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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024171167
(43)【公開日】2024-12-11
(54)【発明の名称】ライトユニット及び照明器具
(51)【国際特許分類】
   F21S 8/04 20060101AFI20241204BHJP
   F21S 2/00 20160101ALI20241204BHJP
   F21V 19/00 20060101ALI20241204BHJP
   F21V 29/503 20150101ALI20241204BHJP
   F21V 29/70 20150101ALI20241204BHJP
   F21V 29/85 20150101ALI20241204BHJP
   F21V 17/00 20060101ALI20241204BHJP
   F21V 17/10 20060101ALI20241204BHJP
【FI】
F21S8/04 110
F21S8/04 130
F21S2/00 230
F21V19/00 150
F21V19/00 170
F21V19/00 450
F21V29/503 100
F21V29/70
F21V29/85
F21V17/00 154
F21V17/10 200
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023088092
(22)【出願日】2023-05-29
(71)【出願人】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】390014546
【氏名又は名称】三菱電機照明株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002491
【氏名又は名称】弁理士法人クロスボーダー特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大澤 隆司
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 康弘
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 典文
【テーマコード(参考)】
3K011
3K013
【Fターム(参考)】
3K011AA01
3K011EF03
3K011GA02
3K013AA01
3K013AA07
3K013BA01
3K013CA05
3K013CA16
3K013EA01
3K013EA14
(57)【要約】
【課題】ライトユニットについて、透光性樹脂カバーと支持体との線膨張係数が異なる場合であっても新たな部品を追加することなく、異音発生を抑制する構造を提供する。
【解決手段】ライトユニット2は、長尺状をなし、複数のLEDパッケージ31が設置されたLED基板30と、LED基板30が設置される長尺状の平板部230と、平板部230の長手方向に沿う一方の側辺と他方の側辺のそれぞれから、平板部230におけるLED基板30が設置された設置面の裏面を基端として設置面と反対側に向かって起立する一対の側部233とを有する支持体23と、LED基板30を覆うカバー主部210と、一対の側部233と係合する一対のカバー係合部212とを有する透光性樹脂カバー21とを備える。LED基板30の短手方向の寸法B1を支持体23の短手方向の寸法B2で除した値は、0.55以上1.00未満である。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
長尺状をなし、複数のLEDパッケージが長手方向に沿って表面に設置されたLED基板と、
前記LED基板の裏面が当接して前記LED基板が設置される長尺状の平板部と、前記平板部の長手方向に沿う一方の側辺と他方の側辺のそれぞれから、前記平板部における前記LED基板が設置された設置面の裏面を基端として前記設置面と反対側に向かって起立する一対の側部とを有する支持体と、
前記LED基板を覆うカバー主部と、前記一対の側部と係合する一対のカバー係合部とを有する透光性樹脂カバーと、
を備え、
前記LED基板の短手方向の寸法を、前記支持体の短手方向の寸法で除した値が、0.55以上1.00未満であるライトユニット。
【請求項2】
前記支持体の長手方向の寸法は、
