(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024171142
(43)【公開日】2024-12-11
(54)【発明の名称】インプリント装置、インプリント方法、および物品の製造方法。
(51)【国際特許分類】
H01L 21/027 20060101AFI20241204BHJP
B29C 59/02 20060101ALI20241204BHJP
【FI】
H01L21/30 502D
B29C59/02 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023088058
(22)【出願日】2023-05-29
(71)【出願人】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【弁理士】
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【弁理士】
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100208580
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 玲奈
(72)【発明者】
【氏名】鳥居 弘稔
【テーマコード(参考)】
4F209
5F146
【Fターム(参考)】
4F209AA44
4F209AF01
4F209AG05
4F209AH33
4F209AP06
4F209AP11
4F209AQ01
4F209AR07
4F209AR12
4F209PA02
4F209PB01
4F209PN09
4F209PN13
5F146AA31
(57)【要約】
【課題】重ね合わせ精度の改善に有利なインプリント装置を提供する。
【解決手段】パターンが形成されたモールドと、基板上に塗布されたインプリント材とを接触させて、基板上にインプリント材のパターンを形成するインプリント装置である。インプリント装置は、固定部と、固定部から第一の可撓部材を介して接続される可動部ベース、モールドを保持するモールド保持部材、および可動部ベースとモールド保持部材を接続する第二の可撓部材を有するインプリントヘッドと、モールド保持部材に保持されたモールドを基板保持部に保持された基板上のインプリント材と接触させるためにインプリントヘッドを駆動する第一の駆動機構と、第一の駆動機構を制御する制御部と、第二の可撓部材の歪量、または変形量、もしくは可動部ベースに対するモールド保持部材またはモールドの相対位置を計測する第一の計測器と、を有する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
パターンが形成されたモールドと、基板上に塗布されたインプリント材とを接触させて、前記基板上に前記インプリント材のパターンを形成するインプリント装置であって、
固定部と、前記固定部から第一の可撓部材を介して接続される可動部ベース、前記モールドを保持するモールド保持部材、および前記可動部ベースと前記モールド保持部材を接続する第二の可撓部材を有するインプリントヘッドと、
前記モールド保持部材に保持された前記モールドを基板保持部に保持された前記基板上の前記インプリント材と接触させるために前記インプリントヘッドを駆動する第一の駆動機構と、
前記第一の駆動機構を制御する制御部と、
前記第二の可撓部材の歪量、または変形量、もしくは前記可動部ベースに対する前記モールド保持部材または前記モールドの相対位置を計測する第一の計測器と、を有することを特徴とするインプリント装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記第一の計測器の値に基づき、前記第一の駆動機構の駆動を制御することを特徴とする請求項1に記載のインプリント装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記接触の前の前記第一の計測器の値からの変化量に基づいて、前記接触の時の前記第一の駆動機構の駆動量を制御することを特徴とする請求項1に記載のインプリント装置。
【請求項4】
前記モールドと、前記基板上の前記インプリント材とを接触させた状態で、前記基板上の前記インプリント材に硬化用のエネルギーを照射する照射部をさらに有し、
前記制御部は、前記照射部による前記エネルギーの照射開始時において、前記第一の計測器の値が目標値となるように、前記第一の駆動機構を制御することを特徴とする請求項1に記載のインプリント装置。
【請求項5】
前記第二の可撓部に対して前記モールド中心方向側に配置され、前記モールド保持部材の一部に対して前記接触の時の前記インプリントヘッドの駆動方向に力または変位を発生させることが可能な第二の駆動機構を有し、
前記制御部は、前記照射部による前記エネルギーの照射開始時における前記モールド保持部材の位置を補正するために前記第二の駆動機構を制御することを特徴とする請求項4に記載のインプリント装置。
【請求項6】
前記第一の計測器は、前記相対位置を計測する歪ゲージ、角度検出器、および位置検出器のいずれかであることを特徴とする請求項1に記載のインプリント装置
【請求項7】
前記第二の可撓部材は空洞部を有し、前記空洞部内に前記モールドを吸着または加圧により膨らませるための気体管路が配置されることを特徴とする請求項1に記載のインプリント装置。
【請求項8】
前記第二の可撓部材の断面形状は外形および前記空洞部が四角形または六角形であることを特徴とする請求項7に記載のインプリント装置。
【請求項9】
前記第一の駆動機構は、前記モールド保持部材に保持された前記モールドを中心として水平方向に3か所に配置され、
前記第二の可撓部材は前記モールド保持部材に保持された前記モールドを中心として水平方向に3か所、かつ前記モールドの方向から見た場合に前記第一の駆動機構と重なる位置に配置されることを特徴とする請求項1に記載のインプリント装置。
【請求項10】
前記制御部は、前記基板上の前記インプリント材と接触させる動作の途中で、前記第一の駆動機構の駆動の制御を前記第一の駆動機構の電流値に基づく制御から、前記第一の計測器の値に基づく制御に切り替えることを特徴とする請求項1に記載のインプリント装置。
