(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024171164
(43)【公開日】2024-12-11
(54)【発明の名称】ステッピングモーター制御装置
(51)【国際特許分類】
H02P 8/12 20060101AFI20241204BHJP
【FI】
H02P8/12
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023088089
(22)【出願日】2023-05-29
(71)【出願人】
【識別番号】000001270
【氏名又は名称】コニカミノルタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000925
【氏名又は名称】弁理士法人信友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】吉田 一充
(72)【発明者】
【氏名】橘 優太
(72)【発明者】
【氏名】張 光栄
(72)【発明者】
【氏名】木山 敬
【テーマコード(参考)】
5H580
【Fターム(参考)】
5H580AA05
5H580CA12
5H580CA15
5H580EE03
5H580FA02
5H580FA14
5H580FA22
5H580FA24
5H580HH22
5H580JJ07
(57)【要約】
【課題】ステッピングモーターの駆動性能を下げることなく、温度上昇を抑制する。
【解決手段】ステッピングモーター制御装置200は、ステッピングモーター2と、定電流制御周期に応じてステッピングモーターに通電する電流周期を、定電流制御周期の2周期以上になるように制御する電流周期制御処理を行う励磁制御部112と、を備える。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ステッピングモーターと、
定電流制御周期に応じて前記ステッピングモーターに通電する電流周期を、前記定電流制御周期の2周期以上になるように制御する電流周期制御処理を行う電流周期制御部と、を備える
ステッピングモーター制御装置。
【請求項2】
前記電流周期制御部は、前記ステッピングモーターへの通電の電流値が所定判定値以上になると、前記ステッピングモーターへの通電をオフにすることにより、前記電流周期制御処理を行う
請求項1に記載のステッピングモーター制御装置。
【請求項3】
前記所定判定値は、前記ステッピングモーターへの通電をオフにする定電流制御閾値より小さい電流値である
請求項2に記載のステッピングモーター制御装置。
【請求項4】
前記電流周期制御部は、前記ステッピングモーターへの通電期間が所定時間以上になると、前記ステッピングモーターへの通電をオフにすることにより、前記電流周期制御処理を行う
請求項1に記載のステッピングモーター制御装置。
【請求項5】
前記所定時間は、前記定電流制御周期のオン期間より短い時間である
請求項4に記載のステッピングモーター制御装置。
【請求項6】
前記電流周期制御部は、前記ステッピングモーターへの通電をオフにする定電流制御閾値を下げ、前記ステッピングモーターへの通電の電流値が下げられた前記定電流制御閾値を超えたことで前記ステッピングモーターへの通電をオフにした後、下げられた前記定電流制御閾値を元に戻すことにより、前記電流周期制御処理を行う
請求項1に記載のステッピングモーター制御装置。
【請求項7】
前記電流周期制御部は、前記ステッピングモーターへの通電をオフにする定電流制御閾値を上げ、前記ステッピングモーターへの通電の電流値が上げられた前記定電流制御閾値を超えたことで前記ステッピングモーターへの通電をオフにした後、上げられた前記定電流制御閾値を元に戻すことにより、前記電流周期制御処理を行う
請求項1に記載のステッピングモーター制御装置。
【請求項8】
前記電流周期制御部は、外部からの外部クロックの切り替え後、前記ステッピングモーターへの通電を初回にオフした後、前記電流周期制御処理を行う
請求項1~7のいずれか一項に記載のステッピングモーター制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ステッピングモーター制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ユニポーラ型のステッピングモーター駆動制御IC(Integrated Circuit)、すなわち、ステッピングモーター制御装置のサプライヤが生産終了した場合、生産終了された駆動制御ICの代替品ICの開発には非常に多額の開発費が発生する。このため、ディスクリート部品と制御装置とによって、同等の機能を持つステッピングモーター制御装置を構築することは一般的である。また、制御装置としては、汎用のCPU(Central Processing Unit)、DSP(digital signal processor)、FPGA(Field Programmable Gate Array)などが挙げられる。しかし、コスト面から考慮すると、DSP及びFPGAより安価であるCPUを選択せざるを得ない。また、ステッピングモーターを駆動する単機能の制御には高性能なCPUではなく、ローエンドの安価なものを使いこなして実現することが求められている。
