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特開2024-171169医用情報処理装置、医用情報処理システム及び医用情報処理方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024171169
(43)【公開日】2024-12-11
(54)【発明の名称】医用情報処理装置、医用情報処理システム及び医用情報処理方法
(51)【国際特許分類】
   G16H 80/00 20180101AFI20241204BHJP
【FI】
G16H80/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023088094
(22)【出願日】2023-05-29
(71)【出願人】
【識別番号】594164542
【氏名又は名称】キヤノンメディカルシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107582
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 毅
(74)【代理人】
【識別番号】100196047
【弁理士】
【氏名又は名称】柳本 陽征
(74)【代理人】
【識別番号】100202429
【弁理士】
【氏名又は名称】石原 信人
(72)【発明者】
【氏名】藤澤 恭子
【テーマコード(参考)】
5L099
【Fターム(参考)】
5L099AA01
(57)【要約】
【課題】患者ごとに適切な行動の提示をする。
【解決手段】医用情報処理装置は、記憶手段と、処理手段と、を備える。前記記憶手段は、臨床情報に基づいて行動方針を出力する仮想医師の行動を決定する複数の学習済みモデルを、前記行動方針の属性情報と対応づけて格納する。前記処理手段は、対象の仮想医師に対する信頼度評価と、前記学習済みモデルに対応づけられた属性情報と、を比較して、前記学習済みモデルのうち前記対象に適合する前記仮想医師に対応する前記学習済みモデルを選択し、前記対象の臨床情報を取得し、選択された前記学習済みモデルを用いて、前記対象の臨床情報に基づいた前記行動方針を提示する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
記憶手段と、処理手段と、
を備え、
前記記憶手段は、
臨床情報に基づいて行動方針を出力する仮想医師の行動を決定する複数の学習済みモデルを、前記行動方針の属性情報と対応づけて格納し、
前記処理手段は、
対象の仮想医師に対する信頼度評価と、前記学習済みモデルに対応づけられた属性情報と、を比較して、前記学習済みモデルのうち前記対象に適合する前記仮想医師に対応する前記学習済みモデルを選択し、
前記対象の臨床情報を取得し、
選択された前記学習済みモデルを用いて、前記対象の臨床情報に基づいた前記行動方針を提示する、
医用情報処理装置。
【請求項2】
前記属性情報は、
前記行動方針の根拠についての説明度合い、
前記行動方針を実施した場合の結果についての説明度合い、
前記行動方針を実施しなかった場合の結果についての説明度合い、又は、
前記対象の臨床情報から想定される症状についての説明度合い、
の少なくとも1つを含む、
請求項1に記載の医用情報処理装置。
【請求項3】
前記属性情報は、
前記行動方針の根拠、
前記行動方針を実施した場合の結果、
前記行動方針を実施しなかった場合の結果、又は、
前記対象の臨床情報から想定される症状、
についての説明のうち、説明する情報の説明量の配分、又は、説明する順序の少なくともいずれか一方を含む、
請求項2に記載の医用情報処理装置。
【請求項4】
前記属性情報は、前記行動方針を前記対象に提示する際の説明の口調の情報、を含む、
請求項1に記載の医用情報処理装置。
【請求項5】
前記属性情報は、仮想医師に対するアバターの情報を有し、
前記属性情報は、
前記アバターの性別、
前記アバターの人種、又は、
前記アバターの年齢、
の情報のうち少なくとも1つを含む、
請求項1に記載の医用情報処理装置。
【請求項6】
前記処理手段は、
前記信頼度評価に基づいて前記対象の前記仮想医師に対する信頼度が所定値よりも低い場合に、前記学習済みモデルを選択せずに、医療従事者から前記行動方針を取得し、前記対象に提示する、
請求項1に記載の医用情報処理装置。
【請求項7】
前記処理手段は、
過去に提示した前記行動方針のうち前記対象が実行した行動方針の情報を取得し、
前記提示した行動方針と、前記対象が実行した行動方針と、を比較して、前記対象の適合度を取得し、
前記適合度が所定適合度よりも低い場合に、前記信頼度評価を再取得し、
前記再取得した信頼度評価に基づいて、前記学習済みモデルを再選択する、
請求項1に記載の医用情報処理装置。
【請求項8】
前記処理手段は、
