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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024171154
(43)【公開日】2024-12-11
(54)【発明の名称】光電変換装置、電子機器および基板
(51)【国際特許分類】
   H04N 25/78 20230101AFI20241204BHJP
【FI】
H04N25/78
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023088073
(22)【出願日】2023-05-29
(71)【出願人】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003281
【氏名又は名称】弁理士法人大塚国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小林 秀央
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 雅紀
【テーマコード(参考)】
5C024
【Fターム(参考)】
5C024CX03
5C024CY42
5C024EX43
5C024GX02
5C024GX16
5C024GX18
5C024GY39
5C024GY41
5C024HX23
5C024HX29
(57)【要約】
【課題】光電変換装置の使い勝手の向上に有利な技術を提供する。
【解決手段】入射光を受ける光電変換部と、前記入射光に基づいて前記光電変換部が生成する信号電荷にそれぞれが対応する信号である第1信号および第2信号が入力され、前記第1信号と前記第2信号との差分を示す第3信号を出力する差分回路と、前記第3信号をアナログデジタル変換するオーバーサンプリング型の変換回路と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
入射光を受ける光電変換部と、
前記入射光に基づいて前記光電変換部が生成する信号電荷にそれぞれが対応する信号である第1信号および第2信号が入力され、前記第1信号と前記第2信号との差分を示す第3信号を出力する差分回路と、
前記第3信号をアナログデジタル変換するオーバーサンプリング型の変換回路と、
を備えることを特徴する光電変換装置。
【請求項2】
前記光電変換部には、複数の光電変換素子が配され、
前記第1信号は、前記複数の光電変換素子の一部において入射した光に応じて生成された電荷に基づく信号であり、
前記第2信号は、前記複数の光電変換素子の別の一部において入射した光に応じて生成された電荷に基づく信号であることを特徴とする請求項1に記載の光電変換装置。
【請求項3】
前記第1信号および前記第2信号が入力されるとともに、前記第1信号および前記第2信号をそれぞれ保持するサンプルホールド部を備え、
前記サンプルホールド部の出力ノードは前記差分回路に電気的に接続されており、
前記光電変換部には、前記複数の光電変換素子のそれぞれに対応するように複数のフローティングディフュージョンがさらに配され、
前記サンプルホールド部は、
前記複数の光電変換素子のうち着目する第1光電変換素子から前記複数のフローティングディフュージョンのうち前記第1光電変換素子に対応する第1フローティングディフュージョンに電荷の転送を行う第1転送動作の後、かつ、前記第1転送動作の後に前記第1フローティングディフュージョンのリセットを行わずに前記第1光電変換素子から前記第1フローティングディフュージョンに電荷の転送を行う第2転送動作を行う前に、前記第1フローティングディフュージョンに転送された電荷に基づく前記第1信号をサンプリングし、
前記第2転送動作の後に、前記第1フローティングディフュージョンに転送された電荷に基づく前記第2信号をサンプリングすることを特徴とする請求項2に記載の光電変換装置。
【請求項4】
前記光電変換部には、複数の光電変換素子が配され、
前記複数の光電変換素子は、それぞれ2つ以上の光電変換素子を含む複数の光電変換素子群を構成し、
前記第1信号は、前記複数の光電変換素子群のうちの一部の光電変換素子群において入射した光に応じて生成された電荷に基づく信号であり、
前記第2信号は、前記複数の光電変換素子群のうちの別の一部の光電変換素子群において入射した光に応じて生成された電荷に基づく信号であることを特徴とする請求項1に記載の光電変換装置。
【請求項5】
前記複数の光電変換素子群のそれぞれは、第1光電変換素子および第2光電変換素子を含み、
前記第1信号は、前記第1光電変換素子において入射した光に応じて生成された電荷に基づく信号であり、
前記第2信号は、前記第1光電変換素子において入射した光に応じて生成された電荷および前記第2光電変換素子において入射した光に応じて生成された電荷に基づく信号であることを特徴とする請求項4に記載の光電変換装置。
【請求項6】
前記第1信号および前記第2信号が入力されるとともに、前記第1信号および前記第2信号をそれぞれ保持するサンプルホールド部を備え、
前記サンプルホールド部の出力ノードは前記差分回路に電気的に接続されており、
前記光電変換部には、前記複数の光電変換素子群のそれぞれに対応するように複数のフローティングディフュージョンがさらに配され、
前記サンプルホールド部は、
前記複数の光電変換素子群のうち着目する光電変換素子群の前記第1光電変換素子から前記複数のフローティングディフュージョンのうち前記着目する光電変換素子群に対応する第1フローティングディフュージョンに電荷の転送を行う第1転送動作の後、かつ、前記第1転送動作の後に前記第1フローティングディフュージョンのリセットを行わずに前記第2光電変換素子から前記第1フローティングディフュージョンに電荷の転送を行う第2転送動作を行う前に、前記第1フローティングディフュージョンに転送された電荷に基づく前記第1信号をサンプリングし、
前記第2転送動作の後に、前記第1フローティングディフュージョンに転送された電荷に基づく前記第2信号をサンプリングすることを特徴とする請求項5に記載の光電変換装置。
【請求項7】
前記第1光電変換素子と前記第2光電変換素子とが、マイクロレンズを共有していることを特徴とする請求項6に記載の光電変換装置。
【請求項8】
前記第1光電変換素子と前記第2光電変換素子とが、入射する光に対する感度が互いに異なっていることを特徴とする請求項6に記載の光電変換装置。
【請求項9】
前記サンプルホールド部は、前記第1フローティングディフュージョンがリセットされた際に第4信号をサンプリングし、
前記変換回路は、前記差分回路によって出力された前記第1信号と前記第4信号との差分を示す第5信号をさらにアナログデジタル変換することを特徴とする請求項3に記載の光電変換装置。
【請求項10】
前記サンプルホールド部は、第1容量素子、第2容量素子、および、前記第1容量素子および前記第2容量素子によって共有される出力用の増幅器を含む第1サンプルホールド回路と、第3容量素子、第4容量素子、および、前記第3容量素子および前記第4容量素子によって共有される出力用の増幅器を含む第2サンプルホールド回路と、を備え、
前記第1容量素子および前記第3容量素子に、前記第1信号が保持され、
前記第4容量素子に、前記第2信号が保持され、
前記第2容量素子に、前記第4信号が保持され、
前記差分回路は、前記第1容量素子に保持された前記第1信号と前記第4容量素子に保持された前記第2信号とから前記第3信号を生成することを特徴とする請求項9に記載の光電変換装置。
【請求項11】
