IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 富士通株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-エラー訂正装置及びエラー訂正方法 図1
  • 特開-エラー訂正装置及びエラー訂正方法 図2
  • 特開-エラー訂正装置及びエラー訂正方法 図3
  • 特開-エラー訂正装置及びエラー訂正方法 図4
  • 特開-エラー訂正装置及びエラー訂正方法 図5
  • 特開-エラー訂正装置及びエラー訂正方法 図6
  • 特開-エラー訂正装置及びエラー訂正方法 図7
  • 特開-エラー訂正装置及びエラー訂正方法 図8
  • 特開-エラー訂正装置及びエラー訂正方法 図9
  • 特開-エラー訂正装置及びエラー訂正方法 図10
  • 特開-エラー訂正装置及びエラー訂正方法 図11
  • 特開-エラー訂正装置及びエラー訂正方法 図12
  • 特開-エラー訂正装置及びエラー訂正方法 図13
  • 特開-エラー訂正装置及びエラー訂正方法 図14
  • 特開-エラー訂正装置及びエラー訂正方法 図15
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024171146
(43)【公開日】2024-12-11
(54)【発明の名称】エラー訂正装置及びエラー訂正方法
(51)【国際特許分類】
   H03M 13/45 20060101AFI20241204BHJP
   H04L 1/00 20060101ALI20241204BHJP
【FI】
H03M13/45
H04L1/00 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023088063
(22)【出願日】2023-05-29
(71)【出願人】
【識別番号】000005223
【氏名又は名称】富士通株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087480
【弁理士】
【氏名又は名称】片山 修平
(72)【発明者】
【氏名】杉山 純一
【テーマコード(参考)】
5J065
5K014
【Fターム(参考)】
5J065AD03
5J065AE02
5J065AH13
5J065AH15
5J065AH21
5K014FA11
5K014HA05
(57)【要約】
【課題】消費電力を低減するエラー訂正装置及びエラー訂正方法を提供することを目的とする。
【解決手段】エラー訂正装置は、軟判定情報に基づいて、対象フレームに対するエラー訂正の演算を繰り返し行い、かつ、繰り返し行う前記演算の演算数の上限値が設定されている、エラー訂正回路と、フレーム毎の前記エラー訂正の前記演算の繰り返し数をカウントし、さらに、過去の二つ以上の複数のフレームの、前記繰り返し数の和を算出する第1算出回路と、前記上限値を、前記繰り返し数の和に応じた値で、かつ、前記繰り返し数の和が大きい時ほど、小さな値となるように設定する第2算出回路と、を含む。
【選択図】図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
軟判定情報に基づいて、対象フレームに対するエラー訂正の演算を繰り返し行い、かつ、繰り返し行う前記演算の演算数の上限値が設定されている、エラー訂正回路と、
フレーム毎の前記エラー訂正の前記演算の繰り返し数をカウントし、さらに、過去の二つ以上の複数のフレームの、前記繰り返し数の和を算出する第1算出回路と、
前記上限値を、前記繰り返し数の和に応じた値で、かつ、前記繰り返し数の和が大きい時ほど、小さな値となるように設定する第2算出回路と、
を含むエラー訂正装置。
【請求項2】
前記第2算出回路は、予め決められた設定回数から前記繰り返し数の和を引いた値を前記上限値として設定する、
ことを特徴とする請求項1に記載のエラー訂正装置。
【請求項3】
前記第2算出回路は、所定のエラー訂正回数に抑えるための受信信号品質の要求値に基づいて、前記設定回数を決定する、
ことを特徴とする請求項2に記載のエラー訂正装置。
【請求項4】
前記第2算出回路は、所定のエラー訂正回数に抑えるための受信信号品質の要求値より小さい受信信号品質における、消費電力の増大を抑える値に、前記設定回数を決定する、
ことを特徴とする請求項2に記載のエラー訂正装置。
【請求項5】
前記対象フレームの品質を検出する第1検出回路と、
前記品質と前記品質の低下に応じて小さくなる前記上限値を前記品質ごとに対応付けた対応表に基づいて、前記第1検出回路が検出した前記品質に応じた前記上限値を特定し、特定した前記上限値を前記エラー訂正回路に設定する特定回路とを、
