(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024171162
(43)【公開日】2024-12-11
(54)【発明の名称】層状土壌被覆剤及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
C09K 17/40 20060101AFI20241204BHJP
C09K 17/06 20060101ALI20241204BHJP
C09K 17/32 20060101ALI20241204BHJP
C09K 17/02 20060101ALI20241204BHJP
A01G 13/00 20060101ALI20241204BHJP
A01G 7/00 20060101ALI20241204BHJP
【FI】
C09K17/40 H
C09K17/06 H ZBP
C09K17/32 H
C09K17/02 H
A01G13/00 301Z
A01G7/00 601Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023088084
(22)【出願日】2023-05-29
(71)【出願人】
【識別番号】000238164
【氏名又は名称】扶桑化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002538
【氏名又は名称】弁理士法人あしたば国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100141346
【弁理士】
【氏名又は名称】潮崎 宗
(74)【代理人】
【識別番号】100181456
【弁理士】
【氏名又は名称】篠原 拓男
(74)【代理人】
【識別番号】100131255
【弁理士】
【氏名又は名称】阪田 泰之
(72)【発明者】
【氏名】原田 裕太
(72)【発明者】
【氏名】大倉 央
(72)【発明者】
【氏名】清水 浩平
【テーマコード(参考)】
2B022
2B024
4H026
【Fターム(参考)】
2B022DA17
2B024AA01
2B024DA01
2B024DB10
4H026AA03
4H026AA06
4H026AA10
4H026AB03
(57)【要約】
【課題】自然に分解され、幅広い状況又は場所でも使用可能であり、雑草の抑制効果に優れ、風雨への耐性が高い農業用マルチフィルム代替物を提供すること。
【解決手段】ゲル化剤との反応によりゲルを形成する被覆剤と、該ゲル化剤と、のゲル化物を含み、厚みが0.10~100mmであること、を特徴とする層状土壌被覆剤。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも、ゲル化剤との反応によりゲルを形成する被覆剤と、該ゲル化剤と、のゲル化物を含み、
厚みが0.10~100mmであること、
を特徴とする層状土壌被覆剤。
【請求項2】
前記被覆剤は、20℃の水100gに0.050g添加したときのpHが10.5以上であることを特徴とする請求項1記載の層状土壌被覆剤。
【請求項3】
前記被覆剤が、カルシウム及びマグネシウムから選ばれる1種以上の金属元素を含有する化合物又は混合物であり、
前記ゲル化剤が、アルギン酸塩であること、
を特徴とする請求項1又は2記載の層状土壌被覆剤。
【請求項4】
前記被覆剤が、水酸化カルシウム、酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、及びそれら2種以上を成分として含有する混合物から選ばれる1種以上であることを特徴とする請求項1又は2記載の層状土壌被覆剤。
【請求項5】
被覆対象土壌に、ゲル化剤との反応によりゲルを形成する被覆剤の粉末を層状に敷き、被覆剤の粉末層を形成させる粉末層形成工程と、
該被覆剤の粉末層に、該ゲル化剤の水溶液を供給し、該被覆剤の粉末と該ゲル化剤とをゲル化させて、ゲル化物を生成させるゲル化工程と、
を有することを特徴とする層状土壌被覆剤の製造方法。
【請求項6】
前記被覆剤の粉末が、カルシウム及びマグネシウムから選ばれる1種以上の金属元素を含有する化合物の粉末であることを特徴とする請求項5記載の層状土壌被覆剤の製造方法。
【請求項7】
前記被覆剤の粉末が、水酸化カルシウム、酸化カルシウム、炭酸カルシウム、水酸化マグネシウム、酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム、及びそれら2種以上を成分として含有する混合物から選ばれる1種以上の粉末であることを特徴とする請求項5又は6記載の層状土壌被覆剤の製造方法。
【請求項8】
前記被覆剤の粉末が、水酸化カルシウム及び酸化カルシウムから選ばれる1種以上の粉末であることを特徴とする請求項5又は6記載の層状土壌被覆剤の製造方法。
【請求項9】
前記ゲル化剤が、アルギン酸塩であることを特徴とする請求項5又は6記載の層状土壌被覆剤の製造方法。
【請求項10】
前記被覆対象土壌に、前記被覆剤の粉末及び増粘剤を含有する混合物を敷くことにより、粉末層形成工程を行うことを特徴とする請求項5又は6記載の層状土壌被覆剤の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、農業において、層状に土壌を被覆し、雑草を抑制することができる層状土壌被覆剤に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、畑などにおいて、土壌を覆うことにより、地温の上昇を抑制する効果、雑草抑制効果、風雨による土壌浸食を防ぐ効果などを得ることを目的として、一般に、農業用マルチフィルムと呼ばれる樹脂フィルムが広く利用されている。
【0003】
農業用マルチフィルムは、一般的には塩化ビニルなどの合成樹脂製であり、自然に分解することができず、使用後に農地から除去し、廃棄する必要がある。そのため、除去に要する労力・コストが発生する。
【0004】
そこで、このような廃棄の手間を省くため、生分解性の樹脂からなる農業用マルチフィルムが開発されている。これら生分解性樹脂製の農業用マルチフィルムは、土中の微生物により分解するため、除去作業が省力化され、かつ焼却や廃棄処理による有害物質の発生が起こり難い。
【0005】
また、例えば、ビニールハウスの裾部分の雑草抑制など、農業用マルチフィルムの固定が困難であるために、農業用マルチフィルムの展張に適さない場面も存在する。
【0006】
そのため、自然に分解され、且つ、幅広い状況又は場所でも使用可能である、農業用マルチフィルムと同様の効果を有する農業用マルチフィルム代替物が求められている。
【0007】
