(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024171148
(43)【公開日】2024-12-11
(54)【発明の名称】医用情報処理装置、医用情報処理方法、及び、プログラム
(51)【国際特許分類】
G16H 50/20 20180101AFI20241204BHJP
A61B 5/00 20060101ALI20241204BHJP
G16H 10/00 20180101ALI20241204BHJP
【FI】
G16H50/20
A61B5/00 D
A61B5/00 G
G16H10/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023088065
(22)【出願日】2023-05-29
(71)【出願人】
【識別番号】594164542
【氏名又は名称】キヤノンメディカルシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001771
【氏名又は名称】弁理士法人虎ノ門知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】霜村 侑香
(72)【発明者】
【氏名】中津川 実
(72)【発明者】
【氏名】山崎 優大
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 翔
(72)【発明者】
【氏名】朴 龍勲
【テーマコード(参考)】
4C117
5L099
【Fターム(参考)】
4C117XA01
4C117XB09
4C117XB17
4C117XG11
4C117XJ48
4C117XQ02
4C117XQ03
5L099AA04
(57)【要約】
【課題】ユーザが診療情報の関係性を把握できること。
【解決手段】本実施形態に係る医用情報処理装置は、取得部と、記憶部と、特定部と、決定部と、を備える。前記取得部は、患者の診療情報を取得する。前記記憶部は、医療概念に関する診療オントロジーを記憶する。前記特定部は、前記診療情報に関する情報に基づいて、前記診療オントロジー上における関心診療情報群を特定する。前記決定部は、前記関心診療情報群に基づいた表示態様を決定する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者の診療情報を取得する取得部と、
医療概念に関する診療オントロジーを記憶する記憶部と、
前記診療情報に関する情報に基づいて、前記診療オントロジー上における関心診療情報群を特定する特定部と、
前記関心診療情報群に基づいた表示態様を決定する決定部と、
を備える医用情報処理装置。
【請求項2】
前記記憶部は、複数の医療概念に関する複数の診療オントロジーを記憶し、
前記特定部は、前記診療情報に基づいて、前記複数の診療オントロジーを結合することで結合診療オントロジーを生成する結合部を更に備え、
前記特定部は、前記結合診療オントロジー上で前記関心診療情報群を特定する、
請求項1に記載の医用情報処理装置。
【請求項3】
前記医療概念は、疾患又は治療法に関する概念を示す、
請求項1に記載の医用情報処理装置。
【請求項4】
前記診療オントロジーは、医療概念をノードとし、医療概念間の関係性をエッジとするグラフ構造である、
請求項1に記載の医用情報処理装置。
【請求項5】
前記特定部は、前記グラフ構造において、前記診療情報に対応する各ノードの関連度を導出し、前記関連度が高いノードと当該ノードに隣接するノードとを含む部分グラフ構造を、前記関心診療情報群として特定する、
請求項4に記載の医用情報処理装置。
【請求項6】
前記決定部は、前記表示態様として、前記関心診療情報群を表示するためのレイアウトを決定する、
請求項1に記載の医用情報処理装置。
【請求項7】
前記決定部は、前記表示態様として、前記関心診療情報群と共に、前記診療オントロジーにおける当該関心診療情報群に対応する部分グラフ構造を表示するためのレイアウトを決定する、
請求項1に記載の医用情報処理装置。
【請求項8】
患者の診療情報を取得し、
医療概念に関する診療オントロジーを記憶し、
前記診療情報に関する情報に基づいて、前記診療オントロジー上における関心診療情報群を特定し、
前記関心診療情報群に基づいた表示態様を決定する、
ことを含む医用情報処理方法。
【請求項9】
患者の診療情報を取得し、
医療概念に関する診療オントロジーを記憶し、
前記診療情報に関する情報に基づいて、前記診療オントロジー上における関心診療情報群を特定し、
前記関心診療情報群に基づいた表示態様を決定する、
処理をコンピュータに実行させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書及び図面に開示の実施形態は、医用情報処理装置、医用情報処理方法、及び、プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
高齢化や治療の長期化に伴い、多疾患を併存した患者が増加する傾向にある。特に、がん治療では、原発巣と転移部位との治療が並行して行われる場合や、手術、放射線治療、化学療法を併用した治療が行われる場合がある。そこで、病院において、医師であるユーザは、各診療情報を画面上で参照することで疾患を把握する。しかし、1つの診療情報に関連する疾患が複数存在する場合、他の疾患を見落としてしまう可能性がある。ユーザは、他の疾患の進行又はその兆候を把握する必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本明細書及び図面に開示の実施形態が解決しようとする課題の一つは、ユーザが診療情報の関係性を把握できることである。ただし、本明細書及び図面に開示の実施形態により解決される課題は上記課題に限られない。後述する実施形態に示す各構成による各効果に対応する課題を他の課題として位置づけることもできる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本実施形態に係る医用情報処理装置は、取得部と、記憶部と、特定部と、決定部と、を備える。前記取得部は、患者の診療情報を取得する。前記記憶部は、医療概念に関する診療オントロジーを記憶する。前記特定部は、前記診療情報に関する情報に基づいて、前記診療オントロジー上における関心診療情報群を特定する。前記決定部は、前記関心診療情報群に基づいた表示態様を決定する。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】