過去に前記行動方針を提示した前記対象に対して、前記信頼度評価を再取得し、
前記再取得した信頼度評価に基づいて、前記学習済みモデルを再選択する、
請求項1に記載の医用情報処理装置。
【請求項9】
前記処理手段は、
過去に前記行動方針を提示した前記対象の行動が変容しない場合に、前記対象の医師に対する価値観指標を取得する、
請求項1に記載の医用情報処理装置。
【請求項10】
1又は複数の情報処理装置によって、
臨床情報に基づいて行動方針を出力する仮想医師の行動を決定する複数の学習済みモデルを、前記行動方針の属性情報と対応づけて格納し、
対象の仮想医師に対する信頼度評価と、前記学習済みモデルに対応づけられた属性情報と、を比較して、前記学習済みモデルのうち前記対象に適合する前記仮想医師に対応する前記学習済みモデルを選択し、
前記対象の臨床情報を取得し、
選択された前記学習済みモデルを用いて、前記対象の臨床情報に基づいた前記行動方針を提示する、
医用情報処理システム。
【請求項11】
1又は複数の情報処理装置によって、
臨床情報に基づいて行動方針を出力する仮想医師の行動を決定する複数の学習済みモデルを、前記行動方針の属性情報と対応づけて格納し、
対象の仮想医師に対する信頼度評価と、前記学習済みモデルに対応づけられた属性情報と、を比較して、前記学習済みモデルのうち前記対象に適合する前記仮想医師に対応する前記学習済みモデルを選択し、
前記対象の臨床情報を取得し、
選択された前記学習済みモデルを用いて、前記対象の臨床情報に基づいた前記行動方針を提示する、
医用情報処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書及び図面に開示の実施形態は、医用情報処理装置、医用情報処理システム及び医用情報処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
病状を認識している患者自身が医師や受診診療科を探索する手助けをするマッチングサービスが展開されている。AI (Artificial Intelligence) 技術の発展により、高血圧患者の生活改善や喫煙指導にAIが導入され、ソフトウェア医用デバイス (SaMD: Software as a Medical Device) として認められ始めている。この技術の発展に伴い、かかりつけ医の代わりに早期の診断・スクリーニングがAIドクターにより行われることが増えてくると考えられる。
【0003】
しかしながら、自覚症状が出づらい、特に早期の自覚症状が感知しづらく、医師をマッチングするための十分な情報を患者自身が医師の示唆なしにアウトプットすることが難しい場合や、診断等の医療に関する情報に対する患者のAI自体の信頼度又は何らかの患者の感情がある場合には、AIドクターによる判断を行うことが、例えば、患者がAIを信頼しないといった理由から困難である可能性が高い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特表2022-507116号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本明細書及び図面に開示の実施形態が解決しようと課題の1つは、患者ごとに適切な行動の提示をすることである。ただし、本明細書及び図面に開示の実施形態により解決しようとする課題は、上記課題に限られない。後述する実施形態に示す各構成による各効果に対応する課題を他の課題として位置づけることもできる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態に係る医用情報処理装置は、記憶手段と、処理手段と、を備える。前記記憶手段は、臨床情報に基づいて行動方針を出力する仮想医師の行動を決定する複数の学習済みモデルを、前記行動方針の属性情報と対応づけて格納する。前記処理手段は、対象の仮想医師に対する信頼度評価と、前記学習済みモデルに対応づけられた属性情報と、を比較して、前記学習済みモデルのうち前記対象に適合する前記仮想医師に対応する前記学習済みモデルを選択し、前記対象の臨床情報を取得し、選択された前記学習済みモデルを用いて、前記対象の臨床情報に基づいた前記行動方針を提示する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】一実施形態に係る医用情報処理システムを模式的に示す図。
図2】一実施形態に係る医用情報処理装置を模式的に示すブロック図。
図3】一実施形態に係る医用情報処理装置の処理の一例を示すフローチャート。
図4】一実施形態に係る医用情報処理装置の処理の一例を示すフローチャート。
図5】一実施形態に係る医用情報処理装置の処理の一例を示すフローチャート。
図6】一実施形態に係る医用情報処理装置の処理の一例を示すフローチャート。