500[mm]以上600[mm]以下である請求項1に記載のライトユニット。
【請求項3】
前記支持体は、
熱伝導率が14[W/m・K]以上300[W/m・K]以下の範囲の材料を含む請求項1または請求項2に記載のライトユニット。
【請求項4】
前記支持体は、
熱伝導率が50[W/m・K]以上300[W/m・K]以下の範囲の材料からなる請求項1または請求項2に記載のライトユニット。
【請求項5】
請求項1または請求項2に記載のライトユニットと、
前記ライトユニットに取り付けられる器具と、
を備えた照明器具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、長尺状のLED照明器具に使用されるライトユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、光源ユニットとも呼ばれるライトユニットと、天井等の構造物に設置され、ライトユニットを収納する器具とを備え、ライトユニットと器具とを機械的かつ電気的に結合することによって構成されるLED照明器具が知られている。
【0003】
照明器具に用いられる光源は、白熱電球、蛍光ランプといったものから、エネルギー消費効率の高いLED光源への置き換えが進み一般的に使用されている。
【0004】
光源の如何に関わらず、照明器具は、消灯時には、どの部分も概ね周囲温度に近い温度になっている。
【0005】
例えば、LEDを光源として用いたライトユニットでは、点灯後は光源であるLEDそのものが発熱し、その熱は、主にライトユニットを構成する部材を経由してライトユニットのいたる所へ主に熱伝導によって伝わる。このようにして、ライトユニットにおける各部の温度は徐々に上昇する。そして、大まかに言えば、LEDからの発熱とライトユニットから外部への輻射とがバランス状態すなわち温度平衡状態となったところで、ライトユニットにおける各部の温度が安定する。消灯後はLEDからの発熱が無くなるため、ライトユニットにおける各部の温度が下がり、概ね周囲温度に近付く。
【0006】
ライトユニットは、例えば、金属材料を用いて形成された支持体である筐体に、LEDパッケージが表面実装されたLED基板が設置され、LED基板が設置された支持体を、樹脂材料を用いて形成された拡散性を有する透光性樹脂カバーで覆うことによって、照射される光の輝度と拡散度とを調整する。
【0007】
ここで、樹脂部品である透光性樹脂カバーが、LED基板が設置された支持体に取り付けられ、透光性樹脂カバーと支持体とが接触する箇所が存在することがある。
【0008】
支持体に用いられる材料の線膨張係数と、透光性樹脂カバーに用いられる樹脂材料の線膨張係数とが異なると、点灯後や消灯後における温度変化に伴う伸縮量に差が生じ、透光性樹脂カバーにおける支持体と接触する箇所に歪みが発生し、その歪みが解消する際に「異音(きしみ音、ひずみ音などとも称する)」が発生する場合がある。特に、オフィス等のように多数の照明器具が設置される使用環境においては、このような異音は、発生を抑制することが求められる。
【0009】
従来、照明器具の異音の抑制について様々な提案がなされてきた。例えば、特許文献1には、点灯時或いは消灯時に電子安定器部の発熱、ランプの発熱などにより、器具本体、カバーが膨張或いは収縮しても熱膨張率や熱収縮率が近い両者のかすれによるかすれ音が殆ど発生しなくなるように、合成樹脂成形品であるカバーを、熱膨張率及び熱収縮率が略等しい合成樹脂成型品からなる器具本体に取り付ける照明器具の提案がなされている。
【0010】
しかしながら、樹脂部品である透光性樹脂カバーと接触する部品の材料について、熱膨張率及び熱収縮率が透光性樹脂カバーに用いられる樹脂材料と略等しいものを選択できるとは限らず、熱膨張率及び熱収縮率をそろえられない場合が起こり得る。長尺状のLED照明器具において、長尺状の透光性樹脂カバーを、LED基板を設置した長尺上の支持体に係合させる場合には、その長さ全体に渡り接触するため、透光性樹脂カバーとLED基板を設置した支持体とは、熱膨張率及び熱収縮率の差に起因する、熱膨張量及び熱収縮量の差が大きくなり、異音が発生しやすくなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2001-76518号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本開示は、LEDを光源とする照明器具に用いられる長尺状のライトユニットについて、透光性樹脂カバーと支持体との線膨張係数が異なる場合であっても、新たな部品を追加することなく、異音発生を抑制する構造の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本開示に係るライトユニットは、
