(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024171140
(43)【公開日】2024-12-11
(54)【発明の名称】磁気ディスク装置、磁気ディスク装置の制御方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
G11B 19/00 20060101AFI20241204BHJP
G06F 11/14 20060101ALI20241204BHJP
G11B 33/12 20060101ALI20241204BHJP
G11B 19/20 20060101ALI20241204BHJP
【FI】
G11B19/00 100F
G06F11/14 641A
G11B33/12 305Z
G11B19/20 Q
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023088055
(22)【出願日】2023-05-29
(71)【出願人】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(71)【出願人】
【識別番号】317011920
【氏名又は名称】東芝デバイス&ストレージ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】居石 浩三
(57)【要約】
【課題】PLP機能の実行時に、可能な限り正常動作を維持し、PLP機能の改善を図る。
【解決手段】実施形態の磁気ディスク装置は、第1電圧を有する電力を供給する第1電源及び前記第1電圧より高い第2電圧を有する第2電源からの電力供給を受けて動作する磁気ディスク装置において、前記第1電源及び前記第2電源のうち、何れか一方の電源に電力遮断が発生したか否かを検出する電力供給判断部と、何れか一方の電源に電力遮断が発生した場合に、電源供給を停止すべき不要回路において電源供給停止時処理が完了するまで前記不要回路に他方の電源から電力を供給させる制御部と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1電圧を有する電力を供給する第1電源及び前記第1電圧より高い第2電圧を有する第2電源からの電力供給を受けて動作する磁気ディスク装置において、
前記第1電源及び前記第2電源のうち、何れか一方の電源に電力遮断が発生したか否かを検出する電力供給判断部と、
何れか一方の電源に電力遮断が発生した場合に、電源供給を停止すべき不要回路において電源供給停止時処理が完了するまで前記不要回路に他方の電源から電力を供給させる制御部と、
を備えた磁気ディスク装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記不要回路への電力供給時に、前記他方の電源からPLP動作のための電力をPLP回路に電力を供給する、
請求項1に記載の磁気ディスク装置。
【請求項3】
前記PLP回路にPLP動作のための電力を供給するPLP電源を備え、
前記制御部は、前記不要回路において前記電源供給停止時処理が完了した場合に、前記他方の電源からの前記PLP回路への電力供給を停止し、前記PLP電源から前記PLP回路への電力供給を開始する、
を備えた請求項2に記載の磁気ディスク装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記PLP電源から前記PLP回路への電力供給を開始した後に、前記他方の電源を遮断する、
請求項3に記載の磁気ディスク装置。
【請求項5】
前記第1電源において電力遮断が発生した場合に、前記第2電源から供給された電力の電圧を前記第1電圧に変換する電圧変換部を備え、
前記制御部は、前記第2電源から供給された電力を前記電圧変換部を介して前記不要回路に供給する、
請求項1に記載の磁気ディスク装置。
【請求項6】
PLP動作を行うPLP回路を備え、
前記制御部は、何れか一方の電源に電力遮断が発生した場合に、前記PLP動作が必要か否かを判断し、
前記PLP動作が必要ではない場合に、前記PLP回路に前記PLP動作を行わせることなく、当該磁気ディスク装置の電源を遮断して、再起動動作を行わせる、
請求項1に記載の磁気ディスク装置。
【請求項7】
