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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024171133
(43)【公開日】2024-12-11
(54)【発明の名称】筒型防振装置
(51)【国際特許分類】
   F16F 1/38 20060101AFI20241204BHJP
   F16F 15/08 20060101ALI20241204BHJP
   B60G 7/02 20060101ALI20241204BHJP
【FI】
F16F1/38 S
F16F15/08 K
F16F1/38 F
B60G7/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023088041
(22)【出願日】2023-05-29
(71)【出願人】
【識別番号】000219602
【氏名又は名称】住友理工株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000110321
【氏名又は名称】トヨタ車体株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001966
【氏名又は名称】弁理士法人笠井中根国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100103252
【弁理士】
【氏名又は名称】笠井 美孝
(74)【代理人】
【識別番号】100147717
【弁理士】
【氏名又は名称】中根 美枝
(72)【発明者】
【氏名】佐柄 克哉
(72)【発明者】
【氏名】水崎 雅薫
(72)【発明者】
【氏名】松村 浩幸
(72)【発明者】
【氏名】西郷 和隆
【テーマコード(参考)】
3D301
3J048
3J059
【Fターム(参考)】
3D301AA29
3D301AA76
3D301CA04
3D301DA96
3D301DB02
3J048AA01
3J048BA19
3J048BD06
3J048BD07
3J048EA17
3J059AA04
3J059AD04
3J059AE10
3J059BA42
3J059BA73
3J059BC01
3J059BC06
3J059CA14
3J059CB02
3J059DA15
3J059EA14
3J059GA04
(57)【要約】
【課題】ばね特性や耐久性等の要求性能を満たしつつ、インナ軸部材側の連結対象部材への取付面を大きな自由度で設定できる、新規な構造の筒型防振装置を提供する。
【解決手段】インナ軸部材16とアウタ筒部材18とが、互いに径方向に離隔して内外挿状態で配されて本体ゴム弾性体20で連結された筒型防振装置10であって、インナ軸部材16には、本体ゴム弾性体20から突出した軸方向端部の外周面において軸方向に広がる装着面26が形成されていると共に、装着面26に開口する取付孔32が形成されている一方、インナ軸部材16の軸方向端部に対して装着面26に向けて側方から組み付けられた取付用部材14を有しており、取付用部材14にはインナ軸部材16の装着面26側に突出して取付孔32へ圧入固定される筒状固定部54が形成されていると共に、取付用部材14における装着面26と反対側には連結対象部材76への取付面50が形成されている。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
連結対象部材の各一方に取り付けられるインナ軸部材とアウタ筒部材とが、互いに径方向に離隔して内外挿状態で配されて本体ゴム弾性体で連結された筒型防振装置であって、
前記インナ軸部材には、前記本体ゴム弾性体から突出した軸方向端部の外周面において軸方向に広がる装着面が形成されていると共に、該装着面に開口する取付孔が形成されている一方、
該インナ軸部材の軸方向端部に対して該装着面に向けて側方から組み付けられた取付用部材を有しており、
該取付用部材には該インナ軸部材の該装着面側に突出して該取付孔へ圧入固定される筒状固定部が形成されていると共に、該取付用部材における該装着面と反対側には前記連結対象部材への取付面が形成されている筒型防振装置。
【請求項2】
前記取付用部材の前記取付面は、前記インナ軸部材の前記装着面よりも軸直角方向で幅広とされている請求項1に記載の筒型防振装置。
【請求項3】
前記インナ軸部材の軸方向中間部が前記本体ゴム弾性体に固着された柱状部とされており、前記取付用部材の前記取付面が該柱状部よりも側方外側まで突出している請求項1又は2に記載の筒型防振装置。
【請求項4】
前記取付用部材の前記筒状固定部には、外周へ突出する環状の圧入突部が形成されている請求項1又は2に記載の筒型防振装置。
【請求項5】
前記取付孔は、前記装着面側の開口が該装着面と反対側の開口よりも大径とされている請求項1又は2に記載の筒型防振装置。
【請求項6】
前記装着面と前記取付用部材との重ね合わせ面間には隙間が設けられている請求項1又は2に記載の筒型防振装置。
【請求項7】
請求項1又は2に記載の筒型防振装置によって前記連結対象部材を防振連結させた防振連結体の製造方法であって、
前記連結対象部材への取付前の前記筒型防振装置の製造工程において、前記インナ軸部材の前記取付孔に対して前記取付用部材の前記筒状固定部を予め設定された圧入位置まで圧入することで組み付ける一次圧入工程と、
