(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024171193
(43)【公開日】2024-12-11
(54)【発明の名称】高分子樹脂含浸フィルムの製造方法及び製造装置
(51)【国際特許分類】
B05D 3/12 20060101AFI20241204BHJP
B05D 7/00 20060101ALI20241204BHJP
B05C 5/02 20060101ALI20241204BHJP
B05C 11/10 20060101ALI20241204BHJP
【FI】
B05D3/12 A
B05D7/00 A
B05D3/12 C
B05C5/02
B05C11/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023088140
(22)【出願日】2023-05-29
(71)【出願人】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100132241
【弁理士】
【氏名又は名称】岡部 博史
(74)【代理人】
【識別番号】100113170
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 和久
(72)【発明者】
【氏名】土田 修三
(72)【発明者】
【氏名】上山 康博
(72)【発明者】
【氏名】山本 曜子
(72)【発明者】
【氏名】関 良平
【テーマコード(参考)】
4D075
4F041
4F042
【Fターム(参考)】
4D075AC02
4D075AC80
4D075AC88
4D075AC91
4D075AC93
4D075AC95
4D075AE03
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4D075BB56Z
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4D075EC30
4F041AA12
4F041AB01
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4F041BA34
4F041BA56
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4F042AA22
4F042AB00
4F042BA06
4F042BA25
4F042DB00
4F042DF19
4F042DF23
4F042ED02
(57)【要約】
【課題】多孔性シートに機能性高分子が含浸された高分子樹脂含浸フィルムを連続的かつ安定に製造する製造方法および製造装置を提供する。
【解決手段】高分子樹脂含浸フィルムの製造方法は、シート状の基材と高分子樹脂含有多孔性シートとの積層構造からなる高分子樹脂含浸フィルムの製造方法であって、高分子樹脂含有溶液をシート状の基材上に塗布し塗工膜を形成する塗工工程と、塗工膜の液面に多孔性シートを積層させ、多孔性シートに高分子樹脂含有溶液を浸透させ、基材、高分子樹脂含有溶液、及び多孔性シートの順に積層された積層体を形成し、多孔性シートへ高分子樹脂含有溶液を含浸させる含浸工程と、積層体を減圧雰囲気に晒すことで含浸を促進させる減圧工程と、を含む。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シート状の基材と高分子樹脂含有多孔性シートとの積層構造からなる高分子樹脂含浸フィルムの製造方法であって、
高分子樹脂含有溶液をシート状の基材上に塗布し、塗工膜を形成する塗工工程と、
前記塗工膜の液面に多孔性シートを積層させ、前記多孔性シートに前記高分子樹脂含有溶液を浸透させ、前記基材、前記高分子樹脂含有溶液、及び前記多孔性シートの順に積層された積層体を形成し、多孔性シートへ高分子樹脂含有溶液を含浸させる含浸工程と、
前記積層体を減圧雰囲気に晒すことで含浸を促進させる減圧工程と、
を含む、高分子樹脂含浸フィルムの製造方法。
【請求項2】
前記積層体の減圧において、前記積層体の多孔性シート側を減圧雰囲気にする、
請求項1に記載の高分子樹脂含浸フィルムの製造方法。
【請求項3】
高分子樹脂含浸フィルムを連続的に製造する高分子樹脂含浸フィルムの製造装置であって、
連続走行するシート状の基材を搬送する基材搬送機構と、
高分子樹脂含有溶液を前記基材上に塗布し、塗工膜を形成する塗工機構と、
前記塗工膜の液面に連続走行する多孔性シートを積層させ、前記基材、前記高分子樹脂含有溶液、及び前記多孔性シートの順に積層された積層体を形成する多孔性シート積層機構と、
前記積層体を減圧処理する減圧チャンバーと、
を備える、高分子樹脂含浸フィルムの製造装置。
【請求項4】
前記減圧チャンバーは、前記積層体の多孔性シート側を減圧させる、
請求項3に記載の高分子樹脂含浸フィルムの製造装置。
【請求項5】