第1電圧を有する電力を供給する第1電源及び前記第1電圧より高い第2電圧を有する第2電源からの電力供給を受けて動作する磁気ディスク装置の制御方法において、
前記第1電源及び前記第2電源のうち、何れか一方の電源に電力遮断が発生したか否かを検出する過程と、
何れか一方の電源に電力遮断が発生した場合に、電源供給を停止すべき不要回路において電源供給停止時処理が完了するまで前記不要回路に他方の電源から電力を供給させる過程と、
を備えた磁気ディスク装置の制御方法。
【請求項8】
第1電圧を有する電力を供給する第1電源及び前記第1電圧より高い第2電圧を有する第2電源からの電力供給を受けて動作する磁気ディスク装置をコンピュータにより制御するためのプログラムにおいて、
前記コンピュータを、
前記第1電源及び前記第2電源のうち、何れか一方の電源に電力遮断が発生したか否かを検出する手段と、
何れか一方の電源に電力遮断が発生した場合に、電源供給を停止すべき不要回路において電源供給停止時処理が完了するまで前記不要回路に他方の電源から電力を供給させる手段と、
して機能させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、磁気ディスク装置、磁気ディスク装置の制御方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、磁気ディスク装置としてのハードディスクドライブ装置においては、予期しない電源断時のデータ保護対策として、PLP(Power Loss Protection)機能を備えていた。
このPLP機能は、ディスクが停止する際にディスクを駆動するモータに生じる逆起電力(PLP電源)を利用して、DRAMに保存しているデータをFROMに書き込む機能である。
【0003】
従来、5V/12Vの外部電源遮断が発生した際に、SoC(System on Chip)がSVC(サーボコントローラ)による故障信号(Fault信号)の入力を検出して、無条件に外部電源からの電力供給を遮断し、モータに生じる逆起電力(PLP電源)を用いたPLP機能へ切り替えを実行していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許第10996740号明細書
【特許文献2】米国特許第08924641号明細書
【特許文献3】米国特許出願公開第2019/0065081号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、PLP機能の実行時に、可能な限り正常動作を維持し、PLP機能の改善を図ることが可能な磁気ディスク装置及び磁気ディスクの制御方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態の磁気ディスク装置は、第1電圧を有する電力を供給する第1電源及び前記第1電圧より高い第2電圧を有する第2電源からの電力供給を受けて動作する磁気ディスク装置において、前記第1電源及び前記第2電源のうち、何れか一方の電源に電力遮断が発生したか否かを検出する電力供給判断部と、何れか一方の電源に電力遮断が発生した場合に、電源供給を停止すべき不要回路において電源供給停止時処理が完了するまで前記不要回路に他方の電源から電力を供給させる制御部と、を備える。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】
図1は、実施形態の磁気ディスク装置の要部概要構成ブロック図である。
【
図2】
図2は、5V外部電源が遮断された場合のタイミングチャートである。
【
図3】
図3は、実施形態のPLP動作時の処理フローチャートである。
【
図4】
図4は、12V外部電源が遮断された場合のタイミングチャートである。
【
図5】
図5は、PLP動作対象のデータが無い場合のタイミングチャートである。
【
図6】
図6は、実施形態の効果を説明するための参考例のタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
次に図面を参照して実施形態について詳細に説明する。
図1は、実施形態の磁気ディスク装置の要部概要構成ブロック図である。
実施形態の磁気ディスク装置は、ハードディスクドライブ装置(HDD装置)として構成されている。
【0009】
