵌合板部37cを縦樹脂枠嵌合部36cの縦嵌合溝36eに嵌合させることによって金属枠部36に装着してある。樹脂枠部37を装着した金属枠部36では、縦戸当り壁部36bの内周側となる見込み面及び室内に臨む見付け面が樹脂枠部37によって覆われた状態となっている。また、シール部材2よりも内周側となる部分には、溝構成ヒレ部37fが見付け方向に沿って配置された状態となる。
【0019】
図1図3に示すように、上記のように構成した上枠11、下枠12、左右の縦枠13,14は、四周組することによって枠体10を構成する。四周の金属枠部30,32,34,36に装着したアンカー部材3を介して躯体(図示せず)に支持させれば、枠体10を躯体に取り付けることが可能である。それぞれの戸当り壁部30b,32b,34b,36bに設けたシール部材2は、四周で一連となるものである。
【0020】
上框21の金属框部41は、内方中空部41a、外方中空部41b、パネル支持壁部41cを一体に成形したものである。内方中空部41a及び外方中空部41bは、それぞれ断面が略長方形の中空状を成すもので、内方中空部41aの室外側に外方中空部41bが連設するように構成してある。内方中空部41a及び外方中空部41bは、外周側となる見込み面が同一の平面上に位置する一方、内周側となる部分は内方中空部41aが外方中空部41bよりも内周側に突出している。さらに外方中空部41bは、室外側に位置する半部が室内側に位置する半部よりも内周側に突出することによって中間部に段部41dを構成している。内方中空部41aの内周側、かつ室外側となる縁部には、押縁内係合突部41eが設けてあり、外方中空部41bの段部41dには、押縁外係合突部41fが設けてある。押縁内係合突部41e及び押縁外係合突部41fは、上述した押縁40を金属框部41に装着させるためのものである。押縁内係合突部41eは、室外に向けて突出し、押縁外係合突部41fは段部41dの内周側となる縁部から室内に向けて突出したものである。押縁40としては、四周で共通となるものを適用している。具体的に説明すると、押縁40は、押縁内係合突部41e及び押縁外係合突部41fに係合した状態で金属框部41に装着したもので、内方中空部41aの内周側、かつ外周側となる縁部から内周に向けてほぼ見付け方向に沿って延在している。押縁40の室内に臨む見付け面には、後述する樹脂框部42を支持するための嵌合支持部40aが設けてある。パネル支持壁部41cは、外方中空部41bの内周側、かつ室外側となる縁部から内周側に向けて見付け方向に延在したものである。パネル支持壁部41cの内周側縁部において室内に臨む部分には、室内に向けて開口するようにシール材装着部41gが設けてある。
【0021】
上框21の樹脂框部42は、樹脂框部本体42a、嵌合受部42b、溝構成ヒレ部42cを一体に成形したものである。樹脂框部本体42aは、断面が略長方形の中空状を成すものである。嵌合受部42bは、樹脂框部本体42aの室外に臨む見付け面に設けたもので、押縁40の嵌合支持部40aに嵌合することが可能である。溝構成ヒレ部42cは、樹脂框部本体42aの室内側、かつ外周側となる縁部から外周に向けて見付け方向に延在したものである。この樹脂框部42は、嵌合受部42bを嵌合支持部40aに嵌合させることによって押縁40の室内に臨む見付け面から室内に突出する状態で押縁40に取り付けてある。図からも明らかなように、樹脂框部42を装着した金属框部41では、押縁40の室内に臨む見付け面及び内周側となる見込み面から内方中空部41aの内周側となる見込み面までの間が樹脂框部42によって覆われた状態となっている。また、樹脂框部42は、金属框部41のもっとも室内側に位置する内方中空部41aの見付け面に対して溝構成ヒレ部42cが内周側において同一平面上に位置した状態となる。
【0022】
下框22の金属框部43は、内方中空部43a、外方中空部43b、パネル支持壁部43cを一体に成形したもので、段部43d、押縁内係合突部43e、押縁外係合突部43f、シール材装着部43g、押縁40を含めて上框21の金属框部41と対称となる形状を有するように構成してある。同様に、下框22の樹脂框部44は、樹脂框部本体44a、嵌合受部44b、溝構成ヒレ部44cを含めて上框21の樹脂框部42と対称となる形状を有するように構成したもので、嵌合受部44bを嵌合支持部40aに嵌合させることによって押縁40の室内に臨む見付け面から室内に突出する状態で押縁40に取り付けてある。図からも明らかなように、樹脂框部44を装着した金属框部43では、押縁40の室内に臨む見付け面及び内周側となる見込み面から内方中空部43aの内周側となる見込み面までの間が樹脂框部44によって覆われた状態となっている。また、樹脂框部44は、金属框部43のもっとも室内側に位置する内方中空部43aの見付け面に対して溝構成ヒレ部44cが内周側において同一平面上に位置した状態となる。