図7】一実施形態に係る医用情報処理装置の医師/仮想医師の設定の一例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照して実施形態について説明する。本開示において、ソフトウェアによる情報処理がハードウェア資源を用いて具体的に実現される形態については、このソフトウェアは、プログラムにより実行され、プログラム自体又はプログラムを格納した非一時的コンピュータ可読媒体により実施することができる。また、本明細書及び図面における各種データにおいて、主に情報処理装置により用いられるものは、典型的にはデジタルデータである。
【0009】
本開示において実施形態の説明中において「以下」「より大きい/高い」との文言を用いる場合、それぞれ「未満」「以上」と読み替えをすること、及び、逆の読み替えをすることができる。これらの文言により、本開示において説明する技術範囲が限定されるものではないことに留意されたい。
【0010】
(第1実施形態)
図1は、一実施形態に係る医用情報処理システムの一例を模式的に示す図である。医用情報処理システム 1 は、例えば、サーバと、クライアントPCと、を備える。医用情報処理システム 1 は、クライアントPCの代わりに、又は、クライアントPCと併せて、スマートフォン等の端末装置、又は、スマートウォッチ等のウェアラブルデバイスを備えてもよい。
【0011】
代表的には、クライアントPC、携帯端末又はウェアラブルデバイスは、サーバからの情報に基づいて処理を実行するが、サーバを用いずにスタンドアロンで以下に説明する処理を実行してもよい。以下においては医用情報処理装置の動作及び処理を説明するが、この医用情報処理装置は、代表的には、医用情報処理システム 1 におけるサーバであるが、これに限定されず、サーバとともに協働して動作するクライアントPC等、又は、単独で動作するクライアントPC等のことを指してもよい。すなわち、本開示における医用情報処理装置は、サーバ、クライアントPC、携帯端末若しくはウェアラブルデバイス又はこれらの要素の少なくともいずれか一部の組み合わせとして理解されることに留意されたい。
【0012】
また、複数のサーバ、複数のクライアントPC、複数の携帯端末若しくは複数のウェアラブルデバイス、又は、他のデバイスが医用情報処理システム 1 に含まれていてもよく、医用情報処理装置の定義は、これらのデバイスの1つであってもよいし複数を組み合わせた概念とすることもできる。すなわち、医用情報処理システム 1 において、以下に説明する処理を実現できるデバイスを医用情報処理装置と定義することができる。
【0013】
図2は、一実施形態に係る医用情報処理装置の一例を模式的に示すブロック図である。医用情報処理装置 10 は、入出力インタフェース (以下、入出力I/F 100 と記載する) と、記憶部 102 と、処理部 104 と、を備える。
【0014】
医用情報処理装置 10 は、医用情報処理システム 1 の他のデバイスと協働して、又は、単独で、患者 (対象) の個人個人に対して適切な仮想ドクター (AIドクター) を形成し、仮想ドクターから対象へと適切な行動を提示する装置である。
【0015】
入出力I/F 100 は、医用情報処理装置 10 の内部と外部とにおいて情報を入出力するインタフェースである。入出力I/F 100 は、例えば、外部の入出力モジュールとの接続をする通信インタフェース、外部のネットワークと接続する通信インタフェース、ユーザからの入力を受け付けるキーボード、マウス、トラックボール、タッチパッド等、又は、ユーザへと出力するディスプレイ、スピーカ等のうち少なくとも1つのインタフェースを備えていてもよい。入出力I/F 100 は、本開示において、入出力手段として機能することができる。
【0016】
記憶部 102 は、医用情報処理装置 10 の動作に必要となるデータ、動作の結果出力されたデータが格納される。医用情報処理装置 10 は、必要に応じて入出力I/F 100 を介して入力されたデータを記憶部 102 に格納することができる。また、医用情報処理装置 10 は、記憶部 102 に格納されているデータを必要に応じて入出力I/F 100 を介して出力することができる。記憶部 102 は、本開示において、記憶手段として機能することができる。
【0017】
処理部 104 は、医用情報処理装置 10 の動作における処理を実行する。処理部 104 は、例えば、専用の処理回路、又は、汎用の処理回路を備えて形成されていてもよい。処理部 104 は、以下に説明する情報処理を実行するとともに、医用情報処理装置 10 を正常に動作させる制御をすることもできる。処理部 104 は、本開示において、処理手段として機能することができる。
【0018】
医用情報処理装置 10 は、上記の構成において、以下の処理を実現する。
【0019】