磁気ディスク装置10は、サーボコントローラ(SVC)11と、ディスクモータ12と、ディスク13と、電源スイッチャ14と、電圧変換ユニット15と、SoC(System on a Chip)16と、DRAM17と、FROM18と、を備えている。
また、磁気ディスク装置10には、12V外部電源21及び5V外部電源22を備えた外部電源システム20が接続されている。
【0010】
サーボコントローラ(SVC)11は、外部電源システム20の12V外部電源21から12V電力PS12が供給されて、ディスクモータ12を制御してサーボ制御を行う。
この場合において、サーボコントローラ11は、電圧レギュレータ11A及び電源監視部11Bを有している。
【0011】
この場合において、電圧レギュレータ11Aは、サーボ制御用の電力変換を行うとともに、12V電力PS12の電圧変換を行って、5V電力PS52を電源スイッチャ14に出力する。
【0012】
また、電源監視部11Bは、12V外部電源から供給された12V電力PS12の電圧及び5V外部電源22から供給された5V電力PS51の電圧を監視して、何れかの電源において電源遮断等の電圧異常を検出した場合に後述するFault信号をSoC16に出力する。
【0013】
ディスクモータ12は、サーボコントローラ11の制御下で(磁気)ディスク13を回転駆動する。
【0014】
ディスク13は、各種データを磁気的に記録する。
電源スイッチャ14は、外部電源システム20の5V外部電源22から5V電力PS51が供給され、サーボコントローラ11の電圧レギュレータ11Aから5V電力PS52が供給され、何れかを電圧変換ユニット15に出力する。
【0015】
電圧変換ユニット15は、電源スイッチャ14から入力された5V電力PS51あるいは5V電力PS52の何れかに基づいて、磁気ディスク装置10の各部(
図1の例では、SoC16、DRAM17及びFROM18)に電力を供給する。
【0016】
SoC16は、磁気ディスク装置10全体を制御するコントローラ(制御部)として機能するとともに、DRAM17からFROM18にデータをバックアップするPLP機能を実現するための制御を行っている。
DRAM17は、ディスク13に対する書込処理前のデータを格納している揮発性のメモリである。
【0017】
FROM18は、PLP機能の実行時に、DRAM17に格納されているデータをバックアップのために格納する不揮発性のメモリである。
【0018】
まず、実施形態の詳細な説明に先立ち、実施形態の原理について説明する。
12V外部電源21(=第2電源)及び5V外部電源22(=第1電源)から電力の供給を受けて動作する磁気ディスク装置において、12V外部電源21及び5V外部電源22の双方が同タイミングで遮断されるケースは少ない。
【0019】
そこで、本実施形態においては、12V外部電源21及び5V外部電源22のうち、いずれか一方の電源が遮断されて電力供給が無くなった場合に、電力供給が可能な何れか他方の電源を有効活用して、PLP動作において動作不要な回路への電力供給を行って、不要回路の停止処理を確実に行ってからディスクモータ12の逆起電力を利用したPLP動作を行うことで、上記の各種不具合を回避している。
【0020】
これは、フェイルセーフの観点からms単位の時間経過で最終的に両方の電源が遮断される前に、μs単位の時間で実現される不要回路のパワーダウン完了までは遮断されていない電源を使用するものである。
【0021】
このように、遮断されていない電源を不要回路のパワーダウンまで使用することで、不要回路のパワーダウン前の電源を安定化させることができ、PLP電源ドロップによる不具合リスクを回避することができるのである。
【0022】
次に、詳細に本実施形態の動作を説明する。
本実施形態では、12V外部電源21及び5V外部電源22の二つの外部電源を有しているので、12V外部電源21及び5V外部電源22のうち、一方の電源を使用する態様としては、以下の二つの態様がある。
【0023】
第1態様は、5V外部電源22が遮断された場合の態様であり、この第1態様では、サーボコントローラ11の電圧レギュレータ11Aにより12Vから5Vに変換された電力を用いている。
第2態様は、12V外部電源21が遮断された場合の態様である。この第2態様では、5V外部電源22の出力した電力をそのまま用いている。