前記減圧チャンバーを通過する前記積層体の前記基材側に当接し、前記基材を支持する基材支持体をさらに含む、請求項3又は4に記載の高分子樹脂含浸フィルムの製造装置。
【請求項6】
前記減圧チャンバーの前記多孔性シートに面する開口部において、前記多孔性シートに対して概平行に設置された整流板をさらに含む、請求項3又は4に記載の高分子樹脂含浸フィルムの製造装置。
【請求項7】
前記整流板は、複数枚の重なった板状体を含み、
前記板状体の重なり量を変化させることで前記整流板の長さを調節する、
請求項6に記載の高分子樹脂含浸フィルムの製造装置。
【請求項8】
前記整流板は、前記減圧チャンバーと角度が可変な接合部材を介して接続され、
前記接合部材の角度を変化させることで前記多孔性シートに対する前記整流板の角度を調節する、
請求項6に記載の高分子樹脂含浸フィルムの製造装置。
【請求項9】
前記整流板は、前記減圧チャンバーと接続部の長さが可変な接合部材を介して接続され、
前記接合部の長さを変化させることで、前記多孔性シートに対する距離を調整する、請求項6に記載の高分子樹脂含浸フィルムの製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、多孔性フィルムに機能性高分子樹脂を含浸させた高分子樹脂含浸フィルムの製造方法および製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、環境問題に関する関心が高まり、燃料電池や水電解など水素を利活用するデバイスおよび装置に関する技術開発が盛んである。また、その中でデバイスや装置の性能を左右する重要部材として、水素イオンなどのカチオンイオンを透過させる、もしくは水酸化物イオンなどのアニオンイオンを透過させる電解質膜など、機能性を有した高分子材料から構成される機能性膜への関心が高くなっている。しかし機能成膜の耐久性、機械強度などの信頼性に対する課題があり、機能性膜へ補強材を導入する検討がなされており、その補強材を用いた機能性膜の製造方法に関する内容が多数報告されている。
【0003】
例えば、補強材として多孔性膜を用い、機能高分子材料として高分子電解質を用いた場合の製造方法、および製造装置の内容が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
図11は、特許文献1に係る製造装置の構成を示す概略図である。この
図11を用いて特許文献1の製造方法について説明する。
【0004】
特許文献1の製造方法では、まず、多孔性膜61を中心に、両面から高分子電解質膜62で挟み込み、さらにその外側の両面より剥離性保護シート63で挟み込み、積層状態の積層シートとして搬送される。次に、その積層状態のまま、一対の圧着ロール64へ搬送される。ここで一対の圧着ロール64を構成する片方のロール65と、もう一方のロール66上をエンドレスに回転するSUSベルト67の間に上記積層シートを搬送させる。その間、SUSベルトを通じて積層シートを予備加熱し、ロール65とロール66との間で圧着することで、高分子電解質膜62を溶融状態にし、多孔性膜61へ含浸させている。その後、剥離性保護シート63を剥離し、多孔性膜で強化された高分子電解質膜68が製造されている。
【0005】
次に、別の製造方法を用いた報告もある(例えば、特許文献2参照。)。
図12は、特許文献2に係る製造装置の構成を示す概略図である。
図12を用いて特許文献2の製造方法を説明する。
【0006】
特許文献2の製造方法では、連続で供給される基材71上に、塗布手段72を用いて高分子電解質溶液を塗布し、その塗工面に多孔質材料73を貼り合わせ、加熱ローラ74を用いて乾燥させる。さらに多孔性材料73の上に塗布手段75を用いて高分子電解質溶液を塗布し、乾燥炉76で乾燥させることで、多孔質材料73で強化された高分子電解質膜77が基材71上に形成された積層シート78として製造されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2008-277288号公報
【特許文献2】特開2011-222499号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、前記特許文献1の構成では、以下の課題が存在する。
特許文献1の構成では、
図11に示すように、多孔性膜61を両面から非溶融状態の高分子電解質膜62で挟みこみ、さらにその両面を剥離性保護シート63で挟み込んだ状態で、加熱、加圧することで高分子電解質膜を溶融させ、多孔性膜内へ高分子電解質を含浸させている。ここで、加熱、加圧する直前において多孔性膜61内に存在していた気体(ここでは空気)は、高分子電解質膜62および剥離性保護シート63により内部に保持された状態になる。そのため加熱、加圧すると、内部に保持された気体は十分抜けきらず、多孔性膜で強化された高分子電解質膜68の内部に気泡として残存してしまう。