図3は、一実施形態に係る医用情報処理装置の処理の一例を示すフローチャートである。
【0020】
処理部 104 は、行動方針を対象に提示する (S10) 。処理部 104 は、例えば、ウェアラブルデバイスから取得した臨床情報、又は、対象が入力した情報等の対象の症状に関連する情報を取得し、この臨床情報に基づいて、行動方針を提示する (S10) 。 S10 の処理は、例えば、過去において医用情報処理システム 1 から提示された処理であってもよい。
【0021】
処理部 104 は、 S10 において出力した行動方針に対する対象の信頼度評価を実行する (S12) 。処理部 104 は、例えば、入出力I/F 100 を介してユーザからアンケート結果を取得することで、信頼度評価を取得することができる。
【0022】
信頼度の評価は、例えば、「どのくらいこの結果を信じることができるか。」「信じるの理由。」「信じる以外の理由 (例えば、リアルの医師ではないから) 。」「アドバイス (提示された運動習慣、食事制限等の行動方針) を実行しようと思うか。」「検査に行こうと思うか。」「医師に問い合わせしようと思うか。」といったアンケートの回答から取得することができる。もちろん、評価の基準となるアンケートはこれらに限定されるものではなく、さらに多種の質問が含まれていてもよい。
【0023】
処理部 104 は、例えば、上記のような質問に対して、2択以上の選択肢を準備しておきそれぞれの選択肢に対する点数を設定し、質問に対する重み付けと、選択肢に設定されているスコアとに基づいて評価値を算出することで、信頼度評価を取得する。処理部 104 は、例えば、評価値として重み付け和、重み付け平均を算出する。処理部 104 は、必要に応じて、取得した評価値を5段階評価等に変換してもよい。
【0024】
処理部 104 は、 S12 で取得した評価値を仮想医師に対する信頼度として、仮想医師を利用するか否かを判定する (S14) 。処理部 104 は、例えば、評価値を所定値と比較して、評価値の方が大きいかを判定することで信頼度評価から取得された対象の仮想医師に対する全体的な評価に対して判定を実行する。
【0025】
評価値が所定値よりも大きい場合 (S14: YES) 、仮想医師を利用すると判定し、 S12 において複数の項目から取得された信頼度評価に基づいて利用する仮想医師を決定する (S16) 。
【0026】
仮想医師は、例えば、学習済みモデルにより定義される。この仮想医師を形成する学習済みモデルは、記憶部 102 に格納されている学習済みモデルのパラメータ、ハイパーパラメータ等を参照することで形成される。この学習済みモデルは、当該学習済みモデルが定義する仮想医師の属性情報を有し、又は、属性情報と紐付けられた記憶部 102 に格納される。
【0027】
属性情報を取得するための信頼度評価は、 S12 で算出した評価値の一部に用いてもいし、評価値を用いていない信頼度評価に基づいて、属性情報を取得してもよい。なお、この信頼度評価を入力すると属性情報を取得する学習済みモデルを用いることもできる。
【0028】
属性情報は、限定されない例として、「行動方針の根拠についての説明度合い」「行動方針を実施した場合の結果についての説明度合い」「行動方針を実施しなかった場合の結果についての説明度合い」「対象の臨床情報から想定される症状についての説明度合い」の情報のうち少なくとも1つを含む。処理部 104 は、これらの属性情報についての程度を S12 において取得した信頼度評価から算出する。ここで、「度合い」は、該当する説明の深さ、説明の長さ、説明の頻度等、説明に関してどの程度の情報を出力するかの尺度である。
【0029】
また、属性情報はさらに、限定されない例として、上記のそれぞれの項目についての説明における説明の長さ、及び/又は、説明の順序の情報を含んでもよい。この属性情報を用いることで、例えば、対象の信頼度評価に基づいて、行動方針を実施した場合の結果を、行動方針の根拠よりも長く説明する、といった対象に合わせた説明順序、説明の専門性の深さ等を適切に設定することができる。
【0030】
また、属性情報はさらに、行動方針を提示する際の仮想医師の口調の情報を含んでいてもよい。この属性情報を対象の信頼度に適合させて変化させることで、対象の仮想医師のアドバイスに対する聞き具合を変化させることができる。
【0031】
処理部 104 は、 S12 でユーザから受け付けたアンケートの結果に基づいて、対象に適切な属性情報を有する仮想医師を設定する (S18) 。
【0032】
図4は、一実施形態に係る仮想医師の設定処理の一例を示すフローチャートである。
【0033】