【0024】
まず、5V外部電源22が遮断された第1態様の場合の動作を説明する。
図2は、5V外部電源が遮断された場合のタイミングチャートである。
図2(A)は、磁気ディスク装置10が正常動作可能時にSoC16により“H”レベルとされるReady信号の信号レベルを表している。
【0025】
図2(B)は、サーボコントローラ11の電源監視部11Bにより、12V外部電源21及び5V外部電源22のうち少なくとも何れか一方に異常が検出された場合に“L”レベルとされるFault信号の信号レベルを表している。
【0026】
図2(C)は、Fault信号が“L”レベルとなった場合に、全ての不要回路の停止処理(パワーダウン処理)が確実に行われるのに必要な時間をカウントアップし、カウントアップ期間中に“H”レベルとなるSoC16のパワーダウンタイマ16Aにより出力される信号を表している。したがって、カウントアップが完了し、一旦“H”レベルとなったパワーダウンタイマ16Aの出力が再び“L”レベルとなった時点で、全ての不要回路が確実に停止状態になっている。
【0027】
図2(D)は、SoC16において、外部電源である12V外部電源21が電力供給可能状態で“H”レベルとなり、遮断状態で“L”レベルとなる信号を表している。
【0028】
図2(E)は、SoC16において、外部電源である5V外部電源22が電力供給可能状態で“H”レベルとなり、遮断状態で“L”レベルとなる信号を表している。
【0029】
図2(F)は、逆起電力によるPLP電源の供給に代えて、外部電源からPLP電源の供給状態を表している。
図2(F)において、実線は実際の電力供給状態を表し、破線は、電力供給可能状態を表している。
【0030】
図2(G)は、逆起電力を用いたPLP電源の供給状態を表している。
図2(G)において、実線は実際の電力供給状態を表し、破線は、電力供給可能状態を表している。
【0031】
図3は、実施形態のPLP動作時の処理フローチャートである。
以下、
図2のタイミングチャート及び
図3の処理フローチャートを参照して5V外部電源22が遮断された第1態様の場合の動作を詳細に説明する。
【0032】
図2の時刻t1において、
図2(E)に示す様に、5V外部電源22が遮断されると、サーボコントローラ(SVC)11の電源監視部11Bは、
図2(B)に示すように、Fault信号を“L”レベルとする。
これによりSoC16は、
図2(A)に示すように、Ready信号を“L”レベルとする。
【0033】
続いてSoC16は、
図3に示すPLP動作時の処理を開始し、PLP機能の実現のために、時刻t1において、
図2(C)に示すように、PLP処理では使用しない回路である不要回路のパワーダウンタイマ16Aのカウントをスタート(開始)する(ステップS11)。
【0034】
続いて、SoC16は、12V外部電源が遮断(オフ)されたか否かを判断する(ステップS12)。
【0035】
この場合においては、
図2(D)の時刻t1に示すように、電源監視部11Bにより12V外部電源21の出力が検出されているので、サーボコントローラ11は、12V外部電源21が遮断(オフ)されていないと判断する(ステップS12;No)。したがって、サーボコントローラ11の電圧レギュレータ11Aは、12V電力PS12の電圧変換を行って、5V電力PS52を電源スイッチャ14に出力することとなる。
これにより、SoC16は、この5V電力PS52をPLP回路用の電源として設定して、
図2の時刻t1に示すように、PLP回路に電力を供給するとともに、不要回路に対し、サーボコントローラ11の電圧レギュレータ11Aにより変換した5V電力PS52を供給する(ステップS25)。
【0036】
したがって、従来と異なり、逆起電力によるPLP電源が不要回路に電力を供給する必要が無いので、電力供給に起因するPLP回路の電源電圧のドロップが生じることはない。
【0037】
そして、データバックアップに移行すべく、SoC16は、DRAM17に処理前のデータがあるか否かを判断する(ステップS14)。
この場合において、DRAM17に処理前のデータがあるか否かを判断するのは、後述するように、バックアップ対象のデータが存在しないにもかかわらず、PLP動作を行うのは、かえって不具合を招く虞があるため、PLP動作を行わないようにするためである。