【0009】
また前記特許文献2の構成では、以下の課題が存在する。
特許文献2の構成では、
図12に示すように、基材71上に高分子電解質溶液を塗工し、その塗工面に多孔質材料73を貼り合わせることで多質性材料73に高分子電解質溶液を含浸させ、一旦乾燥させた後、多孔質材料73の上面に再度高分子電解質溶液を塗工し乾燥させている。ここで多孔質材料73を貼り合わせた含浸工程において、多孔質材料73の表面状態や空隙サイズおよび密度のばらつきなどの影響で、高分子電解質溶液の含浸状態に不均一性が発生し、多孔質材料73の空隙において部分的に高分子電解質溶液が充填されない箇所が発生する。その後、乾燥させることで、高分子電解質溶液が充填されていない状態で固化し、更にその上に高分子電解質溶液を塗工されることになる。しかし1回目の乾燥で、初めに塗布された高分子電解質溶液は固化しているため、多孔質材料73内の未充填部分における気泡の抜け道が塞がれ、結果として、完成する多孔質材料で強化された高分子電解質膜77の内部に気泡が残留することに繋がる。
【0010】
このように、高分子電解質膜内に気泡が残留することで高分子電解質膜のイオン電導性低下、ばらつき発生など膜性能低下の繋がり、その結果、例えば燃料電池や水電解装置において、デバイスや装置の性能低下を引き起こす原因となる。
【0011】
本開示は、上述した従来の課題を解決するもので、例えば高分子電解質のような機能性高分子と、多孔性膜および多孔質材料のような多孔性シートを用い、多孔性シートに機能性高分子が含浸された複合化フィルム(以降、高分子樹脂含浸フィルムと述べる)を連続的かつ安定に製造する製造方法および製造装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するために、本開示に係る高分子樹脂含浸フィルムの製造方法は、シート状の基材と高分子樹脂含有多孔性シートとの積層構造からなる高分子樹脂含浸フィルムの製造方法であって、高分子樹脂含有溶液をシート状の基材上に塗布し塗工膜を形成する塗工工程と、塗工膜の液面に多孔性シートを積層させ、多孔性シートに高分子樹脂含有溶液を浸透させ、基材、高分子樹脂含有溶液、及び多孔性シートの順に積層された積層体を形成し、多孔性シートへ高分子樹脂含有溶液を含浸させる含浸工程と、積層体を減圧雰囲気に晒すことで含浸を促進させる減圧工程と、を含む。
【0013】
また、本開示に係る高分子樹脂含浸フィルムの製造装置は、高分子樹脂含浸フィルムを連続的に製造する高分子樹脂含浸フィルムの製造装置であって、連続走行するシート状の基材を搬送する基材搬送機構と、高分子樹脂含有溶液を基材上に塗布し、塗工膜を形成する塗工機構と、塗工膜の液面に連続走行する多孔性シートを積層させ、基材、高分子樹脂含有溶液、及び多孔性シートの順に積層された積層体を形成する多孔性シート積層機構と、積層体を減圧処理する減圧チャンバーと、を備える。
【発明の効果】
【0014】
以上のように、本開示に係る高分子樹脂含浸フィルムの製造方法および製造装置によれば、多孔性シートへの機能性高分子の含浸が促進され、含浸状態のばらつきを低減することで気泡混入を低減し、残留気泡が少ない高分子樹脂含浸フィルムを製造することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】(a)~(g)は、実施の形態1に係る高分子樹脂含浸フィルム製造方法の各工程の断面構成を示す概略断面図である。
【
図2】実施の形態1に係る高分子樹脂含浸フィルムの製造装置の構成を示す概略図である。
【
図3】実施の形態1に係る高分子樹脂含浸フィルムの製造装置の減圧チャンバーの構成を示す拡大概略断面図である。
【
図4A】実施の形態2に係る高分子樹脂含浸フィルムの製造装置の構成を示す概略図である。
【
図4B】実施の形態2に係る高分子樹脂含浸フィルムの製造装置の別例の構成を示す概略図である。
【
図5】実施の形態2に係る高分子樹脂含浸フィルムの製造装置における減圧チャンバー付近の拡大概略断面図である。
【
図6】実施の形態2に係る高分子樹脂含浸フィルムの製造装置における別例の減圧チャンバー付近の拡大概略断面図である。
【
図7】実施の形態2に係る高分子樹脂含浸フィルムの製造装置における整流板取付け部の拡大概略断面図である。
【
図8】
図6の実施の形態2に係る高分子樹脂含浸フィルムの製造装置における減圧チャンバーのA-A方向に見た断面構造を示す拡大概略断面図である。
【
図9】実施の形態3に係る高分子樹脂含浸フィルムの製造装置における減圧チャンバーの断面構成を示す拡大概略断面図である。
【
図10】実施の形3に係る高分子樹脂含浸フィルムの製造装置における別例の減圧チャンバーの断面構成を示す拡大概略断面図である。
【
図11】特許文献1に記載された従来の高分子樹脂含浸フィルム製造装置の構成を示す概略図である。
【