前記差分回路は、前記第3容量素子に保持された前記第1信号と前記第2容量素子に保持された前記第4信号とから前記第5信号を生成することを特徴とする請求項10に記載の光電変換装置。
【請求項12】
前記差分回路は、前記第1信号と前記第2信号との信号電圧の差分に応じた電流を前記第3信号として生成することを特徴とする請求項1に記載の光電変換装置。
【請求項13】
前記変換回路が、ΔΣ型アナログデジタル変換回路を含むことを特徴とする請求項1に記載の光電変換装置。
【請求項14】
請求項1乃至13の何れか1項に記載の光電変換装置と、
前記光電変換装置の動作を制御する制御装置と、
を備えることを特徴とする電子機器。
【請求項15】
入射光を受ける光電変換部が設けられた基板に積層される基板であって、
前記入射光に基づいて前記光電変換部が生成する信号電荷にそれぞれが対応する信号である第1信号および第2信号が入力され、前記第1信号と前記第2信号との差分を示す第3信号を出力するための差分回路と、
前記第3信号をアナログデジタル変換するオーバーサンプリング型の変換回路と、
を備えることを特徴する基板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光電変換装置、電子機器および基板に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、ΔΣ型のアナログデジタル変換回路を備えた固体撮像装置が示されている。また、特許文献1の固体撮像装置において、データ信号用サンプル&ホールド回路にサンプリングされたデータ信号とリセット信号用サンプル&ホールド回路にサンプリングされたリセット信号との差分処理を行うことが示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2019/069614号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、光電変換装置の使い勝手の向上に有利な技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題に鑑みて、本発明の実施形態に係る光電変換装置は、入射光を受ける光電変換部と、前記入射光に基づいて前記光電変換部が生成する信号電荷にそれぞれが対応する信号である第1信号および第2信号が入力され、前記第1信号と前記第2信号との差分を示す第3信号を出力する差分回路と、前記第3信号をアナログデジタル変換するオーバーサンプリング型の変換回路と、を備えることを特徴する。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、光電変換装置の使い勝手の向上に有利な技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本実施形態の光電変換装置の構成例を示す図。
図2図1の光電変換装置の画素の構成例を示す図。
図3図1の光電変換装置のサンプルホールド部および変換回路の構成例を示す図。
図4図1の光電変換装置の動作例を示すタイミング図。
図5図1の光電変換装置の画素の構成例を示す図。
図6図1の光電変換装置の動作例を示すタイミング図。
図7】本実施形態の光電変換装置が組み込まれたカメラの構成例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、添付図面を参照して実施形態を詳しく説明する。なお、以下の実施形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。実施形態には複数の特徴が記載されているが、これらの複数の特徴の全てが発明に必須のものとは限らず、また、複数の特徴は任意に組み合わせられてもよい。さらに、添付図面においては、同一若しくは同様の構成に同一の参照番号を付し、重複した説明は省略する。
【0009】
図1図6を参照して、本開示の実施形態による光電変換装置について説明する。図1は、本開示の光電変換装置1000の構成例を示す模式図である。図2は、光電変換装置1000に配された画素10の構成例を示す図である。図3は、光電変換装置1000に配されたサンプルホールド部50およびアナログデジタル変換を行う変換回路60の構成例を示す図である。図4は、光電変換装置1000の動作例を示すタイミング図である。
【0010】
光電変換装置1000は、複数の画素10(光電変換素子400)が配された基板である画素基板1と、画素10を動作させるための回路などが配された基板である回路基板2と、を含む。光電変換装置1000は、画素基板1と回路基板2とが互いに積層された積層チップ構造を備えていてもよい。画素基板1は、複数の画素10(光電変換素子400)が配された光電変換部5を備えている。回路基板2は、電流源40、サンプルホールド部50、変換回路60、データ処理回路90、出力部100を含み構成されている。
【0011】
入射光を受ける光電変換部5には、光電変換素子400をそれぞれ含む複数の画素10が行列状に配されている。ここで、行方向は、図1において横方向を指し、列方向は、図1において縦方向を指す。画素10は、入射した光に応じた電荷を生成する。
【0012】
光電変換部5には、画素10が配されている画素列のそれぞれに対応して、垂直信号線30が列方向に沿って配されている。垂直信号線30は、画素10に配された光電変換素子400によって生成された電荷に基づく信号を画素10からサンプルホールド部50に転送する。
【0013】
電流源40は、垂直信号線30のそれぞれに対応して配される。電流源40は、信号を読み出すために選択された画素10に対して、垂直信号線30を介して信号を読み出すためのバイアス電流を供給する。
【0014】
サンプルホールド部50は、それぞれの画素10に配された光電変換素子400で生成された信号を光電変換部5から垂直信号線30を介してサンプリングし保持する。本実施形態において、サンプルホールド部50において、詳細は後述するが、2つのサンプルホールド回路が1つの垂直信号線30に接続されている。
【0015】
変換回路60は、サンプルホールド部50から出力される信号をアナログデジタル変換する。変換回路60は、それぞれの垂直信号線30に対応して配されている。アナログデジタル変換を行う変換回路60として、デルタシグマ(ΔΣ)型アナログデジタル変換回路など、オーバーサンプリング型のアナログデジタル変換器が用いられうる。しかしながら、これに限られることはなく、変換回路60として、スロープ型アナログデジタル変換回路や逐次比較型アナログデジタル変換回路などが用いられてもよい。
【0016】
データ処理回路90は、変換回路60から出力されるデジタル信号を処理するデジタル信号処理回路である。例えば、データ処理回路90は、変換回路60から出力されたデジタル信号に対して、補正処理や補完処理などを行ってもよい。出力部100は、データ処理回路90で処理された信号を光電変換装置1000の外部へ出力する。
【0017】
図2に示されるように、画素10は、光電変換素子400、転送トランジスタ410、リセットトランジスタ455、増幅トランジスタ430、選択トランジスタ440を含みうる。光電変換素子400は、例えば、フォトダイオードでありうる。光電変換素子400の2つの主電極のうち一方の主電極は、グランド電位450に接続されている。光電変換素子400は、受光した光をその光量に応じた電荷量の信号電荷(例えば、光電子)に光電変換し蓄積する。光電変換素子400の2つの主電極のうち他方の主電極は、転送トランジスタ410を介して増幅トランジスタ430のゲート電極に接続されている。増幅トランジスタ430のゲート電極と電気的に接続されているノード420は、フローティングディフュージョンとして機能する。フローティングディフュージョンは、光電変換素子400で生成された信号電荷を信号電圧に変換する電荷電圧変換部である。ここで、光電変換部5には、複数の画素10が配されている。そのため、光電変換部5には、複数の光電変換素子400と、複数の光電変換素子400のそれぞれに対応するように複数のフローティングディフュージョンが配されているともいえる。