【請求項11】
前記可動部ベースに固定され、前記第二の可撓部の前記モールド中心方向側に配置され、前記モールド保持部材の一部を吸着保持する保持機構を有し、
前記制御部は、前記接触の時、または前記接触の後に前記モールドを前記基板上の前記インプリント材から引きはがす離型動作の際に前記保持機構に前記モールド保持部材の一部を吸着保持させることを特徴とする請求項1に記載のインプリント装置。
【請求項12】
前記第二の可撓部材の剛性は、前記第一の可撓部材の剛性よりも低いことを特徴とする請求項1に記載のインプリント装置。
【請求項13】
前記モールドの側面から圧縮力を印加するための倍率補正機構と、
前記倍率補正機構から水平方向に延びて前記接触の方向に可撓性のある第三の可撓部材と、
前記第三の可撓部材付近の歪量または変形量の計測する第二の計測器と、を有し、
前記制御部は、前記第一の計測器の値と前記第二の計測器の値に基づいて、前記第一の駆動機構の駆動を制御することを特徴とする請求項1に記載のインプリント装置。
【請求項14】
前記第二の可撓部材は、前記モールドと前記基板上の前記インプリント材とを接触させる際に前記モールドを変形させるためのキャビティ空間の外側に配置されることを特徴とする請求項1に記載のインプリント装置。
【請求項15】
パターンが形成されたモールドと、基板上に塗布されたインプリント材とを接触させて、前記基板上に前記インプリント材のパターンを形成するインプリント方法であって、
固定部から第一の可撓部材を介して接続される可動部ベース、前記モールドを保持するモールド保持部材、および前記可動部ベースと前記モールド保持部材を接続する第二の可撓部材を有するインプリントヘッドを、前記モールド保持部材に保持された前記モールドを基板保持部に保持された前記基板上の前記インプリント材と接触させるために第一の駆動機構を用いて駆動し、
前記第二の可撓部材の歪量、または変形量、もしくは前記可動部ベースに対する前記モールド保持部材または前記モールドの相対位置を計測し、
前記計測の値に基づき、前記第一の駆動機構の駆動を制御することを特徴とするインプリント方法。
【請求項16】
請求項1に記載のインプリント装置を用いてパターンを基板に形成する工程と、
前記形成工程でパターンを形成された前記基板を加工する加工工程と、を含み、
前記加工工程で加工された前記基板から物品を製造することを特徴とする物品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インプリント装置、インプリント方法、および物品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスやMEMS(Micro Electro Mechanical System)などの微細化の要求が進み、従来のフォトリソグラフィー技術に加え、基板上の未硬化樹脂をモールドで成形し、樹脂のパターンを基板上に形成する微細加工技術が注目を集めている。この技術は、インプリント技術とも呼ばれ、基板上に数ナノメートルオーダーの微細な構造体を形成することができる。
【0003】
インプリント技術では、インプリント材の硬化法の1つとして光硬化法がある。光硬化法は、基板上に供給(配置)されたインプリント材と型とを接触させた状態で紫外線などの光を照射してインプリント材を硬化させ、硬化したインプリント材から型を引き離すことでインプリント材のパターンを基板上に形成する方法である。
【0004】
このようなインプリント技術を利用するインプリント装置では、微細化に加えて、基板上に段階的に形成されるパターンの重ね合わせ精度に対する要求も高くなっている。例えば、インプリント装置は、32nm程度のハーフピッチを有する半導体デバイスの製造に適用することが考えられている。この場合、ITRS(International Technology Roadmap for Semiconductors)によれば、6.4nmの重ね合わせ精度が必要とされている。このような高い重ね合わせ精度を実現するためには、基板とモールドの相対位置(水平方向の位置および鉛直方向の位置)を厳密に管理する必要がある。
【0005】
インプリント装置では、基板上のインプリント材と型とを接触させる(インプリント材に型を押し付ける)際に、基板と型との相対位置を合わせるアライメント(位置合わせ)が行われる。具体的には、水平方向のアライメントに関しては、基板および型の両者に設けられたアライメントマークが重なり合うように、基板ステージを介して、型に対して基板を水平方向に移動させることで実現する。また、鉛直方向のアライメントに関しては、型を鉛直方向に駆動するアクチュエータを介して、基板上のインプリント材に対する型の押し付け力を調整することで実現する。水平方向のアライメント誤差は、シフトや回転成分のずれとなり、鉛直方向のアライメント誤差は、基板又は型の歪み(ディストーション)を発生させる。従って、インプリント装置においては、基板と型との相対位置を、水平方向および鉛直方向のいずれに関しても、nmオーダーで合わせ込む必要がある。なお、ディストーションに関しては、基板や型を保持する保持面(保持部材)の平面度も重要な要素となり、平面度が低い場合には、基板と型とで変形量に差が生じてしまうため、重ね合わせ精度が低下する。
【0006】
また、インプリント装置では、装置内の駆動部からの外力による変形、振動、装置外からの床振動の伝搬などに起因して、型を保持する保持部材と基板を保持する保持部材との間に相対位置ずれが生じる可能性がある。従って、インプリント装置の構造体としては、
剛性を高く保つ必要がある
【0007】
更に、インプリント装置としては、高い重ね合わせ精度を長期間保証する必要があるため、アライメント精度が時間的に変化しないことも要求される。
【0008】