【0003】
ところで、通常、ステッピングモーター制御装置において、ステッピングモーターの温度が上限値を超えないように、ステッピングモーターの温度上昇を抑制する処理が行われている。例えば、特許文献1には、ステッピングモーターの温度上昇を抑制する技術が開示されている。
【0004】
特許文献1に記載のステッピングモーター制御装置は、温度測定手段により検出した温度が予め定めた温度以上となったときに定電流切替手段により定電流を下げると共に回転速度の最大値を下げるように制御する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述のように、従来、ステッピングモーター制御装置において、ステッピングモーターの温度上昇を抑制する制御が行われている。ステッピングモーターのPWM(Pulse Width Modulation)定電流制御の場合、一定周期(定電流制御周期)でステッピングモーターへの通電をオン(ON)にする定電流制御と、検出された電流値が設定された定電流制御閾値に到達したことを検出した場合にステッピングモーターへの通電をオフ(OFF)にする制御とが行われる。しかし、通電をONにするタイミングが定電流制御周期で一定であるが、通電をOFFにするタイミングは、検出された電流値が定電流制御閾値に到達する任意のタイミングによって変化するので、制御することができない。このため、通電OFFのタイミング次第では、次の定電流制御周期までに電流値が定電流制御閾値に到達せず、次々回の定電流周期内で通電がOFFにされる2周期制御に遷移する場合もある。
【0007】
なお、ステッピングモーターに通電する電流周期が、通常、定電流制御周期の1周期で制御され、この場合のスイッチング回数は、定電流制御周期の2周期で制御される場合のスイッチング回数より多い。また、スイッチング回数が多いほど、スイッチング損失が大きくなり、ステッピングモーターの温度上昇も生じる。ステッピングモーターが過度に温度上昇すると、ステッピングモーターの劣化、故障に繋がる。なお、特許文献1に記載の技術は、モーターの温度上昇を抑制できるが、回転速度も下げられるので、生産性が低下する問題が発生する。
【0008】
また、ステッピングモーター制御装置にローエンドCPUを適用する場合、ローエンドCPUにおける動作CLK等の性能面の不足で、ステッピングモーターの駆動性能が悪化する問題も発生する。
【0009】
本発明は上記問題を解決するためになされたものであり、本発明の目的は、ステッピングモーターの駆動性能を下げることなく、温度上昇を抑制することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明のステッピングモーター制御装置は、ステッピングモーターと、定電流制御周期に応じてステッピングモーターに通電する電流周期を、定電流制御周期の2周期以上になるように制御する電流周期制御処理を行う電流周期制御部と、を備える。
【発明の効果】
【0011】
上記構成の本発明によれば、ステッピングモーターの駆動性能を下げることなく、温度上昇を抑制することができる。
上記以外の課題、構成及び効果は、以下の実施の形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】ステッピングモーター制御装置の構成例を示す図である。
【
図2】ステッピングモーターの相電流を説明するための図である。
【
図3】ステッピングモーターの駆動相電流を説明するための図である。
【
図4】本発明の一実施形態に係るステッピングモーター制御装置の構成例を示す図である。
【
図5】本発明の一実施形態に係るステッピングモーター制御装置の外部クロックとステッピングモーターの通電パターンとの関係を説明するための図である。
【
図6】ステッピングモーター制御装置における1周期制御を説明するための図である。
【
図7】ステッピングモーター制御装置における2周期制御を説明するための図である。
【
図8】ステッピングモーター制御装置における1周期制御と2周期制御とのそれぞれによるFETの温度変化時間特性を示す図である。
【
図9】本発明の一実施形態に係るステッピングモーター制御装置における2周期制御の例1を説明するための図である。
【