【0018】
転送トランジスタ410のゲート電極には、制御信号TXが供給される。転送トランジスタ410が制御信号TXに応じて導通状態(オン状態)になることによって、光電変換素子400で光電変換され、光電変換素子400に蓄積された信号電荷が、フローティングディフュージョンであるノード420に転送される。
【0019】
リセットトランジスタ455は、電源電位460とノード420との間に接続されている。ここで、「トランジスタが、AとBとの間に接続されている」と表現した場合、トランジスタの2つの主電極(ソースおよびドレイン)のうち一方の主電極がAに接続され、2つの主電極のうち他方の主電極がBに接続されていることを示す。また、この場合に、トランジスタのゲート電極は、AまたはBに接続されていない。
【0020】
リセットトランジスタ455のゲート電極には、制御信号RESが供給される。リセットトランジスタ455が制御信号RESに応じてオン状態になることによって、フローティングディフュージョンとして機能するノード420の電位が、電源電位460にリセットされ、フローティングディフュージョンに保持されている電荷が掃き出される。
【0021】
増幅トランジスタ430は、電源電位460と選択トランジスタ440との間に接続されている。また、増幅トランジスタ430のゲート電極は、ノード420に接続されている。増幅トランジスタ430は、光電変換素子400の光電変換によって得られた信号を読み出すソースフォロワの入力部を構成する。つまり、増幅トランジスタ430は、2つの主電極のうち一方の主電極が、選択トランジスタ440を介して垂直信号線30に接続される。増幅トランジスタ430と垂直信号線30に接続された上述の電流源40とは、ノード420の電圧を垂直信号線30の電位に変換するソースフォロワを構成している。
【0022】
選択トランジスタ440は、増幅トランジスタ430と垂直信号線30との間に接続されている。選択トランジスタ440のゲート電極には、制御信号SELが供給される。選択トランジスタ440が制御信号SELに応じてオン状態になることによって、画素10は選択状態となり、増幅トランジスタ430から垂直信号線30に信号が出力される。
【0023】
画素10の回路構成は、図2に示される構成に限られるものではない。例えば、選択トランジスタ440が、電源電位460と増幅トランジスタ430との間に接続されていてもよい。また、図2に示される構成では、画素10として、転送トランジスタ410、リセットトランジスタ455、増幅トランジスタ430、選択トランジスタ440を備える、所謂、4 Transistors(4Tr.)型の構成が示されている。しかしながら、これに限られることはない。例えば、画素10から選択トランジスタ440が省略され、画素10は、増幅トランジスタ430が選択トランジスタとしても機能する3Tr.型の構成を備えていてもよい。また、画素10は、トランジスタの数を増やした5Tr.型以上の構成を備えていてもよい。画素10から、リセットトランジスタ455によってノード420の電位をリセットし、光電変換素子400をリセットした際のリセット信号や、光電変換素子400で入射した光に応じて光電変換を行った際の信号レベルであるデータ信号が出力されうる。
【0024】
図3には、光電変換装置1000のうちサンプルホールド部50および変換回路60に着目した回路の構成例が示されている。図3には、サンプルホールド部50および変換回路60のうち1つの垂直信号線30に対応して配されているサンプルホールド回路およびアナログデジタル変換回路が示されている。1つの垂直信号線30に対応して、サンプルホールド部50として、それぞれの画素10から出力されるリセット信号やデータ信号を、それぞれの画素10ごとにサンプリングし保持する、2つのサンプルホールド回路210、211が接続されている。また、1つの垂直信号線30に対応して、1つの変換回路60が接続されている。
【0025】
サンプルホールド回路210は、容量素子120、123、容量素子120、123によって共有される出力用の増幅器である反転増幅器220を含む。スイッチ110、113は、制御信号Smp_n1、Smp_n2に従って、垂直信号線30と容量素子120、123との間の接続を制御する。反転増幅器220は、ソース接地回路およびソースフォロア回路の組み合わせによって構成されうる。反転増幅器220は、トランジスタ130、140、150、160、230、スイッチ170、180、190、193、電流源200を含む。スイッチ170は、トランジスタ130、140、150、160で構成されるソース接地回路の入出力間に接続されており、制御信号Smpa_nによって制御される。反転増幅器220からサンプルホールド回路210にサンプリングされた信号が、制御信号Hld_n、Hld_n1ないしHld_n2に従って出力される。
【0026】
サンプルホールド回路211は、サンプルホールド回路210に近似した構成を備えうる。サンプルホールド回路211は、容量素子121、122、容量素子121、122によって共有される出力用の増幅器である反転増幅器221を含む。スイッチ111、112は、制御信号Smp_s1、Smp_s2に従って、垂直信号線30と容量素子121、122との間の接続を制御する。反転増幅器221は、ソース接地回路およびソースフォロア回路の組み合わせによって構成されうる。反転増幅器221は、トランジスタ131、141、151、161、231、スイッチ171、181、191、192、電流源201を含む。スイッチ171は、トランジスタ131、141、151、161で構成されるソース接地回路の入出力間に接続されており、制御信号Smpa_sによって制御される。反転増幅器221からサンプルホールド回路211にサンプリングされた信号が、制御信号Hld_s、Hld_s1ないしHld_s2に従って出力される。
【0027】
図3に示されるように、サンプルホールド回路210の出力端とサンプルホールド回路211の出力端との間には、抵抗素子240が配されている。ここで、サンプルホールド回路210の出力端の電位、つまり、サンプルホールド回路210にサンプリングされた信号に応じた電位をV1とする。同様に、サンプルホールド回路211の出力端の電位、つまり、サンプルホールド回路211にサンプリングされた信号に応じた電位をV2とする。また、抵抗素子240の抵抗値をRとする。サンプルホールド回路210の出力端とサンプルホールド回路211の出力端との間に抵抗素子240が配されることによって、抵抗素子240に流れる電流Iは、
I=(V1-V2)/R
と表される。この電流Iは、変換回路60へと入力される。
【0028】
