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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024171157
(43)【公開日】2024-12-11
(54)【発明の名称】パンツ型吸収性物品
(51)【国際特許分類】
   A61F 13/51 20060101AFI20241204BHJP
   A61F 13/551 20060101ALN20241204BHJP
【FI】
A61F13/51
A61F13/551 100
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023088078
(22)【出願日】2023-05-29
(71)【出願人】
【識別番号】000183462
【氏名又は名称】日本製紙クレシア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002871
【氏名又は名称】弁理士法人坂本国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】細田 涼太
【テーマコード(参考)】
3B200
【Fターム(参考)】
3B200AA01
3B200BA08
3B200BA16
3B200CA03
3B200DA21
3B200DE02
3B200DE07
(57)【要約】
【課題】簡易な構造で部品点数の増大を抑えることができ、着用し易く、かつ廃棄し易いパンツ型吸収性物品を提供する。
【解決手段】本開示は、液透過性のトップシート、液不透過性のバックシート、並びにトップシート及びバックシートの間に配置される吸収体を有する吸収性本体40と、不織布を積層した外装体20と、を備えるパンツ型吸収性物品10であって、外装体20は、上方のウエスト開口25側を全周域に亘って外側へ折り返したウエスト折り返し部29を有し、外装体20のウエスト折り返し部29の内周面のうち外装体20の前後の幅方向の両側には、外装体20の表面に対して着脱可能な止着部30が設けられ、外装体20のウエスト折り返し部29は、対向する外装体20の表面に対して止着部30によって止着されている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液透過性のトップシート、液不透過性のバックシート、並びに前記トップシート及び前記バックシートの間に配置される吸収体を有する吸収性本体と、不織布を積層した外装体と、を備えるパンツ型吸収性物品であって、
前記外装体は、上方のウエスト開口側を全周域に亘って外側へ折り返したウエスト折り返し部を有し、
前記外装体の前記ウエスト折り返し部の内周面のうち前記外装体の前後の幅方向の両側には、前記外装体の表面に対して着脱可能な止着部が設けられ、
前記外装体の前記ウエスト折り返し部は、対向する前記外装体の表面に対して前記止着部によって止着されている
ことを特徴とするパンツ型吸収性物品。
【請求項2】
前記外装体は、前記止着部による止着を外して前記ウエスト折り返し部を上方へ広げた状態の前記ウエスト開口の近傍に配置されて幅方向に延びるウエストギャザー部を有し、
前記止着部の上下長さは、前記ウエストギャザー部の上下長さの75%以上200%以下であり、
前記止着部の幅方向長さは、前記ウエストギャザー部の幅方向長さの10%以上20%以下である
ことを特徴とする請求項1に記載のパンツ型吸収性物品。
【請求項3】
前記止着部は、ポリオレフィンフィルム製のずれ止めテープであって、一方の面が前記ウエスト折り返し部の前記内周面に接着されており、他方の面にフックが均一に一体成形されており、
前記外装体の表面への係合力は、3.0N/cm以上6.0N/cm以下である
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のパンツ型吸収性物品。
【請求項4】
前記ウエスト折り返し部の上下長さは、前記止着部による止着を外して前記ウエスト折り返し部を上方へ広げた状態の前記外装体のサイドシール部の上下長さの30%以上50%以下である
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のパンツ型吸収性物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、パンツ型吸収性物品に関する。