そこで、例えば、特許文献1には、アルギン酸ナトリウム水溶液と、色素成分を含有するカルシウム塩水溶液とを地表面に塗布または散布して、前記2つの水溶液が反応することにより、前記色素成分を含有するアルギン酸カルシウムの皮膜を前記地表面に形成する農業用マルチフィルム代替物の製造方法及びそれにより得られる農業用マルチフィルム代替物が開示されている。
【0008】
また、特許文献2には、土壌表層の温度上昇を抑制するための土壌表層に散布される粉末状の地温上昇抑制剤であって、白色無機粉末を95~60質量%、糊剤を5~40質量%含むことを特徴とする地温上昇抑制剤が開示されている。
【0009】
特許文献1及び特許文献2では、農業用マルチフィルムの展張に適さない場所への散布が容易であると考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2008-35860号公報
【特許文献2】特開2013-201954号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、特許文献1では、アルギン酸ナトリウム水溶液とカルシウム塩を溶解・懸濁させた水溶液を反応させることで、土壌表面に白色の膜を形成させているが、本願明細書の比較例にて示すように、その雑草抑制効果は不十分である。また、2種類の水溶液を散布することで層を形成させる方法であるため、層の厚さの調節が困難である。
【0012】
また、引用文献2では、炭酸カルシウムなど白色の無機粉末を、でんぷん・グアガムといった糊剤と混合し、土壌に散布しているが、このように粉末を散布する方法では、風雨に対する耐性がなく、風により容易に飛散してしまう。
【0013】
従って、本発明の目的は、自然に分解され、幅広い状況又は場所でも使用可能であり、雑草抑制効果に優れ、風雨への耐性が高い農業用マルチフィルム代替物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記課題は、以下の本発明によって解決される。
すなわち、本発明(1)は、少なくとも、ゲル化剤との反応によりゲルを形成する被覆剤と、該ゲル化剤と、のゲル化物を含み、
厚みが0.10~100mmであること、
を特徴とする層状土壌被覆剤を提供するものである。
【0015】
また、本発明(2)は、前記被覆剤は、20℃の水100gに0.050g添加したときのpHが10.5以上であることを特徴とする(1)の層状土壌被覆剤を提供するものである。
【0016】
本発明(3)は、前記被覆剤が、カルシウム及びマグネシウムから選ばれる1種以上の金属元素を含有する化合物又は混合物であり、
前記ゲル化剤が、アルギン酸塩であること、
を特徴とする(1)又は(2)の層状土壌被覆剤を提供するものである。
【0017】
本発明(4)は、前記被覆剤が、水酸化カルシウム、酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、及びそれら2種以上を成分として含有する混合物から選ばれる1種以上であることを特徴とする(1)又は(2)の層状土壌被覆剤を提供するものである。
【0018】
本発明(5)は、被覆対象土壌に、ゲル化剤との反応によりゲルを形成する被覆剤の粉末を層状に敷き、被覆剤の粉末層を形成させる粉末層形成工程と、
該被覆剤の粉末層に、該ゲル化剤の水溶液を供給し、該被覆剤の粉末と該ゲル化剤とをゲル化させて、ゲル化物を生成させるゲル化工程と、
を有することを特徴とする層状土壌被覆剤の製造方法を提供するものである。
【0019】
本発明(6)は、前記被覆剤の粉末が、カルシウム及びマグネシウムから選ばれる1種以上の金属元素を含有する化合物の粉末であることを特徴とする(5)の層状土壌被覆剤の製造方法を提供するものである。
【0020】
本発明(7)は、前記被覆剤の粉末が、水酸化カルシウム、酸化カルシウム、炭酸カルシウム、水酸化マグネシウム、酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム、及びそれら2種以上を成分として含有する混合物から選ばれる1種以上の粉末であることを特徴とする(5)又は(6)の層状土壌被覆剤の製造方法を提供するものである。
【0021】
本発明(8)は、前記被覆剤の粉末が、水酸化カルシウム及び酸化カルシウムから選ばれる1種以上の粉末であることを特徴とする(5)又は(6)の層状土壌被覆剤の製造方法を提供するものである。
【0022】
本発明(9)は、前記ゲル化剤が、アルギン酸塩であることを特徴とする(5)又は(6)の層状土壌被覆剤の製造方法を提供するものである。
【0023】
本発明(10)は、前記被覆対象土壌に、前記被覆剤の粉末及び増粘剤を含有する混合物を敷くことにより、粉末層形成工程を行うことを特徴とする(5)又は(6)の層状土壌被覆剤の製造方法を提供するものである。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、自然に分解され、幅広い状況又は場所でも使用可能であり、雑草抑制効果に優れ、風雨への耐性が高い農業用マルチフィルム代替物である層状の土壌被覆剤を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明の層状土壌被覆剤は、少なくとも、ゲル化剤との反応によりゲルを形成する被覆剤と、該ゲル化剤と、のゲル化物を含み、
厚みが0.10~100mmであること、
を特徴とする層状土壌被覆剤である。
【0026】
本発明の層状土壌被覆剤は、被覆対象土壌の表面に、層状に形成されており、被覆対象土壌を覆うものである。そして、本発明の層状土壌被覆剤は、被覆対象土壌を覆うことにより、土壌中の種の上を塞ぎ、また、日光を遮断又は反射することにより、土壌の温度が高くなることを防ぐ。そして、本発明の層状土壌被覆剤は、このような作用により、雑草を発芽させない又は発芽したとしても成長できなくすることができるので、雑草抑制効果を有する。
【0027】
本発明の層状土壌被覆剤は、ゲル化剤との反応によりゲルを形成する被覆剤と、ゲル化剤と、のゲル化物を含む。本発明において、ゲル化剤との反応によりゲルを形成する被覆剤と、ゲル化剤と、のゲル化物とは、ゲル化剤との反応によりゲルを形成する被覆剤と、ゲル化剤と、を反応させて得られるゲル化物である。つまり、本発明の層状土壌被覆剤は、厚み方向に見たときに、少なくとも大気側(土壌とは反対側)の一部が、ゲル化剤との反応によりゲルを形成する被覆剤と、ゲル化剤と、のゲル化物で形成されている。
【0028】