長尺状をなし、複数のLEDパッケージが長手方向に沿って設置されたLED基板と、
長尺状をなして前記LED基板の裏面が当接して前記LED基板が設置される平板部と、前記平板部の長手方向に沿う一方の側辺と他方の側辺のそれぞれから、前記平板部において前記LED基板が設置された設置面から前記設置面の裏面に向かう方向である起立方向に起立する一対の側部とを有する支持体と、
前記LED基板を覆うカバー主部と、前記一対の側部と係合する一対のカバー係合部とを有する透光性樹脂カバーと、
を備え、
前記LED基板の短手方向の寸法(幅)を、前記支持体の短手方向の寸法(幅)で除した値は、
0.55以上1.00未満である。
【発明の効果】
【0014】
本開示に係るライトユニットによれば、LEDパッケージ一個当たりの投入電力を変えずに、基板の短手方向の寸法(幅)を大きくすることで、LEDパッケージから発する熱がLED基板から支持体の短手方向(幅方向)に広く伝導し易くなり、LED基板の短手方向における中央部の温度が、長手方向の全体に渡って低下する。従って、支持体の短手方向中央部の温度が低下するので、支持体における側部の温度も低下し、更に、支持体の短手方向の温度勾配も小さくなり、支持体の側部の温度が下がる。これにより、支持体と、透光性樹脂カバーとの長手方向の熱膨張量及び両者の熱膨張量の差が小さくなる。よって、点灯後或いは消灯後の照明器具異音を、新たな部品を追加することなく抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】実施の形態1の図で、照明器具5の斜視図。
図2】実施の形態1の図で、照明器具5を器具1とライトユニット2とに分けた斜視図。
図3】実施の形態1の図で、ライトユニット2の斜視図。
図4】実施の形態1の図で、照明器具5の断面図。
図5】実施の形態1の図で、ライトユニット2の分解斜視図。
図6】実施の形態1の図で、器具1へのライトユニット2の取り付け方法を示す図。
図7】実施の形態1の図で、支持体23に設置された各LED基板30の示す断面図及び部分的平面図。
図8】実施の形態1の図で、透光性樹脂カバー21の支持体23への取り付けを模式的に示す図。
図9】実施の形態1の図で、各LED基板30の中央位置における温度の推移を示す図。
図10】実施の形態1の図で、各LED基板30の中央位置から短手方向(幅方向)へ向かう温度分布を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
実施の形態1.
図1から図10を参照して、実施の形態1の照明器具5を説明する。照明器具5は器具1とライトユニット2を備えている。
実施の形態1の特徴は、LED基板30の短手方向の寸法(幅)B1(図4)と、ライトユニット2の支持体23の短手方向の寸法(幅)B2(図4)との比率にある。実施の形態1では、この比率を適切に設定することによって、LED基板30の熱を支持体23に対して効率的に伝達する。これにより、支持体23に嵌合している透光性樹脂カバー21の線膨張係数と、支持体23の線熱膨係数とが相違することから生じる、異音の発生を抑制する。以下に、まず、照明器具5の構成を説明し、次に、LED基板30の熱を支持体23に対して効率的に伝達させる構成について説明する。
なお、本開示において、線膨張係数は、熱膨張率及び熱収縮率を含むものである。
【0017】
***構成の説明***
図1は、照明器具5の斜視図である。図2は、照明器具5を器具1とライトユニット2に分けた斜視図である。図3は、ライトユニット2の斜視図である。図4は、照明器具5の断面図である。図5は、ライトユニット2の分解斜視図である。図6は、器具1へのライトユニット2の取り付け方法を示す図である。
【0018】
<照明器具5>
図1図2に示すように、照明器具5は、ライトユニット2と、ライトユニット2を着脱自在に取り付け可能な器具1とを有する。照明器具5は長尺状であり、照明器具5を構成する器具1及びライトユニット2も長尺状である。図1に示すように、照明器具5の長手方向及び短手方向を、それぞれ、X方向及びY方向とする。器具1及びライトユニット2の長手方向及び短手方向も同様に、X方向及びY方向とする。照明器具5は、例えば、天井7に取り付けられる照明器具である。照明器具5は、天井直付形の所謂「逆富士タイプ」の照明器具である。図2に示すように、器具1は一対の板バネ11を有する。