【背景技術】
【0002】
パンツ型の紙おむつ(パンツ型吸収性物品)は、排尿後に重量が重くなるので、排尿後に紙おむつが下方へずり落ちないように、ウエスト部分や胴回り部分のゴムの締付け力が通常の下着のパンツに比べて強くなっていることが多い。このようなパンツ型の紙おむつを着用する際には、紙おむつのウエスト部分を手で把持して拡げながら、紙おむつを引き上げて着用するので、紙おむつのウエスト部分を強い力でしっかりと把持しないと、手が滑って外れてしまう可能性がある。このため、紙おむつをしっかりと把持できるようにウエスト部分を折り返してから着用することが推奨されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、着用者又は介護人のいずれかによる衣類の適用を補助するための持ち手をベルト領域に設けたプルオン肌着が開示されている。プルオン肌着のベルト領域に設ける持ち手として、フラップ、タブ、隆起部、ループ、穴等が挙げられている。
【0004】
また、パンツ型の紙おむつには、使用済みの紙おむつを廃棄する際に、紙おむつを丸めた後、丸めた状態を保持可能にするための廃棄処理用のテープが備え付けられているものがある。
【0005】
例えば、特許文献2には、パンツ型おむつが開示されている。このパンツ型おむつには、使用後に小さくまとめて廃棄するための後処理テープが設けられる。後処理テープは、タグ部と本体部とを有し、背側部に固定される。タグ部は、後処理テープにおける長手方向の後側の端部に位置する部分であって、粘着剤を塗布されていない部分である。本体部は、後処理テープにおけるタグ部以外の部分であって、片面に粘着剤を塗布された細長いテープ状の部分である。後処理テープは、未使用時には、本体部が長手方向に沿って延びる短冊状に折り畳まれており、使用時には、タグ部が摘ままれて引っ張られることで、本体部が引き伸ばされて、テープとして使用される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特表2007-521929号公報
【特許文献2】特開2020-108741号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に記載のプルオン肌着(パンツ型吸収性物品)では、フラップ、タブ、隆起部、ループ、穴等の持ち手をパンツ型吸収性物品に設けるので、構造が複雑になり、また部品点数が増加する可能性がある。
【0008】
特許文献2に記載のパンツ型おむつ(パンツ型吸収性物品)では、廃棄時に後処理テープを用いるが、パンツ型吸収性物品のサイズによっては後処理テープの長さが不足する可能性があり、丸めて廃棄することが難しい場合がある。また、使用済みのパンツ型吸収性物品を廃棄する際には、パンツ型吸収性物品を丸めた後、処理テープを引き延ばして止める必要があるので、作業が煩雑であり、使用済みのパンツ型吸収性物品に触れる時間も長くなり不衛生である。
【0009】
そこで、本開示は、簡易な構造で部品点数の増大を抑えることができ、着用し易く、かつ廃棄し易いパンツ型吸収性物品の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するため、本発明の第1の態様は、液透過性のトップシート、液不透過性のバックシート、並びに前記トップシート及び前記バックシートの間に配置される吸収体を有する吸収性本体と、不織布を積層した外装体と、を備えるパンツ型吸収性物品であって、前記外装体は、上方のウエスト開口側を全周域に亘って外側へ折り返したウエスト折り返し部を有し、前記外装体の前記ウエスト折り返し部の内周面のうち前記外装体の前後の幅方向の両側には、前記外装体の表面に対して着脱可能な止着部が設けられ、前記外装体の前記ウエスト折り返し部は、対向する前記外装体の表面に対して前記止着部によって止着されている。
【0011】
本発明の第2の態様は、上記第1の態様のパンツ型吸収性物品であって、前記外装体は、前記止着部による止着を外して前記ウエスト折り返し部を上方へ広げた状態の前記ウエスト開口の近傍に配置されて幅方向に延びるウエストギャザー部を有し、前記止着部の上下長さは、前記ウエストギャザー部の上下長さの75%以上200%以下であり、前記止着部の幅方向長さは、前記ウエストギャザー部の幅方向長さの10%以上20%以下である。
【0012】