そこで、基板上のインプリント材に対する型の押し付け力を制御(管理)する技術として、例えば、アクチュエータの駆動出力(電流値)から押し付け力を計測して制御する技術がある。アクチュエータの駆動出力は、実装剛性や予圧ばねなどによる抵抗力と、基板上のインプリント材に対する型の押し付け力とを含む。但し、アクチュエータの熱や経年劣化によって、推力定数に変化が生じた場合には、アクチュエータの駆動出力と、基板上のインプリント材に対する型の押し付け力との関係が変化する。また、型を保持する保持部材(駆動側)およびその周辺部材(固定側)には、チューブ、ケーブル類、予圧用のばねなどが接続されているため、これらが駆動抵抗となる。かかる駆動抵抗が時間的に変化する場合には、アクチュエータの駆動出力から予測される押し付け力に影響を与えてしまうため、重ね合わせ精度の低下を引き起こす要因となる。基板上のインプリント材に対する型の押し付け力を制御する他の技術としては、特許文献1および2が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特許第4688872号公報
【特許文献2】特開2011―79249号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
特許文献1では、モールドを保持するチャック・ボディがたわみ材に結合されており、たわみ材は、モールドの動きを制御している配向システムに結合されている。配向システムの周りには3つのアクチュエータが間隔を隔てて接続されており、これにより、チャック・ボディを有するインプリント・ヘッドが駆動される。このような構造の場合、アクチュエータの出力、例えば電流の変化量で押し付け力を管理する必要がある。しかし、たわみ材の反力変化やモールド保持部に接続されるケーブルやチューブ類の張力変化等により押印力が変化しやすく、それによりモールドと基板の間に不都合な力が生じ、重ね合わせ精度を劣化させてしまう。
【0011】
特許文献2では、型で基板を押すときの押圧力を検出する押圧力検出センサを有する転写装置が開示されている。これによれば、押圧力検出センサにより直接押圧力を計測できる。しかしながら、モールドと基板上のインプリント材を接触させる際やモールドを離型する際には比較的大きな力が必要となり、硬化時は微小な力による高精度な制御が必要である。このためため特許文献2のような広い計測範囲によって、高精度な制御を実現するのは困難である。
【0012】
本発明は、このような状況を鑑みてなされたものであり、重ね合わせ精度の改善に有利なインプリント装置を提供することを例示的目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するために、本発明の一側面としてのインプリント装置は、パターンが形成されたモールドと、基板上に塗布されたインプリント材とを接触させて、基板上にインプリント材のパターンを形成するインプリント装置であって、固定部と、固定部から第一の可撓部材を介して接続される可動部ベース、モールドを保持するモールド保持部材、および可動部ベースとモールド保持部材を接続する第二の可撓部材を有するインプリントヘッドと、モールド保持部材に保持されたモールドを基板保持部に保持された基板上のインプリント材と接触させるためにインプリントヘッドを駆動する第一の駆動機構と、第一の駆動機構を制御する制御部と、第二の可撓部材の歪量、または変形量、もしくは可動部ベースに対するモールド保持部材またはモールドの相対位置を計測する第一の計測器と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、例えば、重ね合わせ精度の改善に有利なインプリント装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】インプリント装置1の構成を示す概略図である。
【
図2】第1実施形態に係るインプリントヘッドの構造を示す概略図である。
【
図4】第1実施形態に係るインプリント処理の動作シーケンスを示すフローチャートである。
【
図5】インプリント時にモールドに力が印加した場合の際の変形について説明する模式図である。
【
図6】第2実施形態に係るインプリントヘッドの構造を示す断面図である。
【
図7】第3実施形態に係るインプリントヘッドの構造を示す断面図である。
【
図8】第4実施形態に係るインプリントヘッドの構造を示す断面図である。
【
図9】第5実施形態に係るインプリントヘッドの構造を示す断面図である。
【
図10】物品の製造方法を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に、本発明の好ましい実施形態を添付の図面に基づいて詳細に説明する。
【0017】
<インプリント装置の構成>
まず、本発明の実施形態に係るインプリント装置の構成について説明する。
図1は、インプリント装置1の構成を示す概略図である。本実施形態におけるインプリント装置1は、半導体デバイス製造工程に使用される、被処理基板であるウエハ上(基板上)に対してモールドの凹凸パターンを転写する加工装置であり、インプリント技術の中でも光硬化法を採用した装置である。なお、以下の図において、モールド3に対する紫外線10の照射軸に平行にZ軸を取り、該Z軸に垂直な平面内で後述のモールド保持部材12に対してウエハ5が移動する方向にX軸を取り、該X軸に直交する方向にY軸を取って説明する。本実施形態のインプリント装置1は、照明系ユニット2と、モールド3を保持するインプリントヘッド4と、ウエハ5を保持するウエハステージ6と、塗布装置7と、モールド搬送装置8と、制御装置9と、を備える。
【0018】
照明系ユニット2は、インプリント処理の際に、モールド3に対して紫外線10を照射する照明手段であり、照射部として機能する。具体的には、照明系ユニット2は、モールド3と、ウエハ5上のインプリント材14とを接触させた状態で、インプリント材14に硬化用のエネルギーである紫外線10を照射する。この照明系ユニット2は、光源20と、光源20から射出された紫外線10をインプリント処理に適切な光に調整するための複数の光学素子と、を含む。
【0019】