該筒型防振装置の前記連結対象部材への取付工程において、前記インナ軸部材の前記取付孔に対して前記取付用部材の前記筒状固定部を予め設定された締結力で追加圧入することで目的とする圧入固定状態を実現する最終圧入工程と
を、含む防振連結体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、自動車のサスペンションブッシュ等に用いられる筒型防振装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、自動車のサスペンションブッシュ等に用いられる筒型防振装置が知られている。筒型防振装置は、例えば特開2021-142801号公報(特許文献1)に開示されているように、連結対象部材の各一方に取り付けられるインナ軸部材とアウタ筒部材とが、互いに径方向に離隔して内外挿状態で配されて、本体ゴム弾性体で相互に連結された構造を有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2021-142801号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1のインナ軸部材は、軸方向端部が扁平な板状とされており、当該軸方向端部に厚さ方向で貫通する取付孔が形成された構造とされている。そして、インナ軸部材の軸方向端部が連結対象部材に重ね合わされており、取付孔に挿通されるボルトによってインナ軸部材が連結対象部材に固定されるようになっている。
【0005】
特許文献1のような軸方向端部が板状のインナ軸部材は、例えば、円柱部材の軸方向端部を鍛造や切削によって扁平に加工することで形成される。それゆえ、インナ軸部材の軸方向端部における連結対象部材との重ね合わせ面は、サイズや形状が円柱部材のサイズや形状によって制限されている。しかも、本体ゴム弾性体に固着されるインナ軸部材の軸方向中間部分の外径寸法は、筒型防振装置の外径寸法、ばね特性、耐久性等の要求性能に応じて設定されていることから、当該円柱部材の外径寸法を自由に大きくすることも難しく、インナ軸部材の連結対象部材との重ね合わせ面のサイズや形状等を大きな自由度で設定することも難しかった。
【0006】
本発明の解決課題は、ばね特性や耐久性等の要求性能を満たしつつ、インナ軸部材側の連結対象部材への取付面を大きな自由度で設定することができる、新規な構造の筒型防振装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
以下、本発明を把握するための好ましい態様について記載するが、以下に記載の各態様は、例示的に記載したものであって、適宜に互いに組み合わせて採用され得るだけでなく、各態様に記載の複数の構成要素についても、可能な限り独立して認識及び採用することができ、適宜に別の態様に記載の何れかの構成要素と組み合わせて採用することもできる。それによって、本発明では、以下に記載の態様に限定されることなく、種々の別態様が実現され得る。
【0008】
第一の態様は、連結対象部材の各一方に取り付けられるインナ軸部材とアウタ筒部材とが、互いに径方向に離隔して内外挿状態で配されて本体ゴム弾性体で連結された筒型防振装置であって、前記インナ軸部材には、前記本体ゴム弾性体から突出した軸方向端部の外周面において軸方向に広がる装着面が形成されていると共に、該装着面に開口する取付孔が形成されている一方、該インナ軸部材の軸方向端部に対して該装着面に向けて側方から組み付けられた取付用部材を有しており、該取付用部材には該インナ軸部材の該装着面側に突出して該取付孔へ圧入固定される筒状固定部が形成されていると共に、該取付用部材における該装着面と反対側には前記連結対象部材への取付面が形成されているものである。
【0009】
本態様に従う構造とされた筒型防振装置によれば、インナ軸部材の装着面に別体の取付用部材を組み付けることにより、インナ軸部材側の連結対象部材への取付面の形状や大きさを、インナ軸部材の外径等によって制限されることなく、大きな自由度で設定することができる。それゆえ、例えば、インナ軸部材における本体ゴム弾性体の固着部分を要求されるばね特性、耐久性、筒型防振装置の最大外径等を考慮して設定しながら、連結対象部材への取付面の面積を大きく確保することも可能となる。
【0010】
取付用部材は、インナ軸部材の装着面に開口する取付孔に圧入固定される筒状固定部を備えていることから、インナ軸部材に対して簡単に組み付けることができる。なお、取付用部材をインナ軸部材に固定するための取付孔を、連結対象部材をインナ軸部材に固定するためのボルト孔として利用することもできる。
【0011】
第二の態様は、第一の態様に記載された筒型防振装置において、前記取付用部材は、前記インナ軸部材の前記座面よりも軸直角方向で幅広とされているものである。
【0012】
本態様に従う構造とされた筒型防振装置によれば、インナ軸部材の座面では実現不可能な幅広な取付面を得ることができる。また、取付面が幅広とされることによって、インナ軸部材が連結対象部材に対して周方向に捩られるような入力に対して、より大きな耐荷重性能を実現することができる。
【0013】
第三の態様は、第一又は第二の態様に記載された筒型防振装置において、前記インナ軸部材の軸方向中間部が前記本体ゴム弾性体に固着された柱状部とされており、前記取付用部材の前記取付面が該柱状部よりも側方外側まで突出しているものである。