本発明の第3の態様は、上記第1の態様又は上記第2の態様のパンツ型吸収性物品であって、前記止着部は、ポリオレフィンフィルム製のずれ止めテープであって、一方の面が前記ウエスト折り返し部の前記内周面に接着されており、他方の面にフックが均一に一体成形されており、前記外装体の表面への係合力は、3.0N/cm以上6.0N/cm以下である。
【0013】
本発明の第4の態様は、上記第1の態様又は上記第2の態様のパンツ型吸収性物品であって、前記ウエスト折り返し部の上下長さは、前記止着部による止着を外して前記ウエスト折り返し部を上方へ広げた状態の前記外装体のサイドシール部の上下長さの30%以上50%以下である。
【発明の効果】
【0014】
本開示によれば、簡易な構造で部品点数の増大を抑えることができ、着用し易く、かつ廃棄し易いパンツ型吸収性物品を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の一実施形態に係るパンツ型吸収性物品の外観図である。
図2図1のII-II矢視断面図である。
図3】非折り返し状態のパンツ型吸収性物品の外観図である。
図4】展開状態のパンツ型吸収性物品の平面図である。
図5図4のV-V矢視断面図である。
図6】使用済みのパンツ型吸収性物品を丸めた状態を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照しつつ、本発明の一実施形態に係るパンツ型吸収性物品について説明する。
【0017】
本明細書において、パンツ型吸収性物品の着用とは、体液の吸収前、吸収時、及び吸収後を問わず、パンツ型吸収性物品を身体に装着した状態を意味する。また、「前側」とは、パンツ型吸収性物品を着用したときに着用者の腹側となる方向を意味し、「後側」とは、着用者の背側となる方向を意味する。また、「上側」とは、パンツ型吸収性物品を着用したときに着用者の頭側となる方向を意味し、「下側」とは、着用者の足側となる方向を意味する。また、左右方向とは、前方を向いた状態の着用者から視た左右方向をいう。また、パンツ型吸収性物品の各構成部材の長手方向とは、パンツ型に成形する前の展開状態(図4に示す状態)における長手となる方向を意味し、図中の矢印Xに沿った方向である。また、パンツ型吸収性物品の各構成部材の幅方向とは、展開状態における長手方向と交叉(直交)する方向(左右に沿った方向)をいい、図中の矢印Yに沿った方向を意味する。また、パンツ型吸収性物品の各構成部材の厚み方向とは、各構成部材を積層する方向をいい、図中の矢印Zに沿った方向を意味する。また、「肌側」とは、厚み方向のうちパンツ型吸収性物品を着用したときの着用者の身体に向かう方向を意味し、「非肌側」とは、厚み方向のうち肌側とは反対の方向を意味する。また、体液とは、尿や血液、軟便中の水分等の体内から体外に排出された液体をいう。
【0018】
図1は、本発明の一実施形態に係るパンツ型吸収性物品の外観図である。図2は、図1のII-II矢視断面図である。図3は、非折り返し状態のパンツ型吸収性物品の外観図である。図4は、展開状態のパンツ型吸収性物品の平面図である。図5は、図4のV-V矢視断面図である。図6は、使用済みのパンツ型吸収性物品を丸めた状態を示す説明図である。なお、各図は、パンツ型吸収性物品の構成部材の寸法の大小関係を規定するものではなく、各構成部材の寸法は、パンツ型吸収性物品の用途、使用対象とする着用者の年齢等に応じてそれぞれ広い範囲から適宜選択できる。
【0019】
[パンツ型吸収性物品]
図1図5に示すように、本開示に係るパンツ型吸収性物品10は、例えば、パンツ型の使い捨て紙おむつであって、パンツ型の外形形状を構成する外装体20と、外装体20に支持されて体液を吸収する吸収性本体40とを備える。本実施形態に係るパンツ型吸収性物品10は、図1に示すように、ウエスト開口25(図3参照)側が外側へ折り返されて製品化されている。着用時には、図3に示すように、折り返されている部分を上方へ広げて着用することができる。
【0020】
パンツ型吸収性物品10の製造時には、先ず、図4に示すように、各種のシートを積層し、後述するサイドシール部24を接合する前の状態のシート状の部材を作成する。次に、図3に示すように、後述する左右のサイドシール部24を接合してパンツ型に成形する。最後に、パンツ型に成形したパンツ型吸収性物品10のウエスト開口25側を、図3に示す一点鎖線A部分で外側へ折り返すことによって、図1に示すように、ウエスト開口25側を折り返した折り返し状態にして、製品化される。なお、以下の説明では、図1に示す状態を「折り返し状態」と称し、図3に示す状態を「非折り返し状態」と称し、図4に示す状態を「展開状態」と称する。