【0023】
戸先となる縦框(以下、区別する場合に戸先框23という)の金属框部45は、縦金属框本体45a、縦パネル支持壁部45b、縦シールヒレ部45cを一体に成形したものである。縦金属框本体45aは、見込み方向に沿って鉛直に延在した略平板状を成すものである。縦金属框本体45aの室内側に位置する縁部には、見付け方向に沿った見付けヒレ部45dが設けてある。縦金属框本体45aの内周側となる見込み面には、押縁40を装着するための押縁内係合突部45e及び押縁外係合突部45fが設けてある。押縁内係合突部45eは、内周側に向けて突出した後に室外に向けて屈曲したものである。押縁外係合突部45fは、押縁内係合突部45eよりも室外側において内周側に向けて突出した後に室内に向けて屈曲したものである。縦パネル支持壁部45bは、縦金属框本体45aの室外側となる縁部から内周側に向けて見付け方向に延在したものである。縦パネル支持壁部45bの内周側縁部において室内に臨む部分には、室内に向けて開口するようにシール材装着部45gが設けてある。縦シールヒレ部45cは、縦金属框本体45aの室外側となる縁部から外周側に向けて見付け方向に延在したものである。縦シールヒレ部45cの延在縁部には、戸先枠13との間に介在するシール部材45hが装着してある。
【0024】
戸先框23の樹脂框部46は、樹脂框部本体46a、嵌合受部46b、溝構成ヒレ部46cを含めて上框21のものと同様の形状を有したものである。図からも明らかなように、樹脂框部46を装着した金属框部45では、押縁40の室内に臨む見付け面及び内周側となる見込み面から縦金属框本体45aの内周側となる見込み面までの間が樹脂框部46によって覆われた状態となっている。戸先框23の樹脂框部46には、内周側となる見込み面に操作ハンドル26が取り付けられる。図には明示していないが、操作ハンドル26は、適宜操作することにより、戸先枠13と戸先框23との間の錠装置を施解錠動作させるものである。また、樹脂框部46は、金属框部45のもっとも室内側に位置する見付けヒレ部45dの見付け面に対して溝構成ヒレ部46cが内周側において同一平面上に位置した状態となる。
【0025】
吊元となる縦框(以下、区別する場合に吊元框24という)の金属框部47は、図3及び図4に示すように、縦金属框本体47a、縦パネル支持壁部47b、縦シールヒレ部47c、見付けヒレ部47d、押縁内係合突部47e、押縁外係合突部47f、シール材装着部47gを一体に成形したものである。縦金属框本体47a、縦パネル支持壁部47b、縦シールヒレ部47c、押縁内係合突部47e、押縁外係合突部47f、シール材装着部47gは、戸先框23の金属框部45と対称となる形状を有するように構成してある。縦シールヒレ部47cの延在縁部には、吊元枠14との間に介在するシール部材47hが装着してある。
【0026】
吊元框24の樹脂框部48は、樹脂框部本体48a、嵌合受部48b、溝構成ヒレ部48cを含めて戸先框23の樹脂枠部46と対称の形状を有するように構成してある。図からも明らかなように、樹脂框部48を装着した金属框部47では、押縁40の室内に臨む見付け面及び内周側となる見込み面から縦金属框本体47aの内周側となる見込み面までの間が樹脂框部48によって覆われた状態となっている。また、樹脂框部48は、金属框部47のもっとも室内側に位置する見付けヒレ部47dの見付け面に対して溝構成ヒレ部48cが内周側において同一平面上に位置した状態となる。
【0027】