図1は、第1実施形態に係る医用情報処理装置を含む医用情報処理システムの構成の一例を示す図である。
【
図2】
図2は、第1実施形態に係る医用情報処理装置の構成の一例を示す図である。
【
図3】
図3は、第1実施形態に係る医用情報処理装置による処理の手順を示すフローチャートである。
【
図4A】
図4Aは、第1実施形態における部分グラフ構造の生成を説明するための図である。
【
図4B】
図4Bは、第1実施形態における部分グラフ構造の生成を説明するための図である。
【
図5A】
図5Aは、第1実施形態における部分グラフ構造の生成を説明するための図である。
【
図5B】
図5Bは、第1実施形態における部分グラフ構造の生成を説明するための図である。
【
図6】
図6は、第1実施形態における特定処理を説明するための図である。
【
図7】
図7は、第1実施形態における特定処理として、関心診療情報群を特定する処理を説明するための図である。
【
図8】
図8は、第1実施形態における決定処理及び表示制御処理の一例を説明するための図である。
【
図10A】
図10Aは、第1実施形態における決定処理及び表示制御処理の他の一例を説明するための図である。
【
図10B】
図10Bは、第1実施形態における決定処理及び表示制御処理の他の一例を説明するための図である。
【
図11A】
図11Aは、第1実施形態における決定処理及び表示制御処理の更に他の一例を説明するための図である。
【
図11B】
図11Bは、第1実施形態における決定処理及び表示制御処理の更に他の一例を説明するための図である。
【
図12】
図12は、第2実施形態に係る医用情報処理装置による処理を説明するための図である。
【
図13】
図13は、第3実施形態に係る医用情報処理装置による処理を説明するための図である。
【
図14】
図14は、第5実施形態に係る医用情報処理装置による処理を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、添付図面を参照して、医用情報処理装置の実施形態を詳細に説明する。なお、以下、医用情報処理装置を含む医用情報処理システムを例に挙げて説明する。
図1に示す医用情報処理システムにおいては、各装置が1台ずつ示されているが、実際にはさらに複数の装置を含むことができる。
【0008】
(第1実施形態)
図1に示す医用情報処理システムは、病院情報システム(HIS:Hospital Information System)と、放射線部門情報管理システム(RIS:Radiology Information System)と、医用画像管理システム(PACS:Picture Archiving and Communication System)とを含むシステムである。医用情報処理システムは、HISサーバ10、RISサーバ20、医用画像診断装置30、PACSサーバ40、端末50、及び、医用情報処理装置100を備える。
【0009】
HISサーバ10、RISサーバ20、医用画像診断装置30、PACSサーバ40、端末50、及び、医用情報処理装置100は、例えば、病院内に設置された院内LAN(Local Area Network)に接続され、所定の装置へ情報を送信すると共に、所定の装置から送信される情報を受信する。なお、HISサーバ10は、院内LANに加え、外部のネットワークに接続してもよい。
【0010】
例えば、端末50は、患者の診療に関わるユーザにより用いられる。例えば、ユーザは、医師や看護師などの医療従事者である。例えば、端末50は、PC(Personal Computer)やタブレット式PC、PDA(Personal Digital Assistant)、携帯端末等を含む。
【0011】
HISにおいて、
図1に示すHISサーバ10は、病院内で発生する情報を管理する。病院内で発生する情報には、患者情報、及び検査オーダ情報等が含まれる。
【0012】
患者情報は、患者の基本情報と診療情報と検査実施情報とを含む。基本情報は、患者ID、氏名、生年月日、性別、血液型、身長、体重等を含む。患者IDには、患者を一意に識別する識別情報が設定される。患者の診療情報には、数値(計測値)や診療記録等の情報と、それらの記録日時を示す情報とが含まれる。例えば、患者の診療情報としては、医師による薬剤の処方や、看護師による看護記録や、検査部門に対する検査や、入院時の食事の手配等の情報が挙げられる。例えば、処方については、医師により電子カルテに記録され、看護記録については、看護師により電子カルテに記録される。検査実施情報には、過去に実施された検査及び当該検査による検査結果等の情報や、当該検査の実施日を示す情報が含まれる。
【0013】
検査オーダ情報は、検査実施情報を生成するために発行される。検査オーダ情報は、検査ID、患者ID、検査コード、診療科目、検査種類、検査部位、及び検査予定日時等を含む。検査IDは、検査オーダ情報を一意に特定するための識別子である。検査コードは、検査を一意に特定するための識別子である。診療科目は、診療の専門分野区分を示すものである。検査種類は、医用画像を用いた検査を示す。例えば、検査種類には、X線検査、CT(Computed Tomography)検査、及びMRI(Magnetic Resonance Imaging)検査等が含まれる。検査部位には、脳、腎臓、肺、肝臓、及び骨等が含まれる。
【0014】