【0021】
[外装体]
図1図4に示すように、外装体20は、着用時にパンツ型吸収性物品10の外形形状を構成する部材である。外装体20は、不織布を積層して形成される。例えば、外装体20は、非肌側の外装不織布シートと、肌側の内装不織布シートと、外装不織布シートと内装不織布シートとの間に介在する糸ゴム等の複数の弾性伸縮部材とを積層して形成してもよい。外装不織布シート及び内装不織布シートには、サーマルボンド不織布、エアスルー不織布、スパンボンド不織布等の不織布、好ましくはエアスルー不織布又はスパンボンド不織布であって、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリエチレン等の熱可塑性樹脂からなる不織布を用いることができる。或いは、外装体20は、2枚の不織布シートの間に伸縮性フィルム(例えばポリウレタンフィルム)を挟んで接合することによって得られる伸縮不織布であってもよい。なお、外装不織布シート及び内装不織布シートに加えて、吸収性本体40の周縁を覆う補助シートを、外装体20に設けてもよい。
【0022】
図4に示すように、展開状態の外装体20の長手方向(矢印Xに沿った方向)の寸法L1は、500mm以上900mm以下であることが好ましい。展開状態の外装体20の幅方向(矢印Yに沿った方向)の寸法W1は、400mm以上1000mm以下であることが好ましい。展開状態の外装体20の寸法を上記の範囲とすることにより、Sサイズ、Mサイズ、Lサイズ等の各種サイズの成人用のパンツ型吸収性物品10を提供することができる。
【0023】
図1図4に示すように、外装体20は、着用時に着用者の腹部の前方に位置する腹側領域21と、着用者の背部の後方に位置する背側領域22と、着用者の股下に位置する股下領域23とを有する。腹側領域21の左右の両端部と背側領域22の左右の両端部とは、互いに接合されて(例えば、超音波接着によって互いに接合されて)左右のサイドシール部24を構成する。このように、本実施形態の外装体20は、腹側領域21及び背側領域22の幅方向の両端部同士を左右のサイドシール部24で接合することによって、図3に示すように、全体としてパンツ型の外形形状を形成する。なお、製品化されたパンツ型吸収性物品10の外装体20は、上述したように、ウエスト開口25側を、所定の高さ位置(図3に一点鎖線で示す高さ位置)Aで外側へ折り返すことによって、図1に示すように折り返し状態にされている。
【0024】
図4に示すように、展開状態の外装体20は、左右対称の形状を有する。腹側領域21と背側領域22とは、長手方向に互いに離間した位置に配置され、股下領域23は、腹側領域21と背側領域22との間に位置する。サイドシール部24は、腹側領域21及び背側領域22の幅方向の両端部に設けられて長手方向に沿って延びる。外装体20の股下領域23の肌側面には、吸収性本体40が接合されている。
【0025】
図3に示すように、非折り返し状態の外装体20は、着用時に着用者の胴が内側に挿通する上端のウエスト開口25と、着用者の脚が内側に挿通する左右の脚開口26a,26bとを有する。ウエスト開口25は、非折り返し状態の外装体20の腹側領域21及び背側領域22の上端縁によって区画され、周方向に伸縮性を有する。左右の脚開口26a,26bは、股下領域23の左右の両端縁によって区画される、周方向に伸縮性を有する。左右のサイドシール部24は、ウエスト開口25から左右の脚開口26a,26bまで上下方向に延びている。
【0026】
図3に示すように、非折り返し状態の外装体20の腹側領域21及び背側領域22のウエスト開口25の近傍(非折り返し状態の外装体20の腹側領域21及び背側領域22の上端縁部)には、ウエスト開口25を周方向に伸縮可能なウエストギャザー部27が設けられる。ウエストギャザー部27は、所定の上下長さL2を有して幅方向に延びる。すなわち、外装体20は、非折り返し状態のウエスト開口25の近傍に配置されて幅方向に延びるウエストギャザー部27を有する。ウエストギャザー部27は、腹側領域21及び背側領域22の幅方向の略全域に亘って延びる。ウエストギャザー部27には、ウエスト開口25の周方向に伸縮可能な複数の弾性伸縮部材27aが、ウエスト開口25の周方向に沿って設けられる。複数の弾性伸縮部材27aは、外装体20を構成する外装不織布シート及び内装不織布シートに接合されている。弾性伸縮部材27aとしては、例えば、天然ゴム、合成ゴム、ポリウレタン等の糸状、紐状、平型形状のものを適宜使用することができる。