この場合に、抵抗素子240に流れる電流Iは、サンプルホールド回路210の出力端の電位V1とサンプルホールド回路211の出力端の電位V2との差分に比例する。したがって、抵抗素子240は、サンプルホールド回路210に保持された信号とサンプルホールド回路211に保持された信号との信号電圧の差分に応じた電流を、変換回路60に供給する信号として生成するともいえる。そのため、抵抗素子240は、サンプルホールド部50のサンプルホールド回路210に保持された信号とサンプルホールド回路211に保持された信号との差分を示す信号を出力するための差分回路として機能する。例えば、上述のリセット信号が、サンプルホールド回路210にサンプリングされ、データ信号が、サンプルホールド回路211にサンプリングされる。抵抗素子240に流れる電流Iは、上述のように、サンプルホールド回路210の出力端の電位V1とサンプルホールド回路211の出力端の電位V2との差分に比例することから、電流Iが変換回路60に入力される段階で相関2重サンプリング(CDS)が行われていることになる。変換回路60は、サンプルホールド回路210に保持された信号とサンプルホールド回路211に保持された信号との差分を示す信号(電流)をアナログデジタル変換する。
【0029】
本実施形態においてΔΣ型のアナログデジタル変換回路である変換回路60は、第1積分器、第2積分器、量子化器370、デシメーションフィルタ380を含む。変換回路60において、第1積分器は、積分容量320によって構成されている。第2積分器は、電圧を電流に変換するGmセル330および積分容量360によって構成されている。第1積分器の入力ノードには、電流源300およびスイッチ310を含むデジタルアナログ変換器305が接続されている。デジタルアナログ変換器305は、第2積分器および量子化器370を介したデジタル信号に応じて第1積分器への電流を制御する。第2積分器の入力ノードには、電流源340およびスイッチ350を含むデジタルアナログ変換器345が接続されている。デジタルアナログ変換器345は、第2積分器の出力として、量子化器370で量子化した結果に応じて、第2積分器の電流を制御する。
【0030】
変換回路60では、量子化器370で前の量子化値を、デジタルアナログ変換器305、345を通して、第2積分器および第1積分器にフィードバックする動作が行われる。このように、前の量子化値をデジタルアナログ変換器305、345にフィードバックしながら積分器を2回通すことによって2次のノイズシェーピング特性を得ることができる。さらに、量子化器370の後段に配されているデシメーションフィルタ380によって高域ノイズを除去することで、高い精度でアナログデジタル変換出力を得ることができる。
【0031】
図4には、サンプルホールド回路210、211の各スイッチの動作例が示されている。図4には、画素10の制御信号RES、TX、垂直信号線30の電位、サンプルホールド回路210、211の各スイッチの制御信号Smp_n1、Smp_n2、Smpa_n、Hld_n、Hld_n1、Hld_n2、Smp_s1、Smp_s2、Smpa_s、Hld_s、Hld_s1、Hld_s2のそれぞれ波形が示されている。図4に示される波形において、それぞれの制御信号がハイレベルの間、対応するスイッチが導通状態になり、それぞれの制御信号がローレベルの間、対応するスイッチが非導通状態(オフ状態)になるとして説明する。また、図4では、着目する1つの画素10(光電変換素子400)の動作について説明するが、光電変換部5に配されたそれぞれの画素10(光電変換素子400)において、同様の動作が行われうる。その場合に、着目する画素10(光電変換素子400)と同じ行に配された画素10(光電変換素子400)において、同時に図4に示される動作が行われうる。また、着目する画素10(光電変換素子400)と同じ列に配された画素10(光電変換素子400)において、行ごとに順番に同様の動作が行われうる。
【0032】
時刻t1~t2において、図2に示される制御信号RESがハイレベルになりリセットトランジスタ455がオン状態になることによって、フローティングディフュージョンであるノード420がリセットされる。ノード420がリセットされたことに応じて、垂直信号線30の電位は、リセット信号のレベルになる。また、時刻t1で、制御信号Smp_n1、Smpa_nがハイレベルになり、サンプルホールド回路210において、スイッチ110、170がオン状態になる。次いで、制御信号Smpa_nがハイレベルからローレベルに遷移する時刻t3で、リセット信号の電位Vnがサンプリングされ、サンプルホールド回路210の容量素子120に蓄積される。次に、時刻t4において、制御信号Smp_n1がハイレベルからローレベルへ遷移し、スイッチ110がオフ状態となり、容量素子120は、垂直信号線30から切り離される。ここで、図4には示されていないが、光電変換素子400は、時刻t1よりも前にリセットされ、入射する光に応じた電荷を蓄積しているとして、以下の説明を行う。
【0033】
時刻t5~t6において、図2に示される制御信号TXがハイレベルになり転送トランジスタ410がオン状態になることによって、光電変換素子400からフローティングディフュージョンであるノード420へ電荷が転送される。ノード420の電位は、光電変換素子400から転送された電荷の量に応じて低下する。それによって、垂直信号線30の電位が低下し、第1データ信号のレベルになる。また、時刻t5で、制御信号Smp_s1、Smpa_sがハイレベルになり、サンプルホールド回路211において、スイッチ111、171がオン状態になる。次いで、制御信号Smpa_sがハイレベルからローレベルに遷移する時刻t7で、第1データ信号の電位Vs1がサンプリングされ、容量素子121に蓄積される。次に、時刻t8において、制御信号Smp_s1がハイレベルからローレベルへ遷移し、スイッチ111がオフ状態になり、容量素子121は、垂直信号線30から切り離される。
【0034】
ここで、時刻t7でスイッチ171をオフ状態に遷移させる際のスイッチ171の両端に掛かる電圧は、垂直信号線30の電位によらず常に略同一になる。そのため、スイッチオフに起因する電荷注入によって、容量素子121に蓄積されている第1データ信号の電位Vs1にゲイン成分の誤差が発生することを抑制できる。また、時刻t8でスイッチ111をオフする際には、容量素子121の両端ともにハイインピーダンス状態になっているため、スイッチ111をオフする際の影響は生じ難い。このように、第1データ信号の電位Vs1へのゲイン誤差の抑制が可能になっている。
【0035】
上述の動作において、時刻t5で、制御信号Smp_n2、Smpa_nがハイレベルになり、サンプルホールド回路210においても、スイッチ113、170がオン状態になる。次いで、制御信号Smpa_nがハイレベルからローレベルに遷移する時刻t7で、第1データ信号の電位Vs1がサンプリングされ、容量素子123に蓄積される。次に、時刻t8において、制御信号Smp_n1がハイレベルからローレベルへ遷移し、スイッチ113がオフ状態となり、容量素子123は、垂直信号線30から切り離される。このように、本実施形態において、サンプルホールド回路210においても、容量素子123に第1データ信号の電位Vs1がサンプリングされる。
【0036】
時刻t9~t10において、再び、図2に示される制御信号TXがハイレベルになり転送トランジスタ410がオン状態になることによって、時刻t6からt10の間に光電変換素子400で蓄積された電荷が、フローティングディフュージョンであるノード420にさらに転送される。ノード420の電位は、電荷の量に応じてさらに低下する。それによって、垂直信号線30の電位がさらに低下し、第2データ信号のレベルになる。また、時刻t9で、制御信号Smp_s2、Smpa_sがハイレベルになり、サンプルホールド回路211において、スイッチ112、171がオン状態になる。次いで、制御信号Smpa_sがハイレベルからローレベルに遷移する時刻t11で、第2データ信号の電位Vs2がサンプリングされ、容量素子122に蓄積される。次に、時刻t12において、制御信号Smp_s2がハイレベルからローレベルへ遷移し、スイッチ112がオフ状態になり、容量素子122は、垂直信号線30から切り離される。