HISサーバ10は、例えば検査依頼医から検査オーダ情報が入力された場合、入力された検査オーダ情報と、当該検査オーダ情報により特定される患者情報とをRISに送信する。また、この場合、HISサーバ10は、当該患者情報をPACSに送信する。
【0015】
RISにおいて、
図1に示すRISサーバ20は、放射線検査業務に係る情報を管理する。例えば、RISサーバ20は、HISサーバ10から送信される検査オーダ情報を受信し、受信した検査オーダ情報に各種設定情報を付加して集積し、集積した情報を検査予約情報として管理する。具体的には、RISサーバ20は、HISサーバ10から送信される患者情報及び検査オーダ情報を受信した場合、受信した患者情報及び検査オーダ情報に基づいて、医用画像診断装置30を動作させるために必要な検査予約情報を生成する。検査予約情報には、例えば、検査ID、患者ID、検査種類、及び、検査部位等の検査の実施に必要な情報が含まれる。RISサーバ20は、生成した検査予約情報を医用画像診断装置30に送信する。
【0016】
図1に示す医用画像診断装置30は、臨床検査技師が患者を撮影等することにより検査を実施する装置である。医用画像診断装置30としては、超音波診断装置、X線CT(Computed Tomography)装置、MRI(Magnetic Resonance Imaging)装置、SPECT(Single Photon Emission Computed Tomography)装置、PET(Positron Emission computed Tomography)装置、SPECT装置とX線CT装置とが一体化されたSPECT-CT装置、PET装置とX線CT装置とが一体化されたPET-CT装置などが挙げられる。なお、医用画像診断装置30は、モダリティ装置とも呼ばれる。
【0017】
医用画像診断装置30は、例えばRISサーバ20から送信される検査予約情報に基づいて検査を実施する。そして、医用画像診断装置30は、検査の実施を表す検査実施情報を生成し、RISサーバ20に送信する。この場合、RISサーバ20は、医用画像診断装置30から検査実施情報を受信し、受信した検査実施情報を最新の検査実施情報としてHISサーバ10に出力する。例えば、HISサーバ10は、最新の検査実施情報を受信し、受信した検査実施情報を管理する。検査実施情報には、検査予約情報(検査ID、患者ID、検査種類、検査部位等)、及び、検査の実施日時等が含まれる。
【0018】
また、医用画像診断装置30は、検査の実施において、臨床検査技師が被検体(患者)を撮影することにより、医用画像データを生成する。医用画像データは、例えばX線CT画像データ、X線画像データ、MRI画像データ、核医学画像データ、及び超音波画像データ等である。医用画像診断装置30は、生成した医用画像データを例えばDICOM(Digital Imaging and Communication in Medicine)規格に準拠した形式に変換する。すなわち、医用画像診断装置30は、付帯情報としてDICOMタグが付加された医用画像データを生成する。医用画像診断装置30は、生成した医用画像データをPACSに送信する。
【0019】
付帯情報は、例えば、患者ID、検査ID、装置ID、画像シリーズID、撮影に関する条件等を含み、DICOM規格に従って規格化されている。装置IDは、医用画像診断装置30を識別するための情報である。画像シリーズIDは、医用画像診断装置30による1回の撮影を識別するための情報であり、例えば、撮影された被検体(患者)の部位、画像生成時刻、スライス厚、スライス位置等を含む。例えば、CT検査やMRI検査を行うことにより、複数のスライス位置の各々における断層画像が医用画像データとして得られる。
【0020】
PACSにおいて、
図1に示すPACSサーバ40は、例えば、HISサーバ10から送信された患者情報を受信し、受信した患者情報を管理する。PACSサーバ40は、患者情報を管理するための記憶回路を備えている。PACSサーバ40は、例えば、医用画像診断装置30から送信された医用画像データを受信し、受信した医用画像データを患者情報に対応付けて、自身の記憶回路に格納する。PACSサーバ40は、例えば、医用情報処理装置100からの取得要求に応じた医用画像データを自身の記憶回路から読み出して、医用情報処理装置100に送信する。なお、PACSサーバ40に保存された医用画像データには、患者ID、検査ID、装置ID、画像シリーズID等の付帯情報が付加されている。このため、ユーザは、患者ID等を用いた検索を行うことで、必要な患者情報をPACSサーバ40から取得することができる。ユーザは、患者ID、検査ID、装置ID、画像シリーズID等を用いた検索を行うことで、必要な医用画像データをPACSサーバ40から取得することができる。
【0021】
図1に示す医用情報処理装置100は、患者の診療に関わる情報として、患者の診療情報や、医用画像データに基づく画像(医用画像)等を、端末50のディスプレイに表示させるためのワークステーションである。
【0022】
以下、本実施形態に係る医用情報処理装置100の詳細について説明する。
図2は、本実施形態に係る医用情報処理装置100の構成の一例を示す図である。
図2に示すように、医用情報処理装置100は、処理回路110、記憶回路120、通信インターフェース130を有する。
【0023】
記憶回路120は、処理回路110に接続されており、各種情報を記憶する。具体的には、記憶回路120は、各システムから受信した患者情報を記憶する。例えば、記憶回路120は、RAM(Random Access Memory)、フラッシュメモリ等の半導体メモリ素子や、ハードディスク、光ディスク等によって実現される。ここで、記憶回路120は、記憶部の一例である。通信インターフェース130は、例えば、NIC(Network Interface Card)等であり、他の装置との間で通信を行う。なお、記憶回路120は、記憶部の一例である。
【0024】
処理回路110は、医用情報処理装置100の構成要素を制御する。例えば、処理回路110は、