モールド3は、外周部が矩形であり、ウエハ5に対する対向面に数十umの突起部3bを有し、突起部3bに所定のパターン(例えば、回路パターン等の凹凸パターン)が3次元状に形成されている。凹凸パターンの表面は、ウエハ5の表面との密着性を保つために、高平面度に加工されている。モールド3には、掘り込み部3a(キャビティ)を設けており、モールド3とウエハ5上のインプリント材14とを接触させる際に、掘り込み部3aを加圧して膨らませて変形させることでインプリント材14の凹凸パターンへの充填時間を短くすることができる。なお、モールド3の材質は、石英等、紫外線を透過させることが可能な材料である。
【0020】
インプリントヘッド4は、ベース定盤31によって支持されたブリッジ定盤32に固定されている。インプリントヘッド4は、吸着力や静電力によりモールド3を引きつけて保持するモールド保持部材12を備える。また、インプリントヘッド4は、押印アクチュエータ13(第一の駆動機構)を備える。押印アクチュエータ13は、モールド保持部材12に保持されたモールド3を中心として水平方向に3か所に配置される。押印アクチュエータ13は、ウエハ5上に塗布(供給)されたインプリント材14にモールド3を押し付けるために、モールド保持部材12をZ軸およびチルト方向に駆動可能にする。押印アクチュエータ13は、リニアモータが望ましい。押印駆動のガイドとして、各アクチュエータ近傍に板バネ(第一の可撓部)16を備える。板バネ16は、Z方向は可撓性を有し、それ以外の方向は剛性を保つ構造となっている。これにより押印駆動を可能にしつつ、振動による重ね合わせ精度劣化を防ぐことができる。なお、ここで押印とは、ウエハ5上に塗布されたインプリント材14にモールド3を押し付ける(接触させる)動作である。
【0021】
ウエハ5は、例えば、単結晶シリコン基板やSOI(Silicon on Insulator)基板からなる被処理基板であり、被処理面には、成形部となるインプリント材14が塗布される。
【0022】
ウエハステージ6は、ウエハ5を保持して、インプリント装置1内のXY平面内を自由に移動可能な基板保持部材である。ウエハステージ6を駆動するためのアクチュエータとしては、リニアモータが採用可能であるが、特に限定するものではない。ウエハステージ6上にはウエハ保持部材15を配しウエハ5を真空吸着により保持する。
【0023】
塗布装置(ディスペンサー)7は、ウエハ5上に未硬化のインプリント材14を塗布する塗布手段である。
【0024】
インプリント材14には、硬化用のエネルギーが与えられることによって硬化する硬化性組成物(未硬化状態の樹脂と呼ぶこともある)が用いられる。硬化用のエネルギーとしては、電磁波、熱などが用いられる。電磁波としては、例えば、その波長が10nm以上1mm以下の範囲から選択される、赤外線、可視光線、紫外線などの光を用いる。本実施形態では、硬化用のエネルギーとして紫外線10を用いる例について説明する。つまり、本実施形態において、インプリント材14は、照明系ユニット2からの紫外線10を受光することにより硬化する紫外線硬化樹脂である。インプリント材14は、製造する半導体デバイスの種類により適宜選択される。インプリント材14は、熱可塑性もしくは熱硬化性樹脂であってもよい。
【0025】
硬化性組成物は、光の照射によって、或いは、加熱によって硬化する組成物である。光の照射によって硬化する光硬化性組成物は、重合性化合物と光重合開始剤とを少なくとも含有し、必要に応じて、非重合性化合物又は溶剤を含有してもよい。非重合性化合物は、増感剤、水素供与体、内添型離型剤、界面活性剤、酸化防止剤、ポリマー成分などの群から選択される少なくとも一種である。
【0026】
モールド搬送装置8は、モールド3を搬送し、モールド保持部材12に対してモールド3を設置する搬送手段である。
【0027】
アライメントスコープ18は、インプリント処理において、ウエハ5とモールド3のそれぞれに設けられたアライメントマークを観察する。通常のインプリントでは、ウエハ5上に塗布されたインプリント材14にモールド3を押し付ける。そして、押し付ける際のウエハ5とモールド3の水平方向の相対位置は両者に設けたアライメントマークの重なりをインプリントヘッド4内に設けられたアライメントスコープ18により計測する。ウエハ5とモールド3の水平方向の相対位置が所望の位置になるようにウエハステージ6の位置を制御することで位置合わせを行う。
【0028】
制御装置9は、インプリント装置1の各構成要素を、各検出器の計測値をもとに動作、および調整等を制御する制御手段である。即ち、制御装置9は、制御部として機能する。具体的には、制御装置9は、後述する変位センサ17の値に基づき、押印アクチュエータ13の駆動を制御する。制御装置9は、不図示であるが、インプリント装置1の各構成要素に回線により接続された、磁気記憶媒体等の記憶手段を有するコンピュータ、又はシーケンサ等で構成され、CPU(Central Processing Unit)などを含む。プログラム又はシーケンスにより各構成要素の制御を実行する。制御装置9は、インプリント装置1と一体で構成しても良いし、若しくは、インプリント装置1とは別の場所に設置し、遠隔で制御する構成としても良い。
【0029】
<第1実施形態>
次に、本発明の第1実施形態に係るインプリント装置について説明する。
図2は、第1実施形態に係るインプリントヘッド4の構造を示す概略図である。
図2(A)第1実施形態に係るインプリントヘッド4の構造を示す断面図である。
図2(B)第1実施形態に係るインプリントヘッド4の構造を示す上面図である。
【0030】
モールド保持部材12は、可動部ベース19に接続される。可動部ベース19は、ブリッジ定盤32にインプリントヘッドを固定する固定部33から、板バネ16を介して接続される。モールド保持部材12はモールド吸着部12aでモールド3を吸着保持する。管路21はモールド吸着部12aまで真空経路を繋ぐ気体管路である。また、管路22はモールド3の背面の圧力を調整するための経路であり、調圧バルブと掘り込み部3aを繋ぐ気体管路である。掘り込み部3aの閉空間(キャビティ空間)を形成し、かつ紫外線10を突起部3bに形成されたパターン部まで透過させるためにモールド保持部材12の上部にガラス蓋23が設けられている。
【0031】