【0038】
ステップS14の判断において、DRAM17に処理前のデータがある場合には(ステップS14;Yes)、PLP動作を行う必要があるので、PLP動作に不要な不要回路のパワーダウンを実施する(ステップS15)。
【0039】
そして、SoC16は、不要回路のパワーダウンが確実に実施されて完了する時刻以降の時刻として予め設定された時刻t2にカウントアップが終了し、パワーダウンタイマ16Aのカウントアップが停止したか否かを判断する(ステップS16)。
【0040】
ステップS16の判断において、未だパワーダウンタイマ16Aのカウントアップが停止していない場合には(ステップS16;No)、待機状態となる。
【0041】
ステップS16の判断において、
図2の時刻t2において、パワーダウンタイマ16Aのカウントアップがストップ(停止)した場合には(ステップS16;Yes)、不要回路には、電力を供給する必要が無くなったので、
図2(G)に示すように、従来と同様にディスクモータの逆起電力をPLP電源として用いる(ステップS17)。これと同時に、
図2(F)に示す様に、12V外部電源21は、サーボコントローラ(SVC)11の電圧レギュレータ11Aを介したPLP回路への電源供給を停止する。そして、フェイルセーフの観点から、時刻t3に至ると、12V外部電源21を停止する。
【0042】
従って、安定した電源を用いて不要回路のパワーダウンを行ってPLP動作を行えるので、確実にPLP動作を完了することができ、ひいては、磁気ディスク装置10の信頼性の向上が図れる。
【0043】
この結果、PLP対象であるDRAM17には電源が供給継続される。
そして、SoC16は、DRAM17に格納されているバックアップ対象のデータを、FROM18に転送してバックアップするPLP動作を行う(ステップS18)。
【0044】
続いて、SoC16は、PLP動作が完了したか否かを判断する(ステップS19)。
ステップS19の判断において、未だPLP動作が完了していない場合には、待機状態となる。
ステップS19の判断において、
図2の時刻t4に示すように、PLP動作が完了した場合には、SoC16は、磁気ディスク装置10を再起動すべく、磁気ディスク装置10の電源をオフとする(ステップS20)。
【0045】
さらにSoC16は、磁気ディスク装置10の電源をオフしてから、磁気ディスク装置10が初期状態に復帰したと確実に推定できる時刻t5において、磁気ディスク装置10の電源をオンとし、磁気ディスク装置10を再起動する(ステップS21)。
【0046】
続いてSoC16は、前回PLP動作が実施しされたか否かを判断する(ステップS22)。
【0047】
すなわち、SoC16は、ステップS18において、DRAM17に格納されているバックアップ対象のデータを、FROM18に転送してバックアップするPLP動作を行ったか否かを判断する。
ステップS22の判断において、PLP動作の実施がなされていない場合には(ステップS22;No)、ステップS24に移行する。
【0048】
ステップS22の判断において、PLP動作の実施がなされた場合には(ステップS22;Yes)、SoC16は、FROM18からバックアップ対象のデータを読み出し、ディスク13にデータを復元する(ステップS23)。
これにより磁気ディスク装置10は、起動時処理を行い、時刻t6において、通常状態であるレディ状態に復帰することとなる。
【0049】
次に、12V外部電源21が遮断された第2態様の場合の動作を説明する。
図4は、12V外部電源が遮断された場合のタイミングチャートである。
図4(A)~
図4(G)は、
図2(A)~
図2(G)と同様であるので、その詳細な説明を援用するものとする。
【0050】
図4において、
図2と異なる点は、
図4(D)に示すように、12V外部電源21が遮断状態である点と、
図4(E)に示すように、5V外部電源22が電力供給可能状態であることから、
図4(F)で示されるPLP電源は、5V外部電源22からの電力である点である。
【0051】
以下、
図4のタイミングチャート及び
図3の処理フローチャートを参照して12V外部電源21が遮断された第2態様の場合の動作を詳細に説明する。
【0052】
図4の時刻t1において、