処理部 104 は、取得した属性情報に基づいて、対象の信頼度評価において対象が望んでいる医師像に近い仮想医師を選択する (S180) 。換言すると、処理部 104 は、対象の仮想医師に対する信頼度評価と、仮想医師を形成する学習済みモデルに対応づけられた属性情報とを比較し、記憶部 102 に格納されている複数の学習済みモデルから対象に適合する仮想医師を形成するための学習済みモデルを選択する。この処理により、処理部 104 は、行動方針を提示する仮想医師を選択することができる。
【0034】
処理部 104 は、 S12 で算出した信頼度の評価値に基づいて、仮想医師にアバターを設定するか否かを判定する (S182) 。処理部 104 は、例えば、評価値が所定値よりも高い場合 (S182: 高い) 、アバターを設定せず (S184) 、評価値が所定値以下である場合 (S182: 低い) 、アバターを設定する (S186) 。
【0035】
アバターは、仮想医師の分身となるキャラクターである。評価値が高い、すなわち、仮想医師に対する信頼度が高い対象に対しては、文字情報、音声情報で淡々と情報を出力することで、対象は、提示された行動方針にしたがった行動変容を期待することができる。このため、医用情報処理システム 1 は、信頼度の高い対象に対してはアバターを設定しないと判定することができる。
【0036】
一方で、仮想医師をそこそこ信頼しているものの、評価値が低い対象に対しては、実際の医師に近い、対象にとっても身近な存在として仮想医師を感じてもらえるように、アバターを設定する。
【0037】
アバターの情報は、属性情報に含まれる情報であってもよい。また、アバターの情報は、例えば、アバターの性別、人種又は年齢といった情報を含んでもよい。信頼度評価に基づいて、処理部 104 は、対象ごとにどのような属性のアバターを設定するかを決定することができる。例えば、対象と同じ性別、人種のアバターを用いることで、対象がアバターからの発言内容をより親密的に、又は、より信用して聞けるといった効果が期待できる。また、アバターを対象が選択することもできる。
【0038】
処理部 104 は、例えば、年上/同年代の医師からのアドバイスを受け入れやすい、同性/異性からのアドバイスを受け入れやすい、同じ人種/異なる人種からのアドバイスを受け入れやすい、といった情報を対象ごとの信頼度評価から取得して、属性情報に基づいて適切なアバターを設定することができる。信頼度評価から対象に適しているアバターの情報の取得は、ルールベースの処理であってもよいし、あらかじめ学習されている学習済みモデルを用いた処理であってもよい。
【0039】
処理部 104 は、 S18 において上記の処理を実行し、対象に適した仮想医師を設定する。なお、 S182 の分岐及び S184 はなくてもよく、仮想医師を利用する全ての対象に対して、 S186 のアバターを設定する処理を実行してもよい。
【0040】
図3に戻り、処理部 104 は、 S18 において設定された属性情報に基づいた仮想医師を介して、対象に行動方針を提示する (S20) 。処理部 104 は、患者の臨床情報に基づいた行動方針を提示する。 S10 の処理が過去の処理である場合、処理部 104 は、現在の患者の臨床情報を新たに取得し、新たな行動方針を対象に出力する。行動方針は、上述したように運動習慣、食事制限といった方針であってもよいし、検査、診療等を促す方針であってもよい。
【0041】
処理部 104 は、 S18 により設定された仮想医師を形成する学習済みモデルに対象の臨床情報を入力することで、対象が望ましいと感じる仮想医師からの行動方針をアドバイスとして提示することができる。
【0042】
なお、処理部 104 は、行動方針の取得までと、行動方針に基づいたアドバイスの提示とを別のモデルを用いて取得することもできる。すなわち、処理部 104 は、対象の臨床情報を、行動方針を出力する学習済みモデルに入力して対象の臨床情報に基づいた行動方針を取得し、その後に、選択された仮想医師に対応する学習済みモデルに行動方針を入力することで、対象に提示するアドバイスを取得する、といった2段構成の学習済みモデルを用いた処理をしてもよい。
【0043】
逆に、処理部 104 は、信頼度評価の取得からアドバイスの提示までを1つの学習済みモデルにより実行してもよい。すなわち、処理部 104 は、信頼度評価の基準となるアンケートの回答結果と臨床情報とを同じ学習済みモデルに入力することで、行動方針を示す適切な仮想医師からのアドバイスを取得してもよい。
【0044】
一方で、 S14 において評価値が所定値以下である場合 (S14: NO) には、処理部 104 は、仮想医師を利用しない処理へと移行する (S22) 。この場合、医用情報処理システム 1 は、学習済みモデルを洗濯せずに医療従事者からの行動方針を提示する。
【0045】
図5は、一実施形態に係る仮想医師を利用しない処理を示すフローチャートである。
【0046】