モールド保持部材12は、Z方向に可撓性がある可撓部(第二の可撓部)12bを複数有する。可撓部12bは、可動部ベース19とモールド保持部材12を接続する。本実施形態において、可撓部12bは、モールド保持部材12に保持されたモールド3を中心として水平方向に3か所、かつモールド方向から見た場合に押印アクチュエータ13と重なる位置に配置される。可撓部12bは内部に空洞部12cを有し、空洞部12c内の空間に管路21および22を配置することで、管路21および22を維持できる。可撓部12bも板バネ16と同様にZ方向のみに撓みやすく、それ以外の方向には剛性が保たれていることが望ましい。なお、
図2では可撓部12bはモールド保持部材12と一体(同一部材)として示しているが、別部材で結合した形でも良い。
【0032】
変位センサ17は、可動部ベース19に対するモールド保持部材12またはモールド3の相対位置を計測する計測器(第一の計測器)であって、位置検出器である。
【0033】
ここで、
図3を用いて、可撓部12bについて説明する。
図3は、可撓部12bを説明する模式図である。
図3(A)は、可撓部12bおよび空洞部12cの断面の第一の例である。
図3(A)では、可撓部12bの断面形状は外形および空洞部12cが四角形である。
図3(B)は、可撓部12bおよび空洞部12cの断面の第二の例である。
図3(B)では、可撓部12bの断面形状は外形および空洞部12cが六角形である。いずれも可撓部12bは薄肉で空洞部12cを取り囲むように形成されており、押印方向(-Z方向)に弱い力で撓むことができる。この可撓性は、板バネ16に対して高い。つまり、可撓部12bの剛性は板バネ16よりも低い。
図3(A)に示すように、可撓部12bの断面形状の外形および空洞部12cが四角形である場合、製造しやすい点で有利である。一方、
図3(B)に示すように、可撓部12bの断面形状の外形および空洞部12cが六角形である場合、撓みやすい点で有利である。
【0034】
次に、インプリント装置1の動作について説明する。
図4は、第1実施形態に係るインプリント処理の動作シーケンスを示すフローチャートである。具体的には、本図では、インプリント装置1により、複数枚のウエハ5に対し、ウエハ5上に凹凸層となるパターンをインプリント処理にて成形する際の動作シーケンスを示す。このフローチャートで示す各動作(ステップ)は、制御装置9の制御によって実行されうる。なお、この複数枚のウエハ5を含む1つのロットにおいては、同一のモールド3を用いるものとする。
【0035】
まず、S101では、モールド3をモールド搬送装置8によってモールド保持部材12の直下まで運搬し、モールド3をモールド保持部材12に搭載する。言い換えると、モールド3をモールド保持部材12に保持させる。
【0036】
次に、S102では、不図示のウエハ搬送装置によりウエハ5をウエハステージ6まで搬送し、ウエハ5をウエハステージ6上に搭載する。言い換えると、ウエハ5をウエハステージ6に保持させる。
【0037】
S103では、ウエハステージ6をインプリント材の塗布位置、具体的には、塗布装置7の直下に移動させる。そして、S104において、塗布装置7によりウエハ5上にインプリント材14を塗布する。
【0038】
S105では、ウエハ5をインプリントヘッド4の下のインプリント位置に移動させる。具体的には、インプリント対象のショットがモールド3の直下に来るようにウエハステージ6を移動させる。
【0039】
S106では、モールド3をウエハ5上のインプリント材14と接触(押印)させる。モールド3がウエハ5上のインプリント材14に接触する前に掘り込み部3aの内部圧力は加圧した状態で数10Nが印加される。モールドパターンが形成された突起部3bにインプリント材14が充填されたタイミングで内部圧力と押印力(ウエハ5方向への力)を弱めて内部圧力はゲージ圧0に、押印力は0Nに近づける。
【0040】
S107では、モールド3上のマークとウエハ5上のマークの位置をアライメントスコープ18で計測し所望の位置になるようにウエハステージ6で位置調整(アライメント)を行う。
【0041】
ここで、
図5を用いて、本実施形態に係るS107の処理について詳細に説明する。
図5は、インプリント時にモールド3に力が印加した場合の際の変形について説明する模式図である。押印によって、+Z方向への力40が加わった場合、可撓部12bを起点にモールド3周辺も+Z方向に移動する。この移動量を変位センサ17で計測することで、押印時にモールド3に加わる力を算出することができる。つまり、S107では、モールド3とウエハ5上のインプリント材14とが接触する前の変位センサ17の値からの変化量に基づいて、押印アクチュエータ13の駆動量を制御する。予め押印の力と計測位置での変位量との関係を取得して、その関係を用いて押印アクチュエータ13の出力を制御しても良い。押印動作としては、一旦ウエハ5上に塗布されたインプリント材14は比較的大きい力(数10N)を印加することで押し広げられ、徐々にその力を弱めていく。同時にウエハ5とモールド3とのアライメント(位置合わせ)を実施し、紫外線10を照射する直前ではこの力を0に近づける。この時、変位センサ17の出力が無負荷時の値を目標値とし、無負荷時の値になるように押印アクチュエータ13の出力を制御する。または、無負荷時の変位センサ17の出力を基準としそれを目標値として制御しても良い。照明系ユニット2による紫外線10の照射開始時において、変位センサ17の値が目標値となっていることが好ましい。このような制御を行うことでモールド3の突起部3bのゆがみを最小化し、高精度なパターンをウエハ上に転写することができる。
【0042】
さらに、インプリントヘッド4を降下させる動作等の紫外線10を照射する前の駆動は高精度な制御が要求されないため、押印アクチュエータ13の駆動出力(電流値)などで直接出力を制御しても良い。つまり、モールド3をウエハ5上のインプリント材14と接触させる動作の途中で、押印アクチュエータ13の駆動の制御を、押印アクチュエータ13の電流値に基づく制御から、変位センサ17の値に基づく制御に切り替える。このような制御とすることで、制御にかかる負荷を低減することができる。