【0037】
ここで、時刻t11でスイッチ171をオフ状態に遷移させる際のスイッチ171の両端に掛かる電圧は、垂直信号線30の電位によらず常に略同一になる。そのため、スイッチオフに起因する電荷注入によって、容量素子122に蓄積されている第2データ信号の電位Vs2にゲイン成分の誤差は発生しない。また、時刻t12でスイッチ112をオフする際には、容量素子122の両端ともにハイインピーダンス状態になっているため、スイッチ112をオフする際の影響は生じ難い。このように、第2データ信号の電位Vs2へのゲイン誤差の抑制が可能になっている。
【0038】
このように、サンプルホールド部50は、光電変換素子400からフローティングディフュージョンであるノード420に電荷の転送を行う第1転送動作の後、かつ、第1転送動作の後にノード420のリセットを行わずに同じ光電変換素子400からノード420に電荷の転送を行う第2転送動作を行う前に、フローティングディフュージョンに転送された電荷に基づく第1データ信号をサンプルホールド回路210の容量素子123およびサンプルホールド回路211の容量素子121にサンプリングする。さらに、サンプルホールド部50は、第2転送動作の後に、フローティングディフュージョンに転送された電荷に基づく第2データ信号をサンプルホールド回路211の容量素子122にサンプリングする。また、サンプルホールド部50は、上述のように、フローティングディフュージョンとして機能するノード420がリセットされた際に、リセットされたノード420の電圧に応じたリセット信号をサンプルホールド回路210の容量素子120にサンプリングし保持する。
【0039】
次いで、時刻t13で、制御信号Hld_n1、Hld_nがハイレベルになり、スイッチ180、190がオン状態になることによって、サンプルホールド回路210において、容量素子120がリセット信号の電位Vnを出力する。また、同じ時刻t13において、制御信号Hld_s1、Hld_sがハイレベルになり、スイッチ181、191がオン状態になることによって、サンプルホールド回路211において、容量素子121が第1データ信号の電位Vs1を出力する。
【0040】
上述したように、サンプルホールド回路210の出力端のリセット信号の電位Vnとサンプルホールド回路211の出力端のデータ信号の電位Vs1との差分に応じた電流が、変換回路60へと入力される。変換回路60は、電位Vnと電位Vs1との差分に応じた電流をアナログデジタル変換する。
【0041】
時刻t14で、制御信号Hld_n1がローレベルとなり、スイッチ190がオフ状態になった後に、時刻t15で、制御信号Hld_n2がハイレベルとなり、スイッチ193がオン状態になる。それによって、サンプルホールド回路210において、容量素子123が第1データ信号の電位Vs1を出力する。また、時刻t14で、制御信号Hld_s1がローレベルとなり、スイッチ191がオフ状態になった後に、時刻t15で、制御信号Hld_s2がハイレベルとなり、スイッチ192がオン状態になる。それによって、サンプルホールド回路211において、容量素子122が第2データ信号の電位Vs2を出力する。
【0042】
それによって、サンプルホールド回路210の出力端の第1データ信号の電位Vs1とサンプルホールド回路211の出力端の第2データ信号の電位Vs2との差分に応じた電流が、変換回路60へと入力される。変換回路60は、電位Vs1と電位Vs2との差分に応じた電流をアナログデジタル変換する。
【0043】
本実施形態において、リセット信号の電位Vnと第1データ信号の電位Vs1との差分をアナログデジタル変換した結果から、時刻t1よりも前に開始され時刻t6に終了するまでの蓄積時間に光電変換素子400で光の入射に応じて発生する電荷に基づく信号を得ることができる。また、第2データ信号の電位Vs2と第1データ信号の電位Vs1の差分をアナログデジタル変換した結果から、時刻t6~t10の蓄積時間に光電変換素子400で光の入射に応じて発生する電荷に基づく信号を得ることができる。
【0044】
本実施形態において、リセット信号とデータ信号との差分だけでなく、入射した光に応じて生成された電荷にそれぞれ基づく第1データ信号と第2データ信号との差分に応じた信号が得られる。このように、データ信号同士の差分を取得し、データ信号同士の差分に基づくAD変換を行うことによって、例えば、上述したように蓄積時間が異なる2つの信号の読み出しを行うことが可能である。蓄積時間が異なる信号は、例えば、ハイダイナミックレンジ(HDR)撮像などに用いられてもよく、光電変換装置1000の高機能化が可能になる。
【0045】
また、上述のように、2つのデータ信号の電位Vs1、Vs2のゲイン誤差を抑制することが可能である。さらに、容量素子121と容量素子122とが、1つのサンプルホールド回路211に配され、反転増幅器221を共有することによって、動作時の電力を増加させることなく、2つのデータ信号の電位Vs1、Vs2を読み出すことが可能となる。同様に、容量素子120と容量素子123とが、1つのサンプルホールド回路210に配され、反転増幅器220を共有することによって、動作時の電力を増加させることなく、リセット信号の電位Vnと第1データ信号の電位Vs1とを読み出すことが可能となる。また、サンプルホールド回路210が容量素子120、123を備えることによって、2つの容量素子121、122にサンプリングされた2つのデータ信号の電位Vs1、Vs2の双方についてCDSを行うことが可能となっている。
【0046】
また、第2データ信号の電位Vs2と第1データ信号の電位Vs1の差分信号に対してアナログデジタル変換を行うことでノイズが低減されうる。例えば、第2データ信号の電位Vs2、第1データ信号の電位Vs1の各々をアナログデジタル変換してから差分を取得する場合に、アナログデジタル変換に起因して発生するノイズが√2倍になってしまう。換言すると、本実施形態では、アナログデジタル変換後に差分を取得する場合と比べて、アナログデジタル変換に起因するノイズが、1/√2に低減される。
【0047】
さらに、第2データ信号の電位Vs2と第1データ信号の電位Vs1との差分値に対してアナログデジタル変換を行うことによって、光電変換装置1000で消費される電力の低減が可能になる。第2データ信号の電位Vs2の信号振幅は、第1データ信号の電位Vs1の信号振幅より大きい。そのため、例えば、第2データ信号の電位Vs2とリセット信号の電位Vnとの差分をアナログデジタル変換する場合、抵抗素子240の両端に掛かる電圧が大きくなり、また、変換回路60へ入力される電流が大きくなる。その場合、例えば、電流源300の電流値を大きくする必要があるため、消費電力が大きくなってしまう。一方、本実施形態において、第2データ信号の電位Vs2と第1データ信号の電位Vs1との差分は、第2データ信号の電位Vs2とリセット信号の電位Vnとの差分よりも小さい。そのため、第2データ信号の電位Vs2と第1データ信号の電位Vs1との差分値を読み出す際に、抵抗素子240の両端に掛かる電圧は小さくなり、変換回路60へ入力される電流が小さくなる。そのため、電流源300の電流値を小さくことが可能となり、光電変換装置1000において、消費電力を低減することが可能となる。