処理部 104 は、仮想医師を利用しないと判定した場合、臨床情報を医療従事者に提示し、医療従事者からの説明をするフェーズへと移行する (S220) 。一例として、処理部 104 は、医療従事者が判断した結果を受信し、この受信した結果を対象へと提示する。
【0047】
このタイミングにおいて、処理部 104 は、入出力I/F 100 を介して、対象が医療従事者又は仮想医師からの何らかの医療に関するアドバイスを受ける場合に、何を優先するかに関する情報を取得することができる (S222) 。優先事項は、例えば、医療従事者の経験、専門性、又は、対象の居住地に近い専門的な医療従事者、といった事項である。
【0048】
また、処理部 104 は、入出力I/F 100 を介して、対象の思考や嗜好を取得し、対象がどのようなクラスタに属するかを判定してもよい (S224) 。この処理は、信頼度評価と同じアンケートの回答結果に基づいて、図3における S12 の処理と同じタイミングで実行されてもよい。
【0049】
処理部 104 は、優先事項、思考、嗜好等に基づいて、データベースに適合する医師 (医療従事者) が存在するかを確認し、マッチングをし (S226) 、マッチングした医師 (医療従事者) に関する情報を対象に提示することができる (S228) 。
【0050】
このように、対象の仮想医師に対する信頼度が低い場合には、医療従事者からの問診やアドバイスをしたり、また、対象の属性に基づいた医師を含む医療従事者をマッチングして提示したりすることも可能である。
【0051】
以上のように、本実施形態によれば、対象の仮想医師に対する信頼度に基づいて、適切な仮想医師を選択し、また、必要に応じてアバターを適用したり、リアルの医師を紹介したりすることが可能となる。このような医用情報処理システム 1 によれば、対象に対する不安を取り除き、仮想医師に対する信頼度を向上させて提示された行動方針に基づいた対象の行動変容を促すことができる。
【0052】
(第2実施形態)
本実施形態ではさらに、過去に提示された行動方針に基づいて対象の行動変容が起こったか否かに基づいた仮想医師による行動方針の提示をする医用情報処理システム 1 について説明する。
【0053】
図6は、一実施形態に係る医用情報処理装置 10 の処理を示すフローチャートである。本フローチャートの前段階として、過去に医用情報処理システム 1 に属する同一の又は異なる医用情報処理装置 10 から対象に対して行動方針を提示している。
【0054】
処理部 104 は、過去に提示された行動方針についての対象の行動変容があるか否かの情報を取得する (S24) 。この処理は、一例としては、対象自らが入出力I/F 100 を介して少なくとも行動情報を医用情報処理装置 10 に入力してもよいし、別の例としては、対象が普段身につけているウェアラブルデバイス等を介して少なくとも行動情報を医用情報処理装置 10 が取得してもよい。処理部 104 は、行動変容を取得するために、過去に対象に提示した行動方針の情報を取得してもよい。
【0055】
行動情報は、例えば、PHR (Personal Health Record) に基づいた情報であってもよい。処理部 104 は、例えば、PHRを参照することで、運動、食事に変化があったか、又は、医師による診断を受けたか、といった情報を取得することができる。このPHRの情報は、例えば、ウェアラブルデバイスによる心拍等の情報、対象自身が撮影した口にしたものの画像等により取得されたものであってもよい。
【0056】
処理部 104 は、先に示されている行動方針と、取得した行動情報と、を比較して、対象がどの程度示された行動方針に従って行動を変容させたかの情報を行動変容に関する情報、例えば、行動方針に対する適合度として取得する。
【0057】
処理部 104 は、例えば、先に提示されている行動方針が対象に運動を促すことを含む方針である場合には、アドバイスにしたがって対象が運動を開始したか、運動量を多くした/少なくしたか、といった情報から、運動に関する行動変容の情報を取得する。処理部 104 は、例えば、先に提示されている行動方針が対象の食生活改善を含む方針である場合には、アドバイスにしたがって対象が食生活を変化させたか、といった情報から、食生活に関する行動変容の情報を取得する。処理部 104 は、例えば、先に提示されている行動方針が医師又は医療従事者に相談する、又は、診断/検査を受けるといったアドバイスを含む方針である場合には、対象が実際に医師等に相談したか、又は、来院して診断/検査を受けたか、といった情報から、行動変容があったか否かを取得する。
【0058】
処理部 104 は、必要に応じて対象に再度アンケートを実行し、信頼度評価を再取得してもよい (S26) 。この処理は、必須ではなく、先の行動方針に対して示されたアンケート結果から取得された信頼度評価及び評価値を用いることもできる。処理部 104 は、一例として、適合度が所定値適合度よりも低い場合に、この S26 の信頼度評価を再取得する処理を実行してもよい。