本発明の層状土壌被覆剤は、厚み方向に見たときに、ゲル化剤との反応によりゲルを形成する被覆剤と、ゲル化剤と、のゲル化物が、厚み方向の全体に分布していてもよい。また、本発明の層状土壌被覆剤は、厚み方向に見たときに、ゲル化剤との反応によりゲルを形成する被覆剤と、ゲル化剤と、のゲル化物を含む部分と、被覆剤とゲル化剤とのゲル化物を含まない部分があってもよい。例えば、本発明の層状土壌被覆剤は、厚み方向に見たときに、土壌側に、被覆剤とゲル化剤とのゲル化物を含まない部分があってもよい。また、本発明の層状土壌被覆剤は、全体が、ゲル化剤との反応によりゲルを形成する被覆剤と、ゲル化剤と、のゲル化物で形成されていてもよい。
【0029】
本発明の層状土壌被覆剤の厚みは、0.10~100mm、好ましくは0.25~50mm、より好ましくは0.50~25mmである。本発明の層状土壌被覆剤は、少なくとも一部が、好ましくは全体が、ゲル化剤との反応によりゲルを形成する被覆剤と、ゲル化剤と、のゲル化物で形成されており、且つ、厚みが上記範囲であることにより、風雨への耐性が高くなり、且つ、雑草を抑制することできる。なお、本発明において、層状土壌被覆剤の厚みは、土壌表面に形成された層状土壌被覆剤の任意の5点において、大気側の表面から土壌との接着面までの長さを測定し、その平均値を算出することにより測定される。
【0030】
本発明の層状土壌被覆剤に係る被覆剤は、ゲル化剤と反応することによりゲル化物を形成する化合物である。被覆剤は、1種単独であっても、2種以上の組み合わせであってもよい。
【0031】
被覆剤は、好ましくは20℃の水100gに0.050g添加したときのpHが10.5以上である。また、被覆剤の、20℃の水100gに0.050g添加したときのpHは、より好ましくは11.0以上であり、より好ましくは11.0~14.0である。被覆剤の20℃の水100gに0.050g添加したときのpHが、上記範囲にあることにより、二酸化炭素溶存水に対する耐性が高まり、風雨への耐性が向上する。また降雨等による土壌の酸性化を抑制することができるため、酸性条件で繁茂する雑草の抑制効果が高くなる。
【0032】
被覆剤としては、カルシウム及びマグネシウムから選択される1種以上の金属元素を含有する化合物又は混合物、より好ましくはカルシウムを含有する無機化合物が挙げられる。カルシウム及びマグネシウムは、2価の金属イオン源であるので、カルボキシル基(-COOH)又はカルボン酸塩の基(-COOM(Mは1価の金属))を有するゲル化剤や、硫酸基(-OSO3H)又は硫酸塩の基(-OSO3M(Mは1価の金属))を有するゲル化剤2分子と反応して、2分子のゲル化剤の架橋剤となる。
【0033】
被覆剤としては、水酸化カルシウム、酸化カルシウム、水酸化マグネシウム及びそれら2種以上を成分として含有する混合物が挙げられる。これらのうち、被覆剤としては、アルギン酸塩とのゲル形成能が高いことから、アルギン酸塩水溶液と接触することにより、強固なゲル化物を形成するため、ゲル化物の強度が高くなるので、風雨への耐性が高くなる点で、また、水に溶解した際のpHが高く、降雨等による土壌の酸性化を抑制することができるため、酸性条件で繁茂する雑草の抑制効果が高くなる点で、水酸化カルシウム、酸化カルシウムが好ましく、水酸化カルシウムが特に好ましい。また、水酸化カルシウムは、空気中の二酸化炭素と反応して、炭酸カルシウムに変化するため、被覆対象土壌の汚染が少ない。
【0034】
本発明の層状土壌被覆剤に係るゲル化剤は、被覆剤と反応することにより、ゲル化物を形成する化合物であり、土壌中で自然に分解される化合物である。ゲル化剤は、1種単独であっても、2種以上の組み合わせであってもよい。
【0035】
ゲル化剤としては、カルボキシル基(-COOH)又はカルボン酸塩の基(-COOM(Mは1価の金属))を有する化合物、硫酸基(-OSO3H)又は硫酸塩の基(-OSO3M(Mは1価の金属))を有する化合物が挙げられる。ゲル化剤としては、アルギン酸塩、ペクチン、ジェランガム、カラギナン、カラギナンの塩などが挙げられる。そして、ゲル化剤としては、カルシウムイオンを有する化合物、特に水酸化カルシウムと反応して、強固なゲルを形成する点及び土壌中で自然分解し易い点で、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸カリウム等のアルギン酸塩が好ましく、アルギン酸ナトリウムがより好ましい。
【0036】
アルギン酸の製造方法としては、例えば、「ワカメ藻体中アルギン酸の水溶性化について」(藤原健、宮城県水産報第8号、2008年)に記載されている方法、すなわち、生ワカメを食塩水でボイルしホモジナイズすること、並びに湯通し塩蔵ワカメを脱塩しホモジナイズすることで、アルギン酸を抽出する方法が挙げられる。このように得られたアルギン酸溶液は、有機JAS認証を得られる可能性がある。また、水酸化カルシウム(消石灰)は、有機JAS栽培に用いられる資材である。そのため、本発明の層状土壌被覆剤のうち、被覆剤として、水酸化カルシウムを用い、且つ、ゲル化剤として、生ワカメを食塩水でボイルしホモジナイズして抽出すること、並びに湯通し塩蔵ワカメを脱塩しホモジナイズして抽出することにより得られるアルギン酸塩を用いて得られた層状土壌被覆剤は、有機JAS認証を得られる可能性がある。
【0037】
ゲル化剤の、25℃の水100gに対する溶解量は、0.010g以上、好ましくは0.010~25.0g、より好ましくは0.050~15.0gである。ゲル化剤は、水溶性であることが望ましい。
【0038】
本発明の層状土壌被覆剤が、被覆剤として、水酸化カルシウム及び/又は酸化カルシウムを用い、且つ、ゲル化剤として、アルギン酸塩を用いて得られたものである場合、被覆剤の使用量に対するゲル化剤の使用量の質量比(ゲル化剤/被覆剤)は、好ましくは0.00001~21.0、より好ましくは0.00005~10.5である。
【0039】
また、本発明の層状土壌被覆剤が、被覆剤として、水酸化マグネシウムを用い、且つ、ゲル化剤として、アルギン酸塩を用いて得られたものである場合、被覆剤の使用量に対するゲル化剤の使用量の質量比(ゲル化剤/被覆剤)は、好ましくは0.00005~21.0、より好ましくは0.0001~10.5である。
【0040】
また、本発明の層状土壌被覆剤が、被覆剤として、水酸化カルシウム及び/又は酸化カルシウムを用い、且つ、ゲル化剤として、ペクチン及び/又はジェランガムを用いて得られたものである場合、被覆剤の使用量に対するゲル化剤の使用量の質量比(ゲル化剤/被覆剤)は、好ましくは0.00005~21.0、より好ましくは0.0001~10.5である。
【0041】