図4(E)に示す様に、12V外部電源21が遮断されると、サーボコントローラ(SVC)11の電源監視部11Bは、
図4(B)に示すように、Fault信号を“L”レベルとする。
これによりSoC16は、
図4(A)に示すように、Ready信号を“L”レベルとする。
【0053】
続いてSoC16は、
図3に示したPLP動作時の処理を開始し、PLP機能の実現のために、時刻t1において、
図4(C)に示すように、PLP処理では使用しない回路である不要回路のパワーダウンタイマ16Aのカウントをスタート(開始)する(ステップS11)。
【0054】
続いて、SoC16は、12V外部電源が遮断(オフ)されたか否かを判断する(ステップS12)。
この場合においては、
図4(D)に示すように、電源監視部11Bにより12V外部電源21の出力が検出されていないので、サーボコントローラ11は、12V外部電源21が遮断(オフ)されていると判断する(ステップS12;Yes)。
【0055】
これにより、SoC16は、5V外部電源22からの5V電力PS51をPLP回路用の電源として設定して、
図4の時刻t1に示すように、PLP回路に電力を供給するとともに、不要回路に対し、5V電力PS51を供給する(ステップS13)。
【0056】
したがって、この場合にも、従来と異なり、逆起電力によるPLP電源の電力を不要回路に供給する必要が無く、安定した5V外部電源22からの5V電力PS51を供給するので、PLP回路の電源電圧のドロップが生じることはない。
【0057】
そして、データバックアップに移行すべく、SoC16は、DRAM17に処理前のデータがあるか否かを判断する(ステップS14)。
【0058】
ステップS14の判断において、DRAM17に処理前のデータがある場合には(ステップS14;Yes)、PLP動作を行う必要があるので、PLP動作に不要な不要回路のパワーダウンを実施する(ステップS15)。
【0059】
そして、SoC16は、不要回路のパワーダウンが確実に実施されて完了する時刻以降の時刻として予め設定された時刻t2にカウントアップが終了し、パワーダウンタイマ16Aのカウントアップが停止したか否かを判断する(ステップS16)。
【0060】
ステップS16の判断において、未だパワーダウンタイマ16Aのカウントアップが停止していない場合には(ステップS16;No)、待機状態となる。
【0061】
ステップS16の判断において、
図4の時刻t2において、パワーダウンタイマ16Aのカウントアップがストップ(停止)した場合には(ステップS16;Yes)、不要回路には、電力を供給する必要が無くなったので、
図4(G)に示すように、従来と同様にディスクモータの逆起電力をPLP電源として用いる(ステップS17)。これと同時に、
図4(F)に示すように、5V外部電源22は、PLP回路への電源供給を停止する。そして、フェイルセーフの観点から、時刻t3に至ると、5V外部電源22を停止する。
【0062】
従って、安定した電源を用いて不要回路のパワーダウンを行ってPLP動作を行えるので、確実にPLP動作を完了することができ、ひいては、磁気ディスク装置10の信頼性の向上が図れる。
【0063】
この結果、PLP対象であるDRAM17には電源が供給継続される。
そして、SoC16は、DRAM17に格納されているバックアップ対象のデータを、FROM18に転送してバックアップするPLP動作を行う(ステップS18)。
【0064】
続いて、SoC16は、PLP動作が完了したか否かを判断する(ステップS19)。
ステップS19の判断において、未だPLP動作が完了していない場合には、待機状態となる。
ステップS19の判断において、PLP動作が完了した場合には、
図4の時刻t4に示すように、SoC16は、磁気ディスク装置10を再起動すべく、磁気ディスク装置10の電源をオフとする(ステップS20)。
【0065】
さらにSoC16は、磁気ディスク装置10の電源をオフしてから、磁気ディスク装置10が初期状態に復帰したと確実に推定できる時刻t5において、磁気ディスク装置10の電源をオンとし、磁気ディスク装置10を再起動する(ステップS21)。
続いてSoC16は、PLP動作が実施しされたか否かを判断する(ステップS22)。
【0066】