【0027】
股下領域23の左右の両端縁部には、左右の脚開口26a,26bを周方向に伸縮可能なレッグギャザー部28が設けられる。レッグギャザー部28には、左右の脚開口26a,26bの周方向に伸縮可能な弾性伸縮部材28aが、左右の脚開口26a,26bの周方向に沿って設けられる。複数の弾性伸縮部材28aは、外装体20を構成する外装不織布シート及び内装不織布シートに接合されている。弾性伸縮部材28aとしては、例えば、天然ゴム、合成ゴム、ポリウレタン等の糸状、紐状、平型形状のものを適宜使用することができる。
【0028】
(ウエスト折り返し部)
図1に示すように、製品化されたパンツ型吸収性物品10は、折り返し状態になっており、外装体20は、上方のウエスト開口25(図3参照)側を全周域に亘って外側へ折り返したウエスト折り返し部29を有する。すなわち、ウエスト折り返し部29は、図3に示す非折り返し状態の外装体20のうち、折り目となる所定の高さ位置Aよりも上方の領域によって構成される。ウエスト折り返し部29は、パンツ型吸収性物品10を着用するときのパンツ型吸収性物品10を引き上げる際に指を引っ掛ける指掛部として機能する。折り返し状態のパンツ型吸収性物品10の上部には、ウエスト折り返し部29の上端部分によって上部開口31が区画される。
【0029】
図2及び図3に示すように、ウエスト折り返し部29の上下長さL3は、非折り返し状態の外装体20のサイドシール部24の上下長さL4の30%以上50%以下であることが好ましい。ウエスト折り返し部29の上下長さL3がサイドシール部24の上下長さL4の30%未満であると、ウエスト折り返し部29がパンツ型吸収性物品10を引き上げる際の指掛部として十分に機能しなくなる可能性がある。一方、ウエスト折り返し部29の上下長さL3がサイドシール部24の上下長さL4の50%を超過すると、ウエスト折り返し部29の下端が左右の脚開口26a,26bに到達してしまい、左右の脚開口26a,26bへの脚の挿入を妨げてしまう可能性がある。
【0030】
(止着部)
図3に示すように、非折り返し状態の外装体20の腹側領域21及び背側領域22の表面(外側面)のうち、折り返し状態にした際にウエスト折り返し部29になる領域(上記所定の高さ位置Aよりも上方の領域)の幅方向の両側には、外装体20の表面に対して着脱可能な止着部30が設けられる。このように、止着部30は、腹側領域21の幅方向の両側の2箇所と、背側領域22の幅方向の両側の2箇所との計4箇所に設けられる。本実施形態では、止着部30は、外装体20の腹側領域21及び背側領域22のウエストギャザー部27に重なる高さ位置に配置される。非折り返し状態の外装体20を折り返し状態にする際には、非折り返し状態の外装体20の上記所定の高さ位置Aよりも上方の領域を外側の下方へ折り返すことによって、止着部30を外装体20の表面のうちの対向する領域に止着する。すなわち、図1及び図2に示すように、折り返し状態では、止着部30は、外装体20のウエスト折り返し部29の内周面29aのうち外装体20の前後の幅方向の両側に設けられ、ウエスト折り返し部29は、対向する外装体20の表面に対して止着部30によって止着されている。一方、折り返し状態の外装体20を非折り返し状態にする際には、止着部30による止着を外してウエスト折り返し部29を上方へめくり上げることによって、外装体20を折り返し状態から非折り返し状態(ウエスト折り返し部29を上方へ広げた状態)にすることができる。なお、本実施形態では、止着部30を上記計4箇所に設けたが、少なくとも上記計4箇所に止着部30を設けていれば、止着部30を5箇所以上設けてもよい。
【0031】
止着部30の上下長さL5は、ウエストギャザー部27の上下長さL2の75%以上200%以下であることが好ましい。また、止着部30の幅方向の長さW2は、ウエストギャザー部27の幅方向の長さW3の10%以上20%以下であることが好ましい。止着部30の寸法が上記範囲を下回ると、外装体20の表面に対する止着部30の係合力(止着力)を十分に確保できない可能性がある。一方、止着部30の寸法が上記範囲を上回ると、パンツ型吸収性物品10のウエストギャザー部27の伸張性を妨げて着用性を低下させるとともに、パンツ型吸収性物品10の美粧性を低下させる可能性がある。