本発明の層状土壌被覆剤の単位面積当たりの質量は、好ましくは50g/m2以上、より好ましくは50~50000g/m2、より好ましくは120~25000g/m2である。なお、本発明において、層状土壌被覆剤の単位面積当たりの質量は、土壌表面に形成された層状土壌被覆剤の任意の5点において、一定面積の層状土壌被覆層を土壌から剥離し、電子天秤を用いて重量を測定して、重量を層状土壌被覆層の面積で除算し、その平均値を算出することにより測定される 。
【0042】
本発明の層状土壌被覆剤において、被覆剤が、カルシウム及びマグネシウムから選択される1種以上の金属元素を含有する化合物の場合、本発明の層状土壌被覆剤中のカルシウム及びマグネシウムから選択される1種以上の原子換算の単位面積当たりの質量は、好ましくは25g/m2以上、より好ましくは25~36000g/m2、より好ましくは60~18000g/m2である。なお、被覆剤が、1種の上記金属元素を含有する場合、上記金属元素の原子換算の質量は、その1種の金属元素の原子換算の質量を指し、また、被覆剤が、2種以上の上記金属元素を含有する場合、上記金属元素の原子換算の質量は、それら2種以上の金属元素の原子換算の合計質量を指す。本発明において、層状土壌被覆剤中のカルシウム及びマグネシウムから選択される1種以上の原子換算の単位面積当たりの質量は、土壌表面に形成された層状土壌被覆剤の任意の5点において、一定重量の層状土壌被覆剤を土壌から剥離し、希薄な酸の水溶液に溶解させ、次いで、溶解液のイオンクロマトグラフ分析を行うことで金属イオン濃度を測定し、層状土壌被覆剤の一定重量当たりに含まれる金属元素の割合を算出し、割合の平均値を層状土壌被覆剤の単位面積当たりの質量に乗算することにより測定される。
【0043】
本発明の層状土壌被覆剤は、増粘剤を含有することができる。本発明の層状土壌被覆剤が増粘剤を含有することにより、層状土壌被覆剤が水に触れた際の流出を抑える効果が高くなり、土壌被覆材と土壌との接着性が向上し、且つ、ゲル化物の強度が高くなる。増粘剤は、特に限定されないが、天然高分子、半合成高分子及び合成高分子から選ばれる少なくとも1種が挙げられる。これらの高分子のうち、天然高分子、半合成高分子、生分解性の合成高分子が、使用後に短期間で生分解され、土壌や周辺環境を汚染することがない点で好ましい。増粘剤は、1種単独であっても、2種以上の組み合わせであってもよい。
【0044】
高分子のうち、天然高分子としては、例えば、タラガム、スクロースビーンガム、グアガム、カラギナン、デンプン、アラビアゴム、トラントガム、カレガリン、コンニャクマンナン、カンテン等の植物系の天然高分子、デキストリン、キサンタンガム等の微生物系の天然高分子、ゼラチン、カゼイン、コラーゲン、キチン・キトサン類等の動物系の天然高分子などの1種又は2種以上が挙げられる。
【0045】
高分子のうち、半合成高分子としては、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース等のセルロース系の半合成高分子、可溶性デンプン、カルボキシメチルデンプン、メチルデンプン等のデンプン系の半合成高分子が挙げられる。
【0046】
高分子のうち、合成高分子としては、ポリ乳酸、ポリブチレンアジペ-ト・テレフタレ-ト等の生分解性の合成高分子類、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸塩等の合成高分子類などの1種又は2種以上が挙げられる。
【0047】
増粘剤としては、人体に影響が少なく、十分な粘度を有し、生物によって分解されることから、タラガム(スピノガム)、ローカストビーンガム、キサンタンガム、カラギナンなどの増粘多糖類が好ましく、この中でも冷水への溶解性が高いタラガムが特に好ましい。
【0048】
増粘剤は、水溶性であることが好ましい。増粘剤の、20℃の水100gに対する溶解量は、0.010g以上、好ましくは0.010~100g、より好ましくは0.10~50gである。
【0049】
本発明の層状土壌被覆剤中の増粘剤の含有量は、好ましくは0.05~50質量%、より好ましくは0.10~25質量%である。層状土壌被覆剤中の増粘剤の含有量が上記範囲にあることにより、層状土壌被覆剤の強度が高くなり、土壌被覆材と土壌との接着性が向上し、風雨への耐性が高くなる。
【0050】
本発明の層状土壌被覆剤中の増粘剤の含有量により、層状土壌被覆剤の表面(大気側)の凹凸状態を制御すること、すなわち、凸凹にしたり、滑らかにしたりすることができる。よって、所望の層状土壌被覆剤の表面の凹凸状態に応じて、好ましくは0.05~50質量%、より好ましくは0.10~25質量%の範囲内で、本発明の層状土壌被覆剤中の増粘剤の含有量を選択することができる。
【0051】
本発明の層状土壌被覆剤が、被覆剤として、水酸化カルシウム及び/又は酸化カルシウムを用い、且つ、ゲル化剤として、アルギン酸塩を用いて得られたものである場合、被覆剤の使用量に対する増粘剤の使用量の質量比(増粘剤/被覆剤)は、好ましくは0.0005~1.0、より好ましくは0.001~0.33である。
【0052】
また、本発明の層状土壌被覆剤が、被覆剤として、水酸化マグネシウムを用い、且つ、ゲル化剤として、アルギン酸塩を用いて得られたものである場合、被覆剤の使用量に対する増粘剤の使用量の質量比(増粘剤/被覆剤)は、好ましくは0.0005~0.33、より好ましくは0.001~0.20である。
【0053】
また、本発明の層状土壌被覆剤が、被覆剤として、水酸化カルシウム及び/又は酸化カルシウムを用い、且つ、ゲル化剤として、ペクチン及び/またはジェランガムを用いて得られたものである場合、被覆剤の使用量に対する増粘剤の使用量の質量比(増粘剤/被覆剤)は、好ましくは0.0005~0.33、より好ましくは0.001~0.20である。
【0054】
本発明の層状土壌被覆剤は、防腐剤又は保存剤を含有していてもよい。本発明の層状土壌被覆剤がゲル化剤の水溶液を用いて製造される場合、ゲル化剤の水溶液に、防腐剤又は保存剤を含有させることで、ゲル化剤の水溶液のゲル化剤の保存性を高め、より長期間にわたり使用することができる。防腐剤又は保存剤としては、例えば、安息香酸、安息香酸ナトリウム、パラベン(メチルパラベン等)、ベンジルアルコール、フェノキシエタノール、デヒドロ酢酸ナトリウム、ソルビン酸、サリチル酸等の一般的に使用される防腐剤及び保存剤が挙げられる。また、防腐剤又は保存剤としては、レモングラス抽出物、ワサビ抽出物、チャ抽出物、甘草抽出物等の天然由来成分が挙げられる。
【0055】
本発明の層状土壌被覆剤は、色素成分を含有することができる。色素成分としては、シリカ粉、微粉ケイ酸、珪藻土、タルクなど白色を呈し、太陽光を効率良く反射して、地温の上昇を顕著に抑制することができる物質、カーボンブラック、活性炭など黒色を呈し、太陽光を吸収する効果を有し、層状土壌被覆剤に含有させることで、地温上昇を調節することが可能な物質が好ましい。また、色素成分としては、ウコン色素、ベニバナ色素などの天然色素が挙げられる。本発明の層状土壌被覆剤に、色素成分を含有させることにより、太陽光の吸収度合いを調節することができる。