前記第1算出回路と前記第2算出回路に代えて含む、
ことを特徴とする請求項1に記載のエラー訂正装置。
【請求項6】
前記対象フレームに格納されたシンボルのコンスタレーションを検出する第2検出回路と、
前記コンスタレーションと前記コンスタレーションの品質低下に応じて小さくなる前記上限値を機械学習した学習済モデルに基づいて、前記第2検出回路が検出した前記コンスタレーションに応じた前記上限値を推論し、推論した前記上限値を前記エラー訂正回路に設定する推論回路とを、
前記第1算出回路と前記第2算出回路に代えて含む、
ことを特徴とする請求項1に記載のエラー訂正装置。
【請求項7】
軟判定情報に基づいて、対象フレームに対するエラー訂正の演算を繰り返し行い、かつ、繰り返し行う前記演算の演算数の上限値が設定されている、エラー訂正回路に対するエラー訂正方法であって、
フレーム毎の前記エラー訂正の前記演算の繰り返し数をカウントし、
過去の二つ以上の複数のフレームの、前記繰り返し数の和を算出し、
前記上限値を、前記繰り返し数の和に応じた値で、かつ、前記繰り返し数の和が大きい時ほど、小さな値となるように設定する、
ことを特徴とするエラー訂正方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本件は、エラー訂正装置及びエラー訂正方法に関する。
【背景技術】
【0002】
マルチキャリア伝送は、例えば20Gbpsや50Gbpsなどの低い伝送レートのサブキャリア信号を多重することにより大容量伝送を可能とする。サブキャリア信号は、長距離伝送が可能となるように、例えばSD-FEC(Soft Decision- Forward Error Correction:軟判定前方エラー訂正)などのエラー訂正が行われる。
【0003】
このため、サブキャリア信号は、送信装置において例えばLDPC(Low Density Parity-check Code:低密度パリティ検査符号)により符号化処理される(例えば特許文献1参照)。その他、誤り訂正能力が高く、様々な伝送分野で採用されているターボ符号なども知られている(例えば特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2022-007503号公報
【特許文献2】特開2009-201057号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、LDPCは、ビットエラーレートが低い場合、多くの場合でエラー訂正の繰り返し回数(すなわちイタレーション回数)が少ない。このため、エラー訂正の対象フレームの品質が高品質である場合、低い消費電力でエラー訂正が行われる。しかしながら、ビットエラーレートが高い場合、エラー訂正の繰り返し回数が増大する。このため、対象フレームの品質が低品質である場合、エラー訂正に要する消費電力を抑えることが難しいという問題がある。
【0006】
そこで、1つの側面では、消費電力を低減するエラー訂正装置及びエラー訂正方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
1つの実施態様では、エラー訂正装置は、軟判定情報に基づいて、対象フレームに対するエラー訂正の演算を繰り返し行い、かつ、繰り返し行う前記演算の演算数の上限値が設定されている、エラー訂正回路と、フレーム毎の前記エラー訂正の前記演算の繰り返し数をカウントし、さらに、過去の二つ以上の複数のフレームの、前記繰り返し数の和を算出する第1算出回路と、前記上限値を、前記繰り返し数の和に応じた値で、かつ、前記繰り返し数の和が大きい時ほど、小さな値となるように設定する第2算出回路と、を含む。
【発明の効果】
【0008】
消費電力を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】第1実施形態に係るエラー訂正装置の一例である。
図2】合計回数の一例を説明する図である。
図3】設定回数を算出するシミュレーションの一例である。
図4】設定回数を決定するグラフの一例である。
図5】第1実施形態に係るエラー訂正装置の動作の一例を示すフローチャートである。
図6】比較例に係る低品質時の繰り返し回数を説明する図である。
図7】実施例に係る低品質時の繰り返し回数を説明する図である。
図8】高品質なフレームに対するエラー訂正の訂正過程の一例を説明する図である。
図9】中品質なフレームに対するエラー訂正の訂正過程の一例を説明する図である。
図10】低品質なフレームに対するエラー訂正の訂正過程の一例を説明する図である。
図11】第2実施形態に係るエラー訂正装置の一例である。