【0032】
止着部30としては、外装体20の表面に対して着脱可能であれば、特に限定されるものではないが、粘着層、粘着テープ、ズレ止めテープ等が挙げられる。これらの中でも、止着部30は、ポリオレフィンフィルム製のズレ止めテープであることが好ましい。ポリオレフィンフィルム製のズレ止めテープは、メカニカルテープであって、一方の面がウエスト折り返し部29の内周面29aに接着され、他方の面にフック(図示省略)が均一に一体成形されている。このズレ止めテープの外装体20の表面(例えば外装不織布シートの表面)への係合力は、3.0N/cm以上6.0N/cm以下であることが好ましい。ズレ止めテープの外装体20の表面への係合力が3.0N/cm未満であると、係合力が不足してウエスト折り返し部29の折り返しが維持できなくなる可能性があり、また、後述する使用済みのパンツ型吸収性物品10を処分する際に係合力が足りず、使用済みのパンツ型吸収性物品10を丸めた状態に保持できない可能性がある。一方、ズレ止めテープの外装体20の表面への係合力が6.0N/cmを超過すると、使用者によっては、ズレ止めテープを外装体20の表面から外すことができず、折り返し状態から止着部30を外して非折り返し状態にすることが難しくなる可能性がある。なお、ズレ止めテープの外装体20の表面への係合力の下限値は、4.0N/cm以上であることがより好ましく、ズレ止めテープの外装体20の表面への係合力の上限値は、5.0N/cm以下であることがより好ましい。
【0033】
上述した外装体20の表面へのズレ止めテープ(止着部)の係合力は、以下の測定方法によって測定することができる。ズレ止めテープを外装体20の表面に圧着したものを試料として準備してテンシロン引張り試験機にセットし、300mm/minの引張速度で引張り、両者が剥離する際の最大強度を、外装体20の表面へのズレ止めテープの係合力として測定する。なお、外装体20の表面へのズレ止めテープの係合力を、上記測定方法で複数回測定し、その平均値を上記係合力としてもよい。
【0034】
[吸収性本体]
図4及び図5に示すように、吸収性本体40は、主として体液を吸収する部材であって、着用者の股間部を前方、下方、及び後方から覆う前後方向に略帯状の形態を有し、外装体20の少なくとも股下領域23の肌側に配置され、外装体20に対して接合される。吸収性本体40は、主として外装体20の股下領域23の肌側に配置されるが、その一部(前後の端部)が外装体20の腹側領域21又は背側領域22にまで延在してもよい。
【0035】
吸収性本体40の長手方向の寸法L6は、300mm以上500mm以下であることが好ましい。吸収性本体40の幅方向の寸法W4は、100mm以上300mm以下であることが好ましい。吸収性本体40の寸法を上記の範囲とすることにより、Sサイズ、Mサイズ、Lサイズ等の各種サイズの成人用のパンツ型吸収性物品10を提供することができる。
【0036】
吸収性本体40は、肌側の液透過性のトップシート41と、非肌側の液不透過性のバックシート42と、トップシート41及びバックシート42の間に配置される吸収体43とを有する。吸収性本体40の形状としては、特に限定されるものではなく、例えば、矩形状、砂時計状、I字状、長方形の4角が丸まった角丸四角形状、長円状、一方向に長い楕円形状等が挙げられる。
【0037】
(トップシート)
トップシート41は、体液が吸収体43へと移動するような液透過性を備えたシート状基材である。基材の一例としては、例えば、サーマルボンド不織布等の不織布、サーマルボンド不織布/スパンボンド不織布を積層した複合不織布、開口ポリエチレンフィルム等の開口性フィルム、ポリエチレンフォーム、ウレタンフォーム等の発泡フィルム、あるいは、これらを積層した複合シートなどが挙げられる。また、トップシート41には、液透過性を向上させるために、表面にエンボス加工や穿孔加工を施してもよい。これらのエンボス加工や穿孔加工を施すための方法としては、公知の方法を制限なく実施することができる。また、肌への刺激を低減させるため、トップシート41には、ローション、酸化防止剤、抗炎症成分、pH調整剤、抗菌剤、保湿剤等を含有させてもよい。
【0038】