図10】本発明の一実施形態に係るステッピングモーター制御装置における2周期制御の例2を説明するための図である。
【
図11】本発明の一実施形態に係るステッピングモーター制御装置における2周期制御の例3を説明するための図である。
【
図12】本発明の一実施形態に係るステッピングモーター制御装置における2周期制御の例4を説明するための図である。
【
図13】本発明の一実施形態に係るステッピングモーター制御装置において、外部クロックの切り替え後の電流周期制御処理の開始タイミングを説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を実施するための形態について、添付図面を参照して説明する。本明細書及び図面において、実質的に同一の機能又は構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複する説明を省略する。
【0014】
<一実施形態>
[ステッピングモーター制御装置の構成]
まず、ステッピングモーター制御装置の構成について説明する。
図1は、ステッピングモーター制御装置100の構成例を示す図である。ステッピングモーター制御装置100は、
図1に示すように、制御装置1と、ステッピングモーター2と、ヒューズ3とを備える。制御装置1は、ステッピングモーター2に接続され、ステッピングモーター2の通電を制御する。
【0015】
ステッピングモーター2は、例えば、画像形成装置の搬送ローラー、レジストローラーなどを駆動するユニポーラ型の2相ステッピングモーターであり、コイル21~コイル24を有する。コイル21~コイル24の一端は、ヒューズ3を介して、駆動電源の電源部(24[V])に接続される。この電源部は、24[V]に限定されるものではなく、36[V]等としてもよい。コイル21,22がペアとなり、コイル23,24がペアになっている。ペア同士は同じ方向(電源→各コイル端子)に電流が流れたときに、磁気的に逆方向になるように結合している。各ペアは、便宜上、A相、B相と呼ぶものとし、A相ペアのコイルの電源部側と反対側との端子をそれぞれA相の端子、AB相の端子と呼び、B相ペアのコイルの電源部側と反対側との端子をそれぞれB相の端子、BB相の端子と呼ぶものとする。また、コイル21をA相に対応するコイルとし、コイル21とペアであるコイル22をAB相に対応するコイルとし、コイル23をB相に対応するコイルとし、コイル23とペアであるコイル24をBB相に対応するコイルとする。
【0016】
ステッピングモーター2の励磁方式は、「2相フルステップ」、「1-2相」、「W1-2相」、「2W1-2相」、「4W1-2相」等がある。「2相フルステップ」は、2相ずつ励磁する方式(2相励磁)である。「1-2相」は、1相ずつ励磁する方式(1相励磁)と、2相励磁とを交互に行うことで分解能が2倍になる方式である。「W1-2相」は、基本ステップ数(フルステップで一回転する数)の4倍で一回転する方式である。「2W1-2相」は、基本ステップ数の8倍で一回転する方式である。「4W1-2相」は、基本ステップ数の16倍で一回転する方式である。
【0017】
制御装置1は、
図1に示すように、制御部10と、プリドライバー11と、FET(Field Effect Transistor)121~FET124と、AMP(Amplifier)13及びAMP14と、シャント抵抗15及びシャント抵抗16とを備える。なお、
図1では、「シャント抵抗」は「シャント」に省略されている。
【0018】
プリドライバー11は、ドライバー回路であり、一方の4つの端子が制御部10の後述の励磁制御部112に接続され、他方の4つの端子が、それぞれ、FET121~FET124のゲートに接続される。
【0019】
FET121は、ドレインがコイル21の端子Aに接続され、ソースがシャント抵抗15に接続され、ソースからドレインへ整流するダイオードが接続されたスイッチング素子である。FET122は、ドレインがコイル22の端子ABに接続され、ソースがシャント抵抗15に接続され、ソースからドレインへ整流するダイオードが接続されたスイッチング素子である。FET123は、ドレインがコイル23の端子Bに接続され、ソースがシャント抵抗16に接続され、ソースからドレインへ整流するダイオードが接続されたスイッチング素子である。FET124は、ドレインがコイル24の端子BBに接続され、ソースがシャント抵抗16に接続され、ソースからドレインへ整流するダイオードが接続されたスイッチング素子である。
【0020】
シャント抵抗15の一端はFET121及びFET122に接続され、他端は接地部17に接続され、端子間の電流を検出するための抵抗器である。シャント抵抗16の一端はFET123及びFET124に接続され、他端は接地部17に接続され、端子間の電流を検出するための抵抗器である。