図2に示すように、取得機能111、特定機能112、決定機能113、表示制御機能114を実行する。ここで、例えば、処理回路110の構成要素である取得機能111、特定機能112、決定機能113、表示制御機能114が実行する各処理機能は、コンピュータによって実行可能なプログラムの形態で記憶回路120に記録されている。処理回路110は、各プログラムを記憶回路120から読み出し、実行することで各プログラムに対応する機能を実現するプロセッサである。換言すると、各プログラムを読み出した状態の処理回路110は、
図2の処理回路110内に示された各機能を有することとなる。なお、取得機能111、特定機能112、決定機能113は、それぞれ、取得部、特定部、決定部の一例である。
【0025】
上記説明において用いた「プロセッサ」という文言は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、特定用途向け集積回路(Application Specific Integrated Circuit:ASIC)等の回路を意味する。また、「プロセッサ」という文言は、プログラマブル論理デバイス等の回路を意味する。プログラマブル論理デバイスとして、例えば、単純プログラマブル論理デバイス(Simple Programmable Logic Device:SPLD)、複合プログラマブル論理デバイス(Complex Programmable Logic Device:CPLD)が挙げられる。また、プログラマブル論理デバイスとして、例えば、フィールドプログラマブルゲートアレイ(Field Programmable Gate Array:FPGA))が挙げられる。プロセッサが例えばCPUである場合、プロセッサは記憶回路120に保存されたプログラムを読み出し実行することで機能を実現する。一方、プロセッサが例えばASICである場合、記憶回路120にプログラムを保存する代わりに、プロセッサの回路内にプログラムが直接組み込まれる。なお、本実施形態の各プロセッサは、プロセッサごとに単一の回路として構成される場合に限らず、複数の独立した回路を組み合わせて1つのプロセッサとして構成し、その機能を実現するようにしてもよい。さらに、
図2における複数の構成要素を1つのプロセッサへ統合してその機能を実現するようにしてもよい。
【0026】
以上、本実施形態に係る医用情報処理装置100を含む医用情報処理システムの全体構成について説明した。このような構成のもと、本実施形態に係る医用情報処理装置100では、ユーザが診療情報の関係性を把握することができるように、以下の処理を行う。まず、本実施形態に係る医用情報処理装置100では、取得機能111は、患者の診療情報を取得する。記憶回路120は、医療概念に関する診療オントロジーを記憶する。特定機能112は、診療情報に関する情報に基づいて、診療オントロジー上における関心診療情報群を特定する。決定機能113は、関心診療情報群に基づいた表示態様を決定する。なお、診療情報は、HISサーバ10及びPACSサーバ40が管理する情報を含む。
【0027】
まず、本実施形態に係る医用情報処理装置100の処理について説明する。
図3は、本実施形態に係る医用情報処理装置100による処理の手順を示すフローチャートである。
【0028】
図3のステップS101は、処理回路110が記憶回路120から取得機能111に対応するプログラムを呼び出して実行されるステップである。ステップS101の取得処理において、取得機能111は、HISサーバ10から、患者の診療情報を取得する。
【0029】
図3のステップS102は、処理回路110が記憶回路120から特定機能112に対応するプログラムを呼び出して実行されるステップである。ステップS102の特定処理において、特定機能112は、ステップS101により取得された診療情報に関する情報に基づいて、記憶回路120に記憶された医療概念に関する診療オントロジー上における関心診療情報群を特定する。特定処理の詳細については後述する。
【0030】
図3のステップS103は、処理回路110が記憶回路120から決定機能113に対応するプログラムを呼び出して実行されるステップである。ステップS103の決定処理において、決定機能113は、関心診療情報群に基づいた表示態様を決定する。決定処理の詳細については後述する。
【0031】
図3のステップS104は、処理回路110が記憶回路120から表示制御機能114に対応するプログラムを呼び出して実行されるステップである。ステップS104の表示制御処理において、表示制御機能114は、ステップS103により決定された表示態様を、ユーザが使用する端末50のディスプレイに表示させる。表示制御処理の詳細については後述する。
【0032】
ここで、医療概念に関する診療オントロジーは、予め生成され、記憶回路120に記憶される。記憶回路120は、複数の医療概念に関する複数の診療オントロジーを記憶する。例えば、診療オントロジーは、医療概念をノードとし、医療概念間の関係性をエッジとするグラフ構造である。医療概念は、疾患又は治療法に関する概念を示す。
図4A、
図4B、
図5A、
図5Bは、本実施形態における部分グラフ構造の生成を説明するための図である。
【0033】
グラフ構造のノードとエッジは、医療概念として疾患や治療法の特徴に基づいて決定される。例えば、ノードとエッジは、疾患や治療法の特徴に基づいて決定されたルールベース、またはGNN(Graph Neural Network)などの機械学習を活用することで決定される。複数の医療概念を考慮する場合、各診療概念の特徴に基づいて、異なる医療概念間の関係性が構築される。
【0034】
例えば、