【0019】
<ライトユニット2>
図5に示すように、ライトユニット2は、LED基板30、支持体23、透光性樹脂カバー21を有する。LED基板30は、長尺状をなし、複数のLEDパッケージ31が長手方向(X方向)に沿って表面に設置されている。図5に示すように、支持体23は、平板部230と一対の側部233を有する。平板部230は、長尺状をなしており、LED基板30の裏面が当接してLED基板30が設置される。側部233は、平板部230の長手方向(X方向)に沿う一方の側辺と他方の側辺のそれぞれから、平板部230におけるLED基板30が設置された設置面(第1面部231)の裏面(第2面部232)を基端として設置面(第1面部231)と反対側に向かって起立する一対の側部233とを有する。透光性樹脂カバー21は、LED基板30を覆うカバー主部210(図4)と、一対の側部233と係合する一対のカバー係合部212(図4)とを有する。
また、図3に示すように、ライトユニット2は、一対の連結具46、LEDパッケージ31を点灯させる電源装置40を有する。透光性樹脂カバー21は、LED基板30を覆うように支持体23に取り付けられる(図4)。
【0020】
<透光性樹脂カバー21>
図4図5に示すように、透光性樹脂カバー21は、カバー主部210、カバー側部211、カバー係合部212、カバー保持部213を有する。カバー主部210は、前面透光部である。カバー側部211は、側面透光部である。カバー係合部212は、支持体23と嵌め合わせる部分である。カバー保持部213は、支持体23を保持する部分である。カバー主部210は、透光性樹脂カバー21の前面に位置し、LED基板30に対向する。カバー側部211は、透光性樹脂カバー21の側部に相当する部分である。カバー係合部212は、カバー側部211から底面部103に向かう取付方向に突き出た部分である。カバー係合部212は、支持体23の側部233と係合し、透光性樹脂カバー21を支持体23に取り付ける。
【0021】
図4に示すように、透光性樹脂カバー21は、支持体23に取り付けられたLED基板30を覆うように、支持体23に取り付けられる。透光性樹脂カバー21は、カバー係合部212が支持体23の側部233の先端部を覆って、支持体23に取り付けられる。
【0022】
<端部カバー22>
図5に示すように、透光性樹脂カバー21の長手方向(X方向)の両端は端部カバー22で塞がれる。
【0023】
<支持体23>
支持体23は、取付部材であり、台座となり、ヒートシンクとなる。図5に示すように、支持体23は、長手方向に延びており、断面コ字状を成す。支持体23は、取付部となる板状の平板部230を有する。平板部230は、第1面部231と第2面部232とを有する。第1面部231には、LED基板30が取り付けられる。第2面部232には、電源装置40、一対の連結具46、とその他の部品が取り付けられる。第2面部232は、第1面部231の裏側の面である。
【0024】
平板部230の両側には一対の側部233が形成されている。側部233は、ライトユニット2が器具1に取り付けられた状態で、器具1のユニット取付部102の底面部103(図2図4)に向かって立ち上がっている。
側部233の先端部は、カバー係合部212と嵌合する。
【0025】
<LED基板30>
図5に示すように、LED基板30は、複数のLEDパッケージ31と、基板34とを有する。基板34は、実装面340(図4)と非実装面341(図5)とを有する。実装面340は、LED基板30の表面であり、複数のLEDパッケージ31が実装される。非実装面341は、LED基板30の裏面であり、支持体23の第1面部231との接着面であり、基板34から支持体23へ熱を伝達させる熱伝達面である。
【0026】
図3に示すように、ライトユニット2は、一対の連結具46を有する。連結具46は、器具1に設置された板バネ11と係合するバネ受け金具である。2つの連結具46は、平板部230の長手方向の両端側にそれぞれ取り付けられている。連結具46は、器具1が備える板バネ11と係合して、ライトユニット2を器具1に固定する。
【0027】
<照明器具5の施工方法の説明>
図6を用いて、器具1にライトユニット2を取り付ける方法について説明する。