図12】特許文献2に記載された従来の高分子樹脂含浸フィルム製造装置の構成を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
第1の態様に係る高分子樹脂含浸フィルムの製造方法は、シート状の基材と高分子樹脂含有多孔性シートとの積層構造からなる高分子樹脂含浸フィルムを製造する方法であって、高分子樹脂含有溶液をシート状の基材上に塗布し、塗工膜を形成する塗工工程と、塗工膜の液面に多孔性シートを積層させ、多孔性シートに高分子樹脂含有溶液を浸透させ、基材、高分子樹脂含有溶液、及び多孔性シートの順に積層された積層体を形成し、多孔性シートへ高分子樹脂含有溶液を含浸させる含浸工程と、積層体を減圧雰囲気に晒すことで含浸を促進させる減圧工程と、を含む。
【0017】
第2の態様に係る高分子樹脂含浸フィルムの製造方法は、上記第1の態様において、積層体の減圧において、積層体の多孔性シート側を減圧雰囲気にしてもよい。
【0018】
第3の態様に係る高分子樹脂含浸フィルムの製造装置は、高分子樹脂含浸フィルムを連続的に製造する高分子樹脂含浸フィルムの製造装置であって、連続走行するシート状の基材を搬送する基材搬送機構と、高分子樹脂含有溶液を基材上に塗布し、塗工膜を形成する塗工機構と、塗工膜の液面に連続走行する多孔性シートを積層させ、基材、高分子樹脂含有溶液、及び多孔性シートの順に積層された積層体を形成する多孔性シート積層機構と、積層体を減圧処理する減圧チャンバーと、を備える。
【0019】
第4の態様に係る高分子樹脂含浸フィルムの製造装置は、上記第3の態様において、減圧チャンバーは、積層体の多孔性シート側を減圧させてもよい。
【0020】
第5の態様に係る高分子樹脂含浸フィルムの製造装置は、上記第3又は第4の態様において、減圧チャンバーを通過する積層体の基材側に当接し、基材を支持する基材支持体をさらに含んでもよい。
【0021】
第6の態様に係る高分子樹脂含浸フィルムの製造装置は、上記第3から第5のいずれかの態様において、減圧チャンバーの前記多孔性シートに面する開口部において、前記多孔性シートに対して概平行に設置された整流板をさらに含んでもよい。
【0022】
第7の態様に係る高分子樹脂含浸フィルムの製造装置は、上記第6の態様において、整流板は、複数枚の重なった板状体を含み、板状体の重なり量を変化させることで整流板の長さを調節してもよい。
【0023】
第8の態様に係る高分子樹脂含浸フィルムの製造装置は、上記第6又は第7の態様において、整流板は、減圧チャンバーと角度が可変な接合部材を介して接続され、接合部材の角度を変化させることで多孔性シートに対する前記整流板の角度を調節してもよい。
【0024】
第9の態様に係る高分子樹脂含浸フィルムの製造装置は、上記第6から第8のいずれかの態様において、整流板は、減圧チャンバーと接続部の長さが可変な接合部材を介して接続され、接合部の長さを変化させることで、多孔性シートに対する距離を調整してもよい。
【0025】
以下、実施の形態に係る高分子樹脂含浸フィルムの製造方法及び製造装置について、添付図面を参照しながら説明する。
【0026】
(実施の形態1)
<高分子樹脂含浸フィルムの製造方法>
図1は、実施の形態1に係る高分子樹脂含浸フィルムの製造方法を示す概略図である。
図1を用いて高分子樹脂含浸フィルム製造プロセスを説明する。
(1)まず、連続的に搬送可能なシート状の基材1を準備する(
図1(a))。基材は、例えば、通常用いられる高分子樹脂からなるものであってもよい。ここで、基材1の表面は、後工程で使用する高分子樹脂溶液がなじむ様に表面コーティングや表面洗浄などの表面処理を施しておいてもよい。具体的には、高分子樹脂溶液との濡れ性が悪いと、塗工した際に塗工面にはじきや抜けが発生してしまう。一方、濡れ性が良すぎると、最終的に基材から形成された高分子樹脂含浸フィルムを剥す際に、安定して剥せない問題が起きうるため、適宜使用する高分子樹脂溶液および基材に合わせて表面処理を実施すればよい。
【0027】
(2)次に、基材1の表面の所定の範囲に高分子樹脂溶液を塗工し、塗工膜2を形成する(塗工工程)(
図1(b))。
【0028】
(3)さらに、塗工面2の表面に、多孔性シート3を所定のテンションをかけながら貼り合わせる(含浸工程)。この時、塗工膜2を形成している高分子樹脂溶液が多孔性シート3内の空隙に徐々に含浸されていく(図中矢印4)。この状態において、基材1-塗工膜2-多孔性シート3の積層状態になっており、これを積層体5とする(
図1c)。
【0029】
<多孔性シート>
多孔性シートは、例えば、多孔性の高分子樹脂からなり、微細な連続する孔を内部に有する高分子フィルムや、高分子樹脂繊維の積層体から成る繊維フィルムが挙げられる。