【0021】
AMP13の入力端子はFET121及びFET122のソースに接続され、当該ソースの電圧を増幅する。AMP13の出力端子は、制御部10の後述のコンパレータ108の入力端子に接続され、増幅した電圧値をコンパレータ108に出力する。AMP14の入力端子はFET123及びFET124のソースに接続され、当該ソースの電圧を増幅する。AMP14の出力端子は、制御部10の後述のコンパレータ109の入力端子に接続され、増幅した電圧値をコンパレータ109に出力する。
【0022】
制御部10は、例えば、不図示のローエンドCPU、RAM(Random Access Memory)ROM(Read Only Memory)及び記憶装置等により構成される。制御部10は、
図1に示すように、励磁モード設定部101と、エッジ検出部102と、進相カウンタ103と、電流Table104と、電流値計算部105とを備える。また、制御部10は、D/A(Digital to Analog)コンバータ106及びD/Aコンバータ107と、コンパレータ(COMP)108及びコンパレータ(COMP)109と、発振器110と、クロック生成部111と、励磁制御部112とを備える。
【0023】
励磁モード設定部101は、外部から入力するMODE信号に応じて、ステッピングモーター2の励磁方式の設定信号を出力する。
【0024】
エッジ検出部102は、外部から入力される外部クロック(CLOCK信号)の一周期ごとのエッジを検出してエッジ検出信号を進相カウンタ103に出力する。
【0025】
進相カウンタ103は、外部から入力されるDIRECTION信号と、励磁モード設定部101から入力する励磁方式の設定信号と、エッジ検出部102から入力するエッジ検出信号とに応じて、励磁方式及び回転方向に応じた進相カウント値を示す進相量信号を生成する。また、進相カウンタ103は、生成した進相量信号を電流Table104に出力する。
【0026】
電流Table104は、予め設定された電流テーブルを記憶する。電流テーブルは、励磁方式及び回転方向に応じた、ステッピングモーター2の電気角に対する電流制御パターンを示すテーブルである。例えば、A相のFET121、AB相のFET122のうち、どちらのFETをオンするかは、電流制御パターンの電気角(外部CLOCK信号によって、励磁方式ごとに異なる進角量で進む)によって決まる。なお、B相、BB相も同様である。
【0027】
電流値計算部105は、電流Table104から電流テーブルを読み出し、読み出した電流テーブルと、外部から入力されるVREF電圧と、進相カウンタ103から入力される励磁方式及び回転方向に応じた進相量信号とに応じて、ステッピングモーター2のコイル21~コイル24に流す電流値を計算し、計算した電流値を励磁制御部112に出力し、D/Aコンバータ106及びD/Aコンバータ107にも出力する。
【0028】
D/Aコンバータ106及びD/Aコンバータ107は、電流値計算部105から電流値を入力し、入力した電流値に対応する電流設定基準電圧を生成し、電流設定基準電圧をコンパレータ108及びコンパレータ109のそれぞれに出力する。
【0029】
コンパレータ108は、AMP13から入力する電圧と、D/Aコンバータ106から入力する電流設定基準電圧とを比較し、比較結果を示すコンパレータ出力信号を生成して励磁制御部112に出力する。コンパレータ109は、AMP14から入力する電圧と、D/Aコンバータ107から入力する電流設定基準電圧とを比較し、比較結果を示すコンパレータ出力信号を生成して励磁制御部112に出力する。
【0030】
発振器110は、外部から入力されるCLOCK信号より十分高速な発振信号を生成してクロック生成部111に出力する。クロック生成部111は、発振器110から入力し、入力した発振信号に応じて、内部クロック信号を生成して励磁制御部112に出力する。
【0031】
励磁制御部112は、クロック生成部111から入力する内部クロック信号と、外部から入力するENABLE信号と、電流値計算部105から入力する電流値信号と、コンパレータ108及びコンパレータ109から入力するコンパレータ出力信号とに応じて、FET121~FET124の制御信号を生成してプリドライバー11に出力し、FET121~FET124をオン/オフさせる。また、励磁制御部112は、電流周期制御部の一例であり、FET121~FET124のON/OFFを制御することにより、ステッピングモーター2への通電を制御する。以下では、A相のFET121、AB相のFET122のON/OFF制御によるA相のコイル21、AB相のコイル22の通電制御を例として説明し、B相に関する説明を省略する。
【0032】
次に、ステッピングモーター2の相電流について説明する。