(1)まず、天井7に器具1を取り付ける。器具1を天井7に取り付ける方法には、天井7からつり下げられている吊ボルトに固定する方法、あるいは、ネジなどの固定具により直接天井に固定する方法などがある。
(2)次に、板バネ11をライトユニット2の連結具46と係合させる。具体的には、板バネ11を連結具46の開口46a(図4)に貫通させる。このとき、ライトユニット2と器具1との間に作業空間が存在する状態で、器具1の電源線材とライトユニット2の電源線材とを接続するなどの作業が行われる。
(3)その後、ライトユニット2を器具1に向かって押し上げると、一対の板バネ11がライトユニット2を引き上げてライトユニット2が器具1に取り付けられる。
【0028】
<放熱の構成>
次に、LED基板30の発熱を支持体23に対して効率的に伝達させる構成について説明する。
【0029】
<LED基板30の支持体23への設置>
基板34には、紙、ガラス、樹脂を含む材料を用いた、厚さ寸法が1.0[mm]のものを用いるが、その他の材料を用いても構わない。基板34は、CEM-3相当以上の難燃性を有する材料を用いることが好ましい。LED基板30は、支持体23の平板部230に設置される。平板部230のLED基板30が設置される領域にはシリコーンを塗布し、LED基板30を押さえて、LED基板30を平板部230に密着させている。LED基板30の支持体23への設置方法は、シリコーンによる接着に限らず、支持体23のLED基板30が設置される領域の両サイドにおける複数箇所を爪状に切欠き、その爪を起こして基板34を抑え込んで支持体23に密着させてもよい。あるいは、LED基板30を支持体23にネジ止めしてもよい。要するに、LED基板30と支持体23が密着されていればよい。
【0030】
<支持体23とカバーとの嵌合構造>
ライトユニット2は細長いため、支持体23も細長く、支持体23の短手方向(幅方向)における両端の側部233と、側部233に嵌合する透光性樹脂カバー21のカバー側部211とは、長手方向(X方向)の帯状に長い部分(後述の図8の領域8)に渡って接触する。
【0031】
<ライトユニット2>
ライトユニット2における異音対策に特化して説明するため、ライトユニット2の挙動を中心に説明する。ライトユニット2のLEDパッケージ31の個数については、少ないものでは68個、多いものでは240個のLEDパッケージ31を、基板34にほぼ等間隔に表面実装している。ライトユニット2として、消費電力が約10W~約50W、色温度2700K~6500Kが光色の実用化されている。
【0032】
(占有率)
図7は、ライトユニット2の支持体23及びLED基板30を示す平面図と部分断面図、並びに、比較例1から比較例3の支持体23及びLED基板30を示す平面図と部分断面図である。図7の(d)が本開示の構成であり、(a)から(c)は、本開示(d)の比較例の構成である。図7の(b)の21.5[mm]が主要な比較例である。図7では、LED基板30を設置した支持体23の短手方向の寸法(幅)は56.0[mm]である。LED基板30の短手方向の寸法(幅)については、ライトユニット2(図7の(d))では32.0[mm]、比較例1から比較例3では、17.2[mm]、21.5[mm]、29.0[mm]である。ここで支持体23の短手方向の寸法(幅)に対する、LED基板30の短手方向の寸法(幅)の割合を、占有率と定義する。
32.0[mm]では、占有率=32.0[mm]/56.0[mm]=57%、
17.2[mm]では、占有率=17.2[mm]/56.0[mm]=31%、
21.5[mm]では、占有率=21.5[mm]/56.0[mm]=38%、
29.0[mm]では、占有率=29.0[mm]/56.0[mm]=52%、
となる。
LED基板30の短手方向の寸法(幅)が、支持体23の短手方向の寸法(幅)56.0[mm]に近づくと占有率は大きくなる。
【0033】
図7の(d)において、LED基板30の短手方向の寸法(幅)B1を、支持体23の短手方向の寸法(幅)B2で除した値は、0.55以上1.00未満であれば好適である。図7の(d)において、B1=32.0[mm]及びB2=56.0[mm]は一例であり、これに限定されない。上記のように0.55以上1.00未満であれば、異音の抑制に好適である。
なお、支持体23の支持体23の長手方向の寸法(長さ)は、500[mm]以上600[mm]以下が好ましい。
【0034】
<点灯していない場合の温度=周囲温度>