図12】フレームの品質と上限値を対応付けた対応表の一例である。
図13】第2実施形態に係るエラー訂正装置の動作の一例を示すフローチャートである。
図14】第3実施形態に係るエラー訂正装置の一例である。
図15】第3実施形態に係るエラー訂正装置の動作の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本件を実施するための形態について図面を参照して説明する。
【0011】
(第1実施形態)
図1に示すように、エラー訂正装置10は復号化回路100に含まれている。復号化回路100は例えば光受信機のトランスポンダに実装される。復号化回路100はDSP(Digital Signal Processor)110と設定回路120とを備えている。DSP110は、軟判定部111、復号部112、及びデフレーマ部113を備えている。デフレーマ部113はDSP110と異なるフレーマチップに設けられてもよい。DSP110に代えて、LSI(Large-Scale Integration)やFPGA(Field Programmable Gate Array)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)といったハードウェア回路が採用されてもよい。
【0012】
軟判定部111は、DSP110にエラー訂正対象として入力された対象フレーム(以下、単にフレームという)の軟判定を行う。DSP110に入力されるフレームとしては、例えばOTN(Optical channel Transport Unit)フレームにFECが付与されたFECフレームなどがある。フレームにはHD-FECパリティとSD-FECパリティが含まれている。フレームにはコンスタレーション内のシンボルが割り当てられている。軟判定部111はフレームに割り当てられたシンボルからビット列の値「0」,「1」の確からしさを判定する。軟判定部111は、各ビット列の値を含むフレームを復号部112に出力する。
【0013】
復号部112はフレームに含まれるビット列の値を訂正する。復号部112はSD-FEC復号部131とHD-FEC(Hard Decision- Forward Error Correction:硬判定前方エラー訂正)復号部132とを備えている。SD-FEC復号部131はエラー訂正回路の一例である。
【0014】
SD-FEC復号部131は、軟判定情報としてのSD-FEC(より詳しくはLDPC)パリティに基づいて、フレームに対するエラー訂正の演算を繰り返し行うことで、フレームに含まれるビット列の値を訂正する。つまり、SD-FEC復号部131は、SD-FECパリティを用いて復号化を行う。SD-FEC復号部131には繰り返し行う演算の演算数の上限値が設定されている。SD-FEC復号部131は、各ビット列を含むフレームをHD-FEC復号部132に出力する。
【0015】
HD-FEC復号部132は、HD-FECパリティに基づいて、フレームに含まれる各ビット列の値を訂正する。つまり、HD-FEC復号部132は、HD-FECパリティを用いて復号化を行う。HD-FEC復号部132は各ビット列を含む別のフレームをデフレーマ部113に出力する。HD-FEC復号部132が出力する別のフレームとしては、例えばFECフレームからFECが除去されたOTN(Optical channel Transport Unit)フレームが該当する。
【0016】
デフレーマ部113はデマッピングを行うことによって別のフレームからクライアント信号を取り出し、例えば送受信モジュール(不図示)に出力する。設定回路120はDSP110に対し各種の設定を行う。設定回路120は第1算出部121と第2算出部122とを備えている。第1算出部121は第1算出回路の一例である。第2算出部122は第2算出回路の一例である。第1算出部121と第2算出部122とSD-FEC復号部131とによってエラー訂正装置10を実現することができる。
【0017】
第1算出部121はエラー訂正の繰り返し回数と、過去の繰り返し回数との合計回数を算出する。より詳しくは、第1算出部121はフレーム毎のエラー訂正の演算の繰り返し回数をカウント(計数)する。そして、第1算出部121は過去の二つ以上の複数のフレームの繰り返し回数の和(具体的には総和)を算出し、カウントした繰り返し回数とこの総和との合計回数を算出する。例えば、図2に示すように、フレーム番号「10」のフレームがエラー訂正の対象である場合、第1算出部121はフレーム番号「10」のフレームに対して行ったエラー訂正の繰り返し回数(イタレーション回数)をSD-FEC復号部131から取得する。本実施形態であれば、第1算出部121は繰り返し回数「3」を取得する。一方、第1算出部121は、フレーム番号「1」からフレーム番号「9」までの過去のフレームに対して行ったエラー訂正の繰り返し回数の総和を保持している。本実施形態であれば、第1算出部121は繰り返し回数の総和「41」を保持している。第1算出部121は繰り返し回数「3」と繰り返し回数の総和「41」とを合計して、合計回数「44」を算出する。