【0056】
本発明の層状土壌被覆剤は、強度向上剤を含有することができる。層状土壌被覆剤が、強度向上剤を含むことにより、層状土壌被覆剤の強度が高くなり、また、風による飛散を防ぐことができる。強度向上剤は、繊維を含む植物由来素材であることが好ましい。強度向上剤が、繊維を含むことで、繊維同士が層形成中に絡まり強度が高くなる。強度向上剤としては、有機栽培において好適に用いられる点で、おがくず、苅草、テングサ絞りカス、米ぬか、焼酎粕、藁、古紙などが好ましい。
【0057】
本発明の層状土壌被覆剤は、生理活性物質を含有することができる。層状土壌被覆剤が、生理活性物質を含むことにより、雑草抑制効果を高め、また、虫害を防止することができる。生理活性物質は、植物又は菌類から抽出された天然素材であることが好ましい。生理活性物質としては、ひのき蒸留水、ヒバ抽出物、ユーカリ抽出物、ズイナ抽出物などの植物抽出物、プシコースなどの希少糖、ペラルゴン酸などの植物由来成分などが好適である。
【0058】
本発明の層状土壌被覆剤は、ゲル化物を含み、特に、厚み方向に見たときの大気側(土壌とは反対側)の少なくとも一部がゲル化合物により形成されており、且つ、層状土壌被覆剤の層の厚みが厚いので、雑草を抑制する効果に優れ、且つ、風雨への耐性に優れる。
【0059】
そして、本発明の層状土壌被覆剤は、
(i)20℃の水100gに0.050g添加したときのpHが10.5以上、好ましくは11.0以上、より好ましくは11.0~14.0である被覆剤と、ゲル化剤としてアルギン酸塩と、のゲル化物を含むこと、つまり、厚み方向に見たときの大気側(土壌とは反対側)の少なくとも一部が、20℃の水100gに0.050g添加したときのpHが10.5以上、好ましくは11.0以上、より好ましくは11.0~14.0である被覆剤と、ゲル化剤としてアルギン酸塩と、のゲル化物により形成されており、且つ、
(ii)層状土壌被覆剤の層の厚みが厚い、
ことにより、ゲル化物の強度がより高くなるため、風雨への耐性がより高くなり、また、降雨等による土壌の酸性化を抑制することができるため、酸性条件で繁茂する雑草を抑制する効果が高くなる。
【0060】
本発明の層状土壌被覆剤は、自然に分解されるゲル化剤、例えば、アルギン酸塩等を用い、且つ、水酸化カルシウム、酸化カルシウム、水酸化マグネシウム等を用いて、ゲル化させて製造されたものなので、自然に分解され、且つ、農業用の土壌の幅広い状況又は場所でも使用可能である。例えば、本発明の層状土壌被覆剤は、農作物の生育土壌、畝、果樹の根本等の農業用マルチフィルムの敷設に適する場所に加え、ビニールハウスの端、防草シートの隙間、配管・パイプ敷設箇所、機材設置個所、畦等の農業用マルチフィルムの敷設に適さない場所にも、形成させることができる。
【0061】
本発明の層状土壌被覆剤の製造方法は、被覆対象土壌に、ゲル化剤との反応によりゲルを形成する被覆剤の粉末を層状に敷き、被覆剤の粉末層を形成させる粉末層形成工程と、
該被覆剤の粉末層に、該ゲル化剤の水溶液を供給し、該被覆剤の粉末と該ゲル化剤とをゲル化させて、ゲル化物を生成させるゲル化工程と、
を有することを特徴とする層状土壌被覆剤の製造方法である。
【0062】
本発明の層状土壌被覆剤の製造方法は、被覆対象土壌の表面に、層状に形成されており、被覆対象土壌を覆うための層状土壌被覆剤を製造する方法である。
【0063】
本発明の層状土壌被覆剤の製造方法に係る粉末層形成工程は、被覆対象土壌に、ゲル化剤との反応によりゲルを形成する被覆剤の粉末を層状に敷き、被覆剤の粉末層を形成させる工程である。
【0064】
粉末層形成工程に係る被覆剤の粉末は、粉末状の被覆剤であり、被覆剤の粉末は、ゲル化剤と反応することによりゲル化物を形成する化合物である。被覆剤の粉末は、1種単独であっても、2種以上の組み合わせであってもよい。
【0065】
被覆剤の粉末としては、カルシウム及びマグネシウムから選択される1種以上の金属元素を含有する化合物又は混合物、より好ましくはカルシウムを有する無機化合物が挙げられる。カルシウム及びマグネシウムから選択される1種以上の金属元素は、2価以上の金属イオン源となるので、カルボキシル基(-COOH)又はカルボン酸塩の基(-COOM(Mは1価の金属))を有するゲル化剤や、硫酸基(-OSO3H)又は硫酸塩の基(-OSO3M(Mは1価の金属))を有するゲル化剤2分子と反応して、2分子のゲル化剤の架橋剤となる。
【0066】
被覆剤の粉末としては、水酸化カルシウム、酸化カルシウム、炭酸カルシウム、水酸化マグネシウム、酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム及びそれら2種以上を成分として含有する混合物が挙げられる。これらのうち、被覆剤の粉末としては、水への溶解度が高く、アルギン酸塩水溶液と接触することにより、強固なゲル化物を形成するため、ゲル化物の強度が高くなるので、風雨への耐性が高くなり、また、水に溶解した際のpHが高く、降雨等による土壌の酸性化を抑制することができるため、酸性条件で繁茂する雑草の抑制効果が高くなる点で、水酸化カルシウム、酸化カルシウムが好ましく、水酸化カルシウムが特に好ましい。また、水酸化カルシウムは、空気中の二酸化炭素と反応して、炭酸カルシウムに変化するため、被覆対象土壌の汚染が少ない。
【0067】
被覆剤の粉末としては、「20℃の水100gに0.050g添加したときのpHが10.5以上」である被覆剤が好ましい。被覆剤の、20℃の水100gに0.050g添加したときのpHは、より好ましくは11.0以上であり、より好ましくは11.0~14.0である。被覆剤の粉末の「20.0℃の水100gに0.050g添加したときのpH」が、上記範囲にあることにより、ゲル化物の強度が高くなるので、風雨への耐性が高くなり、また、水に溶解した際のpHが高く、降雨等による土壌の酸性化を抑制することができるため、酸性条件で繁茂する雑草の抑制効果が高くなる。
【0068】
粉末層形成工程において、被覆対象土壌に、被覆剤の粉末を層状に敷き、土壌被覆剤の粉末層を形成させる方法としては、特に制限されず、被覆剤の粉末の層を、機械を用いて形成してもよいし、人力で形成してもよく、市販の粉体噴霧器、粉末散布機、ライン引きなどを用いることが、均一かつ効率よく粉末層が得られる点で好ましい。
【0069】