すなわち、SoC16は、ステップS18において、DRAM17に格納されているバックアップ対象のデータを、FROM18に転送してバックアップするPLP動作を行ったか否かを判断する。
【0067】
ステップS22の判断において、PLP動作の実施がなされた場合には(ステップS22;Yes)、SoC16は、FROM18からバックアップ対象のデータを読み出し、ディスク13にデータを復元する(ステップS23)。
これにより磁気ディスク装置10は、起動時処理を行い、時刻t6において、通常状態であるレディ状態に復帰することとなる。
【0068】
以上の説明は、バックアップ対象のデータが存在する場合の動作であったが、上述したように、バックアップ対象のデータが存在しないにもかかわらず、PLP動作を行うのは、かえって不具合を招く虞がある。
そこで、以下においては、バックアップ対象のデータが無い場合の動作について、
図5のタイミングチャート及び
図3の処理フローチャートを参照して説明する。
【0069】
図5は、PLP動作対象のデータが無い場合のタイミングチャートである。
【0070】
【0071】
図5において、
図2と異なる点は、PLP動作を行う必要が無いので、不要回路のパワーダウン処理を行うこと無く、時刻t2において、直ちに磁気ディスク装置の再起動処理に移行している点である。なお、
図5においては、
図2の場合と同様に、5V外部電源22が遮断された場合のタイミングチャートを示しているが、12V外部電源21が遮断された場合も同様である。
【0072】
以下、
図5のタイミングチャート及び
図3のフローチャートを参照して、PLP動作対象のデータが無い場合の動作を説明する。
時刻t1において、
図5(D)に示す様に、5V外部電源22が遮断されると、
図5(A)、
図5(B)に示すように、Ready信号及びFault信号が“L”レベルとなる。
【0073】
これにより、SoC16は、PLP機能の実現のために、lPLP処理では使用しない回路である不要回路のパワーダウンタイマのカウントを開始する(ステップS11)。
続いて、SoC16は、12V外部電源が遮断(オフ)されたか否かを判断する(ステップS12)。
【0074】
この場合においては、
図5(D)の時刻t1に示すように、電源監視部11Bにより12V外部電源21の出力が検出されているので、サーボコントローラ11は、12V外部電源21が遮断(オフ)されていないと判断する(ステップS12;No)。したがって、サーボコントローラ11の電圧レギュレータ11Aは、12V電力PS12の電圧変換を行って、5V電力PS52を電源スイッチャ14に出力することとなる。
【0075】
これにより、SoC16は、この5V電力PS52をPLP回路用の電源として設定して、
図2の時刻t1に示すように、PLP回路に電力を供給するとともに、不要回路に対し、サーボコントローラ11の電圧レギュレータ11Aにより変換した5V電力PS52を供給する(ステップS25)。
【0076】
したがって、この場合にも、逆起電力によるPLP電源が不要回路に電力を供給する必要が無いので、電力供給に起因するPLP回路の電源電圧のドロップが生じることはない。
【0077】
そして、データバックアップに移行すべく、SoC16は、DRAM17に処理前のデータがあるか否かを判断する(ステップS14)。
この場合においては、DRAM17に処理前のデータがなく(ステップS14;No)、PLP動作を行う必要がないので、SoC16は、直ちに磁気ディスク装置10を再起動すべく、
図5の時刻t2に示すように、磁気ディスク装置10の電源をオフとする(ステップS20)。
【0078】
さらに、SoC16は、磁気ディスク装置10の電源をオフしてから、磁気ディスク装置10が初期状態に復帰したと確実に推定できる時刻t3において、磁気ディスク装置10の電源をオンとし、
図5の時刻t3に示すように、磁気ディスク装置10を再起動する(ステップS21)。
【0079】
続いてSoC16は、PLP動作の実施が必要か否かを判断するが(ステップS22)、FROMにバックアップ対象のデータが格納されていないので、PLP動作を行う必要はないと判断し、磁気ディスク装置10は、起動時処理を行い、
図5の時刻t4において、通常状態であるレディ状態に復帰することとなる。
【0080】
したがって、
図2及び