【0018】
第2算出部122は、上述した上限値を、繰り返し回数の和に応じた値で、かつ、繰り返し回数の和が大きい時ほど、小さな値となるように設定する。より詳しくは、第2算出部122は、第1算出部121が算出した合計回数と事前に定めた設定回数とに基づいて、エラー訂正対象のフレームの次に入力されるフレームに対するエラー訂正の繰り返し回数の上限値を算出して設定する。例えば、第2算出部122は予め決められた設定回数から繰り返し回数の和を引いた値を上限値として設定する。設定回数はエラー訂正の訂正性能とトランスポンダの消費電力との関係のシミュレーションを実行して事前に決定される。例えば、図3に示すように、3種類の設定回数「250」、「150」、「70」が用意されて、シミュレーションが実行される。
【0019】
設定回数「250」が採用されてシミュレーションが実行された場合、復号部112の訂正性能を表すPost FEC BER(Bit Error Rate)はFEC limitである1E-15(1.0×10-15)より小さくなり、比較例と同様に全体的に望ましい結果が得られる。FEC limitは所定のエラー訂正回数に抑えるための受信信号品質の要求値の一例である。しかしながら、設定回数「250」が採用されてシミュレーションが実行された場合、消費電力は比較例に比べて低減する。
【0020】
設定回数「150」が採用されてシミュレーションが実行された場合も、Post FEC BERはFEC limitである1E-15より小さくなり、比較例と同様に全体的に望ましい結果が得られる。一方で、設定回数「150」が採用されてシミュレーションが実行された場合、設定回数「250」が採用されてシミュレーションが実行された場合に比べて、さらに消費電力が低減する。このように、設定回数「150」が採用されると、設定回数「250」が採用されてシミュレーションが実行された場合に比べて、望ましい結果が得られる。
【0021】
なお、設定回数「70」が採用されてシミュレーションが実行された場合、設定回数「150」が採用されてシミュレーションが実行された場合に比べて、さらに消費電力が低減する。しかしながら、Post FEC BERはFEC limitである1E-15より小さくならず、比較例に比べて全体的に望ましい結果が得られない。このように、3種類の設定回数「250」、「150」、「70」が用意されて、シミュレーションが実行された場合、設定回数「150」が設定回数「250」及び「70」に比べて良好なシミュレーション結果が得られる。
【0022】
このような3種類の設定回数「250」、「150」、「70」が用意されてシミュレーションが実行された結果に基づいて、図4に示すように、設定回数を決定するためのグラフが事前に生成される。当該グラフによれば、受信信号の信号品質を表すSNR(Signal to Noise Ratio:信号対雑音比)が一定であることにより、FEC性能の低下が抑えられている。このため、FEC性能の低下が発生していないと判断できる最小値「150」を設定値として採用すれば、最小値「150」より大きな値を設定値として採用した場合に比べて、ピーク電力が抑えられる。
【0023】
第2算出部122はこのように事前に定めた設定回数と合計回数とに基づいて、エラー訂正対象のフレームの次に入力されるフレームに対するエラー訂正の繰り返し回数の上限値を算出する。より詳しくは、第2算出部122は以下の数式により差分を算出することにより繰り返し回数の上限値を算出する。
<数式>
繰り返し回数の上限値=設定回数-合計回数
【0024】
第2算出部122はこのように算出した繰り返し回数の上限値をSD-FEC復号部131に設定する。これにより、SD-FEC復号部131に入力される次のフレームに対するエラー訂正の繰り返し回数が上限値に制限される。なお、本実施形態では、第2算出部122は一例として数式を採用したが、繰り返し回数の上限値と合計回数とを対応付けた対応表を採用してもよい。また、設定回数を事前に定めずに、第2算出部122がFEC limitに基づいて設定回数を決定してもよい。この場合、第2算出部122は、FEC limitより小さい(又は低い)受信信号品質における、消費電力の増大を抑える値に、設定回数を決定してもよい。