【0014】
本態様に従う構造とされた筒型防振装置によれば、インナ軸部材の装着面を柱状体に対する切削や鍛造によって形成する場合に、装着面が柱状部の外周面よりも側方内側に位置するが、取付用部材が装着面に組み付けられることにより、連結対象部材への取付面を装着面よりも側方外側に位置させることができる。
【0015】
第四の態様は、第一~第三の何れか1つの態様に記載された筒型防振装置において、前記取付用部材の前記筒状固定部には、外周へ突出する環状の圧入突部が形成されているものである。
【0016】
本態様に従う構造とされた筒型防振装置によれば、圧入突部の外周への突出高さや軸方向の長さによって、筒状固定部の取付孔への圧入に必要な力の大きさを調節することができる。また、筒状固定部における圧入突部を軸方向で外れた部分は、取付孔の内周面から内周へ離隔することから、傷等が生じ難い。
【0017】
第五の態様は、第一~第四の何れか1つの態様に記載された筒型防振装置において、前記取付孔は、前記装着面側の開口が該装着面と反対側の開口よりも大径とされているものである。
【0018】
本態様に従う構造とされた筒型防振装置によれば、取付孔の装着面側の開口が大きくされていることにより、取付用部材の筒状固定部の外周面と取付孔の内周面との圧入面積を確保し易くなって、抜け抗力を大きく設定し易くなる。また、取付孔の装着面と反対側の開口が小さくされていることにより、例えば、取付孔を連結対象部材に固定するためのボルト孔として利用する場合に、ボルト又はナットの座面を確保し易くなる。
【0019】
第六の態様は、第一~第五の何れか1つの態様に記載された筒型防振装置において、前記装着面と前記取付用部材との重ね合わせ面間には隙間が設けられているものである。
【0020】
本態様に従う構造とされた筒型防振装置によれば、筒型防振装置が連結対象部材に取り付けられる前の単体状態において、インナ軸部材の装着面と取付用部材とが押し当てられて意図しない応力が作用したり損傷したりするのを防ぐことができる。
【0021】
第七の態様は、防振連結体の製造方法であって、第一~第六の何れか1つの態様に記載の筒型防振装置によって前記連結対象部材を防振連結させた防振連結体の製造方法であって、(a)前記連結対象部材への取付前の前記筒型防振装置の製造工程において、前記インナ軸部材の前記取付孔に対して前記取付用部材の前記筒状固定部を予め設定された圧入位置まで圧入することで組み付ける一次圧入工程と、(b)該筒型防振装置の前記連結対象部材への取付工程において、前記インナ軸部材の前記取付孔に対して前記取付用部材の前記筒状固定部を予め設定された締結力で追加圧入することで目的とする圧入固定状態を実現する最終圧入工程とを、含むものである。
【0022】
本態様に従う防振連結体の製造方法によれば、筒型防振装置の製造工程において、インナ軸部材の装着面と取付用部材との干渉を防ぐことができて、インナ軸部材及び取付用部材に対する意図しない応力の作用や損傷の発生等が防止される。
【0023】
また、インナ軸部材を連結対象部材に取り付ける際の締結力を利用して、取付用部材の筒状固定部をインナ軸部材の取付孔に追加圧入することにより、最終圧入工程を筒型防振装置の連結対象部材への取付工程によって兼ねることができる。それゆえ、特別に最終圧入工程を要することなく、取付用部材をインナ軸部材に対して目的とする最終的な圧入固定状態とすることができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、ばね特性や耐久性等の要求性能を満たしつつ、インナ軸部材側の連結対象部材への取付面を大きな自由度で設定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本発明の第一の実施形態としてのトレーリングアームブッシュを示す斜視図
図2図1に示すトレーリングアームブッシュの平面図
図3図2のIII-III断面図
図4図1に示すトレーリングアームブッシュを構成するブッシュ本体の斜視図
図5図4に示すブッシュ本体の平面図
図6図5のVI-VI断面図
図7図1に示すトレーリングアームブッシュを構成する取付用部材の平面図
図8図7に示す取付用部材の正面図
図9図8に示す取付用部材の右側面図
図10図9のX-X断面図
図11A図5に示すブッシュ本体のインナ軸部材に対して図7に示す取付用部材を圧入する一次圧入工程を説明する断面図であって、受け治具に取付用部材をセットした状態を示す図
図11B図5に示すブッシュ本体のインナ軸部材に対して図7に示す取付用部材を圧入する一次圧入工程を説明する断面図であって、取付用部材がセットされた受け治具に対してインナ軸部材をセットした状態を示す図
図11C図5に示すブッシュ本体のインナ軸部材に対して図7に示す取付用部材を圧入する一次圧入工程を説明する断面図であって、受け治具にセットされたインナ軸部材に対して押し治具をセットした状態を示す図
図11D図5に示すブッシュ本体のインナ軸部材に対して図7に示す取付用部材を圧入する一次圧入工程を説明する断面図であって、一次圧入工程を完了した状態を示す図
図12図1に示すトレーリングアームブッシュの車両への装着状態を示す断面図
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0027】