図2は、ステッピングモーター2の相電流を説明するための図である。
図2には、A相のFET121のゲート電圧(図に示す「A相FET電圧」)と、AB相のFET122のゲート電圧(図に示す「AB相FET電圧」)と、A相電流(駆動相電流)と、AB相電流(反転相電流)との時間変化特性が示されている。
【0033】
図2に示す時刻t1において、励磁制御部112は、A相のFET121をONにして、AB相のFET122をOFFにする。このため、時刻t1において、AB相FET電圧は0Vである。また、FET121がONになると、A相電流(駆動相電流)が、駆動電源の電源部からA相のコイル21、FET121のドレイン-ソース、シャント抵抗15を介して接地部17に流れる(後述の
図3A参照)。また、A相電流の電流値が経時とともに増加する。このとき、AB相のFET122がOFFであるので、AB相のコイル22を流れるAB相電流が0Aである。
【0034】
図2に示す時刻t2において、A相電流が、コンパレータ108の電流設定基準電圧より決まられる定電流制御閾値に到達し、コンパレータ108は、A相をOFFにするコンパレータ出力信号を励磁制御部112に出力する。励磁制御部112は、コンパレータ108から入力した、A相をOFFにするコンパレータ出力信号に応じて、A相のFET121をOFFにする。A相のFET121がOFFにされるとともに、A相電流(駆動相電流)が0Aになる。また、時刻t2において、A相電流と同じ大きさの逆方向電流が、接地部17からシャント抵抗15、FET122のダイオード(非同期整流)、コイル22を介して電源部に流れるAB相電流(反転相電流)が発生し(後述の
図3B参照)、AB相電流の電流値の絶対値が経時とともに減少する。
【0035】
図2に示す時刻t3において、励磁制御部112は、A相のFET121をONにして、AB相のFET122をOFFにする。このため、時刻t3において、AB相FET電圧は0Vである。また、FET121がONになると、A相電流(駆動相電流)が、駆動電源の電源部からA相のコイル21、FET121のドレイン-ソース、シャント抵抗15を介して接地部17に流れる。また、A相電流の電流値が経時とともに増加する。このとき、AB相のFET122がOFFであるので、AB相のコイル22を流れるAB相電流が0Aである。
【0036】
なお、時刻t1から時刻t3までの時間は、定電流制御周期である。励磁制御部112は、上述したように、駆動相電流(例えば、
図2に示すA相電流)が一定に制御する定電流制御を繰り返し行う。AB相、B相、BB相に通電する電流制御も、上述したA相に通電する電流制御と同様である。
【0037】
図3は、ステッピングモーターの駆動相電流を説明するための図である。
図3Aは、
図2に示す時刻t1~時刻t2におけるA相電流(図中の破線を参照)、すなわち、駆動電源の電源部からA相のコイル21、FET121のドレイン-ソース、シャント抵抗15を介して接地部17に流れる駆動相電流を示す。
図3Bは、
図2に示す時刻t2~時刻t3におけるAB相電流(図中の破線を参照)、すなわち、接地部17からシャント抵抗15、FET122のダイオード(非同期整流)、コイル22を介して電源部に流れる反転相電流を示す。
【0038】
次に、本実施形態に係るステッピングモーター制御装置200の構成について説明する。
図4は、本実施形態に係るステッピングモーター制御装置200の構成例を示す図である。
図4に示すステッピングモーター制御装置200の構成は、
図1に示すステッピングモーター制御装置100と同様であるため、重複説明を省略する。ステッピングモーター制御装置200では、外部クロック(CLOCK信号)による励磁パターンを進める処理(図中の(a)参照)を「外部クロック割り込み」とする。また、クロック生成部111が生成した内部クロック信号、すなわち、定電流制御周期による各FETのON/OFF制御処理(図中の(b)参照)を「定電流制御周期割り込み」とする。また、駆動相電流が定電流制御閾値に到達した場合に、コンパレータ108又はコンパレータ109により生成されるコンパレータ出力信号に応じる各FETのON/OFF制御処理(図中の(c)参照)を「コンパレータ割り込み」とする。
【0039】
ステッピングモーター制御装置200では、制御部10の励磁制御部112(電流周期制御部)は、定電流制御周期に応じてステッピングモーター2に通電する電流周期を、定電流制御周期の2周期以上になるように制御する電流周期制御処理を行う。ステッピングモーター2に通電する電流周期は、すなわち、駆動相電流のチョッピング周期である。
【0040】
励磁制御部112(電流周期制御部)における電流周期制御処理を説明する前、まず、外部クロック(CLOCK信号)とステッピングモーター2の励磁パターンとの関係を説明する。