また、高分子樹脂の組成として、例えば、ポリメチルメタクリレートなどのメタクリレート系樹脂、ポリスチレンなどのスチレン系樹脂、ポリエチレンテレフタレートなどのポリエステル系樹脂、ポリフッ化ビニリデンやポリテトラフルオロエチレンなどのフッ素系樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン樹脂、ポリアミド、ポリイミド、ポリカーボネートが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0030】
<高分子樹脂溶液>
高分子樹脂溶液は、例えば、機能性高分子である高分子電解質等のイオン性基含有高分子材料が溶剤に溶解した溶液である。
イオン性基含有高分子の一例として、例えば、含フッ素重合体や非フッ素重合体等が挙げられる。含フッ素重合体としては、例えば、スルホン酸型パーフルオロカーボン重合体、ホスホン酸基および/またはカルボキシ基を有するパーフルオロカーボン重合体等を用いることができる。また非フッ素重合体としては、ポリサルホン樹脂等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
溶剤の一例として、揮発性溶剤が挙げられる。ここで上記イオン性基含有高分子材料が溶解し、基材および多孔性シートを溶解、劣化させず、乾燥工程で除去できる溶剤であることが望ましく、例えば、アルコールや、ジメチルアセトアミド、 N-メチル-2-ピロリドン、ジメチルスルホキシドなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0031】
(4)次に、積層体5を減圧雰囲気に晒す(減圧工程)。これによって、多孔性シート3内における高分子樹脂溶液の未含浸部において、気泡が抜けやすく含浸を促進させる効果がある(図中矢印6)。ここで、多孔性シート3内へ十分に高分子樹脂溶液が含浸された積層体5を形成しておく(
図1(d))。なお、この場合において、積層体5の多孔性シート3側を減圧雰囲気にしてもよい。これによって、多孔性シート3内への高分子樹脂溶液の含浸を促進させることができる。
【0032】
(5)その積層体5の多孔性シート3側に、重ねるように高分子樹脂溶液を塗工し塗工膜7を形成し、基材1上において高分子樹脂溶液2および7に挟まれた多孔性シート3から構成される三層構造8を形成しておく(
図1(e))。
【0033】
(6)さらに、この三層構造8の形状を維持したまま基材1ごと加熱乾燥させる。ここで加熱乾燥する際、高分子樹脂溶液中の溶剤が気化される(図中矢印9)ため、気化した溶剤を排気しながら乾燥させる。また、ここで重要なのは乾燥速度であり、乾燥速度が速いと、三層構造を形成している上面側の高分子樹脂溶液7が、基材側の高分子樹脂溶液2より早く乾燥し固化してしまい、基材側の高分子樹脂溶液2の乾燥を妨げる原因になってしまう。そのため基材側の高分子樹脂溶液2内の溶剤が多孔性シート3を介して高分子樹脂溶液7側へ拡散する速度に合わせて、乾燥速度つまり溶剤気化9の速度を適宜調節する必要がある(
図1(f))。
【0034】
(7)乾燥後、基材1の上に基材側の高分子樹脂溶液2が固化した高分子樹脂層10と、上面側の高分子樹脂溶液7が固化した高分子樹脂層11と、それらに挟まれた内部の空隙に高分子樹脂が浸透、充填された多孔性シート3と、で構成される高分子樹脂含浸フィルム12が形成される(
図1g)。ここで最終的に、基材1から高分子樹脂含浸フィルム12を剥離し、必要に応じて残留溶剤を除去して使用することも可能である。
【0035】
<高分子樹脂含浸フィルムの製造装置>
次に、
図2は、実施の形態1に係る高分子樹脂含浸フィルムの製造装置の構成を示す概略図である。
図1で説明した高分子樹脂含浸フィルムの製造方法を具現化する高分子樹脂含浸フィルムの製造装置の一例として説明する。
高分子樹脂含浸フィルムの製造装置は、基材搬送機構と、第一の塗工機構23と、多孔性シート積層機構25と、減圧チャンバー26と、第二の塗工機構29と、乾燥機構30と、を含む。
以下に、高分子樹脂含浸フィルムの製造装置の各構成要素について説明する。
【0036】
<基材搬送機構>
まず、基材1を基材巻き出しロール20から引き出し、巻き取りロール31で巻き取る。基材巻き出しロール20と、巻き取りロール31とによって基材1を連続的に搬送可能にする基材搬送機構を構成している。この機構により、基材1の搬送速度やテンション調整が可能である。
【0037】
次に、この巻き出しロール20と巻き取りロール31との間に、以下の各機構が順に構成されている。
【0038】
<第一の塗工機構>
基材1の裏面を維持する支持ロール21と、基材表面に高分子樹脂溶液を塗工する塗工ノズル22とによって、基材1上に塗工膜を形成する第一の塗工機構23を構成している。
【0039】
<多孔性シート積層機構>
多孔質シート巻き出しロール24から多孔性シート3を巻き出し、前記塗工膜の液面に多孔性シートを積層させ、基材と、高分子樹脂含有溶液と、多孔性シートとが順に積層された積層体を形成する。多孔質シート巻き出しロール24と、多孔性シート3を搬送する複数のローラとによって、多孔性シート積層機構25を構成している。