(バックシート)
バックシート42は、吸収体43が保持している体液の非肌側への漏れがないように液不透過性を備えたシート状基材である。基材の一例としては、例えば、樹脂フィルムや、樹脂フィルムと不織布とを積層した複合シート等が挙げられる。複合シートに用いられる不織布としては、製法を特に限定せず、例えば、スパンボンド不織布、メルトブロー不織布、スパンボンド不織布/メルトブロー不織布、スパンボンド不織布/メルトブロー不織布/スパンボンド不織布等の複数の同種及び/又は異種の不織布を積層した複合不織布及びこれらの複合材料が挙げられる。また、樹脂フィルムとしては、例えば、ポリエステル、ポリビニルアルコール、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンとポリプロピレンの複合フィルム等が挙げられる。また、着用時の蒸れを防止するため、バックシート42には、通気性を持たせることが好ましい。バックシート42に通気性を備えさせるためには、例えば、基材の樹脂フィルムにフィラーを配合したり、バックシート42にエンボス加工を施したりすればよい。なお、フィラーとしては炭酸カルシウムを挙げることができ、その配合方法は、公知の方法を制限なく行うことができる。
【0039】
(吸収体)
吸収体43は、体液吸収材料を含み、好ましくは、基材と、基材に保持された体液吸収材料と、を含む。体液吸収材料としては、体液を吸収及び保持するものであれば特に限定されないが、例えば、フラッフパルプや高吸収性樹脂(Super Absorbent Polymer(SAP))等が挙げられる。吸収体43の基材は、一般に生理用ナプキン、おむつ、尿取りパッド等の吸収性物品に使用されるものであれば特に制限はなく、例えば、フラッフパルプ、コットン、レーヨン、アセテート、ティシュ、吸収紙、親水性不織布といった材料から形成される。これらの中でも、吸収性の観点から、フラッフパルプを使用することが好ましい。フラッフパルプとしては、木材パルプ、合成繊維、ポリマー繊維、非木材パルプ等を綿状に解繊したものを挙げることができる。
【0040】
SAPとしては、体液を吸収し、かつ、逆流を防止できるものであれば特に限定されるものではなく、例えば、ポリアクリル酸塩系、ポリアスパラギン酸塩系、(デンプン・アクリル酸)グラフト共重合体、(アクリル酸・ビニルアルコール)共重合体、(イソブチレン・無水マレイン酸)共重合体及びそのケン化物といった材料から形成されたものを挙げることができる。これらの中でも、重量当たりの吸収量の観点から、ポリアクリル酸塩系が好ましく、ポリアクリル酸ナトリウム系がより好ましい。SAPは、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用できる。
【0041】
吸収体43は、基材とSAPとを含有するものが好ましく、その構成は、基材中にSAP粒子を混合して形成したもの、基材間にSAP粒子を固着したSAPシート等が挙げられる。また、SAP粒子の脱落防止や、吸収体43の形状安定化の観点から、吸収体43をキャリアシートに包むことが好ましい。また、SAPを繊維状に成形し、基材に混合して用いてもよい。キャリアシートの基材としては、親水性を有するものであればよく、ティシュ、吸収紙、エアレイド不織布等の親水性不織布が挙げられる。吸収体43がキャリアシートを複数備える場合には、キャリアシートの基材は同一でも異なってもよい。
【0042】
図4及び図5に示すように、吸収性本体40は、体液の横漏れを防止するための一対の立体ギャザー44を含んでもよい。立体ギャザー44は、幅方向の外端がバックシート42の肌側の面に、幅方向の中間部がトップシート41の肌側の面にそれぞれ固定され、幅方向の内端が自由端となってトップシート41の肌側の面に延在してもよい。立体ギャザー44をこのように構成することで、立体ギャザー44の自由端付近に起立性が付与され、着用者の体型に合わせて変形可能なものとなる。
【0043】
(使用方法)
次に、本実施形態に係るパンツ型吸収性物品10の使用方法の一例について説明する。
【0044】