【0025】
図5を参照して、エラー訂正装置10の動作について説明する。
【0026】
軟判定部111からフレームが入力されると、SD-FEC復号部131はフレームに対するエラー訂正を実行する(ステップS1)。ステップS1の処理が終了すると、SD-FEC復号部131はフレームのエラー訂正に要した繰り返し回数を特定する(ステップS2)。ステップS2の処理が完了すると、第1算出部121は合計回数を算出する(ステップS3)。より詳しくは、第1算出部121はSD-FEC復号部131が特定した繰り返し回数を取得し、第1算出部121が保持する過去の繰り返し回数の総和と、取得した繰り返し回数を合計した合計回数を算出する。
【0027】
ステップS3の処理が完了すると、第2算出部122は上限値を算出し、上限値をSD-FEC復号部131に設定する(ステップS4)。より詳しくは、第2算出部122は設定回数から合計回数を差し引くことにより上限値を算出し、算出した上限値をSD-FEC復号部131に設定する。ステップS4の処理が完了すると、SD-FEC復号部131は後続のフレームの有無を判断する(ステップS5)。
【0028】
後続のフレームがある場合(ステップS5:NO)、エラー訂正装置10はステップS1からステップS4までの処理を繰り返す。これにより、SD-FEC復号部131はフレームが入力される度に上限値が算出されて、SD-FEC復号部131に設定される。一方、後続のフレームがない場合(ステップS5:YES)、SD-FEC復号部131は処理を終了する。
【0029】
図6及び図7を参照して、本件の効果を比較例と対比して説明する。
【0030】
まず、図6に示すように、上限値がない比較例の場合、エラー訂正対象のフレームの品質が高品質であれば、エラー訂正に要する繰り返し回数が少なくて済む。繰り返し回数が少なくなれば、消費電力は低く抑えられる。しかしながら、上限値がない場合、エラー訂正対象のフレームの品質が低品質であれば、高品質の場合と比べて、エラー訂正に要する繰り返し回数が多くなる。繰り返し回数が多くなれば、消費電力が増大する。
【0031】
ところが、図7に示すように、上限値がある実施例の場合、エラー訂正対象のフレームの品質が高品質であるときには比較例の場合と同様に、エラー訂正に要する繰り返し回数が少なくて済む。これにより、消費電力が低く抑えられる。しかしながら、上限値がある場合、エラー訂正対象のフレームの品質が低品質であれば、上限値は一定的な設定回数と変動的な合計回数によって定められるため、エラー訂正に要する繰り返し回数が上限値に制限される。これにより、エラー訂正対象のフレームの品質が低品質である場合、繰り返し回数が少なくなり、消費電力が低減する。このように、本実施例によれば、フレームの品質が低品質である場合には、動的にエラー訂正に要する繰り返し回数が上限値に制限され、消費電力の低減化を実現することができる。
【0032】
図8乃至図10を参照して、ビット列の値「0」,「1」に対するエラー訂正時の訂正過程を説明する。図8乃至図10に示す各フレーム20Fのビット列に含まれる個別領域21,22,23には値「0」又は値「1」のいずれかが含まれている。個別領域21はエラー訂正の必要がない正しい値が格納されている。個別領域22はエラー訂正の必要がある誤った値が格納されている。個別領域23はエラー訂正を行った後のエラー訂正済の値が格納されている。
【0033】
まず、図8の上段左側に示すように、エラー頻度が低いフレーム20Fが受信信号としてSD-FEC復号部131に入力された場合、1回目のエラー訂正が横方向に1回実施されることで、図8の上段中央に示すように、個別領域22の一部が個別領域23に置き換わる。すなわち、誤った値が正しい値に訂正される。次に、2回目のエラー訂正が縦方向に1回実施されることで、図8の上段右側に示すように、3つの個別領域22を除き、個別領域22の大部分が個別領域23に置き換わる。
【0034】
さらに、3回目のエラー訂正が横方向に1回実施されることで、図8の下段左側に示すように、3つの個別領域22の全てが個別領域23に置き換わる。このように、エラー頻度が低いフレーム20Fであれば、3回目のエラー訂正により誤った値のすべてが正しい値に訂正される。したがって、図8の下段中央に示すように、4回目のエラー訂正が縦方向に1回実施されてもエラー訂正対象の個別領域22は存在しないため、エラー訂正に要する消費電力が抑えられる。また、図8の下段右側に示すように、5回目のエラー訂正が横方向に1回実施されてもエラー訂正対象の個別領域22は存在しないため、エラー訂正に要する消費電力が抑えられる。
【0035】