図4Aに示すように、部分グラフ構造「乳がん空間」が予め生成される。部分グラフ構造「乳がん空間」では、項目「抗がん剤投与」、「超音波」、「腫瘍マーカ(上昇)」、「手足のしびれ」がノードとして決定される。また、超音波検査により確認される抗がん剤投与の「効果」が、ノード「抗がん剤投与」とノード「超音波」間のエッジとして決定される。また、腫瘍マーカの確認により抗がん剤投与の「効果」が、ノード「抗がん剤投与」とノード「腫瘍マーカ(上昇)」間のエッジとして決定される。また、抗がん剤投与と手足のしびれとの因果関係を表す「因果」が、ノード「抗がん剤投与」とノード「手足のしびれ」間のエッジとして決定される。また、乳がんにおいて、腫瘍マーカの上昇により超音波検査の実施を行うことを表す「相関」が、ノード「腫瘍マーカ(上昇)」とノード「超音波」間のエッジとして決定される。
【0035】
例えば、
図4Bに示すように、部分グラフ構造「骨転移空間」が予め生成される。部分グラフ構造「骨転移空間」では、項目「腫瘍マーカ(上昇)」、「手足のしびれ」、「背部痛」、「CT(変化あり)」がノードとして決定される。また、腫瘍マーカの上昇によりCT検査の実施を行うことを表す「因果」が、ノード「腫瘍マーカ(上昇)」とノード「CT(変化あり)」間のエッジとして決定される。また、手足のしびれによりCT検査の実施を行うことを表す「因果」が、ノード「手足のしびれ」とノード「CT(変化あり)」間のエッジとして決定される。また、背部痛によりCT検査の実施を行うことを表す「因果」が、ノード「背部痛」とノード「CT(変化あり)」間のエッジとして決定される。また、骨転移において、手足のしびれと背部痛とが発生することを表す「相関」が、ノード「手足のしびれ」とノード「背部痛」間のエッジとして決定される。
【0036】
図4A、
図4Bに示す例では、同じ診療情報においても、疾患概念毎に他のノードとの関係性が異なる。ここで、
図4A、
図4Bに示す例では、疾患概念毎に部分グラフ構造を「乳がん空間」と「骨転移空間」とに分けているが、「乳がん空間」と「骨転移空間」とを結合した部分グラフ構造が予め生成されてもよい。また、
図4A、
図4Bに示す例では、ノードとして、抗がん剤の投与、CT検査などの治療法や、腫瘍マーカの上昇などを挙げたが、それ以外の治療法や、検査結果の数値が高い、検査結果が陽性である、検査結果に変化ありなどの情報がノードとして決定されてもよい。また、
図4A、
図4Bに示す例では、エッジとして、効果、因果、相関などを挙げたが、症状や合併症、リスクなどの情報がエッジとして決定されてもよい。
【0037】
ここで、疾患の特徴に基づいて、エッジ間の重みが決定される。例えば、「乳がん空間」では、嘔気はWBC(White Blood Sell;白血球数)の低下との因果関係が強くなるが、「骨転移空間」では、嘔気はCa(カルシウム)の低下との因果関係が強くなる。エッジ間の重みは、ガイドラインや論文等を用いたマニュアルに基づいて決定されてもよいし、治療法の優位性評価や、リスク因子に関する研究結果や比較結果などを用いて、エッジ全体の重みを正規化してもよい。エッジ間の重みは、機械学習を活用することで決定されてもよい。機械学習は、患者個人に合うよう学習し直してもよい。
【0038】
例えば、
図5Aに示す部分グラフ構造「乳がん空間」では、項目「抗がん剤投与」、「超音波」、「腫瘍マーカ(変化なし)」、「WBC(低下)」、「嘔気」がノードとして決定される。また、ノード「抗がん剤投与」とノード「超音波」間にエッジ「効果」が決定され、ノード「抗がん剤投与」とノード「腫瘍マーカ(変化なし)」間にエッジ「効果」が決定され、ノード「腫瘍マーカ(変化なし)」とノード「超音波」間にエッジ「相関」が決定される。ノード「抗がん剤投与」とノード「WBC(低下)」間にエッジ「因果」が決定され、ノード「抗がん剤投与」とノード「嘔気」間にエッジ「因果」が決定され、ノード「WBC(低下)」とノード「嘔気」間にエッジ「因果」が決定される。
図5Aに示す例では、ノード「WBC(低下)」とノード「嘔気」間のエッジ「因果」には、重みとして「0.6」が決定される。
【0039】
例えば、
図5Bに示す部分グラフ構造「骨転移空間」では、項目「嘔気」、「Ca(正常)」、「CT(変化なし)」「腫瘍マーカ(変化なし)」がノードとして決定される。また、ノード「嘔気」とノード「Ca(正常)」間にエッジ「因果」が決定され、ノード「Ca(正常)」とノード「CT(変化なし)」間にエッジ「相関」が決定され、ノード「CT(変化なし)」とノード「腫瘍マーカ(変化なし)」間にエッジ「相関」が決定される。
図5Bに示す例では、ノード「嘔気」とノード「Ca(正常)」間のエッジ「因果」には、重みとして「0.6」が決定され、ノード「Ca(正常)」とノード「CT(変化なし)」間のエッジ「相関」には、重みとして「0.2」が決定され、ノード「CT(変化なし)」とノード「腫瘍マーカ(変化なし)」間のエッジ「相関」には、重みとして「0.3」が決定される。
【0040】
次に、特定機能112の処理(特定処理)について説明する。特定機能112は、取得機能111により取得された診療情報に関する情報に基づいて、記憶回路120に記憶された医療概念に関する診療オントロジー上における関心診療情報群を特定する。
【0041】
まず、特定機能112は、取得機能111により診療情報が取得されたとき、診療情報に対応する各ノードの入力値を算出する。ここで、特定機能112は、各ノードの入力値を、患者の現在の診療状況から、「緊急性」、「変化度」、「更新日時」、「進行中」、「異常性」などの項目を用いて算出する。例えば、取得機能111により取得された診療情報には、化学療法の実施情報が含まれ、特定機能112が、化学療法の実施情報に対応するノード「抗がん剤投与」の入力値を、各項目を用いて計算する場合を例にして説明する。
【0042】