照明器具5のような照明器具では、点灯していない場合は発熱が無く、照明器具5を構成するいずれの部品も、概ね周囲温度に近い温度になっている。
【0035】
<点灯開始>
電源装置40が、器具1側から電線、コネクター等を経由して供給された外部電力からLEDパッケージ31を点灯させるための点灯電力に変換し、点灯電力が電源装置40からLEDパッケージ31に対して供給されるとLEDパッケージ31が点灯する。
図5に示すように、LED基板30には複数のLEDパッケージ31が表面実装されており、ライトユニット2が点灯状態になると、複数のLEDパッケージ31から光が照射されるとともに、複数のLEDパッケージ31は発熱を開始する。つまり、これら複数のLEDパッケージ31からは、点灯開始後に光と点灯動作にともなう動作熱を発生する。
【0036】
<異音>
照明器具の異音については、様々な検討がなされているが、照明器具5のような、LED照明器具においては、異音は、支持体23における側部233側と、支持体23の線膨張係数とは異なる線膨張係数を有する透光性樹脂カバー21とが接する領域で発生している事が判明している。図8は、透光性樹脂カバー21の支持体23への取り付けを模式的に示している。すなわち、異音は、図8に破線で示す領域8で発生している事が判明している。長尺状のライトユニット2では、LED基板30を設置するには、剛性の高い支持体23が用いられるが、その場合、は線膨張係数が「1.2×10-6m/℃」のSGCC鋼板(Steel Galvanized Cold Commercial)が使用されることが多い。また、透光性樹脂カバー21は、押出成形された後、端部に、端部カバー22を溶着したものが使用される。透光性樹脂カバー21の樹脂材料としては、例えば、線膨張係数が「30×10-6m/℃」のポリカーボネート、線膨張係数が「70×10-6m/℃」のアクリルなどが用いられる。
【0037】
<熱の伝導>
(1)電源装置40が、器具1側から電線、コネクター等を経由して供給された電力から生成した点灯電力を出力することにより、ライトユニット2は点灯状態となり、長尺状の基板34に実装された複数のLEDパッケージ31が点灯する。
(2)複数のLEDパッケージ31の点灯による光は、透光性樹脂カバー21を通して、ライトユニット2の外部へ放射され、例えば、照明光として供される。
(3)一方、複数のLEDパッケージ31は点灯動作にともない発熱する。
(4)LEDパッケージ31の熱(図8の太矢印)は、LEDパッケージ31からLED基板30、そして、LED基板30から支持体23へ伝導し、支持体23とLED基板30との接触部の温度を上昇させるとともに、支持体23の側部233へと伝導し、側部233と接触している透光性樹脂カバー21に伝わる。本開示では、熱は、支持体23の側部233から透光性樹脂カバー21のカバー係合部212への伝導し、支持体23の平板部230から透光性樹脂カバー21のカバー保持部213へ伝導する。
【0038】
このように、LEDパッケージ31の発熱による熱は、点灯後の経過時間とともに各部に伝導して行き、様々な部品の温度を上昇させる。しかし、およそ60分程度経過すると、ライトユニット2からの熱輻射と平衡し、各部温度は安定状態となる。
【0039】
<異音の発生>
異音の発生過程は以下のとおりである。図8を参照する。
(1)支持体23における長尺状の一対の側部233の温度上昇に伴い、支持体23及び透光性樹脂カバー21の各々の熱膨張が発生する。
(2)支持体23と透光性樹脂カバー21とは、側部233とカバー係合部212とが係合し、平板部230がカバー保持部213に保持されているが、支持体23と透光性樹脂カバー21との絶対的な熱膨張量の差により、両者の接触部分である界面に歪みが発生し弾性エネルギーが蓄積する。
(3)その歪みが界面の最大静止摩擦力を超えて弾性エネルギーが解放されたときに、例えば「ピシッ」という大きな異音が発生する。
【0040】
(実験結果)
図9は、異音発生現象を確認する比較実験の結果を示す。
(1)照明器具5は、全て直付形逆富士タイプ、短手方向の寸法(幅)150[mm]のものを用いた。
この照明器具5を実験室内の模擬天井に設置し、実験は、異音が発生しやすい周囲温度15℃一定の無風環境で行った。
(2)ライトユニット2は長手方向の寸法(長さ)が4ftタイプ(約1.2m)、全光束は全て6900lmとし、光源色は色温度5000Kで統一した。