次に、図9の上段左側に示すように、上述したエラー頻度が低いフレーム20Fよりエラー頻度がわずかに高いエラー頻度が中程度のフレーム20Gが受信信号としてSD-FEC復号部131に入力されることもある。この場合、1回目のエラー訂正が横方向に1回実施されても、図9の上段中央に示すように、個別領域22の4つが個別領域23に置き換わるだけで、個別領域22の大部分が依然として残存する。すなわち、誤った値の大部分が正しい値に訂正されずに残存する。
【0036】
次に、2回目のエラー訂正が縦方向に1回実施されることで、図9の上段右側に示すように、個別領域22の半分程度が個別領域23に置き換わる。さらに、3回目のエラー訂正が横方向に1回実施されることで、図9の下段左側に示すように、10個の個別領域22を除き、個別領域22の大部分が個別領域23に置き換わる。そして、4回目のエラー訂正が縦方向に1回実施されることで、図9の下段中央に示すように、8個の個別領域22を除き、個別領域22の大半が個別領域23に置き換わる。最終的に、5回目のエラー訂正が横方向に1回実施されることで、個別領域22の全てが個別領域23に置き換わる。
【0037】
このように、エラー頻度が中程度のフレーム20Gである場合、5回目のエラー訂正により誤った値のすべてが正しい値に訂正される。すなわち、エラー頻度が中程度のフレーム20Gである場合、エラー頻度が低いフレーム20Fよりエラー訂正の繰り返し回数が増加する。このため、エラー頻度が低いフレーム20Fよりエラー訂正に要する消費電力が増大する。しかしながら、最終的に誤った値のすべてが正しい値に訂正されるため、受信信号の疎通不良は回避される。
【0038】
なお、図10の上段左側に示すように、上述したエラー頻度が中程度のフレーム20Gよりエラー頻度が高いフレーム20Hが受信信号としてSD-FEC復号部131に入力されることもある。この場合、1回目のエラー訂正が横方向に1回実施されても、図10の上段中央に示すように、個別領域22の3つが個別領域23に置き換わるだけで、個別領域22の大部分が依然として残存する。すなわち、誤った値の大部分が正しい値に訂正されずに残存する。
【0039】
次に、2回目のエラー訂正が縦方向に1回実施されても、図10の上段右側に示すように、個別領域22の大部分が個別領域23に置き換わらずに残存する。また、3回目のエラー訂正が横方向に1回実施されても、図10の下段左側に示すように、個別領域22の大部分が個別領域23に置き換わらずに残存する。さらに、4回目のエラー訂正が縦方向に1回実施されても、図10の下段中央に示すように、個別領域22の大半が個別領域23に置き換わらずに残存する。最終的に、5回目のエラー訂正が横方向に1回実施されても、個別領域22の全てが個別領域23に置き換わらずに残存する。
【0040】
このように、エラー頻度が高いフレーム20Hである場合、5回目のエラー訂正によっても誤った値のすべてが正しい値に訂正されずに残存する。すなわち、エラー頻度が高いフレーム20Hである場合、エラー頻度が中程度のフレーム20Gよりエラー訂正の繰り返し回数が増加してもエラー訂正しきれない。すなわち、エラー頻度が高いフレーム20Hである場合、エラー訂正の繰り返し回数の増加に伴い、エラー訂正に要する消費電力が増大するが、受信信号の疎通不良が発生する。本実施形態では、このようなエラー頻度が高いフレーム20Hによって疎通不良が発生する場合に限定して、SD-FEC復号部131に上限値が設定され、繰り返し回数が制限される。これにより、エラー頻度が高い品質の低いフレームに対するエラー訂正が行われる際の消費電力の低減が図られている。
【0041】
(第2実施形態)
続いて、図11乃至図13を参照して、本件の第2実施形態について説明する。図11に示すように、復号化回路100は、エラー訂正装置10に代えて、エラー訂正装置20を含んでいてもよい。エラー訂正装置20は、SD-FEC復号部131と、第1検出部123と、特定部124とを備えている。第1検出部123は第1検出回路の一例である。特定部124は特定回路の一例である。
【0042】
第1検出部123はSD-FEC復号部131に入力される前のフレームの品質を検出する。例えば、第1検出部123は復号部112に入力される前の品質を表すPre FEC BERを検出する。特定部124は第1検出部123が検出したPre FEC BERに応じた上限値を特定する。具体的には、図12に示すように、特定部124は複数のPre FEC BERと複数の上限値とをPre FEC BERごとに対応付けた対応表を含んでいる。
【0043】