図6は、本実施形態における特定処理を説明するための図である。例えば、化学療法の実施情報の項目「緊急性」、「変化度」、「更新日時」、「進行中」、「異常性」には、それぞれ、入力値として「0」、「1」、「3」、「5」、「0」が割り当てられている。具体的には、化学療法の実施情報から、当該化学療法が突発的に実施されたものではないので、項目「緊急性」には入力値として「0」が割り当てられる。また、化学療法の実施情報から、当該化学療法による患者の変化の程度が低い場合は、項目「変化度」には、低い入力値として「1」が割り当てられる。また、化学療法の実施情報から、当該化学療法の実施日が新しい日時である場合は、例えば、項目「更新日時」には、高い入力値として「3」が割り当てられる。化学療法の実施情報から、当該化学療法の実施が進行中である場合は、例えば、項目「進行中」には、高い入力値として「5」が割り当てられる。また、化学療法の実施情報から、当該化学療法による結果の異常性が低い場合は、例えば、項目「異常性」には入力値として「0」が割り当てられる。
【0043】
また、ノード「抗がん剤投与」の項目「緊急性」、「変化度」、「更新日時」、「進行中」、「異常性」には、重みとして「0.3」、「0.2」、「0.2」、「0.1」、「0.2」が割り当てられている。この場合、特定機能112は、化学療法の実施情報に対応するノード「抗がん剤投与」の入力値を、0×0.3+1×0.2+3×0.2+5×0.1+0×0.2=1.3により算出する。ここで、入力値の算出では、各項目を加算しているが、それぞれの項目で評価してもよいし、緊急性を最優先にしてもよい。
【0044】
次に、特定機能112は、診療情報に対応する各ノードについて、例えばグラフニューラルネットワークのアルゴリズムに従って、ノードiの入力値と当該ノードiに隣接する隣接ノードjの入力値から、当該ノードiの内部状態hiを、下記式により算出する。
【0045】
【0046】
ここで、nは、隣接ノード数を示し、wijは、ノードiと隣接ノードjとのエッジの重みを示し、hjは、隣接ノードjの内部状態を示し、wiは、ノードiの重みを示し、xiは、ノードiの入力値を示す。
【0047】
なお、
図4A、
図4B、
図5A、
図5Bでは、ノードの内部状態の大きさが反映された図となっており、ノードの内部状態が高いほど、ノードを示す円の大きさが大きく表現されている。
【0048】
特定機能112は、グラフ構造において、診療情報に対応する各ノードの関連度を導出し、関連度が高いノードと当該ノードに隣接するノードとを含む部分グラフ構造を、関心診療情報群として特定する。具体的には、特定機能112は、関連度が高い診療情報が集まっている領域であり、かつ、ノードの内部状態が総合的に高い部分グラフ構造を、表示すべき診療軸として抽出する。ここで、診療軸は、複数抽出されてもよい。
【0049】
まず、特定機能112は、下記式に示すエネルギー関数Eを用いて、部分グラフ構造を評価する。
【0050】
【0051】
ここで、nは、部分グラフ構造のノード数を示し、wijは、ノードiと隣接ノードjとのエッジの重みを示し、hiは、ノードiの内部状態を示し、hjは、隣接ノードjの内部状態を示す。フィルタリングを用いた畳み込みやプーリングで部分グラフ構造を評価してもよい。
【0052】
次に、特定機能112は、内部状態が高いノードが含まれる領域を部分グラフ構造として抽出する。例えば、特定機能112は、内部状態が高い上位のノードが含まれる領域、又は、それらをつなぐノードを部分グラフ構造として抽出する。
【0053】
なお、抽出される部分グラフ構造は、診療科や医療者の属性によって、変更されてもよい。例えば、診療情報の属性と診療科や医療者の属性とが一致しているノードに対しては、内部状態を加算するなど、意図的に、抽出される部分グラフ構造を変更してもよい。例えば、乳腺外科によって生成された診療情報のノードは、乳腺外科医が参照する際にノードの内部状態を高くするなど、抽出される部分グラフ構造を変更してもよい。
【0054】
そこで、特定機能112は、診療情報に基づいて、複数の診療オントロジーを結合することで結合診療オントロジーを生成し、結合診療オントロジー上で関心診療情報群を特定する。特定機能112は、結合部の一例である。
【0055】
図7は、本実施形態における特定処理として、関心診療情報群を特定する処理を説明するための図である。
図7は、
図5Aに示す部分グラフ構造「乳がん空間」と
図5Bに示す部分グラフ構造「骨転移空間」とを結合することで結合診療オントロジーを生成する処理を示す。
図7において、例えば、部分グラフ構造「乳がん空間」のノード「嘔気」と、部分グラフ構造「骨転移空間」のノード「嘔気」とは、同じ項目であるとする。また、
図7において、例えば、部分グラフ構造「乳がん空間」のノード「抗がん剤投与」と、部分グラフ構造「骨転移空間」のノード「CT(変化なし)」とは、同じ効果が表れているとする。この場合、
図7において、関連度が高い診療情報が集まっている領域は、部分グラフ構造「乳がん空間」のノード「抗がん剤投与」、「WBC(低下)」、「嘔気」である。また、部分グラフ構造「乳がん空間」に関連度が高いノードは、部分グラフ構造「乳がん空間」のノード「嘔気」と同じ部分グラフ構造「骨転移空間」のノード「嘔気」に隣接するノード「Ca(正常)」である。また、部分グラフ構造「乳がん空間」に関連度が高いノードは、部分グラフ構造「乳がん空間」のノード「抗がん剤投与」と同じ効果が表れている部分グラフ構造「骨転移空間」のノード「CT(変化なし)」である。この場合、特定機能112は、部分グラフ構造「乳がん空間」のノード「抗がん剤投与」と部分グラフ構造「骨転移空間」のノード「CT(変化なし)」との間をエッジ「効果」とし、部分グラフ構造「乳がん空間」のノード「嘔気」と部分グラフ構造「骨転移空間」のノード「Ca(正常)」との間をエッジ「因果」として結合した空間を、結合診療オントロジーとして生成する。そして、特定機能112は、結合診療オントロジー上で関心診療情報群(抗がん剤投与、超音波、腫瘍マーカ、・・・)を特定する。
【0056】
次に、決定機能113の処理(決定処理)、及び、表示制御機能114の処理(表示制御処理)について説明する。決定機能113は、関心診療情報群に基づいた表示態様を決定し、表示制御機能114は、決定された表示態様を、ユーザが使用する端末50のディスプレイに表示させる。
【0057】