【0059】
また、別の例として、対象の行動情報を所定期間においてモニタリングしておき、この所定期間の間に対象の行動変容が見られない場合に信頼度を再評価する処理を実行してもよい。この場合、処理部 104 は、図5の S222 の優先事項の取得と同様に、「責任感がある医師」「説明を十分に行ってくれる医師」「話しやすい医師」「人柄が穏やかな医師」「住居または勤務場所、学校等から近い場所で診断を受けることができる医師」といった価値観の指標となる項目を含むことができる。
【0060】
また、処理部 104 は、二度目以降の行動方針を提示する場合には、上記の信頼度の他に、別の項目を有する評価をすることもできる。別の評価基準は、例えば、対象の家族歴 (家族、親族に類似の症状の人がいる/いない) 、対象の病歴、対象の学歴、対象の現在又は過去の職業といった情報から取得されてもよい。この別の評価基準は、医師/仮想医師が提示する行動方針に対する対象の真摯さと言い換えてもよく、この真摯さと、上記に挙げた信頼度と、に基づいて、再度の行動方針を提示する際の指標、尺度とすることができる。すなわち、処理部 104 は、信頼度と、この真摯さ (真摯度) と、に基づいて医師/仮想医師を決定する態様であってもよい。
【0061】
処理部 104 は、対象の性格、思考分類をアンケート、問診、モニタリング結果から分析してもよい。この分析は、ルールベースにしたがった処理、又は、学習済みモデルでの出力で実現されてもよい。再評価した信頼度は、仮想医師の属性決定又はリアルの医師のマッチングに反映してもよい。
【0062】
処理部 104 は、先の行動方針に対する信頼度又は再評価した信頼度と、適合度と、に基づいて (S28) 、医師/仮想医師を設定し、行動方針を提示することができる。この判定は、例えば、信頼度と適合度、場合によってはさらに真摯度を含んで決定することができる。
【0063】
処理部 104 は、例えば、行動変容が発生していない場合 (適合度が低い場合) 、信頼度と、真摯度と、を再評価し、対象がより行動変容を起こしやすくなる医師/仮想医師の再設定をする。処理部 104 は、行動変容が適切にできている場合 (適合度が高い場合) 、前回の行動方針に関するアドバイスを行った医師/仮想医師と同じ医師/仮想医師を対象に設定してもよい。仮想医師を再選択する場合には、処理部 104 は、上記の信頼度、真摯度と、属性情報とを比較して適切な学習済みモデルを抽出することで、仮想医師を再選択する。
【0064】
図7は、一実施形態における信頼度と、真摯度に基づいた仮想医師の選択の限定されない一例を示す図である。処理部 104 は、信頼度と、真摯度と、を適切な尺度により評価する。処理部 104 は、例えば、信頼度に対するアンケートの回答結果と、真摯度に対するアンケートの回答結果と、から、信頼度及び真摯度についてそれぞれ段階を有する評価をする。信頼度の評価は、前述と同様に重み付け等により実行される。真摯度に対しても、同様の重み付け演算を定義して実行して、高/中/低といった評価付けをすることができる。
【0065】
また、これらの評価は、学習済みモデルにより実行されてもよい。例えば、アンケートの結果を入力すると、評価度 (尺度) が出力される学習済みモデルを用いて、信頼度又は真摯度のうち少なくも1つを取得する構成であってもよい。
【0066】
一例として、信頼度、真摯度がともに高い場合には、処理部 104 は、判断根拠を示した説明をする仮想医師を設定する。信頼度、真摯度がともに中程度である場合には、処理部 104 は、対処しない場合の将来像を出力した説明をする仮想医師を設定する。信頼度が低く、真摯度が中程度である場合には、処理部 104 は、アバターを設定した仮想医師を設定する。信頼度、真摯度がともに低い場合には、仮想医師ではなく、リアルな医療従事者を設定する。
【0067】
図7の例は一例であり、信頼度、真摯度の評価及び対応する医師/仮想医師の設定は、これらに限定されるものではない。例えば、一般的に信頼度と真摯度とはある程度の相関を有しているが、信頼度は高いが真摯度が低いといったこの評価に当てはまらない対象も一定数いると考えられる。このような対象に対しては、このような仮想医師のアドバイスは受け入れると思われる一方でアドバイスの仕方が望ましいものではないとして、前回とは異なる属性を有する仮想医師を設定する、といった処理をすることもできる。
【0068】
以上のように、本実施形態によれば、仮想医師に対する信頼度に基づいて、行動変容をすることができたか、を判定し、行動変容ができなかった (適合度が低い) 場合には、仮想医師に対する信頼度と真摯度とに基づいて、仮想医師を再設定することで、対象に行動変容を促すことができる。
【0069】