【0048】
また、2つのデータ信号の電位Vs1、Vs2に対して共通の抵抗素子240を用いてゲインが掛かる。それによって、温度やプロセスばらつきに対するゲイン変動が、2つのデータ信号の電位Vs1、Vs2に対して同じ方向に連動しやすくなる。結果として、2つの異なる蓄積時間に対応する信号に、異なるばらつきが重畳することによるHDR画像の画質劣化が抑制可能になる。
【0049】
ここで、上述では、光電変換部5に配された複数の画素10(光電変換素子400)のうち1つの画素10(光電変換素子400)から得られた2つのデータ信号について差分値を取得してから、アナログデジタル変換することを説明した。しかしながら、上述の動作は、これに限られることはない。例えば、互いに異なる画素10に配された光電変換素子400から読み出したデータ信号同士で差分を取得してもよい。複数の光電変換素子400は、それぞれ2つ以上の光電変換素子を含む複数の光電変換素子群を構成しうる。サンプルホールド部50は、複数の光電変換素子群のそれぞれにおいて入射した光に応じて生成された電荷に基づく2つ以上のデータ信号を、複数の光電変換素子群のそれぞれの光電変換素子群ごとにサンプリングする。データ信号同士の差分を取得する1つの光電変換素子群を構成する光電変換素子400が配された画素10は、例えば、互いに隣り合う画素10であってもよい。
【0050】
また、上述では、サンプルホールド回路210に2つの容量素子120、123が配され、サンプルホールド回路211に2つの容量素子121、122が配される構成を例に説明を行った。しかしながら、これに限られることはない。例えば、容量素子122、123が配されずに、容量素子120と容量素子121とに互いに隣り合う画素10に配された光電変換素子400から読み出したデータ信号を保持し、それらの差分信号をアナログデジタル変換してもよい。この場合に、例えば、エッジ検出用の信号を得ることが可能となる。そのような読み出しを行う場合であっても、上述のように、アナログデジタル変換に起因するノイズを1/√2に低減し、かつ、低電力での読み出しが可能になる。ただし、この場合は、画素10のフローティングディフュージョンで発生するリセットノイズのキャンセルが難しい。そのため、リセットノイズに関しては、上述のように、同じフローティングディフュージョンに転送された信号同士で差分を取る方が抑制できる。
【0051】
図5は、図2に示される画素10の変形例を示す図である。図6は、図5に示される画素10を備える光電変換装置1000の動作例を示すタイミング図である。以下、上述の図1~4を用いて説明した内容と異なる点を中心に説明し、同様であってもよい構成や動作などについては、適宜、説明を省略する。
【0052】
図5に示されるように、画素10は、図2に示される構成に追加して、光電変換素子401、転送トランジスタ411をさらに含む。図5に示される構成おいて、画素10は、光電変換素子400と光電変換素子401とがノード420に接続される、所謂、フローティングディフュージョン共有画素となっている。2つの光電変換素子400、401が、フローティングディフュージョンとして機能するノード420を共有する構成になっている。図5に示される画素10は、例えば、縦方向にそれぞれ1つずつ光電変換素子を備える画素の2画素分に相当する画素ともいえる。
【0053】
ここで、画素10に配された光電変換素子400と光電変換素子401とは、1つのノード420を共有し、後述するようにデータ信号同士の差分を取得する光電変換素子群を構成する。光電変換部5には、複数の画素10が配されている。そのため、光電変換部5には、光電変換素子400、401によって構成される複数の光電変換素子群と、複数の光電変換素子群のそれぞれに対応するように複数のフローティングディフュージョンが配されているともいえる。
【0054】
光電変換素子401は、例えば、光電変換素子400と同様にフォトダイオードでありうる。また、転送トランジスタ411は、転送トランジスタ410と同様の構成を備えうる。光電変換素子401の2つの主電極のうち一方の主電極は、グランド電位450に接続されている。光電変換素子401の2つの主電極のうち他方の主電極は、転送トランジスタ411を介してノード420に接続されている。転送トランジスタ410のゲート電極には、転送トランジスタ411のゲート電極に供給される制御信号TXBとの区別のために、上述の制御信号TXに代わり、制御信号TXAが供給される。転送トランジスタ410、411のゲート電極には制御信号TXA、TXBが供給され、転送トランジスタ410、411が制御信号TXA、TXBに応じてオン状態になることによって、光電変換素子400、401に蓄積された信号電荷がノード420に転送される。
【0055】
次いで、図6に示されるタイミング図を用いて、図5に示される画素10を備える光電変換装置1000の動作例のうち、上述の図4に示される動作例との異なる部分を中心に説明する。図4の説明と同様に、着目する1つの光電変換素子群(画素10、光電変換素子400、401)の動作について説明するが、光電変換部5に配されたそれぞれの光電変換素子群(画素10、光電変換素子400、401)において、同様の動作が行われうる。その場合に、着目する光電変換素子群(画素10、光電変換素子400、401)と同じ行に配された光電変換素子群(画素10、光電変換素子400、401)において、同時に図4に示される動作が行われうる。また、着目する光電変換素子群(画素10、光電変換素子400、401)と同じ列に配された光電変換素子群(画素10、光電変換素子400、401)において、行ごとに順番に同様の動作が行われうる。
【0056】
時刻t5~t6において、図5に示される制御信号TXAがハイレベルになり転送トランジスタ410がオン状態になることによって、光電変換素子400からフローティングディフュージョンであるノード420へ電荷が転送される。時刻t5~t8の期間において、上述と同様に、光電変換素子400の電荷に基づく第1データ信号が、図3に示されるサンプルホールド回路211の容量素子121およびサンプルホールド回路210の容量素子123にサンプリングされ保持される。
【0057】
時刻t9~t10において、図5に示される制御信号TXBがハイレベルになり転送トランジスタ411がオン状態になることによって、光電変換素子401からフローティングディフュージョンであるノード420へ電荷が転送される。時刻t9~t12の期間において、光電変換素子400および光電変換素子401の電荷に基づく第2データ信号が、図3に示されるサンプルホールド回路211の容量素子122にサンプリングされ保持される。
【0058】
このように、サンプルホールド部50は、光電変換素子400からフローティングディフュージョンであるノード420に電荷の転送を行う第1転送動作の後、かつ、第1転送動作の後にノード420のリセットを行わずに同じ光電変換素子401からノード420に電荷の転送を行う第2転送動作を行う前に、光電変換素子400からフローティングディフュージョンに転送された電荷に基づく第1データ信号をサンプルホールド回路210の容量素子123およびサンプルホールド回路211の容量素子121にサンプリングする。さらに、サンプルホールド部50は、第2転送動作の後に、光電変換素子400および光電変換素子401からフローティングディフュージョンに転送された電荷に基づく第2データ信号をサンプルホールド回路211の容量素子122にサンプリングする。また、サンプルホールド部50は、上述と同様に、フローティングディフュージョンとして機能するノード420がリセットされた際に、リセットされたノード420の電圧に応じたリセット信号をサンプルホールド回路210の容量素子120にサンプリングし保持する。