図1図3には、本発明に従う構造とされた筒型防振装置の第一の実施形態として、自動車用のトレーリングアームブッシュ10が示されている。トレーリングアームブッシュ10は、ブッシュ本体12に取付用部材14,14が組み付けられた構造を備えている。以下の説明では、原則として、上下方向とは図3中の上下方向を、前後方向とは図2中の上下方向を、左右方向とはブッシュ本体12の軸方向である図2中の左右方向を、それぞれ言う。
【0028】
ブッシュ本体12は、図4図6にも示すように、インナ軸部材16とアウタ筒部材18とが、本体ゴム弾性体20によって径方向で相互に連結された構造を有している。インナ軸部材16は、例えば鉄やアルミニウム合金等の金属材料の如き硬質材で形成されており、例えば鍛造や鋳造によって形成され得る。インナ軸部材16は、図6に示すように、中央部分が略円柱形状の柱状部22とされていると共に、柱状部22の軸方向両側には、それぞれ板状取付部24が一体的に設けられている。
【0029】
板状取付部24は、上下方向に対して略直交して広がる平板状とされており、軸方向の内側端部が柱状部22と一体で連続していると共に、軸方向の外側端面が円弧状に湾曲した形状とされて、軸方向外側に向けて幅狭となっている。板状取付部24は、厚さ方向の両面がそれぞれ上下方向と略直交して軸方向に広がる平面とされており、上面が取付用部材14との重ね合わせ面である装着面26とされていると共に、下面が後述するナット86と重ね合わされる座面28とされている。本実施形態では、これら上下面(装着面及び座面)26,28が、互いに平行に広がる平面形状とされており、軸方向の各中央部分は略一定の幅寸法をもって軸方向に延びている。また、装着面26は、柱状部22の上端よりも下方に位置しており、座面28は、柱状部22の下端よりも上方に位置している。板状取付部24と柱状部22との接続部分は、柱状部22側へ向けて上下方向で次第に厚肉となっている。本実施形態では、一対の板状取付部24,24の左右長さ寸法が車両側の締結位置に合わせるために相互に異なっていることから、インナ軸部材16の向きを特定可能として後述する車両ボデー76への取付方向の間違いを防ぐ目的で、長さ寸法が大きい一方の板状取付部24にのみ、外側端面から突出する角状突部30が設けられている。
【0030】
板状取付部24には、板厚方向である上下方向に貫通する取付孔32が形成されている。取付孔32は、円形孔であって、上部が大径圧入部34とされていると共に、下部が小径挿通部36とされており、大径圧入部34が小径挿通部36よりも大径とされている。従って、取付孔32の上部を構成する大径圧入部34が板状取付部24の上面である装着面26に開口していると共に、取付孔32の下部を構成する小径挿通部36が板状取付部24の下面である座面28に開口しており、取付孔32の装着面26における開口が座面28における開口よりも大径とされている。換言すれば、取付孔32の下側の開口部分は、内周へ向けて突出する環状の内方突出部38が板状取付部24と一体で設けられていることによって小径化されている。そして、取付孔32の内周面には、貫通方向の途中において貫通方向と略直交して広がる段差面40が、内方突出部38の上面によって形成されている。本実施形態の取付孔32は、大径圧入部34の上下長さ寸法が、小径挿通部36の上下長さ寸法よりも大きくされている。また、大径圧入部34の上端開口部には、面取り加工が施されており、上方へ向けて拡開するテーパ面42が全周に亘って形成されている。
【0031】
板状取付部24は、例えば、切削によって形成されている。即ち、インナ軸部材16は、金属の鍛造や鋳造によって形成された円柱体の軸方向両端部分の上下両側を切削加工して、上下方向において扁平とすることで形成されている。従って、板状取付部24の最大外径寸法(前後方向の幅寸法)は、柱状部22の外径寸法以下とされており、本実施形態では柱状部22の外径寸法と略同じとされている。なお、板状取付部24は、例えば、鍛造によって円柱体の軸方向端部を上下方向で潰して扁平化することにより形成することもできる。
【0032】
アウタ筒部材18は、例えば鉄やアルミニウム合金等の金属材料の如き硬質材で形成されており、薄肉大径の略円筒形状とされている。アウタ筒部材18の内径寸法は、インナ軸部材16における柱状部22の外径寸法よりも大きくされている。アウタ筒部材18は、インナ軸部材16の柱状部22よりも軸方向の長さが短くされている。
【0033】
インナ軸部材16とアウタ筒部材18は、軸方向の中央を略一致させた状態で内外挿配置されており、インナ軸部材16の柱状部22に対してアウタ筒部材18が径方向間に隙間を持って外挿されている。そして、それらインナ軸部材16の柱状部22とアウタ筒部材18の径方向間には、本体ゴム弾性体20が形成されている。本実施形態では、インナ軸部材16の柱状部22とアウタ筒部材18とが、何れも略一定の径寸法で軸方向にストレートに延びており、径方向の対向面間において略一定の断面形状をもって軸方向に連続して延びるように、本体ゴム弾性体20の配設空間が設けられている。尤も、インナ軸部材16の柱状部22とアウタ筒部材18との径方向対向面やそこに配設される本体ゴム弾性体20の具体的形状等は限定されるものでない。
【0034】