上記のように構成した上框21、下框22、左右の縦框23,24は、四周組するとともに、それぞれのパネル支持壁部41c,43c,45b,47bと四周の押縁40との間にシール部材25a,25bを介してパネル25の縁部を支持することにより、障子20を構成する。この障子20は、リンク機構1を介して枠体10に開閉可能に支持してあり、枠体10に対して閉じ位置に配置した場合、上述した図示せぬ錠装置が噛み合った状態となることで閉じ位置に保持される。この状態においては、室外側において、上枠11に設けた上シール部材30dが上框21に当接するとともに、戸先框23に設けたシール部材45hが戸先枠13に当接し、かつ吊元框24に設けたシール部材47hが吊元枠14に当接した状態となる。また、室内側においては、枠体10の各戸当り壁部30b,32b,34b,36bに装着した一連となるシール部材2が上框21、下框22、左右の縦框23,24においてそれぞれの金属框部41,43,45,47の室内に臨む見付け面に当接した状態となる。従って、雨水等の室外の水や室外の空気が室内に進入する事態を防止することが可能となる。特に、実施の形態では、シール部材2が樹脂框部42,44,46,48に接触することなく成形精度の高い金属框部41,43,45,47のみに接触させるようにしているため、シール部材2を隙間無く圧接させることが可能となり、枠体10と障子20との間の水密性及び気密性の点で一層有利となる。特に、シール部材2よりも内周側となる部分に溝構成ヒレ部31f,33f,35f,37fが見付け方向に沿って配置された状態となっているため、シール部材2が外部から視認し難い状況にあり、外観品質の点でも有利となる。
【0028】
さらに、障子20が閉じ位置に配置された状態においては、下枠12の樹脂枠部33に設けた溝構成ヒレ部33fと下框22の樹脂框部44に設けた溝構成ヒレ部44cとが互いに対向し、シール部材2、溝構成ヒレ部33f、溝構成ヒレ部44cによって囲まれる部分に上方に開口した溝部50が構成されることになる。しかも、下框22の室内に臨む部分については、金属框部43と樹脂框部44とがほぼ同一の平面上に位置した状態となるとともに、樹脂枠部33と樹脂框部44との間には隙間が確保してある。従って、例えば障子20に結露が生じたとしても下框22の樹脂框部44に付着した結露水は、室内に臨む見付け面からそのまま溝部50に収容される。これにより、結露水が下枠12の内周側となる見込み面に滴下するおそれがなく、室内側に漏水する事態を防止することができる。なお、溝部50としては、シール部材2の上面が下枠12の内周側となる見込み面に対してわずかに下方、例えば1mm程度下方となってさえいれば、十分であり、上述の効果を奏することが可能である。溝部50に収容された結露水等の水は、障子20を開放した際に溝部50が拡開することになり、室外側に排出される。図中の符号51は、下枠12の内周側となる見込み面に設けた排水キャップ、符号52は、下枠12の下戸当り壁部32bにおいて下樹脂枠嵌合部32cよりも上方となる部分に設けた排水バルブである。従って、下枠12に生じた結露水については、排水キャップ51及び排水バルブ52を通じて室外に排出されることになる。
【0029】
なお、上述した実施の形態では、下框22の樹脂框部44において室内に臨む見付け面を平坦状に構成し、かつ金属框部43においてもっとも室内側に位置する部分と同一の平面上に位置するようにしているが、本発明はこれに限定されない。例えば、図5に示す変形例1では、溝形成ヒレ部144c及び樹脂框部(樹脂下框部)144において室内に臨む見付け面の外周側半部144aが内周側半部144bよりも室内側に突出するように構成し、かつこの樹脂框部144の外周側半部144aが金属框部43においてもっとも室内側に位置する部分と同一の平面上に位置するように金属框部43に装着している。また、図6に示す変形例2では、樹脂框部(樹脂下框部)244の室内に臨む見付け面を平坦状に構成するとともに、溝構成ヒレ部244cの外周側縁部を室内に向けて屈曲するように構成し、かつ屈曲した部分244dが金属框部43においてもっとも室内側に位置する部分と同一の平面上に位置するように金属框部43に装着している。これらの変形例1及び変形例2においても、樹脂框部144,244においてもっとも室内側に位置する部分が、金属框部43においてもっとも室内側に位置する部分を超えて室内側に突出していないため、例えば障子20に結露が生じたとしても下框22の樹脂框部144,244に付着した結露水が、室内に臨む見付け面からそのまま溝部50に収容されることになり、結露水が下枠12の内周側となる見込み面に到達するおそれがない。なお、変形例1及び変形例2において実施の形態と同様の構成については同一の符号が付してある。