【0059】
時刻t13以降で、上述と同様に、第1データ信号の電位Vs1とリセット信号の電位Vnとの差分値が、変換回路60によってアナログデジタル変換される。また、第2データ信号の電位Vs2と第1データ信号の電位Vs1の差分値が、変換回路60によってアナログデジタル変換される。それによって、光電変換素子400、401のそれぞれで入射した光に応じて生成された電荷に基づくデジタル信号を得ることが可能になる。以上のような動作によって、1つの画素10から信号を読み出す単位読み出し期間中に、2行分の光電変換素子400、401から信号を読み出すことが可能になり、信号読み出しの高速化が可能になる。また、図4に示される動作と同様に、データ信号同士の差分処理の後に差分信号(差分値)のアナログデジタル変換を行うことによって、低ノイズかつ低電力で信号を読み出すことが可能になる。
【0060】
図5に示される構成、および、図6に示される動作において、光電変換素子400に対応するマイクロレンズと光電変換素子401に対応するマイクロレンズとが、別々に配されていてもよい。それによって、上述のように、データ信号(画像信号とも呼ばれうる。)を読み出す際の高速化が可能になる。しかしながら、これに限られることはなく、光電変換素子400と光電変換素子401とは、マイクロレンズを共有していてもよい。光電変換素子400、401は、例えば、同じマイクロレンズの下に形成された一対のフォトダイオードであってもよく、画素10は、位相差検出用の画素を構成していてもよい。この場合、上述の読出動作によって、オートフォーカス(AF)用の信号を高速、低ノイズかつ低電力で読み出すことが可能になる。
【0061】
また、例えば、光電変換素子400と光電変換素子401とが、入射する光に対する感度が互いに異なっていてもよい。例えば、光電変換素子400、401は、感度を異ならせるために、光が入射する面積が互いに異なるフォトダイオードであってもよい。それによって、上述のHDR撮像が可能になる。
【0062】
また、光電変換装置1000の形態は、上述した形態に限られることはない。例えば、入射光を受ける光電変換部5において、複数の垂直信号線30が、1つの画素列に対して配されていてもよい。その場合に、画素10に、1つの画素列に対応して配された複数の垂直信号線30のうち信号を出力する垂直信号線30を選択するために、複数の選択トランジスタ440が配されていてもよい。また、例えば、1つの画素列に配された画素10のうち一部が1つの垂直信号線30に接続され、1つの画素列に配された画素10のうち他の一部が別の垂直信号線30に接続されていてもよい。また、光電変換装置1000に、サンプルホールド回路210、211が設けられていない構成としてもよい。この場合に、複数の垂直信号線30のそれぞれに出力された信号の差に対応する信号が、変換回路60に入力されるようにしてもよい。この差を得る対象の複数の垂直信号線30は、1列の画素10に対応して配された複数の垂直信号線30であってもよい。この場合には、複数行の画素10の信号差に対応する信号を得ることができる。また、差を得る対象の複数の垂直信号線30は、第1列の画素10に対応して配された垂直信号線30と、別の第2列の画素10に対応して配された垂直信号線30であってもよい。この場合に、複数列の画素10の信号差に対応する信号を得ることができる。つまり、入射光に基づいて光電変換部5が生成する信号電荷にそれぞれが対応する信号である2つの信号が、互いに異なる垂直信号線30の間に配された差分回路として機能する抵抗素子240に入力されてもよい。
【0063】
また、上述したように、光電変換装置1000において、画素基板1と回路基板2
とは、積層されていてもよい。また、図1に示される構成において、電流源40、サンプルホールド部50、変換回路60、データ処理回路90、出力部100が、1つの回路基板2に配されているように記載されている。しかしながら、これに限られることはなく、回路基板2を構成する各要素が、複数の基板に分かれて配されていてもよい。例えば、回路基板2は、電流源40およびサンプルホールド部50を備える基板と、変換回路60、データ処理回路90および出力部100を備える基板と、が積層されていてもよい。回路基板2は、それぞれの構成が適宜、分散して配された3層以上の積層基板であってもよい。一方で、例えば、画素基板1と回路基板2とは、1つの基板上に配されていてもよい。光電変換装置1000に求められる仕様などに応じて、適宜、配置されればよい。また、光電変換装置1000の構成が、積層された3つ以上の基板に分かれて配置されていてもよい。
【0064】
上述の実施形態に係る光電変換装置1000の応用例を以下に説明する。図7は、光電変換装置1000を搭載した電子機器EQPの模式図である。図7は、電子機器EQPの一例としてカメラを示している。ここで、カメラの概念には、撮影を主目的とする装置のみならず、撮影機能を補助的に備える装置(例えば、パーソナルコンピュータや、スマートフォンなどの携帯端末)も含まれる。
【0065】
光電変換装置1000は、光電変換部5が設けられた積層構造の半導体チップでありうる。光電変換装置1000は、図7に示されるように、半導体パッケージPKGに収容されている。パッケージPKGは、光電変換装置1000が固定された基体と、光電変換装置1000に対向するガラスなどの蓋体と、基体に設けられた端子と光電変換装置1000に設けられた端子とを接続するボンディングワイヤやバンプなどの導電性の接続部材と、を含みうる。機器EQPは、光学系OPT、制御装置CTRL、処理装置PRCS、表示装置DSPL、記憶装置MMRYの少なくともいずれかをさらに備えていてもよい。
【0066】
光学系OPTは、光電変換装置1000に結像するものであり、例えば、レンズやシャッタ、ミラーでありうる。制御装置CTRLは、光電変換装置1000の動作を制御するものであり、例えば、ASICなどの半導体デバイスでありうる。処理装置PRCSは、光電変換装置1000から出力された信号を処理するものであり、CPUやASICなどの半導体デバイスでありうる。表示装置DSPLは、光電変換装置1000で得られた画像データを表示する、EL表示装置や液晶表示装置でありうる。記憶装置MMRYは、光電変換装置1000で得られた画像データを記憶する、磁気デバイスや半導体デバイスである。記憶装置MMRYは、SRAMやDRAMなどの揮発性メモリ、あるいは、フラッシュメモリやハードディスクドライブなどの不揮発性メモリでありうる。機械装置MCHNはモーターやエンジンなどの可動部あるいは推進部を有する。カメラにおける機械装置MCHNはズーミングや合焦、シャッタ動作のために光学系OPTの部品を駆動することができる。機器EQPでは、光電変換装置1000から出力された画像データを表示装置DSPLに表示したり、機器EQPが備える通信装置(不図示)によって外部に送信したりする。このため、機器EQPは、記憶装置MMRYや処理装置PRCSを備えていてもよい。
【0067】
光電変換装置1000が組み込まれたカメラは、監視カメラや、自動車や鉄道車両、船舶、航空機あるいは産業用ロボットなどの輸送機器に搭載される車載カメラなどにも適用されうる。加えて、光電変換装置1000が組み込まれたカメラは、輸送機器に限らず、高度道路交通システム(ITS)など、広く物体認識を利用する機器に適用することができる。