前述の実施形態において、いくつかの処理において学習済みモデルを利用する態様について説明したが、これらの複数の処理における学習済みモデルは、その一部又は全部が合成されて適切な出力をする1つの学習済みモデルであってもよいし、個々の処理を実行する学習済みモデルであってもよい。
【0070】
上記の実施形態では、入力インタフェースは、各種設定等を行うためのトラックボール、スイッチボタン、マウス、キーボード、操作面へ触れることで入力操作を行うタッチパッド、表示画面とタッチパッドとが一体化されたタッチスクリーン、光学センサを用いた非接触入力回路、及び音声入力回路等によって実現することができる。入力インタフェースは、制御回路に接続されており、操作者から受け取った入力操作を電気信号へ変換し制御回路へと出力する。なお、本明細書において入力インタフェースは、マウス、キーボード等の物理的な操作部品を備えるものだけに限られない。例えば、装置とは別体に設けられた外部の入力機器から入力操作に対応する電気信号を受け取り、この電気信号を制御回路へ出力する電気信号の処理回路も入力インタフェースの例に含まれる。
【0071】
また、上記の実施形態では、情報処理機能の各処理機能は、コンピュータによって実行可能なプログラムの形態で記憶回路に記録されている。処理回路は、プロセッサを含むことができる。例えば、処理回路は、プログラムから記憶回路を読み出し、実行することで各プログラムに対応する機能を実現する。換言すると、各プログラムを読み出した状態の処理回路は、図面に示した処理回路内に示されている各機能を有する。なお、図面においては、単一のプロセッサにおいてそれぞれの処理機能が実現されるものとして説明したが、複数の独立したプロセッサを組み合わせて処理回路を構成し、各プロセッサがプログラムを実行することにより機能を実現してもよい。また、図面においては単一の記憶回路が各処理機能に対応するプログラムを記憶するものとして説明したが、複数の記憶回路を分散して配置し、処理回路は、それぞれの記憶回路から対応するプログラムを読み出す構成としてもよい。
【0072】
上記説明では、「プロセッサ」が各機能に対応するプログラムを記憶回路から読み出して実行する例を説明したが、実施形態はこれに限定されない。「プロセッサ」という文言は、例えば、CPU (Central Processing Unit) 、GPU (Graphics Processing Unit) 、特定用途向け集積回路 (Application Specific Integrated Circuit: ASIC) 、プログラマブル論理デバイス (例えば、単純プログラマブル論理デバイス (Simple Programmable Logic Device: SPLD) 、復号プログラマブル論理デバイス (Complex Programmable Logic Device: CPLD) 及びフィールドプログラマブルゲートアレイ (Field Programmable Gate Array: FPGA)) 等の回路を意味することができる。プロセッサが例えばCPUである場合、プロセッサは、記憶回路に保存されたプログラムを読み出して実行することで機能を実現する。一方、プロセッサがASICである場合、記憶回路にプログラムを保存する代わりに、当該機能がプロセッサの回路内に論理回路として直接組み込まれる。なお、本実施形態の各プロセッサは、プロセッサごとに単一の回路として構成される場合に限られず、複数の独立した回路を組み合わせて1つのプロセッサとして構成し、その機能を実現してもよい。さらに、図面における複数の構成要素を1つのプロセッサへ統合してその機能を実現してもよい。
【0073】
以上説明した少なくとも1つの実施形態によれば、患者ごとに適切な行動の提示をするドクター又はAIドクターをマッチングすることができる。また、患者ごとに適切に行動を変容するような方針の提示をすることができる。例えば、対象がSaMDを用いる場合に、SaMDからのアドバイスを無視して疾病状態を放置させずに、適切な行動変容を起こさせることを促進することができる。この結果、疾病を早期のうちに対照することが可能となる。
【0074】
いくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これらの実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更、実施形態同士の組み合わせを行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0075】
1: 医用情報処理システム、
10: 医用情報処理装置、
100: 入出力I/F、
102: 記憶部、
104: 処理部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7