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特開2024-171135前処理されたカポック繊維の製造方法
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  • 特開-前処理されたカポック繊維の製造方法 図1
  • 特開-前処理されたカポック繊維の製造方法 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024171135
(43)【公開日】2024-12-11
(54)【発明の名称】前処理されたカポック繊維の製造方法
(51)【国際特許分類】
   D06M 13/402 20060101AFI20241204BHJP
【FI】
D06M13/402
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023088043
(22)【出願日】2023-05-29
(71)【出願人】
【識別番号】501488572
【氏名又は名称】スタイレム瀧定大阪株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100124039
【弁理士】
【氏名又は名称】立花 顕治
(74)【代理人】
【識別番号】100176337
【弁理士】
【氏名又は名称】杉本 弘樹
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 勝久
【テーマコード(参考)】
4L033
【Fターム(参考)】
4L033AA02
4L033AB01
4L033AC15
4L033BA71
(57)【要約】
【課題】カポック繊維を用いた紡績作業、および、カポック繊維を用いた綿の製造作業の少なくとも一方を容易に実施できる、前処理されたカポック繊維の製造方法を提供する。
【解決手段】前処理されたカポック繊維の製造方法は、カポック繊維に飛散抑制効果を有する薬剤を浸透させる薬剤浸透工程と、前記薬剤浸透工程よりも後に実施され、前記カポック繊維を乾燥させる乾燥工程と、を含む。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
カポック繊維に飛散抑制効果を有する薬剤を浸透させる薬剤浸透工程と、
前記薬剤浸透工程よりも後に実施され、前記カポック繊維を乾燥させる乾燥工程と、を含む
前処理されたカポック繊維の製造方法。
【請求項2】
前記薬剤浸透工程では、前記薬剤に加えて、前記薬剤の前記カポック繊維への浸透を促進する浸透剤が用いられる
請求項1に記載の前処理されたカポック繊維の製造方法。
【請求項3】
前記薬剤浸透工程は、ドラム式洗濯機のドラムに前記カポック繊維および前記薬剤を収容した状態で実施される
請求項1または2に記載の前処理されたカポック繊維の製造方法。
【請求項4】
前記薬剤浸透工程では、前記ドラムの回転方向が所定時間毎に切り替えられる
請求項3に記載の前処理されたカポック繊維の製造方法。
【請求項5】
前記薬剤浸透工程では、前記カポック繊維は、メッシュ袋に詰められた状態で前記ドラムに収容される
請求項3に記載の前処理されたカポック繊維の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、前処理されたカポック製品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年では、世界的に地球環境への意識が高まっており、廃プラスチック化や二酸化炭素の排出量の削減等の観点から、衣料品等に使用する繊維として天然繊維が注目されている。さらには、動物愛護の観点から、天然繊維のうち、特に植物繊維が注目されている。特許文献1は、植物繊維であるカポックの紡績方法を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表2022-510173号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
カポック繊維は、他の天然繊維と比較して、繊維長が比較的短く、非常に軽いため、他の繊維と混ぜて紡績するときに飛散しやすい。このため、カポック繊維の紡績作業においては、飛散するカポック繊維の量を考慮して、製品として必要な量以上のカポック繊維が必要となる。また、飛散したカポック繊維は、他の製品に混入するおそれがある。なお、このような課題は、カポック繊維の紡績作業に限らず、カポック繊維と他の繊維とを混ぜて綿を製造するときにも同様に生じる。
【0005】