本体ゴム弾性体20は、径方向に延びる一対のゴム脚44,44を備えており、それらゴム脚44,44の内周側の端部がインナ軸部材16の柱状部22の外周面に加硫接着されていると共に、外周側の端部がアウタ筒部材18の内周面に加硫接着されている。これにより、インナ軸部材16とアウタ筒部材18は、本体ゴム弾性体20によって径方向で弾性連結されている。インナ軸部材16の柱状部22は、軸方向の両端部が本体ゴム弾性体20の一対のゴム脚44,44に対して軸方向の外方へ突出して露出しており、インナ軸部材16の一対の板状取付部24,24は、本体ゴム弾性体20から軸方向の両外側へ突出している。
【0035】
本体ゴム弾性体20における一対のゴム脚44,44の周方向間には、軸方向に貫通する一対のすぐり孔46,46が形成されている。各すぐり孔46には、すぐり孔46内へ向けて突出するストッパゴム48が形成されており、ストッパゴム48を介したインナ軸部材16とアウタ筒部材18の当接によって、インナ軸部材16とアウタ筒部材18の径方向での相対変位量が制限されている。なお、本実施形態では、一対のゴム脚44,44がインナ軸部材16に対して上下両側に位置していると共に、一対のすぐり孔46,46及び一対のストッパゴム48,48がインナ軸部材16に対して左右両側に位置している。
【0036】
取付用部材14は、鉄やアルミニウム合金等の金属材料で形成されており、図7図10に示すように、略一定の小判型断面で上下方向に延びた形状を有している。取付用部材14の上下両面は、何れも上下方向と略直交して広がる平面とされており、上面が後述する車両ボデー76に重ね合わされる取付面50とされている。取付用部材14の取付面50は、前後方向の幅寸法W1が、左右方向の長さ寸法L1よりも大きくされており、平面視において前後方向において左右方向よりも長尺の小判形とされている。
【0037】
取付用部材14の前後幅寸法は、インナ軸部材16の板状取付部24の前後幅寸法よりも大きくされている。また、取付用部材14の左右長さ寸法は、板状取付部24の左右長さ寸法よりも小さくされている。取付用部材14の中央部分には、図7図10に示すように、上下方向に貫通するボルト挿通孔52が形成されている。ボルト挿通孔52は、インナ軸部材16の板状取付部24に形成された取付孔32の小径挿通部36と略同じか僅かに大きい径寸法とされている。
【0038】
取付用部材14は、図8図10に示すように、ボルト挿通孔52の下側開口の周縁部から下方へ向けて突出する筒状固定部54を備えている。筒状固定部54は、略円筒形状とされており、図10に示すように、下端の開口内面が面取りされて下方へ向けて大径となっている。筒状固定部54には、上下方向の中間部分において外周へ突出する環状の圧入突部56が形成されている。圧入突部56は、筒状固定部54の外周面から突出して設けられており、圧入突部56の形成部分において筒状固定部54が部分的に厚肉となっている。圧入突部56は、上側の側面が下方に向けて外周へ傾斜する上テーパ面58とされており、下側の側面が下方に向けて内周へ傾斜する下テーパ面60とされている。従って、圧入突部56は、突出先端へ向けて上下方向で次第に幅狭となる先細断面形状とされている。圧入突部56は、上テーパ面58と下テーパ面60の間の突出先端面62が、上下方向において略一定の径寸法でストレートに延びる円筒面とされている。圧入突部56の突出先端面62の外径寸法、即ち、圧入突部56の最大外径寸法は、インナ軸部材16の取付孔32における大径圧入部34の内径寸法よりも僅かに大きくされている。また、筒状固定部54における圧入突部56を上下外方に外れた上下両端部分は、外径寸法が大径圧入部34の内径寸法よりも小さくされている。
【0039】
図1図3に示すように、ブッシュ本体12のインナ軸部材16には、軸方向両側の板状取付部24,24の各装着面26に向けて、それぞれ取付用部材14が側方である上方から組み付けられている。即ち、図3に示すように、取付用部材14からインナ軸部材16の装着面26に向けて突出する筒状固定部54が、圧入突部56においてインナ軸部材16の板状取付部24を貫通する取付孔32の大径圧入部34に圧入固定されることにより、取付用部材14がインナ軸部材16に組み付けられている。かかる取付用部材14のインナ軸部材16への組付け状態において、取付用部材14の取付面50は、取付用部材14におけるインナ軸部材16の装着面26への重ね合わせ面とは反対側に位置しており、装着面26に対して上方へ突出した位置に配置されている。また、取付用部材14の上面である取付面50は、インナ軸部材16の柱状部22の上端よりも上方に突出して位置している。
【0040】
図2に示すように、取付用部材14における取付面50の前後幅寸法W1は、インナ軸部材16における装着面26の前後幅寸法W2よりも大きくされて幅広とされており、インナ軸部材16に組み付けられた取付用部材14は、取付面50の前後両端部分が装着面26よりも前後方向の両外側へ突出している。本実施形態では、取付面50の前後幅寸法W1が、インナ軸部材16における板状取付部24の前後幅寸法よりも大きくされており、取付面50の前後両端部分が板状取付部24よりも前後方向の両外側まで突出している。取付面50の前後幅寸法W1は、装着面26の前後幅寸法W2に対して、120%以上であることが望ましく、より好適には150%以上とされる。また、取付用部材14における取付面50の左右長さ寸法L1は、インナ軸部材16における装着面26の左右長さ寸法L2よりも小さくされている。取付面50の左右長さ寸法L1は、好適には、装着面26の左右長さ寸法L2の60%以上とされる。取付用部材14における取付面50の面積は、インナ軸部材16における装着面26の面積よりも大きいことが望ましい。