(3)測定した各部の温度については、電源等他の熱源から十分離れた位置の支持体23のLED基板30が設置された面(第1面部231)とは反対側(第2面部232)に、熱電対を複数設置して計測した。
(3)このように各試験のライトユニット2を準備し、ライトユニット2を器具1に機械的及び電気的に接続し、通常の照明器具が使用される組合せで行われた。
測定結果は電源投入とともに上昇する各部の温度の推移を表している。
【0041】
図9に結果を示す実験では、支持体23には熱伝導率50[W/m・K]で厚さ寸法が0.4[mm]のSGCCを用いた。支持体23の短手方向の寸法(幅)は56.0[mm]と固定したまま、LED基板30の短手方向の寸法(幅)を17.2[mm]((a)比較例1)、21.5[mm]((b)比較例2)、29.0[mm]((c)比較例3)、32.0[mm]((d)実施の形態1の本開示)と変化させて、通常のライトユニット2として組み上げた。実験環境としては、異音が発生しやすい低温環境を模擬して周囲温度15℃の無風環境下で温度を測定した。また、LEDパッケージ31へはいずれも同じ約100mAの直流電流を供給し、約40Wが入力されている。(a)比較例1において、実線のAは、LED基板30の短手方向(Y方向)における中央位置の温度変化である。点線のBは、支持体23の短手方向(Y方向)における中央位置の温度変化である。一点鎖線のCは、支持体23の側部233の位置における温度変化である。一点鎖線のDは、透光性樹脂カバー21のカバー係合部212の位置における温度変化である。AからDは(b)比較例2、(c)比較例3、(d)実施の形態1の本開示、についても同じである。
【0042】
SGCCの熱伝導率は、概ね50[W/m・K]程度である。例えばアルミニウムは200[W/m・K]と熱伝導性が優れているため、よりピーク温度が更に低下し、逆にSUS材は概ね16~25[W/m・K]と熱伝導性が低く、よりピーク温度が上昇する傾向があった。
【0043】
LED基板30の短手方向の寸法(幅)21.5[mm]では、
厚さ寸法1.0[mm]、
長手方向の寸法(長さ)1190[mm]で、
LED基板30には、ほぼ均等に124個のLEDパッケージ31が表面実装されている。LED一つあたりの電力投入量は約0.3Wで、概ねLED基板30全体で約39Wが投入されている。電力投入開始とともにLEDは発光するとともに発熱し、その発熱が支持体23等を介して伝導し、60分程度経過するとほぼ安定する。この間に支持体23の熱膨張量と、透光性樹脂カバー21の熱膨張量の差が発生し、歪みが増大するとともに、両者の最大静止摩擦力以上となった時に歪みは解放され、異音が発生する。異音は経験的に35dB以上で不快感を生じるため、35dB以上の異音が発生した場合は市場でも不具合が発生すると判断され、照明器具の品質としては不適と判断した。このような判断に基づき、図9に示す実験結果では、異音が観側された。
【0044】
同様な構成で、図9の(d)は、LED基板30の短手方向の寸法(幅)のみを32.0[mm]としたものの測定結果である。
すなわち、LED基板30の短手方向の寸法(幅)32.0[mm]では、
厚さ寸法1.0[mm]、
長手方向の寸法(長さ)1190[mm]で、
LED基板30には、ほぼ均等に124個のLEDパッケージ31が表面実装されている。LED一つあたりの電力投入量は約0.3Wで、概ねLED基板30全体で約39Wが投入されている。支持体23の中央部の温度が安定時において図9の(b)のLED基板30の短手方向の寸法(幅)が21.5[mm]である従来例と比べて11.8℃低下しており、また支持体23の側部233の温度も低下している。安定時のLED基板30の温度も同様に12.8℃程度低下していた。
【0045】
つまり、LED基板30の短手方向の寸法(幅)を主要な比較例の21.5[mm]から、本開示である32.0[mm]へと大きくしたことによって、複数のLEDパッケージ31の発熱が広い面積で基板34内を伝導し、LEDパッケージ31の発熱をより広く支持体23に伝え、広い面積で支持体23に熱が伝導することが認めらた。よって、支持体23の短手方向の中央部の長手方向に渡る部位のピーク温度が低下し、支持体23の側部233の温度も低下し、透光性樹脂カバー21と側部233との嵌合部温度も低下する。この結果、支持体23及び透光性樹脂カバー21の長手方向の熱膨張量が小さくなる。従って、支持体23及び透光性樹脂カバー21の歪みが抑制され、最大静止摩擦力の限界を超えにくくなり、異音が抑制される。