本発明の目的は、カポック繊維を用いた紡績作業、および、カポック繊維を用いた綿の製造作業の少なくとも一方を容易に実施できる、前処理されたカポック繊維の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1観点に係る前処理されたカポック繊維の製造方法は、カポック繊維に飛散抑制効果を有する薬剤を浸透させる薬剤浸透工程と、前記薬剤浸透工程よりも後に実施され、前記カポック繊維を乾燥させる乾燥工程と、を含む。
【0007】
上記前処理されたカポック繊維の製造方法によれば、前処理されたカポック繊維には、薬剤が含まれているため、カポック繊維が飛散しにくい。このため、カポック繊維を用いた紡績作業、および、カポック繊維を用いた綿の製造作業を容易に実施できる。
【0008】
本発明の第2観点に係る前処理されたカポック繊維の製造方法は、第1観点に係る前処理されたカポック繊維の製造方法であって、前記薬剤浸透工程では、前記薬剤に加えて、前記薬剤の前記カポック繊維への浸透を促進する浸透剤が用いられる。
【0009】
上記前処理されたカポック繊維の製造方法によれば、薬剤浸透工程において、薬剤の浸透が促進される。このため、薬剤浸透工程に要する時間を短縮できる。
【0010】
本発明の第3観点に係る前処理されたカポック繊維の製造方法は、第1観点または第2観点に係る前処理されたカポック繊維の製造方法であって、前記薬剤浸透工程は、ドラム式洗濯機のドラムに前記カポック繊維および前記薬剤を収容した状態で実施される。
【0011】
上記前処理されたカポック繊維の製造方法によれば、薬剤浸透工程を容易に実施できる。
【0012】
本発明の第4観点に係る前処理されたカポック繊維の製造方法は、第3観点に係る前処理されたカポック繊維の製造方法であって、前記薬剤浸透工程では、前記ドラムの回転方向が所定時間毎に切り替えられる。
【0013】
上記前処理されたカポック繊維の製造方法によれば、薬剤浸透工程において、ドラム内において、カポック繊維および薬剤が好適に攪拌される。このため、カポック繊維に薬剤が好適に浸透する。
【0014】
本発明の第5観点に係る前処理されたカポック繊維の製造方法は、第3観点または第4観点に係る前処理されたカポック繊維の製造方法であって、前記薬剤浸透工程では、前記カポック繊維は、メッシュ袋に詰められた状態で前記ドラムに収容される。
【0015】
上記前処理されたカポック繊維の製造方法によれば、カポック繊維をドラムに収容すること、および、カポック繊維をドラムから取り出すことを容易に実施できる。
【発明の効果】
【0016】
本発明に関する前処理されたカポック繊維の製造方法によれば、カポック繊維を用いた紡績作業、および、カポック繊維を用いた綿の製造作業の少なくとも一方を容易に実施できる
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】実施形態の前処理されたカポック繊維の製造方法の一例を示すフローチャート。
図2図1の薬剤浸透工程に関する図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
<1.実施形態>
以下、本発明に係る前処理されたカポック繊維の製造方法の一実施形態について、図面を参照して説明する。
【0019】
図1は、前処理されたカポック繊維の製造方法の一例を示すフローチャートである。図2は、薬剤浸透工程に関する図である。前処理されたカポック繊維の製造方法は、薬剤浸透工程、脱水工程、第1乾燥工程、および、第2乾燥工程を含む。
【0020】
ステップS11の薬剤浸透工程は、前処理される前のカポック繊維100(図2参照)に飛散抑制効果を有する薬剤(以下では、単に「薬剤」という)を浸透させる工程である。薬剤は、飛散抑制効果を有する薬剤であれば、任意に選択可能である。本実施形態では、薬剤は、アミド系化合物が用いられる。
【0021】
薬剤浸透工程では、カポック繊維100に薬剤を好適に浸透させるため、薬剤に加えて、カポック繊維100への薬剤の浸透を促進する浸透剤(以下では、単に「浸透剤」という)が用いられることが好ましい。浸透剤は、カポック繊維100への薬剤の浸透を促進する効果を有する浸透剤であれば任意に選択可能である。本実施形態では、浸透剤は、アニオン性の浸透剤が用いられる。
【0022】
薬剤浸透工程では、例えば、ドラム式洗濯機10が用いられる。薬剤浸透工程では、カポック繊維100は、メッシュ袋20に詰められた状態で、ドラム式洗濯機10のドラム10Aに収容されることが好ましい。メッシュ袋20には、複数の微細な孔(図示略)が形成されている。1個のメッシュ袋20に詰められるカポック繊維100の重量は、任意に選択可能である。