粉末層形成工程において形成させる被覆剤の粉末層の厚さは、0.10~100mm、好ましくは0.25~50mm、より好ましくは0.50~25mmである。粉末層の厚さが、上記範囲未満だと、層状土壌被覆剤の強度が弱くなり、雑草の抑制効果が低くなり、また、上記範囲を超えると、ゲル化剤の水溶液の散布量が多くなり過ぎるため、コストが高くなる。なお、本発明において、被覆剤の粉末層の厚みは、土壌表面に形成された層状土壌被覆剤の任意の5点において、大気側の表面から土壌との接着面までの長さを測定し、その平均値を算出することにより測定される。
【0070】
また、本発明の層状土壌被覆剤の製造方法では、粉末層形成工程で、先に粉末からなる被覆剤層を形成させ、次いでゲル化工程で、ゲル化剤の水溶液を用いてゲル化させることにより、層状土壌被覆剤を形成させるので、被覆対象土壌上に形成させる被覆剤の粉末層の厚みを調節することにより、層状土壌被覆剤の厚みを調節することができる。そのため、本発明の層状土壌被覆剤の製造方法では、層状土壌被覆剤の厚みを広範囲で調節することができる。そして、本発明の層状土壌被覆剤の製造方法では、粉末層形成工程で、被覆剤の粉末層の厚みを調節することにより、得られる層状土壌被覆剤の厚みを調節することができるので、本発明の層状土壌被覆剤の製造方法は、層状土壌被覆剤の分解までの時間を調節し易く、また、層状土壌被覆剤の強度を調節し易い。
【0071】
特に、本発明の層状土壌被覆剤の製造方法では、特許文献1のように、被覆剤を溶解又は懸濁させた水溶液を用いる場合に比べ、厚みが厚い層状土壌被覆剤を製造することができる。そのため、本発明の層状土壌被覆剤の製造方法は、雑草の抑制効果が高く、且つ、風雨に対する耐性が高い層状土壌被覆剤を得ることができる。本発明の層状土壌被覆剤の製造方法において、このような厚みが厚い層状土壌被覆剤を製造する場合、粉末層形成工程において形成させる被覆剤の粉末層の厚さは、好ましくは0.10~100mm、より好ましくは0.25~50mm、より好ましくは0.50~25mmである。
【0072】
粉末層形成工程において形成させる被覆剤の粉末層の単位面積当たりの質量は、好ましくは50g/m2以上、より好ましくは50~50000g/m2、より好ましくは120~25000g/m2である。
【0073】
粉末層形成工程において、被覆剤の粉末が、カルシウム及びマグネシウムから選択される1種以上の金属元素を含有する化合物の場合、粉末層形成工程において形成させる被覆剤の粉末層における、これらの金属元素の原子換算の単位面積当たりの質量は、好ましくは25g/m2以上、より好ましくは25~36000g/m2、より好ましくは60~18000g/m2である。なお、被覆剤の粉末が、1種の上記金属元素を含有する場合、上記金属元素の原子換算の質量は、その1種の金属元素の原子換算の質量を指し、また、被覆剤の粉末が、2種以上の上記金属元素を含有する場合、上記金属元素の原子換算の質量は、それら2種以上の金属元素の原子換算の合計質量を指す。
【0074】
粉末層形成工程では、被覆剤と、増粘剤、色素成分、強度向上剤及び生理活性物質のうちの1種以上と、を含有する混合物を敷くことにより、被覆剤と、増粘剤、色素成分、強度向上剤及び生理活性物質のうちの1種以上と、を含有する被覆剤の粉末層を形成させることができる。
【0075】
被覆剤の粉末層が増粘剤を含有することにより、層状土壌被覆剤のゲル化物の強度が高くなり、土壌被覆材と土壌との接着性が向上し、風雨に対する耐性が高くなる。
【0076】
高分子のうち、天然高分子としては、例えば、タラガム、スクロースビーンガム、グアガム、カラギナン、デンプン、ペプチン、アラビアゴム、トラントガム、カレガリン、コンニャクマンナン、カンテン等の植物系の天然高分子、デキストリン、キサンタンガム等の微生物系の天然高分子、ゼラチン、カゼイン、コラーゲン、キチン・キトサン類等の動物系の天然高分子などの1種又は2種以上が挙げられる。
【0077】
高分子のうち、半合成高分子としては、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース等のセルロース系の半合成高分子、可溶性デンプン、カルボキシメチルデンプン、メチルデンプン等のデンプン系の半合成高分子が挙げられる。
【0078】
高分子のうち、合成高分子としては、ポリ乳酸、ポリブチレンアジペ-ト・テレフタレ-ト等の生分解性の合成高分子類、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸塩等の合成高分子類などの1種又は2種以上が挙げられる。
【0079】
粉末層形成工程に係る増粘剤としては、人体に影響が少なく、十分な粘度を有し、生物によって分解されることから、タラガム(スピノガム)、ローカストビーンガム、キサンタンガム、カラギナンなどの増粘多糖類が好ましく、この中でも冷水への溶解性が高いタラガムが特に好ましい。
【0080】
増粘剤は、水溶性であることが好ましい。増粘剤の、20℃の水100gに対する溶解量は、0.010g以上、好ましくは0.010~100g、より好ましくは0.10~50gである。
【0081】
増粘剤の使用量は、被覆剤及び増粘剤の合計に対し、好ましくは0.05~50質量%、より好ましくは0.50~25質量%である。増粘剤の使用量が上記範囲にあることにより、層状土壌被覆剤の強度が高くなり、土壌被覆材と土壌との接着性が向上し、風雨への耐性が高くなる。
【0082】
増粘剤の使用量により、層状土壌被覆剤の表面(大気側)の凹凸状態を制御すること、すなわち、凸凹にしたり、滑らかにしたりすることができる。よって、所望する層状土壌被覆剤の表面の凹凸状態に応じて、被覆剤及び増粘剤の合計に対する増粘剤の使用量を、好ましくは0.05~50質量%、より好ましくは0.50~25質量%の範囲内で選択することができる。
【0083】
粉末層形成工程において、被覆剤の粉末として、水酸化カルシウム及び/又は酸化カルシウムを用い、且つ、ゲル化工程で、ゲル化剤として、アルギン酸塩を用いる場合、被覆剤の使用量に対する増粘剤の使用量の質量比(増粘剤/被覆剤)は、好ましくは0.0005~1.0、より好ましくは0.001~0.33である。
【0084】
粉末層形成工程において、被覆剤の粉末として、水酸化マグネシウムを用い、且つ、ゲル化工程で、ゲル化剤として、アルギン酸塩を用いる場合、被覆剤の使用量に対する増粘剤の使用量の質量比(増粘剤/被覆剤)は、好ましくは0.0005~0.33、より好ましくは0.001~0.20である。
【0085】
粉末層形成工程において、被覆剤の粉末として、水酸化カルシウム及び/又は酸化カルシウムを用い、且つ、ゲル化工程で、ゲル化剤として、ペクチン及び/またはジェランガムを用いる場合、被覆剤の使用量に対する増粘剤の使用量の質量比(増粘剤/被覆剤)は、好ましくは0.0005~0.33、より好ましくは0.001~0.20である。