【0043】
図4に戻り、S108では、制御装置9は、モールド3とウエハ5が目標の位置関係となったか、つまり、アライメントが完了したかを判定する。また、変位センサ17の値が目標値となったかを判定する。アライメントが完了かつ変位センサ17の値が目標値となっていない場合(No)には、S108を繰り返す。一方、アライメントが完了かつ変位センサ17の値が目標値となった場合(No)には、処理をS109へ進める。
【0044】
S109では、照明系ユニット2から紫外線10を照射しウエハ5上のインプリント材14を硬化させる。
【0045】
照射完了後、S110では、押印アクチュエータ13でインプリントヘッド4を駆動し、モールド3を持ち上げる方向に移動させ、ウエハ5上のインプリント材14からモールド3を引き離す(剥離する)。なお、S110の動作を離型という。
【0046】
S111では、連続してインプリントを行う次のショットがあるかを判定する。即ち、ウエハ5に未処理のショットがあるか否かを判定する。未処理のショットがある場合には(YES)、S103~S110の処理を繰り返す。一方、未処理のショットがない場合には(NO)、処理をS112に進める。
【0047】
S112では、インプリント処理が完了したウエハ5を回収する。具体的には、ウエハ5をウエハ搬送装置で搬出する。
【0048】
S113では、未処理のウエハ5があるか否かを判定する。未処理のウエハ5がある場合には(YES)、S102~S110の処理を繰り返す。一方、未処理のウエハ5がない場合には(NO)、処理をS114に進める。
【0049】
ロット内の全てのウエハ5でインプリント処理を終えたら、S115でモールド3を回収する。具体的には、モールド3をモールド搬送装置8で搬出する。そして、一連の処理は終了となる。
【0050】
なお、本実施形態では、変位センサ17および押印アクチュエータ13は、モールド3中心に対して約120°間隔の位置で3か所に配置される。そして、モールド3中心から見た場合に変位センサ17と押印アクチュエータ13とは重なる位置(方位)、好ましくは同一方向に配置される。このため、変位センサ17は、傾きも含めて押印アクチュエータ13の出力との相関をとることができる。ただし、配置上の自由度が限定される場合はこの限りではなく、4か所に配置しても良い。
【0051】
また、可撓部12bは、キャビティ空間内に設けられてもよいが、キャビティ空間の外側に設けられることが好ましい。キャビティ空間の外側に設けられる場合、キャビティ空間内の圧力によって変形しにくいためである。
【0052】
ここで、押印力によって可撓部12bが変形する際に、配線、配管類の抵抗変化を受けにくくするために、配線、配管類は可撓部12bよりもモールド3と反対方向(可動部ベース19側)に設けることも重要となる。また、変位センサ17の出力は、各部品の自重や、外乱などの影響を受けるため、押印力が加わらない状態での出力を予め計測しておき、押印時は押印力が加わらない状態からの変化量を制御に使用する必要がある。
【0053】
また、本実施形態では、変位センサ17を用いる例について説明したが、可動部ベース19に対するモールド保持部材12またはモールド3の相対位置が計測できればよく、これに限られるものではない。例えば、変位センサ17の代わりに角度センサ(角度検出器)を用いてもよい。
【0054】
以上、本実施形態によれば、モールドと基板の重ね合わせ精度を改善することが可能となる。
【0055】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態に係るインプリント装置について説明する。
図6は、第2実施形態に係るインプリントヘッド4aの構造を示す断面図である。本実施形態では、変位センサ17の代わりに歪ゲージ24を用いている。歪ゲージ24は、可撓部12bの歪量または変形量を計測する計測器(第一の計測器)である。可撓部12bが変形した際に歪が大きくなる部分、例えば、断面積がモールド吸着部12aに対して大きく減少する可撓部12bの部分に歪ゲージ24を接着することで検出感度を高めることができる。変位センサ17の代わりに歪ゲージ24を用いる場合、第1実施形態に比べて安価で省スペースとなる。
【0056】
可撓部12bは空洞部12cの圧力によっても変形する。つまり、歪ゲージ24の出力はモールド3の吸着や掘り込み部3aの加圧などの影響を受けるため、押印力が加わらない状態での出力を予め計測しておく。そして、押印時は押印力が加わらない状態からの変化量を押印アクチュエータ13の制御に使用する必要がある。
【0057】
(第3実施形態)
次に、本発明の第3実施形態に係るインプリント装置について説明する。
図7は、第3実施形態に係るインプリントヘッド4bの構造を示す断面図である。本実施形態では、モールド保持部材12を一時的に固定(保持)するための固定部材25(保持機構)を用いている。
【0058】
固定部材25は、可動部ベース19に固定され、可撓部12bのモールド中心方向側に位置する、モールド保持部材12の一部を吸着保持する。固定部材25は、モールド保持部材12の一部を吸着保持するための吸着部25aを有する。吸着部25aは、真空吸着により、モールド保持部材12の一部を吸着保持する。
【0059】
モールド3をウエハ5上のインプリント材14に押し付ける押印動作、ウエハ5上のインプリント材14からモールド3を持ち上げて引きはがす離型動作の時には数10Nの大きな力を要する。固定部材25は、その力により可撓部12bが破損することを防ぐ。または、押印動作および離型動作の応答性を上げる目的で、モールド吸着部12aの動きを抑制する。具体的には、制御装置9は、押印動作、または離型動作の際に固定部材25の吸着部25aによって、モールド保持部材12の一部を真空吸着によって、保持させる。本実施形態によれば、可撓部12bの破損を低減することができ、スループットを向上させることが可能となる。
【0060】
(第4実施形態)
次に、本発明の第4実施形態に係るインプリント装置について説明する。