図4で説明したPLP動作を行う場合と比較して、不要回路のパワーダウン処理、データバックアップ処理及びバックアップデータのディスク13への書き戻し処理を行う必要が無いので、PLP動作に伴う不具合リスクが低減されるとともに、磁気ディスク装置の再起動時間の短縮が可能となる。
【0081】
次に実施形態の効果について、参考例と比較しながら説明する。
以下においては、理解の容易のため、
図1を援用して説明を行うものとする。
図6は、実施形態の効果を説明するための参考例のタイミングチャートである。
参考例では、5V外部電源あるいは12V外部電源の遮断が発生した際には、SoCがサーボコントローラからのFault信号(
図3の例では、ロウアクティブ)を検出して、無条件にPLP機能へ切り替えを実行している。
【0082】
より詳細には、時刻t11において、5V外部電源22が遮断されたとすると、
図6(A)、
図6(B)に示すように、Ready信号及びFault信号が“L”レベルとなる。
【0083】
これにより、SoC16は、PLP機能の実現のために、
図6(C)に示す様に、PLP処理では使用しない回路である不要回路のパワーダウンタイマのカウントを開始する(ステップS11)。
さらにSoC16は、フェイルセーフの観点から、
図6(D)及び
図6(E)に示す様に12V外部電源21及び5V外部電源22を停止する。
【0084】
この結果、5VPLP電源の低下を防止する不要回路のパワーダウン完了前に、
図6(F)のに示すように、ディスクモータ逆起電力PLP電源への切り替えが入る。
すなわち、不要回路のパワーダウン前であるため、不要回路の動作に起因して、PLP電源ドロップによるPLP機能の不具合リスクが発生する虞があった。
【0085】
また、データのリード(Read)中での電源断時など、バックアップデータがDRAM上に存在しない場合であっても、PLP処理に強制的に移行されるため、不要なPLP切り替えが入ることで、PLP処理による不具合リスクの発生と再起動時間が長くなってしまうという虞があった。
【0086】
しかしながら、外部電源遮断が生じる場合に、12V外部電源21及び5V外部電源22の双方が同時に遮断されることはまれである。実施形態の磁気ディスク装置によれば、12V外部電源21あるいは5V外部電源22のうち、一方が何らかの理由により遮断された場合に、遮断されていない電源をPLP動作に不要な不要回路のパワーダウンまで使用するので、PLP電源の電圧ドロップなどの不具合の発生を抑制することができる。
【0087】
さらに、実際にPLP動作を行う必要があるか否かを判断して、不要な場合にはPLP動作を行わないので、処理手順の簡略化がなされる。
したがって、実施形態によれば、不要回路のパワーダウン前の電源安定化と不要なPLP切り替えを無くすことによる、機能改善と起動時間短縮が実現できる。
【0088】
なお、本実施形態の磁気ディスク装置で実行されるプログラムは、ROM等に予め組み込まれて提供される。
本実施形態の磁気ディスク装置で実行されるプログラムは、インストール可能な形式又は実行可能な形式のファイルでUSBメモリ、SSD(Solid State Drive)等の半導体メモリ装置、DVD(Digital Versatile Disk)等のコンピュータで読み取り可能な記録媒体に記録して提供するように構成してもよい。
【0089】
さらに、本実施形態の磁気ディスク装置で実行されるプログラムを、インターネット等のネットワークに接続されたコンピュータ上に格納し、ネットワーク経由でダウンロードさせることにより提供するように構成しても良い。また、本実施形態の磁気ディスク装置で実行されるプログラムをインターネット等のネットワーク経由で提供または配布するように構成しても良い。
【0090】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0091】
10 磁気ディスク装置
11 サーボコントローラ
11A 電圧レギュレータ
11B 電源監視部
12 ディスクモータ
13 ディスク
14 電源スイッチャ
15 電圧変換ユニット
16 SoC
16A パワーダウンタイマ
17 DRAM
18 FROM
20 外部電源システム
21 12V外部電源(第2電源)
22 5V外部電源(第1電源)