例えば、決定機能113は、表示態様として、関心診療情報群(抗がん剤投与、超音波、腫瘍マーカ、・・・)を表示するための画面のレイアウトを決定し、表示制御機能114は、決定された表示態様を、ユーザが使用する端末50のディスプレイに表示させる。レイアウトの具体例としては、決定機能113は、例えば、決定したレイアウトの画面として、診療軸に近いノードから、関連するノードの順に、端末50のディスプレイに表示させる。あるいは、決定機能113は、例えば、1画面上なら左から右、スクロールでの表示なら上から下など、関連する情報を紐づけるように端末50のディスプレイに表示させてもよいし、ノードの数を指定して表示範囲を決定してもよい。
【0058】
図8は、本実施形態における決定処理及び表示制御処理の一例を説明するための図である。
図8に示す例では、結合診療オントロジー上のノード「抗がん剤投与」、「WBC(低下)」、「Ca(正常)」に対応する情報として、抗がん剤投与の結果と、WBC、Caに関する検体検査の結果とが、画面の左側に表示される。画面の左側は、表示すべき診療軸の開始点となる。また、上記ノード「抗がん剤投与」、「WBC(低下)」、「Ca(正常)」に関連する関連ノード「嘔気」、「腫瘍マーカ(変化なし)」に対応する情報として、嘔気に関するレポートと、腫瘍マーカに関する検体検査の結果とが、画面の中央部分に表示される。また、上記ノード「抗がん剤投与」、「WBC(低下)」、「Ca(正常)」に関連する関連ノード「超音波」、「CT(変化なし)」に対応する情報として、超音波画像とCT画像とが、画面の右側に表示される。例えば、
図8においては、嘔気が、高カルシウム血症が要因ではなく、抗がん剤投与が要因であることを表している。ここで、
図9は、本実施形態に係る医用情報処理装置100による処理を説明するための図であり、
図5A、
図5B、
図7、
図8の処理をまとめた図である。
【0059】
また、決定機能113は、表示態様として、関心診療情報群(抗がん剤投与、超音波、腫瘍マーカ、・・・)と共に、診療オントロジーにおける当該関心診療情報群に対応する部分グラフ構造を表示するためのレイアウトを決定し、表示制御機能114は、決定された表示態様を、ユーザが使用する端末50のディスプレイに表示させる。
【0060】
図10A、
図10Bは、本実施形態における決定処理及び表示制御処理の他の一例を説明するための図である。
図10Aでは、診療情報の表示として関心診療情報群(抗がん剤投与、超音波、腫瘍マーカ、・・・)と、グラフ構造の表示として結合診療オントロジーにおける当該関心診療情報群に対応する部分グラフ構造とが、1画面で表示される場合を示す。この場合、
図10Bの上図に示すように、結合診療オントロジー上のノード「抗がん剤投与」、「超音波」、「腫瘍マーカ(上昇)」、「手足のしびれ」、「CT(変化あり)」、「背部痛」に対応する情報が画面に表示される。具体的には、抗がん剤投与の結果と、手足のしびれ、背部痛に関する検体検査の結果と、腫瘍マーカに関する検体検査の結果と、CT画像のレポートと、CT画像と、超音波画像とが画面に表示される。ここで、
図10Bの下図の右側に示すように、ユーザにより画面上のノード「抗がん剤投与」、「超音波」、「腫瘍マーカ(上昇)」が選択されたものとする。この場合、
図10Bの下図の左側に示すように、選択されたノード「抗がん剤投与」、「超音波」、「腫瘍マーカ(上昇)」に対応する情報として、抗がん剤投与の結果と、腫瘍マーカに関する検体検査の結果と、超音波画像とが画面に表示される。
【0061】
図11A、
図11Bは、本実施形態における決定処理及び表示制御処理の更に他の一例を説明するための図である。
【0062】
図11Aに示す例では、決定機能113は、表示態様として、骨転移のリスクが低い場合は、乳がんの診療を中心に、骨転移の情報を参考情報として、レイアウトを決定する。そして、表示制御機能114は、決定された表示態様を、ユーザが使用する端末50のディスプレイに表示させる。
【0063】
図11Bに示す例では、決定機能113は、表示態様として、骨転移のリスクが高い場合は、骨転移の診療を中心に、乳がんの情報を参考情報として、レイアウトを決定する。そして、表示制御機能114は、決定された表示態様を、ユーザが使用する端末50のディスプレイに表示させる。
【0064】
本実施形態では、複数の疾患の情報を1画面に表示させることで、ユーザに診療情報の関係性を把握させることができる。
【0065】
なお、本実施形態において、医療概念は、疾患に関する概念を示すものだけではなく、治療法や診療フェーズに関する概念を示すものであってもよい。例えば、同じ疾患でも治療法の違い、または診療フェーズが進むにつれて、診療情報間の関係性が異なるが、それらも考慮する。また、医療概念は、診療科に関する概念を示すものであってもよい。例えば、診療科によって、患者に対して、どのような治療を行うかによって、同じ情報でも異なる見方が生じるため、各診療科に合った診療情報の組み合わせも考慮する。また、医療概念は、医師に関する概念を示すものであってもよい。例えば、医師別に診療オントロジーを生成することによって、例えば異なる専門医の情報の見方を統合することや、ベテランの医師の情報の見方を、新人の医師の見方に反映するなどが可能となる。また、医療概念は、患者に関する概念を示すものであってもよい。例えば、症状や、治療方法(妊孕性、金額、時間などの要素も含む)などはノードの入力値を高くすることで、患者の価値観を反映することができる。
【0066】
(第2実施形態)
第1実施形態では、決定機能113は、関心診療情報群に基づいた表示態様として、関心診療情報群を表示するための画面のレイアウトを決定し、表示制御機能114は、決定された表示態様を、ユーザが使用する端末50のディスプレイに表示させている。ここで、ユーザによっては既に着目したい診療情報がある際には、それを基に表示レイアウトを決定した方が良い場合がある。そこで、第2実施形態では、ユーザが着目したい関心診療情報群を優先して端末50に表示させる。
【0067】