【0041】
ところで、取付用部材14は、筒状固定部54が予め設定された圧入位置まで取付孔32へ圧入されることで、インナ軸部材16に組み付けられている。本実施形態において、取付用部材14は、筒状固定部54の下部が取付孔32の大径圧入部34に圧入されていると共に、筒状固定部54の上部が取付孔32に差し入れられることなく板状取付部24よりも上方に突出している。このように、筒状固定部54が予め設定された圧入位置まで取付孔32の大径圧入部34に圧入されることによって、取付用部材14がインナ軸部材16に組み付けられている。これにより、取付用部材14の下面が、インナ軸部材16の板状取付部24の装着面26に対して、上方に離隔して対向配置されており、それら取付用部材14の下面とインナ軸部材16の装着面26との間に隙間63が形成されている。
【0042】
このようなインナ軸部材16の取付孔32に対する取付用部材14の仮圧入による組付けは、トレーリングアームブッシュ10の車両装着前の製造工程における図11A図11Dに図示した一次圧入工程によって実現される。
【0043】
すなわち、一次圧入工程では、先ず、図11Aに示すように、受け治具64に対して取付用部材14をセットする。受け治具64は、取付用部材14を挿入可能な第一凹部66が、上面に開口して形成されており、第一凹部66の中央部分には取付用部材14のボルト挿通孔52に挿通可能なピン状部68が上方へ突出して形成されている。ピン状部68の突出高さ寸法は、第一凹部66の深さ寸法よりも大きくされており、受け治具64における第一凹部66の外周壁部よりも上方へ突出している。ピン状部68は、先端部分が基端部分よりも僅かに小径とされている。そして、取付用部材14のボルト挿通孔52及び筒状固定部54の内孔に対してピン状部68を挿通して、取付用部材14を受け治具64の第一凹部66に差し入れる。なお、取付用部材14は、受け治具64へのセット状態において、上下が逆向きとされており、筒状固定部54が上方へ向けて突出していることから、図11A図11Dを用いた一次圧入工程の説明では、他の図面を用いたトレーリングアームブッシュ10の説明とは、取付用部材14及びインナ軸部材16の上下が逆になる。
【0044】
次に、図11Bに示すように、受け治具64に対してブッシュ本体12のインナ軸部材16をセットする。即ち、インナ軸部材16の取付孔32に対して、受け治具64のピン状部68を挿入して、インナ軸部材16を受け治具64にセットされた取付用部材14に対して上方に配置する。インナ軸部材16は、取付用部材14と同様に、上下逆向きに受け治具64にセットされる。ピン状部68は、小径とされた先端部分の外径寸法が、インナ軸部材16の取付孔32における小径挿通部36の内径寸法に対して僅かに小さくされており、大径とされた基端部分の外径寸法が小径挿通部36の内径寸法に対して僅かに大きくされている。インナ軸部材16は、例えば、取付孔32の大径圧入部34の開口部分が筒状固定部54における圧入突部56の下テーパ面60に当接することで、取付用部材14に対して上方に保持される。
【0045】
次に、図11Cに示すように、受け治具64及びインナ軸部材16に対して、押し治具70がセットされる。押し治具70は、下面に開口する第二凹部72を備えている。第二凹部72は、インナ軸部材16の板状取付部24を挿入可能な大きさ及び形状とされている。また、押し治具70は、第二凹部72の上底壁部を中央部分において上下方向に貫通するピン挿通孔74を備えている。ピン挿通孔74は、受け治具64のピン状部68の先端部分を挿入可能とされた円形孔であって、押し治具70の第二凹部72に板状取付部24が差し入れられた状態において、取付孔32の小径挿通部36と略同じ内径寸法を有している。インナ軸部材16の板状取付部24は、第二凹部72の上底壁面に当接状態で重ね合わされている。
【0046】
次に、図11Dに示すように、押し治具70を受け治具64に上下方向で接近変位させることにより、インナ軸部材16の板状取付部24を取付用部材14に上下方向で接近させて、取付用部材14の筒状固定部54をインナ軸部材16の取付孔32の大径圧入部34へ圧入固定する。
【0047】
本実施形態の筒状固定部54は、大径圧入部34に圧入される圧入突部56が上下方向の中間部分に設けられており、圧入突部56に対する上下両側の外径寸法が大径圧入部34の内径寸法よりも小さくされている。これにより、筒状固定部54の取付孔32への圧入に際して、筒状固定部54の圧入先端部分を取付孔32の大径圧入部34へ容易に挿入することが可能であり、圧入作業が容易とされる。また、筒状固定部54の大径圧入部34への圧入時に生じる金属粉が、筒状固定部54の圧入先端面と取付孔32の段差面40との間に詰まると、適切な位置までの圧入が阻害されるおそれもあるが、筒状固定部54の圧入基端部分と大径圧入部34との径方向間の隙間に金属粉が収容されることで、金属粉が圧入位置に影響するのを回避することができる。
【0048】