図8は、第4実施形態に係るインプリントヘッド4cの構造を示す断面図である。本実施形態のインプリント装置は倍率補正機構11を有する。倍率補正機構11は、モールド3の側面からアクチュエータ(不図示)で圧縮力を印加し、モールド3上のパターン形状を変化させ、ウエハ5上の既存パターンに形状や倍率を近づける。倍率補正機構11は、水平方向に延びて、押印方向に可撓性のある可撓部材27(第三の可撓部材)を有し、モールド3に鉛直方向の力が発生しないような構成をとる。倍率補正機構11は、可撓部12bに対してモールド3と反対側の固定部29に固定される。可撓部材27の付近には歪ゲージ28(第二の計測器)が貼り付けられており、歪ゲージ28は可撓部材27付近に発生した歪量または変形量を計測する。この構成の場合、押印力が発生した際に、可撓部12bとともに可撓部材27にも歪が生じる。つまり歪ゲージ24および28の両者に歪が出力される。予め倍率補正機構11による圧縮力が付与されている場合は、その圧縮力による歪も加わっている場合があり、その際は圧縮力だけ印加した歪出力と押印力が加わったときの出力差を用いて、押印アクチュエータ13を制御する。
【0061】
このように歪ゲージ24および28の両者の出力に基づいて、紫外線照射時の押印力、即ち、押印アクチュエータ13の駆動量を制御する。このような制御により、倍率補正機構11を有するインプリント装置においても押印力の高精度な調整、モールド3の変形の少ないインプリントが可能となる。
【0062】
(第5実施形態)
次に、本発明の第5実施形態に係るインプリント装置について説明する。
図9は、第5実施形態に係るインプリントヘッド4dの構造を示す断面図である。本実施形態のインプリント装置は、押印アクチュエータ13に加えて、アクチュエータ26(第二の駆動機構)を有する。アクチュエータ26は、モールド保持部材12に対して、可撓部12bの撓みやすいZ方向に力を印加することができる。
【0063】
アクチュエータ26は、可撓部12bに対してモールド中心方向側に配置され、モールド保持部材12の一部に対して押印方向に力または変位を発生させることができる。制御装置9は、照明系ユニット2による紫外線10の照射開始時におけるモールド保持部材12の位置を補正するためにアクチュエータ26を制御する。即ち、押印アクチュエータ13でモールド3をウエハ5に対して一定距離に移動した後、紫外線照射時の微調整(補正)はアクチュエータ26を用いる。本実施形態によれば、押印力のよりダイナミックな制御が可能となる。
【0064】
<物品製造方法の実施形態>
インプリント装置を用いて形成した硬化物のパターンは、各種物品の少なくとも一部に恒久的に、或いは各種物品を製造する際に一時的に、用いられる。物品とは、電気回路素子、光学素子、MEMS、記録素子、センサ、或いは、型等である。電気回路素子としては、DRAM、SRAM、フラッシュメモリ、MRAMのような、揮発性或いは不揮発性の半導体メモリや、LSI、CCD、イメージセンサ、FPGAのような半導体素子等が挙げられる。型としては、インプリント用のモールド等が挙げられる。
【0065】
硬化物のパターンは、上記物品の少なくとも一部の構成部材として、そのまま用いられるか、或いは、レジストマスクとして一時的に用いられる。基板の加工工程においてエッチング又はイオン注入等が行われた後、レジストマスクは除去される。
【0066】
次に、物品の具体的な製造方法について説明する。
図10(A)に示すように、絶縁体等の被加工材2zが表面に形成されたシリコンウエハ等の基板1zを用意し、続いて、インクジェット法等により、被加工材2zの表面に組成物3zを付与する。ここでは、複数の液滴状になった組成物3zが基板上に付与された様子を示している。
【0067】
図10(B)に示すように、インプリント用の型4zを、その凹凸パターンが形成された側を基板上の組成物3zに向け、対向させる。
図10(C)に示すように、組成物3zが付与された基板1zと型4zとを接触させ、圧力を加える。組成物3zは型4zと被加工材2zとの隙間に充填される。この状態で硬化用のエネルギーとして光を型4zを透して照射すると、組成物3zは硬化する。
【0068】
図10(D)に示すように、組成物3zを硬化させた後、型4zと基板1zを引き離すと、基板1z上に組成物3zの硬化物のパターンが形成される。この硬化物のパターンは、型の凹部が硬化物の凸部に、型の凸部が硬化物の凹部に対応した形状になっており、即ち、組成物3zに型4zの凹凸パターンが転写されたことになる。
【0069】
図10(E)に示すように、硬化物のパターンを耐エッチングマスクとしてエッチングを行うと、被加工材2zの表面のうち、硬化物が無いか或いは薄く残存した部分が除去され、溝5zとなる。
図10(F)に示すように、硬化物のパターンを除去すると、被加工材2zの表面に溝5zが形成された物品を得ることができる。ここでは硬化物のパターンを除去したが、加工後も除去せずに、例えば、半導体素子等に含まれる層間絶縁用の膜、つまり、物品の構成部材として利用してもよい。なお、型4zとして、凹凸パターンを設けた回路パターン転写用の型を用いた例について述べたが、凹凸パターンがない平面部を有する型(平面テンプレート)であってもよい。
【0070】
<その他の実施形態>
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明は、これらの実施形態に限定されず、その要旨の範囲内で種々の変形および変更が可能である。
【0071】
本発明は、上述の実施形態の1つ以上の機能を実現するプログラムを、ネットワーク又は記憶媒体を介してシステム又は装置に供給し、そのシステム又は装置のコンピュータにおける1つ以上のプロセッサがプログラムを読出し実行する処理でも実現可能である。また、1つ以上の機能を実現する回路(例えば、ASIC)によっても実現可能である。
【0072】
本実施形態の開示は、以下の構成を含む。
(構成1)
パターンが形成されたモールドと、基板上に塗布されたインプリント材とを接触させて、前記基板上に前記インプリント材のパターンを形成するインプリント装置であって、