【0030】
また、上述した実施の形態では、縦すべり出し窓を例示しているが、枠体に対して障子が開閉可能に配設されたものであればその他の建具にも適用することが可能である。この場合、障子の框が押縁を備えたものである必要もない。
【0031】
さらに、上述した実施の形態では、溝部50としてシール部材2、樹脂框部44、樹脂枠部33のみで構成しているため、外気温度が低い場合にも溝部50に貯留した水が凝固する事態を招来するおそれがないが、金属框部43や金属枠部32が一部含まれるように溝部を構成しても良い。
【0032】
またさらに、下枠12の金属枠部32と下框22の金属框部43との間をシールするタイト材2として金属枠部32に設けたものを例示しているが、金属框部43にタイト材を設けても良い。
【0033】
さらに、下枠として金属下枠部の内周側となる部分に樹脂下枠部を有し、かつ下框として金属下框部の内周側に樹脂下框部を有したものを例示しているが、本発明はこれらに限定されない。
【0034】
以上のように、本発明に係る建具は、金属下枠部と樹脂下枠部とを有した下枠を備える枠体に可動障子が開閉可能に配設され、前記可動障子を構成する下框は、金属下框部と樹脂下框部とを有した建具であって、前記金属下枠部及び前記金属下框部の少なくとも一方には、前記枠体に対して前記可動障子が閉じ位置に配置された場合に互いの間をシールするタイト材が設けられ、前記枠体に対して前記可動障子が閉じ位置に配置された場合に、前記下枠、前記下框及び前記タイト材によって囲まれる部分に上方に開口した溝部が構成されることを特徴としている。
この発明によれば、枠体を構成する下枠及び障子を構成する下框として、それぞれ金属によって成形された部分と樹脂によって成形された部分とを有するものを適用しているため、断熱性の点で有利となる。しかも、障子が閉じ位置に配置されている状態では、金属下枠部と金属下框部との間に介在するタイト材によって水密性及び気密性が確保されることになり、室外の水や空気が室内側に進入する事態を防止することができる。さらに、下框の樹脂下框部に付着した結露水等の水は、障子が閉じ位置に配置されている場合、下枠、下框及びタイト材によって囲まれる溝部に収容された状態となる。その後、障子が開放されると、タイト材の上面に滞留した水が室外側に排出される。
【0035】
また本発明は、上述した建具において、前記樹脂下枠部及び前記樹脂下框部は、前記可動障子が前記閉じ位置に配置された場合に前記タイト材よりも上方となる位置において互いに対向する部分を有し、前記溝部は、前記樹脂下枠部及び前記樹脂下框部を含む部分に設けられていることを特徴としている。
この発明によれば、樹脂下枠部を含む部分に溝部が設けてあるため、外気温度が低い場合にも溝部に貯留された水が凝固する事態を防止することが可能となる。
【0036】
また本発明は、上述した建具において、前記可動障子は、前記枠体に対して面外方向に向けて開放可能となるように支持されていることを特徴としている。
この発明によれば、可動障子を開放した際に溝部が拡開することになり、貯留した水をより確実に室外側に排出することができる。
【0037】
また本発明は、上述した建具において、前記樹脂下框部においてもっとも室内側に位置する部分は、前記金属下框部においてもっとも室内側に位置する部分と同一の平面上に配置されていることを特徴としている。
この発明によれば、樹脂下框部が金属下框部を超えて室内側に突出しないため、下框に付着した結露水をより確実に溝部に落下させることが可能となる。
【0038】
また本発明は、上述した建具において、前記下枠と前記下框との間には、前記金属下枠部と前記金属下框部との間にのみ前記タイト材が設けられ、前記樹脂下枠部と前記樹脂下框部との間には隙間が確保されていることを特徴としている。
この発明によれば、成形精度の高い金属下枠と金属下框部との間にのみタイト材を設けるようにしているため、水密性及び気密性をより確実に確保することができる。
【符号の説明】
【0039】
1 リンク機構、2 シール部材、10 枠体、12 下枠、20 障子、22 下框、32 金属枠部、33 樹脂枠部、33f 溝構成ヒレ部、43 金属框部、43a 内方中空部、44,144,244 樹脂框部、44c,144c,244c 溝構成ヒレ部、 50 溝部
図1
図2
図3
図4
図5
図6