【0046】
図10は、ライトユニット2の短手方向(図1のY方向)における、支持体23の温度分布を示している。温度の測定は、多くの熱電対を短手方向(幅方向)の全体に渡って列状に配置して行った。また、温度の測定は、点灯後1時間程度経過し、測定箇所の温度が十分安定した状態で行った。試験の際の周囲温度は15℃である。
【0047】
<支持体23の熱伝導率>
支持体23は、熱伝導率が14[W/m・K]以上300[W/m・K]以下の範囲の材料を含むことは好適である。
また、支持体23は、熱伝導率が50[W/m・K]以上300[W/m・K]以下の範囲の材料からなることが好適である。
【0048】
***実施の形態1の効果の説明***
以上の説明した通り、支持体23の側部233と、透光性樹脂カバー21のカバー係合部212との双方の、点灯後及び安定時温度を低下させて、温度の差を抑えることで、両者の熱膨張量の差を小さくできるため、異音発生が有効に抑制された。また、この手法では、異音解消のための新たな部品は不要であり、加工費が上昇することも無い。
【0049】
以上では点灯後の温度上昇の推移に関して説明したが、点灯している照明器具5を消灯させた際には、LEDパッケージ31の発熱が無くなる。このため、各部の温度が低下し、熱膨張していた支持体23及び透光性樹脂カバー21は、周囲温度に見合う寸法(長さ)まで収縮する際にも異音が発生する可能性がある。しかし、LED基板30の短手方向の寸法(幅)が本開示相当である場合は、上記の説明の通り、温度上昇が抑制される。このため、その歪み量の絶対値が小さくなるため、32.0[mm]以上の仕様では実質的に35dB以上の異音の発生は解消できた。
【0050】
また支持体23の熱伝導率を50[W/m・K]以上にすることで、より広い範囲に熱伝導が可能となる。このためLED基板30の短手方向(Y方向)における中央部の温度が低下するので、支持体23の辺部の温度も低下させることができる。
【0051】
支持体23の短手方向の寸法(幅)は67.0[mm]以下を想定している。支持体23の短手方向の寸法(幅)が67.0[mm]を超えるような、幅広のライトユニット2であれば、当然、支持体23の辺部の温度も下がり、従って、異音の課題も生じないと考えられるためである。
【0052】
以下、本開示の諸態様を付記としてまとめて記載する。
【0053】
[付記1]
長尺状をなし、複数のLEDパッケージが長手方向に沿って表面に設置されたLED基板と、
前記LED基板の裏面が当接して前記LED基板が設置される長尺状の平板部と、前記平板部の長手方向に沿う一方の側辺と他方の側辺のそれぞれから、前記平板部における前記LED基板が設置された設置面の裏面を基端として前記設置面と反対側に向かって起立する一対の側部とを有する支持体と、
前記LED基板を覆うカバー主部と、前記一対の側部と係合する一対のカバー係合部とを有する透光性樹脂カバーと、
を備え、
前記LED基板の短手方向の寸法を、前記支持体の短手方向の寸法で除した値が、0.55以上1.00未満であるライトユニット。
[付記2]
前記支持体の長手方向の寸法は、
500[mm]以上600[mm]以下である付記1に記載のライトユニット。
[付記3]
前記支持体は、
熱伝導率が14[W/m・K]以上300[W/m・K]以下の範囲の材料を含む付記1または付記2に記載のライトユニット。
[付記4]
前記支持体は、
熱伝導率が50[W/m・K]以上300[W/m・K]以下の範囲の材料からなる付記1から付記3のいずれか1つに記載のライトユニット。
[付記5]
付記1から付記4のいずれか1つに記載のライトユニットと、
前記ライトユニットに取り付けられる器具と、
を備えた照明器具。
【符号の説明】
【0054】
1 器具、103 底面部、11 板バネ、2 ライトユニット、21 透光性樹脂カバー、210 カバー主部、211 カバー側部、212 カバー係合部、213 カバー保持部、22 端部カバー、23 支持体、230 平板部、231 第1面部、232 第2面部、233 側部、30 LED基板、31 LEDパッケージ、34 基板、340 実装面、341 非実装面、40 電源装置、46 連結具、46a 開口、5 照明器具、7 天井、8 領域。
図1
図2
図3
図4
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図6
図7
図8
図9
図10