【0086】
色素成分としては、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、シリカ粉、微粉ケイ酸、珪藻土、タルクなど白色を呈し、太陽光を効率良く反射して、地温の上昇を顕著に抑制することができる物質、カーボンブラック、活性炭など黒色を呈し、太陽光を吸収する効果を有し、層状土壌被覆剤に含有させることで、地温上昇を調節することが可能な物質が好ましい。また、色素成分としては、ウコン色素、ベニバナ色素などの天然色素が挙げられる。本発明の層状土壌被覆剤に、色素成分を含有させることにより、太陽光の吸収度合いを調節することができる。
【0087】
強度向上剤としては、有機栽培において好適に用いられる点で、おがくず、苅草、テングサ絞りカス、米ぬか、焼酎粕、藁、古紙などが好ましい。被覆剤の粉末層が、強度向上剤を含むことにより、層状土壌被覆剤の強度が高くなり、また、風による飛散を防ぐことができる。強度向上剤は、繊維を含む植物由来素材であることが好ましい。強度向上剤が、繊維を含むことで、繊維同士が層形成中に絡まり強度が高くなる。
【0088】
生理活性物質としては、ひのき蒸留水、ヒバ抽出物、ユーカリ抽出物、ズイナ抽出物などの植物抽出物、プシコースなどの希少糖、ペラルゴン酸などの植物由来成分などが好適である。被覆剤の粉末層が、生理活性物質を含むことにより、雑草抑制効果を高め、また、虫害を防止することができる。生理活性物質は、植物又は菌類から抽出された天然素材であることが好ましい。
【0089】
粉末層形成工程において、被覆剤の粉末層させる土壌は、つまり、層状土壌被覆剤の被覆対象土壌としては、農作物を生育させる土壌、畝、果樹の根本等の農業用マルチフィルムの敷設に適する土壌と、それらに加え、ビニールハウスの端、防草シートの隙間、配管・パイプ敷設箇所、機材設置個所、畦等の農業用マルチフィルムの敷設に適さない土壌が挙げられる。
【0090】
本発明の層状土壌被覆剤の製造方法に係るゲル化工程は、粉末層形成工程を行い得られる被覆剤の粉末層に、ゲル化剤の水溶液を供給し、被覆剤の粉末とゲル化剤とを反応させることによりゲル化させて、ゲル化物を生成させる工程である。
【0091】
ゲル化工程に係るゲル化剤は、被覆剤の粉末と反応することにより、ゲル化物を形成する化合物であり、且つ、土壌中で自然に分解される化合物である。
【0092】
ゲル化剤としては、カルボキシル基(-COOH)又はカルボン酸塩の基(-COOM(Mは1価の金属))を有する化合物が挙げられる。ゲル化剤としては、アルギン酸塩、ペクチン、ジェランガムなどが挙げられる。そして、ゲル化剤としては、カルシウムイオンを有する化合物、特に水酸化カルシウムと反応して、強固なゲルを形成する点及び土壌中で自然分解し易い点で、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸カリウム等のアルギン酸塩が好ましく、アルギン酸ナトリウムがより好ましい。
【0093】
ゲル化剤の、25℃の水100gに対する溶解量は、0.010g以上、好ましくは0.01~25g、より好ましくは0.10~15gである。ゲル化剤は、水溶性であることが望ましい。
【0094】
アルギン酸溶液の製造方法としては、例えば、「ワカメ藻体中アルギン酸の水溶性化について」(藤原健、宮城県水産報第8号、2008年)に記載されている、生ワカメを食塩水でボイルしホモジナイズすること、並びに湯通し塩蔵ワカメを脱塩しホモジナイズすることで、アルギン酸を抽出する方法が挙げられる。このように得られたアルギン酸溶液は、有機JAS認証を得られる可能性がある。また、水酸化カルシウム(消石灰)は、有機JAS栽培に用いられる資材である。そのため、被覆剤の粉末として、水酸化カルシウムを用い、且つ、ゲル化剤として、生ワカメを食塩水でボイルしホモジナイズして抽出すること、並びに湯通し塩蔵ワカメを脱塩しホモジナイズして抽出することにより得られるアルギン酸塩を用いることにより、有機JAS認証を得ることができる可能性がある層状土壌被覆剤を得ることができる。
【0095】
ゲル化工程に係るゲル化剤の水溶液中のゲル化剤の濃度は、好ましくは0.01~20質量%、より好ましくは0.05~10質量%である。ゲル化剤の水溶液中のゲル化剤の濃度が、上記範囲にあることにより、ゲル化剤の水溶液を効率よく散布することが可能となる。一方、ゲル化剤の水溶液中のゲル化剤の濃度が、上記範囲未満だと、被覆材とのゲル化反応が進行せず被覆層形成が不十分となり、また、上記範囲を超えると、ゲル化剤の水溶液の粘度が高まり散布装置による水溶液の散布が困難となる。
【0096】
ゲル化工程におけるゲル化剤の水溶液の使用量は、粉末層形成工程における被覆剤の粉末の使用量100質量部に対し、ゲル化剤換算で、好ましくは0.001~2100質量部、より好ましくは0.005~1050質量部である。
【0097】
粉末層形成工程において、被覆剤として、水酸化カルシウム及び/又は酸化カルシウムを用い、且つ、ゲル化工程において、ゲル化剤として、アルギン酸塩を用いる場合、ゲル化工程におけるゲル化剤の水溶液の使用量は、粉末層形成工程における被覆剤の粉末の使用量100質量部に対し、ゲル化剤換算で、好ましくは0.001~2100質量部、より好ましくは0.005~1050質量部である。
【0098】
粉末層形成工程において、被覆剤として、水酸化マグネシウムを用い、且つ、ゲル化工程において、ゲル化剤として、アルギン酸塩を用いる場合、ゲル化工程におけるゲル化剤の水溶液の使用量は、粉末層形成工程における被覆剤の粉末の使用量100質量部に対し、ゲル化剤換算で、好ましくは0.005~2100質量部、より好ましくは0.01~1050質量部である。
【0099】
粉末層形成工程において、被覆剤として、水酸化カルシウム及び/又は酸化カルシウムを用い、且つ、ゲル化工程において、ゲル化剤として、ペクチン及び/またはジェランガムを用いる場合、ゲル化工程におけるゲル化剤の水溶液の使用量は、粉末層形成工程における被覆剤の粉末の使用量100質量部に対し、ゲル化剤換算で、好ましくは0.005~2100質量部、より好ましくは0.01~1050質量部である。
【0100】
ゲル化工程に係るゲル化剤の水溶液は、防腐剤又は保存剤を含有することができる。ゲル化剤の水溶液が、防腐剤又は保存剤を含むことにより、ゲル化剤の保存性を高め、より長期間にわたり使用することができる。防腐剤又は保存剤としては、例えば、安息香酸、安息香酸ナトリウム、パラベン(メチルパラベン等)、ベンジルアルコール、フェノキシエタノール、デヒドロ酢酸ナトリウム、ソルビン酸、サリチル酸等の一般的に使用される防腐剤又は保存剤が挙げられる。また、防腐剤又は保存剤としては、レモングラス抽出物、ワサビ抽出物、チャ抽出物、甘草抽出物等の天然由来成分が挙げられる。