図5は、本実施形態に係るステッピングモーター制御装置200の外部クロックとステッピングモーターの通電パターンとの関係を説明するための図である。
図5では、外部クロックの信号と、ステッピングモーター2が2相フルステップで励磁される場合の各相(A,AB,B,BB)の相電流の信号との時間対応関係が示されている。
図5に示すTaは、外部クロックの周期である。
【0041】
次に、
図5に示す外部クロックの1周期(Ta)内における、ステッピングモーター2に通電する電流周期を、定電流制御周期の1周期になるように制御する処理(1周期制御)について説明する。
図6は、ステッピングモーター制御装置における1周期制御を説明するための図である。
【0042】
図6に示すTbは、定電流制御周期、すなわち、クロック生成部111が生成した内部クロック信号(
図4中の(b)参照)の周期である。ステッピングモーター2が通電され、駆動相電流(破線で描画された部分)の電流値が増加し、
図6に示すように、電流制御周期Tb内で定電流制御閾値に到達すると、コンパレータ割り込みにより、駆動相に接続されるFETがOFFにされ、駆動相の反転相に、駆動相電流と同じ大きさの逆方向電流(破線で描画された部分)が発生する。
図6に示すTcは、初回チョッピング後のステッピングモーター2に通電する電流周期、すなわち、駆動相電流のチョッピング周期である。
図6に示すように、ステッピングモーター2に通電する電流周期の1周期制御では、駆動相電流が各定電流制御周期内にOFFにされ、次の定電流制御周期の開始時にONにされる。なお、通常、外部クロックの1周期内において、10回以上のチョッピングが発生するが、説明の便宜上、
図6には、5回のチョッピングのみが示されている。
【0043】
次に、
図5に示す外部クロックの1周期(Ta)内における、ステッピングモーター2に通電する電流周期を、定電流制御周期の2周期になるように制御する処理(2周期制御)について説明する。
図7は、ステッピングモーター制御装置における2周期制御を説明するための図である。
図7に示す2周期制御では、駆動相電流(駆動相に接続されるFETが)が1回目OFFされた(初回チョッピング)後、次の定電流制御周期でOFFにされず(2つ目のTb参照)、次次回の定電流制御周期(3つ目のTb参照)でOFFされる。このため、駆動相電流のチョッピング周期Tcは、定電流制御周期Tbの2周期となる。
【0044】
図7と
図6とを比較して分かるように、1周期制御における駆動相電流のチョッピング回数、すなわち、駆動相に接続されるFETのスイッチング回数は、2周期制御における駆動相電流のチョッピング回数(FETのスイッチング回数)より、2倍ぐらい多い。なお、FETのスイッチング回数が、FETの温度上昇に繋がり、FETのスイッチング回数が倍多いことにより、FETのスイッチング損失が大きく影響される。
【0045】
次に、ステッピングモーター2に通電する電流周期の1周期制御と2周期制御とのそれぞれによるFETの温度変化について説明する。
図8は、ステッピングモーター制御装置における1周期制御と2周期制御とのそれぞれによるFETの温度変化時間特性を示す図である。
図8に示す横軸は、秒(s)単位の時間を表す。
図8に示す縦軸は、サーミスタ温度(°C)を表す。
図8において、実線で描画された曲線は、1周期制御によるFETの温度変化時間特性を示し、破線で描画された曲線は、2周期制御によるFETの温度変化時間特性を示し、一点鎖線で描画された直線は、FETの温度上限値を示す。
【0046】
図8に示すように、時刻tpにおいて、1周期制御によるFETの温度と、2周期制御とによるFETの温度とは同じである。時刻100s以降では、1周期制御によるFETの温度と、2周期制御によるFETの温度とは、ほぼ一定になる。この際、1周期制御によるFETの温度(約85°C)は、2周期制御によるFETの温度(約60°C)より、約42%上昇(悪化)した。
【0047】
次に、ステッピングモーター制御装置200における2周期制御について説明する。なお、以下の説明では、ステッピングモーター2に通電する電流周期を、定電流制御周期の2周期になるように制御する電流周期制御処理の例を説明するが、本発明はこれに限定されない。励磁制御部112(電流周期制御部)は、ステッピングモーター2に通電する電流周期を、定電流制御周期の2周期以上の任意周期になるように制御してもよい。
【0048】
図9は、本実施形態に係るステッピングモーター制御装置200における2周期制御の例1を説明するための図である。