図12は、第2実施形態に係る医用情報処理装置100による処理を説明するための図である。
図12に示す例では、部分グラフ構造「乳がん空間」、「骨転移空間」において、ユーザにより、ノード「抗がん剤投与」、「WBC(低下)」、「嘔気」が選択されたものとする。この場合、特定機能112は、ノード「抗がん剤投与」、「WBC(低下)」、「嘔気」の入力値を高く設定し、ユーザにより選択されたノードの内部状態を優先的に採用し、内部状態が高いノードが含まれる部分グラフ構造を、関心診療情報群として特定する。そして、決定機能113は、関心診療情報群に基づいた表示態様として、関心診療情報群を表示するための画面のレイアウトを決定し、表示制御機能114は、決定された表示態様を、ユーザが使用する端末50のディスプレイに表示させる。
【0068】
本実施形態では、ユーザが着目したい診療情報を考慮することにより、他の診療情報との関係性をユーザに把握させることができる。
【0069】
(第3実施形態)
第3実施形態では、診療オントロジーのノードの粒度を変更することによって、診療シーンに応じて適切な粒度の診療情報を表示させてもよい。診療オントロジー上で、粒度の異なる複数の層が定義されていることで、ノードの粒度を変更することができる。例えば、ユーザが画面上で患者を選択するなど、ユーザの指定やアプリケーションによって粒度を変更してもよいし、臨床シーンや患者の診療情報に応じて、粒度を変更してもよい。ここで、特定機能112は、高い層のノードには入力値を高く設定しておき、低い層のノードには入力値を低く設定しておく。
【0070】
図13は、第3実施形態に係る医用情報処理装置100による処理を説明するための図である。
図13に示す例では、ノード「放射線治療」、「抗がん剤投与」、「腫瘍マーカの低下」の粒度は、当該ノードに関連するノード「治療歴」、「検体検査一覧」の粒度より低く、当該ノードに関連するノード「レジメンA」、「レジメンB」、「CEA(carcinoembryonic antigen)の低下」の粒度より高い。例えば、ユーザが複数の患者を比較したい場合には、表示制御機能114は、ユーザからの指示により、粒度を大きくして診療情報を表示させる。
【0071】
(第4実施形態)
第4実施形態では、ユーザの意思決定に必要な診療情報を優先的に表示する。例えば、ユーザが画面上で診療情報を参照している場合、特定機能112は、ユーザが参照している診療情報に対応するノードの入力値を高く設定する。これにより、表示制御機能114は、ユーザが参照する情報を基に、ユーザの意思決定に必要な診療情報を優先的に表示させることで、ユーザの意思決定を支援する。
【0072】
また、例えば、機械学習を用いて疾患を予測する学習済みモデルを用いた場合においても、ユーザの意思決定に必要な診療情報を優先的に表示することができる。例えば、学習済みモデルの予測結果として、疾患の予測確率が高いことを表す場合には、特定機能112は、学習済みモデルが用いた診療情報に対応するノードの入力値を高く設定する。これにより、表示制御機能114は、疾患の予測を基に、ユーザの意思決定に必要な診療情報を優先的に表示させることで、ユーザの意思決定を支援する。
【0073】
(第5実施形態)
第1実施形態では、患者が持つ診療情報を基に、診療情報間の関係性を考慮しているが、第5実施形態では、患者が持っていない診療情報でも、診療軸に関連度の高い診療情報は、不足している情報として、ユーザに確認を促す。
【0074】
図14は、第5実施形態に係る医用情報処理装置100による処理を説明するための図である。
図14に示す例では、患者の診療情報として、背部痛に関する診療情報が存在しない。そこで、特定機能112は、部分グラフ構造「骨転移空間」において、他のノードとの関係性により、内部状態が高いノードとしてノード「背部痛」を特定する。この場合、表示制御機能114は、関心診療情報群に基づいた表示態様を端末50に表示させると共に、背部痛についてのメッセージを端末50に表示させて、ユーザに確認を促す。又は、表示制御機能114は、背部痛について、
図14に示す部分グラフ構造「骨転移空間」の画面を端末50に表示させて、画面上でノード「背部痛」の部分にハイライト表示などを行うことで、ユーザに確認を促す。これにより、ユーザが診療情報の関係性を把握することができる。
【0075】
なお、本実施形態で図示した各装置の各構成要素は機能概念的なものであり、必ずしも物理的に図示の如く構成されていることを要しない。すなわち、各装置の分散・統合の具体的形態は図示のものに限られず、その全部または一部を、各種の負荷や使用状況などに応じて、任意の単位で機能的または物理的に分散・統合して構成することができる。さらに、各装置にて行われる各処理機能は、その全部または任意の一部が、CPUおよび当該CPUにて解析実行されるプログラムにて実現され、或いは、ワイヤードロジックによるハードウェアとして実現され得る。
【0076】
また、本実施形態で説明した方法は、予め用意されたプログラムをパーソナルコンピュータやワークステーション等のコンピュータで実行することによって実現することができる。このプログラムは、インターネット等のネットワークを介して配布することができる。また、このプログラムは、ハードディスク、フレキシブルディスク(FD)、CD-ROM、MO、DVD等のコンピュータで読み取り可能な非一時的な記録媒体に記録され、コンピュータによって記録媒体から読み出されることによって実行することもできる。
【0077】
以上説明した少なくとも1つの実施形態によれば、ユーザが診療情報の関係性を把握することができる。
【0078】
いくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更、実施形態同士の組み合わせを行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0079】
100 医用情報処理装置
111 取得機能
112 特定機能
113 決定機能
114 表示制御機能
120 記憶回路