また、圧入突部56の両側面が上下外側へ向けて内周へ傾斜する上下のテーパ面58,60とされており、圧入突部56における上下のテーパ面58,60と突出先端面62との成す角が鈍角とされていることから、取付孔32の内周面に対するエッジ部分の噛み込み等が発生し難い。また、圧入突部56の圧入先端側の側面が下テーパ面60とされていることから、圧入突部56の側面が取付孔32(大径圧入部34)の開口縁部に引っ掛かるのも防止されている。本実施形態では、大径圧入部34の開口縁部がテーパ状に面取りされた拡開形状とされていることから、圧入突部56の引っ掛かりがより発生し難くなっている。
【0049】
図11Dの圧入工程では、取付用部材14がインナ軸部材16における板状取付部24の装着面26に当接することなく、予め設定された圧入位置まで圧入されて、装着面26から離れた状態で組み付けられている。かかる一次圧入工程での圧入位置は、受け治具64と押し治具70とがインナ軸部材16及び取付用部材14を外れた部位において上下方向で相互に当接することによって設定される。
【0050】
かくの如き構造とされたトレーリングアームブッシュ10は、図12に示すように、インナ軸部材16が一方の連結対象部材である車両ボデー76に取り付けられると共に、アウタ筒部材18が他方の連結対象部材であるトレーリングアーム78のアームアイ80に圧入固定される。これにより、トレーリングアームブッシュ10が車両に装着されて、車両ボデー76とトレーリングアーム78とをトレーリングアームブッシュ10によって相互に防振連結させた防振連結体82が構成される。
【0051】
一次圧入工程において取付用部材14が仮圧入状態で組み付けられたインナ軸部材16は、取付用部材14の取付面50が車両ボデー76に重ね合わされて、取付孔32及びボルト挿通孔52に挿通されたボルト84とボルト84に螺着されるナット86とによって締結されることにより、車両ボデー76に固定されている。ここにおいて、車両ボデー76への取付工程において、ボルト84とナット86による締結力が、インナ軸部材16と取付用部材14とを相互に接近させる方向に及ぼされることから、取付用部材14の筒状固定部54が、当該締結力の作用によってインナ軸部材16の取付孔32に追加圧入される。このように、トレーリングアームブッシュ10の車両ボデー76への取付工程が、取付用部材14のインナ軸部材16に対する目的とする圧入固定状態を実現する最終圧入工程を兼ねている。
【0052】
トレーリングアームブッシュ10の製造工程における一次圧入工程では、取付用部材14の筒状固定部54がインナ軸部材16の取付孔32に対して、取付用部材14がインナ軸部材16の装着面26から離れた状態で仮圧入されることから、車両へ装着される前のトレーリングアームブッシュ10単体において、インナ軸部材16及び取付用部材14に対して当接による損傷や意図しない応力の作用を防ぐことができる。また、取付用部材14の筒状固定部54をインナ軸部材16の取付孔32に対して目的とする最終的な圧入位置まで追加圧入する最終圧入工程は、トレーリングアームブッシュ10を車両へ取り付ける通常の取付工程を行うことで完了することから、取付用部材14とインナ軸部材16の組付工程数が増えることもない。
【0053】
このようなトレーリングアームブッシュ10の車両ボデー76への取付け状態において、取付用部材14がインナ軸部材16における板状取付部24の装着面26に当接状態で重ね合わされている。また、取付用部材14における筒状固定部54の突出先端面(下面)は、最終的な圧入固定状態においても、段差面40から上方に離隔している。なお、筒状固定部54の突出先端面は寸法公差等によって段差面40に当接する場合があってもよいが、取付用部材14とインナ軸部材16の装着面26との当接が阻害されないように、寸法公差の範囲内で0タッチ又は離隔状態となるように筒状固定部54の軸方向長さと取付孔32の大径圧入部34の長さとが設定される。
【0054】
車両ボデー76に重ね合わされる取付面50は、インナ軸部材16とは別部材で圧入固定された取付用部材14によって構成されている。それゆえ、取付面50の大きさや形状は、インナ軸部材16の大きさや形状によって制限され難く、大きな自由度で設定することができる。これにより、例えば、インナ軸部材16の柱状部22の外径寸法を大きくすることなく、車両ボデー76に対する取付面50の面積を大きく得ることが可能となる。従って、アームアイ80によって外径寸法が制限されたトレーリングアームブッシュ10において、本体ゴム弾性体20の自由長を確保して、ばね特性や耐久性を適切に設定しながら、車両ボデー76に対する取付強度の確保や、車両ボデー76と取付面50との重ね合わせ部分に作用する応力の分散化等が図られる。
【0055】
本実施形態の取付用部材14は、前後方向においてインナ軸部材16の装着面26よりも幅広とされて、装着面26よりも前後方向の外側へ突出していることから、装着面26が車両ボデー76に直接重ね合わされる場合に比して、車両ボデー76への取付面50の面積を大きく得ることができる。しかも、インナ軸部材16に対してねじり方向の力が作用する場合に、前後方向で幅広の取付面50によって、インナ軸部材16のモーメントを効率よく受けることができて、耐荷重性の確保が容易になる。
【0056】