図9に示す2周期制御の例1では、励磁制御部112(電流周期制御部)は、ステッピングモーター2への通電期間が所定時間以上になると、ステッピングモーター2への通電をオフにすることにより、ステッピングモーター2に通電する電流周期を、定電流制御周期の2周期になるように制御する電流周期制御処理を行う。
【0049】
上述の電流周期制御処理により、
図9に示すように、駆動相電流は、初回チョッピング(時刻T1)の後、次の電流制御周期の開始時(時刻T2)に、駆動相に接続されるFETがONにされるため、電流値が増加する。時刻T2から所定時間Ts以上になると、駆動相に接続されるFETがOFFにされるため、時刻T3において、駆動相電流と同じ大きさの反転相電流が発生する。そして、時刻T3以降の駆動相電流のチョッピング周期、すなわち、ステッピングモーター2に通電する電流周期(Tc)は、
図9に示すように、定電流制御周期の2周期(2Tb)となる。
【0050】
なお、上述した所定時間Tsは、予めステッピングモーター制御装置200に登録され、定電流制御周期のON期間より短い時間である。所定時間Tsは、例えば、定電流制御周期のON期間の1/nに設定してもよいし、定電流制御周期のON期間より短い任意の時間間隔に設定してもよい。ここで、nは、任意の正数である。
【0051】
図10は、本実施形態に係るステッピングモーター制御装置200における2周期制御の例2を説明するための図である。
図10に示す2周期制御の例2では、励磁制御部112(電流周期制御部)は、ステッピングモーター2への通電の電流値が所定判定値以上になると、ステッピングモーター2への通電をオフにすることにより、ステッピングモーター2に通電する電流周期を、定電流制御周期の2周期になるように制御する電流周期制御処理を行う。
【0052】
上述の電流周期制御処理により、
図10に示すように、駆動相電流は、初回チョッピング(時刻T1)の後、次の電流制御周期の開始時(時刻T2)に、駆動相に接続されるFETがONにされるため、通電の電流値が増加する。駆動相電流の電流値が所定判定値以上になると(例えば、時刻T3)、駆動相に接続されるFETがOFFにされるため、時刻T3において、駆動相電流と同じ大きさの反転相電流が発生する。そして、時刻T3以降の駆動相電流のチョッピング周期、すなわち、ステッピングモーター2に通電する電流周期(Tc)は、
図10に示すように、定電流制御周期の2周期(2Tb)となる。
【0053】
なお、上述した所定判定値は、予めステッピングモーター制御装置200に登録され、コンパレータの電流設定基準電圧より決まられる定電流制御閾値、すなわち、ステッピングモーター2への通電をオフにする定電流制御閾値より小さい電流値である。
【0054】
図11は、本実施形態に係るステッピングモーター制御装置200における2周期制御の例3を説明するための図である。
図11に示す2周期制御の例3では、励磁制御部112(電流周期制御部)は、ステッピングモーター2への通電をオフにする定電流制御閾値を下げ、ステッピングモーター2への通電の電流値が下げられた定電流制御閾値を超えたことでステッピングモーター2への通電をオフにした後、下げられた定電流制御閾値を元に戻す。励磁制御部112(電流周期制御部)は、上述の処理により、ステッピングモーター2に通電する電流周期を、定電流制御周期の2周期になるように制御する電流周期制御処理を行う。
【0055】
上述の制御により、
図11に示すように、駆動相電流は、初回チョッピング(時刻T1)の後、次の定電流制御周期の開始時(時刻T2)に、駆動相に接続されるFETがONにされるため、電流値が増加する。時刻T3において、定電流制御閾値が下げられたので、駆動相電流の電流値が、下げられた定電流制御閾値を超え、駆動相に接続されるFETがOFFにされて、駆動相電流と同じ大きさの反転相電流が発生する。その後、下げられた定電流制御閾値は、元に戻される。そして、時刻T3以降の駆動相電流のチョッピング周期、すなわち、ステッピングモーター2に通電する電流周期(Tc)は、
図11に示すように、電流制御周期の2周期(2Tb)となる。
【0056】
なお、定電流制御閾値を一時的に下げるタイミング(時刻T3)は、駆動相電流の初回チョッピングの後の次の定電流制御周期内の任意時刻に設定してもよい。また、一時的に下げられた定電流制御閾値を元に戻すタイミング(時刻T4)は、駆動相電流の初回チョッピングの後の次の電流制御周期内で、時刻T3後の任意時刻に設定してもよい。
【0057】
図12は、本実施形態に係るステッピングモーター制御装置200における2周期制御の例4を説明するための図である。
図12に示す2周期制御の例4では、励磁制御部112(電流周期制御部)は、ステッピングモーター2への通電をオフにする定電流制御閾値を上げ、ステッピングモーター2への通電の電流値が上げられた定電流制御閾値を超えたことでステッピングモーター2への通電をオフにした後、上げられた定電流制御閾値を元に戻す。励磁制御部112(電流周期制御部)は、上述の処理により、ステッピングモーター2に通電する電流周期を、定電流制御周期の2周期になるように制御する電流周期制御処理を行う。