この対応表によれば、フレームの品質はPre FEC BERが4.00E-2以上である場合に低い判断され、Pre FEC BERが4.00E-2より大きな場合に採用される上限値より小さな上限値が採用される。これにより、品質が低いフレームの場合に、消費電力が抑えられる。このような対応表に基づいて、特定部124は第1検出部123が検出したPre FEC BERに応じた上限値を特定する。特定部124は上限値を特定すると、特定した上限値をSD-FEC復号部131に設定する。
【0044】
図13を参照して、エラー訂正装置20の動作について説明する。
【0045】
フレームが軟判定部111から出力されてから復号部112に入力される前に、第1検出部123はフレームの品質を検出する(ステップS11)。ステップS11の処理が完了すると、SD-FEC復号部131はフレームに対するエラー訂正を実行する(ステップS12)。なお、ステップS11,12の処理は同じタイミングであってもよい。
【0046】
ステップS12の処理が終了すると、特定部124は上限値を特定し、上限値をSD-FEC復号部131に設定する(ステップS13)。より詳しくは、特定部124は第1検出部123が検出した品質に応じた上限値を特定し、特定した上限値をSD-FEC復号部131に設定する。ステップS13の処理が完了すると、SD-FEC復号部131は後続のフレームの有無を判断する(ステップS14)。
【0047】
後続のフレームがある場合(ステップS14:NO)、エラー訂正装置20はステップS11からステップS13までの処理を繰り返す。これにより、SD-FEC復号部131はフレームが入力される度に上限値が特定されて、SD-FEC復号部131に設定される。一方、後続のフレームがない場合(ステップS14:YES)、SD-FEC復号部131は処理を終了する。
【0048】
このように、第2実施形態によれば、フレームの品質に応じた上限値がSD-FEC復号部131に設定される。例えば、フレームの品質が低い場合には、フレームの品質が高い場合に比べて小さな上限値が採用される。これにより、フレームの品質が低い場合におけるエラー訂正に要する繰り返し回数が減少し、消費電力が低減する。なお、第2実施形態では、フレームの品質の一例として、Pre FEC BERを使用して説明したが、Pre FEC BERに代えて、SNRやOSNR(Optical SNR)を採用してもよい。
【0049】
(第3実施形態)
続いて、図14及び図15を参照して、本件の第3実施形態について説明する。図14に示すように、復号化回路100は、エラー訂正装置10に代えて、エラー訂正装置30を含んでいてもよい。エラー訂正装置30は、SD-FEC復号部131と、第2検出部125と、推論部126とを備えている。第2検出部125は第2検出回路の一例である。推論部126は推論回路の一例である。
【0050】
第2検出部125は軟判定部111に入力される前のフレームに格納された複数のシンボルのコンスタレーションを検出する。推論部126はフレームの品質に応じたコンスタレーションと各コンスタレーションに応じた上限値を事前に機械学習した学習済モデルを備える。例えば、推論部126は品質が低いフレームに格納された複数のシンボルのコンスタレーションと品質が高いフレームに対応する上限値より小さな上限値を機械学習した学習済モデルを備える。推論部126は第2検出部125が検出したコンスタレーションに応じた上限値を推論する。推論部126は上限値を推論すると、推論した上限値をSD-FEC復号部131に設定する。
【0051】
図15を参照して、エラー訂正装置30の動作について説明する。
【0052】
フレームが軟判定部111に入力される前に、第2検出部125はフレームに格納された複数のシンボルのコンスタレーションを検出する(ステップS21)。ステップS21の処理が完了すると、SD-FEC復号部131は軟判定部111によってシンボルデマッピングされたフレームに対するエラー訂正を実行する(ステップS22)。
【0053】
ステップS22の処理が終了すると、推論部126は上限値を推論し、上限値をSD-FEC復号部131に設定する(ステップS23)。より詳しくは、推論部126は第2検出部125が検出したコンスタレーションに応じた上限値を推論し、推論した上限値をSD-FEC復号部131に設定する。ステップS23の処理が完了すると、SD-FEC復号部131は後続のフレームの有無を判断する(ステップS24)。
【0054】
後続のフレームがある場合(ステップS24:NO)、エラー訂正装置30はステップS21からステップS23までの処理を繰り返す。これにより、SD-FEC復号部131はフレームが入力される度に上限値が推論されて、SD-FEC復号部131に設定される。一方、後続のフレームがない場合(ステップS24:YES)、SD-FEC復号部131は処理を終了する。