【0023】
薬剤浸透工程では、ドラム10Aに薬剤、浸透剤、および、水が収容された状態でドラム10Aが回転軸10X回りに回転することで、薬剤がカポック繊維100に浸透する。
【0024】
薬剤浸透工程では、カポック繊維100に薬剤を好適に浸透させるため、ドラム10Aの回転軸10X回りの回転方向を所定時間毎に切り替えられることが好ましい。薬剤浸透工程において、ドラム10Aが回転している時間は、任意に選択可能である。
【0025】
ステップS12の脱水工程は、薬剤浸透工程よりも後に実施される。脱水工程では、例えば、公知の抽出機、または、公知の圧搾機を用いて、メッシュ袋20に詰められた状態のカポック繊維100が脱水される。脱水工程の時間は、任意に選択可能である。
【0026】
ステップS13の第1乾燥工程は、脱水工程よりも後に実施される。第1乾燥工程では、例えば、公知の乾燥機を用いて、メッシュ袋20に詰められた状態のカポック繊維100が乾燥される。第1乾燥工程の時間は、任意に選択可能である。
【0027】
ステップS14の第2乾燥工程は、第1乾燥工程よりも後に実施される。第2乾燥工程では、カポック繊維100は、メッシュ袋20から取り出され、室内で広げられ、乾燥される。第2乾燥工程の時間は、任意に選択可能である。第2乾燥工程が完了することによって、前処理されたカポック繊維100が完成する。前処理されたカポック繊維100は、例えば、木綿等の他の繊維と混ぜられ紡績される。別の例では、前処理されたカポック繊維100は、例えば、ポリエステル等の他の繊維と混ざられ、粒綿が製造される。
【0028】
<2.本実施形態の効果>
本実施形態の前処理されたカポック製品の製造方法によれば、次の効果を得ることができる。
【0029】
<2-1>
第2乾燥工程が終了したカポック繊維100には、薬剤が含まれているため、カポック繊維が飛散しにくい。このため、カポック繊維100を用いた紡績作業、および、カポック繊維100を用いた綿の製造作業を容易に実施できる。
【0030】
<2-2>
薬剤浸透工程では、薬剤に加えて、薬剤のカポック繊維100への浸透を促進する浸透剤が用いられる。薬剤浸透工程において、薬剤の浸透が促進されるため、薬剤浸透工程に要する時間を短縮できる。
【0031】
<2-3>
薬剤浸透工程は、ドラム式洗濯機10のドラム10Aにカポック繊維100および薬剤を収容した状態で実施される。このため、薬剤浸透工程を容易に実施できる。
【0032】
<2-4>
薬剤浸透工程では、ドラム10Aの回転方向が所定時間毎に切り替えられる。薬剤浸透工程において、ドラム10A内において、カポック繊維100および薬剤が好適に攪拌されるため、薬剤浸透工程において、カポック繊維100に薬剤が好適に浸透する。
【0033】
<2-5>
薬剤浸透工程では、カポック繊維100は、メッシュ袋20に詰められた状態でドラム10Aに収容される。このため、カポック繊維100をドラム10Aに収容すること、および、カポック繊維100をドラム10Aからから取り出すことを容易に実施できる。
【0034】
<3.変形例>
上記実施形態は本発明に関する前処理されたカポック繊維の製造方法が取り得る形態の例示であり、その形態を制限することを意図していない。本発明に関する前処理されたカポック繊維の製造方法は、実施形態に例示された形態とは異なる形態を取り得る。その一例は、実施形態の構成の一部を置換、変更、もしくは、省略した形態、または、実施形態に新たな構成を付加した形態である。以下に実施形態の変形例の幾つかの例を示す。なお、以下の変形例は、技術的に矛盾しない範囲において、互いに組み合わせることができる。
【0035】
<3-1>
上記実施形態において、薬剤浸透工程の具体的な方法は、カポック繊維100の少なくとも一部に薬剤が浸透する範囲において、任意に変更可能である。例えば、薬剤浸透工程において、浸透剤は用いられなくてもよい。別の例では、薬剤浸透工程において、カポック繊維100は、メッシュ袋20に詰められずに、ドラム10Aに直接収容されてもよい。さらに別の例では、薬剤浸透工程において、ドラム10Aは、回転軸10X回りに一方向のみに回転してもよい。さらに別の例では、薬剤浸透工程において、ドラム10Aに代えて、可動しない容器にカポック繊維100および薬剤等が収容されてもよい。
【0036】
<3-2>
上記実施形態において、脱水工程および第1乾燥工程の少なくとも一方を省略することもできる。
【符号の説明】
【0037】
10 :ドラム式洗濯機
10A:ドラム
20 :メッシュ袋
100:カポック繊維
図1
図2