【0040】
<減圧チャンバー>
減圧チャンバー26によって、前記積層体を減圧雰囲気に晒し多孔性シート内の気泡が抜けやすくし、高分子樹脂溶液の多孔質シートへの含浸を促進させることができる。
【0041】
<第二の塗工機構>
前記積層体の基材側を支持する支持ロール27と、多孔性シート側から高分子樹脂溶液を塗工性し、塗工膜を形成する塗工ノズル28と、によって、第二の塗工機構29を構成している。
【0042】
<乾燥機構>
乾燥機構30によって、基材ごと乾燥させることで高分子樹脂溶液内の溶剤を除去し、基材1上に高分子樹脂と多孔性シートからなる高分子樹脂含浸フィルム12を形成する。
【0043】
ここで、塗工ノズル22、28とは、高分子樹脂溶液を塗布する目的のものであり、各種塗工方法に用いる塗布手段であれば用いることができる。例えば、ダイコート法におけるダイヘッド、ナイフコート法におけるナイフブレード、ロールコート法における塗布ロール、スプレーコート法におけるスプレーノズル、などがあり、使用する高分子樹脂溶液により適宜選択する要件であり、特に限定されるものではない。
【0044】
また、前記第二の塗工機構29は、必要に応じて設置してもよく、省略してもよい。例えば、前記減圧チャンバーにより高分子樹脂溶液が多孔性シートに十分浸透し、多孔性シート表面上に高分子樹脂溶液が染み出すような場合は省略することも可能である。
【0045】
本実施の形態1に係る高分子樹脂含浸フィルムの製造装置を用いることで、前記減圧チャンバー26により高分子樹脂溶液の塗工面に積層された多孔性シートへの高分子樹脂溶液の含浸が促進されるため、最終的に形成される高分子樹脂含浸フィルムへの気泡の残留を低減することができ、性能向上、歩留まり向上の効果が期待できる。
【0046】
<減圧チャンバーの詳細構成について>
さらに、この減圧チャンバー26に関する詳細について説明する。
図3は、減圧チャンバー26の構成を示す拡大概略断面図であり、減圧チャンバー26と搬送される基材1、高分子樹脂溶液2、及び多孔性シート3が順に積層された積層体5について、搬送方向の断面を示した概略断面図である。
図中で矢印方向に積層体5が搬送され、積層体5を構成する多孔性シート側の表面近傍へ減圧チャンバー26が設置されている。減圧チャンバー26は、少なくとも、別途真空ポンプや排気配管など減圧チャンバー内の気体を吸引する(図中40)ことで、減圧チャンバー26内を負圧にする手段と接続される排気口41と、積層体5に面して積層体5の搬送方向と直交する幅方向(図の奥行方向)に広がる開口部42とからなっている。この開口部42の負圧力を利用して積層体5の表面を減圧雰囲気にし、高分子樹脂溶液2の多孔性シート3への含浸を促進させている。特に、開口部42を形成する減圧チャンバーの壁43と、多孔性シート3との隙間44において、風が強く流れる。その多孔性シート表面を通過する風の流れにより多孔性シート表面が減圧雰囲気になり上記効果が促進される。
減圧チャンバー26の内部と外部の差圧は、例えば、20Pa~50kPaに調整してもよい。ここで減圧チャンバー26の排気機構は、ファンや真空ポンプなど適宜選択することが可能である。
【0047】
(実施の形態2)
図4Aは、実施の形態2に係る高分子樹脂含浸フィルムの製造装置の構成を示す概略図である。
図4Bは、実施の形態2に係る高分子樹脂含浸フィルムの製造装置の別例の構成を示す概略図である。
図5は、実施の形態2に係る高分子樹脂含浸フィルムの製造装置における減圧チャンバー付近の拡大概略断面図である。
実施の形態2に係る高分子樹脂含浸フィルムの製造装置では、減圧チャンバー26による高分子樹脂溶液2の多孔性シート3への含浸促進効果をさらに安定化することができる。
【0048】
図3で示した減圧チャンバー26および積層体5の関係では、積層体5の表面近傍が減圧雰囲気になるため、積層体5が減圧チャンバーの開口部42に吸い寄せられる現象が発生する場合がある。その場合、上述した高分子樹脂溶液2の多孔性シート3への含浸促進効果が安定しない問題や、積層体5が減圧チャンバーの開口部42に接触する不具合が発生する場合がある。実施の形態2に係る高分子樹脂含浸フィルムの製造装置によれば、以下のように、上記の問題に対応することができる。
【0049】
図4に示すように、この製造装置では、減圧チャンバー26を通過する基材1の裏面に当接する背面支持体32を設けている。基材1は、基材巻き出しローラー20と巻き取りローラー31とで所定のテンションを印加しながら搬送されている。その基材1の背面から、例えばローラーのような凸形状の基材1に当接した背面支持体32を設けることで、
図5に示すように、背面支持体32に基材1が密接した状態で搬送され、減圧による振動などの影響を解消することができる。また凸形状に搬送させることで、多孔性シート3からに気泡が抜けやすくなる効果も期待できる。