固定部と、前記固定部から第一の可撓部材を介して接続される可動部ベース、前記モールドを保持するモールド保持部材、および前記可動部ベースと前記モールド保持部材を接続する第二の可撓部材を有するインプリントヘッドと、
前記モールド保持部材に保持された前記モールドを基板保持部に保持された前記基板上の前記インプリント材と接触させるために前記インプリントヘッドを駆動する第一の駆動機構と、
前記第一の駆動機構を制御する制御部と、
前記第二の可撓部材の歪量、または変形量、もしくは前記可動部ベースに対する前記モールド保持部材または前記モールドの相対位置を計測する第一の計測器と、を有することを特徴とするインプリント装置。
【0073】
(構成2)
前記制御部は、前記第一の計測器の値に基づき、前記第一の駆動機構の駆動を制御することを特徴とする構成1に記載のインプリント装置
【0074】
(構成3)
前記制御部は、前記接触の前の前記第一の計測器の値からの変化量に基づいて、前記接触の時の前記第一の駆動機構の駆動量を制御することを特徴とする構成1または2に記載のインプリント装置。
【0075】
(構成4)
前記モールドと、前記基板上の前記インプリント材とを接触させた状態で、前記基板上の前記インプリント材に硬化用のエネルギーを照射する照射部をさらに有し、
前記制御部は、前記照射部による前記エネルギーの照射開始時において、前記第一の計測器の値が目標値となるように、前記第一の駆動機構を制御することを特徴とする構成1乃至3のいずれか一つに記載のインプリント装置。
【0076】
(構成5)
前記第二の可撓部に対して前記モールド中心方向側に配置され、前記モールド保持部材の一部に対して前記接触の時の前記インプリントヘッドの駆動方向に力または変位を発生させることが可能な第二の駆動機構を有し、
前記制御部は、前記照射部による前記エネルギーの照射開始時における前記モールド保持部材の位置を補正するために前記第二の駆動機構を制御することを特徴とする構成4に記載のインプリント装置。
【0077】
(構成6)
前記第一の計測器は、前記相対位置を計測する歪ゲージ、角度検出器、および位置検出器のいずれかであることを特徴とする構成1乃至5のいずれか一つに記載のインプリント装置。
【0078】
(構成7)
前記第二の可撓部材は空洞部を有し、前記空洞部内に前記モールドを吸着または加圧により膨らませるための気体管路が配置されることを特徴とする構成1乃至6のいずれか一つに記載のインプリント装置。
【0079】
(構成8)
前記第二の可撓部材の断面形状は外形および前記空洞部が四角形または六角形であることを特徴とする構成7に記載のインプリント装置。
【0080】
(構成9)
前記第一の駆動機構は、前記モールド保持部材に保持された前記モールドを中心として水平方向に3か所に配置され、
前記第二の可撓部材は前記モールド保持部材に保持された前記モールドを中心として水平方向に3か所、かつ前記モールドの方向から見た場合に前記第一の駆動機構と重なる位置に配置されることを特徴とする構成1乃至8のいずれか一つに記載のインプリント装置。
【0081】
(構成10)
前記制御部は、前記基板上の前記インプリント材と接触させる動作の途中で、前記第一の駆動機構の駆動の制御を前記第一の駆動機構の電流値に基づく制御から、前記第一の計測器の値に基づく制御に切り替えることを特徴とする構成1乃至9のいずれか一つに記載のインプリント装置。
【0082】
(構成11)
前記可動部ベースに固定され、前記第二の可撓部の前記モールド中心方向側に配置され、前記モールド保持部材の一部を吸着保持する保持機構を有し、
前記制御部は、前記接触の時、または前記接触の後に前記モールドを前記基板上の前記インプリント材から引きはがす離型動作の際に前記保持機構に前記モールド保持部材の一部を吸着保持させることを特徴とする構成1乃至10のいずれか一つに記載のインプリント装置。
【0083】
(構成12)
前記第二の可撓部材の剛性は、前記第一の可撓部材の剛性よりも低いことを特徴とする構成1乃至11のいずれか一つに記載のインプリント装置。
【0084】
(構成13)
前記モールドの側面から圧縮力を印加するための倍率補正機構と、
前記倍率補正機構から水平方向に延びて前記接触の方向に可撓性のある第三の可撓部材と、
前記第三の可撓部材付近の歪量または変形量の計測する第二の計測器と、を有し、
前記制御部は、前記第一の計測器の値と前記第二の計測器の値に基づいて、前記第一の駆動機構の駆動を制御することを特徴とする構成1乃至12のいずれか一つに記載のインプリント装置。
【0085】
(構成14)
前記第二の可撓部材は、前記モールドと前記基板上の前記インプリント材とを接触させる際に前記モールドを変形させるためのキャビティ空間の外側に配置されることを特徴とする構成1乃至13のいずれか一つに記載のインプリント装置。
【0086】
(方法1)
パターンが形成されたモールドと、基板上に塗布されたインプリント材とを接触させて、前記基板上に前記インプリント材のパターンを形成するインプリント方法であって、
固定部から第一の可撓部材を介して接続される可動部ベース、前記モールドを保持するモールド保持部材、および前記可動部ベースと前記モールド保持部材を接続する第二の可撓部材を有するインプリントヘッドを、前記モールド保持部材に保持された前記モールドを基板保持部に保持された前記基板上の前記インプリント材と接触させるために第一の駆動機構を用いて駆動し、
前記第二の可撓部材の歪量、または変形量、もしくは前記可動部ベースに対する前記モールド保持部材または前記モールドの相対位置を計測し、
前記計測の値に基づき、前記第一の駆動機構の駆動を制御することを特徴とするインプリント方法。
【0087】
(方法2)
構成1乃至14のいずれか一つに記載のインプリント装置を用いてパターンを基板に形成する工程と、
前記形成工程でパターンを形成された前記基板を加工する加工工程と、を含み、
前記加工工程で加工された前記基板から物品を製造することを特徴とする物品の製造方法。
【符号の説明】
【0088】
1 インプリント装置
3 モールド
4 インプリントヘッド
5 ウエハ
9 制御装置
12b 可撓部
13 押印アクチュエータ
16 板バネ
17 変位センサ
19 可動部ベース