【0055】
このように、第3実施形態によれば、フレームに格納されたシンボルのコンスタレーションに応じた上限値がSD-FEC復号部131に設定される。例えば、フレームの品質が低い場合には、学習済モデルによって、フレームの品質が高い場合に比べて小さな上限値が採用される。これにより、フレームの品質が低い場合におけるエラー訂正に要する繰り返し回数が減少し、消費電力が低減する。
【0056】
以上、本発明の好ましい実施形態について詳述したが、本発明に係る特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【0057】
なお、以上の説明に関して更に以下の付記を開示する。
(付記1)軟判定情報に基づいて、対象フレームに対するエラー訂正の演算を繰り返し行い、かつ、繰り返し行う前記演算の演算数の上限値が設定されている、エラー訂正回路と、フレーム毎の前記エラー訂正の前記演算の繰り返し数をカウントし、さらに、過去の二つ以上の複数のフレームの、前記繰り返し数の和を算出する第1算出回路と、前記上限値を、前記繰り返し数の和に応じた値で、かつ、前記繰り返し数の和が大きい時ほど、小さな値となるように設定する第2算出回路と、を含むエラー訂正装置。
(付記2)前記第2算出回路は、予め決められた設定回数から前記繰り返し数の和を引いた値を前記上限値として設定する、ことを特徴とする付記1に記載のエラー訂正装置。
(付記3)前記第2算出回路は、所定のエラー訂正回数に抑えるための受信信号品質の要求値に基づいて、前記設定回数を決定する、ことを特徴とする付記2に記載のエラー訂正装置。
(付記4)前記第2算出回路は、所定のエラー訂正回数に抑えるための受信信号品質の要求値より小さい受信信号品質における、消費電力の増大を抑える値に、前記設定回数を決定する、ことを特徴とする付記2に記載のエラー訂正装置。
(付記5)前記対象フレームの品質を検出する第1検出回路と、前記品質と前記品質の低下に応じて小さくなる前記上限値を前記品質ごとに対応付けた対応表に基づいて、前記第1検出回路が検出した前記品質に応じた前記上限値を特定し、算出した前記上限値を前記エラー訂正回路に設定する特定回路とを、前記第1算出回路と前記第2算出回路に代えて含む、ことを特徴とする付記1に記載のエラー訂正装置。
(付記6)前記対象フレームに格納されたシンボルのコンスタレーションを検出する第2検出回路と、前記コンスタレーションと前記コンスタレーションの品質低下に応じて小さくなる前記上限値を機械学習した学習済モデルに基づいて、前記第2検出回路が検出した前記コンスタレーションに応じた前記上限値を推論し、推論した前記上限値を前記エラー訂正回路に設定する推論回路とを、前記第1算出回路と前記第2算出回路に代えて含む、ことを特徴とする付記1に記載のエラー訂正装置。
(付記7)軟判定情報に基づいて、対象フレームに対するエラー訂正の演算を繰り返し行い、かつ、繰り返し行う前記演算の演算数の上限値が設定されている、エラー訂正回路に対するエラー訂正方法であって、フレーム毎の前記エラー訂正の前記演算の繰り返し数をカウントし、過去の二つ以上の複数のフレームの、前記繰り返し数の和を算出し、前記上限値を、前記繰り返し数の和に応じた値で、かつ、前記繰り返し数の和が大きい時ほど、小さな値となるように設定する、ことを特徴とするエラー訂正方法。
(付記8)前記対象フレームの品質を検出し、前記繰り返し数の和を算出せずに、かつ、前記上限値を設定せずに、前記品質と前記品質の低下に応じて小さくなる前記上限値を前記品質ごとに対応付けた対応表に基づいて、検出した前記品質に応じた前記上限値を特定し、特定した前記上限値を前記エラー訂正回路に設定する、ことを特徴とする付記7に記載のエラー訂正方法。
(付記9)前記対象フレームに格納されたシンボルのコンスタレーションを検出し、前記繰り返し数の和を算出せずに、かつ、前記上限値を設定せずに、前記コンスタレーションと前記コンスタレーションの品質低下に応じて小さくなる前記上限値を機械学習した学習済モデルに基づいて、検出した前記コンスタレーションに応じた前記上限値を推論し、推論した前記上限値を前記エラー訂正回路に設定する、ことを特徴とする付記7に記載のエラー訂正方法。
【符号の説明】
【0058】
10,20,30 エラー訂正装置
100 復号化回路
110 DSP
120 設定回路
121 第1算出部
122 第2算出部
123 第1検出部
124 特定部
125 第2検出部
126 推論部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15