パンツ型吸収性物品10を着用する際には、作業者(着用者自身であってもよいし、或いは介護者等の補助者であってもよい。)は、製品の折り返し状態(図1に示す状態)を維持したまま、パンツ型吸収性物品10のウエスト折り返し部29に下方から指を引っ掛けて、パンツ型吸収性物品10の上部開口31を広げる。次に、作業者は、広げた上部開口31から左右の脚を挿入し、左右の脚開口26a,26bに挿通させる。次に、作業者は、指をウエスト折り返し部29に引っ掛けたまま、パンツ型吸収性物品10を上方へ所望の高さ位置まで引き上げる。最後に、作業者は、止着部30による止着を外してウエスト折り返し部29を上方へめくり上げ、パンツ型吸収性物品10を折り返し状態(図1に示す状態)から非折り返し状態(図3に示す状態)にする。これにより、着用者は、パンツ型吸収性物品10を着用することができる。なお、パンツ型吸収性物品10を非折り返し状態にすることなく、折り返し状態のまま着用してもよい。
【0045】
使用済みのパンツ型吸収性物品10を廃棄する際には、作業者は、使用済みのパンツ型吸収性物品10を着用者から脱がせた後、図3に白抜き矢印で示すように、使用済みのパンツ型吸収性物品10を長手方向に沿って股下領域23から上方のウエスト開口25へ向かって、腹側領域21(又は背側領域22)を内側にして巻き上げて、使用済みのパンツ型吸収性物品10を小さく巻いた状態にする(図6参照)。使用済みのパンツ型吸収性物品10を巻き上げると、図6に示すように、ウエスト開口25の近傍に配置される幅方向の両側の止着部30が外装体20の表面に止着し、使用済みのパンツ型吸収性物品10が小さくまとまった状態に保持される。最後に、作業者は、小さくまとまった状態の使用済みのパンツ型吸収性物品10を廃棄する。
【0046】
上記のように構成されたパンツ型吸収性物品10は、止着部30によって外装体20の表面に対して止着されたウエスト折り返し部29を備える。このため、パンツ型吸収性物品10を着用する際に、ウエスト折り返し部29に指を掛けることができ、折り返し状態のパンツ型吸収性物品10の上部開口31を容易に広げることができる。
【0047】
また、パンツ型吸収性物品10を着用する際に、ウエスト折り返し部29に指を掛けることができるので、パンツ型吸収性物品10を容易に引き上げることができる。
【0048】
また、止着部30は、外装体20の前後の幅方向の両側に設けられるので、使用済みのパンツ型吸収性物品10を廃棄する際に、股下領域23からウエスト開口25へ巻き上げることによって、止着部30を自動的に外装体20の表面に止着させることができる。このため、使用済みのパンツ型吸収性物品10を股下領域23からウエスト開口25へ巻き上げるという簡単な作業で、使用済みのパンツ型吸収性物品10を小さくまとまった状態に保持することができる。
【0049】
また、使用済みのパンツ型吸収性物品10を股下領域23からウエスト開口25へ巻き上げることによって、自動的に使用済みのパンツ型吸収性物品10を小さくまとまった状態に保持することができるので、使用済みのパンツ型吸収性物品10を巻き上げた後、テープ等を引き出して巻きつける場合とは異なり、使用済みのパンツ型吸収性物品10に触れる時間を短くすることができる。このため、使用済みのパンツ型吸収性物品10を衛生的に廃棄することができる。
【0050】
また、止着部30を、着用時には、ウエスト折り返し部29を折り返し状態に保持するために使用し、使用済みのパンツ型吸収性物品10を廃棄する際には、使用済みのパンツ型吸収性物品10を小さくまとまった状態に保持するために使用する。このため、ウエスト折り返し部29を折り返し状態に保持するための部材と、使用済みのパンツ型吸収性物品10を小さくまとまった状態に保持するための部材とを別々に設ける場合とは異なり、簡易な構造で部品点数の増大を抑えることができる。
【0051】
従って、本実施形態によれば、簡易な構造で部品点数の増大を抑えることができ、着用し易く、かつ廃棄し易いパンツ型吸収性物品10を提供することができる。
【0052】
以上、本発明について、上記実施形態に基づいて説明を行ったが、本発明は上記実施形態の内容に限定されるものではなく、当然に本発明を逸脱しない範囲で適宜変更が可能である。すなわち、この実施形態に基づいて当業者等によりなされる他の実施形態、実施例及び運用技術等は全て本発明の範疇に含まれることは勿論である。
【符号の説明】
【0053】
10:パンツ型吸収性物品
20:外装体
24:サイドシール部
25:ウエスト開口
27:ウエストギャザー部
29:ウエスト折り返し部
30:止着部
40:吸収性本体
41:トップシート
42:バックシート
43:吸収体
図1
図2
図3
図4
図5
図6