【0101】
ゲル化工程において、被覆剤の粉末層に、ゲル化剤の水溶液を供給する方法としては、特に制限されず、ゲル化剤の水溶液を、噴霧、散布又は塗布する方法が挙げられる。
【0102】
そして、ゲル化工程では、被覆剤の粉末層に供給されたゲル化剤の水溶液が、被覆剤の粉末間の隙間を通って、被覆剤の粉末層を通過しながら、被覆剤の粉末層中で、被覆剤の粉末とゲル化剤の水溶液が接触することにより、被覆剤の粉末とゲル化剤が反応してゲル化し、層状にゲル化物が形成され、層状土壌被覆剤が得られる。
【0103】
本発明の層状土壌被覆剤の製造方法を行い得られる層状土壌被覆剤は、被覆剤の粉末と、ゲル化剤と、を反応させて得られるゲル化物を含む。本発明の層状土壌被覆剤の製造方法を行い得られる層状土壌被覆剤は、厚み方向に見たときに、少なくとも大気側(土壌とは反対側)の一部が、被覆剤の粉末と、ゲル化剤と、を反応させて得られるゲル化物で形成されている。
【0104】
本発明の層状土壌被覆剤の製造方法を行い得られる層状土壌被覆剤は、厚み方向に見たときに、被覆剤の粉末と、ゲル化剤と、のゲル化物が、厚み方向の全体に分布していてもよい。また、本発明の層状土壌被覆剤の製造方法を行い得られる層状土壌被覆剤は、厚み方向に見たときに、被覆剤の粉末と、ゲル化剤と、のゲル化物を含む部分と、被覆剤の粉末とゲル化剤のゲル化物を含まない部分があってもよい。例えば、本発明の層状土壌被覆剤の製造方法を行い得られる層状土壌被覆剤は、厚み方向に見たときに、土壌側に、被覆剤の粉末とゲル化剤のゲル化物を含まない部分があってもよい。また、本発明の層状土壌被覆剤の製造方法を行い得られる層状土壌被覆剤は、全体が、被覆剤の粉末と、ゲル化剤と、のゲル化物で形成されていてもよい。
【0105】
本発明の層状土壌被覆剤の製造方法を行い得られる層状土壌被覆剤の厚みは、0.10mm以上、好ましくは0.10~100mm、より好ましくは0.25~50mmである。
【0106】
本発明の層状土壌被覆剤の製造方法を行い得られる層状土壌被覆剤の単位面積当たりの質量は、好ましくは50g/m2以上、より好ましくは50~50000g/m2、より好ましくは120~25000g/m2である。
【0107】
以下に、実施例を示して、本発明を具体的に説明するが、本発明は、以下に示す実施例に限定されるものではない。
【実施例0108】
以下に本発明の農業用組成物について、実施例により説明する。ただし、本発明が当該実施の形態に限定されるものではない。
【0109】
(実施例1)
日光の当たる屋外に、0.15m×0.15mの畝を作り、ベビーリーフの種子を10粒×3列となるように植えた。次いで、畝の土壌上に、消石灰(水酸化カルシウム)を、厚さ5mmで敷き、被覆剤の粉末層を形成させた。
次いで、濃度1.0質量%のアルギン酸ナトリウム水溶液を調製し、被覆剤の粉末層全体に、調製したアルギン酸ナトリウム水溶液100mLを、均一に噴霧し、層状土壌被覆剤を得た。得られた層状土壌被覆剤の厚みを測定したところ、4.0mmであった。
次いで、層状土壌被覆剤を形成させた土壌の観察を7日間行ったところ、植物の生育は観察されなかった。
【0110】
(実施例2)
日光の当たる屋外に、0.15m×0.15mの畝を作り、ベビーリーフの種子を10粒×3列となるように植えた。次いで、消石灰(水酸化カルシウム)とタラガムとを、質量比で9:1で混合した混合物を調製し、畝の土壌上に、調製した混合物を、厚さ5mmで敷き、被覆剤の粉末層を形成させた。
次いで、濃度1.0質量%のアルギン酸ナトリウム水溶液を調製し、被覆剤の粉末層全体に、調製したアルギン酸ナトリウム水溶液100mLを、均一に噴霧し、層状土壌被覆剤を得た。得られた層状土壌被覆剤の厚みを測定したところ、4.0mmであった。
次いで、層状土壌被覆剤を形成させた土壌の観察を7日間行ったところ、植物の生育は観察されなかった。
【0111】
(比較例1)
日光の当たる屋外に、0.15m×0.15mの畝を作り、ベビーリーフの種子を10粒×3列となるように植えた。
次いで、濃度1.0質量%のアルギン酸ナトリウム水溶液と、濃度2.0質量%の乳酸カルシウム水溶液をそれぞれ調製した。次いで、乳酸カルシウム水溶液には、400mL当たり100gの軽質炭酸カルシウムを懸濁させた。
次いで、畝の土壌上の全体に、先に、アルギン酸ナトリウム水溶液50mLを、均一に噴霧し、次いで、炭酸カルシウムが懸濁する乳酸カルシウム水溶液を、均一に約50mL噴霧した。
次いで、2つの水溶液を噴霧した土壌の観察を7日間行ったところ、植物の生育は観察された。
【0112】
(比較例2)
日光の当たる屋外に、0.15m×0.15mの畝を作り、ベビーリーフの種子を10粒×3列となるように植えた。次いで、水を100mL噴霧した。
次いで、2つの水溶液を噴霧した土壌の観察を7日間行ったところ、植物の生育は観察された。
【0113】
<層状土壌被覆剤の厚みの測定>
土壌表面に形成された層状土壌被覆剤の任意の5点において、大気側の表面から土壌との接着面までの長さを測定し、それらの平均値を厚みとして算出した。
<被覆剤を20℃の水100gに0.050g添加したときのpHの測定>
恒温槽を用いて水温を20℃に調節したイオン交換水に、被覆剤を所定量添加後、5分間転倒攪拌を行い、即座にJIS Z8802「pH 測定方法」に記載の方法により校正した市販のpH計(株式会社堀場製作所 卓上型pHメータ F-72)で測定した。
【0114】
(実施例3)
あらかじめ重量を秤量した10cm×10cmのダンボール基材上に、消石灰(水酸化カルシウム)を、厚さ2mmで敷き、被覆剤の粉末層を形成させ、被覆剤の粉末層全体に、濃度1.0質量%のアルギン酸ナトリウム水溶液500mLを、基材全体に均一に噴霧し、24時間乾燥させることで層状土壌被覆剤を形成させ、基材とともに秤量し、基材の重量を減算することで層状土壌被覆剤の重量を算出した。
次いで、層状土壌被覆剤の中心部に、地面と垂直に設置した外径6mm、内径3mmのPTFEチューブから流量80mL/min、チューブ端の高さ80cmの条件で水を供給し、水による崩壊性試験を行った。
上記試験を計三回実施した結果、層状土壌被覆剤の穿孔、および溶解は確認されなかった。
また、浸水した層状土壌被覆剤、及び基材を24時間乾燥させ、再度層状土壌被覆剤の重量を基材とともに秤量し、基材の重量を減算することで層状土壌被覆剤の重量を算出したところ、各試験における崩壊性試験前後の層状土壌被覆剤の重量について、5%以上の重量減少は確認されなかった。