【0058】
上述の制御により、
図12に示すように、駆動相電流は、初回チョッピング(時刻T1)の後、次の定電流制御周期の開始時(時刻T2)に、駆動相に接続されるFETがONにされるため、電流値が増加する。時刻T3において、駆動相電流の電流値が、上げられた定電流制御閾値を超え、駆動相に接続されるFETがOFFにされて、駆動相電流と同じ大きさの反転相電流が発生する。その後、上げられた定電流制御閾値は、元に戻される。そして、次の電流制御周期の開始時(時刻T4)に、駆動相に接続されるFETがONにされるため、電流値が増加する。時刻T5において、駆動相電流の電流値が元に戻された定電流制御閾値を超え、駆動相に接続されるFETがOFFにされて、駆動相電流と同じ大きさの反転相電流が発生する。そして、時刻T5以降の駆動相電流のチョッピング周期、すなわち、ステッピングモーター2に通電する電流周期(Tc)は、
図12に示すように、電流制御周期の2周期(2Tb)となる。
【0059】
なお、定電流制御閾値を一時的に上げるタイミングは、駆動相電流の初回チョッピング後の次の定電流制御周期内の任意時刻に設定してもよい。また、一時的に上げられた定電流制御閾値を元に戻すタイミングは、駆動相電流の初回チョッピングが発生する電流制御周期内で、定電流制御閾値を上げたタイミング後の任意時刻に設定してもよい。
【0060】
次に、外部クロック(CLOCK信号)の切り替え後の電流周期制御処理の開始タイミングについて説明する。
図13は、本実施形態に係るステッピングモーター制御装置200において、外部クロックの切り替え後の電流周期制御処理の開始タイミングを説明するための図である。
【0061】
図13に示す時刻T1は、外部からの外部クロックの切り替えタイミングである。ステッピングモーター制御装置200の励磁制御部112(電流周期制御部)は、外部からの外部クロックの切り替え後(時刻T1の後)、ステッピングモーター2への通電を初回にオフした後、すなわち、初回チョッピングの後、電流周期制御処理を行う。ここで、電流周期制御処理は、
図9~
図12で説明した2周期制御の例1~例4のいずれであってもよい。
【0062】
また、外部クロックの切り替えタイミングに、ステッピングモーター2の励磁パターンを切り替えてもよい。また、外部クロックの切り替えタイミングに、例えば、
図13に示すように、駆動相と反転相とを切り替えてもよい。
【0063】
[効果]
上述したように、本実施形態に係るステッピングモーター制御装置200の励磁制御部112(電流周期制御部)は、駆動相電流の初回チョッピングの後、ステッピングモーター2に通電する電流周期を、定電流制御周期の2周期以上になるように制御する電流周期制御処理を行う。定電流制御周期の2周期以上の制御は、1周期制御より、FETの水チング回数が半分以上少なくなるため、本実施形態に係るステッピングモーター制御装置200は、ステッピングモーターの駆動性能を下げることなく、温度上昇を抑制することができる。
【0064】
なお、本発明は上述した実施形態に限られるものではなく、特許請求の範囲に記載した本発明の要旨を逸脱しない限りその他種々の応用例、変形例を取り得ることは勿論である。
例えば、上述した実施形態は本発明を分かりやすく説明するためにステッピングモーター制御装置の構成を詳細かつ具体的に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されない。また、ここで説明した実施形態の構成の一部を他の実施形態の構成に置き換えることは可能であり、さらにはある実施形態の構成に他の実施形態の構成を加えることも可能である。また、実施形態の構成の一部について、他の構成の追加、削除、置換をすることも可能である。
また、制御線や情報線は説明上必要と考えられるものを示しており、製品上必ずしも全ての制御線や情報線を示しているとは限らない。実際には殆ど全ての構成が相互に接続されていると考えてもよい。
【符号の説明】
【0065】
1…制御装置、2…ステッピングモーター、3…ヒューズ、10…制御部、11…プリドライバー、13,14…AMP、15,16…シャント抵抗、17…接地部、21,22,23,24…コイル、100,200…ステッピングモーター制御装置、101…励磁モード設定部、102…エッジ検出部、103…進相カウンタ、104…電流Table、105…電流値計算部、106,107…D/Aコンバータ、108,109…コンパレータ、110…発振器、111…クロック生成部、112…励磁制御部、121,122,123,124…FET