【0050】
さらに、この背面支持体32へ、振動バイブレータや超音波振動子などによる振動を付与する機構を設けることも可能であり、高分子樹脂溶液2の多孔性シート3への含浸がより一層促進されやすい。また減圧チャンバーを通過する際、高分子樹脂溶液2内の溶媒の一部が揮発していくため、高分子樹脂溶液2の温度が低下する現象が発生する。その温度低下により、高分子樹脂溶液2の粘度が変化し、多孔性シート3への含浸が不安定になる問題も発生するため、必要に応じて、背面支持体32にヒーターや温調媒体の循環など加熱機構を設け、温度を一定に保つことも有効である。
また、装置サイズの縮小化や、装置コスト低減のため、背面支持体32と第二の塗工機構29を構成する支持ロール27とを兼用し、
図4Bに示すように、これらを同一のローラー27aで対応することも可能である。
【0051】
<減圧チャンバーの詳細構成について>
次に、減圧チャンバーの構造の詳細構成を説明する
図3のような構成では、開口部42を形成する減圧チャンバーの壁43と、積層体5を形成する多孔性シート3との隙間44を通過する風の風速が一番早く、一旦減圧チャンバーの開口部42内部に流れる風は、風速は減少してしまう。そのため、多孔性シート3の表面を減圧雰囲気に維持する時間が短く、効果が得られにくい問題がある。特に基材1の搬送速度が速くなるほど、その効果が低減してしまう。
【0052】
そのため、上記問題を解決する方法の一例を、
図6を用いて説明する。
図6は、
図5に対して改善した別例の減圧チャンバー付近の拡大概略断面図である。この減圧チャンバー26では、開口部42を形成する減圧チャンバーの壁43の多孔性シート3と面する箇所に、多孔性シート3の搬送方向とほぼ平行に設置された整流板45、46を設けている。
【0053】
整流板45は、減圧チャンバーの開口部42において、積層体5の搬送方向の下流側に設置された板状の部材であり、整流板46は、減圧チャンバーの開口部42において、積層体5の搬送方向の下流側とは逆の上流側に設置された概板状の部材である。ここで概板状というのは、平板でも、一部湾曲していてもよく、整流板と多孔性シート3間の風の流れを調整するための部材であれば、特に限定されるものではない。
【0054】
この整流板45、46を設けることで、整流板45と多孔性シート3とで成す隙間47と、整流板46と多孔性シート3とで成す隙間48とに流れる風を制御できる。具体的な制御方法の一例として、隙間47の圧損を隙間48の圧損より小さくするように調整することが望ましい。隙間47の圧損を隙間48の圧損より小さくすることで、隙間47を流れる風速が隙間48を流れる風速よりも早くなるように設定することができる。そのことにより、搬送される多孔性シート3に対して、隙間47において、搬送方向とは逆方向に流れる風が強くなり、多孔性シート3を搬送方向とは逆方向(下流側から上流側)に引き延ばしながら搬送される形態を実現できる。もし逆の場合、つまり隙間47の圧損が隙間48の圧損より大きい場合、隙間48を通過する風によって多孔性シートが搬送方向(上流側から下流側)に向かって押しつけられ、多孔性シートのズレやシワ、偏りを発生させる不具合を生じさせる場合がある。そのため、隙間47の圧損を隙間48の圧損より小さくすることが重要である。
【0055】
この隙間47の圧損を隙間48の圧損より小さくする手段として、例えば、以下の方法がある。一例として、隙間47の間隔(整流板45と多孔性シート3間の距離)より隙間48の間隔(整流板46と多孔性シート3間の距離)を広くする方法である。また、別の一例として、整流板45の長さを整流板46の長さより短くすることで、隙間47の長さ(整流板45と多孔性シート3間の空間が占める基材搬送方向の長さ)を、隙間48の長さ(整流板46と多孔性シート3間の空間が占める基材搬送方向の長さ)より短くする方法である。
【0056】
また、上記方法を組み合わせ、隙間47の圧損を隙間48の圧損より小さくする方法として、整流板45と整流板46の角度を調節する方法が有効的である。その調整方法を具現化するため、整流板の角度、高さ、長さを調整する機構が製造装置に備えられていることが望ましい。調節する装置構成の一例として、
図7を用いて説明する。
図7は、
図6における減圧チャンバーの壁43と整流板45との接続部における拡大概略断面図である。ここで整流板46の接続部も同様な機構で調節可能であり、ここでは整流板45を代表して説明する。
図7に示すように、減圧チャンバーの壁43と整流板45とは角度調節ジョイント53により接続されている。角度調節ジョイント53は、少なくとも2枚の取り付け板51と、2枚の取り付け板51の接続角度を調節可能な角度可変部52により構成されている。この角度調節ジョイント53により整流板45の角度が調節可能である。
【0057】