取付用部材14は、図12に示すインナ軸部材16に対する最終的な圧入状態において、上面である取付面50がインナ軸部材16の柱状部22よりも側方外側(上側)まで突出して位置している。このように、取付用部材14がインナ軸部材16の板状取付部24に重ね合わされた状態で組み付けられていることによって、取付面50の上下方向での位置を取付用部材14の厚さ寸法によって大きな自由度で調節可能であり、特にインナ軸部材16単体では難しい柱状部22より更に上方に設定することも可能となる。それゆえ、例えば、車両ボデー76に対するインナ軸部材16の締結位置が重ね合わせ方向で異なる複数種類の車両に対してトレーリングアームブッシュ10を取り付ける場合に、厚さ寸法の異なる取付用部材14を適宜に選択して採用することで、ブッシュ本体12を共通としながら、インナ軸部材16を車両ボデー76に締結することができる。
【0057】
取付用部材14の筒状固定部54は、インナ軸部材16の取付孔32に対して、圧入突部56の形成部分だけが圧入されている。これにより、圧入突部56の外周への突出高さや軸方向の長さ等を調節することで、取付用部材14をインナ軸部材16の取付孔32に圧入する際に必要な力の大きさや、取付用部材14のインナ軸部材16に対する圧入固定強度を、簡単に設定することができる。従って、インナ軸部材16を車両ボデー76に取り付ける際の締結力によって、取付用部材14の筒状固定部54がインナ軸部材16の取付孔32に追加圧入されるように、圧入時に必要な力の大きさを調節することも容易になる。
【0058】
また、インナ軸部材16における装着面26と反対側の座面28には、ナット86が重ね合わされている。取付孔32の下部が内方突出部38によって小径とされており、座面28とナット86との重ね合わせ面積が大きくされていることから、ナット86の緩みが生じ難くなっていると共に、締結力がインナ軸部材16に対して分散して及ぼされる。
【0059】
以上、本発明の実施形態について詳述してきたが、本発明はその具体的な記載によって限定されない。例えば、取付用部材14は、インナ軸部材16の板状取付部24に対して、前後幅方向だけでなく、左右長さ方向においても、軸方向外方に突出し得る。
【0060】
取付用部材における取付面50の形状は、特に限定されない。取付面50は、前記実施形態に示したように、インナ軸部材16の軸方向での長さ寸法よりもインナ軸部材16の軸直角方向での幅寸法が大きいことが望ましいが、例えば、円形や正方形など、長さ寸法と幅寸法が同じとされた形状であってもよい。
【0061】
取付用部材14の取付面50は、必ずしもインナ軸部材16の装着面26よりも幅広である必要はなく、例えば、装着面26以下の前後幅寸法であってもよい。また、取付面50の面積は、装着面26の面積以下であってもよい。また、インナ軸部材16に組み付けられた取付用部材14の取付面50は、必ずしもインナ軸部材16の柱状部22に対して側方外側まで突出している必要はなく、例えば、柱状部22の側方外端(実施形態における上端)よりも内側(実施形態における下側)に位置していてもよい。
【0062】
前記実施形態では、一対の板状取付部24,24の両方に取付用部材14がそれぞれ組み付けられた例を示したが、例えば一方の板状取付部24だけに取付用部材14が組み付けられており、他方の板状取付部24が連結対象部材に対して直接重ね合わされて取り付けられていてもよい。また、両方の板状取付部24,24は、相互の形状や取付面,座面の軸直角方向位置などを相互に異ならせても良いし、両方の板状取付部24,24へ取付用部材14,14を組み付ける場合でも、かかる取付用部材14,14を相互に異なる形状や大きさなどをもって形成することも可能であり、一方の取付用部材14を一方の板状取付部24の下面に重ねて組み付けると共に、他方の取付用部材14を他方の板状取付部24の上面に重ねて組み付けることも可能であるし、板状取付部24の上下両方の面に相互に同じ又は異なる取付用部材14,14を重ねて組み付けても良い。
【0063】
取付孔32は、必ずしも内径寸法が上部と下部とで異なる段付き孔に限定されず、例えば、一定の内径寸法で形成することもできるし、テーパ面を設けても良い。
【0064】
インナ軸部材16の具体的な構造は、適宜に変更可能である。例えば、インナ軸部材16の柱状部22は、円柱形状に限定されず、多角柱形状であってもよい。また、例えば、装着面26は、インナ軸部材16における軸方向一方の端部だけに設けられていてもよい。
【0065】
本体ゴム弾性体20の構造は特に限定されず、例えば、3つ以上の複数のゴム脚44を備えていてもよいし、すぐり孔46のない全周に亘って連続する筒状であってもよい。
【符号の説明】
【0066】
10 トレーリングアームブッシュ(筒型防振装置 第一の実施形態)
12 ブッシュ本体
14 取付用部材
16 インナ軸部材
18 アウタ筒部材
20 本体ゴム弾性体
22 柱状部
24 板状取付部
26 装着面
28 座面
30 角状突部
32 取付孔
34 大径圧入部
36 小径挿通部
38 内方突出部
40 段差面
42 テーパ面
44 ゴム脚
46 すぐり孔
48 ストッパゴム
50 取付面
52 ボルト挿通孔
54 筒状固定部
56 圧入突部
58 上テーパ面
60 下テーパ面
62 突出先端面
63 隙間
64 受け治具
66 第一凹部
68 ピン状部
70 押し治具
72 第二凹部
74 ピン挿通孔
76 車両ボデー(連結対象部材)
78 トレーリングアーム(連結対象部材)
80 アームアイ
82 防振連結体
84 ボルト
86 ナット
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11A
図11B
図11C
図11D
図12