【0068】
本明細書の開示は、以下の光電変換装置、電子機器および基板を含む。
【0069】
(項目1)
入射光を受ける光電変換部と、
前記入射光に基づいて前記光電変換部が生成する信号電荷にそれぞれが対応する信号である第1信号および第2信号が入植され、前記第1信号と前記第2信号との差分を示す第3信号を出力する差分回路と、
前記第3信号をアナログデジタル変換するオーバーサンプリング型の変換回路と、
を備えることを特徴する光電変換装置。
【0070】
(項目2)
前記光電変換部には、複数の光電変換素子が配され、
前記第1信号は、前記複数の光電変換素子の一部において入射した光に応じて生成された電荷に基づく信号であり、
前記第2信号は、前記複数の光電変換素子の別の一部において入射した光に応じて生成された電荷に基づく信号であることを特徴とする項目1に記載の光電変換装置。
【0071】
(項目3)
前記第1信号および前記第2信号が入力されるとともに、前記第1信号および前記第2信号をそれぞれ保持するサンプルホールド部を備え、
前記サンプルホールド部の出力ノードは前記差分回路に電気的に接続されており、
前記光電変換部には、前記複数の光電変換素子のそれぞれに対応するように複数のフローティングディフュージョンがさらに配され、
前記サンプルホールド部は、
前記複数の光電変換素子のうち着目する第1光電変換素子から前記複数のフローティングディフュージョンのうち前記第1光電変換素子に対応する第1フローティングディフュージョンに電荷の転送を行う第1転送動作の後、かつ、前記第1転送動作の後に前記第1フローティングディフュージョンのリセットを行わずに前記第1光電変換素子から前記第1フローティングディフュージョンに電荷の転送を行う第2転送動作を行う前に、前記第1フローティングディフュージョンに転送された電荷に基づく前記第1信号をサンプリングし、
前記第2転送動作の後に、前記第1フローティングディフュージョンに転送された電荷に基づく前記第2信号をサンプリングすることを特徴とする請求項2に記載の光電変換装置。
【0072】
(項目4)
前記光電変換部には、複数の光電変換素子が配され、
前記複数の光電変換素子は、それぞれ2つ以上の光電変換素子を含む複数の光電変換素子群を構成し、
前記第1信号は、前記複数の光電変換素子群のうちの一部の光電変換素子群において入射した光に応じて生成された電荷に基づく信号であり、
前記第2信号は、前記複数の光電変換素子群のうちの別の一部の光電変換素子群において入射した光に応じて生成された電荷に基づく信号であることを特徴とする項目1に記載の光電変換装置。
【0073】
(項目5)
前記複数の光電変換素子群のそれぞれは、第1光電変換素子および第2光電変換素子を含み、
前記第1信号は、前記第1光電変換素子において入射した光に応じて生成された電荷に基づく信号であり、
前記第2信号は、前記第1光電変換素子において入射した光に応じて生成された電荷および前記第2光電変換素子において入射した光に応じて生成された電荷に基づく信号であることを特徴とする項目4に記載の光電変換装置。
【0074】
(項目6)
前記第1信号および前記第2信号が入力されるとともに、前記第1信号および前記第2信号をそれぞれ保持するサンプルホールド部を備え、
前記サンプルホールド部の出力ノードは前記差分回路に電気的に接続されており、
前記光電変換部には、前記複数の光電変換素子群のそれぞれに対応するように複数のフローティングディフュージョンがさらに配され、
前記サンプルホールド部は、
前記複数の光電変換素子群のうち着目する光電変換素子群の前記第1光電変換素子から前記複数のフローティングディフュージョンのうち前記着目する光電変換素子群に対応する第1フローティングディフュージョンに電荷の転送を行う第1転送動作の後、かつ、前記第1転送動作の後に前記第1フローティングディフュージョンのリセットを行わずに前記第2光電変換素子から前記第1フローティングディフュージョンに電荷の転送を行う第2転送動作を行う前に、前記第1フローティングディフュージョンに転送された電荷に基づく前記第1信号をサンプリングし、
前記第2転送動作の後に、前記第1フローティングディフュージョンに転送された電荷に基づく前記第2信号をサンプリングすることを特徴とする項目5に記載の光電変換装置。
【0075】
(項目7)
前記第1光電変換素子と前記第2光電変換素子とが、マイクロレンズを共有していることを特徴とする項目6に記載の光電変換装置。
【0076】
(項目8)
前記第1光電変換素子と前記第2光電変換素子とが、入射する光に対する感度が互いに異なっていることを特徴とする項目6に記載の光電変換装置。
【0077】
(項目9)
前記サンプルホールド部は、前記第1フローティングディフュージョンがリセットされた際に第4信号をサンプリングし、
前記変換回路は、前記差分回路によって出力された前記第1信号と前記第4信号との差分を示す第5信号をさらにアナログデジタル変換することを特徴とする項目3および6乃至8の何れか1項目に記載の光電変換装置。
【0078】
(項目10)
前記サンプルホールド部は、第1容量素子、第2容量素子、および、前記第1容量素子および前記第2容量素子によって共有される出力用の増幅器を含む第1サンプルホールド回路と、第3容量素子、第4容量素子、および、前記第3容量素子および前記第4容量素子によって共有される出力用の増幅器を含む第2サンプルホールド回路と、を備え、
前記第1容量素子および前記第3容量素子に、前記第1信号が保持され、
前記第4容量素子に、前記第2信号が保持され、
前記第2容量素子に、前記第4信号が保持され、
前記差分回路は、前記第1容量素子に保持された前記第1信号と前記第4容量素子に保持された前記第2信号とから前記第3信号を生成することを特徴とする項目9に記載の光電変換装置。
【0079】
(項目11)
前記差分回路は、前記第3容量素子に保持された前記第1信号と前記第2容量素子に保持された前記第4信号とから前記第5信号を生成することを特徴とする項目10に記載の光電変換装置。
【0080】
(項目12)
前記差分回路は、前記第1信号と前記第2信号との信号電圧の差分に応じた電流を前記第3信号として生成することを特徴とする項目1乃至11の何れか1項目に記載の光電変換装置。
【0081】
(項目13)
前記変換回路が、ΔΣ型アナログデジタル変換回路を含むことを特徴とする項目1乃至12の何れか1項目に記載の光電変換装置。
【0082】
(項目14)
項目1乃至13の何れか1項目に記載の光電変換装置と、
前記光電変換装置の動作を制御する制御装置と、
を備えることを特徴とする電子機器。
【0083】
(項目15)
入射光を受ける光電変換部が設けられた基板に積層される基板であって、
前記入射光に基づいて前記光電変換部が生成する信号電荷にそれぞれが対応する信号である第1信号および第2信号が入力され、前記第1信号と前記第2信号との差分を示す第3信号を出力するための差分回路と、
前記第3信号をアナログデジタル変換するオーバーサンプリング型の変換回路と、
を備えることを特徴する基板。
【0084】
発明は上記実施形態に制限されるものではなく、発明の精神及び範囲から離脱することなく、様々な変更及び変形が可能である。従って、発明の範囲を公にするために請求項を添付する。
【符号の説明】
【0085】
5:光電変換部、50:サンプルホールド部、60:変換回路、400:光電変換素子、1000:光電変換装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7