また、角度調節ジョイント53を構成する2枚の取り付け板51は、それぞれ取付穴54が設けられ、減圧チャンバーの壁43の取付穴54と整流板の取付穴54とを介してビス56により固定される。ここで取付穴54を多数用意する、もしくは、長孔にすることで、整流板45の高さを調節することが可能である。さらに、整流板45自体を複数枚の板が重なった構成にし、上記取付孔の考え方と同様、長孔54を使用することで、整流板45の長さを調節することが可能である。また、ここでビス56の固定方法の注意点として、ビスの突起が、整流板により発生する風の流れを乱す懸念があるため、風が流れる面、つまり整流板と多孔性シートとから成る隙間47側に突起物が出ないように注意することが望ましい。
【0058】
このような調節機構を設けることで、整流板の角度、高さ、長さを調整することができ、使用する高分子樹脂溶液、多孔性シートや、搬送速度などに適した調整をすることが重要である。
また、整流板と基材との隙間を流れる空気の速度は、その差圧と整流板の長さ、距離、角度によって調整されるものであり、多孔性シートへの高分子樹脂溶液の含浸のしやすさや、基材の搬送速度によって適宜調整する項目である。
【0059】
次に、
図8は、
図6の実施の形態2に係る高分子樹脂含浸フィルムの製造装置における減圧チャンバーのA-A方向に見た断面構造を示す拡大概略断面図である。つまり、基材1の搬送方向(X方向)から見た、減圧チャンバーの搬送方向に対して垂直方向(横方向:Y方向)についての断面図(
図6における右側面から見た断面図)である。ここで減圧チャンバー26の横方向(Y方向)の両端部にも整流板57、58を設置することが望ましい。
図6で説明した整流板45、46と積層体5の表面とで成す隙間47、48を通過する風速を安定制御するためには、
図8における側面、つまり整流板57、58と積層体5の表面との隙間59、69を通過する風の流れを調整することが必要である。具体的には、隙間59、60を通過する風を極力少なくすることが、隙間57、58を通過する風の安定制御することに繋がる。そのため、隙間59、60における圧損を隙間57,58における圧損より大きく設定しておくことが重要である。その手段として上述した整流板の高さ、角度、長さの調整機構を利用することができる。調整する一例として、隙間59、60の間隔(整流板57、58と積層体5間の距離)が、上述した隙間47および48の間隔より小さくなるように設定することが望ましい。これによって、隙間59、60を通過する風を低減させることができる。
【0060】
(実施の形態3)
図9は、実施の形態3に係る高分子樹脂含浸フィルムの製造装置における減圧チャンバーの断面構成を示す拡大概略断面図である。
図10は、実施の形3に係る高分子樹脂含浸フィルムの製造装置における別例の減圧チャンバーの断面構成を示す拡大概略断面図である。
図9は、
図6に対して整流板45、46を減圧チャンバーの内部方向へ設置した構成である。ここで整流板45、46は、別途上述した取付機構を用いて、高さ、角度、長さを調整可能な状態にしておいてもよい。
【0061】
図6では、基材1や積層体5を搬送するために製造装置にセッティングする立上げ作業の際、整流板45、46の先端に基材1や積層体5が引っ掛かりやすい問題が起こる場合がある。非常に薄い基材を扱うため、引っ掛かりによる傷、破れなどが発生し、それ起因で基材が破断してしまうなどハンドリング性が悪くなるのを防ぐため、例えば、
図9に示すように、整流板の45、46の少なくとも一方を減圧チャンバーの内部方向へ設置することも有用である。
【0062】
図10は、
図6に対して減圧チャンバーの排気口41を広く設けた構成である。これによって、別途設けられた減圧チャンバー内を負圧にする機構(図示せず)と接続された排気口41の断面が狭い場合に排気口41による圧損が生じ、開口部42への十分な負圧効果を発揮しにくくなる問題を抑制することができる。また、排気口41の断面積より開口部42の断面積を小さくしておくことも、装置設計上の制約を回避する観点から有用である。
【産業上の利用可能性】
【0063】
本開示に係る高分子樹脂含浸フィルムの製造方法および製造装置は、例えば高分子性の多孔性フィルムを補強材として使用し、前記多孔性フィルムにイオン電導性など機能性を付与した高分子樹脂を含浸させることで、機能性および強度を両立した高分子樹脂含浸フィルムを形成することが可能となる。
【符号の説明】
【0064】
1 基材
2、7 高分子樹脂溶液
3 多孔性シート
5 積層体
12 高分子樹脂含浸フィルム
20 基材巻き出しロール
22、28 塗工ノズル
23 第一の塗工機構
24 多孔性フィルム巻き出しロール
26 減圧チャンバー
27 支持ロール
27a ローラー(支持ロールと背面支持体とを兼ねる)
29 第二の塗工機構
30 乾燥機構
31 基材巻取りロール
32 背面支持体
41 排気口
42 開口部
43 減圧チャンバーの壁
45、46、57、58 整流板
53 角度調節ジョイント